PandoraPartyProject

ギルドスレッド

at no.9

夕陽のリビングルーム(1:1)

住んでみれば部屋の維持というものは存外に手間のかかるものだった。
そもそも掃除の習慣の無かったシラスの部屋は気づけば散らかってしまう。
いや、ソファーサイドに積まれた本も、テーブルに散らばったチョコレート、リーフポッドにティーカップ、束ねられたメモに羽ペンだって、更には床に寝かされてる冒険用のリュックサックとブーツに、ソファの上で丸められた毛布まで、彼に言わせればソファから手の届く『ちょうど良い』場所に配置されていたのだが……ふと思い直して独り言ちる。

「アレクシアの家の本のこと言えないや」

今日は家で夕食を一緒する約束をしている。
この有様を見せてしまったらしばらく笑われてしまう気がした。
読みかけの本に栞を挟むと意を決して立ち上がり、それでも彼女が来ることを思うといそいそと片付けに手を付ける。

ようやく整頓が済んだ、もとい、雑物を全て寝室に放り込んだ頃には出窓から入ってくる秋の西日がダイニングをオレンジに染めていた。


(アレクシアさんとの1:1のスレッドです)

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丸めた挽肉を煮ていた鍋から灰汁を取る、そろそろ良さそう。
そこへ均等にさいの目切りにした野菜を入れて数分待つ。
程よく火が通ったのを確かめると塩で味を調えて香草を散らして仕上げだ。
こんなところだろうか。
街で買っておいた丸パンは輪切りにしてテーブルの真ん中に。

「花でも飾るか……なんてね」

自分が食事の支度をしているのが可笑しくてつい独り言が増えるんだ。

今日は何の話をしよう。
ラサでユリアンのやつに言われたこと心配してくれていたっけ。
手紙ではぐらかしてしまったままだ。
おかしな怪物から逃げきって戻ったお祝いだってまだしていない。

思えばこの短い間に随分と色々なことがあった気がする。

「久々だな、こういう時間」

換気に開けていた窓から流れ込む空気がもう冷たい。
ガラス戸を閉じて鍵を下すと部屋にスープの香りがした。
(夕暮れの通りを歩く。寒さに負けないようにコートはしっかりと閉じて、でも足取りは少し浮ついたように。
 今日はシラス君の家で夕食を食べることになっている。
 一緒に食事を食べるのは何度目になるだろうか。
 ちゃんとした数は数えていないけれど、それなりに食べたように思う。
 でも今回はちょっと特別。だって、彼が料理を作ってくれるというのだから。
 一体どんな料理を作るんだろう? やっぱり好きなお肉とかがメインの男の子って感じの料理かな?
 
 それとも……なんて色々想像を巡らせている間に、目指す家が見えてきた。
 秋色を思わせるような屋根が印象的な家。まだ真新しい世界。
 今日はどんなお話をしようかな。まだまだ聞いてみたいこともいっぱいある。
 きっと、話し始めたらあっという間に時間が過ぎてしまって物足りなくなってしまうのだろうけれど!
 そうこうしている内に家の前まで辿り着いていた。
 お土産に買ってきておいたチーズケーキの袋を改めて確認してから、ドアをノックして元気よく声をあげる)

こんばんはー!アレクシアでーす!
(名前まで聞かずとも声だけで分かる。
 つい早足になって玄関に向ってドアを開けばハーモニアの少女。
 柔らかな茶色の髪が夕日に透けて金髪みたいだ)

 こんばんは、寒かったろ? さあ、入って!
 へへ、やったね、お客さん1号だぜ!

(家に……そう自分の家だ。
 誰かを招くのは新鮮で、口にすれば少し浮かれた気分になれた。
 もっと掃除しておけば良かったなんて今さら思いながら居間に案内する。
 リビングとダイニングにキッチンを繋げたこの家で一番広い部屋)

 座っててね、今日は俺が全部やるからさ。
 もうお腹空いてる? それともお茶にしようか?

(アレクシアの手料理ほど凝ったものではないけれどね。
 そうつけ加えながらも、少し頬が緩む。
 だってちゃんと作ったんだもの、食べてもらうことを考えると嬉しい。

 出窓から差し込む光が少し眩しくて目を細めてしまう。
 いつもこの時間帯はソファの方で寝転んでるから気づかなかった)

 んっ、ちょっと眩しいかな。
 でもこの窓がお気に入りでさ、ついカーテン開けっ放しにしちゃう。
(しばらくして扉が開かれると、見慣れた顔が現れる。
 当たり前といえば当たり前だけど、見知った顔が見られて嬉しくなる)

 このくらいの寒さならまだ平気だよ!
 それはそれとしておじゃましまーす!
 お客様第一号にはなにか特典でもあるのかな!

(冗談めかして言いながら後をついて家にあがる。
 前に来た時とそれほど大きく変わってはいないものの、何となく改めて「シラス君の世界」に来たんだなと感じた。
 今更ながらに「友達の家」に遊びに行く感覚に気分が高揚する)

 ほんとにいいの? 何も手伝わなくて大丈夫? 何かあったら遠慮なく言ってね?
 お腹は……そうだねえ、ここまででかけてきてもう大分いい感じにすいてるかな!
 シラス君がどんな料理作ったのか、楽しみにしてきたんだ!

(座っててと言われると少し手持ち無沙汰な感じでソワソワする。
 とはいえ、今日はお客さんなんだからとじっと座って。
 ふとシラス君につられて窓の方を見ると、夕陽が眩しく輝いていた)

 あはは、確かにちょっと目を向けるには眩しいね。
 この窓のどういうとこが気に入ったんだろ? やっぱりあの桜の木が見えるから?
 はい、いらっしゃい!
 特典は……えっと、そうだな、チョコレートをあげよう!

 そういえばアレクシアって苦手なもの無さそうだけれど、これっていう好物もあまり聞かないよね?
 キミのことならお花を食べてるって言っても驚かないけど!

(手伝いたくてソワソワしているようにも見えるのを大丈夫といった仕草で制して座ってもらって)

 ちょうどさっき出来上がったところだから平気だよ、あとは配膳だけ。
 いや、本当に大したものじゃないから、何か恥ずかしくなってきたかも!

(二つのスープカップに鍋の中身をよそい、大皿に盛ったパンとバターの小皿と合わせてテーブルい並べると、アレクシアの向かいに腰かける)

 ちゃんと本のレシピ通りに作ったぜ、猟師風スープだってさ。
 何が猟師なのか分かんないけど、食べられそうな野菜だけだったから。
 味はともかくスープの熱さだけは保証するよ、火傷しないようにね。
 でもパンはきっと美味しいよ、午後に焼き上がったやつ買ってきたから。

(トマトを煮込んだような赤色のスープにはミートボール、玉ねぎ、ニンジン、じゃがいも、マッシュルーム、それにブロッコリーと散らされたパセリが緑の色を添えている)

 出窓はね、そう桜の木も素敵、花が咲くの楽しみにしてる!
 あとはねえ、解放感? 自分の家だから胸はって風通し良くしていられるみたいな。
 いや、流石に寒いから閉めてはいるけど、ほら、俺が寝泊まりしてた場所って人目を盗むようなの多かっただろ。
 窓から外が見えるってだけで気持ちが良いんだ。
 これまでも息が詰まった時はとっておきの眺めが良い場所を使ってたんだけど、何時もってわけにはいかないし……。
 あっと、そこもいつか案内するよ、アレクシアとならまた景色が違って見えるかも!
やったーチョコレート! ふふふ、本を読む時のお供にしよう!

 ……って私を何だと思ってるの!お花は流石に食べないよ、もうっ!
 でもそうだねえ、好きなもの、好きなものかあ……
(むむむ、と少し考えてから)
 確かに、「これ!」っていうのはないんだよね。なんでも美味しく食べれるけど……ヘンかな?

(やがて並べられた料理を見て嬉しそうに目を輝かせる)

 おおー、すごいっ! シラス君、料理ちゃんとするの初めてなんでしょう?
 私、初めて料理作ったときは大失敗した記憶しかないよ!
 もー、いろいろ適当すぎてさ! お母さんにも怒られたなあ。
 って私の話はどうでもいいね! ではではさっそくいただきます!

(言ってから、やけどしないように慎重にスープを口に運ぶ。
 熱さに少し驚く様子を見せつつも一口飲み)

 うんうん、ちょっと熱いけど美味しいね! トマトの風味がよくきいてる!
 これはパンをつけて食べるのも美味しいんじゃないかな?
 寒い季節だしほっとできる料理でいいね!
 ふふふー、シラス君が無事にお料理できたの、なんとなくちょっと我が事のように嬉しいね!

(へへっと笑ってからもう一度スープを飲み、ほっと息をつく)

 そっか……確かに、ずっと人目を避けて暮らすのって息が詰まりそうだね……。
 シラス君がちゃんとした場所に家を決められて良かったな。
 そういう息苦しさって、いつかきっとなにか良くないことになると思うし。
 何というのかな、自分が自由だって思えるって、大事なんだって思うんだ、うん。

(解放感や息が詰まるという言葉を聞いて、少し昔を思い出して苦い顔をしつつ)

 それにしても、もう色んなところにいったと思ってたけど、まだとっておきの場所なんてあったんだね!
 いつかそこに行けるのも楽しみだなあ!
 今度はどんな冒険が待ってるかな! また別世界にいっちゃったりして!
 チョコレートなら買いこんでるからお土産にどうぞ! 後で詰めたげる!

 残念……ハズレだった、アレクシアの力の源なのかなっと、ゴメン、冗談!
 ううん、ヘンなこと無いよ、好き嫌いしない方が良いもんね!
 好物があるなら知っておきたいって思っただけっ!

(席について内心恐る恐る反応を伺う……成果は上々だ! つられて自分も笑顔になって)

 へへーん、手仕事は得意って言ったろ、料理も似たようなもんだぜ!
 書いてある通りに作るだけなら楽勝だって!
 あはは、でもアレクシアの料理は適当っていうか色々と冒険しちゃってそうだね!
 それって大分ちいさな頃の話? それとも今みたく体調良くなってからかな。
 あっと、さあ召し上がれ!

(頂きますと一言、よく冷ましてから一匙スープを啜る)

 そうそう、パンがよく合いそうだなって思って買って来たんだ。
 温まるもの食べたくなるよね、俺も寒いのあんまり得意じゃないから。
 ちょっとそこまで喜んでもらえると思ってなかったけど、アレクシアが嬉しいならもっと腕を上げてみようかな。

(少し浮かれた笑みからやがて思いかえすように瞼を閉じて今度は苦笑してしまう)

 うん、そうだね。
 不思議とさ、前の生活してた頃はそこまで意識することも無かったんだ。
 自分に似合わしいだなんて思ってた。
 それよりも一人で毎日同じ場所に寝泊まりするのも身の置き所がない感じしてさ。
 きっと俺はまいってたんだろうなあ。

(見ればアレクシアも同じような顔、少し不思議に思ったけれど、皆も何か抱えているのだと納得して頷く)

 とっておきと言ってもローレットに喚ばれてから冒険した舞台に比べたら地味なもんだけどね。
 ただ街を見下ろせるっていうだけの……でもね、兄貴に教わった場所で、この前のラサのあいつ、ユリアンとも行ったことがあるの。
 おっと、だからと言ってアレクシアまであの二人みたくいなくなるのは勘弁してくれよ。

 ふっふー、別世界はもう懲りた……!
 キミが本当に戻って来ない気がして俺もうおかしくなりそうだったんだから!

 ――まあ、この住まいを決める切欠になったのは感謝しているけどね!
 やったあ! これで当分チョコレートには困らないね!

 うーん、そっかあ。なんとなく申し訳ない気分。
 多分、好き嫌いしてたら身体も良くならないだろうし……って思って何でも食べてる間に、あんまり気にしなくなったのかなあ、なんて思う。
 でも、裏を返せばだいたいのものは喜んで食べられるよ! だから、美味しいって思ったものがあればドンドン教えてほしいな!
 そう、例えば今みたいにね!

(言って、パンを少しスープに浸してから口に入れ、うん、美味しい!と顔をほころばせる)

 私が料理に大失敗したのは小さい頃だね。
 ちょっと前に読んでた物語で、料理をする場面がとっても素敵に思えたんだよね。
 比較的体調が良かったからやってみたいってお母さんにお願いしてね。
 でもさ、創作話の料理ってたいてい魔法のようにすらすらとできちゃうでしょう?
 それを真似して大失敗! そりゃあ色んな工程も材料も足りてないんだからそうなるよね!
 その後、お父さんにちゃんとした料理本を買ってもらって色んなことを覚えたね、あはは。

(昔の失敗を、照れくささ半分、懐かしさ半分に語ってから)

 まあそんなだから、最初からちゃんとできるのはすごいなって思うよ!
 この調子でもっと色々作ってみてほしいなあ!
 それでいつか一緒に料理してみたりしようよ!
 あっ、でも味付けでもめないようにしないとね!

(ふふっといたずらっぽく笑ってから、少し真面目な表情をして)

 そういう息苦しさって、自分じゃなかなか気付けないんだろうね。
 私も、きっと兄さんがいなければ、何もかも押し込めてしまってたんじゃないかって思う。
 シラス君が、新しい世界を手に入れて、少し自由になれて。
 本当に良かった!

(とっておきの場所の話を聞き、俄然興味が湧いた様子で)
 
 何度も言ってるじゃない、見知らぬ場所はどこだって冒険だよ!
 それにしても、そんな思い出の場所に私が行ってもいいのかな?
 お兄さんもユリアンさんも、大事な人で色んな思い出があるんでしょ?

(いなくなるのは勘弁して、と言われてバツが悪そうに)

 あはは……いなくなってやるー!なんて言うつもりはないけど……
 …………本当の事言うと、あの世界の時も、私、戻るつもりがなかったから……
 結果としては戻ってきちゃったけれどね!
 ……だから、約束はできないかなあ。
 いつか、そんな日が来ちゃうかもしれないし、来ないかもしれないし。
 ううん、アレクシア何でも食べるから俺もつられて色々と食べるってのもあるから申し訳ないことないって!
 今まで作ってもらうこと多かったからお返しできて嬉しいよ、もちろんアレクシアの手料理はこれからも食べたいけど!
 あっ分るよ、本で読んで楽しかった話ってつい自分を重ねちゃうよね、それが料理みたいな身近なものなら実際に試したくなるさ。
 小さな頃の話なら、アレクシアが元気だったのがお母さんもお父さんも嬉しかったんだろうね。
 だから大失敗するって分かっていても任せたんだと思う。

(会話が弾むと食欲も出てくる、大きく千切ったパンをスープに浸しては口に運び)

 ふふ、すごいって言っても比べる相手がお子様じゃあね、でもありがとう!
 それじゃ、何かの時にあれ食べたいとか言ってもらえるまで料理に挑戦してみようかな!
 せっかくやるなら俺もいつか二人で作ってみたいよ、じゃあこれは約束ってことで!
 どうだろう、今はレシピ通りでも練習したら拘りが出て来たりするのかも、そういうのも含めて一緒にやってみるの楽しみだよ!

(良かったと言われるとニカっと笑って少し誇らしげ、任せろと言いたげに)

 うんうん、自由でいたいってのはいつも思うんだけどさ、それって考えてみると良く分からなくて、でもアレクシアがそう感じたなら一つ自由になったんだと思う。
 
(多分これはキミのおかげ、そう付け加えて頷く)

 はいっ、そうでしたっと! アレクシアって本当に冒険者向いてると思うよ。
 これもお兄さんの影響なのかな。

(クスクスと笑ってから少し口を尖らせて)

 思い出の場所だからさ、アレクシアと行ってみたいの!
 昔から何遍も見た街の景色なんだけどさ、その度に思うことは違っていて……ユリアンの奴といった頃が最悪だったかなあ、余裕が無さ過ぎて何も感じなかったもん。
 でも実はちょっと気持ちを整理したいことあってさ、幻想のことで、だからその時に側にいて話を聞いてもらえたら嬉しいなって、それだけっ!
(約束はできない、少し気まずそうな語りで薄っすらと感じていた不安が形になっていく。最後まで聞いてから小さくため息をついて)

 そんな気がしてたよ、あの時はお互い言葉も通じなかったけれど何となく分かった、アレクシアはあの怪物を助けようとしていたんでしょう?
 だから怖かったよ、敵ならば二人で立ち向かえる、けれどキミがあれに寄り添っていくなら、自分で進んで離れていくなら俺に何が出来るだろうって思った。
 夢中で連れ戻したけれど言葉が通じなくて良かったんだろうな、話を聞いて全部分かってしまっていたら、俺はあれを退治したかも知れない。
 もしそうしたら……キミに嫌われちゃってたかな?

 この先、何があるか分からないし、そもそもお互いローレットに来たのは自分の意思ってわけでもないけれど、それでもアレクシアがいなくなったら寂しいよ
 ふふ、それならこれからも色々と食べないとね!
 いつかシラス君の好き嫌いもなくすために!
 でもそっかあ、お母さんたちも嬉しかったのかも、か。
 お母さんたちが私のことどう思ってたのか、あんまりちゃんと聞いたことなかったけど……そうだったら嬉しいな。
 昔は、あんまり良くない風に考えちゃうこともあったしさ。
 ……ってなんだか暗い感じになってきちゃった!
 シラス君には甘えてついつい色々喋っちゃうからダメだね、なしなし!

(はっとして照れ隠しのように笑って手をぱたぱたとふり)

 うんうん、是非料理は続けてほしいな!
 もちろん、私の料理が食べたいって言ってもらえたら嬉しいから、全然作るけど!
 シラス君慣れてきたら一緒に作ってみましょってことで!
 あーだこーだ言いながら料理するのはきっと楽しいよ!
 私ももっと料理の腕をみがいておかないとね!

(うんうん、と楽しげな表情で大きく頷き)

 そうだねえ、私がこんな風に言えるのは間違いなく兄さんのおかげだと思うよ!
 知らない土を踏みしめ、風を感じる楽しさを教えてくれたのは、間違いなく兄さんだったもの。

(少し思い返すような間をおいてから、はにかむように笑い)

 まあ、私のことはともかく、シラス君がそう言うならぜひ思い出の場所に連れて行って!
 見慣れた景色だからこそ、そのたびに感じることが違ったのかもね……ううん、違った心持ちだから「違って見えた」事に気づいたというか。
 シラス君の話ならいくらでも聞くよ! 私でお役に立てるなら!
 ……ちなみにそれって、こないだユリアンさんから言われたことに関係してる?

(助けようとしていたんでしょう?という言葉にうつむいて)

 うん……いや、どうだろう……。
 結局助ける方法なんてわかんなかったから。
 差し伸べた手を、できないからって引っ込めるのは嫌だったから……だから何かできないかと考えたけれど。
 今の私には救う方法は見つけられなかった。
 もしシラス君が全てを理解してあの人を退治したとしても……嫌いにはならないよ。
 でも、どういう顔して会えばいいのかわかんなくて、ここにはいられなかったかもね。
 
(ふぅ、と大きく息を吐いて顔をあげ)

 私だって大好きなシラス君に会えなくなるのは嫌だよ。
 そうなったら寂しいし。苦しいし。まだまだ遊び足りないもの!
 先のことはわかんないけど……でも、できる限りは頑張るから!
 今は……それでいい?
 ふうん、良くない風って?
 俺もよく話を聞いてもらってるからお互い様だって。
 まあ、気が進まないならまた今度ってことで。

(軽く唇と尖らせつつ話題を変えて)

 あはは、やり始めると凝り性だからね俺は!
 一緒に作ったらうるさいかもしれないぜ!

(料理本でも交換しようか、しかし落書きを思い出してその言葉を引っ込める)

 お兄さん、本当すごい人だったんだね。
 そこまで手放しで褒めるのって珍しいんじゃない?
 俺も話してみたくなってきた!

(世界は英雄で溢れている、いつか肩を並べて……そう願わずにはいられない)

 関係してると言えばしてるかな。
 ユリアンはどうしようもない奴だったよ、何だってやった。
 それでアイツあの日に俺のことを「こっち側の人間」だって言ったんだ。
 戻ってくるのを待ってるって。
 ハンッ! 違うに決まってるだろ、だって俺はイレギュラーズだぜ?

 ……でも言葉が詰まっちゃった、言い返せなかった。
 俺とアイツの何が違うのか分からなくてさ。

 あれからずっと考えて記憶をたどって……今だから分かること、どうしても思い出せないこと、自分なりに何とか整理つけたつもり。
 ユリアンのこと気にしてくれるなら、これも聞いてもらえたら嬉しいよ。

 っと、それで次に行きついたのは、結局この幻想をどうしたいんだろうって疑問なんだ。
 レイガルテに聞かれたのと同じでドキリとしたよ。
 だからあの場所でもう一度考えてみたいなって。

(うつむいた様子に少しバツが悪そうに視線を逸らして)

 手に負えないと知って見捨てられなかったってこと? 見ず知らずの怪物に?
 いや、それはいいんだ、アレクシアはそういうところあるよね。
 あの怪物が罪の無いものだったとしても、あの場所にアレクシアを置き去りにするってそれは見殺しにするようなものだったから。
 退治する他に無かったと思うよ、でもそうならなくて本当に良かった。
 もしキミに会えなくなっていたらと思うと堪える。

(やがて上げられた顔におそるおそる目を合わせて)

 ありがと……俺もアレクシアが大好き。
 頑張ってるの知ってる、これ以上なんて言えっこないよ。
キミが選んだことなら本当は何だって応援したいんだ、例えそれがお別れになるとしてもね。
 ただ、この前みたく自分の身を投げ打ってしまうなら……やっぱり、無理やりにでも止めてしまうかも。
 ゴメンね、先に謝っとくよ……お返事になってるかなこれ?
 大したことじゃないよ。
 私、やっぱりお母さんに嫌われてるのかなあとかそんな些細な疑心暗鬼。
 そんなわけないのにね!
 まあ気乗りしないというよりは、あんまり甘えすぎないようにしたいだけだから!
 だからはい、今度こそここまでー!

(両手の指でバツ印を作って笑いながら)

 ふふ、それならその内にその凝り性の成果を見せてもらわないと!
 うるさいくらいが上等だよ!その方が楽しいものね!
 私だってそれなりにこだわりもあるもの!きっとうるさいよ!

(冗談めかすように喋ったあと、少し遠くを見るようにして)

 そうかな?
 私、兄さんのことはもういつでも手放しですごい!って言ってるつもりだけど!
 そうだねえ、いつか、話してみてほしいなあ。
 そのためにはまずは兄さんに帰ってきてもらわないとなんだけど!
 本当にどこ行ったのやら!
 私、イレギュラーズとしてだいぶ頑張ってるんだからそろそろ顔見せてくれてもいいと思うんだけどなあ!

(なんて、と笑って付け足し)

 「こっち側の人間」か……
 私は、あっち側とかこっち側とかそんな区別は考えたこともなかったけど、きっとそうでない人もいるんだよね……

(少しうつむいて考える仕草をして)

 ともかく、シラス君が何か考えたのなら、私で良ければ聞くよ。
 ううん、聞かせてほしいな。
 たぶん、私にとってもきっと聞いたほうがいい話なんじゃないかなって思うからさ。
 シラス君のことをよく知るためにも、この世界のことをよく識るためにも。
 もちろん、その思い出の場所の景色を楽しむためにもね!

(返事になってるかな?という言葉にうなずいて軽く微笑んで)

 大丈夫。ありがとう。
 わかってるんだ。私だってさ、シラス君がもし命を掛けてまで何かをしようとしたら、きっと止めようとしてしまう。
 自分勝手だよね、本当に……。ごめんね。
 
(少し黙り込んだあと、ゆっくりと)

 ……例え私にとって見ず知らずの人でも、手に負えなくても。
 それは手を差し伸べられた人にとっては何であれ微かな希望の光なんだ。
 それが消えてしまうのは……本当に辛いから。それを知ってるから。
 だから、私は差し伸べた手は引きたくない。
 灯した光には最後まで責任を持ちたい。
 それだけなんだ。
 ……なんて、格好つけるには何もかも足りてないけれどね!
 こないだも、このまま死ぬって思ったら本当に……怖かったから。

(少し重い空気を取り繕うように笑う)
 あっ、うん!
 お兄さんの話になると他で見せない位に褒めちぎるよねって話!
 尊敬してるのすごく伝わってくるからどんな人なのか気になるよ!
 そうだよね、俺たちの活躍って運も合わさって相当なものだと思うぜ。
 お兄さんの耳にも絶対に入ってるはずだよ。
 会えたら思い切り自慢して褒めてもらわないとな!

(「うん、こっち側」、オウム返しにそう呟いて、少し考え込んでから)

 一度、人との繋がりを全部なくしてしまうとさ。
 まるで世の中から爪弾きにされたように感じるんだ。
 そんな中で新しく繋ぎなおした仲は何だか特別で……それこそ世界が新しく始まったようでさ。
 それはこの家で感じたような心躍るものじゃあなかったけれど、俺はそう思ったよ、これはユリアンの奴もきっと一緒さ。
 だからそこに閉じ籠ってその他のもの全部突き放して、今度はこちらから拒んでやった、ざまあみろってね。
 ……分かってるよ、世界ってそんな単純なものじゃない、でもそれは外に出られてやっと分かったんだ。

 ユリアンも幻想にはもういない。
 けれど心の根っこはずっと変わらずあそこにあるのかと思うと……考えちゃうな。
 あいつ、俺のことを家族だと言ってたんだ。
 その時は何も感じなかった、もう家族なんてうんざりだったからね。
 どんな顔をして、何て答えたのかも思い出せない。
 でもそれが今になって……なんて言ったらいいんだろう……うーん。
 薄情だったよな、嫌になるよ。
 だから、もう放っておいたらいけないことかなって。

(少しだけ笑顔を返して)

 足りてないことなんてないさ。
 ううん、力不足だとしてもやるしかないよね。
 全部備わるまで手こまねいて見てるだけなんてヒーローじゃないし。
 何かを諦めるのもアレクシアらしくない。
 それも分かってるつもり……次は止めるよりも何か力になれたらって思うよ。
 俺もね、自分勝手だから、もし駄目って言われてもそうしちゃうかも。

 希望の光かあ。
 藁にも縋るような気持ちでいる時に差し伸べられた手を引かれたら確かに辛いな。
 それはアレクシア自身が経験したことなのかな。
 聞かせてもらっても平気? お話しづらいことかも知れないけれど。
ふふ、そりゃもちろん!
兄さんは私にとってのヒーローだからね!
私達の活躍、届いてるといいなあ。ううん、きっと届いてるはずだよね!
そのときは褒めてもらえるといいなあ!
もし届いてなかったら、耳引っ張って何してたんだー!って怒らないと!

(話を聞いて、思い返すように)

世界から爪弾きにされたような気持ち、かあ……。
それは少しだけ、わかるような気もする。
もちろん、私には家族がいたし、体のことを除けば不自由することなんてほとんどなかったから、シラス君とはまったく状況が違うけれども……。
だから、ユリアンさんが特別なんだってっていうのも、なんとなくわかるよ。

ユリアンさんはシラス君のことをきっと今でも家族だって考えてるよね。
だからこそそうだね、放っておいちゃいけないって私も思うよ。
それが正しいか正しくないかはシラス君が決めることだけど……応えないままにしておけばおくだけ、ユリアンさんはそこに囚われるしかなくなるもの。
答えのない感情って。あいつもきっとこう思ってるって気持ちって。いくらでも膨らませられるからさ。
シラス君はどうしたいか、もう決まってるのかな?
まあ、私としては二人で仲良くしてほしいなって思うけどね!
行方不明になってたと思ったら、再会できたんだもの!感動的じゃない?

(ふふっと笑い返してから)

あはは、結局お互いに自分勝手に好きなようにやるということだね!
でも、きっとそれでいいんだよね。思ったことを曲げるのはシラス君らしくないし、私だってしたくないもの。

(経験したこと?と問われて少し苦笑いするように)

うーんまあ、そうだね。でも、そんなに変わった話じゃないよ。
私がとびきり病弱だったのはもう話したでしょう?
当然、お父さんやお母さんはなんとかしようとお医者さんとか探したりしてくれたんだけど、ダメだったんだよね。
全然治る見込みがなくてさ、匙を投げられちゃったんだ、お医者さんに。
もちろん、お父さんたちはずっと諦めないでいてくれたけど、小さな私にとってはお医者さんの言うことなんて絶対だって思ったし、なんとかなると思ってたから、目の前が真っ暗になったような気持ちだった。

別にお医者さんが間違ってたなんて思ってないよ。
今でもなんでこんなに動けるかわかんないしね。いつかまたもとに戻っちゃうかも。
でも、あの時の世界が終わったような気持ちは本当に辛かったから。
それを誰かに味わわせたくない。
それだけだよ。
 俺達こんなに頑張ってるんだから!
(大げさにふんぞり返って見せて)

 あっ、アレクシアも分かる? 寂しかったり、悔しかったり。
 こういうの恨めしいって言うんだろうな。
 今も無くなったわけじゃないんだ、でも昔はそんなのばかりだった。
 その時はそう意識出来なくてもさ、本当にキツくって……。
 だから、大げさに言うと、お互いのことが救いだったんだと思う。
 そんなわけで、確かにユリアンは特別だったね。

 うん、恥ずかしい話、俺はもう何が正しいとか間違ってるとか良く分からないんだけれど、ユリアンのことは今のままじゃいけないって思う。
 アイツに真っ当な生き方をしろだなんて言えない、俺だって今でも大概だもの。
 ただ、もっと自由になって欲しいって言うか、うーん……上手く言えないな。
 なんて言うか、この世界のことあまり嫌いにならないで欲しい……かな?
 あはは……仲良くはどうだろうね、今の話そのまんま伝えたらアイツきっとカンカンに怒りそう……それでも、いつかちゃんと話したいけれど。

(笑いながら頷いて)
 
 うん、お互い自分勝手って言うけれど、それだけじゃなくて俺たち精一杯やるもんね!
 きっと何だってなるようになるさ、ならなかったらその時にまた考える!

(昔話に考え込んで)

 聞けば聞くほど体が弱かったんだね、恐いから戻っちゃうだなんて言わないで? 頼むよ。
 確かに、医者から見捨てられたらひどく落ち込むなあ……治るって思っていたならなおさらそうだよね。
 そんな中で、アレクシアのこと諦めないでいてくれたご両親は大したもんだ。
 どうして良くなったのかは分からないけれど、きっと無関係ではないと思うよ。

 自分を重ねるように感じちゃうのかな……そういうのは少し分かるかも。

 さあ、今でも丈夫ってわけじゃ全然ないからね、ご飯しっかり食べよ。
 俺なんて最近はお腹空かせてばかりでさ、太ったらどうしよ。
(話を聞いて、ウンウンと頷きながら)

 ふふ、怒らせてしまうくらいでもいいんじゃなかいかなって思うんだ。
 怒らせるのがいいってわけじゃなくて、思ってることはちゃんと伝えなきゃって意味で。
 その結果として、その人を怒らせることになったとしても……大事な人が、よくない状態にあるのを放っておく方が後悔すると思うもの……うん。
 雨降って地固まるとも言うし、その方が最終的にはもっと仲良くなれるかもしれないしね!
 人と人とのことだから、どう転ぶかなんて予測はつかないけれど……相手のことを想った言葉はちゃんと届くって私は信じてるからさ!
 いつかと言わず、探しだして言ってやるくらいのつもりでいこう!
 必要なら私も手伝うからさ!

(両親のことを褒められて、へにゃりと笑いながら)

 えへへ、そうでしょう。自慢のお父さんとお母さんだからね!
 2人や兄さんが諦めなかったからこそ今の私があるのは確かだから、もしかしたら今動けるのもそうなのかもね。そう考えると、本当に感謝してもしきれないなあ。
 あはは、怖がらせちゃったのはごめんね。でも、本当にどうしてかはわからないからさ。
 まあ、もしまた元のような身体に戻っちゃっても死ぬわけではないから、いつだってお話したりできるよ。
 そうなったらそうなったで、昔と違って今の私なら、きっと何かできることがないか考えられると思うしね!
 シラス君に「あそこいってこれ取ってきて」「あの人に話聞いてきて」とかこき使っちゃうかもしれないよ~。

(くすくす、と笑ってから)

 おっとっと、そうだね、冷めちゃう前に食べちゃわないと!
 シラス君はあれでしょう、成長期ってやつでしょう?
 ちょっとやそっとじゃ太らないって聞いたからドンドン食べよう!
 ほらほら!追加のスープも注いでこようか!
(しばらく俯いて黙って考えてから顔を上げて)

 うん……そうだね。
 俺さ、兄貴のこと今でも思い出して考えちゃうんだ、あの時に俺がもっと確りしていればってさ。
 だから、ユリアンのことは今こそ動かなくっちゃね。
 同じ後悔をしたくはない……俺はもう子供じゃないんだから。
 見つけ出して言ってやるよ、この2年で感じた想いはアイツにだって通じるって信じたい。
 今は深緑でよく仕事してるみたいだから、ユリアンを探すならアレクシアに手伝ってもらうこともあるかもね。
 案外、そのうちアレクシアのお母さんに捕まえられたりして、そうしたら笑ってやるのに。

(嬉しそうに表情が緩むのを見て、つられて笑い)

 感謝ならきっと十分に出来てるって!
 昔に動けなかった分を取り戻して余る位に今は活動してるじゃん!
 きっと何よりの恩返しになってるよ思うぜ!
 お兄さんだってさっきも言った通り、アレクシアの活躍を聞いて喜んでるって!

 でも、病気のこともこうやって明るく話してくれるのは安心する。
 そうだなあ、アレクシアが今度また倒れちゃったら、その時は俺が看病するよ。
 そしたらキミと沢山お話を出来るし、俺けっこうそういうの慣れてるからさ。
 お使いだって何だってしてあげるから。
 ふっ、未来の幻想の英雄をタダ働きさせられるのはアレクシアだけだぜ……なんてね!
 
(笑いながら一人前は食べきって)

 それじゃ、今日はおかわりしよっと!
 やっぱり一人で食べるよりも誰かと一緒の方が美味しいや!
 うん、成長期ってやつ、ハーモニアと比べるとあっという間かも知れない。
 そうだね、俺は今こそよく食べて体を鍛えなくっちゃ。
 アレクシアも成長期なんだろうけど、気が長いっていうか途方も無さそうだね!
(前向きな返事を聞いて嬉しそうに)

 うんうん、その意気だよ!
 心配しなくても、きっと想いは通じるよ!
 もちろん、ユリアンさんもきっと言いたいことがあるだろうから、受け止めてあげてね。
 そうやって言葉にして分かり合えるのが大事だって思うからさ!
 それにしても、深緑で仕事かあ……
 もしそれが疚しい仕事だったら……お母さん容赦しなさそうで怖いなあ……
 怒ると怖いからなあ……

(へへへ、と笑ってから遠くを見るように視線をあげて)
 
 ありがとう。そうだといいなあ。
 でも、まだまだこれからも恩返ししていかないとね。
 なんたって私は生まれてから20年分引きこもってたんだから、同じくらいはできるところを見せてあげないと!

 病気のことは、以前に比べると大分前向きに考えられるようになったなって自分でも思うよ。
 色んな人を見て、色んな経験をしてきて……どんな時でもできることはあるんだって思えるようになったからかも。
 シラス君に打ち明けちゃったのも大きいかもね。聞いてもらえるってやっぱり大事だね。
 ずっと自分だけで考えると塞ぎがちになっちゃうしね。
 ……まあ、あんまりみんなに心配かけたくないから、まだシラス君以外には言ったことないんだけど……
 ともあれ、今言ったことはしっかり覚えたからね!
 ふふーん、もしそんな状態になったら、言ったことを後悔するくらい働いてもらうんだから!
 魔女のお使いは大変なものって相場は決まってるからね!

 よし、それじゃあおかわり注いでこよう!待っててね!

(器を持って立ち上がり、鍋へ向かってスープをつぎつつ)

 あっという間……うん、本当にあっという間だよねえ。
 成長期っていうものがあるのは本で知ってたけど、実際に目の当たりにするとびっくりだよ!
 幻想種に成長期なんてあるのかなあ。100歳になっても私より小さい人とかもいるし、私もずっとこのままなんじゃないかって気もしてるよ。
 シラス君ばっかりずるいなあ!私も大きくなりたいのに!
 この2年でぜんっっぜん身長変わってないんだよ!

(わざとらしく膨れ面をして怒ってるようみせつつ、スープをついだ器を持って戻ってくる)

 だからはい、私の分ももっと食べて大きくなってよね!
 そうだな、こればっかりはアレクシアの諦めないところ絶対に見習うよ。

 あー、ユリアンの仕事は疚しいな……きっと疚しいだろうなあ。
 お母さんは警備の兵隊さんみたいなお仕事なんだよね?
 ザントマンの騒動の時は一緒に戦ったから覚えてるぜ。
 確かに捕まるだけじゃ済まない話になりそうだ。

 うーん、でも滅茶苦茶に勘が良いんだよ、あいつ。
 笑うって言ったのも捕まってる姿がちょっと想像つかないからなんだ。

(記憶を思い起こすように出窓の外に目をやって)

 アレクシアは前向きっていうか前のめりっていうか……あの怪物の時みたく時々びっくりする!
 お互いに拾い直した命みたいなところが正直あるよね?
 本当なら無かったものと思うからブレーキが緩い時があるのかもな。

 でも病気のこと打ち明けたことで気が楽になったなら聞けて良かったよ。
 俺も何度か昔のこと聞いてもらって随分とつかえが取れたからね。
 キミがいなかったら気持ちの整理がついてなかったと思う、本当だよ。
 あはは、病気のことをみんなが聞いたら絶対に心配するね!
 ツリーハウスに人が溢れるぜ、賭けてもいい!
 
 後悔なんてしないさ、その時は任せとけって!
 ……それに、元気なアレクシアについていく今の方が大変な気がする!

 おかわりありがとう、頂きます!

 (スープを注いでる小さな背中を見て本当に変わらないと改めて思う)

 俺はよく伸びた方ではあるけれど人間の中じゃこれ位は珍しくないからね。
 アレクシアは俺が見ていられる間は殆ど変わらないんだろうなあ。
 逆にちょっと羨ましい気もするね、長生きはそんなに興味ないけど。

 わお、たくさん盛ってくれたね!
 いいぜ、アレクシアが一人前ちゃんと食べたんだから、俺もこれ位は全部食べるよ!
 ちゃんと食べたらデザートちょうだいね?
 
 ふふ、流石にもう背丈は止まって来た感じするけど。
 ユリアンのこともそうだし、ローレットの仕事の他にも目標は山積みだから。
 残さず全部やり切れるように力つけないとね。

(笑いながら少しペースを上げて食事を口に運び、程なく食べ終える)
そう、私のお母さんは迷宮森林の警備隊のお仕事だね。
ギフトで森の中に侵入した人がいたらすぐにわかるから、ピッタリなんだって。
まあギフトがなくてもきっとあのお仕事をしてたんじゃないかなあって気はするんだけど!

(捕まってる姿が想像できないと聞いて)

ほうほう、ではここはお母さんとユリアンさんの勝負というところだね!
私のお母さんだって森の中ならそうそう遅れを取ったりはしないと思うよ、ふふ。

(拾いなおした生命みたいなものだからという言葉に考え込むように)

うーん、確かに言われてみればそんなところはあるのかも……?
本当だったらこんなことできやしなかったんだから、できるとこまでやってみようっていう気持ちは強いかもしれないね。

へへ、シラス君の気持ちも楽になってるなら良かったよ!
正直私では色んな経験が足りてなさすぎて、シラス君の言葉をうまく受け止めてちゃんと返せてるかわかんないけれど……それでも、そう言ってもらえるのはとても嬉しいな。
それにしても、ツリーハウスに人が溢れちゃうのは困っちゃうなあ!
こりゃ当分は秘密にしておかないとだね!

あっ、言ったなあ!
それじゃあ今のうちから『シラス君にお願いしたいお使いリスト』を作っておいて、いざそうなったときに「元気なときのほうが楽だった」って思わせてやるんだから!

(手際よく食べる姿をにこにこと見つめながら)

ふふ、そうだねえ。きっと私はあと100年くらいはこのままなんじゃないかなあ。
羨ましいかな?私はどちらかといえば変わっていくみんなのほうが素敵だなって思っちゃうね。
変化が少ないってつまらないもん。だから私は冒険に憧れたのかもね。
あっ、でも服のサイズとかずっと気にしなくて良いのは楽かもしれないね!

そうそう、まだまだこれからもやらなきゃいけないことは山積みだからね!
元気があるに越したことはない!
デザートかあ、ふふ、ちゃんとそれは用意してあるよ!

(と言いつつ、やや自慢げに持ってきていた袋からチーズケーキの箱を取り出し)

はい、美味しいって聞いたお店があったから買ってきちゃった!
早速切り分けるね!

(言ってケーキの箱を持って再びキッチンにぱたぱたと向かう)
(複雑そうな顔で頬を掻き)

うん、一緒に戦ったときは凄い手練れだなあって思った。
ユリアンのやっているだろうことを考えると捕まった方が良いんだろうけどね。
こればっかりは腐れ縁の贔屓かな、適当なところで足を洗って欲しいぜ。

(できるとこまでと言う言葉に大きく頷いて)

そうそう、やれるだけやってみなくっちゃ嘘だよな、俺たちは。
嘘でも本当でも良いけれど、もう絶対に戻らないぞって思ってるよ。

1人で考えているとさ。
後で振り返れば簡単な話なのに、その時は分からないことってよくあるよね。
だから聞いてもらえるって大切だけれど、相手はなかなか得がたいもの。
俺にはアレクシアがいて良かったよ。

それじゃ、昔話は2人だけの秘密ってことで!
でもそのリストの中身、気になるなあ。
いつか覗き見をしてしまうかも。

……100年変わらず。
いや、ハーモニアのことは知ってるけれど、改めて聞くとやっぱりすごいな。
衰え知らずっていうのは、まあまあ羨ましいぜ。
キミの服はたくさんあるもんね、そのせいか変化が無いって感じは全然しないよ。
確かにあれが着られなくなったら勿体ないや。

(取り出されたケーキの箱についジッと目を奪われて)

やった! 流石アレクシア! 大きく切ってね!
沢山食べたけれど、ケーキは別のところに収まるから平気!

(満腹のお腹に手を添えながら得意気に笑って見せる)
キッチンに向かう背を見送ってから出窓へと視線を移せばすっかり陽は沈んでる。
閉じられてガラスの向こう側からまだ薄っすら流れてくる冷気が今は心地良い。
食事なんて独りでとれば小半刻もかからずに済むのだから不思議な気分。
もっと一緒にいたい、何を話して彼女を引き留めようか。
そんなことに頭を回し始めると、自然と頬が緩むのを感じた。

(終り)

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