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シナリオ詳細

<ヴィーグリーズ会戦>Crownless Queen

完了

参加者 : 53 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――我が名は死。
   我が身は絶望。

   総てを焼き尽くし。
   終焉の風と共に、破滅を振るう者。
   此の世の果てまでを、黄昏に塗りつぶさん。

   勇者共よ、この決戦にて皆殺しとしてくれる。
   骨を砕き、臓腑を引き裂き、血潮を飲み干し――
   このフレイスネフィラが、その『死』総てを喰ろうてやろうぞ!


 夕刻――
 ヴィーグリーズの丘。

 鼓膜を揺さぶるのは、怒号と地響き、剣戟――あとは早鐘打つ己の鼓動か。
 駆け寄った部下に発した命令も、酷い怒鳴り声であり聞き取れたかは怪しい。

「敵軍! 撤退して行きます!」
「総員、気を緩めるな!」
 敵軍先鋒の歩兵隊は、どうにか撤退へと追い込むことが出来た。
 といはいえ、同じ幻想の兵同士。自軍の負傷者も多い。
 けれどこの先も、敵からは立て続けの波状攻撃が予測されている。
 そして戦域の指揮官、バルゲリー子爵の命令は『戦域の堅守』であった。

 地響きが大きくなってきた。
 これまでは地を踏みならしていたのは無数の具足であった。

 だが――

「来ました! 敵主力、巨人です!」
 報告は悲鳴に近い。
「長弓隊! 放て!」
 今度は巨人だ。小山のような異様に、それが地平を覆う様に唇が震えた。
 騎士隊長ガーラル・ディストは、勢いよく面頬を降ろして軍馬を叱咤する。
「巨人が……と、止まりません!? 突っ込んできますっ!」
「怯むな! 剣礼! 全軍――突撃ッ!!」

 ――鬨。

 巨木のような腕が唸りを上げ、併走していた騎士の一人を軍馬ごと跳ね飛ばした。
 ガーラルが突き刺した筈の騎兵槍は馬具から外れ、視界の後方へと消えていく。
 一抱えもありそうな手を組み、巨人が振り下ろす。大盾を構えた重装兵が土煙の中に消えた。
 今の突撃で、部下達はどれだけ無事だろうか。
 確認する暇さえない。

 この戦域は敵の親玉が一人、太古の怪物『死の女神』フレイスネフィラの出現が予想されていた。
 両軍が激突する混戦のただ中に現れるというのが、事前の推測であった。
 ならばどうするべきかと、軍議は荒れた。
 敵の戦術は『大量の死を集めること』であり、その『死を力に変える』ことである。
 この場所を放棄するという選択も候補に挙がったが、却下された理由は明白だ。
 そうなれば敵は『場所を変える』だけなのだ。
 だからあえて受け『誘い込む』しかない。そういった結論だ。

 兵の多くは、そして主力であるイレギュラーズは今、個々の戦場へと駆り出されている。
 そちらもそちらで軽んじれば、至極単純に戦は敗北である。
 持ちこたえる他ない。
 だと言うのに。

 ――我々には、死守すらままならんのだ!

 フレイスネフィラが『死を喰らう』以上、現時点における作戦の選択は、持久戦の他にない。
「認めん、これしきが限界などとは。
 それでどうして、いずれ来る鉄帝国との戦が出来ようか!
 我等もまた、誉れ高きレガド・イルシオンを背負う騎士の――否、勇者の軍団である!
 立て! 吠えろ! 陣形を立て直せ! 全軍前進ッ!」

 それは、まさに悲愴な決意であったろう。


 ――そうした光景が見られる、少し前の事である。
 バルゲリー子爵の天幕では、数名のイレギュラーズが戦域の隊長格達と共に作戦を練っていた。
 兵同士の数を比べれば、こちらが圧倒している。だが魔物を含めればどうだろうか。それでもエキスパートたる冒険者――つまりイレギュラーズの戦力がある。
 しかし敵戦力はそれだけではない。この戦域は死の女神フレイスネフィラの出現が予測されていた。
 人間側の総大将がミーミルンド男爵ならば、こちらは魔物の総大将だ。
 彼女はたっぷりの時間を置いた後、『戦況を覆す』ために現れるらしい。

 フレイスネフィラの動向については、『古代の巫女の夢』を見たという、シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の情報が大いに役立った。
 そしてその対処方法についても。

 導き出された結論としては、次の通りである。
 あらかたの戦域で決着が付くまで、幻想軍はこの戦域を守り抜く。
 そして到着したイレギュラーズは戦域の魔物を撃退し、現れたフレイスネフィラを滅ぼす訳だ。
 作戦というものは、成立の前提が多ければ多いほど困難となる。
 幻想軍が無事であること、イレギュラーズが無事であること、敵が予測通りに動くこと。
 戦場には霧というものがある。即ち、情報は常に確定しえない。
 それでも為さねばならないのだと、隊長達は腹をくくった。

 敵兵から戦場を堅守し、イレギュラーズの到着を待つ。
 そしてフレイスネフィラをあぶり出す。
 巨人の軍勢と彼女が放つ悪霊の群れを討伐しながら、フレイスネフィラと交戦する。
 そして――これが奥の手だ。戦場にフレイスネフィラを張り付けにした後、古の巫女による結界術式(シフォリィが伝えた)を展開する。それは巫女フィナリィが用いた多重結界『永久封印』とはほど遠いが、フレイスネフィラや怨霊達の行動を強力に制限するだろう。
 魔物の死とてフレイスネフィラの傷を再生させるいうが。
「その上から、削り抜けば良い!」
 フレイスネフィラを確実に滅ぼし、後は雑魚共を駆逐するのだ。

 大規模化が予測される戦場はいくつかある。
 個々の小戦域も、落とす事は出来ない。
 多くの兵も、イレギュラーズも、まずは個々の小戦域を勝利する必要がある。
「故に、イレギュラーズへと繋ぐことが出来るのは、我等しかいないのだ」
 それが騎士隊長ガーラルの決断だった。
 彼等は、それまで戦い続けるのである。


 ――巨人との激突は続いている。
 余力など、とうに尽き果てていた。

 ガーラルは折れた剣を投げ捨てた。
 戦場に突きたった誰かの剣を拾い、巨人の足を数名がかりで斬り付ける。
 こうして一体を沈め、その直後。
 突如、ガーラルの視界を暗い影が覆った。

 頭上に見える物は、『木』である。
 そうだ。樹木だ。
 人が抱えることも出来ない太い幹と、絡み合った根。
 枝には豊かな緑を抱いている。
 文字通りの、ただの木。
 重量という名の、暴力だ。

 根に絡む土をぼろぼろとこぼしながら、それを掲げる巨人が歯を剥き出しに嗤った。
(ああ、ここまでか)
 ならばこの死は、せめて。
 死を食われる絶望を、せめて。せめても!
 イレギュラーズが紡ぐ、希望のひとひらに変えてやろう。
「聞け! 古の亡霊共よ! 我が名はガーラル・ディスト!
 幻想の騎士、勇者の羽、そのひとひらである! この命、決して安くはないものと知れ!」
 最後の一太刀を叩き込むため、再び馬を叱咤し――

 ――神気斬界・暁焔。

 無数の斬撃と爆裂と共に、唸りを上げて迫ってきた木が、粉みじんにはじけ飛ぶ。
 直後。巨人もまたゆっくりと傾いで倒れ、土煙が視界を覆った。

「来て、くれたのか。勇者クロバ!」
「……よしてくれ。俺は、ただの死神だ」
 クロバ・フユツキ(p3p000145)が、アルテミア・フィルティス(p3p001981)と共に、再び得物を構える。
「お待たせして、申し訳ありませんでした」
「手筈通りに、これより作戦をローレットが引き継ぎます」
「隊長さん、みんなを下がらせて」
 シフォリィとアルテナ・フォルテ(p3n000007)の言葉に、ガーラルは歓喜した。
「勇者アルテミア! 勇者シフォリィ! 勇者アルテナ!」

 ――イレギュラーズだ!

 ――イレギュラーズが来たぞ!

 戦場に満ちる怒号は、悲鳴は――喝采に変わり始めていた。
 あちこちで爆ぜ始めた土煙は、どれも巨人が倒れた証左だ。
 ローレットのイレギュラーズが次々に戦場へと到着し始めたのである。

「よく頑張ったな」
 ある者が兵の肩へ手を乗せる。
「我等は、まだ戦えます!」
「ええ。治癒が終わったら、また来て頂戴」
「大丈夫ですか!? 救助します!」
 またある者が、傷つきうな垂れた兵を背負う。
 土煙が晴れた頃、そこには無数の巨人が倒れていた。

 アルテミアが剣ロサ・サフィリスを高く掲げる。

「それでは――作戦フェーズ2と参りましょうか!」

●(2021/06/18:追記)
 一方その頃、陣後方の天幕にて――
 一人の老騎士が、颯爽と革布をくぐり抜けた。

「栄えある幻想王国が気高き子爵、オーギュスト・バルゲリー卿の陣とお見受けする。
 この幻想(レガド・イルシオン)が一騎士、ロギア・フィルティス。
 勇者が軍団(ブレイバリーレギオン)へ加勢せんがため、ここへ推参仕った!」
「おお! これはフィルティス卿ではありませぬか!」
 バルゲリー子爵の表情が、俄に明るくなる。
「卿はいらん。しかしてバルゲリー卿。暫く見ぬ間に、随分と背筋がひん曲がっているではないか」
 ロギアはといえば、子爵をまじまじと見据えた。
「……しかし老いたな、おまえ」
「かれこれ十年ぶりになりますかな。この年となれば、ご壮健こそが何より。いやあ、貴卿は変わりませんな。往年の後輩いびりも、またご健在そうにあらせられる」
「たかが一騎士風情に何を言うか、子爵殿」
「そう苛めてくださいますな!」
 老人二人は肘で互いを小突き合い、呵々と笑った。
「してオーギュスト、戦況の具合はどうだ?」
「たかが後輩とて、やれ中々に、見くびるものではありませんぞ」
 バルゲリー子爵は、机上の羊皮紙に乗る凸型のコマを指揮杖で指した。
「損耗は多いか、だが」
「ええ。つい先程アルテロンド卿がご到着され、早速前線へと向かわれました」
「先を越されてしまったようだな。ともあれ貴殿に背を預けるならば、百戦百勝に違いない!」
「かの勇者の軍勢に加えロギアともあろう名剣すら賜るなれば、敗戦など有り得う訳も御座いませぬわい」
 子爵の『ある種の強がり』は、けれど自信を失ってはいない。
 それはなにより、勇者達――イレギュラーズへの期待の大きさを物語っていた。

 ロギアは踵を返し天幕を後にする。
 見据えた先は――アルテミア(まごむすめ)の居るであろう戦場だ。

「この一戦。剣か婚姻か。真に良き縁を見定める試金石ともなるだろう」

GMコメント

 pipiです。
 決戦。敵は『死の女神』フレイスネフィラです。
 太古の怨念に終止符を打ち付けてやりましょう。

●決戦シナリオの注意
 当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<ヴィーグリーズ会戦>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
 どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。

●目的
・『死の女神』フレイスネフィラ討滅。
・敵軍の掃討。
・自軍の死傷者を低減すること。
・イレギュラーズが誰一人死なないこと。

●フィールド
 夕暮れのなだらかな平地。
 幻想中部に位置するヴィーグリーズの丘です。

 他の戦場の結果から影響を受けやすいシナリオです。
 敵味方共に、増援の可能性があります。

A:近衛戦士隊『フレイスヴェルグ』討伐
 フレイスネフィラが現れるまで彼等と交戦し、そのまま討伐します。
 ここでの活躍は、作戦の進捗に大きく影響します。

『敵戦力』
・巨人戦士隊×12
 太古の昔、フレイス姫の戦士隊でした。
 今はいずれも五メートルほどの巨人であり、数は十二体。
 背に翼のようなオーラを纏い、巨大な兜と剣で武装しています。
 そのタフネスと破壊力は計り知れません。
  なぎ払い(A):物中扇:出血、流血、飛
  叩き潰す(A):物中貫、出血、流血、万能、ダメージ極大
  魔風刃(A):神遠域、識、毒、猛毒
  巨体(P):マーク、ブロックに2名必要

・怨霊×大量(パっと見50ぐらい)
 神秘攻撃を中心に、毒系、痺れ系、窒息系、不吉系の様々なBSを保有しています。
 フレイスネフィラ討伐まで、徐々に沸き続けます。
 戦場にフレイスネフィラが出現した際には、更に数が増えます。

『味方戦力』
・ガーラル隊×45
 最速で数ターン後に到着します(開始時点では怪我を癒やしています)。

 隊長である騎士ガーラルの他。
 騎兵8名、防御型重装歩兵12名、槍歩兵12名、長弓兵8名、攻撃術士2名、回復術士2名の部隊です。
(もっといますが、継戦可能なのがこの程度)
 独自の判断で行動しますが、イレギュラーズは指揮しても構いません。

B:フレイスネフィラ討滅
 ここでの活躍は、決着を左右します。
 フレイスネフィラが滅びるまで、周囲には無数の怨霊が沸き続けます。

・フレイスネフィラ
 死の女神フレイスネフィラ。ボスです。
 十メートルほどの巨体です。
 全てのステータスが異常に高く、特にHP、AP、EXAは脅威です。

  切り裂く(A):物中扇:致死毒、失血、体勢不利、連、スプラッシュ2
  屍山血河(A):神超貫、識、出血、流血、失血
  怨霊亡破(A):神遠域、識、暗闇、呪縛、魔凶、呪殺
  イミルの呪詛(A):神特レ特レ(全周30メートル)、混乱、無
  巨体(P):通常攻撃『レンジ2』『範』、マーク、ブロックに3名必要
  太古の怨念(P):EXA判定に成功するたび、BSを2つ解除する。
  死を喰らう(P):『モンスターの死/HPAP小回復』『人間の死/HPAP中回復ステータス微増』『イレギュラーズの死/HPAP極大回復ステータス激増』
  黄昏の秘術(P):全てのステータスを異常強化し、巨体化させている力です。

・死の翼×4
 フレイスネフィラの周囲を守る鎌です。
 妙に硬くて結構素早いです。
 フレイスネフィラ討伐まで、倒しても再出現する可能性があります。
  切り裂く風(A):物近列:出血、流血、呪い、必殺
  飛行(P):飛行しています。

・怨霊×大量(パっと見30ぐらい)
 神秘攻撃を中心に、毒系、痺れ系、窒息系、不吉系の様々なBSを保有しています。
 フレイスネフィラ討伐まで、徐々に沸き続けます。

C:後方支援
 バルゲリー子爵の天幕周辺です。
 倒れた兵士の救出、下がった兵士の治療、戦況の分析や補佐を行います。
 ここでの活躍が、戦場の効率を左右します。
 いくらかの兵士の他、参謀や、傷が深い兵達(継戦不可能)、あとは後述の『銀花結界』を使うために、十名の魔術師が居ます。
 戦況が劣勢となり、戦線が後退した場合には、ここも襲撃されます……。

●銀花結界
 フレイスネフィラの『黄昏の秘術』を、一時的に弱体化させる結界です。
 またそれと同時に、周囲の怨霊や巨人の能力を低下させます。
 具体的には、毎ターンAPを馬鹿食いし、尽きたらそこでおしまいです。
 APは『発動者本人』と『発動者の近くに居る人』、および『後方天幕近くの十名の魔術師の近くに居る人』が『任意』に供与出来ます。

 発動をさせる人は、フレイスネフィラの十メートル以内に居る必要があります。
 発動はイレギュラーズに一任されており、シフォリィさんの判断が最優先されます。

 一応作戦としては、以下が提示されています。
  1:フレイスネフィラに出来るだけの傷を負わせる(HPを減らす)。
  2:銀花結界を発動する。
  3:フレイスネフィラを滅ぼす(HPを削りきる)。

●他の味方戦力
・フィルティス隊×12名程度
 アルテミアさんが参加した場合、その場所に現れます。
 アルテミアさん家の家臣達です。
 アルテミアさんの祖父や家名に恥じない戦いをします。
 もっと居ますが、ここで直接手伝ってくれるのはこのぐらいです。
 独自の判断で行動しますが、イレギュラーズは指揮しても構いません。

 ※また、アルテミアさんの動向如何によって、強力な助っ人が登場し、オープニングに追記が行われる場合があります。
  つ『資料庫(関係者スレッド)』 ヒント『祖父』。

・『援軍』ロギア・フィルティス(2021/06/18:追記)
 アルテミアさんが『資料庫(関係者スレッド)』へ書き込んだため、情報が追加されました。アルテミアさんのおじいちゃんが援軍として参戦します。
 アルテミアさんが参加した場合、その場所に現れます。
 老齢のためアタッカーとしては時限型ですが、技の冴えは老いてなお磨きがかかっています。ある程度の時間が経過してからは盾役として期待出来るでしょう。
 独自の判断で行動しますが、イレギュラーズは指揮しても構いません。

・アルテロンド隊×12名程度
 シフォリィさんが参加した場合、その場所に現れます。
 シフォリィさんのお兄さん『リシャール・リオネル・アルテロンド』が率いる部隊です。
 無手の武術『サドー』のお手前は中々です。
 もっと居ますが、ここで直接手伝ってくれるのはこのぐらいです。
 独自の判断で行動しますが、イレギュラーズは指揮しても構いません。

・アルテナ・フォルテ(p3n000007)
 皆さんの仲間。
 両面型前衛アタッカー。
 Aスキルは剣魔双撃、ヴァルキリーレイヴ、アーリーデイズ、グラスバースト(神遠範:凍結、氷結、出血、流血、反動、高命中低威力)
 非戦闘スキルは呈茶、センスフラグ。
 呼ばれた所か、戦力が足りなそうな所に行きます。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●士気ボーナス
 今回のシナリオでは、味方の士気を上げるプレイングをかけると判定にボーナスがかかります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 ただし、フレイスネフィラの能力についてはA相当の精度です。

  • <ヴィーグリーズ会戦>Crownless QueenLv:25以上完了
  • GM名pipi
  • 種別決戦
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年07月08日 22時10分
  • 参加人数53/50人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 53 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(53人)

ワルツ・アストリア(p3p000042)
紅き弾道は真実に導く
ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
鳶島 津々流(p3p000141)
四季の奏者
クロバ・フユツキ(p3p000145)
真実穿つ銀弾
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
シルフォイデア・エリスタリス(p3p000886)
花に集う
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)
一番の宝物は「日常」
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀焔の乙女
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
ラクリマ・イース(p3p004247)
守る者
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)
叡智の娘
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
ソア(p3p007025)
猛獣
冬越 弾正(p3p007105)
黄泉路の楔
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
恋屍・愛無(p3p007296)
獏馬の夜妖憑き
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
時任 零時(p3p007579)
特異運命座標
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)
Immortalizer
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
毀金
ロロン・ラプス(p3p007992)
頂点捕食者
マヤ ハグロ(p3p008008)
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
楊枝 茄子子(p3p008356)
古竜語魔術師(嘘)
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
ボディ・ダクレ(p3p008384)
ぬくもり
紅迅 斬華(p3p008460)
首神(首刈りお姉さん)
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
孤独の雨
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ラムダ・アイリス(p3p008609)
咎人狩り
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ(p3p009452)
想光を紡ぐ
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
アリス・アド・アイトエム(p3p009742)
ツルペタ解放者

リプレイ

●At the Gates I
 人という個にとって、どうにも出来ない物事というものがある。
 避けようのない、多くは悲劇であろう。
 王国兵の一人は、胸中それを『運命』と呼んだ。

 そんな彼だが、荒野に一人。既に満身創痍だ。
 折れた槍の穂先に短刀をくくりつけ、目を見開いている。
 眼前には無数の怨霊。万事休す。身体の震えが止まらない。

 ここはヴィーグリーズの丘――北西部。会戦における最先端に位置する。
 死の女神を名乗る太古の亡霊、フレイスネフィラの出現予測地点とされていた。
 頼みの綱であるイレギュラーズは、個々の戦域を攻略後に、合流する手筈となっている。それまで幻想王国軍は、この場の堅守を続けていたという訳だが――

 汚泥のようなどす黒い怨念が、地を焦しながら波打ち迫る。
 死まで。あと三秒。二秒。
 一秒――
 兵士は震え、目を閉じ、神に祈り、それから槍を取り落とし、歯を噛みしめた。

「――?」

 痛みも衝撃すらも覚えなかった。
 死とは、かくもあっけないものだったのかと、そう感じた。
 そしてゆっくりを目を開ける。
 眼前に、白銀の軌跡を描く巨大なナイフが煌めき――ノバディエット。
 寸断された一匹の怨霊が虚空へと掻き消えた。
「――悪しきを拒み、影にひかりを。総てのいのちに祝福あれ!」
 アイラが解き放つ光の蝶が怨霊共を次々と打ち祓う。
 ウィズィの一撃、それからこの聖なる光による浄化は、死にあらず。
 つまり戦場の向こうに居るであろうフレイスネフィラへ力を還元していない。
 イレギュラーズが試みた『不殺』による怨霊撃破は、早くも有効に働き始めている。
「もう大丈夫です。下がってください」
「……勇者ウィズィ。勇者アイラ!」

 些かの面映ゆさを振り払うように、ウィズィはナイフの先端を大地に突き立てた。
 からからと土削る、いくつもの馬蹄の響きに、満身創痍の兵士達が破顔し運命の座標が変位する。

 ――勇者だ! 勇者達が来てくれたぞ!

 あちこち湧き上がる喝采に、全身の細胞が奮い立つ。
「大丈夫。背中はボクに任せて、ウィズィ」
 ――キミはボクが護ってみせるよとアイラの瞳が彼女を見つめた。
「OK。あなたとあなたの瞳に映るものは全て私が護るよ、アイラ」
 仲間が巨人へとたどり着けるように。
 紡ぐはウィズィが紡いだ御伽噺。誰もが知っている冒険譚。

「さあ、Step on it!!」
「――苦しくとも、辛くとも、どうか恐れないで」
「皆さんには、ボクとウィズィがついています――往きましょう!」
「私達が拓いた道の先に、必ず勝利が待っています!」
 続け続けとアイラが爪弾く。言の葉は唄に乗り、力強い鼓舞を支える証左(テスタメント)。

 大軍勢が予想される戦域は五つだ。
 この最奥に許された勇者の数は僅か五十余名に過ぎない。
 しかし――ガーラルは厳めしく結ばれた頬に流れる感涙を隠すように、兜の面を勢いよく下ろした。
「貴殿等へ最大の感謝を! その力、千の軍勢にも勝ると心得た! 全軍前進! 勇者へ加勢せよ!」
 治癒を終えて帰参した騎士団が、イレギュラーズの檄に呼応し、鬨が轟く。
 騎兵の嘶きが戦陣を駆け抜け、歩兵達が掲げる無数の槍が、怨霊へと向き直り牙を剥きだしにした。
 ウィズィもまた、己が身を盾としながら戦場を駆ける。
 たとえこの身が傷付こうとも、アイラに赤い傷跡は似合わない。

「私は鉄帝の民だ、関係はないと言う事は出来るだろう」
 十七号は始まった剣檄を耳に口を引き結ぶ。
「けれど同時に私はイレギュラーズだ。だから今は、世界を救う一助となろう。だから、この戦場、怨霊共の対応は貴殿らに尽力して頂きたい!  その隙に私達は巨人を叩くッ!」
「応よ、心得た!」
 味方の兵士に檄を飛ばし、十七号はエルシアと共に戦場へ走り出す。
 目の前の敵は命無き者なのだろう。
 それでも人の姿をしていれば戸惑いが生まれるとエルシアは指を握り絞めた。
 けれど、その先に見える無情な結末を思えば戦う以外の選択は残されていない。
 エルシアの鼻先を甘い香りが漂う。匂いのする方へ視線を向ければベークが空へ浮かんでいた。
「これまでの経験で、甚だ遺憾ながら大抵の敵は僕のこと美味そうって感じるってわかってますからね」
 それは敵を引き寄せ、一網打尽にする決意だ。
「全く、余所見はさせませんよ……あ、やっぱりそういうおいしそうみたいなのやめてもらえます?」
 ベークが発する香ばしい香りに引き寄せられた敵が目を瞬かせる。
「はっ! 私達を――舐めるな!」
 無数の怨霊が十七号とベークへ殺到し――熱線が閃いた。
 鈴と澄んだ音に続く、轟音。
 吹き荒れる爆炎は音さえ置き去りにし、亡者達を飲み込み焼き払う。
「私などの為に命を張って下さる方がいるのですから、私はそれに見合うだけ世界を変えねばなりません」
 悲劇には負けない。エルシアの祈りは鮮烈に輝き続ける。

「女神が現れる前に巨人の数を減らす。基本は不殺の方針だな。了解だ」
「イーゼラー様の教義に則り、俺は異教の死を否定する!」
 アーマデルと弾正は互いに背を合わせ戦場の只中で武器を構えた。
「魂の循環を見守る我が神とは異なる形で死に纏わる女神か」
 この戦場の死は彼女への供物なのだろうとアーマデルはフレイスネフィラを一瞥する。
「如何なる姿であろうとも敬意は払う。それが神であるならば」
 確かに俺の神は此処にいるのだと弾正は胸の奥に木霊する存在を感じていた。
 けれど本当に守りたい者は背を預けるアーマデルだ。
「弾正、死ぬなよ。俺の神はここにはいないが、お前の神は違うのだろう」
「ああ」
 弾正はマイクを取り兵士達に声を届ける。
「兵士サンに好い人はいるか? 俺はここにいる! だがまだキスもしていない!」
 だから。どうか
「後生だ、守る牙となってくれ!」

「ハッ……雑魚共がウジャウジャと湧きやがる」
 獰猛に一声吠えたグドルフは虚空を強かに蹴りつける。
 まるでそこに怨霊が飛び込む事が預言されていたように。
 吹き飛ばされた怨霊の一匹が、虚空に溶け消えた。
 怨霊(死に損ない)を死の女神(あのバケモノ)のエサにするのは面白くない。
「何事にも下準備は必要だ」
 一匹の怨霊をたたき伏せた愛無の言葉通り、まずは血路を開くのだ。
 思えば大きな戦いでは、リーヌシュカと背を合わせることが多かった。
 些かの寂しさを感じるが、ここは幻想なれば是非も無し。この戦いが彼女に届くことを願って――
「さあ諸君、進撃しようか。案ずるなかれ、亡霊共の牙は全てこの身に引き受けよう」
 愛無を食らおうとした無数の怨霊は、その粘膜に捉えられ貪食される。
 兵達の槍が悪霊を貫き、黒の滂沱が残らず平らげる。残滓すら、死の女神などには与えはしない。

 果敢に戦場を突き進む一行の足元に、赤黒い瘴気が流れ込み始める。
 続くのは全身を劈くほどの地響き――

 ――来タカ、勇者共。ソノ血総テを絞リ尽クシテヤロウ!

 雷鳴のような声が轟き、一行の全身を貫く。
 現れたのは武装した十二の巨人『フレイスヴェルグ』。
 そして彼等を従える、いっそう巨大な怪物――フレイスネフィラであった。

●Crownless Queen I
「いよいよ、お出ましだね」
 咆哮と共に、フレイスネフィラが展開したのは四枚の『死の翼』。巨大な死神の鎌だ。
 一行は、まずはこれを抑える必要があると踏んだ。
 勢いよく拳を打ち合わせたイグナートが一気に駆け出す。
「アルテナ! この戦いが終わったらウチアゲで飲もうね!」
「それ、今言うこと?」
「いいじゃない! モチベーションは大事だよ」
「それもそうね! じゃあ約束」
「うん。ヤクソクだよ!」
 二人は拳を合わせる。

 イグナートはその一翼の前へ着地する。
 乾いた大地に無数の亀裂が走り、波紋を広げるように三度陥没した。
 纏うのは大地の怒り――ティタノマキア。イグナートは拳を引き絞り、更に踏み込む。
 竜さえ穿つ破壊の一撃に、刃が砕けはじけ飛んだ。

 ――切リ刻ンデヤロウ!

 大地を切り裂きながら迫る死の翼へ、プラックはガントレットを叩き込む。
「俺は元より死ぬ気で生きて、死ぬ気で仲間を生かしてんだ――」
 火花が飛び散り、踵が地を抉った。
「――死は恐れるが屈する事はねぇのさ、女神様」
 鎌の砕けた破片が舞う。
「さあもう一枚。来な! あたしとデルさんが相手だよ!」
 朋子は相棒を振りかぶり、太古と原始が激突した。
「なかなか硬いね」
 刃の破片が舞う。頬へ一条の紅を引かせながら、朋子は笑った。
「ならば続こう。死の女神よ、我が空想の刃を前に屍を晒すが良い……ッ!」
 頼々が有り得ざる刃を抜き放つ。
 魔性の斬撃は二重の顎となり、死の女神さえ食い破る。
「それにみんな、援軍だって来てくれた!」
 戦場の俯瞰情報を垣間見た朋子が続ける。
 大量に湧き上がった怨霊と剣を交え始めたのは、友軍である。

 ――幻想ノ弱兵如キガ、幾ラ現レヨウト同ジコト!

「我が名はロギア・フィルティス! 幻想騎士たる義務を果たしに参上した!」
「本席のお掛物、読み上げはそちらでよろしいか」
 ロギアとリシャールが背を合わせ構える。
「この一枚は引き受ける。行け、孫娘共。勇者として、幻想貴族として――責務を果たせ!」
「はい、お祖父様!」
 アルテロンド隊、フィルティス隊が無数の怨霊と激突している中、アルテミア、シフォリィ、クロバ、アルテナがフレイスネフィラの足元へと迫る。
「一番でっけぇアイツをブッ倒せばこの戦いは終わりだぜ!
 派手な一撃をブチかまして文字通りのジャイアントキルと行こうじゃねぇか!」
 凄絶な笑みを浮かべるルウが全身全霊を込め突進した。
 振り抜かれる巨剣がフレイスネフィラの巨体に食い込み、ルウはその剣の背を強かに蹴りつける。
 フレイスネフィラの巨体からとめどない瘴気があふれ出す。
「最早、血肉ですらないのだな――」
 百合子が伏し目がちに呟いた。
「家臣なき貴女が女王を名乗る理由と吾が未だ生徒会長を名乗る理由は同じなのだろうな。
 正しい幕引きが出来なかった者のよしみよ、せめてもの決着をくれてやるとしよう!」
 踏み込み――無数の捨て石に潜む本命をつかみ取る歩法。
「 貴女の得手は吾の得手でもある! どちらが早いか競争と行こうか!
 灰降兎の構えから放たれる拳の乱打がフレイスネフィラに無数の弾痕を穿ち――
「ユリユリユリユリユリユリユリィーーーーッ!!!!!!」

 ――小癪ナ! 挽キ潰シテクレル!

 フレイスネフィラは巨木のような腕、大剣の如き爪が暴風となり一行を襲い続けている。
 それは――言うまでもなく『恐ろしい』。
 シルフォイデアは思ったのだ。まるで『死そのもの』だと。
 フレイスフェフィラは止まらない。その上、一挙手一投足の全てが暴威である。
 しかしここで滅ぼさねば、どれほどの災厄となるか。
 だから――
「この微力を捧げ、支えます」
 戦場を圧倒するフレイスネフィラがもたらす破壊の限りを、シルフォイデアの決意が払う。
 その号令に、瞬時の采配に、一同が再び顔を上げる。
「ええ、そう易々と死なせる気などありません」
 端正な唇をほころばせ、ラクリマが永遠と光の聖歌を紡ぎ続けている。
 雪を思わせる清廉な白の光が舞い、一行の傷を瞬く間にかき消した。
「死の女神、これほどとはなぁ。美人に手荒な真似はしたくはないが――」
 軽口を一つ乗せ、黒影の盾を展開したフレイの両足が荒涼とした大地に二本の轍を描いた。
 一撃が重い、身体が砕けそうだ。だが――
「問題ない。俺が全て受けきろう、絶対に守るよ」
 死が力となるならば、誰も死なせなければ良い。

「これ以上させはしません。それに――ここを通すつもりもありません」
 サルヴェナーズの解き放った汚穢が、フレイスネフィラの巨大な爪を絡め取る。
 あふれ出す殯の山へ身を預け、目を見せぬままあ艶やかに微笑んだ。
「この戦いで命を落とした人達の願いを、祈りを、無駄にするわけにはいきませんから」
 けれど――
 きっと貴女も、同じ理由なのでしょうね。
 古きを背負う精霊たる彼女には、どこか通ずる所もある。
 ともあれ、せめて結界の展開まで戦場を保たせる。そう念じて。
「まぁ! 素敵な方♪ 立派な首をお持ちですね♪ 首、置いて行って下さいな♪」
 陽気な斬華の声が戦場に響く。ワルツと対角線上に走り込んだ斬華は敵を挟撃する形で剣尖を走らせた。傷口から瘴気が吹き上がる視界の向こうへワルツが映り込む。
「†死の女神†……しかも10m級の巨人だなんて!」
 目を輝かせ口角を上げるワルツ。
「そんな心を揺さぶる派手な存在、危険を冒したって拝みに行くに決まってるじゃない!」
 というのは建前ではなく本音であるけれど、何か貢献出来るだろうかとこの戦場にやってきた。
 それにもしかしたら、きっと『あの子』も喜ぶだろうか。それとも、心配させてしまうだろうか。
 けれど集中。紅焔の高揚と共に、トリガー。
 ワルツが解き放つ弾丸は斬華の頭上、空を一直線に突抜け、狙い違わず死の女神が振るう腕を穿ち貫いた。
「命は大事に、最大限を撃ち込みましょう!」
 ワルツは直ぐさまその場を離れ走り出す。狙撃手の嗜みだ。
「お姉さんの仕事はね……少しでも貴女へダメージを残すこと♪
 仲間達も頑張ってくれています……お覚悟を!」
 色彩の花が咲き乱れるが如く、斬華の太刀が駆け抜ける。
「中々の大きさじゃねえか……いいな、悪くない」
 首を左右に捻った貴道は、フレイスネフィラの足元へ肉薄する。
「殴り甲斐がありそうなヤツは大好きさ、いっちょ派手にぶちかまそうか!」
 迫り来る暴風へ――ノーモーションのカウンターが炸裂した。
 なるほど、敵は動く巨木だ。熊どころじゃない。
 拳の一撃は、確かに強烈な手応えを感じる。
 避け、打ち合い、幾度かの苛烈な攻防は、だがなかなか相手を封じるには至らず。
 けれどクロスファイトのラッシュこそヘビーファイターの強みだ。
 一瞬、僅か十秒程だったろうか。
 フレイスネフィラが、かの巨体がよろめき、大きな隙が生じたではないか。
 その瞬間、貴道は天へ拳を突き上げる。
「見な! あのデカブツ、足が踊ってやがるぜ!」
「皆、進め! 欠けることなく進軍し、歴史の語部となって未来へと繋ぐのだ」
 貴道に喝采した兵達は、続く高らなアリアの歌声に再び鬨をあげた。
「ごめんねアリア。付き合わせることになっちゃってさ」
 シフォリィから伝えられたフレイスネフィラの物語――シキはそれを忘れられずにここへ来た。
 見上げるのは、あの時みた美貌の古代人とはまるで違う、威容。
「シキちゃん、大丈夫?」
「私は大丈夫だ。結末を見届けるって、自分に誓ったから」
 アリアは――
(私は、怖いよ)
 けれど。
 さあ。
「「行こう」」
 重なる声音と共に見据える先。

 前へ。
 ただ、前へ。

 ――その頃、戦場後方には風雲急を告げる報が為されていた。

●Dead Gardens
 戦場後方。バルゲリー子爵の天幕にて。
「閣下に至急お伝えを」
「申せ」
「勇者が一名マヤ ハグロが、たった今、戦死を遂げられたと」
「何――!?」
 戦場へ、絶望が訪れようとしていた。

 イレギュラーズは、全身全霊を賭して懸命に抗い続けている。
「ここで頑張れば…傷つく女の子……減る…助かる可能性……」
 次々に運ばれる負傷者を、アリス達は懸命に癒やし続けている。
「だから……アリス……がんばる…………!」
「重傷者をこちらへ。はい、なるべく一カ所に! すぐに治します!」
 ノルンが多数の兵士へ集中的に治癒を施した。
「前線は、今頃――おそらく、もう」
 女性兵士の一人が震えている。
「アリスたち……ついてる……だから心配ない……」
 傷を癒やし、そっと抱きしめ、しゃくり上げる背を撫でた。
「必ず治します! 皆で勝ちましょう!」
「案ずる事勿れ、勇者が来た!」
「勇者なんて名前を名乗るのはあまりにもにあいませんが……
 今ここに立つ人々は等しく勇士であることには変わりません」
 未散とヴィクトールを見上げる兵士達の視線は、縋るようで――
「揃いの首の傷は死の香り……けれど何方も生を尊ぶ、生者です」
「まあ働くことなんて決まっているのですよ。守る、それしかありません。何が起きたとしてもです」

 ――荒野に馬車を走らせているのは、零時だった。
『そこからは、迂回したほうがいいだろうな。その先に負傷者がいるはずだ』
『了解だよ。助かるね』
 ゲオルグのハイテレパスに応答した零時は迂回路を選択した。
 遠回りになるが、言葉通り、遠くから戦いの音が聞こえ始めた。このルートが正解だ。
 彼が自身に課した任務は、戦う力を失った者を、無事に回収することである。
 ゲオルグもまたこうした情報を的確に共有させ、戦場の効率化を図っているというわけだ。
 剣を交えることだけが、戦いではない。
 後衛にも後衛の領分というものがある。
 負傷した兵士を抱え、ヨゾラもまた後方部隊へ向かっていた。
「君と皆で勝つ為に……生きるんだ!」
 誰一人死なせないために。己自身も死なないために。
「だから、死なないで。そこの貴方も動けるなら、手伝って! 立ち尽くしている場合じゃない」
 この戦場では命の重さが違う。ヨゾラは兵士に負傷者を託し再び戦場へ戻っていく。
「アンタ、大丈夫なのか?」
「僕は大丈夫。生き残るよ。だって家でフウカが待ってるんだ」

「これ以上……絶対に誰も死なせません」
 死は全く、彼女等の責任ではない。それでも彼女等は、全てを救いたいと願い行動する者であった。
 セリカとユーリエもまた、兵達を癒やし続けている。
「私たちが出来る全力を出し切ろう!」
「私が全力で助けるから、安心して……。一緒に辛さを乗り越えていきましょうっ!」
 劣勢も、劣悪も、全て跳ね返すと決意して、二人は大地を踏みしめる。
「さぁ前を向いて。立ちあがりましょう!」
 彼女等、最後衛はそれでも前を向き続ける。

●At the Gates II
 なれども。
 それは挫折と悲嘆であった。
 それはまさしく絶望であった。
 それはゲームの詰みを意味していた。

 可能性の死を喰らったフレイスネフィラは、最早十メートルの巨人ですらない。
 無数の怨念を触手のように解き放ち、暴れ狂う災厄そのものであったのだ。
 二十メートル、いや、三十――一体全体どれのどこがフレイスネフィラであるのかすら、掴みようがない。
 作戦は機能しない。
 最早きっと、この戦域は『終わり』だ。
 客観的な事実とする他ないだろう。

「……死が、絶望がなんだ!」
 だが、凜とした声音が戦場へ響き渡る。
 太陽たらんとする青の月――メルナが立ち上がる。
 彼女達勇者は、ローレットのイレギュラーズは、諦めてはいなかった。
「そんな物に折られるくらいなら、今まで戦ってこれてなんて――ない……っ!」
 振り上げた大剣に青白く煌めく光の粒子を纏い、巨大な聖剣が顕現する。
「光は影を逃がさない――イノセント・レイド!」
 メルナは剣――目映い輝きを放つ光柱を一気に振り下ろす。
 土塊が抉れ、大地と共に巨人戦士フレイスヴェルグの一体が光の中に消えた。

 残るフレイスヴェルグ達は、未だ鉄塊の如き巨剣を振るい続けている。
 そんな暴風の真後ろに、ノリアは浮かんでいた。
「まさか、その剣の切れ味が、包丁以下なんてことは、ありませんでしょう……?」
 怒髪して振り向いた巨人の刃が、ノリアの小さな身体を叩き潰そうと迫る。
 粉々になってしまう程の斬撃は、けれどその腕に水の刃を刻みつける。
 優雅に泳ぐ彼女(レプトケファルス)だが、召喚前は大海原で巨大な敵を凌ぎきって生きてきたのだ。
 やりようなど、いくらで心得ている。
「ふふふ、踊り喰いができるなんて最高だねぇ!」
 破滅の妖刀が哭いた。抜刀――玄丁は後の先から先を撃ち、勢いそのままに無数の斬撃を刻んだ。
「ギストールの街の悲劇を忘れたことはありません――
 これ以上の死を捧げるのは控えて頂きましょう」
 マグタレーナが編んだ魔光が螺旋を描き巨人の足を貫いた。
 続く歪みの言霊に、その姿を巨象へと変える。
 望まぬ死を強いるのは、あるいは互いに同じやもしれない。
 だが――怨霊となってさえ篤い忠義には、敬意を忘れる訳にはいかないと思った。
「立派な巨人たち……きっと昔はたいへんな戦士だったんだね」
 巨大な剣が、屈んだソアの頭上を過ぎていった。砂埃が天高く渦を巻く。
「けど、ボクの方が速い!」
 相手はこれまで見たどの巨人より強い。だからソアは命をぶつける。
「さあ、炎ならどう!」
 灼熱の花吹雪が舞い踊り、古の戦士を業火へと叩き込んだ。
 死は喰われるべきモノではない。最後の眠りであり、救いである。
 その一助たるを胸に誓い、墓守――グリムは迫る刃を捌ききった。
 呼応する感応呪術――暴威の集中。
 地裂も、髪を掬い上げた暴風も、その身に刻みながら巨大な戦士を見据え続ける。
「古き時に眠るはずだった忠義のモノよ、汝らが主は我らが勇士が眠りに導く」

 ――だから汝らも眠れ。

「これ以上、誰一人死なせはしない。貴方達は、邪魔だ。ここで、朽ちていけ」
 閃光のように駆け抜けたボディが、返す拳に激情(エラー)を乗せる。
 どうと倒れた悪霊の巨人が、光の粒子に変わる。
 その怨念の残滓は祓われ、フレイスネフィラへ還らず天へと昇って逝った。

●Crownless Queen II
 イレギュラーズは――幻想の勇者達は、それでも怨念と滂沱、復讐の化身と戦い続けていた。
 その小山のような怪物は、悪霊を吐き出し続けている。

「ねえ、発動は、さすがにもうそろそろ」
 最前線で戦うアルテナにも動揺が見える。
「翼をたたき落として、その時に」
 だが、どうやって。
 相手は最上級の『死』を喰ってしまっているのに。
「いえ、諦めるにはまだ尚早です。――俺が開いた傷痕は、消えていない!」
「ああ、私もさ。どこかしら喰い損ねたんじゃないかな」
 怪物――フレイスネフィラに災厄を叩き付けたラクリマの言葉に、シキも頷く。
「あれなるは、ワレがこじ開けたものである」
 頼々もまた続けた。
 それは、ほんの一握りの勝機だった。
 フレイスネフィラは恐らく『極端に能力向上した』が『極大回復に失敗した』。
 断続的な致命付与の成果である。
 つまり、これまでの攻撃『全てが無駄ではなかった』ということ。

 ――戦況報告!

 そんな時だった。

 ――西部大戦域にて、クローディス・ド・バランツが討ち取られました!

 ――中部大戦域にて、勝利の報!

 ――国王陛下より、ビルレストの防衛に成功したと!

 馬上の騎士が叫び、喝采はうねりとなって戦場へと伝わっていく。
 それから間もなく馬蹄といななきも迫ってきた。
 一行が目にしたものは、戦勝旗を高らかに掲げる援軍の姿であった。
「お兄様、どうかご無理をなさらず」
「お祖父様も」
「「誰に物を言っている」」
 シフォリィとアルテミアの心配に、ロギアとリシャールが声を重ねた。
「それに若い娘がこのような戦いで、命を削るものではない。良い縁談を持っている」
 さも当然の如く、淡々と述べるロギア。
「ちょっ!」
「えっ婚姻!? さっき食べたお赤飯、分ければ良かった?」
 思わずウィリアムが問いただす。
「婚姻するのアルテミア!? いや君も年頃だから不思議ではない、んだけど……」
「しないわよ!?」

「ヒュ~怖い怖いあの巨体からの攻撃とか洒落にならないんだけど?」
 小さな、しかし蠱惑的な肢体を屈め、対群精神感応攻撃術式「狂月」を放つ。
 ラムダが徹するのは遊撃、攪乱だ。
 精神を奪う不吉の月は、巨人悪霊を問わず暗中の恍惚たる狂気へと縛り付ける。
「ボクたちもついているんだ巨人怨霊恐れずに足りずだよ」
「諸君!!」
 ルーチェもまた声を張り上げた。
「此度対峙するのはまさしく強大であると言えよう。
 しかし我らには、余も含め総勢五十三人の――イレギュラーズがついている!!」
 黒き太陽を宿した『幻想の勇者』にして『魔王』は、漆黒の魔弾全てを放ち続け。
「だから恐れるな!! そして生きよ!! ここでの死は、かの者に魂を弄ばれると思え!!」
「そうだ。全軍へ告ぐ! 勇者の軍団に続け! 全軍! 突撃!」
「……余、魔王なのだが」
 一行を邪魔立てする無数の怨霊を、援軍の騎士達が貫き、切り裂き始めた。

(正念場か……)
 リウィルディアは――イミルの民の末裔である。
 たとえこの身に掠れるほどとはいえ、イミルの血が流れていようとも。
(裏切りの一族として憎まれようとも――滅ぶのは、君たち巨人だ)
 仲間達には、もう一度あの怨霊の群れを突破してもらわなければならない。
 そうしなければ、結界発動のチャンスさえ掴めないだろう。
「角笛のノルンはここにいるぞッ――!」
 だから、叫んでやった。
 なるほど、リウィルディアは知らないことだけれど、彼等は覚えているらしい。
 怨霊の群れが憎悪を剥き出しに、リウィルディアを一気に飲み込んだ。

 耐える、ただこの一瞬を――そうすれば!

「リウィルディアさん!?」
「大丈夫、だか、ら。行って!」
「なら、わたしが――いま出来る全てを、がんばりますから!」
 調律の術式を紡いだシルフォイデアの温かな魔力が、リウィルディアを癒やす。
 長い時間は持たないだろう。けれど――
「急ごう、私達も切り拓こうじゃない! おねがいアリア」
「うん、行こう」
 微かな隙を見逃す訳にはいかなかった。
 駆け出すシキの巨大な刃が、アリアの術式がうねる怨念の滂沱をなぎ払った。
「あれをぶっちぎればいいんだろ」
「フンサイしてやるね!」
「ここから行ける、シキちゃんは左にお願い!」
「若造共に遅れはとらんよ」
 プラック、イグナート、朋子、ロギアが――
 暴風雨のように叩き付けられるを縫い、死の翼へ得物を叩き込んだ。

「今です」
 シフォリィが、その背を押した。
「アルテナ。頼む。後は俺達が為すべきを為す」
 頬をかいたクロバが安心させるように一瞬だけ微笑み、きりりと口を結んだ。
「……うん、やれるだけやってみる。銀花結界――展開!」
 両手を組み、目を閉じたアルテナから白銀の粒子があふれ出した。
 大地を駆け抜ける鮮烈な光に、亡者達が焼き払われていく。
「咲いて!」
 鈴のように澄んだ音色が響き、アルテナの足元を中心に美しい花模様の魔方陣を描き出した。
「お風呂に入ってるみたい」
「なんですか、それ」
「力が抜けていくっていうか」
「無理はしないで下さいね」

 圧倒的な光が、フレイスネフィラをねじ伏せ――

 ――サセルモノカ!

 けれど膨大な怨霊がアルテナへと殺到した。
「何度もは難しいな。腕がなくなりでもしたら困る、茶が点たないからな」
 その全てを捌いたのは、リシャールだった。
「お兄様!」
「この通り、まだ無事だがね」
 両手の血を払ったリシャールが再び構え――身体が軋む。最早次はないと悟った。

●Crownless Queen III
「この結界が要だ……生きて、結界を維持する!」
 ヨゾラの宣言と共に、結界への魔力供給が開始された。
「アリスも、出来るだけ……でも……」
「押さえ込めていないのですね、フレイスネフィラを」
「……きっと。けれど、やりましょう! 私達の全力をここに!」
 天の雫を口に含み、ユーリエもまたセリカと共に手のひらをかざした。
「みんな!? 会長がいる限り結界が無くなることなんてないよ!?
 怪我したり疲れても、戻ってきたら回復してあげるから!? 無理せず頑張って!!」
 茄子子の魔力は、まさに無尽蔵である。少なくとも、己が自身の紡ぐ術式は。
 ここが正念場なのだ。死の女神だか何だか知らないが、こちとら羽衣教会の女神なのだ。
「絶対負けないもんね!!」

 そして――そんな時だった。
「私はハイペリオン。太陽の翼。大地の子らを守るのは我が使命!」
 純白の羽が後衛の陣へ舞う。
「ハイペリオン様、だと!?」
 子爵が立ち上がり、声を震わせる。
 それから――
「僕は、今の僕には何も出来ない。けれど――守人としての役割を果たしに来たんだ」
 原罪の呼び声を撥ね除けたアンジェロに、魔種の影響は残って居ない。
「術士さん、この呪文を加えて。そしたらきっと」
 戦う力はないが、しかし彼の中に眠る『守人』の記憶は、銀花結界の成立を強固にする。
 だがそれは、更なる魔力消費との引き換えだ。
「ならば捧げましょう。私の力も」
 ハイペリオンがシンプルな表情で翼を広げる。

 ――援軍が、援軍が次々に到着しています!

「数は!」
 これまで戦い続けていたのは、幻想軍が騎士と兵を合わせて百程。
 そして勇者――イレギュラーズが五十余りだ。
「幻想軍、騎士二百騎! 勇者が百! 百の勇者です!」
 子爵はあんぐりと口を開け、指揮杖を取り落とした。
「大丈夫。さあ飛んで」
 驚きによろめく子爵の背を支え津々流が、手紙を託したヒヨドリさんを空へ解き放つ。
 負傷者を治療しながら、こうして情報を友軍へと、あまねく伝えるのだ。
「ワシの指揮なぞ、もうこれっぽっちも要らんのじゃろが」
 口をすぼめ、いじけて見せた子爵は、続けて呵々と大笑する。

 ――

 ――――

 その頃だった。
 とうに限界を迎えるはずの銀花結界が、突如拡大したのだ。
 吹き荒れていた怨霊が押さえ込まれ、辺り一面に怨霊と瘴気を迸らせ姿さえ確認することが出来なかったフレイスネフィラの巨体を徐々に押しつぶして行く。

 ――マサカ守人ニ、太陽ノ翼ダト!? ダガ足リヌ! ソノ足掻キ、灰燼ヘ帰シテクレン!

「足掻いてるのは、そっちでしょ。さあ、もって行きなよ」
「ああ、おれさまのスーパーな力だ、遠慮せず持っていきな! 持って行きやがれってんだ!」
 朋子が、グドルフが、アルテナの肩を力強く叩く。
「ありがとう、みんな。もう少し、あと少しだけ……がんばってみるね!」
「ワレの真打ちと行こうか」
 頼々が背を低く構えた。
 未だ自身は納得しかねる出来である。だが、死地にてこそ無双の切れ味を得るだろう。
 危機を転じ好機とせよ――
「カミさえ断ち切る我が太刀筋、見切れるものならばやってみよ!」
 ただの一閃。されどこれまでとは『桁の違う』一撃は、フレイスネフィラの打撃さえ遙かに凌駕した。
 怪物――死の化身を袈裟懸けに駆け抜けた空想の刃に、咆哮。大気が震える。
「此処で殺す! 死を以て力とする奴に時間を与えるな! 畳み掛けろ!」
「ああ、ここからが本番だぜ」
 獰猛な笑みを浮かべた貴道が、瞬速の二連撃を叩き込む。
 こうしてイレギュラーズの猛攻が始まった。

 おそらく其れは未だ十メートルの巨人であり続けている。
 その怪物は巨腕らしき質量を振るい、怨霊を放ち、勇者の軍勢へ痛烈な打撃を与えていた。
(死を食べると言われてもこう……なんかごめんだね)
 一応死にはすれど、ロロンには血も肉もないのだから。
 ともあれ。
「今日のボクはスライム騎士ー。……爆弾持ってつっこむのは騎士なのかな……?」
 多重付与を纏い、霊刀の摂理――純白桜華を浮かばせ、ロロンの身体を魔力が駆け抜ける。
 あたかも粒子加速器を思わせる、刹那の爆発的な増幅を解き放つ――ぷるるーんぶらすたー。
 体当たりと共に、膨大な魔力の奔流が、フレイスネフィラを構成する怨念を砕き吹き飛ばした。
 左腕の再構成に失敗したフレイスネフィラが、姿勢を崩す。

 ――死ガ、足リヌ! コノママ、喰ライ尽クシ!

「キミも大喰らいなんだねぇ。少しだけ親近感かもだよ」

 過去の復讐というものもあるだろう。だがそれで『今を生きる普通の人々』を苦しめるのであれば。
「……アタシはそれを断つ!」
 負の連鎖を、ここで断ち切るために。
 ミルヴィの剣舞が――封じられし『もう一つの可能性』を纏い、美しくも苛烈な軌跡を描き続ける。
 蒼玉を想わせる剣へ双炎を乗せ、アルテミアは願いの一閃を重ねた。
「ここに居るのは国なんかを守る為じゃない。
 誓ったんだ、もう”この手で掴んだものは二度と離さない”と」
 クロバが吠える。
「死の女神程度がこの死神(オレ)から奪えると思うな。
 俺は死を背負う死神、生ける繋がりを守る者!
 よく聞け間抜け共!
 今シフォリィ(こいつ)の隣に居続けるクロバ・フユツキという男はそんな奴だと!
 俺は勇者じゃない、それでも――だからこそ、運命は俺が斬り拓く!」
 死神の二振りは爆裂と共に、鬼神の如き焔の剣戟を刻み込む。

 ――あの人と夢の中での遭逢を経て、私は思ったんです。死んで何かを為すのは、間違いだって。

 だから、もう滅びを望まなくていい。
 シフォリィが剣を掲げる。
「ええ、行きますよ!」
 シフォリィとアルテミアが駆け、敵の巨体に対城剣技の十字を描く。
「我 墓守。死ヲ 守ル者。死奪ワセナイ。喰ラワセナイ!」
 戦線を維持し続けていたフリークライが、再びウィリアムに魔力を分け与える。
「ウィリアム 頼ム 我 充填スル」
 さすがに、もう保ちそうにない。
「ありがとう。それじゃあこっちも。フレイスネフィラ……力の限りお相手するよ」
 魔剣をかざし、ウィリアムは破壊術式を一点収束させ、駆ける。
 先端が触れた――刹那。
 膨大な魔力が炸裂しフレイスネフィラの腹部を穿ち、光が天へと駆け抜ける。

 ――バ、カナ。

 再び顕現しようとしていた死の翼が霧散し、その手に大鎌が出現する。
 握りしめ、立っているのは、人だった頃の姿をしたフレイスネフィラだった。
 その足元は、微かに薄らいで見える。
「我等が怨念、口惜しさ、晴らす……には」
 肩で息をするリウィルディアを睨め付ける。
「せめて、あと、一人の命を飲めば!」
 フレイスネフィラが大鎌を振るい――サルヴェナーズの汚穢の槍が受け止め貫き返す。
「そうは、させられないのです」
「俺は、俺達は――」
 ラクリマ霧氷の魔術が切り裂き、プラックと百合子が立て続けに打撃を叩き込む。
 シキの剣が大鎌を跳ね上げ、宙を回転して大地へ突きたった。
「……されど現世の民共よ。太古の呪いは、怨念は、尽きることなく――」
「ううん、それは……嘘なんでしょ」
 震えそうになる心を押し殺して、そう述べたのはアリアだった。
「……ほう」
 天啓であったのだろう。
 アリアは大鎌へ歩み、古びた柄を撫でると言葉を続けた。
「あなたの伝承は聞いたよ」
「なぜ、嘘と思うたか」
「優しいあなたは、復讐心なんてとっくに燃え尽きてるんだ」
「続けよ」
「焼き尽くしたかったのは今の世界じゃない。
 生きている人と亡くなった人達の怨念であり、背負ったあなた自身なんだ」
 アリアの言葉にフレイスは、はにかむように顔を伏せくつくつと喉を鳴らす。

 一行の眼前に居るのは、太古の――最早ただの亡霊に過ぎなかった。
「これまでか。良き夢であったわ」
 亡霊のかざした指先から、きらきらと光が零れ始めていた。
「フレイス姫。黄昏を越えて、私達は明日を生きていきます」
 シフォリィが振り返る。
「無理かもしれないけどきっとできます。私たちは、部族どころか世界も超えて手を繋げるのだから」
 ――ええ、そうです。
 そんな耳元で、誰かが言った。まるで自分自身の声音のような。

「ああ。まぁ、これでもアンタに敬意を示してるんだぜ?
 いつの時代も死を敬い、恐れ、乗り越えんとする。
 それが人ってもんで……死の女神への最大の敬意だと思うのさ、俺は」
「フリック 死 守ル
 ソレハ フレイスネフィラ達ノモ
 約束スル
 君 戦士隊 寄リ添ッテクレタ者達モ フリック 弔ウ
 死 守ル」
 プラックとフリークライの応えに、亡霊はどこか満足げに頷く。

「本当に莫迦な奴だよ……だから、お前も一緒に生こう」
「お勤め御苦労、いずれ『私』もそちらに行こう」
 クロバは想いを背負い、百合子はその魂を見送る。
 亡霊を構成していた全てが、光となって黄昏の空へ溶けて逝った。

 ――角笛のノルンよ。現世に、そなたが居てくれて良……

 リウィルディアが顔を上げると、大きな赤い太陽が、ゆっくりと山の向こうへ沈んでいった。

成否

成功

MVP

アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶

状態異常

ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚
クロバ・フユツキ(p3p000145)[重傷]
真実穿つ銀弾
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)[重傷]
白銀の戦乙女
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)[重傷]
優しき咆哮
郷田 貴道(p3p000401)[重傷]
喰鋭の拳
グドルフ・ボイデル(p3p000694)[重傷]
山賊
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)[重傷]
暴風
咲花・百合子(p3p001385)[重傷]
白百合清楚殺戮拳
アルテミア・フィルティス(p3p001981)[重傷]
銀焔の乙女
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)[重傷]
業壊掌
ラクリマ・イース(p3p004247)[重傷]
守る者
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)[重傷]
奈落の虹
リウィルディア=エスカ=ノルン(p3p006761)[重傷]
叡智の娘
プラック・クラケーン(p3p006804)[重傷]
昔日の青年
ソア(p3p007025)[重傷]
猛獣
アリア・テリア(p3p007129)[重傷]
いにしえと今の紡ぎ手
フレイ・イング・ラーセン(p3p007598)[重傷]
Immortalizer
ロロン・ラプス(p3p007992)[重傷]
頂点捕食者
マヤ ハグロ(p3p008008)[死亡]
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)[重傷]
異世界転移魔王
長谷部 朋子(p3p008321)[重傷]
蛮族令嬢
源 頼々(p3p008328)[重傷]
虚刃流開祖
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)[重傷]
孤独の雨
フリークライ(p3p008595)[重傷]
水月花の墓守
玄緯・玄丁(p3p008717)[重傷]
蔵人
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)[重傷]
砂漠の蛇

あとがき

 依頼お疲れ様でした。

 今回は様々な理由から、多くの分岐点が混在するシナリオになったかと思います。
 違っていれば、この結果を導くことが出来ないケースも多かったでしょう。
 成功を勝ち得ることが出来たのは、ひとえに皆さんの成果だと思います。
 MVPはその最初のターニングポイントへ。面白い使い方だったと思います。
 他、ドロップ品が一つと、いくつか称号が出ています。
 また幻想の賢者達により、改めて銀花結界の解析が始まりました。

 それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。

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