シナリオ詳細
<悠久残夢>お星様に願いを込めて
オープニング
●お星様に願いを込めて
休憩室の片隅で、ことことと湯を沸かす。
キャンプセットを使ったこの作業は、彼女がイレギュラーズから最初に教わったものだ。
フライパンで煎ったコーヒー豆をミルですりつぶし、フィルターに乗せてゆっくりと上から湯を注ぎ込む。
ほどなくして、コーヒーの豊かな香りがたちのぼってくる。
これを今まで何人に出しただろうか。できることなら、願いを込めてイレギュラーズ全員に出して回りたかった。
それほどまでに、彼女にとって彼らは……。
「皆、どうか無事でいて」
少女の名はステラ。滅びを見守る少女。
そして、魔王軍に向けてこの拠点に配置された、囮。
プーレルジールという異世界がある。
境界図書館を通じて渡航することのできるこの世界は、既に滅びに瀕していた。
それも、魔王イルドゼギアによって『本来は存在し得ない魔王を作りだし世界が滅びを迎えるまでがこの世界の運命だ』と語らせしめた、滅びに。
そんな魔王イルドゼギアにはこの世界を滅ぼすほかに狙いがあった。
狙いとはずばり、混沌世界への渡航。
本来ならばプーレルジールの住人が混沌世界へと渡ることは不可能だが、イレギュラーズやあるものを利用することで渡航することが可能になるという。
「その鍵が、あなたなのですね。ステラ」
太陽の翼ハイペリオン。混沌世界では勇者パーティーの一人であったこの神獣も、この世界ではただの神獣にすぎない。世界を救わない、ただの。
だが今は、イレギュラーズたちと共に世界を西へ西へと旅し、滅びの元凶を討ち滅ぼすための戦いに身を投じてくれている。
そんなハイペリオンがテーブル越しに問いかけると、ステラはこくりと頷いた。
「私は滅びを見守る端末。大いなるものとの接続を可能とするもの。そんな私の力を利用すれば、混沌世界に終焉獣たちが渡ることが可能になる。少なくとも、魔王イルドゼギアたちはそう考えているはずだわ」
これに対する策としてステラを混沌世界に逃がすことも一時は検討されたが、『大いなるもの』との再接続によって今のステラの人格が消えてしまう可能性があるというリスクから、ステラはこのプーレルジールに残ることとなった。
だがただ残るだけではない。
自らを『囮』とすることで、魔王軍の大部隊を自分達の構築しきった陣地でもって迎え撃つことができるという戦術的な利用を提案してきたのである。
「何度も言いますが、やはり、囮となるのは危険ではないでしょうか。今からでも後方にさがることだって……」
「ううん、それではだめ。わたしも一緒に戦いたいの。だって……」
ステラはコーヒーを淹れたカップを手で覆い、その温かさに目を閉じる。
一緒に旅をした。
空の美しさを知った。コーヒーの温かさを知った。人と笑い合うことのうれしさを知った。
そう、ステラは『生きた』のだ。この世界で。旅をしたのだ、この世界を。
だから。
「私も、『旅の仲間』でいたいの。それに……」
「それに?」
口をつけると、コーヒーはすこし苦い。
けれどそれが、たまらなくうれしい。
「大好きな人が、沢山できたの。
大切な人が、沢山できた。
そんな人達に胸を張って、一緒にいられるようになりたいの。
わたしが皆を信じたように、皆もわたしを信じてくれたから」
守ると約束してくれた。
戦うと誓ってくれた。
温かい言葉をかけてくれた。
そんな彼らを、信じているから。
「わたしはわたしのやり方で、戦うのよ」
●魔王軍指揮官ミューテリア
「わーお、大軍勢!」
長い髪の少女が手のひらを額に翳して口笛を吹いた。
「ねえねえ見てよこれ。魔王様大盤振る舞いじゃない?」
「魔王様も、どうやら相当にあのステラという少女を手に入れたいご様子ですなミューテリア殿」
隣に浮かんでいる青紫色の風船めいたモンスターが口を開いた。
ミューテリアと呼ばれた少女からは激しい滅びの気配が迸っている。
間違いなく、魔王軍のネームドだろう。
「こうなったら責任重大! 頑張って世界滅ぼして、混沌世界にわたろーね!」
そして少女は影なる大地を歩き出す。
警鐘が鳴り響く。
サハイェル迎撃拠点に設置された見張り台からだ。
遠くからは魔王軍の軍勢が迫ってくるのが嫌でも見える。
指揮官ミューテリアをはじめいくつものネームドモンスター、更には終焉獣たちで構成されたその部隊が、着々と近づいてくるのだ。
迎え撃つのは、拠点に大量の罠やバリケードを仕掛けたイレギュラーズの大部隊。
内部まで侵入されステラを奪われればこちらの敗北。そうならず拠点を守りきれればこちらの勝利だ。
戦いの火蓋は、今切って落とされた。
- <悠久残夢>お星様に願いを込めて完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年12月06日 22時06分
- 参加人数89/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 89 人
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参加者一覧(89人)
リプレイ
●
サハイェル迎撃拠点にとてつもない数のモンスターが押し寄せていた。
それらは罠やバリケードによって一次的に足止めされつつも、数に任せこの拠点を落とそうと攻め込んでくる。
「ここを……守ればいいんだね……」
傘を広げた『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は攻め入るモンスターの軍勢めがけ、『ワールドエンド・ルナティック』の魔術を行使した。
巨大な色鮮やかな海月の幻影が生まれたかと思うと、モンスターの群れめがけて突進、爆発によって、モンスターを吹き飛ばしていく。
その上空を、『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)の使役するファミリアーが飛行し、ターンする。
『ついに来ちゃったか……。
凄い数の音が聞こえる。よほどの大軍勢みたいだね……。
僕達が守るから、一緒に…頑張ろうね……。
誰かと一緒に居た方がいいかもね…ステラさんがこの戦いの要なんだから……』
そうステラに語りかけたのはつい数分前のこと。グレイルは戦場へと飛び出し、先ほど爆発のあった場所へと到達していた。
「向こうの方が、音が大きく聞こえるかも……そっちを重点的に守るべきかな……?」
到着したグレイルは『獣式アセナ』を発動。自らの分身のような神狼を創り出し、その力を借りて氷雪の嵐を生み出す。
嵐はモンスターの軍勢へと直撃し、足止めを喰らっていたモンスターたちがバタバタと倒れていく。
だがそれを乗り越え、無数のスケルトンウォリアーが攻撃を仕掛けてきた。
「お仕事の時間ですね。えぇ。
世界が滅んでしまったら、落ち着いて昼寝もできませんし。
稼げる時に山ほど稼いで、できるだけ睡眠時間を増やしたいものです」
攻め込むスケルトンウォリアーに対して注意を引くように動く『亜竜種給仕』萊 連理(p3p010469)。
集中攻撃を受けるが、持ち前の再生能力と頑丈さによって連理はなんとか耐え凌いだ。
「そのまま押さえ込んでください。回復はお任せを――!」
そう叫ぶのは『司祭』リゴール・モルトン(p3p011316)。
「あなたは?」
「司祭、リゴール・モルトンです。
戦う力はありませんが、皆様の支援をいたします。
この場所が要となるならば、戦いは激化する筈。癒し手も必要でしょう?」
リゴールはそう微笑みを交えて言うと、連理に治癒の魔法をかけ始める。
脳裏に浮かぶのは銀色の剣を握ったかの『友』の姿だ。あれほど勇敢に戦えたなら、自分は……。
「戦うすべを持たぬ事に無力さを感じることもある……しかし、これが私の戦いなのだ」
そこへ乗り込んできたのは『都市伝説“プリズム男”』アイザック(p3p009200)。
「お星さまを守る、素敵な響きじゃないか。夢に満ち溢れた、いい子たちらしい」
アイザックは空をアイススケートのように軽やかに滑り飛行すると、腕を広げ周囲のモンスターたちを引き寄せ始める。
そして、自らを中心にプリズミックカラーの爆発を引き起こした。
翼を生やした鴉人間のようなモンスターが次々に襲いかかり手にした槍で攻撃を仕掛けてくる。
アイザックはそれを自らへの治癒によって凌ぐと、更なる爆発を引き起こした。
「例の策は上手くいかなかったけれど、充分な囮にはなれているらしいね」
地上をゆくモンスター群は足止めを喰らう一方、少数の飛行モンスターたちはそれらを無視して上空からの攻撃を敢行していた。
『必ずこの拠点を……ステラ君を守り抜くよ。
信じてくれてありがとう。必ず応えるから、コーヒーを淹れて待ってて』
出発前にステラにしたそんな挨拶と、ステラの微笑みと『信じてる』という言葉を思い出す『芽生え』アルム・カンフローレル(p3p007874)。
「ステラ君は絶対に奪わせない!」
まずは衝突を始めた地上部隊と連携すべくアルムは治癒の魔法を展開。そして空へと飛び上がる仲間たちに呼びかけた。
「チーム【昴星】、いくよ!」
「わたし、ミニマール…よろしく……。ステラさんを守る為にも、頑張る……!」
激突している地上部隊に混ざり『物語領の愛らしい子猫』ミニマール・エアツェールング(p3p010937)がダークムーンの魔術を叩き込んだ。
「あなた達魔王軍に、お星さまは絶対奪わせない……消えて」
ミニマールの放つ魔法が地上部隊を押し返し、その間に空を飛ぶ『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)が敵飛行部隊と接敵した。
「ステラさんを守るんです。
これを終わらせて笑顔で会うんです。
だから頑張りましょうね、皆さん」
自らにルーンシールドを付与。飛んでくる無数の矢が自らの結界によって弾かれるのを確認しつつ、鏡禍は『ブレイズハート・ヒートソウル』を敵飛行部隊の密集したエリアへと放った。
放たれた焔の力が作用し、無数の敵が鏡禍めがけて突っ込んでくる。
その間に、一度押し返した地上部隊へ『物語領の兄慕う少女』コメート・エアツェールング(p3p010936)と『物語領の猫好き青年』メテオール・エアツェールング(p3p010934)が突撃を敢行。
「メテオ兄様共々、決戦へ向かった領主の代理で来ましたの。ステラさんを守る為にも、私達も協力しますわ!」
「別方面へ向かう為来れなかった領主の代理で来ました。ステラさんを守る為にも、自分達も尽力を尽くします」
息ピッタリのコンビネーションで剣を振るうメテオールと魔術を放つコメート。
「魔王軍は通行禁止ですわ!この先には行かせませんわよ!」
「貴様等にやらせるわけにはいきませんので…!」
地上部隊を一度押し返した二人は早速バリケードの修繕を開始。式神使役や修理スキルを用いてテキパキとバリケードを整えていく。
「やれ、まるで魔王に狙われたお姫様で大変だな」
あながち間違いではないけれど……と『航空指揮』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)はホバーボードを自在に操り空を飛ぶ。
「空は任せなって。ハエ一匹、通させやしねえさ」
華麗なターンを決めながら空中に密集した敵を次々にたたき落とすアルヴァ。
「さあ来いよ、魔王軍共。俺たちで叩き潰してやる」
そこへ襲いかかるのは無数のフライホーカー。五月蝿い羽音を鳴らしながら毒の籠もった爪で攻撃を仕掛けてくるが、そんな攻撃をまともにくらうアルヴァではない。見事にすべてかわしきり、反撃のエクスカリバーによってたたき落とす。
そうした間に、予めとっておいた狙撃ポイントからライフルで狙いをつける『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)。
「ステラさんに、銃が綺麗、もっと冒険したがってるって言われたんだ。
冒険をここで終わらせるもんか」
町を出ての冒険は、確かに素晴らしいものだった。世界は広く、そして豊かだ。
そうした冒険の数々をまるで認めてくれたみたいで、飛呂は目を細める。
「そこだ」
密集しすぎたフライホーカーに拡散型の弾頭を撃ち込んで纏めてたたき落とす飛呂。
「あの星は、落とさせない」
そこへ。
「宇宙保安官! ムサシ・セルブライト現着! 星を守る使命、手伝わせてもらう!」
変身バンクによってコンバットスーツを纏った『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)。彼は更に増えつつある魔王軍のモンスター集団めがけ跳躍した。
「スペリオンエッジキィィィィック!!!」
空中でひねるように宙返りを交えたあとに繰り出す流星の如きキックは、魔王軍のモンスターを見事に粉砕。バリケードを破壊しようとしていたハンマーオーガを一撃で倒してしまった。
「行け! ディフェンダー・ファンネル!」
更にディフェンダー・ファンネルを飛ばして周囲のゴブリンたちを一掃しにかかるムサシ。
「必ず守り通して見せるッ!」
「ああ、そうさ――」
無数のゴブリンたちの注意をひくべく走り回る『ガイアネモネ』紅花 牡丹(p3p010983)。
手から放つ焔と華麗に舞う片翼が、迫る敵たちを翻弄し続ける。
「ステラが大好きな星のように!
空で赤く赤く輝き続けてやる!
空を見上げたあいつを勇気づけられるように!
オレたちが共にあるんだと示し続けてやる!
――航空猟兵の盾、舐めるんじゃねえ!」
豪速で飛び回る牡丹を、誰も堕とすことが出来ない。だというのにどうしても執着してしまう。
密集したゴブリンたちはそうして、失策を悟った。
【昴星】の仲間たちが一斉に範囲攻撃を叩き込むその合図を目にしたからだ。
「今だ!」
アルムの声に応じて一斉砲撃が行われ、ゴブリンの群れが消し飛んでいく。
魔王軍の勢いは凄まじく、正面からのみの襲撃であったモンスターたちはやがて側面へと回り込み初め、各方面から次々に拠点への侵入を果たしていた。
そこへ登場したのが――。
「ホストたる者、戦場においても個性を爆発させて戦うべし。平たく言えば見敵即斬! 派手に暴れて派手に勝とうぜ!」
サハイェルにいきなりホストクラブを作った男、『無限ライダー2号』鵜来巣 冥夜(p3p008218)である。
勿論彼だけではない。その仲間たちが一斉に展開し、迫るコボルト集団を迎え撃つ。
「この店は何者にも踏み荒させはしない。VIPのステラ様、接客の喜びを知ったゼロ・クールのホスト達、何者にも変え難い、俺の愛しい京司……一心不乱に、ただ全てを守る為にッ!!」
シャンパンコールの叫びと共に術式を発動。
降り注ぐ黄金のような雨。
「うまのほねー(冥夜)、どうして拠点にホストクラブがあるんです?
ちょっと理解が追い付かないのですが
悲劇を好む私としてはもう少しじっとりした戦場の空気を求めていてですね?」
『悲劇愛好家』クロサイト=F=キャラハン(p3p004306)がそこへ突入し、追いシャンパンならぬ追いタイダルウェイヴを詠唱。
発動した洪水がコボルトたちを流していく。
飛び起きた数匹のコボルトと、それらを指揮するコボルトリーダー。
繰り出される剣を、クロサイトは大きく飛び退くことで回避する。
「おっと、危ない」
「前衛は任せろ」
『鋼の咆哮』ヴァトー・スコルツェニー(p3p004924)が自らの肉体を鋼のように強化しながら突入。
「ゼロ・クールも俺も、人に造られた命。他人事とは思えないな
俺も人の心を知る道の半ばだ。戦う事で守り抜けるものがあるなら尽力しよう。 それにしても、あのシャンパンコールというのはどう心に作用するものなんだ?」
敵陣へと突っ込み、相手の剣や斧による攻撃を身体で受けて防御。手刀で払って反撃とひたすら逞しく戦うヴァトー。
「ただ世界を救うって漠然とした目標のために頑張るのもいいけど、ステラちゃんって子の為に戦うんっだろ?そいつぁ悪い気がしないぜ!」
『ラッキージュート』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)がここぞとばかりに二丁拳銃を撃ちまくった。
「でもってシャンパンコール? 祭りだ~! ウェーイ!」
テンションはほぼ祭のそれである。
翼を広げ一気に敵陣へ突っ込んだかと思うと、四方八方に銃撃をしまくりコボルトの集団を打ち倒していく。
「この店に入りたい? なら、スーツを揃えてから来な。何れにしても暴れる客はフロントカットだがな!」
『雪花蝶』斉賀・京司(p3p004491)がとどめとばかりに『シムーンケイジ』の魔術を発動。コボルトリーダーを中心とした集団が激しい熱砂に襲われたかと思うと、続けざまに光翼乱破、ライトニング、悠久のアナセマという恐ろしいBS祭を開催したのだった。
当然、コボルトリーダーたちが無事なわけがない。
「お客様、お帰りです」
冥夜の放つ最後の魔術によって、コボルトリーダーは地面に倒れ伏したのであった。
「おおー!ここが皆が改造した拠点かぁ〜!
凄いね、安心して住めそうなお家みたい……絶対、壊させないぞー!
戦う理由は、魔王とか世界とかっていうのより……うん、こういう方が性に合うなぁ」
『多言数窮の積雪』ユイユ・アペティート(p3p009040)は新たに設置した罠にスケルトンメイジたちがひっかかるのを確認しつつ、陸鮫に跨がって出撃。
罠にかかったスケルトンメイジの集団めがけ『ステイシス』の呪術を発動させた。
雨のように降り注ぐ氷砂糖の幻影の中、どろどろと溶け始めるスケルトンメイジ。
なんとか抵抗し動き出そうとする個体めがけ、『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)が飛び込んでいった。
「おれっち自身の戦闘能力は大したことはないけど、耐久力なら――」
こっちだ! と注意を引くように空中を泳ぐかの如く駆け抜けるリック。
その姿に注意を引かれたスケルトンメイジたちが至近魔法を乱発する。
弾ける火花が激しく散る中にあって、リックは周囲の仲間たちに支援効果を展開し始める。何も自分が倒す必要はないのだ。仲間たちを強化すれば、それが戦績となる。
「すきなひとがいなくなるのは、ニルはかなしくて…こわい、です。
だから、ステラ様を連れて行かせたりなんかしないのです。
ステラ様は、ここにいる、から。いてくれる、から。
ニルはもっとステラ様と「おいしい」を知りたいから」
『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)はステラと過ごした時間を思い返しながら、ミラベル・ワンドを握りしめる。
放つ魔法はアンジュ・デシュとケイオスタイドのセットだ。リックが引きつけたスケルトンメイジたちを一網打尽にするための範囲魔法である。
ニルが想いを込めて放った魔法は放物線を描いた光となって飛び、爆発するようにスケルトンメイジたちを包み込んでいく。
「たわーでぃふぇんす……射手と術師の出番なのですね。
ただでさえ大魔種のせいで大変なのに異世界からの客なんていらないのです。
撃ち尽くす勢いで追い返すのですよ」
ここぞとばかりに『鋼鉄の冒険者』ココア・テッジ(p3p008442)が高所からライフルによる連射を浴びせかける。
罠にかかり大量に足止めされ、更に弱体化までされたスケルトンメイジの集団にココアの射撃は効果抜群である。
「わたしはわたしの、戦場で。気持ちは、ステラさまと一緒、です」
そこへトドメとばかりに飛び込んでいく『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)。
『戦いの後は、きっと皆さんお腹が空きます、から…沢山、お料理しましょう、ね!』
そうステラと交わした約束を思い出す。微笑み、『約束ね』と小指を出したステラのことを、思い出す。
思い出は胸をぽっと温かくして、メイメイの力となった。
ブレスレットをした手を突き出すと、ふわふわの幻影が打ち出されスケルトンメイジ集団へと命中。爆発を起こしてすべてを吹き飛ばしていく。
更なるウェイブが迫る。それは足の速い狼型モンスター『ブラックハウンド』の集団による回り込みであった。
「ステラさんは本当に素敵な子…ですがここは文字通りの戦場。
この先までそれにされるのはふさわしくない」
それを迎え撃つのは血の大鎌を形成した『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)だった。
「魔王軍……ふふ、面白いじゃないですか。
奇跡ではない人としての力で蹂躙してあげますよ。
ええ、奇跡嫌いの魔女は必然を掴み取るので」
バリケードからあえて飛び出し進路上に陣取ったマリエッタは、鎌の一振りによって大量の血のナイフを創り出した。それらを一斉にブラックハウンドたちに解き放つ。
「ここに再来するは死血の魔女…さぁ、アタシの前に抗うのは誰かしら?」
そこへ飛び込んでいったのは『光明戦姫』ヴァル・ド・ルクス(p3p010734)。
(守護。
私の……得意と"したい"ところだ。
かの英雄譚に記されていた、民草の前に聳え立つ壁となれるよう……尽力を尽くそう)
A-X-E。正式名称『Abrasive-X-ray-Eclipse』。ルクス家の家宝にして家督の証である巨大な両手斧を構え立ち塞がると、ブラックハウンドの群れに対して気迫をぶつけた。
「ヴァル・ド・ルクス──参る!」
飛びかかってくる大量のブラックハウンド。
対して、ヴァルは斧を豪快に振り回す。
(私は力だけは強いが……きちんと振るえるだろうか。
いいや、弱気になってはダメだ。
やる。やるんだ、私は。
その為に来たんだから。
黎明の兆しよ、私達を……照らせ!)
無論、攻撃を受けるばかりではない。
仲間の、『aerial dragon』藤宮 美空(p3p010401)による支援が勿論ある。
(あれだけの大軍勢を相手に囮になるだなんて……凄い勇気、ですわね。
ならば、私達は全力を以て彼女の勇気に応えるのみ、ですわ!!)
空から急降下してきた美空はブラックハウンドの一体を強烈な流星キックによって叩き潰すと、持ち前の機動力でもって急上昇。反撃を許さないほぼ一方的な強襲によってブラックハウンドの数を着実に減らしていく。
「これ程の大激戦、どの戦場も信じられない程に大変でしょう……。
しかし、ならば私は最も抜かれてはならない所をお手伝いしましょうっ!
微力なれど、皆さんの戦の一助となれば!」
そこへ駆けつけたのは『聖なるかな?』アザー・T・S・ドリフト(p3p008499)。
ドリフトは頭上のあのなんだかよくわからない球体から神聖な光を解き放つと、敵の攻撃を一手に引き受けているヴァルの回復を開始する。
勇敢なタンクと優れたヒーラーが合わされば鉄壁の守りとなる。
そこへ、更なる攻撃が加わるのだ。
「戦う理由はいくらでもあるけど、何より、ステラと俺達は仲間なんだもの。
彼女の信頼に応えたいって、それが俺の一番の気持ち!
ステラもみんなも、ここで紡いで未来へ続いていくわくわくだって、何者にも奪わせない!
ここは『ステラとみんなのわくわくHOUSE』だよ!」
駆けつけた『覚悟の行方』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)はアタッシュケースからメアリを解放すると、集まったブラックハウンドの集団めがけて魔法の糸を次々に飛ばしていった。
「これからも沢山のキラキラに出会う彼女の未来、絶対に守りたいんだ!」
想いは力となり、力は敵をなぎ払う。まるで流れ星が落ちるみたいに。
拠点後方へ回り込んでいたモンスターの襲撃が始まった。
モンスターはひとりでに動く鎧ことリビングアーマーの一団である。
「初陣のときもそうだったが……なんか毎回ものすげえことになってねえか?
もうちっと普通の仕事もしたいもんだが、まあこれも経験か」
高所からその様子をうかがっていたラウル・スミス(p3p010109)は颯爽と飛び降り、リビングアーマー集団の前に陣取った。
「どいつもこいつも凄腕ばかりだ、無理せずできる範囲で仕事をしていこうじゃねえか」
言いながら繰り出す剣がリビングアーマーの抜いた剣とぶつかり合い、激しい剣のぶつかり合いが繰り広げられる。
その横を別のリビングアーマーが抜けようとしたところに、『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)が猛烈な勢いで突っ込んでいった。
「異世界からの侵略者に対する防衛戦……頑張らないとだねっ。
敵軍隊からの防衛となれば必要なのは範囲攻撃と足止めかな」
ということで敵を引きつけ始める金剛。
注意を引きつけられたリビングアーマーたちが手にした剣や斧による攻撃を開始し、金剛はそれを自らの肉体を堅く強固なものにすることで耐え凌ぐ。頑強で屈強な右の巨腕が相手の打撃を受け止めた。
「相も変わらず派手な戦場であるな。さて、役目はいつも通り。使い捨てなれども無いよりはマシな盾として動こう」
そんな金剛が摩耗していったところで駆けつけてくれたのが『未だ遅くない英雄譚』バク=エルナンデス(p3p009253)だった。
味方のラウルたちにはプロトコル・ハデスを付与し、攻撃が集中する金剛には破硝結界を展開。
庇いに入ることで攻撃を代わって引き受ける。
「そのまま敵を引きつけ続けるのじゃ」
防御はこちらで引き受けた、とばかりに自らに聖躰降臨、ヴァルハラ・スタディオンを付与。頑強な盾となったバクが敵の攻撃をきっちりと引き受けている間に――『希望の星』黒野 鶫(p3p008734)が更に飛び込み集中攻撃を阻む。
「見渡す限りの大軍勢、胸が躍る……とは流石に言えないのじゃが。
それでも、やはり彼奴等を通す訳にはいかんの。
――若人が頑張っているのじゃ。儂らも発奮せねばなるまいて!」
リビングアーマーたちはどうやらこちらの撃滅よりも突破を優先しようとしていたらしいが、ここまで引きつけ役やタンク役が並んでしまうと突破も難しいらしい。
バリケードだらけで進路の限定された遺跡内で、鶫たちを無視して進むことはできない。
ならばと攻撃をしかけてくるリビングアーマーに、鶫は剣を叩きつけることで応戦をはかった。
「どの程度抜けてくるかは未だ分からぬが……ここが正念場じゃ。気張って立ち続けて見せようぞ!」
そんな仲間たちを支援するのは『新米P-Tuber』天雷 紅璃(p3p008467)。
「迫り来る異世界の魔王軍!
星の少女を守るために立てよ勇者たち!
みたいな感じ? 何はともあれ、今回の防衛戦も頑張らないとね!」
ウェイブの到来を告げる紅璃の声はそのまま範囲強化魔法となって金剛や鶫たちを強化し、ついでとばかりに『マクロ:スティールライトニング』と『マクロ:エレクトロバグ』を駆使して敵のAPを削りとっていく。
元々APの乏しい種であったらしく、リビングアーマーたちは早々に強打攻撃を中断しポカポカと弱い攻撃に留まり始める。
aPhoneを操作しながら電撃を浴びせていた紅璃はハッと上を見上げた。
「アタッカーが来たみたい、皆一旦離れて!」
その言葉通り空から飛び降りてきたのは『勇猛なる狩人』ダリル(p3p009658)だった。
「魔王じゃとぉ?
なんじゃ我よりも格好良さげに名乗りおって! 負けてられっか!
――とっとと、等とは言わぬが迎撃する程度の心意気で掛からねば負けるぞ。ゆえ我は打って出るぞ!
……あ、その分脆いから守ってはおくれよ! 下手すれば一撃でくたばるからな! 助けておくれよ!」
攻撃と防御で手分けをするのは集団戦のお約束。ダリルは仲間に守られる形で後方からチェインライトニングの魔術をぶっ放した。
「反応を送らせた分火力を高めた、外殻吹き飛ばす神威の息吹を喰らうと良い」
残ったのは敵の飛行部隊。
翼をもった悪魔のようなモンスター集団がバリケード等を飛び越えて一気に中央ドームへ迫るべく突き進んでくる。
が、それを許す『本と珈琲』綾辻・愛奈(p3p010320)たちではない。
「来ましたね、本陣。……吶喊します。手筈通りに。頼りにしていますよ、ノア」
「ええ!」
魔法によって飛行する愛奈と、メタルカオスワイバーン翼竜形態に騎乗して飛ぶ『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)。
彼女たちの脳裏にあるのは、旅の中で笑ったステラの顔だ。
あの子に、指一本触れさせはしない。
愛奈は激しい飛行によって敵集団を引きつけ、一斉攻撃をはかる悪魔たちに対して二重に張った無効化結界で迎え撃つ。
「――綺羅星の様な貴女が、どうか曇りませんように」
「彼女が彼女であるために、私も使える手は全て使いましょう」
ノアは集まった悪魔たちをすべて撃ち抜くべく魔力砲撃を開始。
「禁断機構、奇跡機構、リミッター解除! 緊急弁全閉鎖! 外しはしない!」
桜色の魔力砲撃が放たれ、悪魔たちが纏めて撃墜されていく。
すべてを撃ち払った二人は、空中でぱしんとハイタッチを交わしたのだった。
●
前線での戦いは激しく、そして負傷者も多い。
イレギュラーズの戦闘能力は流石の一言なのだが、それに対して魔王軍の軍勢がよこすモンスターの数がとてつもなく多いためだ。
そうした中で負傷者を後方へ運ぶ役割が、どうしても必要になる。
「カイトさん、周囲の警戒を」
「任せてくれハイペリオンさま!」
『鳥種勇者』カイト・シャルラハ(p3p000684)は負傷者にホワイト・ウィンドをかけてやると、追撃をはかろうと狙うモンスターたちを引きつけ始めた。
「何故でしょうね。あなたの緋色の翼を見ていると、心が落ち着くようです」
「そう思ってもらえれば最高だな!」
「やはりあなたはベルハイドによく似ています」
にこりと笑うハイペリオン。二人は負傷者を担いで後方拠点へと飛んでいった。
一方でこちらは軍馬に跨がった『不死身のやられ役』ケドウィン(p3p006698)。
「荒事は好きだが、それだけじゃ裏社会では生きていけないからな。
でかい戦争やろうってんなら負傷者の後方輸送は大事な役割だ、気合い入れて行こうぜ」
「アニキはバトル好きそうだけど、こういう地味な役割もこなすのちょっと意外かも」
「そうか?」
箒にまたがって飛行する『草原の魔女の一人娘』ロル・ウィッチ・マギス(p3p006695)。
二人は犬を使って負傷者を発見すると、ケドウィンの馬に乗せて後方拠点へと素早く走る。
「アニキ、追っ手が来てる!」
「振り切る。何でも運ぶ運び屋の腕前を見せてやるぜ!」
ロルとケドウィンはニッと笑い合うと、負傷者を乗せたまま輸送馬車へと加速していった。
その輸送馬車というのが、『青薔薇救護隊』常田・円(p3p010798)の操作する救急馬車である。
「さあ、怪我人は誰一人も見捨てたりはしません! 必ず救護施設まで送り届けてみせます!」
怪我人を馬車に案内し、その場で応急処置が必要な者がいれば馬車に積んでいた包帯等を使って応急処置を行う。
それだけの知識が円にはあるのである。
「レイアさん、そっちはどうですか」
「大丈夫です、すぐに連れて行けます」
同じく輸送部隊に配属されていた『バカンスお嬢様』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)。
ケドウィンたちの連れてきた負傷者を馬車に案内すると、足を負傷した仲間に治癒の魔法をかけてやった。
「さあ、すぐに馬車を出しましょう。中央通りなら皆さんが守りを固めているはずです」
レイアの言うとおり、遺跡の中央に通った広い通りは馬車を走らせるのに適していた。当然敵もその広さを狙って突破を図ろうとするのだが、仲間たちがきっちりと防御を固めているおかげで敵の侵攻は阻止できているのだ。
レイアは怪我人に手を貸しつつ馬車に飛び乗ると、ロルたちに手を振ってから馬車を出すよう声をあげた。
「みんなー、がんばろうねー!」
元気よく叫びつつ怪我人を救急運搬用ネットにくくって飛行する『大艦巨砲なピーターパン』メイ・ノファーマ(p3p009486)。
追撃を図ろうとするモンスターに、ビーチパラソルレーザーを撃ち込んで牽制をはかる。
今のメイは両手でしっかりとネットを掴み、ビーチパラソルレーザーは背中に固定するという謎の飛行形態(?)をとっていた。
その横を飛行するのは『ベスト・オブ・パンプキン』ププ(p3p011339)。
こちらは怪我人を自分にしがみつかせ、自分からも抱えることで運搬を可能にしているようだ。
「あの、モンスターじゃなくて味方なんですよね?」
「ご安心ください。味方ですよ」
ジャックオーランタンそのものの顔でにこりと笑って(?)みせるププ。その機動力はさすがというべきか、凄まじい速度をだしバリケード上を低空飛行で抜けていく。
一方で地上を走っているのは『君よ強くあれ』安藤 優(p3p011313)の操作するドレイクチャリオッツである。
「世界を救うのなんてぼくには無理です。しかし、こんなぼくにもできることはあるのかもしれません。今こそなけなしの勇気を振り絞る時でしょう」
ネクタイをきゅっと締め直し、御者台に座りドレイクたちを加速させる優。
すると、こちらに手を振る『いのちをだいじに』観月 四音(p3p008415)の姿を発見した。
「怪我人ですか!?」
「はい、一緒にお願いします!」
人助けセンサーで怪我人を発見していた四音は、どうやら独自に動いて怪我人の応急手当を行っていたらしい。彼女は怪我人と一緒に馬車へ飛び乗ると、後方の救護施設へと急ぐのだった。
(異世界のおかわり……はまぁ知っていましたけど、ド直球に魔王が来るとは思いませんでしたよね……
平穏な日常は何処へ……と、愚痴っていても始まりませんよね
その時が近いと信じ、何とか乗り切っていくしかありません!)
中央ドーム内、救護室。
皆の工夫によって整えられた救護室では、ステラがせわしなく走り回りタオルや水を運んでいる。
その側にずっとついて警護しているのは『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)である。
「外の皆さんが戦ってくれているおかげで、ここまで敵は浸透してきていないようですね」
トールの役目はステラの警護。つまりは『暇なら暇なほど望ましい』ポジションである。
なので、その望ましい暇を使って救護班の手伝いをしつつ、ステラのそばについているのである。
そして、同じく警護についている『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)。
「…………」
沈黙し周囲を警戒しているのは、寄生型終焉獣によるステラへの奇襲、そして支配である。
もしそんなことになればこちらの決定的な敗北だ。そしてスライム状の寄生型終焉獣なら、運ばれてくる馬車などに紛れることももしかしたら可能なのではないか、と観測端末は考えたのである。もし寄生などされようものなら、手にしたエイドスの力をもってそれを払うつもりで構えていた。
一方で、運ばれてきた怪我人を治癒するのは『新たな可能性』档 漉礼(p3p011254)たち。
「これは手術が必要ですね。道具を」
漉礼が呼びかけると、ステラが素早く道具をいれたカゴを持って走ってくる。
それを受け取り、負傷者の治療にあたる漉礼。
「この医療救護活動マニュアルと医療セットを託して下さった方に報いるためにも、私ができる限りのことを行いましょう」
救える命は、すべて救う。それが救護班の誇りと覚悟だ。
その一方、おなじみとなりつつある『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)も救護班に加わり負傷者の手当を行っていた。
今回は大半が強力なイレギュラーズということもあって、低レベル帯の補助という側面が大きい。瀕死の重傷を負うような仲間はそうそういないが、素早く治療してやればすぐに戦線に復帰できるという意味で救護班は重要なのだ。
「世界を滅ぼすとか物騒だよな。ま、どんな状況であれ俺はやれることをやるだけだ」
ライはこくりと頷き、額の宝石から治癒魔法をかけながら味方の治療を行っていく。
(お相手は混沌世界にも攻め込む気なんだよな。
勿論その目論見は俺達で防げると思ってるが……。
もしものことを考えて、万全な体制を整えておきたい。
そのためにも怪我が長引かないように頑張って治療しないとな)
中には骨折した者や腹を空かせた者もおり、そうした仲間には『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)が添え木と包帯でしっかりと固定してやり、作ったおかゆで体力の消耗を回復させていた。
「手が使えない場合は介助しますので、遠慮なくお申し付けを」
テルルの献身的な介護のおかげもあって、仲間たちは次々に調子を取り戻し戦線へと復帰していく。
数に任せて攻め込んでくる魔王軍の勢いに対して、治療の素早さで対抗するという具合である。
「これでひとまずは安心ですね」
治療した仲間を送り出すテルル。
そして治療の素早さという点において、信頼と実績が深いのがかの『青薔薇隊』である。
彼らの準備した救護設備に仲間を案内すると、『貴方を護る紅薔薇』佐倉・望乃(p3p010720)は気を引き締めた。
「ここが、わたし達の戦場。
皆さんの命を守り、あなたと一緒に帰れるように、全力で頑張りますね。
約束、です」
素早い資料検索で医療救護活動マニュアルから必要な情報を調べ、救急バッグとホワイト・クイーンの技能と知識を活用し治療にあたる望乃。
「団体の負傷者です、対応を!」
ハイテレパス通信で呼びかけると、『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)が素早く駆けつける。
彼女のオルド・クロニクルによって守られた救護室はズズンという揺れがあってもびくともしない。『これはおまじないだよ。困ったことがあったらこの子に言ってね』とステラにファミリアーの小鳥も預けていた。準備は万全なのである。
「怪我人はどのくらい?」
「全部で五人です。一気に行けますか?」
「手伝おう」
『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が医療鞄を開いて駆けつけてきた。
運搬役の円やレイアたちが運んできた負傷者に対し、治療を始めるルブラットたち。
「ふむ、流石に道具が揃っている」
ルブラットは棚から適切な医薬品を素早くとると、ラベリングされたそれを開いて怪我人へと投与する。
暇な時間があれば罠設置も手伝おうと思っていたが……どうやら暇はなさそうだ。
「皆、もう一息だ!」
そんな仲間たちを指揮するのは『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)。
拠点の状況を常に観察しつつ、整理された道具や薬の在庫を確認しつつ、そして運ばれてきた負傷者に対する治療を指示するというマルチタスクをフーガはこなしていた。
「一気に治療したい。手を貸してくれ」
『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)がギターに手を伸ばすと、フーガは頷いてトランペットを召喚。
「ああ、任せて!」
二人は治癒の音楽を演奏し初め、部屋に集まった負傷者たちの治癒を一気に進めていった。
よし……と心の中でガッツポーズをとるヤツェク。
「皆を生かすのがおれ達の役目。地味かもしれんが、必要だろ?」
「だね。必要な役割だ」
実際、今までいくつもの戦場で必要とされ、命を繋いできた役割だ。
「皆さん頑張っているのです……ボクだって」
『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)は送り出した仲間たちを一通り見送ってから、道具の点検を開始した。
不足した道具はなし。予め集めておいた薬草やそこから作り出したポーションなどは充分ストックされている。
拠点改造時にきっちりと働いたおかげだろう。これでよしとチェックを終えたところで、また馬車が駆け込んでくる。アレストは腕まくりをして、怪我人のもとへと走った。
●
負傷者が相当数に出る原因のひとつ。それが魔王軍のネームドモンスターによる侵攻であった。
「我こそはガイニス。暁月の悪魔ガイニスである」
両手にメイスを握った屈強なモンスター、ガイニス。彼は並み居る実力者たちを次々に撥ね飛ばし拠点へと突き進んでいた。
それを阻まんとするのは『願いの星』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
(まったく。囮になんてならずに後ろでじっとしていて欲しかったのだけれど。
まあでも、その気持ちも分からなくはありませんわね。
何もできないまま後ろでじっと見ているだなんて、私だって御免ですもの。
ステラ、待っていて下さいまし。貴女の覚悟、決して無駄には致しませんわ!)
飛びかかり、どっせいと勢いも凄まじくメイスを叩きつけるヴァレーリヤ。
「あら、この程度ですの? 本当に此処を突破したいのなら、私がツケにしている酒代を全額支払った上で、10倍の戦力を持って来るのですわね!お財布を取りに帰って出直して来なさい!!」
「ぬうっ……!」
その勢いに思わず足を止めたガイニス。そこへ『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)の放つ炎が迸った。
「わたし、総勢1名参陣なの。
ステラは自分の戦いを始めたしハイペリオン様も頑張ってるの。
わたしもわたしの戦いを始めるのよ」
ひゅんひゅんと風を切りながらバリケードとバリケードの間を跳びはねるように移動する胡桃。
ヴァレーリヤと打ち合っている最中のガイニスの頬めがけ、強烈な胡桃ぱんちを叩き込んだ。
「正面から正々堂々炎上させていただきますの」
強烈に殴られたガイニスが数歩後退。そこへすかさず『不退転』レオナ(p3p010430)が突進を仕掛けた。
(一兵卒として遊撃に回るも良いが……折角ならば強き存在と挑みたく。
まぁ負けるやかもしれんが、味方が来るまで食い止めることが出来るならばそれも良し。
いざ、尋常に)
『岩貫』と名付けた剣が鋭く走り、それをガイニスは両手にしたメイスをクロスさせることで受け止める。
更なる連撃を放つレオナに対して、ガイニスは反撃のメイスアタックを叩き込んできた。
「――ッ」
なんのとばかりに盾を翳しメイスの一撃を受け止めるレオナ。
瞬間、ヴァレーリヤと胡桃の炎を纏ったメイスとパンチが左右から叩き込まれ、ガイニスは膝から崩れ落ちるのだった。
「み、見事……!」
そんなとき、上空を抜ける美女のような影があった。
「蒼空のセレナディア。一足飛びにステラの身柄を戴くわ」
それに対抗するのはやはり空を飛べるイレギュラーズだ。タイニーワイバーンに騎乗した『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)が襲撃をしかける。
「夜空を駆けるほうき星、怪盗リンネ推参! 星の宝は渡さない、君達の戦力を奪わせてもらうよ!」
「何っ!」
魔法を叩きつける沙耶。魔術結界でそれを防いだセレナディアは対抗するべく魔法を放つ。
(守っているだけではやっぱりジリ貧になるし、お宝たるステラも守れない。
ここは怪盗らしく、打って出る!ネームド、取りに行くよ!)
砲撃をまともに食らう沙耶。墜落しそうになった姿勢をなんとか整えた、その時。
「ネームドモンスターか……コレ、放っておくと厄介そうだね。
俺も、微力ながら倒すのを協力しようかな」
『ヒーロー見習い』ロシニョル(p3p008095)が斧を握って飛んできた。横合いからセレナディアめがけて斧を振り下ろす。素早く回避するセレナディアだが、沙耶への攻撃を邪魔するには充分な働きであった。
反撃の魔法が飛んでくるが、イモータリティによる自己回復を図りなんとか持ちこたえるロシニョル。
「早々と倒されるのも皆に申し訳たたないからね」
「粘るわね、けれど私にかかれば――」
と、その時。
強烈な魔術がセレナディアを襲った。
「マリエッタも地上で守ってくれてる……ならわたしは、空を!」
駆けつけたのは箒にまたがった魔女、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)であった。
出撃前、ステラに淹れて貰ったコーヒーの味を思い出す。あの温かさを、思い出す。
『この小さく暖かなきら星を、わたしも守りたい』。そう胸に抱いた瞬間を。
「どんな強敵でも退かない。ここで退いたら、あの星が永遠に失われてしまうから!」
結界を刃の形に凝縮し、突進。
防御結界を張るセレナディアを結界ごと切り裂いて、セレナはその横を飛び抜けていった。
「我こそは暗黒騎士モントレオ。強者あらば名乗り出よ」
巨大な鎌のような武器を携えた金髪の男がゆらりと群衆の中から現れる。
その強さは凄まじく、挑みかかる何人ものイレギュラーズをその強烈な斬撃によって後退させていった。
「おっと、そこまでにしてもらおうか?」
自分でもちょっぴり『らしくない』と思うようなことを言いながら、『Star[K]night』ファニー(p3p010255)はモントレオの前に歩み出る。
その左右には『無情なる御伽話』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)と『母たる矜持』プエリーリス(p3p010932)。
「さぁ、行進を始めましょう。我らに仇なす者に粛清を」
プエリーリスはダイヤモンドダストの魔法を解き放つと、それをモントレオは鎌で切り裂いた。
「高い防御力……気をつけて。取り巻きは私が対処するわ」
モントレオに追従していたスケルトンナイトたちを引きつけ始めるプエリーリス。
ミザリィはその情報を受けて『ベリアルインパクト』を発動。突如現れた巨大なケーキボックスがモントレオを包み込むと、ミザリィの放つ巨大フォークがボックスもろとも突き刺さる。
消し飛んだボックスの中では、ギリギリフォークを受け止めていたモントレオの姿。
が、ミザリィにとってはそれで充分であった。
相手がこちらに気を取られる一瞬さえ作れれば――。
「テメェらに、ステラは渡さねぇ!!」
ファニーの放つ一番星と二番星。それぞれが流星となってモントレオへと飛び、ハッと目を見開いたモントレオはその直撃を受けて吹き飛んだ。
「星よ、星よ、聞こえるかい?
今度はオレたちが、星の願いを叶える番だ!
死せる星は、オレたちと共に生ける星へ変わるんだ!」
『死せる星のエイドス』を握りしめ、願う。それは強大な力となってファニーを包み込んでいく。
自分を『アルファルド』と呼んでくれた彼女の微笑みを、雪を見せてやると言った日のことを。
これから沢山、沢山、思い出を積み重ねていくのだ。こんなところで、おわらせてはやらない。
くらいやがれと吐き捨てて、ファニーはモントレオを殴りつける。
その膨れ上がった力はただ一点に集約し、炸裂。モントレオの肉体を消し飛ばすほどの破壊力となったのだった。
「モントレオを倒すとはねえ。だが、ここは押し通らせてもらうよ。我が名はカタブラ。ただのカタブラさ。しかし止められやしない」
巨大なイノシシめいた外見のモンスター、カタブラ。彼は押しとどめようと攻撃を仕掛けるイレギュラーズたちをものともせずに吹き飛ばし、中央通りを猛進してくる。
ならば――。
「突っ込んで斬ります!」
いかにも探していたモンスターを見つけたとばかりに『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)が真正面から飛び込み、斬り付ける。
「観音打 至東――正々堂々、勝負!」
「ほう? この私に勝負を挑む? 結構……!」
ぴょんと飛び退く至東。突進の構えをとるカタブラ。
両者が再び激突した際には、カタブラの片目が派手に切り裂かれ――一方の至東は派手に吹き飛ばされバリケードを粉砕した。
「約束ですよ、地獄でも互いの名を忘れぬと!」
起き上がり、救護班に肩を借りる至東。
そのあとを引き継ぐように現れたのは『赤々靴』レッド(p3p000395)と『生命に焦がれて』ウォリア(p3p001789)だった。
「せっかく拠点作りの内装に拘ったところ、壊されに来ちゃあ困るっす
ということで、壊される前にアイツ等を先に壊しちゃおうっす!
へいカモン、ウォリア!!」
「呼ばれて飛び出てババババーン――なんてな、オレだ。
状況が全く解らんが、戦だな…匂い立つ滅びの気配だけで理解出来るぞ。
大いに殺し尽そう、我らの炎は常に終焉を滅ぼし明日を照らす為に燃え盛るのだから!!」
突進に対して突進で返す。
カタブラの再びの突進に真っ向からドレイクチャリオッツで突っ込んだ二人は、激突した衝撃のまま飛び出した。
ウォリアは『神滅剣アヴァドン・リ・ヲン』を振りかざし、カタブラめがけて振り下ろす。
レッドは『トラブルシューター』を後ろに大きく飛びながら撃ちまくった。
「今日、相対し死に逝く運命を歩みし者よ――生まれた事をこそ背負いし罪と想え
我ら「赤炎」、世界の理に仇為す「滅び」を焼き払うのみ!」
「ええ、ええ…戦い燃える「赤炎」に焚べる薪(滅び)はこうでなくては……!」
「ぐ、おおおお!?」
片目を切られていたせいだろう。狙いをわずかにそらしたカタブラはウォリアたちの攻撃をまともにくらい、ずずんと大きな音を立てて横たわったのだった。
「あちゃあ、結構やられちゃったねー」
そんな光景を空に浮かびながら眺めていたのは軍の指揮官ミューテリア。
彼女の周囲には青い風船めいたモンスターが大量に浮かび、彼女の身を守っている。
そこへ挑みかかるのは、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)率いる【騎兵隊】総勢20名であった。
「聞け! この戦場に集いし者よ! 我らは三千世界を勝利と駆ける者。討ち取って名を上げよ。我らは『騎兵隊』である!」
名乗りをあげ、『鋼鉄の女帝』ラムレイに跨がり突進をしかけるイーリン。
その作戦は単純明快。敵侵攻にあわせて鋒矢陣で騎兵で突撃し敵の戦列を混乱させるというもの。
当然敵からの激しい反撃が予想されるが、そのたびに味方を後退させ負傷者を回収。そうすることでいつまでもネームドに攻撃を仕掛け続けるというものだ
その第一陣として突入したのが『紫苑忠狼』那須 与一(p3p003103)、『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)、『大空の支配者』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)だ。
「騎兵隊先鋒、鳴神抜刀流の霧江詠蓮だ! 俺達を突破できないうちにステラを拐かそうなど、片腹痛いぞ!」
エーレンはミューテリアの周囲に展開する風船型のモンスターを次々に切り裂いていき、突破口を開きにかかる。
「あのミューテリアが指揮官か。奴を落とす!」
「此度の騎兵隊はさながら敵のネームドを叩くべく繰り出されし槍。
であれば、敵が空から仕掛けてくる妨害の手を……断つ!」
そこへ更なる攻撃をしかけたのがメリッカだった。
敵陣へと飛行して突っ込み、チェインライトニングの魔法をぶっ放す。
与一も掛地とハイロングピアサーで敵の動きを鈍らせつつプラチナムインベルタの射撃を撃ちまくった。
そうして僅かに開いた隙間を、クラウジアが強く指さす。
「さあ皆、『無限陣』の中に入って!」
クラウジアが唱えるクェーサーアナライズ。
『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)はメイドやバトラーたちに砲撃を任せつつ車椅子で突っ込み、クラウジアの隣でクェーサーアナライズを発動。
「どこへでも現れるとも、騎兵隊と彼女(イーリン)が現れる所になら」
そこへ更に『無職』佐藤 美咲(p3p009818)が加わりクェーサーアナライズを発動。
こうして展開した三重のクェーサーアナライズが騎兵隊名物、通称無限陣である。
「気がついたら騎兵隊も久しぶりになりましたねー。うん、イーリンのとこが一番馴染む。
悪いんスけど、今回は調子悪くなくてね。一気にやらせてもらいまスよ……!」
大技の連発で枯渇しそうなAPを急速に回復されながら、エーレン、メリッか、与一たちは切り拓いた隙間からミューテリアへと接近。
与一の援護射撃をうけながら、エーレンの剣がミューテリアへと迫った。
「もらった」
「おっと!」
ぽむんと召喚される新たな青風船モンスター。それがエーレンとの間に割り込み、剣を受け止める。
直後に魔力反応。咄嗟の回避でメリッカの放つ魔力砲撃をよけたミューテリアはヒュウと口笛を鳴らした。
「やっぱり強いね、このままじゃ押しまかされちゃうかも」
「言わずとも、そうするつもりさ」
「この場所は抜かせないっスよ」
シャルロッテと美咲が無限陣を維持しながら叫ぶと、そこへ大量の青風船が突撃を仕掛けていった。
ヒーラー潰しのつもりだろう。……が、しかし。
「ヒヒヒ――」
割り込みをかけた『闇之雲』武器商人(p3p001107)が攻撃を代わりに引き受け、そして不気味に笑って見せた。
「魔王の軍勢と戦う騎戦の勇者か。
──いいね。実にそれらしくて、そして楽しい」
更に『衒罪の呼び声』をばらまくことで青風船たちを引き寄せ始める武器商人。、
こうして武器商人が敵を引きつけている間に『仰ぎ見よ、金の冠』『礼賛せよ、銀の冠』をそれぞれ発動させ無効化結界を展開。それをかち割ろうと青風船が攻撃を仕掛けるも――。
『天嬢武弓』フォルテシア=カティリス=レスティーユ(p3p000785)のナイトメアバレットが青風船を撃ち抜いた。
「こちらにお邪魔するのは初めてで……力になれるかは不安ですが、頑張ります。
妹(エレンシア)が頑張ってるんですもの、姉としてしっかり出来るところを見せませんと」
弓矢に更に矢をつがえ、別の青風船めがけて放つフォルテシア。
「近付いての戦闘は不得手ですが、離れての戦闘ならそれなりにはこなせます。甘く見ないでくださいね」
「久々の戦いだけどね、軽めにお手伝いってとこさ」
そこへ、聖躰降臨を自らに付与した『穹の天使』ルシ(p3p004934)が突進。青風船を次々とその斧で切り裂いていく。
「私は特に死ぬつもりは無いからね、仲間のやりたい事をサポートするぐらいの動きだけさせてもらうよ」
といいながら、エレンシアのほうをちらりと見る。
(エレンシアの戦いぶりを見るのは初めてになるかな。私がもう少し戦いに関心を持っていれば……なんて、ね?)
「やれやれ……姉貴にルシまで一緒かよ……無理しない程度に戦えよ。
そして見てろよ、あたしの戦ぶりをな!」
そんな中でメインを張って戦うのはやはり経験豊富なエレンシアだ。
「騎兵隊が紅き先駆け、エレンシアだ! まずは軽く挨拶だ! 纏めて消し飛べ!」
滅刀アポカリプスを大上段に構え、振り下ろす。と同時に放たれた魔力の奔流は青風船たちを纏めて吹き飛ばすのに充分であった。
「よーし、せっかく仲間になってくれたステラさんのためですもんね。張り切っちゃいますよ」
そうして開かれたラインを突っ切る形で進む『こそどろ』エマ(p3p000257)。
最近お得意となったワイバーン騎乗戦法で突っ込み、ミューテリアへ『メッサー』で斬りかかる。
「わわ、っと!?」
ギリギリのところで回避するミューテリアだが、エマは逃さない。返す刀でその足を鋭く切りつけた。
そんなタイミングを逃さず『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)はジャミル・タクティールで周囲の青風船たちごとミューテリアを攻撃。
そこから強烈な攻撃に移行する。
今回の瑠璃の役割はウサギ。耳をそばだて、頸を刎ねる役だ。
戦場に潜ませたファミリアーから得た情報をもとに指揮官を割り出し、その位置を掴む目的で動いていた。騎兵隊がミューテリアを直撃して動けているのも、瑠璃がこうして情報を探っていたからだ。
「怪我人はすぐに後ろにさがるっスよ!」
ミューテリアの放つ青風船が次々と爆発し、吹き飛ばされる仲間たち。それを回収して回っては美咲の軽トラへと飛び乗って後退していく。
本来ならこれで終わりだが、『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はすかさず仲間に指示を飛ばして陣形を維持。更なる攻撃へと繋げるのだ。
シャルロッテから【タクト・オブ・グレイゴースト】【クェーサードクトリン】【英雄奇譚ラグナロク】【アブソリュートグレイス】【殲滅兵団】【ソリッド・シナジー】というとにかく山盛りの付与効果が飛んでくる。
それを大勢で受け取って突き進む様はまさに騎兵隊。
黒子はそんな仲間たちの損耗具合を確かめつつ、自分も時にその間に入り込む形で穴を埋めつつ戦闘を維持する。
そもそも黒子の役割はマクロな視点での戦術提案だ。意図的に攻撃されてない箇所に奇襲を警戒したり、真っ向から突っ込んでくる姿勢に対して仲間を集めたりと様々である。
そして実際に統率を図ったのは『決闘者』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)だった。
「貴族騎士改め、騎兵隊まかり通る!」
シェヴァリオンに騎乗して突っ込み、青風船たちを厄刀『魔応』で次々に切り裂いて進むシューヴェルト。
それに続くは『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)。
「それでは参りましょう。
仲間を開放する為。
未来を切り開く為。
これより先の道を開く、それが騎兵隊です。
騎兵隊の執事、彼者誰です。我が盾に伏して下さいませ!」
敵の青風船が次々に自爆攻撃を仕掛けてくるが、その攻撃を一手に引き受けることで二人の味方を庇って進む。彼者誰が防御を担当してくれているおかげでシューヴェルトたちは迷わず突き進むことができるのだ。
「戦だ戦だ! 色々と思うところはあるが、今は目の前の戦いに勝利することが第一だな!」
そうして仲間に守られつつも突進を図る『ナマモノ候補』ピエール(p3p011251)。
ドスコイマンモスに跨がり斧を振るう姿はむしろモンスター側といった風情だが、これもまたイレギュラーズあるある。勇猛果敢に敵モンスターを屠り続け、ミューテリアへの道を切り開く。
一方で『騎兵隊一番翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は飛行して頭上を抜けようとする青風船を次々に撃破。アイゼン・シュテルンの魔術が発動し、爆発を起こす。
更なる攻撃をすべく、『執行人の杖』に『断頭台の刃』をつがえた。ぎり――と弦が鳴るのを聞きながら、的確な位置を目指して矢を放つ。
直撃をうけた青風船は、そこを基点に発動した魔術の爆発によって消し飛んでいく。
一方で『機動回収班』リースヒース(p3p009207)は騎兵隊の運搬&伝令&回復を担当する者として動き回っていた。
ミューテリアの攻撃によって負傷した仲間を回収し、美咲のトラックに積み込んだり場合によってはそのまま抱えて運ぶのだ。
「今、言うべき台詞は一つ。『騎兵隊のお出ましだ!』」
追撃を狙おうとモンスターが迫ったときは、『獄災九告鐘』を発動させて迎撃する。正確無比な影の大剣を生み出し、振るうヒースリース。
迫っていたモンスターを袈裟斬りに破壊すると、そのまま負傷者を運搬していく。
「あとは任せた――!」
「ああ……!」
後退するヒースリースとバトンタッチする形で前へ出る『黒鎖の傭兵』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)。
「久方ぶりの参戦だ、大将首含めて気合い入れて刈り取るさ」
ティンダロスに騎乗し駆け回るその姿はまさに歴戦の英雄。マカライトは鎖で編み上げた巨大なフェンリルの顎で青風船たちを喰らい尽くすと、ついにミューテリアへの道を開いた。
一斉に突撃を図るシューヴェルト。
彼の剣がミューテリアを袈裟斬りにし、墜落したところにピエールの斧が炸裂。
更にレイヴンの矢とマカライトの鎖が炸裂し、ミューテリアのボディを見事に破壊し尽くしたのだった。
「指揮官は倒した、残るはネームドでもないモンスターだけだ!」
狩るのは簡単だとばかりに叫ぶ仲間の声を聞き、マカライトたちは頷き合う。
それは間違いなく、勝利の声であった。
勝利の声は、伝い伝って後方の救護施設へも伝わってくる。
それを聞いたステラは、ほっと息をついてその場にへたり込んだ。
慌てて駆け寄るトールたち。その手をとって、ステラは微笑んだ。
「わたしたちの勝ち……なのね。
みんな、本当にありがとう。私も、旅の仲間になれたかな」
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
戦いに勝利し、ステラを守り切りました!
GMコメント
●排他制限
こちらのRAIDに参加した場合、他のRAIDには参加出来ません。
※複数のRAIDに優先がある方は、特別に両RAIDに参加可能です。
※片方のRAIDに参加した後、運営にお問い合わせから連絡いただければ、両方に参加できる処置を行います。恐れ入りますがご連絡いただけますと幸いです。
●シチュエーション
魔王イルドゼギアの命令により、滅びを見守る少女ステラの捕獲作戦が実行に移されました。
そのために投じられたのは魔王軍の大軍勢。
もしステラを奪われれば、魔王軍ひいては終焉獣たちに混沌への渡航を許してしまうのみならず、ステラという一人の少女の人格までもが奪われてしまいます。
それは混沌世界に大量の滅びのアークを流入させるという世界の危機であると同時に、一人の少女の危機でもあるのです。
サハイェル迎撃拠点を防衛し、迫り来る魔王軍の軍勢を倒しきりましょう。
●エネミー
魔王軍のモンスター、及び終焉獣で構成されています。
モンスターの種類は数多く、その中に数少ないネームドモンスターが混ざっています。
●フィールド
『サハイェル迎撃拠点』でのタワーディフェンスが主となります。
迫り来る魔王軍のモンスターを相手に、ひたすら迎撃を続けることになるでしょう。
拠点には無数の罠やバリケードが設置され、外周には塹壕や土嚢が積まれているため守りは堅固です。
空だけちょっと守りが弱いですが、そこはイレギュラーズの力で解決できるでしょう。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合はプレイング冒頭行に【コンビ名】といったようにグループタグをつけて共有してください。
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【チーム名】【コンビ名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
また、グループタグはパート内のみとしてください。パートをまたいだ場合、別同チームとして判定されます。
パート選択
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】拠点を防衛する
サハイェル迎撃拠点を防衛します。
魔王軍のモンスター及び終焉獣の群れが次々に襲いかかってきますが、これを迎撃することで防衛することができます。
敵モンスターたちは味方の仕掛けた罠やバリケードなどによって足止めを食っているため、これを撃破しきることはそう難しくないでしょう。
ただしモンスターたちからの激しい攻撃は予想されるので、充分に注意してあたってください。
【2】ネームドモンスターを狙う
こちらから出ていってネームドモンスターを狙いに行きます。
ネームドモンスターは複数おり、いずれも高い戦闘能力を誇っています。
激戦になりますので、充分に準備をしてから挑んでください。
【3】救護班として活動する
前線から運ばれてきた怪我人を治療する救護班として、サハイェル迎撃拠点の中央ドーム内救護室で活動します。
ここでの活躍によって、シナリオ内での重傷率が低下し、死亡率が大幅に低下します。
ステラはこの救護チームの一人としてお手伝いをするそうです。
【4】前線から怪我人を搬送する
前線で負傷した仲間を助け、後衛拠点である救護室へと運び込む役割です。
これにはハイペリオンも参加しています。
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