PandoraPartyProject
晦冥旧時・残影追憶
常世穢国。
一人の魔種の願いによって顕現せしめている地――
故にこそ玄武(p3n0000194)は神使を通してかの地を攻略せんとしている、訳だが。
「……帰って来ぬ者がいるのか」
先日。常世穢国に対する攻勢の一環において、消息を絶った者達がいた。
百合草 瑠々(p3p010340)に星穹(p3p008330)だ。
……いや厳密には全く行方が分からない訳ではない。彼女らはそれぞれの想いによって、偲雪の傍にいる事を選んだのだ。つまりは――常世穢国の中枢にいるのは間違いない。
玄武にとっては予期せぬ事態であった。よもや、そこまで偲雪の影響が強いとは。
いや……偲雪がどうこう以前に、彼女ら自身に想う所があったか……?
「むぅ……幸い、と言っていいか分からぬが。魔道へ完全に堕ちたかは分からぬ。
引き戻す事もまだ……間に合うであろうか」
「……瑠々さん」
そして当然。彼女らの行動は玄武のみならず、彼女らに親しき者達にも衝撃であった。
瑠々と親しきはエドワード・S・アリゼ(p3p009403)にエア(p3p010085)、それからフラーゴラ・トラモント(p3p008825)であり――『敵対』の意思を示されたばかりだ。
星穹と親しきは黒影 鬼灯(p3p007949)に恋屍・愛無(p3p007296)と、そして……
「…………星穹殿」
ヴェルグリーズ(p3p008566)であろうか。
彼の胸中に過るは何か。相棒と隣り合った日々か。
それとも。届いた手紙に思わず、五指の力を込めてしまった時の熱色であろうか。
……いずれにせよこのままでは在れぬ。
誰も彼もが動きたい『逸り』に迫られていて。
「しかし常世穢国の様子が変わっておるの。
アレは恐らく……アレは恐らく修復活動であろうか」
同時。玄武が見据えた先には――件の、敵の本拠たる常世穢国だ。
豊穣の首都たる高天京にもよく似た街並みが、しかし今は。
晦冥に包まれている。
薄暗い。お天道様が天上に在ろうとも、漆黒たる空間に包まれている光景は異様だ。
ぼんやりと中が見えはするもののマトモな空間であるとは思えぬ――が。
「修復――この前の破壊活動による被害の、って事だよね」
「うむ。皆のおかげでかなりの損害を与える事が出来た。偲雪の力によって顕現している地であれば、彼女の力によって再び回復も叶おうが……しかし彼女の力も無限ではない。時間と能力を割いて斯様な、何らかの行いをする必要があるだろう。偲雪の行いを止めたい我にとっては必ずしも凶事の前触れとは言えぬ」
玄武は、情報を齎してくれたムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)に語るものだ。アレは、先日の神使らの行動によって生じた好機であろう、と。
常世穢国は偲雪の願いを叶えんとする巨大な術式であった。
故に破壊されたままではいられまい――外への拡大は一端諦め、内の安定を図っているが為の行動。放置すれば再び常世穢国は、元の状態に戻ってしまうかもしれない……が。
これは『隙』になっていると推察できる。
森に潜んでいる玄武や神使らに追撃の手が及ばぬ事がその証左だ――
内の修復に全力を注いでいるのだろう、ならば。
「この一時、逃せぬ。我は常世穢国攻略の為、準備を進めておくが故……
神使らは現状の常世穢国の状態の確認と、行方不明となった者達に接触してもらいたい。偲雪の下へいる事を選んだとは言え、今一度語りたい者もいよう。彼女らの意志が固くば、最早どうしようもないかもしれんが……」
「――準備って?」
「……秘密じゃ。其がしかと整えられるとも限らぬでの。無事に成せればその時伝えよう」
最後の機があってもよかろうと、玄武は思考するものだ。
一度目は久遠なる森の調査の為に訪れた。
二度目は果てに見えた常世穢国が如何なる地か知るべく赴いた。
三度目は危険性が故にこそ破壊すべしとした。
「その結果として、かの地には亀裂が生じておる。
……偲雪を倒す事に関して、想う所がある者もいようか。
されど奴めは魔道に堕ちた存在――放置してはおけぬ。
なにより……言や思いが正常に見えても、必ず狂おしい点があろう」
偲雪は、魔種だ。
最早この世の人に非ざる存在。世界を崩壊させる因子を宿した怪物。
……放置しておけばいずれこの国を呑み込まんと考え、実行するだろう人物。
彼女は人の話を聞くように思えて、聞かぬ。
自分の道が正しいと信じて疑わぬ――悩む様があったとしても、結論はいつも同じだ。
全て塗りつぶす。
悲しみを伴う自由よりも、統一された意思による笑顔こそが至高であると――信じている。
彼女は討たねばならぬ。そして『その時』は、きっとそう遠くない。
「……ってぇ! なんだこりゃあ、進めねぇぞオイ!!」
「なんだー? これ、変な壁があるのか……? ん、でも進める人もいるな?」
と、その時。
常世穢国に踏み込まんとしていた者の内――神使に協力する空と巴の歩みが、止まった。
否。厳密には、なぜかそれ以上進めぬのだ。まるで見えない『壁』があるかのように。
……しかし神使は別であった。阻害される事なく、内部へと進めていく。
どうやら神使でなくば入れぬ様だ。
……いやむしろ神使であれば入れる、と言うのが正確だろうか?
「こいつは……なるほど。『縁』が反応してるんですかね?」
「ふぅむ――受け入れる者は受け入れる。かの御仁らしいと言えば、そうかもしれやせんが」
八重 慧(p3p008813)に、その師匠たる栴檀(せんだん)が見据えるは、かつて慧が久遠なる森にて手に入れた事があるお守りだ。
――調査の末に判明したことだが、これは偲雪の力と関係があるらしい。
それが反応しているが故に内部へと侵入する事が出来るのであろうか……或いは。内部に残っている行方が分からぬ神使との縁や、この地の主たる偲雪とどれほど関わりがあったか――も関係しているのかもしれない。
それらの繋がりが深い者程、入りやすい様になっているのかもしれない。
いずれにせよ今の所常世穢国へと入れるのは誰でも、と言う訳では無い様だ。
「ふむ……ならば僕は一度『里』に戻るとしようかな。
長に報告して、可能なら戦力を引っ張ってこよう」
「此方も様子を見ようかな――全員で入り、何がしかの罠で全滅したら洒落にならない」
続けて弥鹿に導満の声も並ぶもの。両名は空達と異なり、神使ではあるのだが……縁が足りぬのか、進みづらい様だ。ならば今回は、内部の事は皆に任せ、己らは外で動かんと意志を示す。
然らば。貴方は足を踏み入れるものだ。
晦冥に包まれた――常世穢国へと。
※<仏魔殿領域・常世穢国>において新たな動きが生じています……!
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