シナリオ詳細
<フイユモールの終>いのちよ、竜に届いているか
オープニング
●
思うに、この覇竜領域という地は、だいぶ以前から、道を踏み違えていたのだ。
魔種『ごとき』を受け入れ、亜竜種なる『混ざりもの』を受け入れ、竜とその眷属以外のものを『受け入れてやった』事が、そもそもの間違いだった。
それは竜の偉大な成る慈悲に違いない。頂点種たる竜は、時に下々のものに慈悲を与えることもあっただろう。
だが、度を過ぎていた。
冠位魔種如きにこびへつらうように従う、バシレウスの誇りも捨てた六匹のゴミどもも!
その冠位魔種の空腹如きに、悲喜こもごもに慌てだす間抜けどもも!
亜竜種などという木っ端の羽虫どもに、過剰な感情移入を図ったちり芥どもも!
すべて! すべて! 過ちであった!
竜とは、超然であるべきであった。すべての頂点であるべきであった。
頂点であるがゆえにすべてを恣にし、その命すらも管理する! 竜とはあるがままに竜であり、足元のアリなど慈しむべきではない!
そのような、堕落した今の竜どもが作り上げた『積み木細工(ヘスペリデス)』は、まさにその醜悪さの具現であった。人の物まねをした吐き気を催すような積み木細工。それが、そのいらぬ知恵を埋め込んだ冠位魔種の空腹に飲まれていることは、愚かさゆえの笑いがこみあげてくるというものだが、しかし間の抜けた竜どもは、それを何とかせんと右往左往している。
『愚かしい』
ザビアボロスは、そうつぶやく。
『愚かしい。そして忌々しい! 我と同じ竜を名乗りながら、なぜこうも愚かでいられる!』
我らこそは頂点である。我らはこそは王である。竜。その気高き誇り高き名を、彼らは穢し、汚し、堕落させた。
『もはや一刻の猶予もない。今この場、この機こそが唯一』
ザビアボロスは、その体の周りに、怨毒をまとい、まき散らした。ヘスペリデスの大地が、まるで溶けるようにぐずぐずと崩れていった。
『すべてを洗い流す。そのうえで、真なる竜の地を作り上げる。
我の毒を以って! この覇龍の地は、真なる竜の地へと新生するのだ!』
それは、極まりし傲慢の具現。
だが、それを為すほどの力を、確かに彼は持ち合わせていた。
●
己が毒を以って、すべてを洗い流す。
ヘスペリデスも。ピュニシオンも。フリアノン等、亜竜種たちの住まう地も。
およそ覇竜領域のすべてを洗い流し、真に竜の住まう神聖な地とする――。
「正気ですか」
水天宮 妙見子(p3p010644)はいう。
「正気でそんなこと言ってるんですか、先代は」
「まぁ、正気だろうね。それくらい傲慢で、それくらい強い竜だ」
レグルス・ムラデンが頷いた。
バシレウス・ザビーネの語るところによれば、先代の目的とは、もはや自分の理想にそぐわぬこの地のリセットであると思われる。
「もとより、頂点種たる竜以外、認めぬ方でした」
ザビーネはいう。
「それほどの傲慢さを、あの死神は持ち合わせていたのです。
私も人のことは言えませんが……」
「今は違うんでしょ?」
ソア(p3p007025)が言う。
「ボクの名前も、ちゃんと覚えてくれた。人が、一人一人が価値ある生命だって認めてくれている――」
「正直、まだ怖いけど」
レグルス・ストイシャが頷いた。
「レイとかは平気。あと、セレマもギリ」
「そっか」
零・K・メルヴィル(p3p000277)がほほ笑んだ。つなごうとした絆は、確かに、縁を結ぼうとしているのだ。
「ボクはぎりぎりって言われたんだが?」
セレマは、その美しい顔をわずかに崩してから、鼻を鳴らした。
「まぁ、いい。それで、ザビアボロスはどこにいるのか、わかったのか?」
「ヘスペリデスの東端に位置しています」
ザビーネが言う。
「おそらく、そこからヘスペリデス全域を、洗い流すつもりでしょう」
「可能かどうかはさておいて、ベルゼーの戦場に向かった仲間たちに悪影響を及ぼしかねないのは不安ですね」
新田 寛治(p3p005073)が言う。
「それに、この地ではほかの仲間たちも大規模な戦闘を繰り広げています。それに影響を及ぼす可能性は否定できません。
やはり、我々でザビアボロスを封じ、彼の野望を食い止めねばなりません」
「ニッタの言う通り」
ストイシャが言った。
「だから、皆の力を借りたい」
「具体的には、どうするんだ?」
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)が声を上げる。
「確かに、ムラデンもストイシャも、ザビーネも強力な援軍だ。けれど、其れだけで勝てる相手だとは、どうしても思えない」
「その通りです。ザビアボロスは、強烈な怨毒を持つ一族。彼の持つ力は、私のそれ等は児戯に等しいほどといってもいい」
「お前以上、なのかよ」
アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が頭をかいた。
「参ったね。俺はまだ、お前をこえてもいないのに」
「そう簡単におひいさまをこえられても困るんだけど?」
ムラデンが口を尖らせた。
「ま、いいや。とにかく、前も言っただろう? おひいさまの毒は、ザビアボロスと同じ属性を持つ。
つまり、ぶつければ、無毒化というか、対消滅というか。無力化できる。さらに、ザビアボロスの力をある程度弱まらせることもできるんだ」
「――ただし、そこまでです」
ザビーネが言う。
「私の力を使えば、その毒を無毒化できるでしょう。ザビアボロスの力を、弱まらせることもできるでしょう。
ですが、私の力では、そこか限界なのです。それにすべての力を割くため、私はその段階で一切の行動をとれません」
「それに、私と弟(ムラデン)は、おねえさまのサポートに入るの」
ストイシャが言った。
「僕と妹(ストイシャ)は、相反する属性の力だ。これを使って、ザビアボロスを押さえつける。もちろん、それで完全にザビアボロスを抑えられるわけじゃないけどね。ただ、ここでようやく、攻撃できる芽が出てくる。
でも、『僕たちじゃ、そこまでだ』」
「つまり、三人の竜の力を以って、ようやく同じ土俵に引きずりおろせる、でありますか」
ムサシ・セルブライト(p3p010126)が言う。
「だからこそ、あなた達は、直接的な反逆を起こせなかった。膠着状態になったら、地力のあるザビアボロスの方が上でありますから」
「だから僕は、君たちを――イレギュラーを必要としていたんだ、ムサシ」
ムラデンが言う。
「お姉さまを助けたかった。でも、私たちだけじゃだめ。
あなたたちは、竜を何とかしたい。でも、あなたたちだけでも無理」
「ま、使えるかどうかは試させてもらったけどね。君たちは充分頼りになる。そう判断できた」
「それは光栄だね」
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)が言った。
「えっと、状況を確認するね。まず、きみたちが、ザビアボロスの力を抑える。
そのタイミングで、オイラたちが、ザビアボロスに直接攻撃を仕掛ける……。
でも、無防備な君たちを、敵が無視してるとも思えないよね?」
「動けるメンバーに援軍を頼もう」
零がいった。
「攻撃するにも、今ここにいるメンバーだけじゃ足りないからな」
「ああ。俺の仲間たちにも声をかけてみる」
アルヴァが言う。ザビーネが、静かに視線を向けた。
「アルヴァ。奇妙な言い方ですが、感謝を」
そういう。
「……今ようやく、理解できました。これがきっと、信頼というのでしょう。
あなたのその、蒼穹のような心に、私の願いを託しましょう」
「……なんか急にそういわれると困るんだが」
アルヴァが頭をかいた。
「とにかく、利害は一致してるんだ。やるさ。全力でな」
「あとは」
ザビーネが、静かにイルミナ・ガードルーン(p3p001475)を見やった。その手には、ザビアボロスを殺すためだけの毒が握られている。
「……答えは出ないッス」
そう言った。
「わからないッスよ……ハンクさんや、エレナさんなら、こんなときなんて言ってくれたんでしょう。
『俺たちの仇をとってくれ』?
『あなたの意思を尊重する』?
『命を救える道を選んで』?
どれもいいそうで、どれもイルミナの願望が混ざっているような気がして。
なんて、言ってくれたのか」
「……冷たい言い方をするが」
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が、声をかけた。
「死者は、何も語らん。特にこの世界ではな。
死者の意思は、結局、自分たちが勝手に納得するしかないのだ。
だから、『死んだ彼らはこう思っているよ』などと傲慢なことは言えん。
だから、私は一番厳しいことしか言えない。
『自分で考え、自分を由とし、自分で決めろ』。
……私たちは、御主の意思を尊重する。それだけは約束しよう」
「時間がない」
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が、言った。
「行こう。戦いのうちで、考えてくれ」
冷たいような言い方だが、しかしそうするしかなかったことも事実だった。もう、時間はない。悩む時間は、無かった。
「ザビーネさん、よろしく頼む」
イズマ・トーティス(p3p009471)が、そう言った。
「届かせるんだ。俺達の、いのちを。あの、傲慢な竜へ」
その言葉に、ザビーネはうなづいた。決戦の時は、間近であった。
●
ああ、ああ、なんと愚かな。なんと腑抜けな。
我が娘よ、わが眷属よ。この期に及んで、未だ羽虫どもに頼るか!
もはや竜の矜持すら失った蜥蜴どもよ。良いだろう、ならば最後の慈悲である。我が毒を以って、すべてを終わらせてやろう。
我が毒を以って、羽虫どものことごとくを殺し、貴様の希望を絶ってやろう。
聴くがよい、羽虫どもよ。光栄にも、今我は貴様ら羽虫に言葉を紡ごう。貴様らにも通じるように、羽虫の言葉で己を貶めよう!
我はハーデス。死を司りし冥府の竜、ハーデス=ザビアボロス!
貴様ら羽虫を根絶し、我が娘の希望を潰し、我は覇竜の地を新生させよう!!
- <フイユモールの終>いのちよ、竜に届いているかLv:40以上完了
- GM名洗井落雲
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年07月25日 22時10分
- 参加人数62/62人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 62 人
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参加者一覧(62人)
リプレイ
●
大地が腐る。空気が腐る。水が腐り、木が腐り、石が腐り、熱が腐り、世界が腐る。
それは毒。怨みを持った毒。竜の放つ、毒の極致。
毒と薬は表裏一体と、賢きものはは言うだろう。
あるいは、量によってのみ決まる、と、そう言うだろう。
だが、目の前にあるのは、殺すためだけのもの。
かつては、薬になったかもしれぬ毒の成れの果て。
傲慢なるザビアボロスの一族が生み出した、ただ殺すためだけの毒なり。
「うわぁ、酷いね……」
ソアが、侵食されるヘスペリデスの大地を見つめながらそう言う。東端より迫る毒は、じわじわと大地を飲み込み始めていた。
「これが先代、って奴の仕業なんだよね?」
「そうです、ソア」
バシレウス・ザビーネがそううなづいた。
「ひどい……こんなものが……」
ジョシュアがたまらずに声を上げた。
「こんな……これではまるで、毒というより、怨念を持った一つの生命のようですら……!」
「それこそが、竜の権能なんだろう。口だけのことはあるらしい」
セレマが皮肉気にそう言いながら、続けた。
「おい、今代。キミのクソ侍従には随分と不快な思いをさせれた。
せいぜいしっかり働いて、責任はとってくれよ。
それからクソ侍従、キミもしっかり働け」
「任せて」
力強く、レグルス・ストイシャがうなづいた。
「そうだ、初めましてストイシャさん! 私はフォルトゥナリア・ヴェルーリア!
フランスパンの人に頼まれて護りに来たよ!」
ヴェルーリアがそういうのへ、ストイシャが目を丸くした。それから、少しだけへたくそに笑う。
「そっか……うれしい」
「はい、ストイシャさん。イヌスラパンです。
戦線に来れなかった零さんからの差し入れとでも。
やることが終わったら、零さん突っついて沢山奢ってもらいなさい」
そういって、ルトヴィリアがイヌスラパンを差し出した。ストイシャは、それを受け取って、大切そうに懐にしまい込んだ。
「あ、ありがと。うん。おわったら、皆で食べたい」
「よいですね。約束ですよ」
「約束!」
ルトヴィリアと、ヴェルーリアが、笑った。ストイシャも、ゆっくり頷いた。
刹那の交流。だが、その時間は全く、刹那で終わらせなければなるまい。
「さて、わるいけど、みんなにもきりきり働いてもらうよ」
レグルス・ムラデンがそういうのへ、ムサシが頷く。
「ああ。
……ムラデン、死ぬなよ……違うな。貴方を死なせない。俺が」
「期待してるぜ、シェームの後継者。あ、そっちのも、そうなんだよね?」
そう、視線を移せば、胡桃の姿が見えた。
「わたしは別に、元より炎なの」
そう言うのへ、ザビーネはうなづく。
「貴方もまた、人とともに歩む炎なのでしょう。
竜の身ではありますが、力を貸してほしいのです」
「言われるまでもなく。
わたしが、この毒を燃やして見せる」
「やだ、私たちが、で行きましょう!」
妙見子が、そう言って笑った。
「せっかく、手を繋げそうなわけですから。『私たちで』、成し遂げましょう。ね? ムラデン様?」
「なんで僕に意見聞いたの? まぁいいんだけど」
肩をすくめるムラデン。一方で、ザビーネがゆっくりを息を吸い込んだ。
「では、始めます。これより、私たちの全力を以って、先代の力をおさえこみます。
あとは、貴方たち次第です。
そして――」
その視線の先に、イルミナがいた。にらみつけるように、イルミナはうなづく。
「言いたいことが山ほどあるので」
そう、何かを吐き出すように言って、
「死なないように。この力は、正しいことのために使う。そう、決めた」
「わかりました。お願いします」
ザビーネは少しだけ笑ってそういうと、その意識をゆっくりと集中させた。紫、黒、或いはそのような暗色の力の波動のようなものが、ザビーネの体からゆっくりと膨れ上がる。それが、空を割くように、前方に、前方に、広がっていった。ぐ、と押し込むように、世界の腐食が止まった。ぐずぐずと崩れた大地が、均衡を取り戻すように、不格好な形で固まった。
「私と、ムラデンが」
「僕と、ストイシャが」
『あいつを抑える!』
更に、相反するカラーの力の波動のようなものは、ムラデンとストイシャから放たれる。それが、ザビーネの暗色の波動と合わさって、キラキラとした、どこか美しいものへとなった。それは、まるで怨の毒を中和するように、戦場全域を包み込んだ。
「始まります。もはや一刻の猶予もありません」
ザビーネが、静かにそう言った。
「おねがい、あとは任せた」
ストイシャが、不器用に笑ってそう言った。
「ちょっと癪だけどね! あとは君たちに任せるよ!」
ムラデンが、力強く笑ってみせた。
だから――。
「始めますか! 傲慢なる竜退治を!」
妙見子が、そう声を上げ。
その言葉にうなづくように、仲間たちは刃を抜き放った。そして、間髪入れずに一気に駆け出す!
空には、まるで押し迫る様な無数の亜竜ゾンビたちが浮かんでいた。それらが、こちらを迎撃せんと降下を始める!
「あえて言ってやる。しょせん『羽虫』だ」
マカライトが叫ぶ。刃を構える。
「先代討伐部隊は気にせず突破してくれ。
俺達が、後ろは守る。
先代とやらは己こそ至高と考えてる。屍供を見るに、自分以外傀儡か何かとでも思ってすらいそうだ。
まぁそんなのが勝てる道理はない。「毒」扱ってるのに「コドク」拗らせてるような奴に負ける程ヤワじゃないさ」
マカライトの言葉に、仲間たちはうなづいた。
果たして開かれた戦端は、ほんの短い時間だったとしても、この世界の命運を握る、熾烈な戦いを演じることを約束されていた。
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ああ、ああ、なんと愚かな。なんと腑抜けな。
我が娘よ、わが眷属よ。この期に及んで、未だ羽虫どもに頼るか!
もはや竜の矜持すら失った蜥蜴どもよ。良いだろう、ならば最後の慈悲である。我が毒を以って、すべてを終わらせてやろう。
我が毒を以って、羽虫どものことごとくを殺し、貴様の希望を絶ってやろう。
聴くがよい、羽虫どもよ。光栄にも、今我は貴様ら羽虫に言葉を紡ごう。貴様らにも通じるように、羽虫の言葉で己を貶めよう!
我はハーデス。死を司りし冥府の竜、ハーデス=ザビアボロス!
貴様ら羽虫を根絶し、我が娘の希望を潰し、我は覇竜の地を新生させよう!!
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じりじりと、二つの力がせめぎあっているのがわかる。
片方は、ザビーネたちの力である。もう片方は、ハーデス=ザビアボロスの力である。
なるほど、レグルス竜二人、そしてバシレウス竜一人の力を結集して、ようやく均衡を保てる程度というのは、やはりハーデス=ザビアボロスの力は底が知れない。それに、じりじりとザビーネたちが『圧されている』事は、彼女たち本人ではなくとも理解できた。時期に決壊するだろう――長くは持たない。
「やれやれ……練達を襲った竜たちと、ここまで共闘するになることになるとはね……!」
ゼフィラがその手を掲げる。降り注ぐは、聖なる陽光。戦場において輝く光が、友を、照らす――。
「回復し続けて損になることはないだろうさ! 放っておいても彼女たちは消耗していく! 少しでもタイムリミットを延ばすんだ!」
「はい!」
フローラも、合わせるように回復術式を展開する。この戦場において、誰もが息つく暇などなかったが、その中でも特に負担が多いものを上げるとするならば、それはヒーラーたちであったに間違いない。飛来する無数の亜竜ゾンビたちは、既に仲間たちと交戦に入っている。死にかけゆえに知能も低下し、単純攻撃しかできぬでくの坊に成り下がっていたとしても、やはりヘスペリデスの亜竜であったもの。仲間たちも傷ついている。
それに、前述したとおりザビーネたちの体力も無限ではなく、消耗し続けている。それをわずかでも遅らせるためにも、休む間もなく回復術式を織り続けなければなるまい――!
「だとしても……! それなら……それなら、意地だけは、負けてはいられないのです! 人の意地を、矜持を、いのちを、竜にも届かせます!」
フローラは決意のまなざしで叫ぶ――それをあざ笑うように、さらなる敵の波が次々と落着し、腐った吐息を吐き出した。
「次の波、くる!」
白虎が叫んだ。亜竜ゾンビたちが、どたどたと――驚いたことに、腐った肉体で走るのだ!――走りだし、イレギュラーズたちに襲い掛かった。最近の感染した毒づめを振り下ろすのを、白虎が焔をまとった拳で受け止める。
「…私はドラゴニア。覇竜で生まれ、覇竜で育ち……外の世界なんて知らなかった。知ろうとも思わなかった。
それは、生きるのに必死だったからで……紲家の皆がいれば充分だったからで……!
それ以外は要らなかった、そう思ってた!
でも知ってしまったんだ!
外の世界を、イレギュラーズを!
だからこそここで負けるわけにはいかない!
竜種だってわかってくれる竜はいるんだ!
……押し通る! これからの為に!」
焔の拳で、殴りつける。亜竜ゾンビが、焔のうちに包まれて消えていくが、すぐに次なるゾンビが襲い掛かってきた。
「汝らは、友の所へは行かせぬと、言った!」
飛び込んだのは、レオナだ! 雄たけびとともに突撃! その体表に、戦化粧が浮かび上がる! 右手の刃で、亜竜ゾンビに切りつけた! ぐがが、と呻くゾンビが、反撃の一打を繰り出す。レオナはそれを、盾で受け止めつつ、
「この身、ただの一兵なれど! いざ尋常に!」
気合の言葉とともに、それを押し返した! そこへ、詩織の魔弾が突き刺さり、ゾンビを消滅させる!
「合わせてまいりましょう。今この場は、きっとそういう場なのでしょうから」
そう、柔らかく笑う詩織へ、レオナが頷く。突撃を敢行するレオナや仲間たち、それをサポートするように、詩織は遠距離術式を連続展開、亜竜ゾンビの群れに次々と撃ち放つ!
「さぁ、私が倒れない限り弾切れはありませんよ?」
言葉通り、次々と弾幕を展開する詩織。一進一退。圧し、圧される。生と死の攻防!
「奴らを近づけさせるな! 徹底的に包囲して撃破する!」
リトルワイバーンに騎乗したグリゼルダが叫び、突撃する! 上空から叩きつけられる一撃が、亜竜ゾンビの腐った肉体を粉砕した。すぐに次なる敵が襲い掛かってくるのを、グリゼルダが回避、反撃。
「ハーデス=ザビアボロスの討伐に向かったものたちに、僅かでも猶予を! 機会を!」
「やれやれ、初仕事にしちゃ、厳しい戦場じゃけんね」
カズラがザビーネたちの前に陣取りながら、その両手を掲げた。響くは黄昏の伝説の歌。ラグナロクよ、我らが友の力となれ。
「さぁ、さぁ、ここが正念場じゃ。ウチも必死にやるけん、たのんだで!」
「うねる雷撃は猫のように……敵を穿つよ!」
ナイアルカナンがその腕を振るえば、雷の鎖が亜竜ゾンビを焼き切った。だが、敵の怒涛の攻撃は、イレギュラーズたちの包囲を超え、ザビーネたちに迫ることもある。
「すこし、まずいかも!」
ナイアルカナンが、包囲を抜けた亜竜ゾンビへの警戒を促すのへ、
「問題ない! こちらで受け持つ!」
ゲペラーだ! ゲペラーが盾を以て、亜竜ゾンビの進行を受け止める!
「我が魔剣に宿るフェニックスよ……覇竜の大地に再生の力を与えたまえ。
覇竜の大地よ、その地を蝕む毒を吐き出すハーデス=サビアボロスに大自然の裁きを与えたまえ!」
その言葉に、まるで大地が力を貸したかのような気持ちを覚える。ゲペラーが、刃によって亜竜ゾンビを斬撃する!
「ザビーネさん達には、あとでお得意様になってもらうつもりなんでね!」
ユイユが構えるライフルが火を吹く。放たれた銃弾は、驟雨のように亜竜ゾンビたちに降り注ぎ、そのわずかに残る肉を削ぎ落して骨を粉砕!
「近づけさせないし、触れさせない! 絶対にね!」
だが――イレギュラーズたちを排除せんとした悪意は、今ここに現れんとしていた。
「まずい……来ます!」
ジョシュアが気づき、叫んだ。いや、ジョシュアでなくても、其れの存在に気付いたものもいただろう。それほどに、圧倒的なプレッシャーを放つ、強敵――。
「ドラゴンゾンビです……! なんという、酷い姿……!」
その様相には、ジョシュアもたまらず同情の念を抱かずにはいられなかった。粘性のある毒物を接着剤の様にしてぐちゃぐちゃに組み上げられた、何体ものアリオス竜の死骸。それが、腐った肉と骨をさらけ出し、今まさに死骸の竜として降臨しようとしていた。
「……ええ、確かに、酷い」
アッシュも思わず、頷くことしかできない。声明を冒とくするオブジェ。それが、冥王を自称する、悪魔の竜の仕業であった。
「彼らのためにも。速やかに排除しましょう」
アッシュが構える。
「死した者が、明日を賭ける舞台にいつまでも留まるものではありませんよ。
本来なら、貴方達は今を生きる者に全てを託して眠っているべきなのですから」
それは、祈りの言葉であったのかもしれない。
だが、その言葉も今は届くまい。今はただ、祈りの言葉とともに、その銃弾を撃ち込んでやることのみだ。
ドラゴンゾンビとともに、無数の悪意が飛来する。亜竜ゾンビの群れが、未だに耐えることなく飛んでくる。
戦いは続く――限界まで、さほど時間はない。
●
『愚か』
それはそういう。
『愚か』
それはそう嘲る。
『否、愚かとは、ある程度の知能を持っているもののために使われるべき言葉だ』
その傲慢なる竜は、傲慢にも、そう告げる!
『貴様らは愚かですらない。虫の知能の無さを嘆く者はいない』
「おぉ、御見事。どうしようもなく相容れませんが、その精神はまさに頂点に立つモノに相応しい。
しかし僕は強くて優しい竜の皆さんが好きですし、一緒に生きるならそちらの方が良いので貴方はここで殴り倒しますね。
その首頂戴いたします! お覚悟!」
迅が疾走る。そのまま接敵! 拳を叩きつける! ぐあおん、強烈な音が響く――それだけだ。肉体へのダメージは遠い!
「硬い!」
にぃ、と迅が笑う。強い。知っている。
『貴様如きに我が竜鱗、破砕することなどできまい!』
振り下ろされたその手の一撃を、迅は受け止める――それだけで、全身にとんでもない激痛が走ったような気持になった。すぐに、腕や足も萎え始める。毒物のカクテルを一撃で致死量までぶち込まれたような気分。
『愚かな竜の娘に助力を乞われ、自惚れたか!』
吠えるハーデス=ザビアボロス。吸い込んだ息が、口中で瞬く間に高濃度の毒物へと魔術変換される。口腔を開くと同時に、毒々しい魔術紋章が次々と浮かび上がった。竜言語魔法。そして、ザビアボロスの一族の扱う、怨毒の極致。
それが一気に解き放たれた! 戦場を包み込む、強烈な毒が、イレギュラーズたちの体を強烈に蝕んだ。
「まぁ、ママに向かって毒を吐くだなんて反抗期かしら。
いいわ。優しさだけが教育じゃないものね。
お仕置きの時間よ、ハーデス=ザビアボロスちゃん!」
プエリーリスが、その強烈な一撃を誘うべく、ハーデスの視線を誘導した。同時、ハーデスが吠える。あえて人の文字で記すなら、怨。そして亡。そのような言葉を吐いた刹那、いびつな魔法陣から無数の毒々しい光刃が洟垂れ、プエリーリスを貫いた!
『わざわざ死にに来たか、羽虫が!』
「でも、これで一手、潰せたわ?」
プエリーリスが笑う――エイヴァンが叫び、突撃!
「叩きこめ! 時間も手も足りない!」
巨斧を叩き込む!
「一人一人では、きっと届かない! 力を合わせろ! 息を合わせろ!
頭の凝り固まった竜は、ちょっとばかりわからせてやろうじゃないか!」
がうん、と叩きこまれた斧をひるがえし、エイヴァンが飛ぶ。同時に、
「超越個体としての五感の冴えをセンサー替りに危険察知……解っていたけど脳裏に危険アラートが鳴り響いて危険しか感じない訳だけど!
人の可能性魅せるべくやれるだけのことはやって見せようか!」
ラムダがその刃を振りぬく! 剣閃。斬撃。人ならば一撃で首を落とせるであろうその閃光も、しかしハーデスの鱗を滑るのみだ!
「かったい! 何でできてるっての!」
「だが、アリの巣がダムを決壊させることだってある」
義弘が、ハーデスの巨体にその拳を撃ち込んだ。まるで、鉄を殴ったような感覚。いや、それ以上。
「見せてやろう。羽虫と侮ったものの、いのちの力を。
とにかく俺達は奴のいのちを削り続けなければならねぇ。
それが味方の竜や仲間を助ける事に繋がるんだろう。
ここの飯はうまかった。それだけでも戦う理由にはなるぜ。
死なせやしねえよ!」
再び叩き込む。腕が逆に破砕されるかのようにすら感じる、それほどの硬さに、しかし臆することなく。
『無益』
ハーデスが息を吸い込んだ。
『無駄』
ばぢばぢと、いびつな魔法陣が展開される。
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!』
ばぢ、と毒が爆ぜた。先ほどとは違う、爆発可燃性の毒物が、広範囲にあたりを焼きまき散らす。
「立て直します!」
蜻蛉が、必死に声を上げた。自らの体も傷つきながら、しかし仲間たちのために。
「行きましょ、キルシェちゃん!
2人やったらきっと大丈夫、皆を守り抜きましょ!」
「えぇ、蜻蛉ママ!
みんなのこと一緒に守るのよ!」
痛みを堪えながら、キルシェも気丈に笑った。二人で力を合わせて、手を掲げる。強烈な毒の暴風に、それは風前の灯火のようであっても。だが、確かに仲間たちをいやし、導く、優しい光となっていた。
「親は子の幸せを願うんが当たり前よ、それやのにこんな事……!
許されるもんですか!」
蜻蛉が叫ぶ。
『我も願った。あれが良き後継になることを』
ハーデスが言う。
『だが、あれは堕落した。我々ザビアボロスの一族は、死をつかさどる一族。
竜の中において、母なる大地の峻厳さを表す、誇り高き『地竜』が一族!』
ハーデスが吠えた。
『わかるか、母を名乗るなら、この無念が!
不出来な娘を持ったこの無念を!』
「子供が自分の思い通りにならなかったからなんて、そんなこと言われてもしょうがないわ!」
キルシェが叫んだ。
「貴方は、ただわがままなだけよ!」
「そうだ」
ウェールが叫ぶ。
「親なら娘が出した答えを無理に修正するのはやめろ。
子供は親の所有物じゃねぇからな」
『子が過ちを犯そうとするならば、その命を以て断罪してやるのが親の務めというものだろう』
「言ったぞ。子供は、親の所有物じゃねぇ」
ウェールのその瞳が、強烈な怒りに照らされた。ついぞ、抱いたことのないような感情を、ウェールはその身の内にたぎらせていた。
「なんで娘と一回ケンカしただけで突き放せるっきゅ?
ザビーネさんは貴方が分かってくれると、
分かってくれなくても互いの考えを尊重できると思って打ち明けたと思うっきゅ!」
レーゲンが、ウェールの怒りを理解するように、叫んだ。
『羽虫と懇ろになろうなどという狂気に、何故我が付き合わなければならないのだ?』
ハーデスが当然のように言った。
『狂っているのだとしたら、我ではない。貴様らだ。すべて』
「なんて……なんて奴なんだっきゅ……!」
「レーゲン先輩。あいつは、だめだ」
トウカが言った。
「すべて、思い込んでいるんだ……頭が固すぎる。
可能性を……新しい世代を、理解できない……!」
「自分の娘だけじゃなくて、他の竜まで殺しちゃおうとするやつだよ」
アクセルが頷く。
「話は通じない……きっと、オイラたちのことだって、理解しようとしてくれないんだ!」
『それこそが、貴様らの傲慢だ!』
ハーデスが吠える。
『理解しあえるという傲慢! 尊重しあえるという傲慢! 悠久の時のなか、未だ一つにまとまれぬ貴様らが、何を理想と語る!
ましてや、知能の足りぬ羽虫ごときが! 頂点種たる我らと対等の気取りか!』
「傲慢かもしれない。思い上がりなのかもしれない。でも、解りあえるってことを捨てちゃったら、オイラたちはダメになってしまう!」
アクセルが叫んだ。
「もし逆の立場だったとしたら……俺たちは、解りあうことをあきらめたりなんてしない!」
ウェールが叫んだ。
「違うっていうなら、たしかにあなたと僕たちはちがうっきゅ! 僕たちは、あなたみたいになんてならないっきゅ!」
レーゲンが叫ぶ。
「どうしても、それができないなら。
俺は、たとえどれだけ傷ついても、ここであきらめたりしない」
トウカが叫ぶ。
『そうか』
ハーデスが嗤った。
『ならばもろともここで死ね』
強烈な毒が、再び戦場を飲み込んだ。
●
イルミナ・ガードルーンは、思った。
あの、ザビーネというやつは、本当に全く、何もわかっていない、と。
ザビアボロスを殺す毒? そんなものを受け取って、さぁ刺してくださいと言われて、それで納得するものか。
混乱していた頭が、ようやく、ようやく、まとまった気がした。そうなれば、酷くすっきりと、イルミナの心は一点に向かっての答えを算出していた。
みんなの仇を討ちたい。
それは、イルミナの気持ち。
そう。イルミナは間違えない。
「そうだとも」
正しいことのために、これを使う。
「ええ、そうですとも――」
手に握る。黒曜石のナイフ。
イルミナの覚悟。
●
「はしれ!」
ェクセレリァスが叫ぶ。
「走れ走れ走れ! 足を止めるな!」
そして、疾走る。その一瞬跡を、毒が大地を解かすようにぶちまけられる。
「誰一人斃れるな! 誰一人手折れるな!
あのクソ老害に、慢心が破滅に繋がることを体感させてやれ!
あと、私は一億年生きているからな! 若造が!」
挑発するように叫ぶェクセレリァス、髪が触手のごとくうねり、ワームホールから現出してハーデスの体を叩きつける!
「速攻!」
叫びに、ルトヴィリアが続く。
「長く生きると、定命の儚くも眩い光が分からなくなるもの!
その一際の閃光の眩さ、尊さを今一度知るがいい!」
その両手を掲げるや、強烈な火炎の術式が、ハーデスの鱗を焼いた。殊ここに至り、彼らの攻撃はようやく、その肉に刃を届かせようとしていた。
「やれる! 砕ける! あたし達なら、あいつを!」
ルトヴィリアが叫ぶ――同時に、吹き荒れる強烈な竜言語魔法に打ちのめされて吹っ飛ばされる。誰もがそうだ。一矢報い、すぐに迎撃される。だが、死なない。体が、心が、可能性が、立てと叫ぶ限り、立つ!
「絶対好きにはさせない、ここでぶっ殺す! 毒で死ぬなら一人で勝手に死ね!」
アクアが、その額から血を流しながらも、しかしギラギラとした憎悪の瞳をハーデスにぶつける。無数の影の手が、主の憎悪を現すように、ハーデスを縛り付けた。
「死ね、死ね、殺す、殺す殺す! 此処で絶対に! 殺す! 死ね! 勝手に、死ね!!」
絶叫にも近い憎悪が、アクアの喉からほとばしる。無数の腕が、ばぎりばぎりとハーデスの鱗を破砕し始めた。
『羽虫が!』
ハーデスがその身を震わせる。アクアが、そのしっぽでぶっ飛ばされる。が、その治療を仲間に任せて、イレギュラーズたちは渾身の反撃にうつる!
「こいよ老害、サビーネさん達の所には行かせないよ。命に代えても留める、絶対に」
Lilyが声を上げた。激痛に苛まれながら、しかし何度打倒されても立ち上がる。
「例えこの身体が千切れ、後で動けなく成ったとしても止めない、絶対に、絶対に!」
Lilyのぶち込んだパイルバンカーが、ハーデスの肉を狙う――が、そこを守る様に、竜言語魔法による防御術式が展開された。
『わずかな戦果も、これで無意味だ!』
「無意味に、しません」
雨紅だ! 雨紅は高速で飛び込むと、Lilyに視線を向けた。理解したLilyが頷くと、跳躍――主を失ったパイルバンカーを、雨紅がけりこむ!
ばぎり、と強烈な音を立てて、防御術式にほころびを生み出した。
(彼らが矜持を失ったと、それを決めるのはあなたではないでしょう)
言葉には出さない。彼に、この言葉は通じないだろうから。
雨紅がパイルバンカーをひっつかんで跳躍。同時に、そこに強烈な魔力奔流が叩き込まれる!
「全能を言い張るのはいいけどさ! 結局その毒で握ってるのは命だけじゃん!
アンタはさ、わかってないのさ、その力を以てしても、握れないものがあるってことを!」
ネモピレマだ! 放つ術式は、全力全開、いのちを乗せた一撃。
「それは立ち向かう心、魂!人の持つそれを握れなかった時点で、アンタたちは全能じゃなかったのさ。
哀れだよ。もっと謙虚なら気づけたかもしれなかったのにね」
『うぬぼれるな!』
ハーデスが叫び、ネモピレマを打ち払う。激痛。だが、それでもいい。道は作る。そういうことができる。
「やれ!」
「道は切り開く!」
ルビーが突撃した!
「覇竜領域に住まう者たちの為、竜と人が共にある為に。
命と生きる意志を束ね今ここでお前を倒す、ハーデス=ザビアボロス!」
深紅の月が、両手剣の形をとる。振り下ろした。頂点からの、斬撃。叩き落とす。ばぐわぁん、と音を立てて、結界が砕けた。ばらばらと、散る。紫の花のように。
「やって!」
ルビーが叫んだ!
「今!」
その言葉に合わせるように。
イルミナが、飛び込んだ。
手にした黒曜石のナイフ。
ハーデスの露出した肉に、叩きつける。
「ザビアボロス!」
イルミナが叫んだ。
メモリーが浮かぶ。
これまでの事。
これからの事。
ずぶり、と。
そのナイフは、ハーデスの内へと沈み込んだ――。
●
「守りぬく……絶対に!」
ウィリアムが叫び、その輝星剣を掲げた。同時に放たれた強烈な魔力閃光が、亜竜ゾンビ、そしてドラゴンゾンビを飲み込む。ぎゅうあ、と雄たけびを上げて、しかしドラゴンゾンビは歩みを止めない。ウィリアムと背中合わせに立つように戦うエトが、
「まったく、数が多いし、死んでるのにタフよね!
ウィル君は大丈夫?」
尋ねるのへ、ウィリアムは頷いた。
「ああ、エト、お前も」
コンビで戦う二人は、お互いを守り、お互いを鼓舞し、死のまみれる戦場で戦い続けていた。
「でも、少し厳しいかな……なんて、弱音はなしよね!
絶対に、勝ち進む!」
「ああ!」
二人は星の輝きのように戦い続ける。だが、確かに、ドラゴンのゾンビの攻撃は苛烈であった。ザビーネたちの支援を継続してはいたが、いくつかの攻撃は確かに彼女たちに到達している。故に、まさに一進一退の状況といえた。
……だが。その時、戦場のゾンビたちに、異変が見受けられた。
「なんだ……!?」
ウィリアムが、声を上げた。
「崩壊し始めているのか……体が……?」
その言葉通りに。ドラゴンゾンビたちが、その体を維持できぬように、どろどろと溶け始めたのである。だが、それで『死んだ』わけではないようだ。痛みに苛まれながら、しかしゾンビたちは行軍を続ける……しかし、明確に動きは鈍っていた。
「ど、どうしたのかな、みゃー……?」
祝音が声を上げるのへ、答えたのはザビーネだ。
「……ハーデスの生命力に翳りが見えます」
「かげり?」
祝音が小首をかしげるのへ、ザビーネは答えた。
「おそらく……ザビアボロス殺しの毒が、使われたのでしょう。彼の力は減じ、私たちの負担も減っています」
「やるじゃん、人類」
苦しそうな顔をしながら、ムラデンは笑った。
「で、でも、まだ先代は死んでないから……!」
ストイシャが言うのへ、メリーノが頷いた。
「なるほど、少しだけ、敵が弱くなって、少しだけ、制限時間が伸びたのね?」
そういって、笑った。
「なら、反撃と行きましょう。このまま勝ちまで拾いましょう。
此処から先は一歩だって通さない。
わたしのおともだちと可愛い竜ちゃんたちをお前らごときに傷つけさせたりしない。
祝音ちゃん、手伝って。
それからたみちゃん、正念場よぉ!」
「わかった、みゃー!」
祝音が笑い、
「ええ、ええ、僭越ながら私、ここで檄を飛ばさせていただきます!」
そういって、
「私は人と竜が手を取り合って生きていく未来が見たい。
人と共に歩めるようになった私のように。
……私はその可能性を信じている。
ね! ムラデンさん。
どうか私の手を取ってくださる?
私だけじゃない、私たちの、手を。
とっていただけるなら、私は、私たちは――友として、あなたたちを絶対に守ります。
ザビーネ様も、ストイシャ様も。この地に生きる、すべてのいのちへ。
とどけましょう。あなたたちに。
いのちよ、竜に届いているか。
友である竜に、私たちの、心(いのち)が」
「もちろん」
ムラデンが笑った。
「その心を、私は無駄にしないことを誓いましょう」
ザビーネがうなづいた。
「皆で、パン食べるんだものね」
ストイシャが笑った。
だから。
きっと、届くべき人には届いている。
心とは、たぶんそういうものだから。
「では――やりますよ、皆さん! 我らが友のために!」
友たちは、頷いた。
やり遂げる。
可能性を、ここにもたらすために!
「ドラゴンゾンビをやっつけるよ!」
チャロロが叫んだ。
「おねがい、チャロロ!」
ストイシャが叫んだ。
「あの子も、つらいと思う。だから」
「まかせて!」
頷いた。チャロロが身構える。後方の仲間たちをかばうように、その身で立ちはだかり。
「誰も傷つけさせない!」
叫ぶ。決意とともに。
「そうだね、誰も、傷つけさせない」
アルムがうなづいた。その言葉通りに、誰も傷つけさせまいと、心からの祝福を、友たちに降らせる。
「ねねこ君、エーリカ君、祝音君、力を貸してほしい。皆の力で、皆を守るんだ」
「まかせて、みゃー!」
祝音が頷き、
「ドラゴンゾンビは結構興味津々なんですけど、観察してる暇ないですからね!
全力でやりますとも!」
ねねこはそういって笑い、
「あ、ザビーネさんは、諸々終わったら医者やってみません?
様々な毒を扱えるって事は即ち様々な薬を扱えるって事ですし、元より竜の事は竜が一番詳しいでしょうからこの後必要になると思うんですよ。
それに今のザビーネさんなら心的にも向いてると思いますよ! 是非!」
そういって笑ってみせる。ザビーネが、少しだけきょとんとした顔をした。
「そうですね。良い、と」
「ええと、勧誘は、後にした方が?」
エーリカが苦笑する。
「まずは、みなを、守りましょう。あの、いばらの檻から」
それは……今のこの事態は、ハーデスの生み出した、ザビーネを縛るいばらの檻だったのかもしれない。ハーデスとて、情はなかったわけではないはず、とエーリカはふと思う。でも、だとしても……。
「後ろは任せた。一気にかたをつける」
マカライトの言葉に、エーリカは現実に戻される。うなづく姿に、マカライトはうなづき返した。
「いくぞ」
ティンダロスとともに、マカライトは駆ける。強烈な不敗のブレスを回避し、妖刀を叩きつけた!
「明らかに、弱体化している……やれるぞ」
マカライトの言葉に、仲間たちはうなづいた! 突破する! 此処で!
「後ろは任せて!」
ヴェルーリアが言う。
「絶対守るから!」
その言葉に、後ろを託す。前へ行くものは、ただ、前へ。
「なら、この武蔵が道を開こう!
そして島風よ! やるべきことはわかるな!?」
「時限速攻作戦 当方速力 楽々 v」
V、とサインを作って見せる島風。
「本艦突撃 旗艦砲撃
了解 『疾きこと、島風の如し』――!」
駆ける! 海を、いや、地を――否、彼女たちがいるのならば、ここが海だ!
島風はスピードを乗せたまま跳躍――がしゃん、と魚雷を一斉展開。
「発射――弾着、今」
ずがおうん、と強烈な爆裂音が鳴り響く! 展開された魚雷が、一斉爆発!
「ならば、この武蔵の主砲が悪意を切り裂く!」
武蔵が手にした刀を掲げる。主砲が、その先を向く。
「主砲、照準よし!! 装填完了!! 撃てぇーー!!」
ずがおうん、此度は強烈な砲撃音! 放たれた主砲が、ドラゴンゾンビの足を狙い、その残った肉と骨を削った。ぎゅあ、と悲鳴を上げて、ドラゴンゾンビがのけぞる。
「この世界に生きるのは竜だけじゃない。
種を届ける羽虫や鳥がいなければ草木も育ちやしない。
見下しているものに、きみはずっと生かされてきたんだよ。
さて。きみの愛し子たちは、もうとっくに気付いているみたいだけど?」
戦場の先を見つめるように、サンティールが言った。そのまま振るう。雷のごとき一閃!
ばしゅ、とドラゴンゾンビの肉がはげた。
内部に、黒い、毒の塊のようなものが見えた。それが、どくどくと脈打っている。
「核。あるいは心臓だ――」
サンティールの言葉に反応するように、ドラゴンゾンビがうごめいた。その手を振り払い、核を守らんとする――が、そこに、ノアの魔力砲撃が突き刺さった。
「あなたの言う通り命は等しくないわ。だけど、全ての命に等しく死は訪れるのよ」
強烈な爆発音を上げて、ドラゴンゾンビの腕が消し飛んだ。あらわになった心臓が、心細げに脈動した。
「おわりよ――あなたも、お疲れ様」
ノアが、さみし気にそう言った。死体の塊は、嘆くようにうごめいた。
「シェームさん。貴方の焔……人と竜が手を取り合って生きていく未来のために……今一度お借りしますッ!!!」
ムサシが、叫び、飛んだ。
その手に、刃を。
焔のマフラーがたなびく。
「やれ! 焔の後継(ムサシ)!」
ムラデンが叫んだ。
その言葉を受けて。
「輝勇閃光……ブライト・エグゼクションッ!!!」
その勇気の焔が、悲しい怪物を飲み込んだ。
●
『がああ……!! があああああああっ!!!』
吠える。吠える。吠える。
冥王を騙る怪物が、ハーデス=ザビアボロスが、激痛と苦痛に呻いている。
体の内からが腐る。ような感覚だった。体が、肉が、骨が、ばらばらになる様な、感覚だった。
『馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!
託したのか!!! 羽虫どもに!!! 『最期の毒(トキシック・オブシディアン)』を……!』
それは、ハーデス=ザビアボロスにとっては、まさに青天の霹靂であった。そして絶望であり、悲痛であり、裏切りであり、決別であった。
それは、ザビアボロスの一族を殺すためだけの毒。
本来なれば、他者に託すことなど絶対にありえないもの。
『そこまで堕落したか! そこまで零落したか! 嗚呼、嗚呼! おお……!』
嘆きである。絶望である。いっそ、この毒を、ザビーネが突き立てるのであればどれほどよかったか。だが、現実は、彼の娘は、その最後の手段を、ニンゲンに託したのだ!!!
「それが、彼女の選択だ」
イズマが、そう言う。
「竜種だけで生きられる、洗い流して作り直せるなどと思ってる事の方が愚かだ!
頂点にいられるのは全ての下位が存在するからなのに。
全ての生物が経た長い長い歴史に、やり直しは存在し得ない。
彼女はそれを理解できたんだ……だから、託してくれた……」
『下らぬことを言うな!』
激痛と、絶望と、激怒が、ハーデスの内側を煮えたぎらせていた。痛みが、苦しみが、物理と心の両面から、彼を焼いていた。
「ボク、知ってるよ。
ザビーネさんに何も言い返せなかったのでしょう?
それであんなひどいことしたのよね。
でもね、そうなったら親子喧嘩はあなたの負け。
偉そうなこと言って癇癪起こしてるだけじゃない!」
ソアが叫んだ。
「あなたに比べたら、あの生意気で! チビで! もうすっごい調子に乗ってるムラデンさんの方が全然大人なんだから!
ふふーん……悔しかったら何か言ってよ。この『臆病者』!」
挑発でもあり、本心でもある。
臆病者、とソアは言った。
そうなのかもしれない。
誰よりも尊大で、誰よりも傲慢であった彼は。
「ただ、手を伸ばすことすらできない、臆病者だ!」
ソアの言葉通りに、そうだったのかもしれない。
『舐めるな……羽虫、ごときが……!』
「貴方には感謝していますよ、ハーデス」
寛治が、そのボロボロの体をおしながらも不敵に言ってみせた。
「先代ザビアボロスを超えて、我々はザビーネさんと対等に話せる存在と証明できる。その機会を頂けたのですから。
……まぁ? 加えてもう一言、言わせていただけるのでしたら。
『ご自慢の毒は、下等な人間一人葬る自信も無いようで』。
私は生きていますよ――御覧の通り」
肩をすくめてみせる。こういう時こそ、スマートに、そして紳士的に。それが、流儀だ。
『ぐ、く、くくくくっ……』
苦しげに呻きつつも、ハーデスは唸った。
『よもや勝ったつもりでいるまいな。
確かに、我は死ぬ。これは、もはや逃れられぬさだめよ。
だが、貴様ら羽虫を殺すのに、残りわずかの時間も必要ない……!』
ハーデスが雄たけびを上げた! 残る僅かの生命力を燃やして、立ち上がる。
「ハーデス=ザビアボロス、そなたがこの地をその毒で洗い流すと言うのなら、
その毒ごと燃やしに来たの。
如何なる存在と言えど、滅びる事はあるの。
……わたしは炎なれば、そなたの毒を、この身をもって焼き尽くすの。
人と、ともにある、炎であるがゆえに」
胡桃が、その炎を巻き上げた――ハーデスの吐き出した毒のブレスと、強烈な衝突を引き起こす!
『ほざけ! ほざけほざけほざけ!』
「余裕がなくなってるな、オオトカゲ」
セレマが、小ばかにしたように、その美しいままの顔で笑う。
「死を道具にする程度で『冥府竜』とは笑わせる。
こっちは死も衰微も捻じ伏せようと極限目指して足掻く身だぞ?
皿まで平らげてやるから見せてみろよオオトカゲ。
そして覚えて逝け。
ボクの名はセレマ オード クロウリー。
崩れぬ美貌を持ち、お前よりも傲慢な魔術師の名だ」
『なめるなあああああ!!』
怒りとともに叩きつけられた強烈な一撃を、セレマはしかし自然体のまま受け止めた。
彼は崩れない。
なぜなら、セレマ オード クロウリーであるがゆえに。
「抑えてやる。さっさと殺せ」
セレマの言葉に、仲間たちはうなづいた。
「では皆さま、ここからは最後までノンストップです!」
成龍が叫んだ。
「我が力よ、友の腕に。
さぁ、さぁ! 英雄よ生まれ、吠えましょう!
これより始まるは、悪竜殺しの伝説。
今ここに、謳いあげましょうぞ!」
「だ、そうだ。
いくぞ、【航空猟兵】」
アルヴァが仲間たちへそう告げる。
跳ぶ――猟兵たちが!
「俺たちの役割は、今回は橋渡しだ!」
アルヴァが叫ぶ。
「なんとしても、最後の一撃をねじ込む! そのために――全力で飛べ!」
「任せろ――」
ブランシュが、静かにつぶやいた。その速度は疾風。いや、死神の影。
「名乗るか。冥王を。タナトスの前で。
ならば貴様は死ななくてはならない。もはや釈明の余地も無い。
俺こそが冥王だ」
冥王が、跳んだ。足を、突き出す! 全速力のブーストを乗せた、飛び蹴り。それは、音速をも突破する一撃!
「とらえられない――冥王はな」
がおうん、と強烈な音を立てて、ハーデスの体が波打つように脈打った。元々細く感じられたハーデスの体は、これまでのイレギュラーズたちの攻撃、そして最期の毒による弱体化をもって、その真なる力を完全に封じられている。
『羽虫……ごときが!』
ハーデスがその手を振り払う。だが、捉えられない。冥王は。
「どうしたよ?
随分手こずってるじゃねえか!
てめえは羽虫未満っつうことだな!
娘“に”捨てられるわけだ!」
挑発する牡丹に、ハーデスは激高した。
『吠えるな!』
だが、その隙をついたルクトの一撃が、ハーデスを大地に叩きつける!
「ナイスだ、ルクト!」
「そちらも、いい言葉選びだ」
そう、静かに言うと、音速の斬撃を繰り出す!
「貴様にはここで死んでもらう。
もはや言葉は不要だろう?」
斬撃が、ハーデスの体をえぐった。ぐおう、と悲鳴を上げる。
『地をなめた……!? 我が!? 竜が!?』
激情が、ハーデスの体を支配する。だが、身を蝕む毒は、本来の力の半分も出させてはくれない。
「驕るなよ、クソ蜥蜴。
お前は竜種どうこう以前に、父親失格だ!」
アルヴァが叫ぶ。放たれた弾丸が、ハーデスの体を撃ち抜いた。
「娘一人大切にできねえバカ親に、俺は絶対負けねえよ!」
「私たちは、です。訂正させてください」
愛奈が、少し笑っていう。
「私たち、航空猟兵は――あなたと違い。孤独ではありませんから」
アルヴァの穿った傷口を、愛奈の刃が切り開いた。
腐った肉が、あらわになる。
「トール、やろうじゃないか!」
沙耶が叫んだ。
「一緒に突っ込みましょう、沙耶さん!」
トールが、声を返した。
駆けだす。二人。その刃とともに。
「ハーデス=ザビアボロス! それだけの力を持ちながら毒を吐くしか能がないとは情けない!
しかしその傲慢さ、我々という希望に討たれる巨悪に相応しいです!」
「ハーデス、お前は過去に囚われすぎた。最早毒しか吐けないお前に慈悲なんてない。
私達の希望の前に消えるがいい!」
交差する。
二人の一撃。
それが、ハーデスの肉体を深く傷つけた。その体の奥、臓の腑まで。
『ありえぬ……あり得ぬ!
我が、我が、死をつかさどる我が!
偉大なる竜が、何故……何故……!』
崩壊していく体に、ハーデスが悲鳴を上げる。
「死を司るだと? 笑わせるな」
汰磨羈が、怒りをあらわに、そう告げた。
「死とは、生あってこそ。
ただ見下して根絶やしにする事しか考えない貴様などに、死を司る資格など無い。
貴様の娘は、『生』を理解しているぞ。ああ、彼女の方が余程、その座に相応しい!
疾く、潰えよ。そして、その座を彼女に返上するがいい!」
その刃が、煌めいた。
一閃。
その一筋が、傲慢なる竜の首を切断していた。
『ありえぬ……こんな、ことが……!?』
散る。
溶ける。
消えていく。
傲慢なる竜の体が、溶けて、地に染みていく。
骨すら残さず。痕跡すら残さず。
溶けて、消えていく――。
「御主は、最後まで理解できなかったか」
汰磨羈が、静かにつぶやいた――。
「終わったようです」
ふぅ、と息を吐いて、ザビーネはひどく脱力した。膝をつく彼女を、イレギュラーズたちが支える。
「お見事です……本音を言えば。私たち三人の内……いえ、全員の命をささげるつもりでした。
それが……」
「全員無事だからね」
ムラデンが肩をすくめる。
「ま、消耗が激しいから、元気一杯ってわけじゃないんだけどね……しばらく君たちレベルまで能力が落ちそうだよ……」
「……それより、そっちは無事なの?」
ストイシャが言うのへ、イレギラーズたちはうなづいた。
誰も、欠けていない。
確かに、深く傷ついたが。
誰も、いのちは落としていない。
果たして、傲慢なる竜はイレギュラーズたちのいのちを賭けた戦いによって、その存在を世界から消滅させたのだった――。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
勝利です。
どうぞ、誇ってください。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
傲慢なる死の竜を倒す時です。
●成功条件
規定ターン(初期基準20ターン)以内にハーデス=ザビアボロスを撃破する。
●特殊失敗条件
規定ターン(初期基準20ターン)以内にハーデス=ザビアボロスを撃破できない。
バシレウス・ザビーネ、レグルス・ムラデン、レグルス・ストイシャの全員が死亡する。
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●状況
ヘスペリデスを、己の毒で洗い流さんとするハーデス=ザビアボロスを撃破します。
作戦内容としては、まずザビーネ、ムラデン、ストイシャの三名が、ハーデス=ザビアボロスへ対抗するための力場を形成します。
この効果により、ハーデス=ザビアボロスの権能『極滅怨毒』を無力化。さらにハーデス=ザビアボロスのパラメータを著しく減衰させます。
ただし、ハーデス=ザビアボロスもこれに抵抗します。ザビーネら三人が構築する力場は、ザビーネら三人の生命力とリンクしています。ザビーネら三人が、何のバックアップもなしにこの力場を形成できる制限は、『20ターン』です。これを『初期基準』とします。
ザビーネら三人への、何らかの回復サポートなどの支援が行われれば、この制限は初期基準から増加します。つまり、一生懸命回復したりすれば、制限時間が21ターンになったり、25ターンになったりするわけです。
ですが、敵も放っておくわけがありません。現れた眷属などが、ザビーネらを攻撃してくるでしょう。ザビーネらに攻撃が通り、生命力が減ずれば、制限時間も19ターンになったり、15ターンになったりするわけです。
というわけで、皆さんはザビーネらを守りサポートをする部隊と、ハーデス=ザビアボロスを撃破する部隊に分かれ、速やかにハーデス=ザビアボロスを撃破する必要があるわけです。
戦闘ペナルティなどは発生しません。今もてる全力を以って、作戦を遂行してください。
●エネミーデータ
ハーデス=ザビアボロス ×1
傲慢なるバシレウス。真なる怨毒地竜であり、真なるザビアボロスです。下記『ハーデス=ザビアボロス戦』で相対します。
ザビーネよりもはるかに強大な力を持っており、特にあらゆるBSの運用にたけています。相手への付与はもちろん、BS回復も容易に行ってくるでしょう。運用にたけているとはそういうことです。
竜なので、当然のごとく射程面に穴はありません。遠近全レンジで、当然のごとく最大の攻撃をしてくるはずです。
ただし、しいて言うならば、近距離レンジが少し不得手です。近距離レンジの攻撃には、BSの付与が少なくなっています。『少し不得手』なので、『どうせ受けるならここが一番マシ』程度のものですが、覚えておくといいでしょう。
弱点があるとするならば、『BSの運用に特化しすぎている』事です。素の攻撃ダメージというよりは、BSによる搦め手をメインとしているため、BSに対抗することができれば、勝ちの芽は出てくるでしょう。
また、権能として以下の能力を持ちます。
『極滅怨毒』
ザビーネも運用した怨毒の、超究極形態。毒系列BSの竜系最上級とも言うべきBSで、あらゆる無効を突破し、致死級の毒をばらまきます。
その力は『大地をも腐らせて殺す』ほどですが、現在はザビーネの力で無理やり抑え込んであります。
使われたらほぼ勝てません。制限時間内に倒してください。
亜竜ゾンビ ×???
毒に侵され、ほぼ死体とかした無数の亜竜たちです。下記『味方竜防衛戦』で相対します。
標準的な亜竜であり、無数の雑魚敵、敵の鉄砲玉といった感じです。
今の皆さんなら苦も無く倒せるでしょうが、包囲を抜けてザビーネらに攻撃されないようにご注意を。
ドラゴンゾンビ ×1
毒に侵され、死体と化したアリオス竜を、ハーデス=ザビアボロスが己の力でぐちゃぐちゃに融合させたドラゴンのゾンビです。
知能や攻撃力などはドラゴンに激しく劣りますが、その分生命力が異常に高く、また再生能力も持ち合わせています。
下記『味方竜防衛戦』で遭遇します。『味方竜防衛戦』のボス級の敵です。
ザビーネたちに攻撃させてしまうと、非常に厄介なことになりそうです。うまく攻撃をひきつけたり、全攻撃を集中させて倒してしまうのがいいでしょう。
以下は戦場となります。
ご武運を、お祈りします。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】ハーデス=ザビアボロス戦
ハーデス=ザビアボロスをせん滅します。
参戦者の中でも、戦闘能力に自信のある方が向かうといいでしょう。
最も危険な戦場です。グッドラック。
【2】味方竜防衛戦
戦場にアンチハーデス=ザビアボロスの力場を形成する、ザビーネ、ムラデン、ストイシャを防衛しつつ戦います。
ザビーネへの回復援護などで規定ターンを増やしたりもできますし、彼らを体を張って守ることも重要です。
また、ドラゴンゾンビという大型のボスも存在しますので、そちらを速やかに撃破する能力も求められます。
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