シナリオ詳細
<青海のバッカニア>飛び込め! お仕置き船ツアー
オープニング
●だって君たちは、お祭りごとが大好きだろう?
海洋領海にて。
一隻の物々しい船が、波間に揺られている。船頭に立つ男は鞘に入ったままのサーベルを杖のように突き、報告を待っている。
「船長!」
勤勉さをうかがわせる軍靴の音。小走りに男の傍までくると、カツ・カツと2度鳴って止まった。
「敵の戦力確認しました! 我々でも対応可能かと思われます!」
「そうか」
「……あの、本当に依頼されるんですか?」
戸惑ったような声が、報告する男から上がる。
「ローレットの力を借りずとも、偵察にも気付かないのろま船です。我々だけでも十分……」
「ソラエ」
「っ」
名を呼ばれ、男――ソラエは喉を詰まらせた。たった一言が重い。喋るな、と言われているようで、肉体が反射的に喉に喋るなと命令してしまう。
「私は、君たちを信用していない訳ではない。確かに偵察にすら気付かないような船なら、何なら君一人でも十分だろう」
「……ではなぜ……」
「ツアーだよ。海洋はこれからローレットの力を借りていく事になるだろう。そう、“こちらの”意味でもね。だから今のうちに仲良くなっておくのさ、其れが双方にとって良い事だとは思わないか?」
トン・トン。
サーベルの鞘が船の床を打つ。
「……彼らが協力するでしょうか?」
「するとも。ツアーは面白いからね。ローレットの皆さんは喜んで参加してくれるさ。それに荷物の運び手は何人いても困らない。さあ、港へ帰るぞ。各船の偵察はし続けろよ」
船長はにやりと――海賊らしい笑みを見せると、海に背を向けた。
●其の半券は、取ったら返せない
「という訳で、依頼が来ているよ。強奪だって」
グレモリー・グレモリー(p3n000074)が木片をずらりと並べ、いつものぼんやりとした顔で言う。
「あ、間違えた。領海侵犯をしている船がね、いるんだって。海洋の領海内に。侵犯はね、良くないよね。だから襲って強奪するんだって。あ、間違えた。お仕置きといえばいいかな」
其処まで間違えるとわざととしか思えないが、この男、本気である。
「まあ領海だって言ってるのは海洋側であって、他の国が認めてるとは限らない。だから侵犯が起こる訳なんだけど……それはさておいて、複数の国の侵犯が認められたので、まとめてお仕置きして回る事にしたらしいんだ。幸い戦力はほぼないに等しいと思われるので、君たちは適当に敵を気絶させたり倒したりして、荷物を船に運び込めばいい。其れでお仕事は完了。ただ、相手の国からはよく思われないと思う。当然だけどね、気を付けてね」
「そうそう、この木片はそのお仕置き船に乗るためのチケット」
行く人は持って行ってね、じゃないと乗れないからね。
グレモリーはあくまでいつも通り。そして一つ木片を取ると、己の懐に入れた。
「動いている人をスケッチするのは何度やっても難しいからね。なかなかない機会だから、僕も同行させて貰うね。あ、大丈夫。いざとなったら逃げるから」
- <青海のバッカニア>飛び込め! お仕置き船ツアー完了
- GM名奇古譚
- 種別イベント
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2019年12月07日 22時30分
- 参加人数71/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 71 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(71人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●出航
「強奪とは愉快な事をしてやがりますねー」
そうのんびりと言うイヴは、海から魚を強奪――もとい、釣りをしていた。
彼女の視線の先には大きな船。一見普通の船に見えるが、これからイレギュラーズが乗り込んで“お仕置き”に行く船だ。
「はー、気は乗らないけど、これも海洋の一事業らしいしね……」
「私も悪名は嫌ですが、海洋の役には立ちたいんですよね。複雑です」
目に見えて面倒そうなチェルシーとしっかりと覆面をしたウィズィは荷物運びに専念する、と既に他の面々に伝えてある。
「みんなー、頑張ってきてねー。怪我したらちゃんと見せるんだよー」
治療係の火輪、そしてクリスティアンが船に手を振る。錨が上がり、綱が外される。
こうして、平和な波をかき分けて、お仕置きツアーは始まったのである。
●食料をよこせ!
「ギャーウ!」
「うわー!? なんだ!?」
アルペストゥスが勢いよく飛びかかった船は、目に見えて動揺した。食べられそうなものを探してふんふん鼻を鳴らす彼に船員は一斉に怯える。
そこにヘイゼルが赤い糸で己と相手を怒りの糸で結び、空中に歩く己を蜃気楼で投影した。
「だめですよー、食べたら危ないですからねー」
「ギャウ……」
「竜ならともかくこのアマ……ぎゃー!?」
どぼーん。犠牲者が海に消える。空中に投影したヘイゼルを追いかけて宙に踏み出したのが運の尽き。
「ごぼぼぼ!?」
「よっ、こんにちは」
そんな彼に気軽にあいさつした黒羽は、慎重に広げていた闘気の鎖を解放し、一気に船を縛り付ける。ついでに落ちた船員も助けておくとしようか。
「………取り敢えず、撃つ」
「おりゃあーー! 穿孔滅牙!! 狼牙月光斬! 穿孔滅牙! 狼牙月光斬!」
船を縛られて、食料船の船員たちは最早逃げ惑うしかない。黙々とゴム弾で彼らを無力化するラダと、威勢よくルーチンワークで撃破していくシエラ。
「前衛で殴り合うのは初めてだな……巧く出来るかな」
と言いながら、相手の急所を連打してHPを削っていく芒さん。彼女の背を守る一晃、逃げ惑う船員をすらりと斬る。
「これ、やっぱりひやっこ斬りだって思うし、最近気になる人にこんなの知られたらどう思われるかっておもうとパなく不安だけど、やる」
結局やるセティアである。頑張れ! 頑張る姿に気になる人が惹かれるかも知れないぞ!
「ただ奪うよりも、物資を有効に活用したいものですね。食料は其の点、なんにでも使える。よい資材です」
へっぴり腰で向かってきた船員を、其の容姿からは想像もつかぬ脚力で一撃に伏す寛治。あとで船長に交渉して、高価なものは保存しておきたい。彼の頭の中では、すでにプランは始まっているのだ。
「食料! つまみ食いし放題! 其の為に……どけー!」
プランを絶えず脳内で練っている寛治がいれば、大喝で敵を吹き飛ばしながら美少女パワーという名の勘で食糧庫へ真っ直ぐ進軍する秋奈もいる。鍵があっても美少女パワーで夜鎖死苦! ガチャン! 開いた! 勝利! でーあーふたーでー、しーんぐあーろーりのー!
「初仕事だし可哀想だから海にすっ飛ばす程度で済ませてあげましょう! 初仕事で情けまでかける! うーん、私ってばやっぱスゴーイ!」
逃げようとした船員も、ベニーの手にかかればあら不思議、組み技で自由を奪われ、海へ投げ出される砲弾に早変わりである。
「はい、あなたたちもすぐに後を追う事になりますからねー、覚悟して下さいねー」
きりも手際よく船員をぽいぽいと衝術で海へ吹っ飛ばしていく。降伏したものには荷物を運ぶよう指示。
「殺しはしません。逃げるならよし、向かってくるなら受けて立ちましょう」
「私椋船体験とは、なかなかにテンションが上がるな? 海へ飛び込んだ方が身のためだ……さもなくば、まとめてお仕置きだ!」
雪之丞の大喝が船員を海へと突き飛ばし――おかげで海は大混雑である――、汰磨羈が練り上げた霊気が重ねて船員たちを吹き飛ばす。
絵里は未だかつてない“お友達”の数に目をキラキラさせる。
「お宝にお友達。どちらも手に入るなんて素敵な依頼ですねえ。大丈夫、悪い人も良い人も普通の人も、誰でも死ねばみーんな私たちのお友達になれますからねえ」
「俺らが何をしたっていうんだあああ!」
「あー、海洋の領域に入ったのが運の尽きってな」
荷物をひょいひょいと回収していくカイトに、あれは風読禽のカイトでは、という人々の声がひそひそと入って来る。名声が高いというのも時には困りもの。別の個所では、あれは“夢幻の奇術師”幻ではないかとの声がする。
「船長との一騎打ちを希望します。殺しは致しません。――全員死ぬよりはいいでしょう?」
「……良いだろう。誰の船に乗ったのか教えてやらァな、お嬢ちゃん」
――結果は推して知るべし。幻惑を得意とする幻の手腕に、直情な船長がかなうはずもなかったのである。
「船長ーーーーッ!」
「すまねえ……すまねえ……いい夢を見せて貰った、ぜ……ぐふっ」
荷物は次々と運び出されていく。チェックするスティアは、成程、と中身を見て頷く。
「小麦粉にバター、柑橘類……お魚はないのかな? 密漁は駄目だよー」
「俺たちは近くの島に運ぼうとしただけだ! 密漁なんてしてねえよお!」
「あれ? 何か荷物が足りないぞ……」
「ふふ、気付いてしまったか。となれば容赦は出来ぬ。我が魔王の食事は誰にも邪魔立てさせられぬからなあ」
哀れ、気付いてしまった船員はメーヴィンによって天国への階段を登っていった。
「うまい。この柑橘類、名はなんというのだろう」
「……ニル、余り食べ過ぎると回収分がなくなるぞ?」
「うむ」
1人ステルスで食糧庫へ忍び込み、つまみ食いを続けていたニル。まったくもう、とメーヴィンは溜息を吐く。其れを横目にみながら、ミンはそっと荷物を抱えて食糧庫を飛び出した。だって、見付かったら自分も天国への階段を登るかもしれないしね!
●武器をよこせ!
「幻想はなんだかんだ良いお客さんだけど……鉄帝は少々、ね」
バンダナで顔を隠したレイヴンが上空から強襲をかける。――起動せよ、起動せよ、湧き立て我が魔力。渦巻き立ちて空を駆けよ――!
「うわー!? 波だ! みんな、へりに掴まれー!
レイヴンが狙ったのは船の傍。魔砲の衝撃でたわんだ海面から、海水が一気に船の甲板を通り過ぎていく。敵襲だ! とざわめく船。
「アアン!? 海の奴らか!? 領海だかなんだか知らねえが……」
「宇宙警察忍者も海賊もメンツ商売! 鉄帝相手なら悪名が上がってもデキる奴扱いでしょう! という訳で喰らってください!」
「最後まで言わせて!?」
言わせてもらえなかった。能力を瞬間的に上げ、更に限界以上の力を叩き込まれれば鉄帝の運び屋などひとたまりもない。ルル家の銀河旋風殺によって不幸な切り込み隊長は船の床に沈んだ。
「皆さん、僕が回復します! 遠慮なくやってしまってください!」
姫百合が言う。敵を倒すための武器を積んだ船で癒し続けるという皮肉。
「領海については見解の相違があるみたいだけど、まあ……この国で侵犯なら、そういう風に相手するのは問題ないかな」
犯罪者という者は、えてして増えるからね。ナインはそういいながら、運び屋たちを投げ飛ばし、海へ落として無力化していく。
「名前からしてよく沈みそうね! あははっ! 苦しめ! 苦しめ苦しめ苦しめ、溺れて苦しめ!」
メリーは衝撃の青で乗員を海へ吹き飛ばすと、海へ向かって更に衝撃波を放つ。苦しめ。苦しめ。屈服しろ。
「俺はよぉ~、鉄帝ってどうも性に合わないのよな。なんつうの、価値観つうの?」
キドーのフォースオブウィルによって、刀やら武器やらを持った乗組員たちが吹き飛ばされる。最高だね国家事業。この調子で後の事も巧く収めてくれるとありがたい。
「おらおらァ! こっから先はあたしら海洋、ひいてはこのあたし――燕黒家の縄張りだよ! 土足で踏み込む点度胸は買うが、釣銭受け取ってもらわにゃあ沽券に関わるってね!」
姫喬が威勢よく号令の声を上げると、一般鮫人が海をぷーかぷーか泳いで取り囲む。ああ、あのヒレは間違いなく鮫ですね。ちょっぴり地獄の様相を見せる海へと、喧嘩殺法で容赦なく船員を吹き飛ばし落としていく姫喬。大丈夫、ちょっと齧るだけだって!
「お、鮫かあ。じゃあそうだな、精霊たちにも遊んでいて貰おう」
行人が精霊たちに語り掛ける。好きに遊んでおいで、船がひっくり返らない程度にね。
ざわり、と波が不穏に打ち付く。航海士の読めない風が吹き荒れる。風の精霊が、奥にタクサン荷物があるよ、と囁いた。オーケイ、と行人は頷き、そよ風のように人波を縫って向かう。
「……もしかしたら、其の積み荷が他国を攻める武器になるかもしれない」
そう思うと気が楽になる。懸念を振り払うためにも、アンナは武器を振るう。黒い薔薇が咲き誇るようにステップを踏み、運び屋の心をかき乱し、そうして舞うような足捌きの前に床とキスする羽目になる。恨みはないのだけれど、時期が悪かったと思って諦めて。
「この海路は海洋のもんだ。大人しく積み荷を寄越しな」
シラスよ、それは完全に海賊である。が、頭に血が上っている運び屋たちには其の矛盾点はさほどきにならない事のようだった。幻想以外なら――海洋が何処と揉めようが、シラスには関係のない事。照準、1、2、3。発射。……魔力弾は的確に敵の急所を捉え、其の意識を刈り取る。
「よーし! 気合入れるぞ! シャイネンお洒落予算のため!」
真は仮面で顔を隠して、挑発するように乗員を指で手招く。鉄帝の人間なら、腕試しは好きだろう。まんまと誘い込まれた相手の内側に、柳が揺れるように入り――咄嗟が聞かない箇所を掴めば、其処からはさほど力は要らない。すくいあげて落とす。投げとはそういうものだ。鮫人たちが乗員を歓迎し、がぶがぶ噛みついて遊んでいる。
「お、おたすけぇぇぇぇ! せめて陸! 闘技場で死なせてくれー!!」
「悪いな、海に出た時で貴様らは覚悟をしておくべきだった」
一晃が峰内で乗員の意識を奪い、海にポイする。鮫人たちが救助ついで、捕縛ついでに受け取るのを見届けると再び戦線へと躍り出た。
「避難するのは訓練された乗組員だが、立ち向かってくるのは良く訓練された乗組員だ! 全く、海賊家業は地獄だぜ!」
「にゃろう、ブッ殺してやる!」
親指をぷつりと刀に食い込ませる。赤い血の色は、いなづまを染め上げ――其れよりも速い一閃が、無謀な乗組員達を薙ぎ払った。紫電一閃、喰魎。アレンツァーが編み出した己なりの紫電一閃である。
「近くに私がいた不運を悔いると良いです。ついでに実験台になってもらいます」
飛びかかってきた乗員に、そっと触れるように手を伸ばす沙月。――衝撃は遅れてやってくる。まるで針で貫かれたかのような衝撃と、後方に吹き飛ばされる感覚、そして轟音、悲鳴。ああ、後ろのものにもこの衝撃が通じた、と思った時には、乗員の目の前は真っ暗になった。
「暴れて奪う。私、そういうお仕事、だぁいすきです。うふふ」
蹴りで体勢を崩す。殴って薙ぎ払う。イサベラの戦闘は実にシンプルで、暴力的だ。其の白い指からは考えられない腕力で、次々と乗員をちぎっては投げていく。
「若い子は元気でいいわねぇ……」
イサベラが“若い子”であるかは置いておくとして、シャッファは苦笑しながら乗員の意識を最短で刈り取り、拘束する。海に落とされたものは大丈夫か、と見下ろしたが、鮫人たちが遊んで――もとい、溺れないようにしつつ拘束しているので大丈夫だろう。
「人の家に勝手に入ったらそりゃぁ駄目だよね。ちょっとお仕置きされるのも仕方ないんじゃないかな」
うんうん、とンクルスは頷き、それはそれとして、と構えた。
「今日はちょっと私の趣味も兼ねてるんだよ。君たち、たぶん強いんだろう? いくつか試してみたい技があるんだ、付き合ってくれるかな?」
「ボクもやらなきゃいけないので、……や、やらなきゃいけないんです……っ!」
とはいうものの、ヴィクトールの声は弱気だ。こうなったら、と荷物に火をかけようとした乗員を何人か戦闘不能まで追い込んではいるが、まだまだやらなきゃいけない、と己に発破をかけている。
「見た事がない武器が沢山……胸が踊りますね」
華燐が荷物を見分し、持ち上げながら言う。これはどういう風に使われるのだろう。考えるだけでどきどきする。ちょっと報酬に交じったり、しないかな。
●信仰…はぶんどれない
「領海侵犯は良くないよね。りゃくだ……じゃなくて、通行料の徴収を……えっと、天義? この前助けた国? う、うん……」
せめても、と覆面を付けて身軽に飛び移るアクセル。閃光をどかーん! と一発お見舞い。
「……天義の人に“神気閃光”ってなんか…なんか、えぐい……」
「なんだか信仰心は厚そうってイメージを出してるけど、全く恩恵にあずかれなさそうな船だね? これは神様だか知らないけど、ちっぽけな船なんて無視するよね。こんな船を造る国は、余程信仰心が口癖の二枚舌な国だと見えるよ」
「なんだとー!?」
「ほら来た! という訳であとは任せたよ、みんな」
ふふっ、と先程までの毒舌はどこへやら。火燐は美少女の微笑みを見せるのだった。
「待てい待てーい!」
――怒り狂っていた天義の人々はふと落ちた影に空を見上げた。するとなんと! 神様ー! 空から女の子が! デイジーである。
「妾は天からの使いじゃ。お主たちは何故、この海を侵そうとするのじゃ?」
「侵す? いいえ、僕たちは御使いに捧げるためのものを運搬しているのです」
「此処は誰のものでもなく、等しく神の海です」
「なるほどなるほど。判ったのじゃ。妾は許そう。――しかし、こいつが許すかの!」
どかーん! 大壺蛸天によって罪なき羊たちは海へと吹き飛ばされた。
「積み荷が薬だとすれば、寧ろ天義が必要としているんだよな……」
「保護者さんはまた難しい事考えてるっきゅ。どうせあったとしても一部の権力者にしか使われないっきゅ~、お仕置きを楽しめばいいと思うっきゅ」
「いえ、この船に薬は置いてません」
という訳で乗員を容赦なくボコボコにするレーゲンとウェール。不殺スキルは幾ら殴っても死なないから良いよな!!
「名誉で傷付けど、本当の戦とならぬように――退きなさい。此処は命を落とすべき場所ではありません」
紗夜は戦場へと乗り込み、戦を開始する。戦場を駆け巡り敵を撹乱し、舞うように敵の肌に赤い花を咲かせてゆく。組み換え武器を薙刀の形に組み換え、まさに演舞を見せるがごとく戦場に舞う。
「貴様等に素敵な報せだ。我等『物語』の内の『神』が現れたぞ。愛すべき存在への信仰を破棄し、我等『物語』の真実を崇拝し給え。冒涜するのだ。我々は最初から最後まで否定されるのだよ。Nyahahahahaha!」
「な、何を言われても信仰だけは捨てない!神を騙るお前には天罰が下るぞ!」
ほう、とオラボナは興味深げに笑った。
「下るのなら其れもまた一興。いつ貴様らの愛した存在から“素敵な贈り物”が届くのか――楽しみにしているぞ」
おらぼなくんけーきを渡しながらそう言う姿は実に冒涜的であった。食べたら毒。
「景気よく船を染めるとしようかのう」
すぱり。まずは一閃。殺は何のためらいもなく、乗員を両断した。
「ひっ!? ひいいいい!」
「動くな。動いたらこいつを殺すのじゃ」
人質に取った一人にナイフを突き付け――るだけではなく、容赦なく突き刺して傷口を広げながら殺は動くなと脅す。
「動くなって言ったって、動かなくてもそいつは……」
「死ぬと気づいたか? ならばこいつは殺そう。そしてお前も死ね」
殺のように明確に殺意をもって動くものが居れば、殺意はなくとも致命傷を与えてしまう者もいる。
「暴力と盗みは俺のサガ! だけど恨むなよ……本当に神に呪い頼んだりとかやめてくれよな!」
全力で1人目を付けて殴る。出来れば死んでくれるなよ、と願いながら拳を振るい、そいつが動かなくなったのを見届ける。
「はあっ、はあっ……! こっちも命までは取りたくねえんだ! 諦めて寄越しな!」
「ひ、ひええ……! 少しだけなら宝石があります、それでどうか……!」
降伏の声を聞きながらトムは倒した相手の脈を測り、神に感謝した。虫の息だが、息はある。
「取り敢えず君たちから信仰を奪うことにしたよ! 愛あるTENGIのために!」
ぎゅーっと船員を抱きしめるムスティスラーフ。更に其の薄い衣服を裂き、肌と肌を合わせて人間の温みを分け与える。それから……以後省略。
「さあ、男同士の世界に目覚めちゃって良いんだよ! 女の人はね、腐って美味しい本を作ろうね!」
更にカタラァナが夢見る呼び声を謳えば、場は混乱に混乱を極める。中には同士討ちし始める者もあった。其れを断ち切るように、一晃が刀を一閃、同士討ちする2人の意識を同時に刈り取る。
「――信仰が厚いなら、俺という厄災からも身を守れるよなぁ!」
戦乱にいてもたってもいられなくなったジェイクは威勢よく飛び移り、船員に散弾をバラまきながら言う。残念ながら此処に髪の加護はなく、海洋であったので、船員は散弾の餌食になった。死んでない。
「感謝しろよ! おめえらが死なねえのは神の御慈悲ではなく俺の慈悲だって事にな!」
「ヒャッハー! 良く判りませんが悪い奴らにお仕置きですぞー!」
そりゃ良く判らないよね、宇宙人の着ぐるみ着てるんだもん。彼の名はベンジャミン。れっきとしたイレギュラーズなので安心してほしい。何処からともなく現れたロケットランチャーから一発撃ち放ち、ご挨殺(あいさつ)と来たもんだ。
武器商人はマーマデュークに乗り、ことほぎは小型船で、船上の混乱の中、海から船体に近付いた。
「大抵荷物は底の方にあるもんさ。大丈夫大丈夫、沈むような穴は開けないよ」
「同じこと考えるヤツもいるもんだな。換金できそうな宝石とかがあるんじゃないかと思ってるが」
静かに、船体に穴が開く。中に入ると信仰のシンボルや衣類がある。ほうらね、と商人は楽し気に笑った。一方ことほぎは高価そうな箱を見付けたが、鍵開けが出来なかったので箱ごと持って帰る事にした。
●発明品をよこせ!
「こら~! 此処はこちらの国の海域ですよ~! ストップストップ~!」
「はーい、こっちこっちー」
プラウラとプラックが自然な仕草で練達の船を己らの船に横付けさせる。
「ちょっと許可証見せて貰える? ふーん、練達。荷物を運んで? 見せて貰っても……ダメ? なんで? 発明品だから? あー、だめだめ、駄目だよ発明品はー。という訳で押収するから……みなさーん! オネシャス!」
こうして練達線お仕置きツアーは始まったのであった。
「みなさーん! 治癒は任せて、存分に戦ってくださーい!」
「いけ! ねねこ人形! そこで自爆です! ……いえ、冗談です。私たちが回復するので怪我してもいいですよ~!」
四音とねねこが声を張る。安心して戦えるよう支援する。其れもまた、戦いだ。ねねこは死体とか運んでないかなって期待してるけどそんなことはないです。
「はいギルティ……煽り運航はギルティ……(開幕逆ギレ)」
海は広いし大きいんだからさぁ、水平線の向こうの方通れば良いんだよねぇ。そうリリーは呟く。煽り運航は略奪OKの合図だから、と船底に穴を開けようとして、皆に止められる。何せほら、練達だからね。止められたリリーは暫くの間、海洋風って事でいいじゃん、とむくれていた。
「焼き討ちなのです! ……え? 焼いちゃだめなのです?」
こてん、と首を傾げるクーア。船を焼いたら大変な事になる、と船員からも味方からも説明される。何せほら、練達だからね。
「はい!じゃあ、荷物を運んだあとなら焼いてもいいのです?」
……船員も全員逃げてからならね。
「この広い海じゃ境界線なんて曖昧なモンなのに、領海侵犯くらいでそう目くじらを立てんでもいいと思うがねぇ」
ま、お上は“知らぬ顔”か。縁は煙管を加えたまま、よっこいしょと横付けした船の境界線を越える。のらりくらりと歩き、途中で立ちはだかった船員には腹か首の後ろに一発入れてやり、貨物庫を目指す。これくらいしときゃあ、サボっても文句は言われないだろ。
「やぁこんにちは、通りすがりのものだよ。という訳で蹴りトンファー!」
余りにも卑怯である。其れはヨゾラ。蹴りとトンファーで足を狙い、出来る限り殺さない程度に痛めつける。それから周囲を見渡して、貨物庫へと足を運ぶ。起動させないように慎重に。大丈夫、判ってるって。
「よーし、なんだか良く判らないけど、これも女王陛下のため! 大人しく略奪させなさい! あ、あと使用方法を後で教えてください!」
言いながらディープインサイト・名乗り口上・斥力発生で皆殺しも辞さない史之。怒りに駆られて寄っていったら斥力とかなかなかエグいコンボですね。史之は本気と書いてマジである。
「今日の俺は止められないぜ! 何せ女王陛下の為だからね!」
「ハン! ほんとに隙だらけだぜ!」
ギンコの掌底が船員の懐に撃ち込み、相手を吹き飛ばす!
「わりぃけどビジネスなんでな。存分に恨んでくれや! 何を乗せてるかはしらねーが、あとで全部吐いて貰うぜ!」
「無断侵入は駄目よぉ~」
ふわり、戦場に舞い降りたのはアーリア・スピリッツ……ではなく謎の魔女! 髪は魔女帽子で隠されて、口元はバンダナで隠されている。音もなく戦場に降り立つと、持っていたバスケットから紫色のカクテルを――ちゃぷん。船に落とした。広がるのは酒気と衝撃。敵だけを確実に狙い撃つ其の様は、まさに魔女が見せる魔法のよう。よろめいた船員を、好機と見た一晃が一閃に伏す。
「どうせ発明するなら、お酒の湧き出るジョッキとか作りなさぁい!」
「隠している荷物はありますか?」
「あ、ありません」
「ふむ、無罪」
ヤーモンは船員を次々と尋問にかけていく。其の横では次々と運び出されていく貨物。どうやら隠すようなヤバいブツはなさそうだ。
「ごく普通の練達船ですね……いや、ごく普通とは……?」
「はい、普通の爆弾とか乗せた練達船です」
「コラーッ!!!」
ヤーモンの組み技が極まった。
●帰港
「みんな! お疲れ様!」
クリスティアンが手を振っている。数々の荷物と多人数の捕虜を乗せた船は、無事海洋の港へ戻ってきた。
「彼らはどうなるんですか?」
寛治が船員――捕虜を見て問う。船長はサーベルの柄に手を乗せたまま、何もしやしないさ、と笑った。
「ちょっと拘留したらすぐに元の国へ戻れるよう手配する。こちらも今は大忙し、他の国とドンパチする余裕はないんでね。ただ、荷物は全部こちらで預からせてもらうが」
「成程……ではその時までに各所からの情報流出を抑えておく」
ラダが名乗り出る。驚いた、という顔をする船長。
「何のつもりだい、お嬢ちゃん」
「何のつもりもない、ただ、海洋の名誉に傷がつくのを防ぐだけだ。被害者から声があがる事もあるだろうが――こういう情報は、先んじて流れた方が勝ちだろう」
「ほほう。やるね。お嬢ちゃん、職を失ったらウチに来ると良い。そこの兄さんもな」
「いえ、私はただのファンドマネージャーですので。……ああ、これを」
ぺらり、と一枚の紙を船長に渡す寛治。これは? と片眉を上げ、視線で船長が問う。
「積み荷の持ち主をメモしておきました。抜けもあるでしょうが……香辛料や宝石類などはそちらの方に掛け合えば“換金”しやすいかと思いまして」
「……なァるほどなァ。がっはっはっはっは! これはこれは、ローレットというモンは本当に恐ろしいなあ!」
海の男らしい快活な船長の笑い声が、港にこだました。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした!
お仕置きツアー、いかがだったでしょうか。
皆さんには海洋の名声と、それぞれの船に応じた国の悪名(ちょっぴり)が付きます。
ラダさんの技能などを使った対外交渉により、悪名は最低の「1」になります。ラダさんにはMVPを差し上げます、おめでとうございます。
海洋はこれらをもってますます発展するでしょう。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
こんにちは、奇古譚です。
今回はまさかの私椋船イベントシナリオに皆様をご案内します。
難易度EASYですがイベントシナリオです、ご注意ください。
※※※ 悪名を得る危険性があります! ※※※
●目標
敵を倒し、荷物を奪い取……回収せよ!
●立地
海洋の領海内をぐるりと一周します。
お好きなエネミーを選んで侵犯者を一掃しましょう。
彼らの荷物を船に運び入れるまでがお仕事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●エネミー
1.なんだか食料を積んでそうな船(幻想)x1
2.なんだか武器を積んでそうな船(鉄帝)x1
3.なんだか信仰の厚そうな船(天義)x1
4.なんだか分からない発明品を積んでそうな船(練達)x1
どれか1つエネミーを選んで、船員を蹴散らし荷物を運びましょう。
みんな雑魚だ、問題ない。
技の試し打ちとかコンボのお試しとかしてしまって宜しいんですよ。
ただし悪名が付きます。
●NPC
グレモリーがアクションスケッチのため同行しています。
海洋関連NPCは依頼内容の関係から 絶対に 出て来ません。
●注意事項
迷子・描写漏れ防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。
やりたいことを一つに絞って頂いた方が描写量は多くなります。
(特に今回は、エネミーを複数選ぶと複数の国の悪名を得る可能性があります)
●
イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守って楽しみましょう。
では、いってらっしゃい。
●重要な備考
<青海のバッカニア>ではイレギュラーズ個人毎に特別な『海洋王国事業貢献値』をカウントします。
この貢献値は参加関連シナリオの結果、キャラクターの活躍等により変動し、高い数字を持つキャラクターは外洋進出時に役割を受ける場合がある、優先シナリオが設定される可能性がある等、特別な結果を受ける可能性があります。
『海洋王国事業貢献値』の状況は特設ページで公開されます。
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