PandoraPartyProject

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Grau Samt

 深緑――迷宮森林の全土を覆っていた呪い、咎の茨は『タレイアの心臓』によって打ち祓われた。
 イレギュラーズは未だ吹雪きの檻に閉ざされた、ファルカウへ進撃せねばならない。

 アンテローゼ大聖堂からファルカウへ向かう短いはずの道のりは、万人を拒む冬に覆われている。
 冬の王オリオンの権能とも呼ぶべき課題を打破すべく、イレギュラーズが手にした『リオラウテ禁書』の一冊。得ることの出来た叡智は炎の大精霊『フェニックス』召喚であった。
「これは私達全ての咎であり、せめて救いとなるように祈ろう。これは――他ならぬ貴殿等が導き出した解法だ。何を置いても無下になどするものか。誰が誹ろうとも、私は貴殿等を断じて信じる」
 森の番人――ルドラ・ヘス(p3n000085)が、奥歯を噛みしめた。
 彼女は深緑の重鎮であり、またイレギュラーズの友人でもある。
 長たるリュミエが居ない今、決断を承認出来るのは、ルドラしか居なかった。
 そして彼女は全ての責任を取ると、事態を見守る大勢のハーモニア達の前で、言ってのけたのだ。
 ならばもう、迷うことはなかった。より性格の述べたなら、出来なかった。
 森を焼く――その決断から逃れることなど、出来はしなかったのだ。
「……行きますね」
「うん、任せてよ」
 ルドラに頷き、覚悟を決めた表情のドラマ・ゲツク(p3p000172)は、一振りの長杖を森の大地に突き立てると、アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が詠唱を開始する。他の書籍の解析も行っているが、まずはこれを行わねばならない。
 続いて幾人かのハーモニアが詠唱を開始すると、拳ほどもあるルビーを戴く瀟洒な杖がふわりと舞い上がり、大地に巨大な魔方陣が花開いた。第一の媒体となるアーティファクト『禁霊杖ブレイズローゼ』はアンテローゼ大聖堂に隠されていた、炎の魔力を高めるとされる術杖だ。さすがに伝説のアイテムなどではないが、非常に高価な杖だ。けれど大精霊の巨大な召喚負荷を前にしては、完全に壊れる前提である。
 ハーモニア達の悲愴な覚悟を受け、クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)もまた同様に、どうしようもなく心を痛めずにはいられない。
(今は、ただ――けれど私は……)
「……さて」
「手を貸すよ。もうとっくに、他人事ではないしね」
 儀式に携わるのはハーモニアだけではない。アリシス・シーアルジア(p3p000397)マルク・シリング(p3p001309)といった、魔術に覚えのある者達も、また同様に魔力を注ぐ。
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は、仮にハーモニア達が戸惑っていたならば、背を押すなり、あるいは自身がトリガーを引こうと思っていたが、覚悟を決めているなら口を出すのも野暮であろう。
 ――神がそれを望まれる。
「術式を重ねます」
「あたしも手伝うよ」
 更にウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)フラン・ヴィラネル(p3p006816)が詠唱を重ね、辺りの大気が徐々に熱を帯び始めた
「……仕方ないものね」
「……ええ」
 アルメリア・イーグルトン(p3p006810)に続いて、そしてアリア・テリア(p3p007129)の目配せに頷いたオデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)もまた同様に。
「良い感じじゃ」
「一気に燃やしましょう」
 アカツキ・アマギ(p3p008034)が立体積層魔方陣と朱雀の加護との間に、魔術的パスを繋ぎ、エルシア・クレンオータ(p3p008209)も魔力を込める。二人の表情は、なぜか周囲と温度差があるが、それはさておき。

 魔方陣が光り輝き、炎が一気に膨れ上がった。
 そして――羽ばたき。

 感嘆の声は、どこか悲鳴にも似て、ひどく重く――

 焔王フェニックスが、ついに顕現する。
 灼熱を受けた大気が陽炎のように揺らぎ、宙空を二度ほど旋回した焔王はひと鳴きすると舞い上がった。
 同時に、杖が戴く宝玉の表面にぴしりと小さなヒビが走る。
 熱波を受けた周囲の木々が燃え上がりはじめた。
 ハーモニア達の嗚咽が聞こえている。
 ファルカウを覆う吹雪の檻へ炎を放つというのは、ファルカウへ火を向けるということ。
 とはいえ大霊樹が燃え尽きるなどあり得ず、ハーモニア達の心境はともかく、それだけならば言ってしまえば『罰当たり』程度のことであるとも言える。だが多少なりとも傷つくことはあり得るし、何よりも周辺の木々を軒並みに焼き尽くすことは覚悟せねばならない。
 ファルカウ周辺の木々もまた、ハーモニア達にとって一本一本がなじみ深く、よく手入れされたものだ。幼い頃に登ってしまったハーモニアも居るだろう。木の名前を知る者も居るだろう。
 犠牲はあくまで最小にしているが、けれど気持ちの問題は理屈で片付けられるものではない。

 ――フェニックスが飛び立つ。
 木々の枝や葉が炎に覆われていく。
 吹雪の檻が、氷と炎の精霊力が衝突し、目を覆わんばかりの光があふれ出した。
 フェニックスには、そこで止まってもらう。
 光が止むと、そこにはファルカウへ向かう巨大なゲートが出来ていた。

 木々が燃え尽きたあと、ファルカウへ至る灰の絨毯の向こうに人影が見えた。
 ぱちぱちと手を叩きながら現れたのは――誰かが息を飲む。
「やあ、これはありがたい。やっと出られたからねえ。いやーこれはねえ、本当に助かったよ」
 それは『叡智の記録者』ニュース・ゲツクであった。


 ※フェニックスを召喚し、ファルカウを覆う吹雪の檻を穿ちました。
 ※ファルカウへ至る『灰の絨毯』が敷かれ、進撃の準備が整いました!
 ※鉄帝国の方では祝賀会が開催されることとなりました。


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