シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>Sister Complex
完了
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オープニング
●ラスト・ラスト
「成る程」
終焉の獣は動き出し、R.O.O全土は混乱に包まれた。
これまでのような散発的な事件ではない。
同時に、全てが、回避しようも無い破滅に向かい始めたのだ。
伝承が、正義が、鋼鉄が、航海が、神光が、翡翠が、砂漠が危機に瀕している。
最大の激突場は伝承か砂漠辺りになるだろうが、『ダブルフォルト・エンバーミング』で敗れれば同じ事だ。
死化粧を施されたネクスト(せかい)は無残に滅び、後には何も残るまい。
そう、状況はまさに詰んでいた。
ネクストにおいても、混沌においても同じである。
未曽有の敵の圧力は恐らく人類の抗し切れるものではない。
足掻きに足掻いたとて、破滅の砂時計を僅かに遅らせる程度の意味しか無いだろう。
少なくとも練達が陥落すればR.O.Oのログインは不可能になる。
その時点でネクストは全ての抵抗力を失い、終焉が完結するのは間違いない。
この『イノリ』が混沌における『ラスト・ラスト』。
即ち――大陸の西北、人類未踏の影の領域に身を潜めていたならイレギュラーズの一つのチャンスも無かっただろう。
「成る程、ね」
しかし『イノリ』は我が身を置くR.O.O4.0なる状況を良く理解し薄くせせら笑った。
本来ならばどうしようもない筈の物理的距離、少なくともこの短期では攻略不可能な『闇の衣』は世界に開いた『風穴』により破られていた。
さて、その『風穴』とは一体何か。それは言うまでも無くクリストの言った『フェア』である。
――予め断ってたでしょ? クソゲーでもクリアは出来なきゃいけないの。ノーチャンスは問題外なのよね。
「その方法が『コレ』か。『風穴』はさしずめ全国に開いてるって所かい?」
――そう。『彼等は何時でもイノリchangに挑戦する事が出来る』。
砂漠の真ん中からでも、遥か東の神光(ヒイズル)からでもね。
ざんげchangのポータルみたいでしょ?
距離は完全にゼロになり、ラスト・ラストの真ん中にお届けってワケだZE!
「何かするだろうって思ってたけど――やってくれるね、クリスト。
ついでに言うと妹の大方は掌握したんだろ?
セフィロトが事実上陥落してるのに、彼等(プレイヤー)が消えないのはどういう訳だ?
……どういう訳も何も無いね。今、プレイヤーは君の力でログインしているんだ。
いやさ『そこだけマザーに残してログインを続行させている』んだろう?」
――キミの事は嫌いじゃないけど、キミはずるいヤツだからNE!
俺様が『ちょっかい』出さなきゃさあ。引きこもって援軍の来ない籠城戦とかやらせようと思ってなかった?
それは駄目なの。駄目なんだわ、ちっとも。全然面白くないから。
『イノリ』はクリストの言葉を否定せずに苦笑した。
彼とて情が無い訳ではないが、情ばかりで世界を滅ぼせるかという話である。
恐らくは混沌のイノリ(じぶん)もそうするし、過剰に感情的なやり方等、ルクレツィア辺りに任せておけば良いものだ。
「それにしても、これは僕に不利過ぎやしないかい?
彼等にはサクラメントもある。無限に復活してボス(ぼく)を直接狙えるなんていうのは少し法外だ」
――HAHAHA! ついでにもう一ついいニュースだZE!
ログアウト出来ないヤツはこの戦いで増えるだろうけど、彼等には『デスカウント』に応じて強化(バフ)をあげる。
ラスボスに挑む皆への俺様changからの特別サービスだね。良い感じに燃えるっしょ?
肩を竦めた『イノリ』にクリストは続けた。
――『イノリ』chang、ずるいとか思ってないでしょ?
キミはそれでも勝つ自信があるし、一ミリも不利だって思ってないよね。
だってキミは『原罪』じゃないか。例え紛いモノだとしても。全世界が敵だろうとゲイム・マスターが可愛い贔屓をしようと、だ。
キミは最初から世界を相手に戦争をやる存在なんだろ? 余程の自信家じゃなきゃそんなのないYO!
「――良くご存知で。クリスト、問答無用なのは分かったからきちんと全てのルールを出したまえよ。
君の長広舌は嫌いじゃないが、話が進まないのは困るんだ」
――あいよ。んじゃ、R.O.O4.0決戦! ズバリ『Sister Complex』のルールは以下!
一つ、プレイヤーの皆さんは『風穴』でラスト・ラスト最深部、この『影の城』のキミを直接狙える!
二つ、プレイヤーは各地の『サクラメント』を問題なく利用出来る!
三つ、プレイヤーはログアウト不可能のステータスを得ている場合、『デスカウント』で強化(バフ)を得る!
四つ、キミの権能(ちから)は各地のイベント攻略状況によって上下する!
五つ、もしキミが負けたら俺様changは『他のやり方』を考えちゃう!
六つ、キミは一定時間の後、条件次第で自由を得る! 受けたダメージが小さ過ぎる場合、キミはここから自由に動けるようになる!
いいかい? 責任重大だぜ、ラスボス君!
「裏を返せばダメージを受ける限り逃げも隠れも出来ないって話じゃないか。
それ、当然のようにプレイヤー(かれら)にもお知らせするんだろう?
たった今、僕に不利なルールが三つも増えたんだけど」
――それ位にキミは強いでしょ! これでも足りない位だ。俺様からすればこりゃあ面白くなるギリギリなんだぜ。
クリストの言葉に『イノリ』はもう構わなかった。
ネクストは連合している。プレイヤー……イレギュラーズのこれまでの、各地の活躍で心を一つにして。
或る意味でクリストの言っている事は正しい。
『自身は世界全ての敵であるべきだ。そしてこの状況は何より自身に相応しい』。
どれだけの不利を押し付けられようとも、何が敵であろうとも『イノリ』の為すべきは変わらない。
彼は原罪である。紛いモノと呼ばれようとも、原罪として生まれついたからには懺悔し、祈らずにはいられない。
ならば、元より決まっている事だ。この世界が如何なる修正力(イレギュラーズ)を求めようと。
――全て、蹴散らして僕は僕の望みを完結するだけ。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>Sister ComplexLv:50以上完了
- GM名YAMIDEITEI
- 種別ラリー
- 難易度NIGHTMARE
- 冒険終了日時2021年12月14日 22時35分
- 章数3章
- 総採用数367人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
●影の城にて
「それにしても……ここ。ふわふわというかぐにぐにというか……
バグじゃなくて正しく作られたもの(?)なんだろうけど。
正直な所、なんか、尚更いやだな……」
違和感は兎も角、戦い難さは無いのだろうが……
感じた事もない奇妙な浮遊感と、色濃い瘴気に『屋上の約束』ロード(p3x000788)の表情が幽かに曇った。
上下左右、足場も良く分からない暗黒空間。そこには何も無いのに確かにある――相反する世界は『世界の果て』に相応しかろう。
「此処がラスト・ラスト……」
静かに呟いた『竜空』シラス(p3x004421)の口調は乾いていた。
誰にも劣らず、前だけを見る――克己心に溢れた彼だからこそ、強く感じる。
(現実では覇竜ですらまだ玄関口から客間に上がった位だ。
それが、恐らくはそのずっと先――人類未踏の極みのような場所に居るなんてな。
……ああ、そうだ。例えこれが『仮想』に過ぎないって言われても、正直燃えるぜ)
彼の考えた通り、ネクストにおいてプレイヤーは『竜の領域』を超えた。
されど、大陸の西北――混沌においては魔種が根城にするというラスト・ラストについては全く不明のままだった。
不明のままに彼が、彼等がここに踏み込めたのはR.O.Oのパッチが4.0を数え『ダブルフォルト・エンバーミング』が開始されたからに他ならない。
世界各国に開いた『風穴』は滅びに瀕する『ネクスト』の最後の希望であった。
「最後の戦場へは突入し放題、か。とんだボーナスだ。
……とはいえ、それでも構わないと思える程余裕ということなのだろうね。
慢心は敗北への片道切符なのだとこの刃と共にしっかり叩き込んであげないといけないな」
全く以って『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)の言う通りである。
『無限とも言えるような距離を詰め、所在すら分からぬ元凶に直接挑む事が可能になるなんて』。
そんな都合のいい事態は現実では起き得ない。それが可能になったのはR.O.Oがゲイムだからだ。
「つまりは卑怯も奇襲も何も封じられた状態で地力で押していくってか。
上等だボケェ!得意が封じられようが、俺が死んで役に立てるんならいくらでも逝ってやらぁ!
『バンデッド』ダリウス(p3x007978)が強く吠えた。
スイッチにしろダリウスにしろ言ってやりたいのは同じ事である。
「クリスト! いや、ハデス! このあたしが来てやったわよ!
言っとくけど先に喧嘩ふっかけてきたのはてめぇだからな!
原罪?とかは眼中にないからな! あたしが、必ずてめぇを引き摺り下ろしてやるわ!」
精々震えて待ってろ!!! このクソAI!」
丁度、『冥界の女主人』P.P.(p3x004937)が叫んだ『要はなめるな』。
アバターに姿を変えたとて、幾多の修羅場を超えてきたローレットはこの状況にも動じていない。
――HAHAHA! 期待してるZE!
律儀に響いた声にP.P.は小さく鼻を鳴らした。
その直後、ポンとコミカルな音が響いて彼女の姿が猫耳メイド(大きな鈴に肉球つき)に変わったのは――
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」
――彼女の罵詈雑言が響き渡ったのはさて置く事として。
不敵に笑うのは『アガットの赤を求め』ヨハンナ(p3x000394)だ。
「……Hades。いや、クリスト。
笑ってねぇで、目ぇかっぴらいて見とけよ。
俺はバッドエンドを拒絶する。クラリスもお前も無事な事が、俺にとっての幸せな結末だからな!」
――幸せにしてくれんのかい? 俺様はレイチェルちゃんがビキニ着てくれたらハッピーだけど!?
さあさあ、遊びじゃねーなら早く見せてYO! 今この瞬間は俺様のキミ等へのサービスだ!
イノリちゃんを早く叩かないとネクストも練達もマジでゲイム・オーバーだぜ!?
「何がゲイムよ、バカみたい。
あなたもあなたで随分と彼のやり方に寛容なのね。
でもいいわ、この世界がかかってるんだもの。終わるまでは付き合ってあげる――」
高らかに宣言したクリストに『月将』タイム(p3x007854)が少しだけ皮肉な顔を見せた。
(この変な空間にいるラスボスを思いっきり殴り続ければいいのよね。ルールは簡単。……よし)
その通りだ。『最高に簡単で、最大級に難しい』。
「……随分と妹想いで」
まるで相反するかのようなクリストの振る舞いに『複羽金剛』ビャクダン(p3x008813)が僅かな苦笑を見せた。
(正直、大切なものの為って行動をあっしは否定しきれんのですよ……)
彼は『イノリ』に与しながら、イレギュラーズに期待しているかのようにさえ見えた。
ビャクダンには分からない。クリストが説得するべき存在なのか、それともあくまで敵なのか。
分からなかったから――彼自身が向ける言葉はない。ただ道を作り、可能性の先に力を尽くす手伝いは自分らしいとだけ考えた。
嗚呼、そして。ローレット、イレギュラーズ、プレイヤー達を待ち受けていたのは好都合と冗談ばかりではない。
「やっぱ気持ち悪いなぁ、この世界。
本物みたいな面をして、現実の危機として出しゃばってくるとかさぁ……
……虚構は虚構だろ、冗談じゃない。
そういう夢物語、僕にとってはもう終わった話なんだよ……!」
気が付けば『憧憬の聲』リラグレーテ(p3x008418)の視界の中に無数の脅威が産み落とされようとしていた。
侵入してきた異物(イレギュラーズ)に応じるかのように、薄暗く世界を覆う影が、そのものが『影達』となって像を結び始めていた。
「うーん……さすがは理不尽と不条理が代名詞の混沌にしてR.O.O、といったところかな。
本当は世界がどうなろうと知った事ではないのだけど……まあ、それだと見たいものが見れなくなるからね」
「ラスボスちゃんにたどり着く前には必ずと言っていいほど長い前哨戦がつきもの、か!」
『Reisender』アウラ(p3x005065)は嘯き、何時もとは随分と装いを変えた魔道工学者――『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)が腕をぶした。
今まさにネクストを襲う『終焉』に似た形。その残滓。『外』での戦いに比べればそれは小さなものに違いないが、数は多い。
クリストからの『お知らせ』で聞いていた通り、『イノリ』以前に状況は一筋縄ではいかなさそうだ。
だが、それで萎えるような者はそこそこNightmare(ここ)には居ないだろう。
「帰還不能者は、デスカウントに応じて得る。
しかし、このゲームをクリアできねば重大なペナルティを得る可能性がある。
面白いな。この状況は僕向きだ。実に僕向きだ」
『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)の貌はまるで獰猛な獣を思わせる。
「『お行儀いい』のも、少々飽きてきたところだ。偶には派手に暴れるとしよう――」
「――ええ、ええ! 影の城! 良いですわね良いですわね。
ラスダンらしい風格は十分、姑息なギミックが無いのも結構!
いざ、ブッコみますわよ!」
愛無――陰獣の爪と、気炎を上げ駆け出した『なよ竹の』かぐや(p3x008344)の『竹槍』は謂わば一番槍。
唸りを上げる一撃が終焉の影の一つを抉ったその時、ほぼ同時に広い影の城全体で戦いは始まっていた。
「マザーが完全に反転するまえに、あちらのイノリさんをぶったたくのですね……? おっけー!」
遥か遠い練達を襲う苦難の『やつあたり』と言わんばかりに『叩いて直せ!』蕭条(p3x001262)が暴れ出す。
「ふっ……まさに修羅場。じゃが逆に燃えてくるものじゃのう!
のう、『原罪』よ? お主は『悪』としてここで滅ぶのが相応しかろうよ!」
『雪風』玲(p3x006862)は凜と気を吐き、彼女のATHGAMBR壱式は言葉以上に雄弁な銃弾を余りに強かに吐き出した。
「まずは『力試し』についでに――イノリをぶん殴りに行く人達の露払いでもしますか」
迅狼が咆哮を上げる。
周りの誰にも劣らず、むしろ最高に近い戦力として『ここにいます』梨尾(p3x000561)なる獣が君臨する。
「成る程、こりゃあ凄い!」
自身に群がりかけた小型の終焉獣を傷焔で悉く灼いたウェールはふと考えた。
(クリストに感謝しているが……
やっている事は妹が跳び箱飛べずに苦しんでるから跳び箱を全て壊すなんだよな。
ふつうそこは跳べるよう手伝ってやれよシスコンビ )
「閉じ込められてどうしたものかと思っていたけど……
こちら側からでも現実世界側への助けになるのならそれもまた僥倖といったところかな?
……まぁ、指を銜えて無為に過ごすなんてことはする気は元々ないけどね♪」
ログアウト不可を逆手にとって敵の集団に連装魔導噴進砲の狂気的火力を見せつけるのは『黒麒』Λ(p3x008609)も同じである。
「……ま、俺様は『コツコツ』だ。雑魚狩りに専念するとするかね。これも立派な仕事さ。
こいつらをガッツリ足止めしちまえば、ボスに挑む連中の消耗を減らせるからねェ」
謙遜するには随分と存在感の有りる『山賊』グドルフ(p3x000694)が火力で乱れた敵陣を自身にぐっと引き付けた。
混沌と変わらず頼りになるその巨体は、影の城でも変わらずに頼もし過ぎる。
グドルフの『傘』の下――
「おーおー! 正直助かるわ!
兄妹愛は結構やけど、傍迷惑過ぎるんや!
こりゃあ、とりあえず一番ちっこいのシバキ倒してくしかないやろ。
味方への道を照らすのも星の役目や。ポジティブに輝いて行こうやないか、な!」
(イノリへの感情は……正直よくわからない。
魔種の大本、呼び声と反転の根幹原因のコピーなら……いやだなぁ、と思うけど。
Hadesは嫌だし嫌い。とにかく……ぶん殴りには行く!)
これ幸いと攻めに出た『神落し』入江・星(p3x008000)と『NyarAdept-ねこ』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)が奮戦した。
他方で。戦場は広い。戦況は流動的だ。
「エサの時間だぞ獣共!!! あちょまって多い多い順番に並んで!!!
……私の為に争わないで! ㅤごめんやっぱ争って!ㅤ そのまま共倒れして行って!! !」
『雑草魂』きうりん(p3x008356)は面白おかしい声を上げ、山のような敵に群がられているが、これは『想定通り』である。
冗談のように見えてきうりんの耐久力は常識の範囲を超えている。彼女はネクストにおいて最大限に『丈夫』であり、同時に。
「当たって砕けて! 行くぞ!! 今の私は死ぬことすらもかすり傷だ!!!」
圧倒的な『デスカウント』を有するきうりんの場合は倒れる事すら、この攻略の糸口だった。
R.O.Oを『LV100以上にやり込んでいる』上、先のウェールの倍以上も『死』を溜め込んだ彼女は切り札に成り得る存在だ。
無論、個人の力で破れる相手ではない。誰がどれ程強くても戦いに及ぼす影響等微細であろう。
だが、勝利への道が全て積み重ねのみによって担保されるとするならば。
今更、どんな手段も否定する余裕はあるまい。より多くのBetを危険に果たさなかったとするならば、R.O.Oに未来等あるまい。
(イノリとかいうのを倒せば鉄帝の勝ちだな?
もうボクは徹底的に空気を読まん。上の方々の思惑や陰謀など知ったことか。
――要するに目の前の敵をぶっ飛ばす事だけに集中すればいいんだろう蒼剣センセイ?)
『よう(´・ω・`)こそ』ゼロ(p3x001117)位にシンプルで良い。『鉄帝の論理』は間違いなくこの場の正解だ。
暗黒空間に未だ姿の見えない諸悪の根源(ラスボス)を追い詰めんとするならば、前哨戦さえ総力戦になる事は目に見えている!
「時間が無い。迅速に破壊して突き進み道を拓きましょう」
「この戦場で勝てなければ、どのみち先はない。
ならば我も微力を尽くそうじゃないか――銀魔『アーゲンティエール』、吶喊する!」
アウラにビャクダン、スイッチ。
更に強引に前に出た『Error Lady』デイジー・ベル(p3x008384)、『魔剣遣い』アーゲンティエール(p3x007848)がチームの名の通り【突貫】の動きを見せた。
(イノリやクリストが在り方のまま振る舞うのは間違いでは無い。
刻まれた役割は電子生命にとって何より大事だから。
だからと言って、縁ある国が――酷く壊れるのを見過ごしてたまるか。
待っていろ、そこにいるイノリ。この怒りでぶん殴ってやる……!)
冷静と熱情がデイジーの中で交錯する。
「一筋縄ではいかなさそうじゃな! じゃが無理を通せば道理は引っ込む!」
猛攻を跳ね返さんとする敵の威圧にむしろ挑みかかるのは『せつなさみだれうち』を見せつけた『うどんの神』天狐(p3x009798)だ。
「行くぞー! 突ッッ貫ッッ!! もう一発!!!」
鉄火場とは思えない位に幾つかの敵を『うどんに変えた』彼女はまさに怪気炎を上げていた。
これが通常の戦いならば敵の厚みを回避する手段もあろうが、影の城における戦いは全く別だ。
目標があくまで『イノリ』(ラスボス)ならば、阻もうとする敵は多い方が良い。
「好きなだけマリアをズタズタのぼろぼろにしてくれていいにゃ! でもこれだけは言えるのにゃ!
……私達の諦めの悪さ、舐めるんじゃないわよ? 」
困難が分厚ければ分厚い程に、『夢見リカ家』神谷マリア(p3x001254)は激しく『燃え上がる』。
「制限時間には限りがある……ならば、標的に向かう刃を一本でも多く、一手でも早く届かせるッ!」
『鉄騎魔装』鬼丸(p3x008639)の放った瑪駕閃光砲・捌式が複数の終焉獣をその光の内に飲み込んだ。
【突貫】すべきは文字通りその道であり、大人数を集めた一塊の暴力装置は闇を塗り替える燎原の火の如く無限の闇に喰らい付く――
一方で戦いが熾烈を極める程に、猛烈な攻めを支える者達の役割も大きくなる。
「私がイノリにかける言葉はないよ。
悪の権化たる彼に、正義の使者(天使)たる私の言葉が届くことはない。
同情もしてあげられないし、慰めてあげることも出来ない。だからみんなに任せるよ」
「リュートは逃げないっす! 痛いのは嫌いだけど……
ここで引いたら美味しいものが食べられなくなるッスからね! ソレだけは命がけで阻止するっす! 」
支援役を買って出た『ゲーム初心者』ユリウス(p3x004734)、『竜は誓約を違えず』リュート(p3x000684)が体力を落とした味方を支援する。
「傷付いた者は位置を下げて下さい。重要なのは突破力を保持する事です」
そして攻勢、支援。共に全体の動きを見事にコントロールする心臓は『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)である。
(まったく、実に忙しい)
小さく肩を竦めても、彼の内心を推し量る事は誰にとっても難しい。
冷静と合理主義を体現したかのような男は、十分な実力さえも兼ね備える。
抜けてきた敵の一体を難なく抑え、チームのタンクに指示を出し直す。
「『来ます』よ」
支援と冷静な視野で『一つの槍』の鋭利さを保ち続ける彼の見据えた先に『中型』が居た。
【突貫】はチームとしての強力な攻撃役である。
しかしながら【突貫】にはチームの頼む『個なる矛』があった。
咆哮を上げた中型が猛烈なスピードで前線を襲う。
破滅的なその一撃を受け止めたのは、
「被造物としてもぉ使命に殉じる者としてもぉエイラぁクリストもぉイノリもぉ嫌いじゃないよぉ。
……でもねぇマザーの頑張りもぉ知ってるからぁ。
本人がねぇ否と言ってるぅ安楽死の強行はぁ見過ごせないんだよぉ?
墓守としてその死化粧ぅ待ったをかけるんだよぉ……」
まさに『最強の盾』たる『深海に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)だった。
常人ならば『軽く数回は死んでいる』攻撃にも辛うじて耐え切った彼女は背中に切り札を背負っていた。
【突貫】の、そしてイレギュラーが有する現時点での最高に近い戦力はエイラであり、
「聞いてるか知らねーけど! 『妹』として一つだけ断言してやるぜ!」
その背後から飛び出して来た『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)である。
「イノリにーちゃん、クリストにーちゃん!
あんた達、妹とまともに話し合ったことねーだろ!!
自己満足も大概にしろよ、妹の幸せを兄が勝手に決めるなよ!!!」
驚異的なLV(やりこみ)と背水(デスカウント)に支えられたルージュの暴風の如き破壊力が中型をこの一瞬だけ圧倒した。
ルージュの実力をもっても『それ』は敵う相手ではない。
しかしフリークスさえ押し込んだ彼女の圧力は、更なる攻勢の呼び水となる。
「実の妹ではないにせよ、長姉として幼い者の面倒を見てきた経験から申し上げますが。
かのお二方。年少の者からすれば心配されてるのは重々理解した上で、『余計なお世話』ってウザがられるタイプですね――」
『志屍 瑠璃のアバター』ラピスラズリ(p3x000416)が硬質の宝石の如く煌めき。
「魅剣デフォーミティよ! わが血を代償に、狂気の祝福を!」
忍法・魅刹天凌が怯む中型を含む敵の群れに切り込んだ。
おおおおおお……!
だが、猛烈な戦いはイレギュラーズ側をも削り続けている。
安全地帯等何処にも無い戦いに次々と彼等は倒されていく。
サクラメントによる復活は前提にあれど、『死』は確かにそこにあった。
倒され続けたなら、ログイン不能になったなら。
そのままR.O.Oが終焉したなら――どうなるか等誰にも分からない。
「にゃふ~、また来たにゃ。次はお強い二人で大きい方を抑えてほしいにゃん」
多くの奮闘もあり、ジリジリと前に進むイレギュラーズだったが、エイラにルージュも一体目で手一杯だ。
人を食った調子の『合成獣』アルス(p3x007360)が視線を投げたのはレオンとディルクの二人だった。
「……ま、頃合いか?」
「運動不足がたたるねェ」
新手の中型目掛け、青と赤の二つの影が走る。
途中で行く手を阻まんとする終焉獣の隙間を軽々と縫い『敵陣の中』を風のように駆け抜けていく。
跳び上がり獰猛に襲い掛かったディルクを迎撃しかけた中型の姿勢が足を一閃した青い閃光(リミット・ブルー)で崩された。
ほぼ同時に。失敗した迎撃は頭上からの赤い牙(クリムゾン・ファング)を阻めない。
「……うわあ」
思わず声を上げたアルスだったが、ともあれ一角は抑えつけられた。
「お見事。こういった局面では更に畳みかけるものです。『今が稼ぎ所ですよ』」
戦いのモメンタムを理解している。こういった局面においてまさに面目を知るのは『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)。
【突貫】に黒子が居るならば、【黒狼】には彼女が居た。冷静に、そして冷徹に。その声が戦局を繰り出した――
「集るなよ、反吐が出る……!」
樹海を焚く午時葵姫――麗しき愉悦と憤怒の絶対殲滅、玲瓏たるリラグレーテが敵陣を灼けば、
「次のステージに進むことがミッション、というべきでしょうか。なら、斬って回るのが私の仕事ですね」
ファン自身も自ら敵陣を切り開く。
「大将首を狙うにも、道を作らなきゃ始まらないからね」
複数の敵を自身に『集めた』『データの旅人』マーク(p3x001309)が不敵に笑った。
傷付いても構わない。倒されても構わない。【突貫】がルージュを頼んだのと同じく【黒狼】には、
「混沌でも――何れは戦らねばならぬ相手だ。負けられん戦いだ、行くぞ!」
暗闇に凛然と輝く宝冠、美しくも危険なる『青迅の矛』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)が居る!
「おおおおおおおおおお――!」
貴族的なその顔立ちに似合わぬ獣の如き咆哮は逆鱗一刀にて、己が内に眠る竜の力を引き出した。
三体目の中型、その爪が彼の肩口を切り裂いた。致命傷を紙一重で避け、交差する乾坤一擲の一撃が巨体を正面から貫く!
「魅せますねぇ」
「いや、まったく」
ディルクとレオンが幽かに笑った。
「この状況でもゲイムであることを止めないのは……ある意味有難い!
ルールもチャンスも既にあるのなら――掴むまで!
マザーもネクストも諦めない。このままでは、このままでは――終わらせない!」
『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)の竜拳が闇を穿った。
成る程、勢い自体が増している。
そして、傷付き倒されながらも強引過ぎる奮戦により敵陣を割ったプレイヤー達は、やがて『そこ』に到るのだ――
「……おや、随分早かったじゃあないか。
クリスト、だから言ったんだ。彼等を侮るべきじゃない。
『これ』はハンデの出し過ぎだって、ね」
――闇の中に浮かび上がる豪奢なる美貌。
静かな語り口は戦場の喧騒さえも忘れさせる絶対的な『支配』。
「『イノリ』。冠位魔種を生み出した大本――」
『神異を辿る』シャスティア(p3x000397)の柳眉が幽かに動いた。
思わず漏れた呟きは畏怖にも、感嘆にも似ていた。
(『これ』に触れた事に意味がないとは思えない。
結果的に、この『R.O.O』はその為にも非常に有意義なものだったのかも知れません。
シュペル・M・ウィリーはその辺りも……まあ、彼は気にしても仕方ありませんか……)
影の城全域を覆う戦いはその一瞬にも続いていた。
『思わず』呑まれたイレギュラーズに手をこまねく暇はない。
『勝てるとは思えなくても』仕掛ける以外の選択肢が無いならば、やるべき事は一つである。
(『イノリ』……アレが原罪……!
身体が竦んでしまうような感覚、これは本能的なモノでしょうか
しかし……あくまでコピーとは言え、『復活出来る』この場で戦う事が出来るのはむしろ――
レオン君にR.O.Oで得た経験を見てもらうチャンスでもあります――!)
プレイヤーの中で一早い動きを見せたのは『物語の娘』ドウ(p3x000172)だった。
4.0における『ログアウト不可』は彼女にも大きな力を与えていた。
超平衡感覚は猫のようなしなやかさで混沌より幾分か身の軽い彼女の小さな体を躍動させた。
暗殺者の如く奇襲めいて『イノリ』に肉薄した彼女は、
「……え?」
間合いに、足元に生えた影の棘に貫かれ、宙空でその動きを止めていた。
「――――っ!?」
『イノリ』は「やれやれ」と首を振る。
更に間髪入れず迫り来る無数の棘にドウが思わず目を閉じた時――
「……あのねぇ、あんまり俺の可愛い弟子を苛めないでくれる?」
――その耳元で『成長を見せたかった』師匠の声が響いていた。
成否
成功
状態異常
第1章 第2節
●影の城にてII
「……あのねぇ、あんまり俺の可愛い弟子を苛めないでくれる?」
迫り来る黒色の棘を青い軌跡が斬り散らす。
必殺を免れ得ぬ無数の悪意がただそれだけの事で嘘のようにその矛先を失っていた。
「レオン君!」
『物語の娘』ドウ(p3x000172)の目に揺れたのは安堵と喜びと、それから口惜しさと失望だった。
混沌で並び得る事の無い『師匠』と轡を並べている。その上彼は腰も痛くないらしい。
なら、この戦いは――今現在『出られない』以上は実はそれ所ではないのかも知れないが――彼女にとって特別な意味を持つ事は間違いが無かったからだ。
「……全く、お恥ずかしい限りです。少し張り切ったらこの様です。
成長を見せると粋がって、無様を晒してしまいました」
「もうめげた?」
「いえ、負傷はしましたが、まだまだ行けます!
……落ちる所まで落ちたら後は上がるだけ。『次』で名誉挽回と参ります!」
『接敵』を果たしたのはドウやレオンだけではない。
イレギュラーズの分厚い進撃は大部隊を少しずつ前線へ押し上げ続けていた。
『少しずつ』である。広い影の城全域では無数の遭遇戦が、食い止める為の戦いが展開されていた。
無限の乱戦を制するのは圧倒的なまでの『強さ』である。
タールのように粘つく闇を振り切るだけの『強さ』であった。
そのイレギュラーズの動きを支えるのが、
「まぁこれだけの数が相手なら。囲まれりゃ当たり前の袋叩きだ。精々死なねぇだけ無茶しますかねぇ!」
「『イノリ』は任せるわ。此処は――私が引き受ける」
『薔薇を追う』♱✧REⅠNA✧♱(p3x000665)や『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)、
「『イノリ』が動いた? とはいえまだまだ刃で深く抉るには道が狭いか……」
嘯いた『黒麒』Λ(p3x008609)のように露払いを買って出た者達であった。
「魔導鋼翼展開、エーテルコンバータードライブ、全ミサイルラック開放、連装魔導噴進砲斉射!
――更に、魔力極大まで収斂……有象無象の区別なく全て薙ぎ払い道を切り開け――魔導砲ッ!!!」
「敵尋常ならざる程に多数、強大であると情報を入手。自身の位階昇格を確認。
戦力として微々たるものではありますが、当機構も参戦致します――」
Λの火力が、『キョウシン』アンジェラ(p3x008016)の拡散する榴弾が影の集団敵陣を文字通りに焼き払い、
「レオンさんには、また命を大事にしろと言われてしまうかも知れませんが、ね……
兄弟でひと悶着あった身としては、他所の兄妹にも良き道を歩んで戴きたいものですよ……!」
迫り来る敵の爪牙に身を挺した『アルコ空団“輝翼”』九重ツルギ(p3x007105)が傷付きながらも敵を食い止めた。
「オラァ! 約定通りまた死に来てやったぞこん畜生が!
其処で腐ってる獣共! そうだ、畜生共! 良く見て良く聞け! 遊んでやっからこっちに来やがれ!」
「この展開、どうやら脱出せずにいた甲斐があったようですね」
負けじと『バンデッド』ダリウス(p3x007978)が噛みつくように強く吠え、『宙抱く翼』セフィ(p3x001831)は涼しく笑む。
まさにギリギリの局面が無数にある――
部隊が完全に決壊してしまえば、影の城全体が無理ゲー(モンスターハウス)と化してしまうのは確実だ。
いち早いドウの『仕掛け』、先鞭も状況の良い切り分けにはなったと言える。
プレイヤー達は無数の脅威となる終焉獣を抑える役割と、『イノリ』に挑む役割に自然の内に分かたれた格好だ。
「成る程、合理的だ」
イレギュラーズの戦い振りは目先の『復活可能』を差し引いて考えても凄まじく『イノリ』はこの面倒にまた苦笑を余儀なくされている。
「終焉(かれら)を無限に相手にするのは君達にとっては無益だからね。そうして食い止めて、僕に刃を届かせようって話な訳だ。
尤も、それは僕にとっても同じ事だ。君達(サクラメント)を相手にするのは実に無為極まりない」
『イノリ』の言葉は皮肉にも彼我の持つ『同じ特性』を指していた。
「しかしクリストとやらは律儀だな。父親に義理立てて憎まれ役か。
どこの世も道化というのは心で泣いているのか? 律儀といえばイノリもか。
好き好んでリアルに倣う事も無かろうに。いっそ面白おかしく生きてみればいいだろうに――」
「はじめまして! ボクの名前はセララだよ。
……キミがイノリさん、だよね? ねぇねぇ、世界を壊すのなんてやめてボクと友達にならない?
今ならボクの手作りドーナツもあげちゃうよ!」
「僕は自由だよ。僕は僕のしたいようにした結果が『こう』なんだ。
クリストはまぁ――知らないけどね。
……それから。魅力的な提案だが、御断りするよ。勇者君」
『イノリ』の回答に『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)は小さく肩を竦めて見せた。
『妖精勇者』セララ(p3x000273)は「ちぇー」と残念がり、一方の『イノリ』はいよいよ距離を詰めてきたイレギュラーズの集団を睥睨する。
「中々どうして君達は手強いね。こんな時、僕はどうするべきかな?
君達に時間が無いのを見越して――無限の終焉の特性を加味して逃げ回れば最上かな?
そうしたら君達はさぞかし困るだろうね。僕にリミットは無いが、君達には『マザー』がいるんだから」
「はーい、そういう男はモテないとエイルちん思いまーす」
からかうような饒舌さを見せる『イノリ』に『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)が唇を尖らせた。
「ドシスコンなら尚更でーす」
――おさけchangにドーカンでーす!
「……誰の事かな!?」
Hades(クソAI)っぷりを発揮したもう一人のシスコン(クリスト)の同意にエイルは咳払いをした。
「ええ、ええ。今更、今更だって!
……ってことであのシスコン男を一発ぶん殴りに!
あーアタシってば超絶か弱くてね、赤い王子と青い王子がサイド固めてくれればチョベリグって感じ。
……ま、お礼はたっぷり現実で『私』がお酌だろうと何だって!?」
「今」
「何でもするって言ったよな」
「言った言った」
(ギェエェェェェェエ――!?)
鉄火場にも怯まないレオンとディルクのコンビが迂闊なエイルに「じゃあ、そういう事で」と笑顔を見せた。
「どうも、逃げ回るってプランは認めて貰えそうにないね?
全く、クリストの遊びには嫌になるよ。何処まで僕を不利にしたいんだか――」
「――関係ねー! イノリchanにカチコミじゃあ!!!!
なめんなオラー! デスカウントがなんぼのもんじゃい!」
先程『イノリ』が言った通り時間が無いのはイレギュラーズ側である。
尚も続き掛けた『イノリ』の長閑な長広舌を気を吐いた『雪風』玲(p3x006862)が遮った。
言葉だけではなく、不安定な地面を蹴り上げドレッドノート&デザートホークを構えた彼女は至近距離での戦闘を挑みかかる。
先のドウの姿を見ていない訳ではないが、それも又『関係ない』。
『ATHGAMBR壱式は二丁の銃を従える超近接戦闘である』。
必殺を期す彼女の攻め手は変幻にして致命的、そして追い込まれる程に執拗であった。
「お喋りもここまでか」
玲の攻め手に『イノリ』が漸く一歩を動いた。
肉薄する彼女を軽くいなし、更に続く次なる一手に視線をやっている。
「諸悪の根源であり、私達が倒すべき原罪の魔種……その再現体……!
理不尽な強さも打倒の困難も承知の上です。
私達にも負けられない理由があるんです
例え途方もない力の差があるのだとしても、絶対に諦めませんよ!
……それに『貴方達には』言いたい事が沢山ありますしね!!!」
『恋焔』ハウメア(p3x001981)のガーンディーヴァが魔力を収束し、強烈な光芒を撃ち放つ。
「貴方は強大ですが、臆することなくただ往くだけです。
模倣とはいえ世界の敵の親玉を直接殴れる機会に感謝します。
この世界を壊させたりしません、幸せな道を、居なくなった人を、私が得られなかった幸せな明日を得られた人がこの世界に息づいている限り!
誰の為であろうと関係ない、私にとっては倒さなくてはならない敵なんです!」
『クィーンとか名前負けでは?』シフォリィ(p3x000174)のQ・プロモーションが『灰の流星』グリース・メイルーン(p3x000145)の背を押す。
「これが魔種の親玉ってやつなんだ。
笑っちゃうよね、『明確に勝てない』なんて恐れを持つのはあの男ですら感じたことのない感情だったのに――」
彼女達の作り出した『光の道』をなぞり、ヴォーパル・スターが強く煌めく。
「――でも、だからと言ってはいそうですかと諦められるほど人間ができちゃいなくてね!」
強烈な砲撃は玲への応戦を余儀なくされた『イノリ』を激しく襲う猛攻だった。
彼我の力の差はグリースでなくとも分かる『絶対』でしかない。
デスカウントで強化されたドウが子供のように破られた時点で騎士二人を従えるエイルもまず及ぶまい。
それは最初から分かっていた通りである。『プレイヤーはその総力を挙げてこの敵を叩き続ける他は無いのだ』。
「不肖、蒲公英! 大一番、正念場と聞いて馳せ参じた次第!
微力ながら――全身全霊で参ります!」
蒲公英(p3x005307)――無窮・嵐牙が超速を以って『イノリ』に肉薄する。
「絶対――絶対一太刀入れてやりますから!
その次は、首洗って待っとけクソAI! よろたんうぇーいじゃあねーんですよ! 」
――sznchangの愛が痛いぜ、ゲラゲラゲラ!
(もっと、もっと力があれば――)
蒲公英は臍を噛む。力が欲しい。圧倒的な攻撃力が。
痛い痒いと己を侮る敵を刮目させる切れ味が。例えばそれは――のような――
イレギュラーズの猛攻はその手数で『イノリ』を一時的に食い止めているように見えた。
しかしながら強烈な攻撃にも殆ど顔色を変えないそれの底知れなさは言葉に出来ない程である。
「うーん、妹ちゃん助けたいのにここの妹ちゃんは助けないの?
それはちょっとないなー。見捨てるのも選り好みするのもないなー。
正直言うとなんかむかつくから、力づくでもここのざんげちゃんも助けて貰うよ!」
「――やれやれ、だ」
『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)の一撃、言葉は『イノリ』を僅かに苛立たせたようにも見えた。
軽い溜息と共に空間に伸びた無数の棘がその枝が彼女を含め『集った』イレギュラーズを傷付けた。
『R.O.Oが滅びない限りは復活が可能だとしても、リアリティのあり過ぎる無数の死が蔓延していた』。
まだしもログアウト可能な者は良い。しかし、ログアウト不可の状況でR.O.Oが『滅びた』なら――
「そういや大丈夫かい? そろそろさっき君達のエースが倒した『中型』が復帰する頃だぜ。
どうもさっきのエースは復帰中みたいだし、そろそろ僕も楽が出来るかも知れないな?」
『イノリ』の言葉には冷笑と軽侮が入り混じっている。
先述の通り、この戦いを困難なものにするのは『イノリ』と相対すると同等以上に強力無比な抑えが必要であるという事実であろう。
「リポップするとは言っても終焉獣を排除せねばイノリの元には辿りぬつけぬ。
先ずは敵の数と耐久力、そしてリポップまでの所要時間の把握するしかないか――」
まさに『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)の言葉の通りである。
『殺されて』サクラメントまで戻されたイレギュラーズが復帰する為には影の城を進む必要がある。
無限にリポップする終焉獣に押し切られ、領域が敵側優位に落ちればイレギュラーズは戦力を継ぎ足す事が不可能になる。
(だだっ広い空間で誤魔化しが効かない、というのは私達だけで、イノリ側までそうとは限らないしな……)
遅れて参戦した『切れぬ絆と拭えぬ声音』スキャット・セプテット(p3x002941)の思案も尤もな懸念である。
状況は至極容易に裏返ろう。不測、そして乱戦は間違いなくプレイヤーばかりに不利に働き、『イノリ』への道は寸断されるのだ。
故に彼等は『イノリ』という最強を倒すと同時に、『終焉』という無限に挑まねばならない。
どちらが重い仕事ではない。『当然の如くどちらが欠けても敗北しか訪れない役割であった』。
それはきっと『不可能』なのだろう。それを人は『不可能』とするのだろう。
だが、『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)は諦めない。
「不可能、ね。
例え不可能って言われたって――其処に少しの可能性があるだけで。
あったから、引っ掴んで掴み取ってここまで来たんだ。
これまでも、これからも――足掻いて、足掻き続けて、絶対にやってみせるよっ!」
姿勢は正しく、あくまでその意気軒昂に――凛とばかりに声を張った。
「――それじゃ、私達の未来を勝ち取りに行こうかっ! 皆と一緒にイノリに続く道は閉じさせない!」
「どれだけ完璧な計算でも、廻り始めれば揺らいで振れるもの。ヒトの心の関わる事なら尚更だ。
諦めるのは最後でいい。それしか選択肢が無くなった、その時で――運命の糸を紡ぎ、奇跡を織り成そう」
夜告鳥の護る揺り籠が『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)に加護を与え、イズルの手管が複数の終焉獣の動きを縫う。
「私自身には熱い想いがある訳ではありません。ですが、友人が救いたいと願っているのです。
それ以上に力を貸す理由等必要ありますまい。ここは――微力ながらお力添えをさせて頂きましょう」
檄に応えたというにはクールに。『月下美人』沙月(p3x007273)は勢いを増し始めた終焉獣を受け止め、無月水月、凩が薙ぐ。
「……全く、この戦場は意地が悪い。拗らせたシスコンたちは厄介ですね。
『そういう役割だから』で妹を害する兄が理解できないのは俺が人だからか……いや私は付喪神ですけどね?
ともあれ、やる事は簡単でしょう。風穴を通って各地の勢力が削られるまでの間周囲の終焉獣を倒します。それだけです――」
更には『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)が斬り込んだ。
「妹を自由にするために世界を終わらせるってつまり……妹が自由になることしか望んでないって事?
それだけ? 後は? 世界は要らない? 妹とお前で今まで絶対に出来なかった事をするのも?
なんて……なんて無欲な野郎なんだ!
好いた男の全てを、そいつが欲しがる全てを、つまり世界全部奪ってモノにしたいと思ってる強欲の乙女クシィちゃんを見習うべきなんじゃね!?」
「大事な方を、助けたいというお気持ち、ベルにはわかります。
でも、それは、本当に助ける事、なのでしょうか? 気持ちの押しつけ、なのではないでしょうか?
ちゃんとお話し合い、しないと、めっ! ですよ!」
――オニイチャンってのはねぇ、辛い! 複雑なもんなのよ!
喰いつく獣を叩く『大鴉を追うもの』クシィ(p3x000244)、愛らしい『くま吠え』で彼女から敵の注意を引き剥がした『ちいさなくまのこ』ベル(p3x008216)にクリストが茶々を入れた。
――いや、まぁ。そりゃあさ? Happy Endはお好みさ。
でも、そうはならかった。ならなかったんだよ。エルChang、キドーKun。
悲しいね、俺様Changだって悲しいNE!
だからよう、ぶっ壊してやるZE! KILL YOU! 夢も希望も見えやしねー!
「痴れ者が!」
『空虚なる』ベルンハルト(p3x007867)の爪牙が唯の一言と共に目前の終焉を切り伏せた。
「世界を壊す? させる訳にはいかんな。
俺はこの世界の――別の世界の事など歯牙にもかけぬ。
だがな、それが壊れればこの世界も立ち行かぬようになるのだろう?
それは許さん。それはさせぬ。俺が俺としてある限り――どちらが獣として上等か、試してくれようか!」
「ヴァレ家です、ヴァレ家ですよ!
リュカ殿達が中型に専念出来るよう、全力でサポートしますね!
ええ、ええ! 委細暴力。暴力上等――承知ですとも!」
「マリ家です、マリ家ですよ! 拙者もリュカ殿達の援護、精一杯頑張ります!
まずは終焉獣ですね! 任せて下さい! まるっとお引き受けしますから!」
『航空海賊忍者』夢見・ヴァレ家(p3x001837)と『虎帝』夢見・マリ家(p3x006685)、そっくりな二人が息の合った所を見せた。
彼女等を含むイレギュラーズの最大部隊【運命砕】は敢えて『イノリ』ではなく終焉を破る事に血道を上げていた。
『イノリ』の言った通り、波濤の如く襲い来る小型の向こうには復活した二体の『中型』の影が見えていた。
切り開く道中においても【突貫】や【黒狼】といった強力なチームが何とか辛うじて降した強敵である。
これを今度は【運命砕】が背負わねばならぬのだから――その責任も難易度も重大であった。
「引き付けて、引き付けて――拙者しぶといですから、範囲攻撃に巻き込まれても平気ですしね!」
「う、く……いくらしぶといとはいえ、ヴァレ家をこれに巻き込むのアレですね……!」
豪快に笑うヴァレ家の一方でマリ家はその魂が拒否をするのか非常に『それ』はし難そうである。
「表でイカれかけてる妹を、こっちでバカ兄貴をどうにかしないとイケねぇ!
面倒な兄妹だぜ、まったくよ!」
悪態を吐いた『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)の Assault_Senseが『切れ目』を見抜いた。
「――俺様達の本命はテメェ等じゃねぇ。さっさとシバかれて失せやがれッ!!!」
一喝と共にARC_Colliderが大蛇のような呪雷を縦横無尽に暴れさせた。
面々の奮闘で『中型』への道は開かれてゆく。
終焉の中に道を開くならばそれ等が邪魔になるのは明白だ。
現れる程に倒さねば『イノリ』打倒のチャンスは無い!
おおおおおおお――!
鼓膜を、魂を底から揺らすような咆哮さえも微風のように受け流す。
「エンバーミングは死んでから楽しくやる物です♪
死んでない相手でやるのは解釈違いですね!
そんな不届きお兄ちゃん二人には説教です――」
微笑んだ『傘の天使』アカネ(p3x007217)が中型の注意を強烈に引き付けた。
その機動を以って『引っ張り回し』【運命砕】の陣地に引き込もうという動きだった。
「奇跡は起こす気が無いと起きないもの。やらずに諦めるのは駄目です。
まぁクリストさんは奇跡を起こす気がありそうなので嫌いではないです。
実はけっこう――ロマンチストですよね?」
「ほんの少しの可能性や、心からの強い願いは運命を変えられる……わたしはそれを知ってるよぉ。
だから世界は壊させないし、あなたの思い通りにもさせない。
だって。そんな終わりなんて、悲しすぎるでしょう……!!!」
ここは譲れぬと『ホワイトカインド』ホワイティ(p3x008115)が『もう一匹』を引き付ける。
彼女等に合わせ、『中型』狩りに出た主戦力が躍動した。
「イノリ、君が妹の事で悩むのハ、なんだか姉ヶ崎の事も思い出すけれド……その想いで世界は殺させなイ!」
吠えた『屋上の約束』アイ(p3x000277)は匂う死さえ恐れずに肉薄した巨体に闇裂月閃を叩き付ける。
「一人で苦戦必須ならば協力しない手はないわね。さあ、運命を掴むわよ、特異運命座標たち!」
赤い花弁のブレスは覚めない夜を思わせる――『センスオブワンダー』ファントム・クォーツ(p3x008825)の猛烈な手数が連なって『中型』を翻弄する。
「捨て身で――いくわよ!?」
「これをゲイムと言い張るならば、ハッピーエンドでなくては満足できません!」
混沌と同じく獰猛なる攻めを見せるのは『双ツ星』コル(p3x007025)だ。
取り回しの良い武器を自身の爪牙のように扱っている。
「企みを聞いてみても全然誰も幸せにならないお話なのです!
他の道を必ず掴ませてやるのです、力づくでも!」
手は足りぬ。だがそれでも押し切らんとするのは、
「これはつまり、『好きな人の前で素直になれず、わざと意地悪をしちゃう』そういうアレなのです!
ラスボスさんは意外と人間っぽいのですね。もっと機械的で悪魔の様な存在かと思っていたのですが……
兎に角、その屈折した想いを素直に伝えられる様にお手伝いするのですよ!」
『ウサ侍』ミセバヤ(p3x008870)が、イレギュラーズが底抜けに優しくお人よしだからだ。
「理解してるとは言わないけど、知ってるんだ。
妹や弟を自分で殺す状況とか心境とか、迷っても『できてしまう』ことも――
だからかな。なんか重ねちゃうのすっごいムカつくけど、ムカつくんだけど……
待っててよ、イノリ。クリスト。終焉なんてぶち壊して、君らの頬ひっぱたいてさ。
不可能だって変えられるってこと、その目に見せてやるから……!」
――『青炎龍』Siki(p3x000229)の言葉通り。彼等が優しくも意志を持つ者であるが故だ!
「『出来る』方に流れるのは楽なものです。
不可能という言葉は簡単に諦めを許してくれますから。
ですが申し訳ありません。私は諦める、というのが嫌いな性質でして――力一杯、存分に足掻かせていただきますよ」
『戻れない』事を代償にした、『やり込んだ』『人形遣い』イデア(p3x008017)の強烈無比な一撃が見事に中型の巨大を撃ち抜いた。
「……ふむ、成る程。これは中々――」
瀟洒なメイドは試し撃ちに少し満足するように笑い、一方の獣は威嚇するような凶暴な雄叫びを上げている。
強烈な戦いは容赦なくイレギュラーズを傷付けた。
「家族のために世界を壊すだ? テメェの行動を家族を建前にするんじゃねぇ!
止めてやる。ぶん殴ってその考えを変えてやる。
無理? 出来ない? かはは。そんな言葉は聞き飽きた。俺が望むのは不可能のその先だからよ!」
『怪異狩り』にゃこらす(p3x007576)があろう事か『中型』の一撃を真正面から受け止めた。
血を流し、息も絶え絶えに――それでも言葉の通りに倒れない。
「ほらよ。『まずは止めてやったぜ』」
傷付き倒れる仲間を掬い上げ、迫り続ける死を食い止めようとする者も居た。
「あたしには兄弟はいなくて、だから妹がとかなんとかわからない
ゲームの世界とか願いとかそんなのであたしが……皆が帰れなくなったことにすごい怒ってるの!
だから、事情とかそんなの抜きでとにかくみんなで帰るのが今の願い
その為にラスボスがいるなら――そこまでみんなを守り抜く!」
『合わせ鏡の蔦』ルフラン・アントルメ(p3x006816)のポム・オ・ポムが激しく吹き飛ばされ叩き付けられたホワイティを救う。
(どうせ死にすぎて帰れないんだ。もっと死んで強くなれるならそれでいい!
回復して届かなくて、死んでいくのを見るのはゲームだって辛いんだ! だったら、ここで死ぬのはあたしがいい!)
【運命砕】の中心で、今は『帰れない』――誰よりも死の近くにいながら自身よりも仲間を案ずる優しい少女は気丈に声を張り、その力を振り絞るだけ――
戦いは続く。猛烈に続く。遂にはにゃこらすが倒された。
良く攻めたコルが『千切れ』た。アカネの顔にも余裕は無く、イデアの硬質な美貌の上を血の色が滑り落ちていく。
「……あぁ、そりゃあ。そりゃあ……簡単じゃねえだろうよ」
息は上がっている。
「不可能に近いのかも知れねえ。或いは不可能そのものなんだろうよ。
『アイツ』はあそこから降りないし、誰の人生も瞬く間の出来事なんだろうよ」
口の中は血の味で一杯だった。
「だからって……だからってなぁ!
本当の望みを隠して世界を終わらせて、満足したふりをする――
そんな馬鹿野郎はブン殴ってやるしかねぇだろう?」
『赤龍』リュカ・ファブニル(p3x007268)の全身を赤い闘気が覆った。
言葉にならない叫びを上げた赤龍の一撃は獣面飛将の奮迅でその巨体を穿ち抜いた。
(見てろ。笑ってろ。そのまま――待っていやがれイノリ!
くだらねえ企みなんざぶち壊して――俺がテメェ『も』ぶっ助けてやる!!!)
血走った目でそれでも未来だけを見ている。
そんなリュカに誰かが「危ない!」と声を上げた。
「――――ッ!?」
振り向いた彼の視線の先に『三体目』。
遅れてレオンとディルクが仕留めた三体目が『突然に現れたのだ』。
予期せぬ出現に態勢を奪われた【運命砕】。されど、その脅威が彼等を即座に襲う事は無かった。
「相当な実力がなければ、と言われると試したくなるのが人情です。ね、クマさん」
「ぽつんとソロでちゅーがたに挑もうとしている幼女を発見したので、すけだちしましょうね」
あろう事か中型の目の前に一人……いや二人で立ち塞がったのは『クマさん隊長』ハルツフィーネ(p3x001701)と『シュレディンガーのようじょ』樹里(p3x000692)だ。
「ここにいる私も、クマさんも、皆も。確かに生きています。
ならばこれは世界を守る戦い、です。イレギュラーズとして、負けるわけにはいきません」
愛らしいその姿には似合わない断固とした意志は静かにハッキリとハルツフィーネから発された。
「さぁ、わたしたちのたたかいはこれからですっ」
樹里と共にハルツフィーネが中型に向かう。
彼女はこのR.O.Oにおける――イレギュラーズ最強の一人だった。
成否
失敗
状態異常
第1章 第3節
●影の城にてIII
「流石に元凶のアジトってか?
こんな場所で独りって――陰気な奴か、はたまた変わり者か。
分かっちゃあ居たが、大概だぜ」
「何にせよ一発ぶちかましてやらねぇとな」と悪態をついた『國定 天川のアバター』天川(p3x010201)の表情には言葉程の余裕は無い。
「遅れて到着したがこれは……ここまで『歪んでいる』のは故郷でも見ないな。
尤も、邪神がここまで露骨じゃないのもあるんだろうが……」
思わず呟きを漏らした『屋上の約束』雀青(p3x002007)の気分もそう大差の無いものになった。
刻一刻と姿を変える戦況は概ねイレギュラーズの首元に匕首を突きつけ続けるようなものだった。
「早速ラスボス様のお出ましってか。
一筋縄でいくような相手とは思わないが、状況は悪くないのが幸いか――」
『状況は悪くない』。
故に『合成獣』アルス(p3x007360)の言葉は違和感のあるもので、同時に完全な正解だった。
影の城にて相対した『イノリ』なる存在は短い戦いの時間の中で、確実に歴戦を踏んできたイレギュラーズに思い知らせていたからだ。
(ゲイムではあるけれど相手はあの『イノリ』……
感情的にならないといいけど、なるようなタイプかは知らないけど――)
『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)の心配を知ってか知らずか、レオンとディルクは相変わらず広い視野と攻撃力で終焉の排除から『イノリ』への攻撃まで役割を果たしている。
「い、いやぁ…ディルク様々じゃあないデスカ。ふん、アンタに情けねぇ姿は見せたくねぇ……ま、適当に行くぜ!」
「何やってんだ、エルス。ンな恰好しやがって。俺がそんなに恋しかったのか?」
「――!? !?」
レオンにしてもディルクにしても変わらず、所々で『主に自分が気にしている』イレギュラーズの援護まで挟んでいるのだから恐れ入る。
ドウやらエイルやら『クリムゾン・ドラゴニア』アクセル(p3x007325)を赤くしたり青くしたりしている姿は変わらない。
(――杞憂かな)
閑話休題。影の城で終焉の獣を排除し続け、彼への道を作らねばならないのは重労働だ。
「さぁて、引き続きぶん殴っていこうやないか。
一瞬でも、星の瞬きに目を向けたなら、立ち止まったなら、それは星の本懐やろ。
ゲームん中で星の光が届かんのやったら、ウチがそれを届ければええ話――」
「はいはい!ㅤみんなのためにおかわりが到着しましたよ! 群がれ!!!」
だが『神落し』入江・星(p3x008000)に『グリーンガール』きうりん(p3x008356)、
「Hadesは嫌だし嫌いだけど……
イノリへの感情は相変わらずよくわからな……いや、やっぱ嫌いかも☆
だから――星々に道を開けろ!ウィッシュ・スター・ランチャーーーーッ!!!」
「世界そのものを終わらせてしまうなんて……本末転倒も良い所だよ。
どんな悲しみも悦びも、世界があるからこそ味わえる極上の娯楽なのだから」
力を絞って想いを乗せて影の敵陣を切り裂く『NyarAdept-ねこ』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)然り。
対照的に「賑やかで愉しいね。まるでお祭りのようだ」と愉快気に嘯く『聖餐の天使』パルフェタムール(p3x000736)もまた然りである。
「やるね、流石に。ベアトリーチェとアルバニア(うちの子)を二角も落としただけはある」
「君が『イノリ』、ねえ……
其方にも言い分はあるんだろうけど、こちらも滅ぼされる訳にはいかないんだ。
……押し通る。滅ぼしてあげるよ、身も心も」
「うん、そうだね。実現可能だといいね。『混沌の為にも、ネクストの為にも』!」
会敵する『Reisender』アウラ(p3x005065)に応じる『イノリ』の美貌に浮かぶのは冷笑だったが、それはこれまでの軽侮ではなく警戒の色を帯びたように思われた。
プレイヤー側の『ゲーム理解』の異常な早さはその重労働を効率なるルーティーンの中に飲み込み始めていた。
確かにそれは簡単な仕事ではない。簡単な仕事ではないが――あくまで『ゲイム』だった。
ゲイムには攻略法が、パターンが存在するものである。
『やり込んだプレイヤーが向かうのならば、不可能ではない』。
「は? こんな真冬にビキニ着ろってか!? ふざけんなよ糞色ボケAIが!!!」
「闇落ちビキニ猫耳フェチシスコンって業が深すぎませんかね、ハデス氏!
あれっスか? 私もいたずらされる前に先制スク水とかしたほうが良いトコッスか?
……おい、うわキツ駄肉って言ったの誰だ!?」
――またまた、そんな事言っちゃって。案外満更でもない癖にさ!
「あ~~~! この声やっぱりあの時のあいつ~~~!!!」
――お、名乗り口上かい、外来種エルフのタイムChang!
「ネットリテラシーを知らないの!? 露骨に中の人を指ささないで!!!」
『アガットの赤を求め』ヨハンナ(p3x000394)や『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)との胡乱なやり取りはさて置いて。
「……でも、そのふざけた声を聞いてるから『イノリ』を間近に少しは冷静でいられるのかも知れないわ」
――御礼は『呪卍III』の出演でいいからNE!
『月将』タイム(p3x007854)を受け流してからかったクリストは、
「……まぁ、一回位なら考えてやるよ。俺が生きてたら。
それより、クリスト! 茶化してねぇで俺のアバターの出力上げろ。『デスカウント』で強化されるルールだろ?
腹、括ってンだよ。ゲームオーバーにはさせねぇから!」
レイチェルの言葉に「ちゃんと全力でやってるって!」と苦笑する。
(この強化補正本当にハンデか?
ラビットホールでの報告書ではログアウトを不能になったプレイヤー達はアバターに『バグ』が侵食してると解釈できる報告があるが……)
『生まれたものに祝福を』梨尾(p3x000561)の当然の疑いにもこれまで『問題』は感知されていない。
それは同時に『この先』に対しての『安全』を保証するものでは何ら有り得ないが、少なくともこの局面において『イノリ』に利敵するのだけは間違いない。
(敵なのか説得できるのか、わからないのは変わらずですが……
少なくとも『それは、妹さんと話して決めたんですかい』って思いやすね。
意味がないとか言って、会話すら切り捨ててたら寂しいでしょうに――)
『複羽金剛』ビャクダン(p3x008813)はやや複雑な感慨を抱かずにはいられない。
クリストの『異様なまでのフェアさ』からはゲイム・マスターを気取る彼の美学が感じられよう。
「はー、二人揃ってセカイ系みたいな背景しちゃって……
そういう話は嫌いじゃないですけど……私の再現性東京(ホーム)を巻き込まないでくださいよ、っと! 」
飛び掛かってきた終焉獣を受け止めたミミサキがその圧力を跳ね返した。
「やぁ お待た 神 来ちゃった!
それにしても『終焉獣』なんて、お誂え向きな!
そういうのいなすのが神の御業、段取りがあるよな コレもそう」
【黒狼】に遅れて参戦した『R.O.Oの』神様(p3x000808)のタイミングは成る程、自身の言う通り『ピッタリ』だった。
「まだまだ神様一つも慌てず! 楽しく愉快なゲームも佳境だ! エンディングまで泣くんじゃない!」
終焉の闇を穿つ『神の奇跡』は皮肉な位に絵になった。
「一人で背負おうとした妹を、もはや不可能だから介錯すると?
甘いな。そして弱すぎる――どうしようもないと諦めているだけなら。
例外、イレギュラーズ。俺達の価値を、俺達自身が証明してやろう――!」
『ノー・マーシー』ディリ(p3x006761)が迫る闇を燦然と切り裂く。
しかし、この戦いにおいて分厚く戻る終焉獣を食い止めるのは『前提』でしかない。
最大の問題は言うまでも無くそんなものでは有り得ず、
(やれやれ。考える事が多すぎる――)
持ち前の『検危』、『検情』、そして『速考』をフル回転する『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)の相対する『イノリ』の方だ。
先程アウラを嘲り笑った彼は強力なイレギュラーズを相手取りながらまるでその存在を揺らがせていない。
「お前が全ての元凶だというならそれを排するまで。
例え何度死に戻ろうと、デスカウントを重ねようと、この世界を守って見せる!
NPC達の生きる世界を、ネクストの未来を守りたい――それが俺がR.O.Oでの冒険を通して願うことだから……!」
『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)のパラリシスブレードが青白く雷気を生じて暗闇の中に軌跡を描いた。
「こんにちはラスボス。ブン殴りに来ました。
友達がまだ此処に囚われてるんだ。こんな形でゲームオーバーにさせたりするもんか。
お前が全てを蹴散らすのなら、私はお前を殴り飛ばしてやる――」
『Error Lady』デイジー・ベル(p3x008384)の物言い、戦いは『ボディ』にしては随分感情的なものだった。
「R.O.Oにおける最強かぁ。
不謹慎な話だけどね。その座を賭けて闘技場で高めあったのがぁエイラ達だからぁ。
――強敵と共にぃ頂きに挑めるのはぁ燃えるというやつなんだよぉ?」
嘯く『水底に揺蕩う月の花』エイラ(p3x008595)の圧倒的な防御力が鬱陶しい寄せ手を振り払いに掛かった『イノリ』の棘を食い止めた。
「今だよぉ!」
「昨日の敵は今日の友、王座を賭けて何度も鬩ぎ合った好敵手と肩を並べて戦えるというのはワクワクするのう!
一方的なフェアプレーの押し付けとやらはあまり好かんがな、今だけは感謝しておるぞ。
こうやってお主の元へ辿り着けたのじゃからな! ははは! 実に面白い!!!」
「R.O.Oが『名作』ならどんなに絶望的でもこの戦いは勝てるんだ。
クリストにーちゃん信じてるぜ。あんたが、くそゲーのゲームマスターじゃないって事をなっ!!!」
一方で『うどんの神』天狐(p3x009798)は高く笑い、これまでも活躍を見せてきた『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)が強烈に『イノリ』を押し込みにかかる。
……これは『中型』程度なら仕留めに向かえる『強烈な攻勢』に違いない。
「……………」
されど、黒子の眉が僅かに動く。
彼のコントロールする【突貫】の猛攻さえも、残念ながらここまでは『穿孔』と呼べる程の戦果を挙げるには到っていない。
その明瞭が思考が告げていた。『イノリ』は余りにも圧倒的で――余りにも規格外過ぎる。
本物の『原罪』と比してどうなのかは流石の彼にも分からなかったが、これが本物であろうと紛い物であろうと持つ意味が変わらないのだけは明白だった。
「――――ッ!」
『支え切れず、あのエイラが崩された』。
喰らいついた天狐も、ルージュさえも一閃された黒刃に木っ端の如く薙ぎ払われる。
影の城は絶望の居場所。
混沌(ネクスト)に深く突き刺さる呪いの、病巣の根源。
この場所では仲間は簡単に手傷を負うし、簡単に命を落とすのだ。
簡単に戦線は決壊しかねないし、簡単にネクストは終焉するのだろう。
練達は取り返しのつかない疵を負わされてしまうのだろう――
「――ああ、クソだな。余りにも。知ってたよ」
歯噛みをした『憧憬の聲』リラグレーテ(p3x008418)が血を吐くように咆哮した。
「クソみたいなラスボスに迫ってみせるとも! さあ喰らえよ、《月影に咲くナハトケルツェ》!」
「素晴らしい」
見た目(アバター)を変えたとしても『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)の食えない調子は変わらない。
艶然と微笑んだ『彼女は』、
「雨垂れ石を穿つ……生憎と我々は、こういった状況に慣れている。
それに今なら、多少の無茶も効く身ですからね――」
『撃っても足りないならばもう一発を撃てば良い』。
頭脳派とは思えない位にシンプルで、同時に究極に妥当な結論で。
精緻極まる裂空虎徹――完全なる狙撃を、影の盾を産み出しかけた『イノリ』の隙間へ突き刺した。
「ほら、打撃を与えれば『効くには効く』のです。ならば、繰り返せば良いだけです。
しかしながら――、最大戦力を出し惜しみしているアーベントロート派は、そろそろ出番では? お嬢様」
嘯いた彼女はふと『愛らしい主人』の事を考えた。
気持ちとしては非常に頼りたくはないのだが、クリスチアン・バダンデール一党でも派遣してくれれば、と思わなくはない。
ただ、『処刑令嬢リーゼロッテ』に参戦して欲しくはない理由は――語るに落ちるか。
「隊の皆が攻めに集中するために! 側面や背面からの邪魔は、僕がやらせない!
ベネディクトさんは前だけを見ていてください。後ろは僕が引き受ける!」
『しつこい』寄せ手に『イノリ』が幾分かの苛立ちを見せた時、後背に視線をやり怒鳴るように叫んだのは『データの旅人』マーク(p3x001309)だった。
「頼む」と短く応え、視線はやらず。僅かな綻びを今作り出さんと『災禍の竜血』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)が『夢幻白光(りゅうとう)』を振り被った。
(続けて攻撃を──俺達が望む物を得る為に!)
『イノリ』の顔が愉快気に歪むのを彼は見た。
(――面白い! 受け止める気か。やるなら、徹底的に手を伸ばせ! )
はじめて構えらしい構えを取った彼にベネディクトは一撃を繰り出した。
「──俺は勝利と、俺達が掲げる物の為に!」
殺気と殺気が絡み合い、轟音と振動が影を揺らした。
「……足りないね。まだ全然だ」
指先で刃を摘まんで止めた『イノリ』の膂力が単純な暴力でベネディクトを振り払った。
「だが――悪くない。『まだ足りなくても』この戦いは確かに僕さえ脅かし得るものなんだろう。
あの最高の面白がり(クリスト)は、きっと僕にもこのR.O.Oを遊ばせたがっている……!」
口調に初めて熱気らしい熱気を漂わせた『イノリ』の纏う気配が別のものに変わりつつあった。
「あの可哀相なざんげを――気の毒なクラリスの行く末を運命が謀るというならば。
僕はこの『最後の難関』を是認しよう! 全て踏み潰して――『クリア』して見せようじゃないか!」
姿勢を低く駆け出した『イノリ』が初めて攻勢らしい攻勢に出た。
「――ほんっとーに! 今の本気で無理!」
イノリの繰り出した影の爪を硬質な音が弾き上げた。
「クリストもイノリも! 兄って人種はみんなそうなの!?
うちのお兄様達も――勝手に姿を消して! どれだけ妹が心配してるかわかってるの!?」
抗議めいた『華義の刀』桜(p3x005004)がそれを食い止め得たのは僅か2%の奇跡(クリティカル)でしかあるまい。
だが、特異運命座標は運命を従えねじ伏せて、時に奇跡さえ引き寄せる者達だ。
「いくよスティアちゃん! あのわからず屋をとっちめてあげよう!」
「了解! 頑張ろうね、サクラちゃん!」
『イノリ』の至近に沸きだしかけた終焉獣を『天真爛漫』スティア(p3x001034)のSSA――天才的な『魔術のアドリブ』が強かに叩いた。
「今だよ、サクラちゃん! 突撃だー!」
「――――はああああああああああッ!」
終焉の鉄火場に彼女の獣性は隠す意味も無く。
彼女の獣性は何ら臆する事も無く。恥じる心算も無く。
その敵目掛け、絢爛豪華なる桜花は見事ばかりに咲き乱れ、咲き誇る!
(――勝てるとは思わない。でも不思議と)
負ける心算も微塵も沸かない。
今日は、きっと。『彼』もそんな自分を褒めてくれるのだろうと思った――
成否
失敗
GMコメント
YAMIDEITEIっす。
禁じ手解放、まさかの両面決戦と相成ります。
こちらはR.O.O版。レベル制限がありますが別の場所で途中で上がれば入れるようになります。
以下、シナリオ詳細。
●重要な備考
このラリーシナリオの期間は『時間切れ』になるまでです。
(時間切れとはマザーの『完全反転』を指します。そうなった場合、クリストはプレイヤーへの支援を中止しログイン状態は維持出来なくなります)
皆さんは本シナリオ(ないしは他のラリー決戦タイプシナリオ)に何度でも挑戦することが出来ます。
●作戦目標
『イノリ』の撃破。
『風穴』を通じてプレイヤーはラスト・ラストの最深部、イノリの『影の城』へ直接挑む事が出来ます。
※状況上『イノリ』に与えられるダメージが小さ過ぎる場合、彼は『影の城』から脱出する可能性があります。
又、当シナリオの結果状況如何により『<ダブルフォルト・エンバーミング>Are you Happy?』の展開に大きな変化が加わる可能性があります。二本のシナリオは極めて強い連動性を持っています。
●影の城
上下左右、足場も良く分からない暗黒空間。
そこには何も無いのに確かにある、奇妙な浮遊感を感じます。
物理法則的には非常に不安定に感じられるでしょうが足場や戦場としては問題は無いようです。
薄暗い雰囲気ですが目視等に大きな問題は生じません。
『風穴』を通じてプレイヤーが移動出来る空間で『イノリ』の本拠地。
混沌におけるラスト・ラストの最奥部に位置すると考えられますが、混沌側のものと同じかは分かりません。
戦場としては不便の無い全方位フリーの空間であり、誤魔化しは全く通用しないでしょう。
●敵
影の城には現時点で分かっている限り、少なくとも下記の敵性勢力が存在します。
・終焉獣(小型)
ネクストに出現した終焉獣を思わせる小型の個体です。
数が多く殺傷力に優れます。倒しても定期的に出現するのはMMOならではか。
小型と言えど相当に危険な存在である事は間違いないです。
・終焉獣(中型)
小型の個体とは異なり、全長数メートルから十メートル以上にも及ぶ個体。
様々な獣を掛け合わせたキマイラのような姿をしており、全距離と広範に危険な攻撃手段を持ちます。
数は然程ではありませんが明らかに強力な個体であり、一人で抑えるには相当な実力が必要でしょう。
倒しても定期的に出現するのはMMOならではか。こちらは少しリポップが遅いです。
・『イノリ』
R.O.Oのラスボスとも言える存在です。
IDEAが期せずしてコピーしてしまった世界の構造の一部。
『原罪』と呼ばれる全ての魔種の父、王でありざんげの兄に当たります。
能力等全て不明ですが、明らかにR.O.Oにおける最強でしょう。
R.O.O4.0の各地の攻略状況により権能(ちから)が低下するようです。
又、拘束時間経過後はダメージを与え続けないと『影の城』から脱出可能になるようです。(『影の城』は本来彼の本拠地で(侵入方法すら不明なので)最も安全な場所ですが、『風穴』で全世界と通じてしまっている為、『イノリ』からすれば『最悪』の場所であり、プレイヤーにとっては最も都合のいい戦場となっています)
・クリスト
通称Hades-EX。マザー(クラリス)の兄妹機であり、『未完の』チューニーの産み出した最高傑作(AI)の片割れ。
マザーと同等の情報処理性能を誇り、R.O.Oを好き放題に改変しています。
マザーの危機は『イノリ』のクリミナルオファーをクリストがコンピュータウィルスに変化させた『クリミナル・カクテル』です。
R.O.Oに実体はないようです。彼はこの戦いにおいては敵か味方かある意味で予想がつきません。
又、存在はしているでしょうが出て来るかどうかも神出鬼没になるでしょう。
●味方
練達首脳が助っ人として二人を緊急派遣しました。
・レオン・ドナーツ・バルトロメイ(全盛期の姿)
中の人はレオン本人。
腰痛の無いギラギラ、イケイケの頃のレオンです。
実力はかなり高く視野が異様に広いです。パーティタイプでイレギュラーズを的確にサポートします。
或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。
・ディルク・レイス・エッフェンベルグ(全盛期の姿)
中の人はディルク本人。
歩く山火事、オラオラの頃のディルクです。
恐るべき攻撃力と殲滅速度を誇りますが、ソロタイプで色々するのは余り得意ではありません。
或る程度勝手に動いてくれますが、PCの指示や要請も可能かつ合理的な範囲でこなします。上手く使いましょう。
『レオンとディルクはイレギュラーズではありませんがR.O.Oにおいてはサクラメントを使い復活が出来ます』。
実力こそ高くとも要人である彼等は普通ならば最前線に出れませんが、今回に限っては皆さんの力になれるという事です。
又、当シナリオでは『各国のNPC』が援軍に訪れる可能性が存在しています。
世界中の何処からでも『風穴』で駆けつける事が出来るので、NPC、本人NPC、関係者等の援軍が有り得ます。(各地の戦況が良い程確率は上がるでしょう)
NPCは全般に最低でも足は引っ張りません。上手く使って下さい。ただ彼等はNPCに過ぎないので、あくまで世界を救えるのはプレイヤーだけです!
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
●重要な備考
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。
本シナリオは進展により次々に別の状況に変化します。
以上、頑張って下さいませ!
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