PandoraPartyProject

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紫煙微睡

 常世穢国。それは豊穣の一角に存在せし魔の領域だ――
 死者が闊歩する地。或いは、死者を統括せし偲雪に誘われた生者達の……

「さて――これは想像以上に困った事態であったようか」

 かの地を眺め、述べるは玄武(p3n0000194)だ。
 彼の姿は、若い。それは玄武本体の分霊が如き存在であるが故……
「偲雪は魔種であった。あの気配……間違いあるまい。
 彼女の遺骨と魂が呼び声に晒され魔へと堕ちたのであろう。
 人の形こそ取っているが――実質に屍人、或いは霊魂たる存在と言った所か……」
「……彼女は強い願いを抱いているんだね。死んでも尚に、強く強く願う程の。
 そして彼女は自分についてくる『皆』に……応えようとしている」
 同時。言に反応を見せたのはシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)だ。
 シキは、遺骨を納める場にて偲雪とも些か語った身だが――あの時の折に確信した事がある。
 ……偲雪は、とても優しい人物だ。
 鬼とヤオヨロズの確執を無くそうとし、しかし失敗した帝。
 その彼女の気質が、この地に蔓延る多くの淀みと合致し――一つとなっている。
 偲雪は穢れを力とし。穢れは偲雪の力と成りて。
 故にこそ形成されたのがこの地――

 仏魔殿領域・常世穢国

 彼女の望みを反映せんとする結界領域。
 ――この地では一切の差別がない。一切の恨みが無い。一切の怨恨が無い。
 誰もが誰をも差別しない世界。
 それは確かに喜ばれるべき事なのかもしれない――
 しかしソレは強制された世界だ。
 言うなれば、偲雪が行わんとしているのは意志の改変でもある。
 其処に。真なる生者はいるのだろうか。
 彼女の傀儡と化す世界は、美しいのだろうか?
「さて。善悪正誤の問答はさておき……この理に抗するならば今動かなければ、ね」
「偲雪――彼女は己に賛同する者達の『縁』を利用し、領域を広げんとしているんだ。
 ……単純に言えば彼女は『外に出よう』としている。
 この国を自分の理想郷で塗りつぶす為に」
 直後。言を紡いだのは藤原 導満弥鹿なる者達だ。
 彼らは彼らで、この地域で発生していた行方不明事件の調査を行っていた者達である……彼らに縁ありし豊穣の村人などの行方が知れなくなりて、玄武の依頼を受けた神使とは別口で――調査を行っていた。
 それが故にこそ、先の調査において納骨堂の場へと乱入も果たせた。
 ……尤も。偲雪より招待を受けた神使達とは異なり、この地を守護する守人らの撃を受けて自由に動けていた訳ではなかったようだが。
 まぁともあれ。神使達の調査と、偲雪が如何なる存在であるかの確認。
 そして導満らの調査も得て判明したは――偲雪の狙いだ。
 彼女の望みは、豊穣全土にこの領域を広げる事。
 そして。彼女の力は、己に賛同する意志を持つ者がいればいる程に強くなる。
 ……であれば。先の、神使達との会合は。彼女の策による罠だった、と言う事か――?
 自らの賛同者を増やす為の……と、誰かが思えば。
「いや……それはきっと違う。あれは罠じゃない。
 偲雪さんはきっと、俺達と純粋に話をしたかっただけだ」
 新道 風牙(p3p005012)は確信をもってして語るものだ。
 偲雪は例え魔種として狂っているのだとしても。謀略の気質が、その根底にはないと。
 だからこそ、だろうか。
 『幾人かの神使』は、彼女の意志に賛同する動きを見せた者もいるのも……
「――しかし。彼女がどう思うても、我としては彼女の思い通りにさせる訳にはいかんの。
 彼女と親しかった瑞とて、望まぬ筈じゃ。他人の思考を塗りつぶすは……鎖繋ぐ支配と同様たれば。
 すまぬ神使よ――今一時力を貸してくれまいか」
「でも、具体的にはどうする? 彼女を打ち倒すって事になるのかな?」
「うむ――だが、幸いと言うべきか、それだけが全てではない。皆と共に納骨堂までたどり着けたおかげで見えてきた事もあるからの。ほれ、偲雪の力は多くの、賛同する霊魂がいる事による集合体が根源にあると見えたじゃろ? そこにこそ活路がある」
 ともあれ、と。偲雪の心如何によらず放置は出来ないと玄武が紡げば。ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)は共に――前回の行動を思い返すものだ。
 先述したように偲雪は賛同する多くの霊魂……穢れと共にあるが故にこそ、常世穢国なる一つの街を形成できる様な力を持っている。が、逆に言えばソレは付き従う穢れが払われれでもすれば――それだけで弱体化するという事でもあるのだ。
 偲雪そのものが無事であったとしても関係ない。
 あの街に住まう霊魂、特に戦う力を持った『守人』なる存在を打ち祓ったり。
 意思ごと囚われた生者を気絶なりさせ連れ出したり、或いは。
「街の壁をちょこっと弄ったりするだけでも、効果はあるかもね。
 ほら見て。前にさ、この街の都市計画書? みたいなのを見つけたんだけど……
 構造が歪な所があるんだ。これってきっと、穢れを貯める為なんじゃないかなぁ」
「それでしたら森の方も同様っすよ。あの森の木々も、風通しが悪すぎる――
 おっと。風通しが悪いってのは結構重要な事っすよホントに。
 霊魂の様な存在は、清い場所には留まり辛い所があるんっすから」
 セララ(p3p000273)八重 慧(p3p008813)の言う通り、霊魂だけならず建物そのものに危害を加えても狙いは果たせるかもしれない。二人は前回、何か手がかりがないかと城や森を徹底的に調査した者達だ……
 その調査の結果として得られていた情報があればこそ見える道もある。
 この街そのものの構造もまた、偲雪の力になっている可能性に辿り着いたのだ。
 霊を留める。淀みを留める。
 それは、生者ではない偲雪であればこそ力の一旦になり得るもの。
「森に関してはなるべく無秩序な破壊は避けたい所でありますがな。歪に絡んでいる代物だけ仕分け、鎮め、安らかなる眠りを届ける事が出来れば……最上かと思いますぞ」
 とは言え、例えば焼き払う程徹底的にする必要はないだろうとヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)は思考するものであり。
「それと、現在の地図も作っておいた。警備が薄そうな領域は事前に確認出来そうだ」
「むぅ……! 納骨堂以外の領域でもここまで調べ上げるとは、流石神使であるの!」
 続けて。重要なのはこの街の破壊工作を行う事などであればと――マッピングを行っていたラダ・ジグリ(p3p000271)によって、街の各地の移動経路は正確に把握出来そうだ。
 繰り返すが。この地そのものが偲雪の望みを叶えんとする基盤になっているのなら、それを破壊すればこそ――彼女の力は削げていく筈だ。
 無論、言うに易しではない。
 斯様な行動をしていれば彼方側も抵抗の動きは見せるだろう。
 以前は招待された側面もあったが故に、街で直接ぶつかり合う様な戦闘は無かったが……
「今回は本格的な荒事も覚悟しておくべきでしょうかねぇ」
 鏡(p3p008705)は、街の中心に在る城を眺めながら呟くものだ。
 ああ。あの戦闘狂いらしき帝辺りは――嬉々として此方に来そうだと、想いながら。

 ※豊穣国、久遠なる森の果てで、玄武より依頼が出ています――!

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