PandoraPartyProject

ギルドスレッド

Country House

【個別】Bitter & Sweet

これはとある少女の、ちょっとした勘違いから生まれたもの

季節は冬
冷たい風が吹くこの季節でも街中は人々で溢れ活気づいている
よく見ればなにやらプレゼントを贈り合っている様子であり…

「貴方に幸福を。灰色の王冠を」

今日はグラオ・クローネの日
家族、親友、恋人、仲間……
大切な人に贈り物をして、その絆を形にしようという日である

人々がそれぞれの幸せを紡ぐ中、俯きつつ走り出す少女が一人
少女が落としたものを手に取り、後を追う青年
これはそんな二人の、その後の一幕

■<グラオ・クローネ2020>飴色ベリル
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/2749
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何も考えたくない
何も思い出したくない
ただただ走ることに集中して
一心不乱になろうとするもあの光景は呪いのように容赦なく思い出され
自身の心に襲いかかってくる
浮かんでは来る映像を振り払おうと顔を左右にふるふるさせると
遠くから人々の賑やかな声や音楽が聞こえてきた
足を止める
どうやら遊園地があるようである
中に入って少し歩こうか、気も紛れるかもしれない
そういえば、零くんと一緒に遊園地に行って遊んだことが……
不意にまた締め付けられる胸
だめ……、思い出しちゃう……
移動しよう……人も多いし、楽しい場所にこんな泣き顔を持ち込んではいけない……
再び走り出す
どれほどの場所を移動し続けただろうか
土の道、石畳の道、雑草の生えた道、
走り出した足は既にくたびれた徒歩に変わり
様々な道を歩いた
とにかく気を紛らわしたい……しかしもう疲れた
少し、顔を上げる。空のオレンジ色が視界に入る
どうりで暗いと思った。もう夕方だったんだ……
周りを見渡すと公園らしい広場が見えた
何かに惹かれるように突き進むと小高い丘の上に見事な大樹
この公園のシンボルツリーだろうか
大樹の前に立つ
零くんと樹の下でいつも話してたなぁ……
思い出される記憶にまた胸が締め付けられる
どこにいっても思い出されるのは零くんのことばかり
また涙が溢れる
でも周りには人もいない、ここなら何も気にせず泣けるだろうか
大樹にそっと触れ話しかける
少し……いいかな?
大樹は一言も返してこない
走る
走る
走る
青空の中走り続ける

分からないことは多い
彼女が駆けだす瞬間を見た
その際に、何かを落としていて…取ってみればどう見ても自分宛てのチョコが落ちていた、「零君へ」、と書いてあったのだ。
…少なくともアニーの知り合いに俺以外の「零」は…居ない、筈だ、…多分。

ともかく彼女の元へ行く
今はそれが大事な事だ

普段は閉じていた糸目も開いてただ我武者羅に
彼女が走ったであろう方向へまずは駆ける
この時ばかりは混沌肯定に助けられる
本来の俺ならここまで速く走り続ける事は出来ないはずだから

…ただ、走りながらも考えないといけないことが有る
なぜ彼女が走り去ったか。

何故だ…?
いや、おかしなことはしてないはずだ。
強いてあの時あったことといえば…そう、…良く店に来てくれる女の子に偶然出会ってチョコを貰ってたぐらいで……。
…………待ち合わせしてた時に他の子から貰うのはまずかったりする…のか………?
駄目だ経験がなさすぎて答えがわからん………いや、待て…貰ってるのを見て思わず逃げるってなんか……なんかその反応は………
……之以上は考えても机上の空論だ、何より「俺の方から離れる様に走っていった」、それだけは確かな事実だ。
なら早く……早く見つけないと、日付が変わる前に、出来うるなら早急に……!!
―――走り続けた、しかし駄目だった、見つからない、あまりにも見つからない

時間はとうに夕を超え、空はオレンジ夕方なのだ

体中から汗が落ち、息も絶え絶えとなっていた

あのダンスパーティーの有った日を思わず思い出す。
…あの青い月に照らされた日は、目的地が定まっていた
故に行くのがいかに困難でもたどり着けることは出来たのだ、だが……

「何処だ……何処に居るんだ……?」

あの後、ただ我武者羅に動いては見つからないだろうと色んな場所を走り探した
もしかしたらすでに帰ってるかもしれないと思いアニーの家まで行ったり
今までアニーと一緒に行った想い出の場所も、それ以外の場所だって巡り巡って走り続けた

その結果がこのざまだ
結局俺は何も出来ずに終わるのだろうか……

途方に暮れそうな思考に、喝を入れる

―――いや、まだ、まだだ。日は変わっていない、何も終わってない
彼女が走り出す原因、それは間違いなく俺にあるのだ
ならせめて此れだけでも返さないといけない、拾って手に入れて良い物じゃないのだ、このチョコは…!

故に糸目の…三白眼の青年は再度動き出す、きっと、きっとどこかにアニーはいるんだから…!
大樹に寄りかかる
しばらくここに居させてね……
相変わらず大樹は無言のままだ

私、零くんのことよく知っているつもりで実はまったく全然知らなくて、
わかってもいなかったんだなぁ……
零くんは好きな子がいたんだ……
私が誰かを…零くんを好きになったように、零くんだって誰かを好きになることだってあるのに
今日はチョコを渡して、想いを伝えてみようかな…なんて
私は今までずっと一人で浮かれていたんだね……
このチョコ……あれ?(ケープの内ポケットに入れたと思っていたチョコがないことに気づく)
……ない?(服のあちこちを探すがやはりどこにもない)
……落としたのかな?一体どこに……でも、もう必要のないものだからいいか……
走る、走る、夕暮れ時を
君の姿を目でも探す
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「……ハァ…ハァ・・・グッ…!」

それでも、君は見つからない
幾ら身体能力が向上していようと体力だって無限じゃないし、目が良くなったわけではない
このままじゃジリ貧だ
探し方が悪いのかもしれない、だが、家の方にはいない…そんな気がする、ただの勘だ
だがどのみち、今は駆けまわるしか道も無い。やるしかない

……思えば不思議なものだ、こんなにも、ただ一人が為に走ってる今のこの状況。
…こんなにも、特定の誰かに会いたいだなんて思えたことが有っただろうか、俺の人生の中で。
少なくとも混沌に来たばかりは想像すらしてなかった。
人生は思った通りに進む事は無いし、想定外は常々起こる。
……そう、今日のこの状況もまた想定外だ。
…だが、それでもだ、せめて今日、一目、会うまでは…立ち止まる訳にはいかない
今日渡さなくちゃいけない物も有るし、なにより…君に会いたいのだから…!
はぁ……と溜息一つ

たしか、溜息つくと幸せが逃げるって聞いたことが……
もう逃げる幸せなんてないよ
一人浮かれていたままのほうがまだ幸せだったかな……
走る、走る、懸命に
ただ君に、会うがために……!!
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走り続けて未だ、君の姿は捉えられない。
荒れる息を整えるように一度立ち止まり考える、アニーの事で頭がいっぱいになって仕方ないが、このままじゃホントに見つからない。
今の俺に出来る最大限は…走って探す、目で追って探す、これぐらいが限度……いや、まだ、まだ…陽は沈み切ってないし日付も変わってない……!

首にかけてたゴーグルをつける、普段は戦闘にしか使いようもない奴だが、今は情報がいくらでも欲しい。
やれるだけのことはやろう。
目に映る情報量は多くて目が回りそうだが知ったこと。
嘆いてたって始まらない、探さなくちゃ見つからない……それだけは確かな事なのだから。
片思いって、こんなに辛かったんだね……
でもそれも終わり……
懸命に只管に、一人の男が走り続け―――
72
くそ………駄目だ、これじゃだめだ。
……どうする…?どうすれば見つかる?アニーを見つけるには俺に何が足りない…?
俺に出来る事にも限度はある
俺は戦えないし手先も器用とは言い難い、料理だって練習してようやっとなんだ、得意な事はパンを出す事、それだけだ、何もない俺にギフトが有ってギリギリ生き延びれてるだけで……
やっぱり俺じゃダメなのか……?
必要な時に何もできないんじゃ、本当に俺は………どうしようもない…!
考えれば考える程に気が滅入る、駄目が過ぎて辛すぎる。

…でもあの時走り去ったアニーが今何処に居ようと、外に居るなら絶対寒い、そろそろ夜になりかねない………せめて今いる場所が分かれば……
今頃二人はきっと……
(零とあの女の子が幸せそうに寄り添う姿を想像してしまう)
考えたくない……でも、それが現実なんだ
どうしたらいいのだろう
私は…零くんのことを忘れなくちゃいけないのかな
零くんを好きなら、零くんの幸せを願うべきなんだよね……
でも……でも……
…………
…………
………どうするか、決めよう……
(ゆっくりとしゃがみ、地面に手を当てギフトを発動させる
地中にはきっと何かの花の種があるはず
それをギフトの力で開花させ、花占いをするのだ)
………………
………………あっ……
(地面から現れたのは季節外れのたんぽぽの綿毛
だが花占いをするまでもなく
綿毛はふわふわと冬の冷たい風にのって飛んでいってしまった)
走る、走る、走り続けたその先に―――
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……たんぽぽ……?
(ゴーグルをつけてたのと、目を開いてたことが良かったのだろうか、偶然にも飛んでるのを目撃した…だがこの時期に綿毛が飛ぶものだろうか…?いくら混沌とはいえ―――いや、まて、この手の自然現象とは違う現象、俺はそれを知っている。)
…「自然に干渉する」……いや、まさか…アニーも確か持っていたはずだ、そんな「ギフト」…!!
(すぐさま、装着していたサイバーゴーグルで現在の風の方向、風速、それで大体の方角をさだめ、全力で走る、違う人物の可能性もあるが知ったこと、今一番可能性があるのはこの方角だ―――!)

―――故に彼は走る、先ほど以上に迷いなく、一直線に

そうして、あてもなくさまよい続け間もなく日没、となるほぼギリギリのタイミングで、彼は―――
…ぁ…………アニー……!!
(―――彼女を、ようやく見つけた)
名前を呼ばれた気がして体が震えた
気のせい?
その声は、とても聞き覚えのある声だった

綿毛が飛んでいった方角を向けばそこには夕暮れに染まる影がひとつ
暗くてもそのシルエットが誰なのかはよくわかる
それは、今一番会いたくて、今一番会いたくない人

まさか、そんなはずは……

動揺と共に焦りが生じ、彼に背を背けてしまう
だって、どんな顔したらいいかわからない
できることなら今すぐ逃げ出したいが、足が竦んでゆうことをきかない
(夕暮れなのだ、暗くて本来なら誰と分からなかったかもしれないけれど…彼女の白い髪は暗い時ほどよく見える)
……。
(見えた彼女は背を向けている、気づかず偶然背を向けたのか…気づいたからこそ背けたのか。それはわからない)

此処に居たんだな、アニー。…用があったから、ちょっと探してたよ。

(それでも、躊躇わずに彼女に近づきながら声をかける…避けられてるにしたって話しかけなきゃ始まらない。……最低限、このチョコは一旦アニーへ返さないといけないのだ、これを拾って懐にしまう訳には行かない。)
(なぜ零くんがここへ……?
探してた…?用があるって…?
彼が一歩一歩近づく度に緊張が増し胸が痛くなる
今のこの感情は悟られたくない……無理にでも平然を装おう
何か言葉を返さなければ……でも、どう取り繕えば……?)

あ……ご、ごめんね…急に!
取り込み中みたいだったから……その、うん……

(言葉が続かなくて苦しい
やっぱり零くんの顔は見れない……)
(何故だろう、気づいてはくれたようだがやっぱり此方を見てくれない……)
いや、こうして見つけれてるわけだし問題は無いが…取り込み中?
(開いていた三白眼を閉じながら、一瞬思考を遡る)
…あ。
(思い当たる節は一つある)
そういや、うちのパン屋の馴染みのお客さんと偶然会ってチョコを貰ったりはしたが…もしかしてその時の様子を見てた感じか…?
(いや、しかしそれで居なくなるのも…何か誤解が混じってたりするのだろうか…?
 分からない…もしや、俺何か困らせて……なんだかアニーの調子も悪そうだし…)
(思考の迷路をぐるぐるぐるぐる、巡りながら考える…けどやっぱり答えは出ない…)
(ああ……あの子は馴染みのお客さんだったのね…
可愛らしい子だったし、よく買いに来る度にあの笑顔を見せられたら
零くんだって好きになっちゃうよね…
そしてやっぱり…渡していたものはチョコだったんだ。
ということはあの子も零くんのことを…)
う、うん!可愛い子だったね!
(言葉だけでも明るく振る舞う
話題を変えよう…惚気話でもきたら、たぶん今の私には耐えられない
こうやって私はまた現実から目をそらし続けてしまうんだ…)
そういえば、用があるって……?
やっぱその時の様子を見てたのか。
確かに友…いや義理…馴染みチョコ…?とはいえ、人が貰ってる時に入るのは難しそうだもんなぁ…。(残念ながら元居た世界では家族チョコオンリーで、混沌ですら数える程しか友チョコもらっていないのだ、その辺に詳しくないのは仕方ない事なんだ…!!!…というかあれは何ちょこっていえば良いんだ……??)
……?あ、あぁ、確かに可愛い子だろうけど…
(なんかアニー無理をしてる様な…?もしかして俺なんか変なこと言った!?)
―――っとそうだった、アニー、これ…落としてたろ?
(そう言って取り出してみせたのは、小さなプレゼントボックス。
リボンの間には「零くんへ」と書かれているカードが挟まれていて)
……俺宛なのだろうとは、勝手に思ってはいたが………流石に無暗に中を見る訳にも開ける訳にもいかなかったからな。…それに、君に今日中に一度返すべきものだろうと思ってよ。
(………………。
……友チョコ義理チョコ馴染みチョコ?
しっかりとラッピングされた大きめのあのハート型ボックスが何を意味しているのかわからないの?零くんは鈍感なの?私も私で思い出したくもない光景をどうしてハッキリと鮮明に記憶してしまっているんだろう…)

そ、そう…貰えてよかったね!可愛らしい子から貰えるなんて、
零くんもなかなか隅に置けないねっ
(段々と暗い思考になっていくのが自分でもわかる
しかしここはなんとか乗り切ろう…)

……?落とした…?
(なんのことだろう?
表情を見られないように俯きながらゆっくりと振り向く
そして彼が手にしたものが視界に入った途端、目眩がした)
(なぜあれが…よりにもよって零くんの手に…
これを私に返すために…?なぜ…?
そっか…これは零くんが貰ってはいけないもの
貰ったら、あの子に誤解されるかもしれないから
私が作ったこのチョコは、零くんにとっても、あの子にとっても、呪いの品でしかないのだ
ここまでして私に手渡そうとするなんて、零くんはあの子のことが本当に大事なんだね
私が入り込む余地なんて欠片もないんだ……
自分が作り出してしまった呪いのチョコは自分が責任を持って回収しよう
これは私が現実から目をそらし続けた末に得た結果なのだ)

あ……ま、まさか零くんが持っていたなんてね…びっくりしちゃった…!
私を探すのきっと大変だったよね…届けてくれてありがとうね…
(俯いたままそっと受け取り自分の懐に入れ、また背中を向ける)
(とても苦しい。何かとてつもなく大きなものに押しつぶされそうな感覚
大樹に手を付き体を支えているのがやっとだ…)
零くん…もう、一人にさせてくれないかな……
好きな食べ物が貰えたのはそりゃ嬉しいが…隅に置けないって…
(まるでモテてるみたいな言い方になってるな…)
あれが本命って訳じゃあるまいし、そんなじゃねぇさ。
それに、万が一仮に本命だったとしても、あの馴染みのお客さんに対しては断りの返事とかしないといけないしな…。
(アニーが好きな訳なので他の人には断りの返事を送るのは必然な訳だが、実際にするときは中々勇気がいりそうだ。)
いやまぁ、チョコ渡されはしたけど…好きがどうとか言われたわけじゃないし、そんな事考える事自体全くの杞憂とは思うがな…。
(…………そもそも本命の基準ってなんなんだ…?…皆何を基準に判別してるんだ……?)

俺も正直落ちてたのにはびっくりしたけど、無事に渡せて何よりだ。
ん?いや、気にする事は無いぜ。
…正直中身が気になってしょうがなかったけど、バレ…(ンタインじゃねぇな…)…グラオ・クローネのチョコを受け取らずに勝手に食うのは、なんかこうルールに反してそうな気もしたし、どうせなら君からちゃんと貰った上で食べてみたかったからな。 それに、見つけるのはそこまで大変じゃぁなかったし。
(実際大変だったのは確かだが、其処はわざわざ言わずとも良いだろう。…会えたお陰で正直気力はある程度持ち直したし。)
………。
(…あれ、懐に消え……というか背中を向け……‥貰える前提で言ったのがまずかったかな……?―――!?)
………ぇ、あ、えと………、ひ、一人になりたい気分の時に来てしまったんなら俺が悪かった……けど、
…アニー…もしかして体調悪かったりしてないよな…?…も、もしそうだとしたら、ここじゃ体冷えるかもしれねぇし移動しないとだが……
(想像してない言葉だった故か、思わず顔が青くなって声が震えてしまう)
(先ほども様子がおかしいとは思っていたが、もしや今さっきの言い方が駄目だったのだろうか、それとも実はもっとひどい事を事前に俺がしでかしていたのか、いやそもそもアニーの体調がほんとにまずい状態なのか――待て、待て、落ち着け俺落ち着け今慌てたらまずい…落ち着け……!!!)
(好きかどうとか言われたわけじゃない、か……
あの子は私みたいにまだ言えないでいるんだ
だから言葉の代わりに好きの思いをチョコに込めて零くんに贈ったんだよ…
零くんはあの子の気持ちに気づいていないんだね
…そういえば、断りの返事をしないといけないって、どういうこと?
零くんはあの子のことが好きなんじゃなかったの?
自分の気持ちにすら気づいていないとか?
本命ってわけじゃあるまいしって…なぜ否定しようとするの
もしかして他に…)

零くんは…好きな人がいるの…?

(そうでなきゃわざわざ私にチョコを返しに来たりなんてしない。
返した上でまた受け取ろうとするのは作った人に対する零くんなりの優しさなのだろう。
だからあの子のチョコも受け取ったのだ。
既に答えはわかっているのにこんな言葉を投げかけてしまった私は本当に愚かだ。
もう何の意味もなくなってしまった自分のチョコ。
まだ受け取って貰える人がいるだけでもありがたいことなのだろう。)

そういえば零くん、甘いものには目がなかったものね!
小腹が空いた時にでも…おやつ代わりにでもしてね…。

(懐からチョコを取り出し、後ろ向きのまま零くんへそっと差し出そうとした。
不自然と思われるかもしれないがやっぱり顔を向けられない。
できれば笑顔で終わりにしたかったが、できそうにない)

体調は、なんともないよ。心配しないでね。
ただ足がね…動かないだけだから。
でもね、もう、これでいいんだ。
ぇ・・・―――

(思わず声が漏れる、『好きな人が居るか』、その問の答えは「はい」だ。
………だが待て、待ってほしい、ここで「はい」だけ答えると…別の人が好きと思われないか?
それは一番まずい展開だ、俺は説明が下手だから誤解されたら解ける自信がない、無いったらない!
というか、ここでアニーを好きと言った場合受け入れられる可能性があるのか?無い可能性も大いにあるぞ?友人としての好きなら俺なりに自信はあれどアニーが俺に対して恋愛感情を持ってるかどうかは正直自信がないぞ???女心を読み解く力が何でギフトに無いんだろういやパン以外のギフトは積むからこれがベストなんだろうけど今それは関係ないだろバカ野郎……!!そもそも俺が今まで気持ちを言ってこなかったのだっていうならそれ相応の覚悟を持って言わないと思ったり色々考えて…いや、でも……)
(脳内で凄まじい速度でグダグダと言い訳がましく考える、下手な戦闘時よりあっと言う間の1.2秒だった)

―――…っと、だな……。

(―――だがどうせなら、うだうだ考えるより当たって砕ける必要があるのかもしれない。俺は多分一生理由をつけていわずに終わるに違いない、俺はそんな意気地なしの馬鹿野郎だ。なら、之を機ととらえるしか…ない…!)

好、きな人は……い、居るな、…………め……めの…目の前………に……。

(目線はアニーの方を見ながら、震える口をどうにか動かして言う、直接言えないのはほんと情けないが、これでも振り絞ったほうだ。 顔は紅く染まりはすれど、今は照れより、ともかく怖いという感情の方が強い、嫌われたりしないとは思うが今の関係が壊れてしまう事は異様に怖い、疎遠になるとか寂しすぎるというか、そも今言っていい言葉なのか、もっと後が良かったんじゃないかと思考がぐるぐる止まってくれない……!)

お、おぉ、甘い物は好きだからな、美味しいし落ち着くし…
………ありがとう………!!

(渡されたチョコを、心底嬉しそうに受け取る―――けど、やっぱりアニーは後ろ向きのままで正直不自然だ。…顔が見えないのは正直不安でしょうがないが…)

……た、体調が何ともないなら、良いんだが………足が動かない……!?
それほんとに大丈夫なのか……!?

(その説明は正直、大丈夫と思いきれない……!)
(彼の言葉に全身を貫かれたように衝撃が走った。
ついに体を支えきれずゆっくりと地面に膝をつく。)
(…やっぱり…いたんだ…そうだと思った
そっか…目の前に……
……………
……………?
目の前……?
……目の前……零くんの目の前にいるのは…
…ちょっと落ち着こう、体が震えてる。
ここに来た時は私一人で…今は零くんがいて
今現在この場所にいるのは私と零くんの二人で…
じゃぁ、零くんの目の前って……まって、
距離は近いけど零くんが私の方向を向いているとは限らない。日の暮れた遠くの空をみているのかもしれない。
その場合空が好きということになるけどそもそも空は人ではないしよく考えたら目の前でもない。
じゃぁなんだろう、私が今こんな状態だから、零くんは嘘を言って落ち着かせようとしてるのかな。
…………………、
私はどこまでも零くんに心配かけてるんだなぁ……
いいじゃない、別に、トモダチでも。今までもずっとそうしてきたんだもの。
零くんが誰かを好きでも、私との友情はきっと変わらない。
私はこの先も片思いでいるのかもしれないけど…
もうくよくよ考えるのはやめよう。暗い思考は周りにも影響を与えちゃう。
零くんだってこんな私はイヤなはず。
…心の整理がついたのか、なんだか体が軽くなってきたような…
立ち上がろう、うん…!)

そっか…!ふふ、慰めてくれるの?ありがとう…
でももう大丈夫だよ!ほら!

(ゆっくりと立ち上がる。今なら笑顔になれそうな気がする。
くるっと振り向き、ふふん、と笑ってみせた)

もう夕飯時だね。そろそろ帰ろっか、零くん?
………!?

(アニーが膝をついて思わず驚く、え、なんかやっぱ駄目だったかな俺如きが好きになるの駄目だったかな!?  そんな事を想っていれば)



(慰める………???
違う、違うんだそうじゃない、待ってくれ、まさか本気で言ってると思われてないのか!?
それとも実は俺たちのほかに人が……??
辺りをさっと見渡す、誰もいない、アニーと俺だけだ、うん。
うっかりミスで別の人が好きだったと言ってたパターンじゃない奴だ
…………じゃあ此れ絶対伝わってないって奴だよ!!!ドストレートで行けって事だなこれ!!?)

立ち上がれるようになってるのはとても嬉しいし良い事だと思うんだ。
うん、其処は良いんだけど、帰るのはもうちょっとでいいから待って…!

(くるりと振り向いて笑う笑顔は可愛いんだけど、今は見惚れる場合じゃないんだよぉ!)

…「好きな人がめの前」って抽象的にしたのは俺が悪かった。
けど、俺は慰めてるとかそんなことをしてるつもりはないんだ…!

……俺は…ホントに!アニーが、好きなんだよ…………!

(言ってて段々と焦りと照れが凄い事になってきてる、だが待て、今だけはどうか俺よ落ち着いてくれ……!!)(せめてこちらを振り向いたアニーから目を逸らさない様に真正面から伝えるのだ)
え、帰らないの?
うん…待ってるけど…どうしたの?

(こくりと首をかしげる。零の顔や動作を見ればひどく動揺しているように思う。
私、なにかヘンなこと言ったのかな…
自分の発言を思い返してみては考えを巡らせていると彼が言葉を発した。)

………………

(彼の言葉に一瞬時が止まった、かのように感じた。
……あれ?私また動けない?本当に時が止まっちゃったの?
いったい何が起こったの
さっき零くんが……私の聞き間違いかな……
零くんが……す、す……
あ、これは、もしや!私ってば勘違いしてるかも!そ、そそそうよね、うん!
「好き」にもいろいろあるもんね!きっと、トモダチとして…そうなのよね!
はぁ~、うっかりうぬぼれて零くんに勘違い屋さん!って笑われるところだった!)

れ、零くん…!もう、びっくりしっちゃったよ……
それは…えと、と、トモダチとして、ってことなんだよね……?

(おそるおそろる彼の顔を伺うと、いつも穏やかな笑みとは違う眼差しにどきりとした。
零くんの目が……糸目だけど私を掴んで離さない。
いや、私が零くんの目に釘付けにされたのか…うん、それならもう、とっくにだけど。
今の零くんはとても、すごく、真剣なように思える…
もしかして、実は…いやまさか、いやでも…え、もしかして…)

え……あのっ!も、もしかして…違う……?
その……その、もしかして…その…!
(顔が真っ赤だ!!!!!)
(彼女の反応で一瞬、これでも伝わらないのか……!! と思ったが…真っ赤な顔の彼女が見える、もしかしたら伝わってる…のか……?なら、全力で、全力で……!)

……あぁ、と、友達としてじゃねぇ…………

(普段は閉じた糸目も開けば、灰を宿した三白眼、極力開かない糸目だが…凄く、大事なことだから、開いたうえで、有りのままで伝えたい、自然と自身はそう思っていたらしい)

(開いた眼でしっかりと、貴方の瞳をじっと見る、目を逸らさずに、焦ってたっててんぱってたって決して貴方を見逃す事が無いように)

……恋とか、恋愛とか、そーゆう意味での………だ、大好きって事だよ……!!

(しっかり、自分なりに必死に、伝えた―――伝えたのだ)

…………っ

(これもう完全に伝わったよな…。…言っちゃったよ言っちゃったよ伝えちゃったよわ――――――!わ――――!!!好きが溢れすぎてたよ歯止め聞いてなかったな俺そうだよこの後どうしようどうしようまだ何の準備も済んでなかったのに告白しちゃったよそもそもアニーがどう俺の事思ってるのか知らねぇんんだよ両想いとは限らねぇからなうわぁ―――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)

(…なお、言いきった頃には目を逸らさない以外は茹蛸のように真っ赤な上、内心は想像以上にてんぱっていた訳だが)
(これは夢かな???夢にしてはとてもリアル…!
え、夢じゃない?うそ?ほんとう?夢なら夢で諦めがつくけど……夢じゃないんだよね……?
零くんだよ?いつからか、片思いしてた零くんだよ?
その零くんが……言ってるんだよ!?なに私ぼーっと突っ立ってるの!?
だってだって!私なんて言ったらいいかわからない!
うううん、よく考えて、落ち着いて、落ち着けないけどそれでも私が言うこと、ちゃんとあるでしょ…?
それは……)

あ…あり、がとう……うれしい……

(心臓が飛び出そうだ…呼吸ができないくらいに胸も苦しい
こんな時、いつもなら顔を伏せてしまうのだが彼の開いた目がそうさせてくれない。
伏せるなんてダメだよ…まっすぐ見なきゃ…。
まっすぐ零くんを見て、そして、言うの…!)

わ、わたしも、ね……零くん……好き……

(段々と声が小さくなってしまった。肝心な最後の言葉が聞こえなかったかもしれないじゃない!
ちゃんと、相手に、伝わる、声で!もう一度…!)

私…!いつからか、いつの間にか!…零くんに恋してました!

私もね…零くん……大好きなんですっ…!

(カタカタと肩が震える。頭が真っ白だ……)
(聞こえた言葉に、二度も、聴こえた言葉に、彼女の言葉に一瞬思考が止まる、見開いた眼でフリーズする)

―――、……ッ!!!!!!!

(そして、一呼吸の間で止まった思考が動く)
(え、え、まっ……ほんと…本当に……ゆめ、夢じゃないよな…?いや、そうじゃないことはもうわかってる、分かってるからつまりこれは・・・現実で……、え、俺、と、アニーが…え、両想いって事に……なるのか?なるんだよな…!?
嬉しくて、嬉しくて、心臓の鼓動が鳴りやまず、彼女から目が離せないし、逸らせない。)

お、おれも…俺も!

(震える彼女の側に無意識に、思わず近づきながら)

君にずっと、恋をしてて!
…凄く、凄く……アニーが!大好きで!
だから、今凄く…………君も好きだと言ってくれたのが、凄く…嬉しい……っ!

(目尻に涙がこぼれそう、今にも気絶しそうな気分、それでもすごく、とても、君が俺を好きでいてくれることが嬉しくて、思わず感極まって、彼女をぎゅっと抱きしめにいってしまう。)
(いつの間にか目にいっぱい溜まった涙。視界がぼやけ、零くんの姿がぐんにゃりと歪む。
……零くんが…ハッキリ見えない。探すように求めるように手を前に出す。
ぼんやりだが零くんが近づいてくるのがわかる。
どうかこの溢れる涙ごと、私を受け止めてほしい。
少しふらついた一歩を踏み出し、彼の胸へと飛び込んだ。)

零くん……

(胸が苦しいほどに心臓の鼓動が激しい…。嬉しくても苦しく感じるものなんだね。
このドキドキ、いつもは悟られないようにしていたけど、
今は、波打つ鼓動も、体温も、なにもかも、全て伝わってほしい)
(飛び込むアニーを優しく、それで居て力強くぎゅっと抱きしめる
…抱きしめた時に見えたのは、涙一杯の彼女の姿、自分の目尻に貯まる涙は、少し視界がぼやけるぐらいの量だったからどうにか見えた。人は嬉しい時にもやっぱり、泣くものなんだろうか…今の自分のように)

アニー……。

(大好きな君の名を呼ぶたびに、抱きしめる今もどんどん、痛いほどに心臓の鼓動が激しく鳴る、体中が火照るように熱くて仕方ない。 それでも大好きなアニーの熱がとても…心地よい。思わず笑みが零れそうだ。自分の音に混ざって分かりづらいが……アニーの鼓動も聴こえる…ような気がする。
……俺の熱もこの五月蠅いほどに鳴る心臓の鼓動も、伝わっているんだろうか)
(温かい胸が私の全てを受け止めてくれてるように感じる
背中に回された零くんの腕はとても力強くて心もぎゅっとしてくれてるようで…)

………………

(言葉がでないや……
胸に顔をうずめながら小さく肩を震わせ
涙は留まることを知らず静かに溢れ続ける。
………こういう時、なんて言ったらいいのかな。
今まで抱いてきた想いは「好き」の一言で全部言い切ったように思う。
でも、繰り返しになってもいいから、私なりの好きをいっぱい伝えたい)

もう、ずっと、ずぅーっと…このままでいたい…
……いてもいい…?いいんだよね…?
もう、ずぅーっと、零くんの傍にいてもいいんだよね…?
………
(好きな人を…両想いになった大好きな人が腕の中に、傍に居るその嬉しさを、喜びをただ噛みしめる。
抱き締め続けている今も嬉しくて仕方ない。
…こんなに幸せで良いのかな…。)

……勿論、いいに決まってる。
俺もアニーに…ずっと傍に居て欲しいし…それに、離したくないから………。

(口から零れるは思いの丈、熱い熱が体に籠り続けて、好きの気持ちが止まらない。
……出来うるならもう暫く、抱きしめ続けていたいのが正直な所だ。)
「よかったね」

どこからともなく聞こえた声にぴくりとした。
声の正体は、先程からずっと二人を見守っていた大樹。
ありがとう……。帰る際、大樹に微笑みお礼を言う。
零くんにはなんだろう?って思われたかな?
ぼふん――――――と、ベッドへ倒れ込むようにダイブ!
今日はとても長くて短い一日だったように思う
ぼーっとしていれば不意に浮かび上がる零くんの姿
そして思い出される告白の言葉、温もり、鼓動

わぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~っっっっ

枕に顔を埋めぐりぐり
思い出せば出すほど嬉しさと恥ずかしさが込み上げごちゃまぜになって何とも言えない気持ちに…!!!
……零くんも家についたかな…何してるかな…零くん……私の好きな人
零くんも私を……嬉しい……本当なんだよね、零くん?私未だに信じられないよ…
……あ!それより!!!私ヘンなこと言ってなかったかな???あの時は頭が真っ白だったから…
それにいっぱい涙流してたみたいで、零くんの服がぐっしょりに……
零くん引いちゃったかな!わぁわぁどうしよう~~~~っっっ
しばらく一人で悶絶するのであった
――――未だに胸の高鳴りが収まらぬままに家に帰れば、ライムたちが出迎えてくれた
…全員首を傾げてたらしいがどうしたどうしたと思って鏡を見たら…凄く口元が緩むが抑えられてなかった

思わず鏡の前から一気にしゃがみこんで顔を覆う

あー――――!!!!!!!!!!!
あー―!!!!!!!!
言っちゃった言っちゃった好きって言っちゃったよしかもその上両想い!?
え、こんなことある!?
俺明日死ぬの!?
……アニー俺が好きって…大好きって…恋してたって……あ”ー―――――――!!!!!!!!!

叫んでたらライムたちがこちらに来て不思議そうだ
取り敢えずライムをぎゅっと抱きかかえつつちょっと場所を移動する

いやもうびっくりだよ好きな人が、ほら、あの子、凄く可愛いあの子、お互いに好き同士だったんだよやべぇよ之…
もうほんとヤバい凄く嬉しい……え、待って明日からどんな風に会えばいいんだ?
もう無理だよ気持ちに蓋閉めるの無理だよ之会った瞬間に好きって言っちゃいそうで怖いんだが…!!!
……もう抱きしめてる最中のアニーの涙も全然気にならないわ…あれつまり泣く程嬉しいって事だよな無理だよもう大好き…ウゥ…

正直もうすでに寂しい……よし、寝よう!早く寝よう!
寝ないと頭おかしくなる……!!

ライムを抱えつつ布団を敷いて、その辺りでまた布団の上でゴロゴロゴロゴロ悶絶しちゃう

(……‥…あれ、そういえば付き合うとかその辺の話全くしてないな!?)

そしてゴロゴロしてる最中にそんな事実にふと気づいたのは此処だけの話だ
   ―――Bitter & Sweet―――

     ―――end―――

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