PandoraPartyProject

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動き出す北の地

 大きな城壁の門へと列を成して人々が連なっている。
 ヴィーザル地方『辺境の餓狼伯』と呼ばれる『金狼』ヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフが居城とするこの城下町へ『避難』してくる者達の長い列だ。
 皆一様に、疲れた顔をしている。
 無理も無いと『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)は視線を落した。

 鉄帝国北部には広大な森と凍土が広がっている。
 自然豊かと表現するには厳しい不毛の大地――ヴィーザル。
 冬に近づくにつれ、その猛威は激しさを増すだろう。
 身体の芯から凍える夜をこのヴィーザルに住む人々は身を寄せ合い耐えて来た。
 人々は自然の前に弱くあったが、其れでも日々の暮らしを細々と紡いでいる。

 そんな折、帝都では冠位と皇帝の戦いがあった。不敗を誇った皇帝が敗れ、新しい勅命が下される。
 その言葉は文字通りの『弱肉強食』を意味し、国中は混乱の只中にあった。

 だからこうしてヴィーザル各地から『避難』してくる人が後を絶たない。
 ローゼンイスタフの近隣にある町村はより大きなこの城下町へ移ってきているのだ。
 もちろん、自分達の部族だけで村を守るという者達も多い。
 元々ヴィーザル地方に住まう人々は自分達の命は自分達で守るという強い意思を持っているからだ。
「戦争かぁ……」
「やだねぇ、何とかならないかね」
 城門を潜ったギルバートの耳に、ローゼンイスタフの住人の話し声が聞こえてくる。

 ――ノーザンキングス解放戦線との戦争。
 統王シグバルド率いるノーザンキングス連合王国が、国の混乱に乗じて戦争を仕掛けてくるというのだ。
 元々、豊かな土地ではないヴィーザルを放置した結果、統王シグバルドがノーザンキングス連合王国を名乗りノルダイン、ハイエスタ、シルヴァンスの部族を取り込んで今の形となった。
 もちろんノーザンキングス連合王国に属していない小さな部族も数多く存在する。
 ギルバートの住まう『ヘルムスデリー』も、連合王国には属していない。

 そのノーザンキングス連合王国との戦争の防衛拠点がここ『ローゼンイスタフ』であるのだ。
 住人の緊張は高まっている。
 見慣れない騎士や傭兵。
 敵の先兵がいつローゼンイスタフを襲ってくるかも分からない状況。
 夜も眠れぬ日々を過ごす者もいるだろう。


 ギルバートは城下街から、ローゼンイスタフの居城へと足を踏み入れる。
 門兵に挨拶をし、そこを潜れば傭兵やイレギュラーズの姿が多くなった。
 石畳の整った廊下。見栄えばかりの豪奢な調度品は少なく質実剛健な作りだが、配された飾りはどれも手が込んでいて名工が拵えたものなのだろうと思えた。限りある財は民を守る為に使われるのだろう。
 見知った顔に手を振ってから、『作戦会議室』のドアを叩く。
「失礼します。ギルバート・フォーサイス、只今、哨戒任務から戻りました」
「おお、ギルバート。戻ったか」
 一礼したギルバートはこの城の主であるヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフへ顔を向けた。
 威厳のある風格は、この戦時下において『安堵』を与えるものだ。
 ギルバートは会議室の中に居るイレギュラーズを見つめる。
『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)『救海の灯火』プラック・クラケーン(p3p006804)『ティブロン海賊団“重戦騎”』オウェード=ランドマスター(p3p009184)『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)『道草大好き』モニモニ・プー(p3p010585)『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)というメンバーの他に、このローゼンイスタフの令嬢である『戦旗の乙女』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)の姿もあった。

 ギルバートはベルフラウの隣に進み「状況はどのように?」とイレギュラーズへ問いかける。
「今は話し合いが始まったばかりだよ」
『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は軽く状況の説明をギルバートへと話した。
「皆がそれぞれの意見を出し合っている所だな」
 セレマの説明に重ね『竜撃』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が進言する。
「そうね、いくつか提案が上がっているけれど、まだ話し合いを重ねることが必要ね」
 ギルバートへと紙を寄越す『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は自身が纏めたメモをテーブルの上に広げた。

「それで、次は……」
 ヴォルフが手を上げたベルフラウを見遣る。
「はい、それは私から。このノーザンキングス解放戦線という名を改めたいと思っています」
 ベルフラウはヴォルフの視線を伺うように、僅かに緊張した様子で口を開いた。
「ノーザンキングス解放戦線という名は、シグバルドが掲げる思想との語弊を招く。
 周りから見ればノーザンキングスに組みすると思われかねません。
 本来の目的はこのローゼンイスタフや協力してくれるイレギュラーズがノーザンキングス解放戦線を阻止し戦うことでありましょう。
 ですから、ローゼンイスタフが掲げる名は『別のものが良い』と提案します」
 国の混乱で派閥が割れ、急遽取り付けた名称である。
 意味を違える可能性がある名を変えるのは道理ではあるのだ。
 ベルフラウは、発言のあと我に返る。
 この名にもヴォルフなりの考えがあり着けられたものかもしれないのだ。
 否、このローゼンイスタフを思う気持ちが強い辺境伯のことだ、その可能性の方は高い。
 頑固で融通の利かない『辺境伯であり父でもある』ヴォルフに進言するのは、ベルフラウとて緊張してしまう。胸の奥がチリチリと焼けた。
 もし、却下されたのなら……

「よかろう、ではお前達でこの戦線の名を決めるが良い
 ベルフラウに注がれた声は、『父と娘』ではなく『主と臣』としてのものだったけれど。
 自身を『認めて貰えた』ようでベルフラウは胸が熱くなった。
「はい。責任を持って全うします」
 定められたものを自分達の力で変えて行ける。
 ここはきっとそういう場なのだ。
 変革の時が、訪れていた――

 ※イレギュラーズの提案により、『ノーザンキングス解放戦線』の名称を変更する動きになりました。
  他派閥でも様々な動きがあるようです。


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