シナリオ詳細
<Stahl Gebrull>青空にエンドロールを
オープニング
●空飛ぶ島アーカーシュ
鉄帝国はノイスハウゼン上空より、ある日突然伝説が降ってきた。
これはそこから始まる物語の、いわばエンドロールである。
たとえば、かつて勇者アイオンに倒された魔王の居城であった――だとか。
あるいは、島の周囲は常に暴風雨に覆われており近づけない――だとか。
ないしは、百年ほど前に鉄帝国の調査隊が全滅した――だとか。
そんな伝説の浮島『アーカーシュ』を発見した鉄帝国軍はギルド・ローレットと共に空飛ぶ船にのって探検に出かけ、未知の動植物は前人未踏の遺跡群。そして古代に作られたであろう魔王城や、古代の古代に作られたであろう超兵器を目にすることになった。
帝国軍特務派のトップであるパトリック・アネル大佐は、帝国の未来を明るく照らすべくこの土地の探索を行ったのだが……不幸なことに彼は魔種へと反転。吹き上がる憤怒に駆り立てられるかのように、最終兵器である『ラトラナジュの火』を起動させてしまったのだった。
もしこの場にローレットがいなければ。彼らが立ち向かい戦ってくれていなければ。
帝国軍は突然の内部崩壊によって壊滅し、ラトラナジュの火は鉄帝首都へと撃ち込まれていたかもしれない。それがどれほどの被害を産むか計算すらできないが、少なくとも莫大な死と破壊、そして悲しみの連鎖がドミノ倒しの如くに広がったことだろう。
だが、ローレットは勝利した。
皇帝ヴェルスの勅命をうけ総司令官となったエーデルガルト・フローリジ大佐を筆頭として鉄帝軍探索隊は再編され、トップの反転によって行き場を失った特務派閥を起用することで統率と再起を図り――
さらにはゴーレムたちが制御機構(システムメタトロン)からの強制命令によって暴れだした際にも、彼らと交わした深い友情によって彼らの目を覚まさせ――
交流を図り少しずつ仲良くなっていった浮島の精霊たちとも結託し――
アーカーシュ最強の神霊にして最終兵器ラトラナジュや、精霊都市レビカナンの精霊マイヤ・セニア、そして反転し魔種となってしまったパトリック・アネルとの戦いについに勝利したのだ。
パトリックは軍人として死んだとして階級を特進し、アーカーシュは軍及びローレットの管理下のもと平和に維持されることとなった。
今ではシステムから解放された精霊達やゴーレムたち、そしてこの地に長く住み続けたことでもはや故郷としてしまったレリッカ村の住人達が、平和にくらすのみである。
「パトリック大佐――いいえ、将軍。あなたとのチェスゲームはこれで終わりです」
エッダ・フロールリジ(p3p006270)は総司令官のバッジを外し、空に翳した。
魔王城行きのワイバーン便が出るというので、天之空・ミーナ(p3p005003)とグリーフ・ロス(p3p008615)が乗り込んでいく。
「早く行かないとパーティーに遅れるぞ」
「やはり、全てが終わった後は祝勝会……なのですね」
「もう、戦いは終わったんだ。これからは、楽しいことをしなきゃね」
ハイペリオンのそばでいっしょにお昼寝をしていたジェック・アーロン(p3p004755)がいつの間にか目を覚まし、ぽつりと呟く。
ハイペリオン(p3n000211)は『そうですね』と優しく微笑んだ。アイル・リーシュはそんな様子に微笑み、空を見上げる。
「アーカーシュは、これからもこの空に浮かび続けるのですね。私達のような、精霊たちと共に……」
彼女のそばには、脱いだガスマスクとライフルが置かれている。
花がゆれ、風が草原を撫でていった。
さあ、空を見上げたまえ。
エンドロールが見えるだろう。
この物語につらなる、君たち一人ずつの名が刻まれた歴史が。
●レリッカ村のパーティー
戦闘が終わり、魔王城に避難していたレリッカ村の住人達は馴染みの村へと戻っていた。
戻ってきたのは彼らだけではない。アーカーシュを探索するにあたって絆を深めたゴーレムたちも集まっている。
村はこれまで以上に賑やかな場所になりそうだ。
「ローレットの皆さん! 今日はパーティーを開くんです。我々の悲願がついに達成されたことへ! そして皆さんの勝利を祝って!」
そう笑顔で語る村人の横ではカシエ=カシオル=カシミエ(p3p002718)がレリッカの村長アンフィフテーレ・パフとユルグ・メッサーシュミットに出迎えられていた。
「パトリック『将軍』の夢も、少なからず叶ったといえるだろう。そのことも、祝いたいな」
「魔種としてのパトリックさんは倒されたけれど、鉄帝の未来のために働いた頑張り屋さんは、こうして多くのものを残したのですね」
「うん……あの時は怖かったけど、今は……」
村に暮らしていた人々の多くは、これまで通りにレリッカ村での生活を続けるらしい。
ワイバーンや飛空艇を使った鉄帝国との行き来も可能になった今、彼らは真の意味でこの場所を故郷にすることに決めたのである。
更には、ゴーレムたちもアーカーシュのメンテナンスや修理という使命を続けつつ、定期的に村に遊びに来ては住民と過ごすようになりそうだ。
「アクス・ツー!」
「――」
リオーレ(p3p007577)が駆け足でやってきて、ゴーレムのアクス・ツーはそれを抱き留める。
「もう、大丈夫そうだね」
その一言だけで、リオーレとアクス・ツーは互いの心を深く通わせたのがわかった。
一方でレリッカ村の奥、精霊都市レビカナンの精霊マイヤ・セニアも皆を温かく出迎えてくれた。
「来てくれたんだね! ユーフォニー、リュティス……ッ!」
『この戦いが落ち着いたらまたレビカナンの復興をしないといけませんからね』と言ってくれたリュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)。それにユーフォニー(p3p010323)たちがやってきたのだ。
「勿論です。『命を賭して守り抜く』――いいえ、『全員で生き抜く』って言いましたから」
「レビカナンもこれからです。一緒に作っていきましょう」
あなたは今日、この場所で彼らと一緒に祝勝会を開いてもいい。
●ノイスハウゼン町にはまた日が昇る
アーカーシュの最終兵器である『ラトラナジュの火』を受けた町、ノイスハウゼン。
しかしパトリックが残した僅かな人間性が魔種の心と戦ったのか、狙いは僅かにそれ、『半壊』に留まっている。
奇跡的にというべきか、町での死者はないという。
それでも負傷者は多く、砲撃の余波でほとんどの建物が壊れている。
今では復興作業が行われているらしい。
『歯車卿』エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフはひっくりかえった執務室を片付けながら、町を訪れたアーリア・スピリッツ(p3p004400)へと振り返った。
「やあ、これはこれは……先の戦い、本当にお疲れ様でした。
この町には軍から資金が投入されましてね、復興が始まっているのです。レリッカからの移住希望者もいくらかいるものですから、瓦礫だらけにしておくわけにはいきません」
どこかさっぱりとした口調になっているのは、色々な仕事が一度は片付いたからだろうか。いや、彼ら文官にとっては戦後処理こそが仕事の本番なのかもしれないが。
「そうねぇ。私たちも手伝うわ。この辺りの瓦礫をかたずけたり、今後のことを考えたり……できることは多そうね」
いつかのギアバジリカのように、この場所が『伝説の落ちた地』として観光地化することだってありえるだろう。メンタルの強い鉄帝民ならやりかねない。
あなたはこの町の復興を手伝い、その作業や事業に加わっても良い。
●エピトゥシ城――the party night!
勝利の時は祝うものだ! 明日は無限に来るけれど、勝利した今という時間はこのときしか訪れない!
魔王城ことエピトゥシ城内に改築された広いイベントホールでは、早速パーティーの準備が始まっていた。
「あっ、ローレットの皆さん! 祝勝会が始まるって聞きましたよ。我々にも手伝わせてください!」
この城の存在によって命を救われた鉄帝国軍の兵士達が、休暇をぶちかましてでもこの場に訪れ、パーティーの準備に加わっている。
特にノリノリだったのはこのホールを作った一条 夢心地(p3p008344)、それにセントラルキッチンを設計したゴリョウ・クートン(p3p002081)、サヨイーツで一躍名声をあげた武器商人(p3p001107)たちである。
「戦ったあとは休む! 今宵はパーリナイじゃ!」
セントラルキッチンから運ばれるできたてのごちそうがいくつもの広いテーブルに並び、大がかりなライブステージでは音楽やダンスといったステージパフォーマンスに優れたイレギュラーズたちがプログラムの打ち合わせをしていた。
フーガ・リリオ(p3p010595)がトランペットの音を確認しながら、自分の番を待っている。
「ここで沢山の人達の命が救われた。けれど、それで終わりじゃないよな。おいらたちは、これからも生きていくんだ。楽しきくな!」
「それじゃあ皆、今日はもりあがっていこうね!」
パルス・パッション(p3n000070)がステージへと飛び出す。勝利を祝ってパルスちゃんのスペシャルライブが始まる!
今夜は勝利を祝ってパーティーだ。
あなたはこのパーティーに参加者として、あるいはスタッフとして参加してもいい。
- <Stahl Gebrull>青空にエンドロールを完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年09月14日 22時05分
- 参加人数77/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 77 人
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参加者一覧(77人)
リプレイ
●今日は平和なレリッカ村
「おかえり……アクス・ツー!」
ばんざいのポーズで出迎える『小さな王子様』リオーレ(p3p007577)にアクス・ツーが小走りに寄っていく。
横から既にじいやがシュッとハンカチを出し、涙ぐんだリオーレはそれを素早くキャッチした。
二人は再会を喜び、ふれ合い、そして……。
「ここが生まれこきょう、なんでしょ? この村にのこって、ここで暮らしてもいいんだよ」
アクス・ツーは暫く黙った後、レリッカの住民たちを見つめた。それだけで、わかる。
「大じょう夫だよ。ボク、たくさん会いにくるもの」
アーカーシュでの冒険は、沢山の出会いと発見、そして事件と冒険に満ちていた。
だが最後に残ったのは友情と、伝説。そして平和だ。
レリッカ村はその象徴といえるだろう。
「初めてレリッカに来た日の事が懐かしいね。
あれから変わった事も多いけど
レリッカの人達…村長さんやユルグさん達や猫達等が
幸せに過ごせれば僕も嬉しい。アーカーシュの猫ー!」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)が猫とたわむれ、存分に癒やされている。
その横では、組み直されたヒンメルゴーレムを挟んで『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)と『ゴーレムの母』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)が空を見上げていた。
「ようやく一段落ね。そっちは、どうだった?」
「あぁ、この機会に彼の話をしようか。何者にもなれなかった男。『ショッケン・ハイドリヒ』の話を」
レイリーは、かつてギアバジリカにまつわる大事件と……その中に紛れてしまった何者にもなれなかった男の話を始めた。最後の締めくくりはこうだ。
「結局、彼は最初から彼であったんだよ」
「なるほど、時折耳にする貴女の通り名はそこからって訳。パトリックといい、鉄帝の男連中は意外とロマンチストねぇ」
ジュリエットはヒンメルゴーレムをノックした。
「二人で修復したヒンメルから始まって、他のゴーレムも修復や量産をして。
この子達に掛けた願いは、同じ空の下、様々な場所で活躍することを祈って…だったわね。
まだまだ活躍するわよ、この子達は」
実際、ジュリエットの量産したゴーレムは魔王城を初め様々な場面で汎用敵な活躍を見せている。そもそもアーカーシュゴーレムの大半は島の維持のため、インフラ要員として設置されていたものだ。それをジュリエットたちが今の技術で補填した格好である。
夕焼けの守護者アメテュストのメンテナンスを行う『死を謳う者』ベルトア・ウル・アビスリンク(p3p010136)と『夕焼けに立つヒト』エーミール・アーベントロート(p3p009344)。
「いやぁー、でも一時はどうなることかと思った……。外野決め込むつもりだったんだけど、まさかエーミールの拾ってきた夕焼けの守護者アメテュストが操られちまうとはなぁ」
「私もどうなることかと思いました。せっかく見つけた子があんなことに巻き込まれるなんて……もう、こりごりです」
「こっち来たばかりの俺がなんでこんなことに……とは思った!」
「え? ベルトアがこっちに来た瞬間から『あ、騒動に巻き込んでやろう』と考えてたので次の騒動でも巻き込みますよ?」
「ちょっ、やめろ!!巻き込むな!! お前やっぱ、お前の兄貴そっくりになってきてる!!」
「えぇー? 楽しいからいいじゃないですかぁ~」
そんな風に楽しげな会話をしているその一方……。
「『もふもふ宝玉丸!』!」
ゴーレムの肩にぴょんと飛び乗る『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)。
「俺達はこの平和を勝ち取ったんだな。
今までもこういう大きな戦いには加勢してきたが…こんなに達成感があるのは初めてだ。
アーカーシュにはだいぶ関わってきたからだろうか…久々に色んな所を冒険したし」
大事な仲間もできたしな、と『もふもふ宝玉丸!』の肩をぽんと叩く。
その隣ではゴーレム・アニマートが目のライトをチカチカさせていた。
『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)がその肩に座り、羊羹をかじりながらソステヌートやディミヌエンド、それにカルマートの精霊たちとたわむれている。
「なんだかいろいろあって大変だったけど、でも結局ゴーレム・アニマートが壊れなくてよかったって思う私がいるのよね。
精霊達のため、って最初は思ってたはずなのに不思議と愛着がわいちゃって……。
ねぇ、アニマート。あなたも一緒に地上に来ない?」
そんな問いかけに、アニマートはハッとしたようにオデットを見て……そして『もふもふ宝玉丸!』やヒンメルゴーレムたちを見た。
「わかってる。アニマートにはアニマートの役目が、ここにあるもんね」
にっこりと、冗談よと笑うオデット。
『薔薇の』カシエ=カシオル=カシミエ(p3p002718)はそんな風景を横目に、ユルグやアンフィフテーレたちとの歓談を楽しんでいた。
「折角ですから、レリックガイドのウェナスさんやイェルナさんにも参加して頂いては?
私達はかつてのアーカーシュを知りませんけれど……同時に彼らも、今のアーカーシュを知らないでしょうから
この村から始まって、ゆっくり島を見て回って、そうして今の姿を知って頂くのはどうかしら」
「それは良い」
ユルグは喜色を浮かべ、カシエの提案を受け入れた。これからはきっと、アーカーシュを中心に彼らは手を取り合っていくだろう。
平和はいま、目の前にある。
ゴーレムのネバーモアとニューボーンは二人並んで、間に挟まって小さくなっている『最期に映した男』キドー(p3p000244)を見た。
「ほら。辛かった事でもなんでも、話したい事があるならいくらでも聞くぜ」
ネバーモアとニューボーンは顔を見合わせ、そしてキドーの肩へ同時に手を置いた。
まるで……キドーと全く同じ言葉をなげかけているかのように。
「アーカーシュが乗っ取られて騒ぎになってたのが嘘のような平和ね。今日はゆっくりと寛ぎましょ?」
地面にクッションを置いてすっかりくつろいだ『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)。彼女はアーカーシュアーカイブを眺めてむむむと唸っていた。
「未知の動植物や文化……とても面白そう。わたしも探してみたかったわ」
「なぁにまだ未調査箇所も謎も多い、セレナしか見つけられんこともあるだろうさ」
『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が『ガッハッハ!』と豪快に笑い、酒の瓶をあけて『解放の焔』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)のグラスに注いだ。
「セレナぁ…おさけはのんだらだめだぞ〜…ジュースにしておけ〜…
マリエッタ〜…おかわりちょーだい…
ん〜…外の風が気持ちいい、なぁ…!
おさけ、おかわり…ちょーだい…ぐぅ…ZZZ」
それを一気に飲み干したムエンはそのままこてんと横になる。
「あらら……」
「戦いの為に作られた場所であっても、今はもう…多くの方々の大切な場所。
多くの命を助けて…そして、幾つもの命を奪いました。
許される事ではないですけど…それでも、明るい未来へ奪った血と魂を導く為にも…私は笑顔を絶やしてはいけませんよね」
『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がグラスを傾けると、空からふわふわと気象精霊のポポッカとフラペペが降りてくる。こちらに手を振っていた。
「お前さんらがマリエッタと友達の精霊か、結構こいつ無茶するから近くにいてやってくれ」
アーカーシュでうまれた沢山の出会い。
それは精霊やゴーレムたちだけではない。こうしてイレギュラーズたちが絆を結び、深める出会いもあったのだった。
どれが一番かだったかなんて、決められないくらいに。
「ようこそ、レビカナンへ!」
『レビカナンの精霊』マイヤ・セニア(p3n000285)が手を広げ、今一度『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)たちを歓迎した。
「レビカナンを救ってくれてありがとう。
それだけじゃない、ルーファウスもモアサナイトも、フローライトアミーカもクロスクランチも……私も。あなた達に救われた。だから、本当に感謝しているの」
「マイヤさんたちが無事で本当に良かったです……本当に。
モアサナイトさんもルーファウスさんも、フローライトアミーカさんもクロスクランチさんも、一緒に過ごせて嬉しいです」
それはもう数え切れないほどの相手に挨拶したいユーフォニー。
頭の上ではムシャムシャくんが花をだしてむしゃむしゃ歌っていた。
「これからの復興も、良ければお手伝いさせてください」
「俺もだ。できる限り力になる」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はフローライトアミーカのそばで楽器でケルト音楽を演奏していた。
「本当に、マイヤさん達を守れて良かった。
今度こそ、この街を完全に復興したいな。
地上はまだ平和とは言えないが……それでここが害されないように、俺はこれからも頑張るよ」
「この前の戦いでも頑張っておられましたし、ゆっくりと羽を休めて下さい。後学の為に教えて頂きたいのですが、気に入ったお料理などあるでしょうか?」
『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)はそんなふうにマイヤに問いかけると、うーんと考え込んでしまった。どうやら沢山気に入って選べないみたいだ。
今日もリュティスが作ってきたバスケットいっぱいの軽食を、皆で楽しく食べている。
「何だかんだ皆無事で何より、ってトコにしとくか。
クロスクランチの奴が権限掌握された時は個人的に腹決め掛けてたけどな……無事に帰ってきたからなでなでしたろう」
『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)がサンドイッチをかじって色々とかみしめた顔をする。
「やっぱり鉄帝式にはブルストとかそこらも用意しといた方が良いか? こういう時に女子力あるチョイスが出てくるとありがてぇんだが……」
「安心しろブルストは持ってきた! これは美味いからな皆に振る舞うぞ。あとは、新鮮な野菜だ。シャキシャキでうまい!」
『黒顎拳士』アンドリュー・アームストロング(p3n000213)が大胸筋を躍動させながら堅い弁当箱をドンと置いた。
「いやー、無事にこのレビカナンを守れて良かったな! カイト!
まだまだこれから大変だと思うが、何かあれば手伝うぞ。
だから、マイヤたちも遠慮無く俺達を頼るといいぞ!
ふっふっふ、気分が上がって来たぞ!
フン! 俺の筋肉を見ろ! マイフレンド!」
「今日もアンタそんな感じなんだな」
その横では『逆式風水』アルヤン 不連続面(p3p009220)がサンドイッチに手を伸ばす。
「制御されてた時の後遺症とかは残ってないんすかね。それに自分も、マイヤが操られていたとはいえ結構ズバズバやっちゃったっすからねー。心配してたっす」
あのときは仕方なかったとはいえ、こんなにも深い絆を結んだマイヤと戦わねばならないと知ったときは流石のアルヤンもプロペラの回転を鈍らせたものだ。などと回想しながらサンドイッチをしゅんって食べた。
えへへと照れたような、あるいは苦笑交じりの表情をうかべ、しかしマイヤは最後にぱっと晴れ渡るように笑った。
「まだまだこんなに崩れてるけど、いつか綺麗なレビカナンに戻してみせる。だから、また遊びに来てね。外のお話を聞くのとても楽しいから。待ってるわ」
●そしてそれぞれの
『夢語る李花』フルール プリュニエ(p3p002501)がアーカーシュの精霊達とたわむれている。
オラージュやフゥー、そしてローといったこれまで出会った精霊たちだ。
彼らはどうやらアーカーシュの管理という使命から一時的に解放され、今ではなかば自由意志でもってアーカーシュのインフラを動かしていると聞く。
「それにしても。ここは良い風が吹きますね……」
そういって空を飛び回るフルール。
『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)は片目でそれを見てから、ハイペリオンのおなかに顔を埋めてすやぁっと目を閉じた。
「風の当たるところでお昼寝。魔王がどーだの古代兵器がどーだのってときはのんびり空を眺めてられなかったけど、やっぱここは空が近くていいな。風も気持ちいいし、絶好のお昼寝日より。青空……」
ハイペリオンはそんなカイトの背をやさしく撫でると。隣でガスマスクを置いた『天空の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)とのんびり座るアイル=リーシュに目を向ける。
「くぁ……よく寝た」
「おはようございます、ジェック。大地の子ら……そして天空の勇者」
そんな呼び名が、すこしだけこそばゆい。
ジェックは手持ち無沙汰なのか、アイルに言ってから花冠を作り始めた。
大きなものと普通サイズを二つ。それをアイルとハイペリオンの頭にのせた。
「これまではさ、ハイペリオン、キミの背に乗るのは戦う時ばかりだった。
これからは……もっと、色んな所を見に行こう。
戦うためじゃなく、色んな景色を見るために。
それで、アイルに、皆に伝えに来よう」
「私達にですか?」
アイルは驚いたように瞬きをして、そして空をみあげた。
「待つばかりの人生に、生きる楽しみができてしまいましたね」
それぞれのイレギュラーズが、それぞれの形でアーカーシュの伝説を締めくくっている。
例えば『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は自分らしくというべきか島にある武器のメンテナンスをしていた。「勝ったとしてもまた戦いがある可能性が高い」とは彼の弁だ。「メンテナンスを通じて少しの可能性でもいいから超技術の一片でも我が物にして、妖精郷の守りの設備に使えたらいいな」とも。
『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)はこの島にやってきてすぐに手を付けていたオイスター・パール養殖場に訪れていた。
「いやー、やっと落ち着いてきた感じね。こっちにもしばらく立ち入りできなかったし……」
レリッカ村の食糧事情はもとより、鉄帝国にもたらす恩恵も少なくない。
そうなることを望んだ誰かさんも、きっと浮かばれることだろう……。
「呼び声を発した奴がどこかにいるってことは、そいつも倒さにゃならん。
怒るのは大事なことだ。大事なのは、憤怒が、怒りが己の主人にならないこと。己が何者か認識していること。
耐え過ぎたんだな、あの大佐殿は」
所変わってショコラ・ドングリス遺跡の前。『奏で伝う』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)はギターの弦をはじく。
「おれも同じく、「馬鹿」なんだろうなぁ、パトリック」
そしてまた所変わってジーク・エーデルガルト遺跡。
『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)は『樹の角と顔』に会いに来ていた。
羊羹をきりわけ、並んでもふもふと食べる。
「ボクがつけた『樹の角と顔』って名前どう思ってる?」
「率直で良い名だ。そも、我は名を持たぬ矢の門番に過ぎなかった。護る理由も忘れてしまうほど長く、ここにいたが……」
「ボクはあの時あなたに会えて良かったなって思うんだ」
『樹の角と顔』はリュカシスの顔を見て、フンと少しだけ笑った顔をした。
●ノイスハウゼン/それでも地球は回っている
「ラトラナジュの火――敵側の最終兵器と聞いていたけど、ここまで惨いなんて……」
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は半壊した町の様子に愕然としていた。
家屋の倒壊は当然のこと、地形は大きくゆがみ氾濫した河川が土地の大半を水浸しにしている。そのおかげで火災による町の全焼を免れたのは不幸中の幸いだったのかもしれないが、畑への被害は甚大だ。家畜も多くが逃げるか死ぬかしてしまっている。元々食糧自給の難しい鉄帝国でこの被害は、ある意味致命的なものになるだろう。
……だがイレギュラーズたちがいれば、話は違う。
「体一つでも町の為にやれる事は沢山あるよね。一日も早く、人々が元の生活を取り戻せるように――」
早速走り出すトールと同じく『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)も行動を始めていた。
「しかし何というか、凄まじいなあ。隕石かってぐらいぶっ壊れてますけど、これで死者が出てないって言うんでしょ」
町のけが人や復興作業で怪我を負った人々に治療を施しながら、額にういた汗を拭う。
「パトリック・アネル……、良く知らないけど、確かに高潔な軍人だったんでしょうね」
「――」
『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)が空から舞い降り、いっぱいの救援物資を地面へとおろす。半壊したノイスハウゼンには飛空艇を着陸させるスペースが乏しく、なんだかんだで人力で運ばねばならない場面もまだ多い。ナハトラーベはそういった部分で活躍していた。
勿論、運んできたのは物資だけではない。
「さぁて! 復興といえば運動! 動けば腹が減るのが道理!
ならば饂飩を作るのが世界の定め! という訳でお饂飩作りにきたぞい!」
「物を運んだりできるように木馬も一緒なのです。
少しでも早く、いつもどおりに戻れるように。
ニルは、せいいっぱいお手伝いしますね。お腹が空いたとき用にタルトも持ってきたのですよ」
「今は瓦礫運び。少しずつでも一緒に頑張ってこ。な、一人やないんやし」
『鉄帝うどん品評会2022『金賞』受賞』御子神・天狐(p3p009798)や『眠らぬ者』ニル(p3p009185)たちが食料を運び込み、『放逐されし頭首候補』火野・彩陽(p3p010663)が瓦礫をひとつひとつ運び始める。
『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)はそんな中に混じって、集まった人々に炊き出しを配っていた。
力自慢でも卓越した医術があるわけでもないと彼女自身は自戒するが、彼女のもたらす笑顔がノイスハウゼンの民に『まだ自分達は大丈夫だ』と思わせてくれる。
笑顔はそれだけで人を救う力になるものだ。なにより、笑顔を浮かべられるその力が。
「ひひひ、人が無事なのは本当にラッキーでしたね。いいですよ。手伝っちゃいましょう」
『こそどろ』エマ(p3p000257)はそんな中で、瓦礫の中に埋もれた貴重品や別途運び出す必要のあるものを見つけては選別していた。
『目が良い』というのはこういうときにも役立つものだ。
「観光地化ってヤツが実現して、鉄帝のミンナがここに来れるようになるとイイよね! 高いところにあるから避暑地にもなりそうだよね!」
『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もそれを手伝いながら、未来のことを考える。力自慢が役立つのも、やはりこういうときだ。
「やはり困っている方がいるのであればその力になりたくなってしまうのが冒険者ってやつですぞ。
スケさん、骸骨ではございますが力仕事はそこそこできますぞー! ご覧くだされこの堅固な上腕骨を!」
むんっとダブルバイセップスポーズをとってみせる『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)。
子供達がそれを見てきゃっきゃと笑っている。イグイナートもどこか微笑ましい。
一方で、『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)はけが人の治療に当たっている。鉄帝南部ということもあって町と町の間が離れており、町ごとの医者も多くはない。『災害』で医療物資が不足すればやはり医療支援は重要になるだろう。
「怪我人は休むのが今の役割よ! あんまり動いちゃ駄目でしょ?
……幸い、鉄帝本国に何も影響がなくてよかったわ…! きっと鉄帝は平和のままだし、久しぶりに故郷でのんびりしたいものね!」
「負傷者の復帰が早ければ復興も早くなるかもしれませんし、それにバックアップし続ければ士気の向上にも繋がるかもしれませんからね」
『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)はそんな風に言いながら、負傷者の包帯を取り替え薬を塗っている。
「さぁ、希望の焔をその胸に灯しましょう」
「鉄帝の住人は強靭なのだな。
ふふ、これを見たまえ。ヒルのぬいぐるみだ。私の治療を受けたい気分になるだろう?」
一方で、『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が治療の合間にヒルのぬいぐるみを子供達に見せていた。
一部の子供は『えぇ……』てなっていたがまた一部の子供はドはまりしている。何が受けるかわからんものである。
「しかし、鉄帝への来訪がこんな荒事の真っ最中になってしまうとはね。次は平和的な観光で訪れられたらいいな」
そこへ、『特異運命座標』アイス子(p3p010815)がやってきた。
「誰も、この瓦礫を前にして諦めてない…復興のために必死だ。気圧されてる場合じゃない」
頬をぺちぺちして気合いを入れると、ボール状の氷にアイスブレスを浴びせてアイスキャンディに変えていく。
それを子供達へと配り歩くことにした。
皆はまだまだ大丈夫。そばに居てくれる人が居る。そう、教えるために。
●魔王城で盃を
「今日はアンタらも一緒に、パーッと楽しもうじゃないか! こういうのは賑やかにやったほうが楽しいんだからさ」
大型ホールでグラスを掲げ、『欠け竜』スースァ(p3p010535)は共に戦った鉄帝軍人たちと乾杯した。
「なんもかんも上手くいったワケじゃぁないけどさ、それでも生き残ったんだ。
明日からも行きていくために、これからのために、こういう宴で気持ちをスッキリさせるってのは必要だ」
「ごちそうと聞いては黙っておれん! 我も参加するぞ!
見た事がない料理やイレギュラー達の作っとる料理もウロチョロ食べ歩きする予定じゃ! 楽しみじゃのう…ムフフ♪」
『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は並ぶビュッフェスタイルのご馳走に目をキラキラとさせている。
「ハイカラな物がいっぱいありそうじゃ。片っ端から飲み食いするぞぃ!」
結構な速度で無くなっていくが、会場には絶え間なく軽配達特化型ゴーレムによって料理が運ばれてくる。
『闇之雲』武器商人(p3p001107)の運営するサヨイーツのロゴがゴーレムにはついていた。
中には円柱に猫の頭がついたゴーレムもおり、なんか巧みにテーブル間を行き来していたりする。
「各部屋からの注文も受け付けるから利用はお気軽に。商人ギルド・サヨナキドリをよろしくねぇ。ヒヒ!」
「ぱっるすちゃああああああああああああああああああん!!!!!
はぁ、こんなところでも本格的なパルスちゃんのライブが見られるなんて。
ローレットのイレギュラーズやっててよかったよ。
このイベントホールを作ってくれた殿にも感謝しないとだね」
一方で、ライブステージではパルスちゃんのライブが開かれている。『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は今日で全部出し切るぞって勢いでサイリウムを両手で振り回している。
コールアンドレスポンスを完璧にこなしたその後は、ステージからはけたパルスにかわって『殿』一条 夢心地(p3p008344)が金色の衣装で現れる。
「魔王城~ むかしはそう呼んだかもね~
エピトゥシ城~ かつてはそう呼んだかもね~
だけど だけど ほんとうの名前は~
そうさ 風雲 夢心地城
みんな みんな お集まり頂いて ありがとう~」
バックダンサーと共に踊り出す夢心地。
『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)と『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はそんな派手なステージを眺めながらグラスで乾杯していた。
「そういや、2人でっつーのはなかったな。大概誰かしらいたからな。人徳って奴だろ。いまさらだが改めて、成人に商会立ち上げ、おめでとさん」
「……ひとつ聞きたい事があるがいいか? ラサでの竜種撃退に今回に、大舞台で同じチームの時はカバーしてもらってるような気がしてね」
「あぁ、いや、偶然もあったぜ。竜はほっときゃラサもやばかった。
今回も足の要りそうな所があったから手ェ貸しただけだ。
……ただまぁ、おまえさんが。”ラダがいたから”っつーのは嘘じゃねぇ」
二人は今一度顔を見合わせ、そして静かにもう一度グラスをあわせた。
『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)はジュースで乾杯しながら賑やかな光景を眺めていた。とはいえ本命はステージではなく猫さん部屋。
「猫さん部屋…色んな猫さん部屋があって嬉しい。
僕が作った猫さん部屋で猫さんとのんびりしよう。
猫さん可愛い…ぬくぬくで癒されよう……」
部屋へ向かう途中、『魔法騎士』セララ(p3p000273)が庭でセララガーデンゴーレムと一緒にお花へ水をやっているのを見た。
「魔王城のお庭にお花畑を作るのだー。
もしくは農作物とかでもいいよね。お芋とか?
あるいはお花畑とお芋の両方に挑戦!」
どうやらまだまだセララの挑戦は続いているらしい。
「この度はお疲れ様じゃな。このエピトゥシ城の先発隊やら最初に入った時の蝙蝠に会った事やらが昔のようじゃな……」
「お疲れ様ね! はじめは空飛ぶ島なんて、おとぎ話かと思っていたわ」
鉄帝国軽騎兵隊軍帽を片手に、『橋を提案した』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は『セイバーマギエル』リーヌシュカ(p3n000124)の横に立っていた。
魔王城のバルコニー(?)から見える景色はかなり幻想的だ。精霊にゴーレム、空に浮かぶ無数の小島。
「ワシの話に付き合ってくれてありがとうじゃよ。
それとイベントホールでランドマスターメロンのソフトクリームを提供しようと思う、良かったらエヴァンジェリーナ殿もお一つどうかね?」
と、そこへ『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が手を振りながらやってくる。
「結果はどうだったかしら、軽騎兵隊! こっちは塹壕戦で敵兵回収して人死に減らすなんてことやってたわ? エーデルガルト(大将首)はちゃんと残ってるのが何よりの証拠ってね!」
「ええ上々よ、騎兵隊! そっちの武勇も聞いているわ! だって気になるんだもの!」
イーリンの渡したグラスを受け取り、リーヌシュカとオウェードの三人でノンアルコールドリンクで乾杯をする。
「――今回は別の戦場だったけど。武勇は聞いたわ。次は、同じ戦場で轡を並べましょう。今回語った武勇が、次は二人の武勇になるように、ね」
人をダメにするベッドルーム。戦時中は医務室としても使われていたが、今は本来の用途……つまりはみんなでだら~っとするために開かれている。
『メタルカオス・ライダー』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)も、だらーっとする人達に交じってクッションにうもれている。
考えることは沢山あるようで、その多くは焦燥に起因していた。
「強くならなきゃ……」
呟きながらも、何気なく周りを見渡す。
「それにしても、大変な戦いでした。僕は召喚してすぐに決戦に参加したわけですが、先輩達はこういう戦いを何度も経験されているんですよね。
後学のためにそういった武勇伝も聞いてみたいです! お酒で気分が大きくなれば色々な話が聞けそうです!」
『癒しの黒兎』常田・円(p3p010798)がドライフルーツやスナック菓子、そして炭酸飲料のボトルを持ち込んでパジャマパーティーさながらの様相を作っている。
「遠慮しないで、何でもリクエストしてね。お腹がちぎれるぐらい、たべさせてあげる」
一方で『ライブキッチン』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)はきつね色のヴィーナス正純·ドラゴン風を用いたカレーライス、黄金色(こがねいろ)のヴィーナス正純カレーといった料理をワゴンで運んできては仲間に配っていた。
パジャマパーティーというなら彼女もパジャマなのだが、それはもうすけすけなネグリジェなので見た目がすごい。
「青薔薇隊の皆さんもお疲れ様でした。今回の決戦ではクウハさん、コヒナタさん、フーガさんとリフォームしたベッドルームが大活躍でしたね」
『赤薔薇の歌竜』佐倉・望乃(p3p010720)はにこにこしながらパエリアをつつき、ボードゲームのルーレットを回している。どうやらこのまま朝までだらだらコースのようだ。
「私、結婚するので皆様これから既婚者として宜しくお願いしますわ!」
『青薔薇の御旗』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)がそんな中でいきなり凄いことを言った。ハーブティーや昔着ていた服を持ち込み、服はどうやら壱和に譲るために持ってきたらしい。
「おう、末永くお幸せにな」
『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は持参した結婚祝いの手作りプリンを差し出し、ニッと笑った。
「しっかしなんかめちゃくちゃ役立ったらしいな、この部屋。
リフォームした甲斐がある。
決戦頑張ってた奴らはお疲れさん」
そう言って今度はコヒナタたちの持ってきたボードゲームを開き始めた。
「結婚ですって!? おめでとうございます!」
「レイアネーちゃんツガイが出来たのカ? おぉー、おめでとナー」
二重にめでたい、とボトルを掲げる『挫けぬ魔弾』コヒナタ・セイ(p3p010738)。
周りにはミートパイやら砂糖菓子やら。語彙大富豪のカードゲーム(?)を持ち込んでこれから遊ぼうと広げていた。
「ン、望乃ネーちゃんが作ったカレーうめぇナ!
服は……ちっと派手過ぎる気もするガ」
などと言いながら『ねこのうつわ』玄野 壱和(p3p010806)は持ち込んだスナック菓子やジュースを広げ、だらだらの極みみたいな状態を作り出している。
場も充分できあがった所で、『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)がトランペットを取り出す。
思えば、アーカーシュはフーガにあまりにもピッタリな場所だった。鳩でも飛ばせばより似合うだろう。が、これから演奏するのはゆったりめの音楽だ。
「クウハ、コヒナタ…一緒にリフォームしてくれてありがとう。
青薔薇救護隊の皆…お疲れさん。
今夜は細かいことは気にせずのんびりしようぜ」
フーガが吹き鳴らす音楽に、みながまったりとまどろみ始める。
(親友達の傍にいられることが、おいらにとっては一番の幸せだ……)
●無限の明日に乾杯
幻想の多種の食材を用いた揚げ物
鉄帝の肉を使った鉄板焼き
天義の清水を使った汁物
海洋の海鮮を使った焼きそば
練達の技術を用いたラーメン
傭兵のスパイスを使ったカレー
深緑の果物を使ったケーキ
豊穣の米を使った寿司
覇竜のドラゴニックシャークを使ったおでん
……これが、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)がセントラルキッチンから生み出した多種多様な料理である。オーソドックスながら世界を広く感じられるこのメニューはさすがグローバルな活躍をするローレットの魔王城支部といったところか。
「ぶはははッ! これらが安定して提供できるなら今後の運用も問題ねぇってワケだな!」
「というわけで鉄帝のワイン30年物を樽で注文しておいた。総司令官の名前で。
領収書に0がいっぱい並んでたが私は知らない。正当な報酬だ」
『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)がそこへなんかすげー物量のワイン樽を運んできた。
「あ、私が持ってきたワインの樽にビールかけようとした奴は許さないからな。許さないからな」
「色々高そうなお酒がいっぱいでわくわくするね! まさに天国! ヴァリューシャ!たくさん飲――あああ!? 三人共!? 喧嘩しちゃだめだよ!? うわ!? お酒を掛けるんじゃあないよ!」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)がとめる間もなく、早速『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)や『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)たちがビールをかけあっていた。
「スルーして優雅に勝利の美酒をブハッ!? ……やってやろうじゃねえかよこの野郎!
ああっ、もうっ、いつも通りの鉄帝が帰ってきたなぁっ!!」
「待て、今は大佐モード……うおー負けてたまるか! やったるでありますよクソ赤毛がよ!!」
そこへ堂々割り込んでいく『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)。
「あっ、こらエッダ!ビール掛けだなんてなんて勿体ない事をしますの!美咲も乗らない!
私が普段、お酒を飲むためにどれだけ苦労をしているか…
その辺に撒くくらいなら、私の口に撒きなさい! 主の罰が下りましてよ! 主にこの拳で!
ふふふ、ついに決着をつける時がやって来たようですわね。マリィは勿論、私の味方ですわよね?」
「うおー!!! 勿論私はヴァリューシャの味方だよ! 任せておくれ!」
そして案の定のっかるマリア。
もう誰も止められないと察したのか、『鍛えた体と技で』コータ・ヤワン(p3p009732)はのんびり飲みのモードに入っていた。
「ものすごい戦いだったけど、何とか勝てたな! 俺も壁役として少し成長できた……と思う。とにもかくにも、今日は思いっきり飲んで食べて楽しむぞ!」
『雌餓鬼』弥多々良 つづら(p3p010846)が持ってくるお酒をもらい、シリアスに飲んでいる。
よく見るとつづらはなんか端の砲で串焼きを堪能していた。
「おう給仕さーん。ステージ側にじゃんじゃん酒と飯運んでくれい!」
「……あ、視界が少し回ってる……ははは、お酒もご飯もおいしかったな……。
次の戦いの後も、こんな風に祝勝会ができることを……」
そして酔い潰れたらしいコータがぱたりと倒れた。
その一方。『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)はハイペリオンのおなかに寄りかかっていた。
「ぼくがんばったんだよ、ほめてほめてー!」
「はい。とっても偉いですよ。よくがんばりましたねリュコスさん」
ハイペリオンがリュコスの頭を優しく撫でた。
場はもう完全にビール掛け祭りでできあがり、できあがりきり、全員ぐでんぐでんになった……そのあとで。
「褒美だ。貴様の問いに、今日の私は“エーデルガルトとして”答えてやろう」
ワイングラスをふたつ挟んで、美咲とエッダが隣り合っていた。
「問いというか。ラトラナジュの火ですが……『誰か』が鉄帝に手を付けようとしたら迷わず撃ってください。発射権限はともかく鉄帝領は管轄でしょ?」
「…………」
エッダは黙り、そしてグラスを傾ける。
「その役目は……そうだな。ある人間に任せてある。許可を下すのは私かもしれないが、発射スイッチには手を出さない」
「それは……」
美咲は何かを言おうとして、口を閉じた。
裏にある意図を、察したがために。
『つまさきに光芒』綾辻・愛奈(p3p010320)が銀のトレーを持って歩く。
魔王城の一室。『紅冠の矢』が二つ保管されている部屋へ運ぶためだ。
「お待たせしました。こちらでよろしかったでしょうか?」
愛奈がグラスを渡すと、『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は形だけだがそれを受け取る。
「紅冠の矢はいずれ使うことがあるのでしょうか?
封ずることは難しいのでしょうか。
強すぎる力は抑止力にもなりますが、争いの火種にもなります」
「封じることは……できるだろう。破壊することは難しいかもしれないが」
『紅矢の守護者』天之空・ミーナ(p3p005003)も同じグラスを受け取り、グリーフと共に矢を見つめる。
大きな、そして美しい結晶体だ。
「資料をあさってみた。先の大戦を見る限りやばい威力なのは見えてるからな…この力が罪もない人々を巻き込む可能性は高いだろう。
だけど私なら。死神の私ならば、罪を背負うのは慣れているさ…だから、私だけが知っていればいいんだ」
「いいえ、そうではありません」
この浮島は、確かに巨大な兵器だった。
だが、魔王の城が賑やかなパーティー会場に、ゴーレムが配膳係になれたように、力もまた使う者次第であるはずだ。
そしてその力を、自分達が握っている。
名目上鉄帝国の管理下に置かれたといえど、事実上はローレット・イレギュラーズが魔王城支部と共に握っている。
「私達が背負うのです。見つけてしまった――手に入れてしまった、私達が」
「…………そうかもな」
今は、羽を休めよう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
そして時代は、次へと進む……
GMコメント
■■■プレイング書式■■■
迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
・三行目:実際のプレイング内容
書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合は【コンビ名】といった具合に二行目にグループタグをつけて共有してください。
また二桁台人数になるようなグループを組み、内部でも班分けが行われる場合はグループタグの隣にサブグループタグを設置するようんびしてください。
例:【新鮮組】【晩餐隊】
■■■パートタグ■■■
このシナリオではいくつかのパートから選んで行動することができます。
実質的には他のパートのとかもリプレイ描写外でちゃんとできているものとします。
なので、一番描写して欲しいなーと思うパートをここでは選び、プレイングにしてください。
【レリッカ】
村でゴーレムたちと一緒にパーティーを開きます。
青空の下で村人やゴーレムたちとたわむれる一時をお楽しみください。
ゴーレムに関しては『アーカーシュアーカイブス』に情報が纏まっているのでパーティーに呼んだり一緒に遊んだりして頂いて大丈夫です。
ゴーレムを呼ぶ場合は、人違いならぬゴーレム違いを防ぐため、アーカイブスにある名称をコピペしてご指名ください。
https://rev1.reversion.jp/page/aarchives
レビカナンの人々もこのパーティーに参加しています。
【ノイスハウゼン】
半壊したノイスハウゼン町の復興作業に加わります。
この町は死者こそ出ていないものの、建物の多くが壊れてしまっています。
住民は怪我の治療をあらかた済ませているとはいえ大体皆けが人なので復興作業が若干遅れ気味です。
一緒に瓦礫を運んだりしてもいいし、マクロな復興事業に着手してみてもいいかもしれません。
【魔王城】
魔王城ことエピトゥシ城には、こういうときを見越してなのか広いイベントホールが建設されています。
ここでみんなでパーティーを開きましょう。
勿論、城内に作った自分の部屋でゆったり勝利を祝ったりしてもOKです。
そういった時は是非グループタグをご利用下さい。
メインのイベントホールではパルスのスペシャルライブが始まり、ステージパフォーマンスの飛び入り参加も大歓迎です。
鉄帝国からのゲストもおります。場合によってはここに登場できるかもしれません。
【その他】
アーカーシュのどこでも(特に危険がなければ)行くことが出来ます。
発見し名前をつけた養殖場や花畑、アースマーンのような秘境に今一度訪れてみるのもいいかもしれません。
その際はパートタグの右側に行き先を記載するようにしてください。
例:【その他】ウェッジ・ガーデン
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