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決戦前夜

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 帝政派ではない。あくまで南部戦線派である。
「素直になれ」と言われたなら「素直だからここにいるのです」とでも憎まれ口を叩くのだろう。
「シャイネン・ナハトもグラオクローネもすっぽかすのだから、当たり前であります」
「色男も大変だぁなぁ……」
 何処まで本気か、胡乱に冗句めいたエッダ・フロールリジ(p3p006270)ゴリョウ・クートン(p3p002081)はしみじみ言った。
 南部戦線――バーデンドルフ・ラインは北に『目標』たる帝都を臨む。
 既に進軍開始の一報が駆け巡った東部帝政派サングロウブルクと彼等は事実上の同盟関係にある。
 ザーバを帝位レースに担ぎ出したかった一部の将校の思惑はさて置いて。
 元より体制派として鉄帝国を支えてきた謂わば『主流派』同士なのだから当然と言えば当然なのだが……
「うーん、すごい、です」
 思わず息を呑む威容は当のアッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が名付け親。
 少女が見上げた切り札たる列車砲『新時代(ノイエ・エーラ)』と共にこれより彼等は北上する。
 息巻く血気盛んな連中は文弱たる帝政派に等負けぬとばかりの、軍人らしい矜持も見え隠れしているのはご愛敬だ。
「良きにつけ悪きにつけ、これだけの状況が出来上がってしまったのは確かだからね」
「こうなればやるしかない……だよね?」
「人生にはイベントがいっぱいだ」
 解・憂炎 (p3p010784)の言葉にヒィロ=エヒト(p3p002503)美咲・マクスウェル(p3p005192)が仲良く頷いた。
 南部戦線を支えたイレギュラーズの顔には気力が満ちている。
 当然だ。如何な絶望的な戦いであろうとも、これまでの決戦にそうでなかったもの等一つも無かったのだから!
「さあ、号令の出番よ。今日だけは譲ってあげる。きっとそれも神が望まれるから」
「おう」
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)ザーバ・ザンザ(p3n000073)を促して、最後に悪戯気に付け足した。
「あと、折角だから名前を呼んで」


 風のように生きるという事が存外に難しい事をゼファー(p3p007625)は良く知っている。
 留まらず、澱まず、他人には流されず、囚われない。自由という言葉は都合が良い割に、最高に相手と振り回す気まぐれな乙女のようなものだから。
「まぁ、ね。でもね。『やれる位はそうありたいわよね』」
 精霊(ミシュコアトル)の槍を片手に嘯いたゼファーに「まったくだぜ」と郷田 貴道 (p3p000401)が腕をぶす。
「まぁ、殴り甲斐がある野郎だ。俺には悪くない『試合』になるだろうがよ!」
 他勢力と異なり帝都の一角に勢力を築くラド=バウ派の面々にも風雲急を告げる情勢は伝わっていた。
「とても放っておける話ではないわね」
「どれもこれも魔種らしいというか、困ったものだ」
 レイリー=シュタイン (p3p007270)エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の苦虫を噛むその表情が事態の深刻さを物語る。
 政治には関与しないと独立した第三勢力を決め込む彼等ではあったが、敵の狙いが『鉄帝国の絶滅』では最早動かぬ理由もないというものだ。
「この戦いが終わったらね……パルスちゃんがスペシャルライブをしてくれる事になってるんだよ。
 ボクの為に……いや、ボクだけの為とか微妙にこう解釈が、いや、そうじゃなくて……嬉しいんだけど、何て言うか……
 それを! ライブが終わる前に滅ぼさせていい訳がないでしょ!!!」
 何やら葛藤に苦しむ炎堂 焔 (p3p004727)もどうあれ蛮行を見逃せない理由を十分に有している。
 雉も鳴かずには撃たれまいに。バルナバスは鉄帝国の武技の極みをも敵に回した。
 なればこそ、まさに『最強の中立』が今静かに動き出す――


 定められた物語(バッド・エンド)を覆したのは人間の意志の力だったのだろう。
 誰もがそれを疑わず、誰もがその結末を予測した。
 悲劇と痛みを繰り返したクラースナヤ・ズヴェズダーの物語はこの救いのない現状に対して確かな光を宿していた。
「……だから、私達は勝たなければならないんです!」
 その瞳に宿る輝きは一時の昏さを忘れていた。
 居並ぶ革命派の志士に力強く言い切ったアミナの言葉に或る者は感銘を受け、或る者は心から安堵した。
(本当に……良かった。アミナ……)
 革命派の代表たるヴァルフォロメイ大司教は彼女の姿を心から嬉しく思っている。
「立派になって……それでこそ革命戦士というものですわ!」
「お前が言うと別の意味に聞こえるんだよなあ」
 ハンカチで目元を抑える格好をしたヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)にすかさずシラス(p3p004421)が茶々を入れた。
「おっと手が滑りましたわ! 不可抗力というものでございますわー!」
「痛い! 痛い!」
「ああ……これは決まった……です、かも?」
 ヘッドロックを受けるシラスは革命派のジョーカーにして、クラースナヤ・ズヴェズダーとは特に因縁浅からぬギア・バジリカの鍵を持つ戦いのキーマンである。同じく冒険の中でフローズヴィトニルの欠片を得たブランシュ=エルフレーム=リアルト (p3p010222)が絶望的な『角度』に顔を覆った。
「ほ、程々にね。戦いの前に疲れちゃうから……!」
「ははは! 実に血気盛んで結構な事でありますな!
 まぁ、フィニッシュ・ホールドはグロースの奴めにとっておいて欲しい所ではありますが!」
 フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は少女だてらに各地で難民の指揮に当たってきた。
 他派――鳳圏の代表という事で幾分か余所行き用の顔をした加賀・栄龍(p3p007422)の清涼な笑い声が場の空気を攪拌している。
 最大級の、息が詰まりそうな程の困難を超えた革命派は戦いを前にしてもまるで気負っていない状態だった。
「カチコミですわー! 革命でございますわ!!!」
「ほ、程々にな……」
 荒ぶるヴァレーリヤ、ドン引く穏健派(ヴァルフォロメイ)。

 ――絶望よ、我等の心を折れるものなら折ってみよ!


「柄にも無いな」
 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)は苦笑交じりにそう零した。
 自身の手に託された雷神の耀きは強く、鋭く、そして重い――
 果たさねばならぬ役割が大きい程、彼女は『柄にも無く』武者震いをするような心持だった。
 社交界の花のままなれば決して相対する事の無い、魂震えるかのような戦場はすぐそこまで迫っていた。
「まだ、マシだろ。俺なんて女神様のご期待を受けちまったんだぜ。
 女はやり難くて仕方ないや。何考えているか分かんねぇし――まぁ、これはちょっとした愚痴だけどよ」
「貴方から女性の話を聞くのは中々珍しいですね。少し、興味があります」
 そんなベルフラウを解すようにルカ・ガンビーノ(p3p007268)が冗談めいれば、リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)も同じようにそれに『乗った』。
「勘弁してくれよ」とお手上げのポーズをしたルカにベルフラウがふっと笑う。
 彼女の双肩が背負うのは運命であり、国であり、己が血族の守ってきた領地である。
「そうですね。これで終わりには出来ませんから――とても」
 無意識の内に自らの唇にそっと触れたジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)の透明な美貌が薄く笑んだ。
 北辰連合は或いはこの鉄帝国動乱において最も大きく運命を激変させた勢力かも知れない。
 辺境伯ローゼンイスタフと宿敵ノーザンキングスとの激闘、統王シグバルドの死。
「……トビアスとも、約束したしね。エーヴェルトは……許せない……」
 そしてチック・シュテル(p3p000932)の言った歴史的な和平。
 シグバルトの死、そして大いなる混乱は現統王ベルノの弟、エーヴェルトの差し金である事は知れていた。
 呉越同舟が成り立つにも故あらば――ローゼンイスタフという金色の獅子は『初めてと言っていい』。
 何ら後顧に憂いを残す事無く、その爪牙を帝国の敵へと突き立てる好機を得たと言っても過言ではなかった。
「こうして助力を得られた事を恩に着る」
 ベルフラウはもう震えない。
「征くぞ、諸君!」


「分かってると思うけど、僕達は火力だ」
 一特異運命座標の身なれど、事実上アーカーシュのトップに就任した男――マルク・シリング(p3p001309)はそう言った。
『浮遊島アーカーシュは火力である』。
 非常に胡乱な物言いだが、それは完全な本質を射抜いている。
 アーカーシュには多数の兵力がある訳ではない。
 アーカーシュには絶大な機動性がある訳ではない。
 使える『弾数』は限られている。小回り器用さとは程遠く、やれる事等限られている。
 それでも。
「アタシが撃つんだから絶対外さないでしょ!」
『ラトラナジュの火』の射手たるは最優のスナイパー・ジェック・アーロン(p3p004755)であった。
「……ま、こっちは『成り行き』だけどな?」
 嘯きながらも、やり切る覚悟を有する天之空・ミーナ(p3p005003)である。
「攻撃までは必ず食い止めますから……!」
「『我が身に代えてでも』……なんて言ったら格好付けすぎかも知れませんけれど」
 セレンディの盾を司るユーフォニー(p3p010323)マリエッタ・エーレイン(p3p010534)を含め、全ての準備はつつがなく進められていた。
 空を支配する――空そのものであるこの島は絶大なまでの攻撃性能をこの決戦にもたらす最強の矛だ。同時に勝利の為には――決定的なまでのその攻撃力を叩き込むまでの間、維持せずにはいられない格好の『的』そのものだ。
「僕達は火力だ」
 マルクは『撃ち終わるまで役割は終わらない』と言う。
 更に裏には『撃ち終わるまで守ったなら決死はやむなし』という壮絶な覚悟が滲んでいるのは言うまでも無かろう。
「……我ながら酷いくじ引きを引いたもんだ」
「そう? アタシは結構楽しいけどね」
 ぼやいたミーナに今度はジェックが嘯いた。
「頼もしい限りです」
「……せ、責任も重大ですね。此方も……」
 マリエッタは微笑み、ユーフォニーはごくりと息を呑む。
 いざ、帝都の決戦に向けて。
 各地の戦力が動き出す。まだ見ぬ戦いの先に何が待つのかは分からねど。
 誰もが胸に希望を抱いて、絶望の憤怒に挑みかかろうとしていた!


 ※鉄帝国各地で各派閥による進軍が開始されました!
 ※二つの太陽はバルナバスの『権能』のようです。鉄帝国の滅亡が近付いているようです……
 ※『独立島アーカーシュとポラリス・ユニオン(北辰連合)に動き』があったようです。
 ※帝政派が切り札『グラーフ・アイゼンブルート』と共に『帝都西方面』より出撃するようです!
 ※鉄帝国各地の流通網が回復しつつあります!

 ※天義の都市テセラ・ニバスが消滅し、異言都市(リンバス・シティ)が顕現しました。また、遂行者勢力による天義での活動が観測されています!
 ※ラサの首都ネフェルストにて同時多発的に事件が発生し、『赤犬の群』の団長ディルクが行方を眩ました模様です……

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