シナリオ詳細
君にぴったりな『世界観』があった気がする。
オープニング
●その日、『男子高校生』月原・亮(p3n000006)は異世界転生に興味を持った。
――もし亮君の本気が凄いなら、それは私に逢いたくてわざと捕まってるって事かしらね。
エトセトラ、エトセトラ。
どこかで読んだ気がするそんな文章を脳内に反芻させながら月原・亮、17歳は冷静に電波が通じていないスマートフォンを学生カバンに仕舞い込んだ。
「よーーーく思えば、異世界転生? 異世界に来てるわけで。
そう言うのってトラックにぶつかったりだとか、運悪く死んだらとかそういうのとかだろ?」
「……転生はしてないっすね」
キャンディをぽろりと溢しかけながら『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)はそう呟いた。
「やっぱりさ、リヴィなんかは混沌生まれ混沌育ちで混沌世界に違和感ないだろ?
俺なんてさ、やっぱ大有りで。慣れたろって言われてもふとした時に吃驚するんだよ」
街角とかふらっと行けば『亮の世界ではイレギュラー』が連発されている。
「それは、元の世界に戻りたいとかそういうのっすか?」
「んやぁ……そう? んん、そうなのかな……」
練達の人たちみたいっすねぇ、と合間に呟いたリヴィエール。
その一言が今回の引き金となったのだった――
「こほん」
咳払い一つ、特異運命座標たちを集めた亮が向かった先は練達。
「聞いてくれたまえ、諸君! 俺の誕生日です」
解散。
「あ、ちが……まあ、誕生日って事でローレットに甘えに甘え倒してって事なんだけど、そうじゃなくって。練達、寄ってかない?」
そんな、気軽にカフェに寄る勢いで国を跨ぐのかと特異運命座標諸君も驚いたことだろう。
「練達でさ、VRとかなんとかが流行ってるらしくって。
前に体験しただろ? そういうやつ! それで、希望の世界を見せてくれるって言うから」
亮は瞳を煌めかせた。成程、それに乗じて元の世界に……
「勇者になろう!」
――そういう訳では、なかった。
- 君にぴったりな『世界観』があった気がする。完了
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年12月17日 22時20分
- 参加人数58/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 58 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(58人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
チチチチチ――――
鳥が鳴いている。勇者、月原・亮は目を覚まして叫んだ。
「なんじゃこりゃ――――!! ここはっ、異世界か――!!?」
尚、これが遣りたかっただけだとも彼は言っている。召喚されたとき、テンション的にちょっとやり損ねたから。
「うるせェぞ! クラス変更されてェか!!」
どキツい言葉が降ってきた。俺が、そう俺こそが『ざんげ』なのだと幻想で名をとどろかせているハロルドはきっと、この時ばかりは「あ、『俺自身がざんげとなることだ』さんがいる!」とその名声により呼ばれた事だろう。
「せんぱ――ッ、ちげェ! なんだその顔、なんだその身長、なんだそのガタイ!」
空中神殿にいるざんげを思わせる衣服だが、ハロルドそのものだ。
彼は知っている。召喚前の亮と仲良くしていた女生徒(先輩)はざんげにそっくりなのだ。血まみれで頭をぼこすか殴り続けるシスター。
怖いから、そっとしておこう……。
そっと――
「もしもし、大丈夫かな?」
「え、あ、すみませッ」
顔を上げた亮の前でユーリエが首を傾げている。諸君は攻略本を所有しているだろうか彼女は『道具屋ユーリエ』。
何? 攻略本もってない? トリセツ最近ついてないから見る機会ないもんね。
HPに乗ってるから紹介しておきましょう。
はじまりの町で道具屋を営む17歳の女店主。
冒険に必要な物から日用品まで各種取り揃えており冒険者だけでなく町の人からの評判も高い。
アイテムの鑑定も行ってくれる。初心者価格でアイテム販売をしている為ポーション等が格安。
仲間として勧誘すると……?
「よければ仲間として」
「え? ナンパは今お断りですけど……」
好感度が足りないようだが、好感度(うりあげ)さえ高めておけば、補助役としてお役立ちなのだ!
「オイオイオイ、見るからに未熟モンがなぁに無謀しようとしてんだぁ? あぁん?」
エンカウント! ナンパしたからか、街のチンピラが絡んできた!
亮の表情が蒼褪める。ヨシトはオラオラと絡んでくるがその手には薬草が握られている。
「無謀は嫌いじゃねぇぜ? カカカッ、死ぬんじゃねぇぞボウズ!」
「あ、あざっす」
けど、ちょっと怖かったので後ろから殴ったらポーションとお金落としてくれた。良い奴だった気がする。
「た、助けてくれ――――!」
叫ぶケドウィン。亮と共に冒険の旅に出るシャルレィスは唖然とした。
田んぼだ。
「っ?」
クールでかっこいい系の親友剣士は田んぼを凝視していた。
「た、田んぼがやばいんだ」
「田植え? 田植えだね!? ま、任せて。合わせるよ亮! トラクターの操縦方法? わかるよ、クールだから!」
クールなシャルレィスさんと共にケドウィンを救え!
「あ、なんか看板がある」
つんつん。看板――リュグナーだ――をセレクトしてみた。
「ここは始まりの村だ」
確かに。
「ここはトナリの町だ」
いや、今動いてない。
「オトクな掲示板だ!」
まじか……。
「ようこそ、魔王城」
嘘をつけ!
動いてないけど、掲示板は大事だ。なぜって掲示板と案内表示がpopしなければRPGって進むに進めない。
「ここは酒場です」
リュグナーが言うからには酒場なのだろう。
「やあ、勇者。オレはこの世界を一人で旅する孤独な冒険者。伝説の『ふわもこ鳥』を探しているのさ」
ネージュは手掛かりがないと肩を竦める。亮とシャルレィスはその様子をぼんやりと眺めていた。
「……ん!? あの白くてふわふわの羽毛!まさか「ふわもこ鳥」か!?
よく見てみると、ただの【酒場に入り浸る青年】だった。
そりゃそうか。それにしても……「もふもふ鳥」ではないが、見事なもふもふヘアーだ。……触らせてはもらえないだろうか」
そんな彼の許に突如としてヒャッハーしたのがQ.U.U.A. ――きゅーあちゃんだ。
\亮さんハッピーバースデー!ヾ(≧▽≦)ノ バースデープレゼントはVRなんだね!
これで亮さんもVギュラーズ(バーチャルイレギュラーズ)! VRでいっしょにあそぼう!(>ヮ<)/
皮ジャンの制服一式にモヒカンウィッグで突如として現れるきゅーあちゃん。もふもふヘアーでエキサイティングジャンプを決める。
火炎放射器で火を噴いてリア充どころかネージュさえも燃やしてしまう。
「俺も燃える!」
ヒャッハーなきゅーあちゃんは留まるところを知らない! だって、むほーちたい!
\むほうだから、あそび方はむげん大! たのしいでしょ!(´▽`)/
炎の気配に誘われてどばーんと飛び出すはクーア。
「放火! 爆破! 焼き放題なのです!!!」
やばいやつなのです! 放火犯のクーアまでもが酒場へと飛び込んだ。彼女は自爆生物だ。
用いる戦法は火だるま抱きつき戦法的な何か。炎に塗れるがいいと言わんばかりのクーアに抱えられたのは小さな花の妖精アニー。
「ちょ――!?」
罠(クーア)にかかって生命の危機のアニー。慌てて手助けに奔る亮はクーアをきゅーあちゃんのもとへとそっと押しやった。
「あっ、まって――爆発するのです!」
炎の気配に反応した様に顕現したは火神と呼ばれる炎の精霊『焔』。
(ボクの世界でお父様も何回かこういうことしてたって言ってたし、ボクもやってみたいなって!
あ、でも何だっけ? そういう機会があったら試練与えるんだっけ? 神様の威厳とか、様式美的な……)
悩まし気な焔はとりあえず指をぱちりと鳴らして消火。
「よく来たね勇者くん! 魔王を倒しに行くためにボクの火の力が必要なんだね。
でも、火の力は危険だからね、使いこなせるかどうか試させてもらうよ」
炎からようやく解放されて安心しているアニーは亮の手元でぜいぜいと息をしてその様子を眺めている。
「試練の内容は、えっと、そうだ! 超激辛料理のフルコースを完食してもらうよ!
この辛さを乗り越えられればきっと火の力も使いこなせるはず!」
その試練に亮は「まじかーー」と叫んだ。大丈夫HPの回復は、きっと……きっとできる……はず……。
「べ、べつに助けなんて求めてなかったし! そ、そんなに私が必要というのなら……仲間になってあげてもいいわよ」
助けられたアニーは激辛フルコースに死にかけている亮への癒しを送りながら頬をぷう、と膨らませる。
「もぅ、世話が焼けるんだから!」
アニーが仲間になった!
――閑話休題。
気づけば銀の儀礼服を来て宮殿へと佇んでいた史之。
(……ああ、そうだ……お菓子を作らなくちゃ……)
三時のおやつは毒殺防止のために作るのだと史之は手作りお菓子をテラスで待つ女王陛下の許へと運ぶ。
「イザベラ様、今日のおやつはブリオッシュです。紅茶はバニラで香り付けしたものです。甘い香りをお楽しみください」
白磁の器へたっぷりと注ぐのはアールグレイ。茶葉は「お勧めでよいぞ」と今日を楽しみにしていた女王陛下への贈り物だ。
綻ぶイザベラの横顔に――お美しい。ああ幸せだなーこんな時間がずっと続けばいいのになー。いいや、ここは海洋の平和は俺が守るくらいの気概でいよう。女王陛下万歳!
※VRです……。
「くっ……って言って!」
「え……」
「くっ、殺してって、いって! くっころして!」
雑魚NPCに強請られている。シフォリィは何処でどう間違えたのかと遠い目をしている。
重要アイテムを与えて勇者を助ける貴族出身のものすごく強い騎士設定は何処に行ったのだろう。ご飯は1日三食バランスよく。おやつが付いて手枷は30分まで。
「好待遇……!」
辛い――!
「辛そうだね!?」
ばばーんと登場。魔法少女マジカルセララちゃん。その後ろでキメッポーズの光の使者マリーホワイト。
可愛く、女の子だって暴れたい。カッコ良くかわいいキメポーズには主題歌まで流れだす。
「よーしマリー、合体技行くよ!」
黒と白。その雷はセララとマリーの許へと落ちてゆく。
「セララブラックサンダー!」
「マリーホワイトサンダー!」
そして、受けろ――!
『マジカルマーブルスクリュー!』
助けられた姫騎士。くっころしなくてもいいんだね……おめでとう、シフォリィちゃん。
「やったね。ボクとマリーが力を合わせれば無敵だよ!」
「セララがいればきっとだいじょうぶ」
終わった後、ちょっとつらい気持ちになるけど……。
●
――魔王親衛隊隊長リゲール=アンコクナイト! ここに参上!
勇者が来ないなら道具屋で購入したエプロンを付けて自軍の飯でも作ろうとリゲルはポテトに料理を教わりながらカレー作り。
魔王は激辛が苦手そうだが、ポテトが教えるレシピの中からリゲルが選んだのは激辛。
「魔王、激辛苦手だそうだぞ」
「俺が責任もって完食を――ヒィハーー!」
大騒ぎの彼らの許へ顔を出したは亮。ここに魔王親衛隊がいると聞いたと神妙な顔で言う勇者へとサラダをもぐもぐとしていたポテトが首傾ぐ。
「ん、リゲール。客だぞ」
「ああ……」
キリッと剣を構えたリゲール=アンコクナイト。ポテトはつんつんと彼をつついた。
「エプロンのまま対応するのは良くないと思うぞ? あぁ、客人にもてなしもせずに済まない
今日のご飯はカレーだが、客人達も食べるか?」
「え? 良いのか?」
カレーに存在感が負けたリゲール=アンコクナイト!
「ま、魔て。俺の流星剣、受けてみないか?」
「そんな事より今は食事だぞ。リゲール。客人もカレーが食べたいそうだ」
ポテトに言い負かされて彼は何となく肩を竦めて、頂き―――辛い!
――VR世界でもちくわちゃんはちくわちゃん! 見た目は今のまんまだよ☆
ちくわちゃんにとっての理想の世界は『ちくわちゃんがすっごく有名になっている世界』だ。
僧侶と言う配役で現れたちくわちゃんだが望んでいるのは僧侶ではない。新興宗教を立てる人を僧侶とは言わない。
ちくわの穴は世界を見通す真理の力……。
さぁ、皆もちくわちゃん像の中心から真理を覗き込むのです……そしてロバと和解するのです……。
「ようこそ! クリスティアンの国へ!」
門番たるゴリョウは笑みを浮かべて勇者一行を迎え入れる。
この国にはどういう目的で? と笑った門番に「魔王を倒す途中なんだ」と勇者一行は告げた。
無事に親衛隊隊長リゲールを激辛カレーでやっつけたという噂は各国に轟いている。
「いざとなったら助けてやるからな」
「衛兵さんそんな……?」
肩をぽんぽん、と叩いたゴリョウ。ゲームの衛兵ってなかなか強いんだぜ、と彼の口元にはゆったりと笑みが浮かんでいる。
「しかし、良かったよ。双子の勇者なんてこの国のワインというワインを梯子してどこかに行っちまったしな。
ちゃんとした勇者が来てくれてこれで王子も安心だ。王子の所にいくだろう? それはここから真直ぐだ」
ゴリョウの指示にぺこり、と頭を下げた勇者一行。
「あと、ロバには気をつけろよ。いやマジで」
――なんで……?
「やあ、勇者・亮よ! 僕の住まう国によく来たね!
この国は平和で豊かな国だ、この国にいる間は安心して過ごすといい……」
「すみません、王子。安心できない宗教が流行ってますが」
教祖・ちくわちゃんおそるべし。クリスティアンの国に蔓延るちくわ宗教。何のことだかとクリスティアンは笑みを浮かべている。
「時に……僕を仲間に入れてみないかい? 何て言っても僕は王子だしね、連れて行って損はないと思うよ!
そしてこの輝かんばかりのハンサムフェイス!! このハンサムフェイスを毎日見れる! そう! いつでも何時間でも!」
「いや、いいです」
「えっ……え、遠慮するって? いやいや、そんな……」
「王子はロバと和解しててください」
ゆっくりと後退していく亮。クリスティアンの叫びが王宮に木霊しているが――仕方ないのだ。ロバと和解するのです……。
クリスティアンの国の端にある森には死神や賢者が過ごしているのだそうだ。
カンテラを手にした真は御伽噺に語られる。
親無し子に寿命を司る命のカンテラを貸し与えた死神は世界を滅ぼさんと企む魔王を育てて仕舞った。
フードの外套を身に纏った真は狩り集めた魔物の命魂を勇者一行へと手渡した。
「――魔王を倒してもらいたい」
「俺が……?」
ごく、と息を飲む亮。勇者って呼ばれてたけど、今までで一番話が盛り上がってる気さえするシリアスムーブメント。
噂話で聞いた旅人の存在に亮は大丈夫であろうかとそっと問い掛けた。
「その力があれば大丈夫だ。どうか、どうか気を付けて進むが良い――」
カンテラを求める旅人。彼が語った死神の御伽噺を聴きながら、死神が育てた魔王の存在を探す亮の前には長閑な緑が広がっている。
「お誕生日ということだし、亮くんが来たら……凄い力を持つバースデーカードを授けようかなあ?
他に勇者さんがたくさん来ても大丈夫、色々なものを取り揃えてあるからねえ」
それにしてもぶいあーるって、凄いねぇと瞳を輝かせた津々流。賢者は隠し要素であるからか、レアリティは高いアイテムがプレゼントされている。
バースディカードは……戦いに役に立つのだろうか?
「それではバースディカードがどう役に立つかを確認してみましょうぞ」
ひょこりと現れたメタ空間でしか生きられない系NPC炎。
津々流は「それじゃあこのアイテムも使ってねとバースディカードの他に魔法の『木人』を用意した。
「ダメージの違いを見てみましょう」
突然現れた炎は「こんなこともあろうかと」と言わんばかりにダメージ測定機械をささっと設置する。
バースディカードで付与される効果:毒
「毒が付くんだね……」
津々流もそれは知らない。
「状態異常の回復にはアイテムを使いましょう」
♪――
亮は炎より『毒消し』を手に入れた。
一行は進む。凍える様なフィールドに変化したその場所に足を踏み入れれば霊峰アイスフィールドに佇む精霊を統べる主『氷彗』の姿が現れる。
「さ、寒い……」
震えるアニー。顔を上げた亮はよっしゃ、と叫ぶ。
「魔王を打ち倒すチカラを得たくば 勇者よ、そのチカラを私に示してみなさい!」
氷彗の許へと飛び込んだはラナティア。ならず者を思わせる風体のいかつさだが、勇者一行にのされて改心した彼は今は良い仲間だ。
その力、護りたいもののために使ってくれと約束した亮とラナティア。
ならば、今こそ使う時だ。
「ここは俺に任せて先に行け!」
「そんなッ――!」
仲間を犠牲にしてまでこの氷の力を手に入れなくてはならないのかと亮は声を震わせる。
「ラ、ラナティア――――!」
吹雪の中、凍える腕を振るった彼(彼女)は満足そうな笑みを浮かべていた。
このセリフ、何時か言ってみたかったんだ……。
無事に手に入れた氷の力。それを手に、失われた仲間の事を思いながら亮は対に、辿り着いた。
「ここは魔王の城だ」
本当だろうか。リュグナーが言うからきっとそうなのだと思おう。
目の前にこれでもかとばかりに置かれていた宝箱。そっと開けば――喰らえ黒炎の一撃――バハムートファイア!
「あ――――!」
――残念、勇者の戦いはここでおわ……。
別の宇宙より顕現した魔龍こと鈴音によって思わず終わりかけたが、此処で勇者の冒険が終わってしまってはいけない。
「ボクと君のどちらが真の勇者にふさわしいのか勝負だ!」
武器を構えるライバル勇者・公。少年の外見をした公は亮と同時に召喚されてから、『真の勇者決定戦』を行っているのだ。
アニーやシャルレィスにとってはお馴染みな彼。今だ、と協力するように戦う公は「ふふん♪」と鼻鳴らし自身の余裕を誇示するが――
「危ないっ!」
亮に庇われ、救われる事となった公。同時に、倒された鈴音が消えていく……。
「ラスボスより強いボスのそんざいはRPGのたのしみの一つだ! アタシをたおしても世界にはまだスッゴい裏ボスが……」
スッゴい裏ボスは沢山いる。
「ついに……ッ、亮、油断しないでね……!!?」
――勇者の前に立ちはだかる魔王その人……!
確かに彼は魔王だ。とりあえずややこしいのでこう表記しよう『魔王(p3p006718)』である。
「よくぞ参った」
「ッ――仕掛けるぞ、亮! まって……貴方まさか――亮のお父さん!?」
そう、何が起こってもしょうがない。VR空間での魔王(p3p006718)はお父さんだったのだ。
「「!?」」
驚愕の事実にあんぐりと口を開いた儘の亮と魔王(p3p006718)。
「うそっ……」
幼馴染の剣士たるシャルレィスは知っていた――過去、彼のお父さんがなんだかんだあって魔王になった事を。
「うそ、パパ……?」
「うそ……」
嘘だと言って―――!
夏あかね先生の次回作をお待ちくだ、「まだ終わってないですし、終わってしまったらVRせず遊びに行くしかないじゃないですか……」
フィーネと小夜、ジェックの楽しいVRははじまったばかりなのだ。
説明しよう――
「アタシのガスマスク、外れないんダケド……VR出来るノ? VRナイでの姿形? モチロン、ガスマスクさ!」
「大丈夫。練達だから」
そう言っていた操。練達ってすごいんですよ、こんな世界にもVR生み出せるんですから。
高難易度の塔でのんびりと待つジェック。彼女は聖剣を強化するレベル上げにぴったりな周回ボスなのだ。
「アタシを倒せたナラ、きっと奴モ……! エッまたキたの? お願いダカラもう帰ッテ……」
そんなセリフで勇者たち御用達の塔なのだ。
「ぶいあーる? ですからね。手始めにこの町の装備屋さんは私が乗っ取りました。店員さんです」
フィーネの許へと立ち寄った小夜は彼女の販売している商品でおしゃれの時間。
途中、普通に買い物に立ち寄った勇者一行に邪魔しないでと斬りかかったのはご愛敬だ。
「塔に向かうならレリック装備とかアーティファクト装備とか使いますか?」
「そうね。貴女の店なら無料で手に入るものね」
剣客と装備屋の店主の旅は始まったばかり。目指すは周回ボス、ジェックだ!
●
――美しい音色が聞こえる。
「作り物の世界に特別な興味があるわけではありません。…ですが、作り物だからこそ見ることのできる世界もあるのでしょう。
この世界とは別の世界、その一端に触れることくらいは叶うかもしれません。
…この世界とは別の世界。師の居た故郷。
頂いた姓。フルートと呼ばれる楽器。穏やかで、やや寒冷ですが、春のような陽気。
もし、貴方と同じ景色が見られるのならば。
……ふふ。残念ながら私には、見られた世界観が本物であると判断することはできないのでしょうけれど」
告げる言の葉に耳を傾けて亮とアニーは首傾ぐ。
「では、旅を、そして詩を歌いましょう。英雄譚…それは伝説の武器を、あるいは魔の者の弱点を、告げる朧気な伝承です」
「こ、これは……魔王の弱点!?」
Lumiliaより入手したのは白き魔王は可愛いものが苦手、ということだった。
「可愛いものか……酒場にでも寄ってみる?」
勇者一行が向かう酒場。ニッコリ笑顔のルチアちゃんは「こんにちはー」と笑みを浮かべる。
そのルチアちゃんを熱っぽい視線で見つめるのがポールくんだ。
(その金の髪は月の光の如く輝き、その笑顔は老若男女を問わず虜にする!
あぁ、今日もルチアちゃんは愛らしいなぁ! いつかその愛らしい声で、僕の名前を呼んで欲しい……今日こそは頑張ってデートに誘うぞ!)
やる気満々のポール君。ゆっくりと手を上げてルチアちゃんに声をかけてみたが……。
「あ、あの、ルチアちゃん!その、ぼ、ぼ……っ。
……『ボリュームたっぷり肉団子』ください!!」
「お兄さん、いつもありがと!肉団子、サービスしておくね!」
にっこりと笑ってポールに差し出す肉団子。何時も一生懸命なまなざしを向けてくれるのがかわいいのだと彼女はこっそりと勇者一行に言っていた。
「え、けど――」
「そう、私の『夜の仕事』は彼は知らないわ」
悲しげに言うルチアちゃん。彼女は知る人ぞ知る暗殺者Lなのだ。
「一度くらい私からデートにさそってもいいかな……なんて……けどね、今夜ね――」
悲し気に目を伏せるルチア。ポールは知らないのだ、彼の同僚から暗殺者Lに出された逆恨みの暗殺依頼。
こんなに慕ってくれるのに。殺すなんて――そう告げたルチアの瞳が揺れ、細められる。
「ねえ、勇者さん。あの人、ポール君にそっくりね?」
神様から遣わされた贈物かしらと笑ったルチアちゃん。今宵、罪なき『ポール君似の旅人』が身代わりとなるのだ。
「ここが未知ですね未知なのですね! あっとそこにいるのは勇者さんたちですね未知の時間ですよ話聞かせてください!」
ぐいぐいと距離を詰めるアルーシャ。インタビューされるのはちょっぴりいい気分だ。
そのインタビューの中、彼女から得たのは魔剣士たちがいるという魔王の居城の場所だ。
進めば空から降る黒い雷。荒れ切った草原は何処までも恐怖を感じさせる。
「ここから先に進むってのか?」
鼻を鳴らして、笑ったレイチェル。世界を憎悪する剣士は魔剣を握りしめる掌に力を込めた。
「……俺は全てを凪ぎ払う、そう決めた」
「……落ち着き給え。まだチャンスはある」
勇者一行と相対した騎士。レイチェルは魔剣『シグ』の助言を受け、小さく笑みを溢した。
「……了解だ、シグ。ちと頭に血ぃ昇っちまってたな」
魔剣士との戦いの中、亮は彼女が魔剣に抱いた恋心に気付く。誰もそんなこと望んじゃいないと叫んだその声にレイチェルは首を振った。
「これしか、これしかないんだ――!」
彼女を討てばボスの存在する場所につながっている。亮は唇を見締め彼女へと剣を振り下ろしたのだった。
……純白の鎧、盾。そして背の高いブラックナイト――魔族界最高の剣士レッドはその様子を眺めていた。
「弱い者イジメをする勇者達の魔の手からカカカカッと助太刀っす」
ぴょん、と飛び降りたレッド。悪の正義の味方なのだ、つまりは魔王軍の手先――勇者の敵だ!
「『来た! メイン盾来た! これで勝つる!』って声援はどこっすか?」
「闇蝕む世を貫く燦爛たる愛の光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参! ――さて、貴方が敵ですね」
レッドの前へと現れたインフィニティハート。愛が全てを救うのだといつも通りの様相だ。
「世界に悪あれば、愛の魔法少女もまたそこにあり。それは現実でも仮想世界でも同じです。
さあ――この世界の悪も、私の愛で平定してご覧に入れましょう」
魔砲で全て吹き飛んでしまえ――!
「今の内よ」
「あ、ああ……」
魔法少女と暗黒騎士の戦いの中、そっと勇者一行は抜けていったのだった。
「フッフッフッ……この先に行きたいのなら、四天王たる僕を倒していくいいよ!」
荒ぶるはニーニアのポーズ!
翼をばしーんと広げたニーニア。カッコ良さげな彼女に向かって亮が投擲したのはとりあえずその辺に居たロバ。
「僕が倒されても、まだ第二、第三の四天王がまだいるかもしれなおぶあー!?」
すさまじい勢いで倒されていくニーニアは子犬に引き摺られるように退場したのだった。
「ニーニアがやられたか。だが奴は四天王の中でも最弱!」
そのセリフを言った四天王ヴァンデッダ――マカライト――は『あれ、ニーニアが消えたら四天王のなかで俺が最弱な気がする』と感じていた。
彼は配下の騎獣1、子ロリ2、野ロリ1と共に初心者エリアと上級者エリアの隣接する草原で勇者を待っている。
「勇者だ! 勇者だろう!? 勇者なんだろうお前!! 死ねぇ!!!!」
上級者エリアを進み魔王の城に向かう亮は、農民のおじいちゃんを殴る四天王ヴァンデッダを見詰めていた。
棒でぽかぽか叩けど彼は「そうじゃのー」しか言わないNPCだ。
「あっ」
「あ」
……見つかった。
飛び掛かるロバ。ロバは恐怖の対象だ。
「俺は四天王の中で最弱……勝った所でお前らに未来は……ない!!」
自爆攻撃を仕掛けようとした彼を受け止めて、現れるは衛兵ゴリョウ。
「間に合ったか」
「衛兵さん……!」
「行け――この先にアイテムを交換してくれる天使がいる!」
その声を頼りに勇者一行は走る。進むのだ。この先にはきっと手に入れるべきアイテムがある。
「――――」
金髪に碧眼、スタイルは抜群。輝ける白翼――それは天使と言えるだろう。
ナハトラーベは誕生日会と聞けば ただ飯だと解釈していた。
各地に散らばる唐揚げを備えるのだという様に彼女はゆるりと顔を上げる。そう言えば、と拾った唐揚げを差し出して見ればメッセージウィンドウが反応した。
――アイテムを交換しますか?
天使は唐揚げでアイテムを交換できるそうだ。
勿論だ。宙を舞う一片の白翼は未だ見ぬ唐揚げを指し示し、静かにその姿を消したのだった。
――この世に人など要らぬ
絶望を知りながら絶望を撒き散らすしか能の無い人間、もとい類似の知性体たち全てが要らぬ
だがいと慈悲深き我が教えてやろう
『死』の先にのみ真の幸福が存在し、自らが幸福の礎となる事こそ貴様らの在るべき至高の姿だと言う事をな!!!―――
「白き魔王……!」
亮の傍らで女の子の姿に変化した公(隠れヒロイン)は「き、君のために手伝いに来たんじゃないからな!」とそっぽを向いた。
どうやらこのVRには魔王が圧倒的に多い。勇者が居たら魔王なのだ。
緑の瞳以外は白髪の狼であるシエラ・バレスティ。
視界内で口で否定したそのすべてを爆破する「ゃばっょぃ」相手なのだ。
「はい、爆破――――!!!」
「く、今だ……!」
ナハトラーベの所で買った人形。
「か、かわ……かわいいっ、卑怯だぞ! やめろぉ!!」
突如として開かれる扉。その向こうで瞳を輝かせるアルーシャがなぜか新聞を手にしていた。
「ここも未知の会場ですね未知エネルギーを感じますよ!
あっ勇者さんたちも魔王さんたちも他の方々も新聞第一号できたのでどうぞどうぞ!!」
●
「実のところ、魔王城はとてつよバリアに囲まれていたり、絶海の孤島だったり、絶望の青だったり。
ともあれ普通にはいけないのです、勇者さん。……勇者さんたち?」
こちら、勇者の『アリ子』と『リア男』と相対する魔法使いミディーセラ。
「そこで、です。魔王城とはまったくの反対方向…遠い遠い地においしいおいしい甘いお酒があると聞きました。
それを持ってきてくれれば、城へ渡るための魔法を授けましょう」
魔王を倒したら大金持ちになって沢山お酒が飲めるのだと彼らは思っていた。双子の勇者アリ子とリア男。
「別に出発した勇者・亮の冒険は進んでいるそうですが……」
「あらーそれよりそのお酒とっても気になるわぁ」
「でも持って帰るまで飲んじゃいけないんだろぉ」
アリ子とリア男は野を越えエールを飲み、山越えニホンシュを飲み、海越えワインを飲んできたのだ。
「お酒が飲めればいいんだし、そこの貴方も一緒にこのお酒を飲みに行きましょー?
魔王城は……まぁ他の勇者が頑張って辿り着いてくれるはず。めいびー。世の中のお酒を飲み倒しにごー!」
「そう、ですね」
頷くミディーセラ。待って、とその様子を見守っていた亮が声を上げる。ミディーセラが居なくなったら魔王城にどうやって入るのか。
「ああ、そうでした。障壁は解除しておくので、城へは自由に入れますわ。最近、魔王さまもおいたがすぎますので」
――簡単!
「助けて~。助けて~ですの~」
ぴちぴち。つるんとしたゼラチン質のご自慢しっぽ。ノリアは脈絡なく埋まっていた。
「え……?」
脈絡なく。物理演算のバグに埋まって、ぴちぴちしていた。
「儚き花ですの。勇者様はお見捨てにならない筈――って、まって、なんで別の道へ―!?」
ぴちぴち。網に引っ掛かったかわいい人魚ですのと叫び声が聞こえたが気のせいかもしれない。
仕方ないので助けてあげようと公が告げたその言葉。助け出せばお役立ちキャラ的なノリアはそっとラスボスに役立つ指輪を差し出したのだった。
「た、食べられてしまうよりはマシですので、網から出してもらったなら、お礼の指輪をプレゼントですの。ボス戦で使うと、何かが起こりますの……たぶん」
とりあえず魔王に向けて進む勇者一行。非常食(ノリア)は置いてきた。お腹が空いたら後で戻ろう。
『頼もしき神のしもべよ! この教会にどのような御用?』
『おお神よ! この者に尊きご加護のあらん事を!』
語り掛けてくる村人の向こうからシュテルンがひょこ、と顔を出した。
「トウトキー、ゴカゴ? ……うーん……しすたー、むつしい、言葉、いっぱい……」
村人のまねをする様にそう言うシュテルン。大丈夫か、シスター。大丈夫そうだ。
「かみさま、いのる、して、セーブ、する」
清らかな心で謳うシスターシュテルン。村人のまねをしてセーブできるから大丈夫だよ。
祖っと指さす先には死者に愛され墓場に閉じ込められた『死者の女王』がいるというその場所。
「もし、もし」
「なにかしら? 噂の勇者ですね」
誰かに仕えることもなく、霊魂と共に戯れる死者の女王。戦闘力はすごそうだからと亮が「一緒に来てくれないか」とそう声をかける――が。
大騒ぎに大騒ぎ。魔法で抵抗され続ける。ううん、と悩んだように唸った公が「これあげる」と差し出したは道端の貝殻。
>死者の女王はかいがらをしらべた!
>なんとかいがらはミミックだった!
「は?」
がばっと貝殻から飛び出したはリリー。道端の貝殻役でおやすみなさいしていたが、彼女はキレている。
「やどかりなんだけどぉ……」
ミミックはバールを振り回しながら死者の女王を引き摺り出して居る。腕力では女王は勝てない!
「ミミックじゃないって言ってるよねぇ……」
ずる……ずる……。
「わぁ、本当にお父様みたいな龍になれたわ……! VRってすごいのね! ……あっ、ごめんなさい、潰さなかった?」
ずずん、と音を立てて落ちてくる。紫水晶の枝角に蒼い鱗、翡翠の背毛の美しい水晶龍はずずんと音を立てそこに立っていた。
セーブポイントからほど近い場所。鉱龍――リヴィエラ――のお茶目な発言に亮は「ギリギリッ」と答える。
「遥々ようこそ、勇者さまたち。私が守っているこれが欲しいのよね? あげてもいいけれど…その前に、私の質問に答えてね」
ごくり、と息を飲む。
「あれ……?」
きょとんとしたリヴィエラの隣で(ちょうすごい)大怪盗リーンちゃんさまが「あれ?」と瞬いた。
「私の大切な……」
「えっ、奪っちゃった! ごめんねー、リーンちゃんさまはなんでも盗んじゃう超すごいメイドさんなのだー! えっへん!」
メイド服にカッコイイお面の大怪盗リーンちゃんさま。大活躍してるリーンちゃんさまにリヴィエラはあわあわ。
「返してほしくば……どうしようかなぁ? んー、大事なら返すね。はいどうぞ」
「ありがとう……で、では。あなたは何のために戦うの? 勇者さま」
リーンちゃんさまが見守る中、真面目な顔をして亮は「俺の役目だから……」とやけにカッコつけて言った。
(カッコイイ――……)
ときめく公。今回の設定はライバル勇者(実は秘めた恋心を抱いている)だ。このときめきは設定? VRの所為……。
「ふふ、素敵。素敵な答えね。じゃあ約束通り、これをどうぞ♪」
手に入れた素敵なアイテム。それをじっと見ていた大怪盗リーンちゃんさまはえっへんと胸張って笑った。
「なーんでも手伝っちゃうからね! 気軽に言ってね。えっへん!」
大怪盗リーンちゃんさまが仲間になった!
「やあ。冒険の記録を保管するよ。
うっかり負けてしまっても安心だね? 勇者はセーブポイントからやり直せるものだからね。
おお勇者よ負けてしまうとは情けない、なんてね。ふふ、諦めてないなら負けじゃないよ」
優しい笑みを浮かべた鼎。仲間が増えたんだねとセーブポイントは楽し気に笑った。
「なんで先回りしているかだって? 勇者の君を助けようとする人は意外と多いってことだよ」
「そんなもんか……?」
「そんなものさ。さあ、この先は最終決戦だよ。
準備はいいかな? 緊張しなくてもいいよ、いつもどおりにね? 別に君は一人ではないのだから」
その言葉にアニーが頬染め「しっかりしなさいよね」と告げる。仲間は沢山増えた――!
――さあ、向かえ。魔王城!
「どうやら勇者一行がついに魔王城までやって来たようだね。お客様達は『丁重におもてなし』して差し上げないとね、腕がなるよ」
ちら、と視線を送ったメートヒェン。応接間は隅々まで完璧に掃除されている。
「え……?」
首を傾げる勇者一行。おもてなしってそういう……?
お茶とお茶菓子、好みがわからないらとダージリンとアッサム、珈琲も用意した。
お茶菓子は甘さ控えめなクッキーを何種類か用意してソファーをどうぞ、とメートヒェンは勧めた。
「いや、もてなすってそういう……?」
「はい。それじゃあ魔王(あるじ)に伝えて参りますので」
穏やかに微笑んでメートヒェンはスカートを抓み一礼する。
何処からか指ぱっちんときらめきを感じるが――ラスボスって、そういう……?
魔王の居室にて。
「なんでもありの無法地帯だって! いいね、喧騒とはこうでなくては!」
そう笑ったマルベート。偉大なる魔王様を煽りに煽って、混沌に陥れた彼女はくすくすと笑う。
「君が不甲斐ない魔王様じゃなくてよかったよ。あまりに不甲斐なければ後ろからざっくりと刺してしまおうかと思っていたよ。
革命や下克上は歴史の華だ。こういう大判狂わせもあったら面白いんじゃないかな?」
くすくす笑うマルベートに『魔王様』は「あら、わたくしでしてよ?」と超ウルトラスーパーセクシィポーズを決めている。
「楽しみだね、勇者」
「そうですわね。とても――とても楽しみ」
ついに、と魔王の居室たる『奥の間』の扉を開けた勇者。
底に居たのは楽し気に百面相しているアルメリアであった。
「ふうぅーん。ふううううーーーーーーーーーん。
アレでしょ、こういう物語にさ、勇者とかいるじゃない? 時々ふっと現れて、助言とかしたり、勇者がピンチになったらぶわーっと凄い魔法とか使って手助けしたり心の支えになったりして、最終的には死んじゃったりして……っていやよ何で死ぬのよそこは私がやるんだから勇者とのロマンスとかさってああいや勇者も誰か知らない別の人がやるんだから勝手にそんなことしちゃ気まずいしここは上手い落としどころを……」
アルメリアは饒舌に語り目の前の存在に気付いて唇を震わせた。
「えっロバ? ロリババァ? し、シロネ? チシャ? や、やだ……何これ……」
そう、其処にいたのは顔が幼女で身体は老婆のロバモンスター!
こわい。
1ターン毎に生み出される子ロバ。しわがれた声で鳴いた子ロバが一斉に鳴き声あげる。
母胎たるロクからもぼこぼことロバが生まれ続ける。一定数増えた子ロバたち。
しゃがれた声で鳴いたと思えば――一斉に子ロバすら出産を行う! 怖い!
「楽しい出産シーンをぜひ見てみてね!」
「やだっ!?」
叫ぶ――月原・亮。お誕生日様。
「今、私の全ての力をあなた達に託すよ……!」
「任せて!」
氷、そして炎――氷彗と焔の力を手に――戦い……戦いたくない……。
「……ああ! かわいいわが子!! 愛しのわが子!! もっと増えて!!」
勇者パーティー一行はその様子に恐怖すら抱いていた。狂気が迸っている。これが怖いという感情、とVRなのに亮は確かな恐怖を感じていた。
「――悪いな、シグ。俺の我が儘に付き合わせちまって。」
「……この身が千に砕けようと。お前さんを助けられるのならば」
「……最期は、一緒に……」
魔剣士が相対するはロリババァ。この世界はロバに、そう、ロバに支配されているのです。
「もっと増殖するの!! わが子で世界を侵食していくのよ!! あっ! うっ、産まれるううううう!!」
生まれ続ける中、ずずずんと音がして天を見上げればそこにはきらめく彼女、そう、タント様が顕現している!
「オーッホッホッホッ! 良くぞここまで辿り着きましたわね勇者よ!
魔王でしてよ! ところでそれはなんですの? わたくしの輝きさえ曇りそうな奇妙な! そう! 奇妙な存在は! ええ、けれど、曇りませんわ! わたくしは何時だって煌めいているのです! そう!」
其処に居るのは(指パッチン)
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!!///
「タ、タント様―――!」
危ないと亮が叫ぶ。
「オーッホッホッホッ! 己の信念の正しさをここで証明するが良いですわ!」
太陽の輝きを纏い超キラキラ巨大タント様を見上げたタント様に大量のロリババァが襲い来るが、彼女は勇者力(きらめき)でしか破れないバリアを貼っている。
「くそ! レベルあげをさぼったから輝きが足りない!
増殖するロリババァに負けてしまったらタント様とも戦えない……!」
届かない悔しさに勇者は歯噛みした。
「いつでもチャレンジ歓迎ですわ!(指パッチン)」
\\\タント様!!///
「任せて! 呼び寄せた信者たちを魔王めがけて自爆特攻させて、世界を救っちゃおう☆
え、信者いなくなったらちくわちゃんの知名度もゼロに逆戻り? ……てへぺろ☆」
ちくわちゃんが信者を引き連れて飛び込んできた。そして、訪れるは大爆発。
ゆうしゃはめのまえがまっくらになったのだった……。
「諸君! ゴッドである! ふむ、ブレイブハートがワールドを救う! キッズはそのようなドリームを抱くものよ!」
説明しよう。豪斗はゴッドである。
「さて、折角であるからゴッドは本来できぬ事をしよう! ゴッドはゴッドであるがゆえに特定のパーソンのパトロンとなる事をしなかった!
此度はこのブレーキをカットしヒーローズ&エンジェルズをスウィーティに甘やかす!
但し、これはイージーモードを意味するものではない! アドベンチャーとは時に苦難を乗り越えてこそというものでもある!
ゴッドはゴッドモーニングからゴッドナイトまで見守っている……!
ユー達がゲームオーバーを迎えようとした時、ゴッドは何度でも言おう! ここでエンディングのディティニーではないと!」
「つまり?」
「リベンジである!」
――――もう一度チャレンジしますか?
「ふふ、諦めたなら記録を消して、いつでも終わりをあげたのにね?」
セーブポイントがそう、笑っていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
何も語る事無くお疲れさまでした。楽しかったです。
この気持ちを――心に込めて―――!
称号ちらちら出しておきました!
MVPは言わずもがな。最強ですね、そのギフト。
ありがとうございました。次回を待て!
GMコメント
夏あかねです。誕生日おめでとう、亮くん。
誕生日シナリオですがあんまり亮くん関係なく遊んでいってください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はEです!なんでってばーちゃるだから!
無いよりはマシな情報です。グッドラック!!!!!!
●ぴったりな『世界観』があった
月原・亮はその日初めて知りました――VR世界ならめっちゃ楽しいやん。
なので、完璧にお遊戯ですが、VR世界で『世界の謎』を解き明かそうと思います。
練達VRを使った『ファンタジー世界』での『お遊戯』です。
今回は『勇者ごっこで世界を救う』。皆さんのプレイング(や無茶ぶり)を組み合わせて一つの群像劇にいたします。
一つの世界だけじゃないかもしれません……いくつかの世界を救えるかもしれません……。
姿かたちもVRで変化しますのでお気軽に配役になり切ってくださいね。
●配役をセレクトしてください。
例:【魔王】
例:【ざんげちゃん(偽)】
どんなものでも頑張りますのでめっちゃかっこいい二つ名だけでもOKです。
なんだって対応します。がんばろうな!
●設定を決定してください
例:過去の記憶がないけどなんだかとてもカッコよかった気のする魔王です。左目からビームが出ます。
(キャラクターの設定や口調など盛りだくさんでOKです)
●行動や、その他思いつく限りどうぞ
例えば、モンスターをけしかけて勇者をどうにかしてやるだとか。
例えば、忘れてたけど自分は本当は勇者だったからとりあえず村のお姉ちゃん口説いてみるだとか。
例えば、そんなことより僕はざんけちゃんだった。ざんけちゃんかわいいよね。あのカソック最高だと思うだとか。
なんでもOKです。無法地帯でもなんとかなります。VRですから!
●同行NPC
・『男子高校生』月原・亮 (p3n000006)
・『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)
特にご指定が無ければ勇者だった気がしてる男子高校生と、よくわからないから雑草積んでるだけの海種娘です。
何かあればご指定ください。
・練達のNPC
お馴染みの佐伯・操さんとDr.マッドハッター、ファンさんならちょろっとお顔出しするかもしれませんが遊んでるだけなので重要な事は何も聞けないのです。
・ステータスシートのあるNPC
VRだもんね!!!!いるかもしれません!!!!!!!!レッツトライ!!!
VRだもん(強い)
楽しい一日になりますように。
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