PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺>日進月歩はキミとなら

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラド・バウ独立区からの提案
 熱狂の渦は鳴りを潜め、避難民を受け入れるために開かれた門の前には闘士達が門番のように立ち塞がる。
 観戦チケットは存在しないが、此れを機に暴動を起こす不届き者達を彼等は許すことはない。
 常ならば興奮したように眸を爛々と輝かす観客達も今は怯え竦みながら救いを求めるようにこの地を訪れていた。

 鉄帝国の象徴ともされる大闘技場ラド・バウ――その場所は現在は独立した立場で運営されていた。
 目標は『ラド・バウはラド・バウであれ』である。
 その為に通常通りの運営が行われ、イレギュラーズ達のチャレンジマッチも連日行われている。
 だが、国家の転覆とも揶揄される未曾有の事件への対処に手を拱いては居られない。

「報告するね!」
 メッセンジャーとして『炎の御子』 炎堂 焔 (p3p004727)が告げたのは幾つかの提案であった。
 耳を傾けるのは焔が大ファンでもあるラド・バウ誇るアイドル闘士、パルス・パッション (p3n000070)その人だ。
 多忙を極める ビッツ・ビネガー (p3n000095)に代り彼女が意見を纏め上げ、各地に奔走してくれるらしい。
「決定事項は資源確保のための炊き出しや、資源確保のためにチャリティーを行って外部に働きかける動きを始める事だよ」
 短期的な改善案は様々存在するが、その中でもパルスが直ぐにでもと働きかけたのは個人的ツテによる解決策である。
 これは『陰陽式』 仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)が言う通り侵略国家である鉄帝が敵対する幻想や天義以外の国家への救援要請だ。
 現時点でシレンツィオの対策に追われる海洋は『不凍港』を使用したとしても支援は受けられず彼女も省いている。
 ならば、海路を更に擁する豊穣や大打撃を受けたばかりの深緑、まだ未開拓と言える覇竜も選択肢の外だ。
「汰磨羈ちゃんたち皆の提案を受けて先ずはボクがライブの資材調達で時々お世話になるラサの商人さんに声を掛けたよ」
 それはラサの大商人であるファレン・アル・パレスト(p3n000188)のことである。
 パルスからの提案を受けての支援ではあるが『イレギュラーズへの支援』として個人的に協力を申し入れてくれたそうだ。
 それは派閥に関わらず少量ずつ備品の支援を行う代わりに輸送ルートの確立はイレギュラーズに任せるという意味合いを含んでいた。
 安定した仕入れルートの確保は『筋肉こそ至高』 三鬼 昴 (p3p010722)の言う通り優先度が高い。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ (p3p000854)曰く『レイディ・ジョンソン』などの顔見知りに協力を要請して出来るだけの備蓄を掻き集めておきたいのが現状だ。
「フリークライさんが言ってた家庭菜園とかは今からラド・バウの敷地内に整備しても良いかもしれないね。
 あとね、焔ちゃんが言ってた狩りなどの資材確保は今からでもやっちゃった方がよさそう!」
『水月花の墓守』フリークライ (p3p008595)の家庭菜園の提案や『玉響』レイン・レイン (p3p010586)の保護した観客達との食料整備は長期的目標となる。

「それから、ビッツ達とも話したんだけど焔ちゃんが提案してくれたライブはボクもばっちり頑張るね!
 で……ボク達の救世主を表彰していこうと思います!
 ――と、言っても頼り切りにすると24時間ブラック労働に一直線だから少しだけ協力してね?」
 パルスがお立ち台に呼び寄せたのはパン屋の屋台を引いてやって来た『恋揺れる天華』 零・K・メルヴィル (p3p000277)、彼のギフト内容を聞き水さえあれば葡萄酒を作り出せる『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン (p3p010347)、ティーパーティーセットを呼び寄せることの出来る『ょぅι゛ょ』ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)である。
「パンを呼び出すギフトと、葡萄酒を作り出せるギフトと、お茶会セットを用意できるギフトを持った三人だよ!
 おいしいパンと葡萄酒、それからティーセットで少しは凌げる可能性があるよね」
「……たべものギフト、こんな時に役に立つとは……英雄なのでは?」
「ユーはこういう時ホントに最強だな!」
『瀉血する灼血の魔女』 ルトヴィリア・シュルフツ (p3p010843)と『喰鋭の拳』郷田 貴道 (p3p000401)に零は胸を張る。
「寧ろこーゆう腹が減ってる時こそ!
 俺のギフトが光るってもんさ。まぁさすがにそれだけだと栄養は偏っちまうが、その辺はまぁどうにかなるだろ。
 葡萄酒のアルコールは?」
「一旦加熱すればアルコール自体は無くなるかと。度数を高めれば燃料の代わりになるかも知れません」
 アンジェリカに「暖をとるならボクもギフトがあるよ!」と焔はにんまりと微笑んだ。
「ルシアが用意できるのは飲料と趣向品ですので! これで食の面完全コンプリートでして!!!」
 にんまりと笑ったルシアに「食糧問題……これで、解決、だな?」と『金色凛然』 エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)も頷いた。
「三人に頼りきりで、人が増えたら過労死しちゃうからそれでも当面の準備は整えなくっちゃね。
 皆が言うように冬が来ちゃうと……鉄帝国民は鉄騎種が多いから過酷な環境化にも耐えられる可能性は高いけど、他の種族は――」
 ラド・バウの次の課題は『居住スペースの確保』だ。此の辺りはまだまだ派閥内での相談を行う事になるだろう。

「それで、皆にお願いしたいのは資材の確保と、避難民達の中で自警団になる事を希望する人達の訓練教育だよ。
 少しずつでも『ラド・バウ独立都市』としての形を整えて、危機に対抗できるようにならなくちゃならないから……。
 協力してくれる? 勿論、僕のライブを見に来るだけでも大丈夫。こんな時だからこそ、皆で手を取り合わなくっちゃね!」

GMコメント

 ラド・バウ派でのラリーとなりますが、別派閥の方もお気軽にご参加下さい。
(報酬は平等に配られますので、自派閥で自由に使用可能です。あくまでもラド・バウ派の提案から出るラリーとなります)

●目的
『ラド・バウ独立区』で資材を集めよう!
『ラド・バウ独立区』の避難民で自警団希望者に稽古を付けてあげよう!

●ラリー
 当ラリーは1章または2章までの構成で運営される予定です。

 ・参加時の注意事項
 『同行者』が居る場合は【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイングにご記載下さい。
 ソロ参加の場合は指定はなくて大丈夫です。同行者の指定記載がなされない場合は単独参加であると判断されます。
  ※チーム人数については迷子対策です。必ずチーム人数確定後にご参加下さい。
  ※ラリー相談掲示板も適宜ご利用下さい。
  ※やむを得ずプレイングが失効してしまった場合は再度のプレイングを歓迎しております。

●プレイング書式
1行目:(活動選択肢)
2行目:同行者指定
3行目:活動場所の指定があれば記載

例:
【1】
パルス・パッション (p3n000070)
ヴィーザル

●活動
 下記説明は一例です。比較的自由に動いて頂けます。

【1】資材集め
 ラド・バウ周辺及び、少し脚を伸ばした鉄帝国のエリア内で狩りや資材確保を行います。
 場所によってはヴィーザルの入り口や銀の森など他派閥に近い場所での活動も可能です。
 場所の指定が有る場合はプレイングにご記載下さい。
 資材集めを外で行う際にはモンスターや敵対対象と出会う場合も有ります。戦闘が発生する可能性にも留意して下さいね!

【2】ラド・バウ避難民訓練
 ラド・バウ周辺で魔種やモンスター、荒くれ者に襲われていたことで身を寄せた避難民やD、C級の闘士達への訓練を行います。
 ラド・バウ内部もしくは外周付近であり危険はそれ程多くありません。(実戦訓練ではモンスターを相手にします)
 避難民&闘士の中には知った顔(関係者)も居るかもしれません。
 彼等は、ラド・バウを維持するべく尽力する者達です。優しく教えてあげて下さい。

【3】パルスちゃんのライブ
 皆を元気にする為にやって来ましたパルス・パッション。
 何時も通りのチャリティーライブを行います。元気を与えるために歌って踊りますので一緒にチャリティーライブで詠って下さる方や踊って下さる方、演奏して下さる方も募集中。
 勿論、ライブの観客や、ライブの警備を行う方も募集です。

【4】その他(各国への支援要請)
 各国に働きかけるなどがあれば此方へ。現時点(9/28)での国外情勢です。パルスちゃん調べ

 幻想:敵対国。アーベントロート派にて動乱が起っているようです。冷戦状態です。
 天義:敵対国。現状では鉄帝国からの侵略は行われず、冷戦状態です。
 練達:中立国。何処に対しても練達は中立スタンスをとります。
 海洋:元・敵対国。グレイス・ヌレでは戦争を行いましたが、海域踏破の際の協力国です。シレンツィオでの動乱対処中。
 傭兵:中立国。傭兵と商人の共同体であるため、スタンスは『依頼があれば』です。
 深緑:(不明)。幻想種達は交流を好まないため、鉄帝国へのスタンスは不明です。
 豊穣:(不明)。海を隔てていたため鉄帝国との交流は行われていません。また、海路は海洋の協力が必須です。
 覇竜:(不明)。現時点では未踏の国家であった覇竜は関わりがありません。

 上記はあくまでも国家のスタンスであり個人(関係者や依頼での協力者)全てがそうであるとは限りません。

(10/02追記)
 外交に関しては各国スタンスを含め、個人的な案件でもとても難しくなりがちです。
 その為「荷を運ぶ」という確定した内容ですと採用が難しくなる場合も有ります。
 ※交渉などは採用し、返答させて頂くなどアクションをご準備致します。

●NPC
 ・ビッツ・ビネガー
 ・パルス・パッション
 この二名はこのラリーでお声かけ頂けます。
 また、他NPCにつきましてはご希望にお応え致しかねる場合がありますのでご了承下さい。

●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>日進月歩はキミとなら完了
  • GM名夏あかね
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月20日 13時40分
  • 章数2章
  • 総採用数108人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
雨紅(p3p008287)
愛星
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋
フーガ・リリオ(p3p010595)
青薔薇救護隊
社家宮・望(p3p010773)
牛乳プリンは罪の味
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

 ゼシュテル鉄帝国を騒がせた新皇帝の就任。群雄割拠の国内でラド・バウは独立した統治を行えるようにと研鑽し続ける。
 ラド・バウはこの国を最も象徴する場所だ。故に、平時通りの運営を求められる――例え、新皇帝の膝元にその場所があろうとも、だ。
 帝都の冷たい風を吹き飛ばすような熱狂を『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は知っていた。
「パルスちゃんのライブ!!!! まさかこんなに早く実現するなんて!!!!」
 眸を煌めかせた焔の声援にウィンクで応えたのはパルス・パッションその人だ。
 何時もならば全力で応援し、声援を発するところだが今日は『運営スタッフ』として活動するのだ。ラド・バウに逃げ込んできた人達を元気付けるためには細かな気遣いも必要だ。
「焔ちゃんだー」
「応援しないの?」
 首を傾げるのは焔がラド・バウ派の最初の仕事として助けたリンスとメアの二人であった。幼い子供達はパルスのライブと聞きつけてやって来たのだろう。疲れの滲んだ表情をしているがそれでも大好きなパルスのライブが行われることを喜んでいるようである。
「もしよければライブの裏側ツアーとか行く?」
 勢い良く頷いた二人に焔はふふんと鼻を鳴らしてから背筋をぴんと伸ばした。
 普段は見られないライブの裏側、パルスの姿。雑用だって何だって彼女の役に立てるとなれば焔だけではなくリンスとメアもやる気溢れるものである。
「リンス隊員! メア隊員! スタッフの人達の迷惑にならないようにお行儀よく見学すること!」
「「はい、隊長!!」」
 可愛らしい声を耳にしながら「気をつけて」と送り出すのは『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)。ライブ会場の警備を担当する彼――否、彼女と表記しておこう――は笑顔と勇気、そして元気を与えてくれるイベントに水を差させやしないと出演者や観客を護るべく目を光らせる。
「困窮が続く状況で開催されるチャリティー。その輝かしく華やかな夢の時間――
 そして、それらを与えてくれるアイドルの皆様は絶対にお守りいたします」
 警備体制を強化し、ラド・バウの喧噪に紛れる不届き者が現れぬようにと通告する。トールの指示を聞き、ラド・バウのD級闘士達はパルスを護るべく警備体制を整えた。
「ライブチケットをもぎらない事にかこつけて奴らくるかな」
「来ますよ。だからこそ、イレギュラーズが警備をするのです」
 D級闘士ペッコはトールに「そんなものかあ」と頷いた。背筋をピンと伸ばしている『インビンシブル』カール・カーマンやC級への門番ゼラー・ゼウスの姿も見ることが出来る。
「ライブ、始まる前なのに賑わってるにゃ。
 この活気を活かした国作りとかラド・バウの人たちは興味ないみたいで安心するような困るような、にゃ」
 何れだけ恐ろしいことがあろうともラド・バウは『象徴』で民の『安寧』の為にある。ほっと胸を撫で下ろして『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)は細かいことは抜きにして思う存分に楽しみたいとペンライトを振り上げた。
「ぱっるすちゃーーーん!」
 コールに応えるようにステージ上に飛び出したパルスは「みんなー!」と叫ぶ。手を振り、何時も通りの変わらぬライブパフォーマンスを披露する。
「ぱっるすちゃーーーん!」
「今日は元気な皆にスペシャルゲストが会いに来てくれたよー!」
 パルスから観客に、観客からパルスに。笑顔と元気の循環にちぐさの尾は嬉しそうに揺れる。
 コールをするのが楽しみだったからパルスの答えが嬉しくて。ラド・バウ闘士のカリスト・カルクは「失礼」と『無限牛乳プリン製造機』社家宮・望(p3p010773)へと声を掛けた。
「あ、え、は、はい」
「その……作成されているのは?」
「えっ、あ、牛乳プリンです。これで、パルスちゃんのプリンも作れたり……」
「それをファンに販売する予定はありますか?」
 眼鏡のブリッジに指を沿えたラド・バウ闘士カリストに望は「え、え」と慌てながらも頷いた。食糧生産に一石投ずるだけではなくファンへの新たなイベントグッズの販売にも成り得るとカリストは商魂たくましく望へと詰め寄っていたのだった。
 ――一方のステージではパルスの呼びかけに『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)が一礼する。
 噂のパルス・パッションのライブは圧巻だ。チャリティーライブのステージ出演者募集に挙手をすれば直ぐに彼女はフーガの手を引いて「一緒にお願いね!」と微笑んでくれたのだ。気易いラド・バウの花形である。
「お国がとんでもないことになっても、自分らしく、皆で手を取り合う、か。
 ずっとそうであるといいな……いや、そうなるよう、おいらも努力しねーとな」
「ふふ、キミとボクで……ううん、皆でステージを盛り上げれば手を取り合える未来が来るよ!」
 フーガの黄金の百合は美しい音色を響かせる。音楽の知識にコンサートマスターとしてのその実力はステージ上のパルスをより引き立てた。
 くるんと振り返ったパルスが手を叩く。その合図を受けてステージへと飛び出したのは『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)。
「ライブ……踊り……つまりバックダンサーですね!」
 大真面目にバックダンサーを行う雨紅。単独でも素晴らしいパフォーマーであるパルスだが、盛り上げるメンバーの存在は更に賑やかにステージを彩るのだと雨紅は知っていた。
 パルスのセットリストは把握済み。マスターダンスの活かし所はここである。パルスを引き立てるダンスを見せる雨紅にパルスは嬉しそうにウィンクを一つ。
 緊張しながらも『紅霞の雪』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は息を吐いた。
 ライブ直前にステージ衣装に着替えたフラーゴラは「ライブ! と聞いて! お手伝いするよ……えいえいおー……」と拳を小さく振り上げた。
 パルスは宜しくね、とフラーゴラが提案してくれた唄を直ぐに頭に叩き込み合図を送ればステージに出て来て欲しいと告げたという。
 その合図こそが――フーガの演奏が一度止まる、雨紅がぴたりと動きを止めてから焔は頷きフラーゴラの肩を叩いた。

 ――恋の闘技場 クリーンヒット ブレイク
 身を焦がす 火炎 じりじり 追い詰め 窒息 溺れて いつもの ワタシじゃない

 その曲はフラーゴラが準備したものだ。メインボーカルのパルスと合わせたハモりでステージを演出する。
 ライブは未だ未だ終わりではない。フルアーマー状態で愛馬に乗っている『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は曲が終わったと同時に飛び込んだ。
「わたしの名はヴァイス☆ドラッヘ! 今日はみんな、楽しんでいくのよー!」
 大声での名乗りに「ヴァイスちゃーん!」とパルスはぴょんと跳ねて嬉しそうに手を振った。
「パルスちゃん、飛び入りごめんね。みんなを元気にしたくて、止まらなくなっちゃった♪」
 このライブの間だけでも動乱も忘れてみんなを笑顔にしたい。歓迎してくれるパルスが「一緒に歌おう」と微笑めばレイリー改めヴァイス☆ドラッヘは輝かんばかりの笑顔を浮かべた。
 皆に笑顔を――それが自分の為したいこと。夢。誰かの夢を護る為に戦っている。
 戦う理由は其れで十分だった筈なのに。戦うだけではないとR.O.Oで学んだからこそ、自分はこのステージに立った。
 この動乱の間に娯楽なんて中々無い。博打や酒は万人向けではなくステージ裏で此方を見る子供達に笑顔を与えるのは難しかった。
(……以前のアイドルは半ば無理やりだったけど、自分の意思でやるなら、歌や踊りでみんなの夢を護れる。
 ……ううん、みんなに夢を与えられる――それもまた私の考える騎士の姿よ!)
 だからこそヴァイス☆ドラッヘは歌う。
 声を響かせ、元気と勇気、笑顔を与えるために――!

「わ。すごい歓声……! ビリビリ響くね。パルスさんアンコール……! もう一回歌おう!」
「オーケー! フラーゴラちゃん、みんな! アンコールいっくよー!」
 まだまだライブは終わらない。ラド・バウは『誰かの笑顔を護る為』にあるのだとパルスは考えているから。

成否

成功


第1章 第2節

ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す
暁 無黒(p3p009772)
No.696
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)
アーリオ・オーリオ
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

「思いの外に草の根活動な展開になったわね。ま、切った張ったばっかりは疲れちゃいますし? 偶にはこういう地道なのも悪くはないわよ」
 特に、ラド・バウ近郊は『敵の手中』である事もある。活動圏を確認しておけるという意味では草の根活動も悪くは無い筈だ。
『風と共に』ゼファー(p3p007625)が立っていたのはラド・バウ近郊の森である。腕まくりをした『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)は少し冷たくなった風を頬に受け、小さく息を吐く。
「ふむ、さっそく動く時間かな。
 人はいても住む場所がなければ落ち着くこともできない。巻き込まれた民をこれ以上苦しめるわけにもいかないしな」
「本当にね。ラド・バウは『闘技場』だもの」
 居住区には余り向いては居ないがそうとも言っては居られまい。都区に立地的にも住民の保護が最も活発なのがラド・バウなのだ。
 薪にも家を建てるにも木材は必要だとブレンダは木を切り倒す。運搬は避難民にある程度の声かけをして置いた事が良かったのだろう。
「あの兎は……食べられるのかしらね。木の実なんかもあればいいけれど。無いよりはマシですからね!」
 狩猟に詳しい非戦闘員がいれば、とゼファーが考えていた通り、ラド・バウで清掃員をしているというペトラという娘が元遊牧民だったという家族揃ってゼファーとブレンダに手を貸してくれた。
「毛皮の剥ぎ方なんてマストスキルよ」
「本当にそうだな。兎にも角にもまずは衣食住。冬が来る前にある程度は揃えておきたいところだ」
 ある程度のマッピングを行ない――と考えていたゼファーは「嫌になる事ばかりだわ」とブレンダを肘で突いた。
「……まあ、そうだろうな」
「何かを隠すなら森の中って事ね。『新皇帝派』が近いんですもの。近々、コッチに攻めてくる可能性だって――ええ、あるでしょうね」
 二人から資材を受け取った『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(p3p010347)は出来れば危機が訪れる前に越冬の準備は完成させておきたいと考える。
 葡萄酒も燃料として使用できる程度まで度数を高める必要がある。
「……葡萄味のスピリタスになりそうなので、うっかり飲んでしまわぬようペンか何かで書いておきましょうか」
「アラ、いいじゃないの。この国じゃ割と常飲よ」
 様子を見に来ていたのであろうビッツ・ビネガーにアンジェリカは目を剥いた。流石は寒々しい鉄帝国。アンジェリカのギフトは酒を求める者達にとっては天の恵みなのだろう。
「お邪魔させて貰ってる以上、手伝いはしっかりしなきゃね。
 確かに、今のラド・バウでやろうとしてる事、やりたい事を考えたら、資源不足は明白だし」
「助かるわ。アタシも見回りしてるばっかりで疲れちゃうケドね。狩りしてる場合じゃないもの」
 唇を尖らすビッツに『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は「責任者も忙しそうね」と返した。
 箒に乗って飛び回り避難民達の意見を聞きながら獣を狩る。無駄な損傷も苦しみも与えないように時を配ったのは全てが資源になる以上に慈悲の心もあるのだろう。
「食べられそうにないモンスターや、敵対対象……人も出てくるのかしら」
「……いそうだね」
 山積みとなっている課題を少しずつ熟していかなくては、と考えていた『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は肩を竦める。
「どうにも、太刀打ちできない相手が潜んでいそうな気配もする」
「ええ。敵だらけだものね。気をつけて進まなくっちゃ」
 セレナは上空からの偵察を兼ね、他の獣を探し求める。一方の雲雀はファーマシーの知識を駆使して薬として扱われる薬草の採取に訪れていた。
「食堂がラーメンとチャーハンと唐揚げとパンと葡萄酒しかないのも栄養バランスを考えると厳しい問題ではあるのだけど……
 避難民の受け入れをしているなら治療面の懸念も取り払いたいところだね。戦闘が起れば更に被害が増えてしまうだろうし……」
 唸る雲雀はすり鉢などで調合しなくては、とバスケットに薬草を詰め込みドレイク・チャリオッツに乗った『No.696』暁 無黒(p3p009772)とすれ違う。
「進捗如何っすかー?」
「まあ、それなりに。周辺に気を配るのは骨が折れるね」
「確かにそうっすよねえ。でも、腹が減っては戦は出来ぬっす! それにウチは軍事力以外はからっきしっすからね~」
 此処で、籠城作戦に出ればいつかは餓える。故に、全員で早期的に対策を講じることこそが必要だろ無黒は考えていた。
 軍事力が高い理由は闘技場の闘士達のお陰だろう。だが、それ以上に生きる為の準備は確りと整えておきたい。その為ならばブラック企業も真っ青な長時間労働だって何でも御座れだ。
 予め周辺の地図を貰っておいた無黒は「ワオ」と呟いた。敵陣只中といった只ならぬ立地である。故に、周辺の分布でも得られる資源は出来うる限り得ておくのが定石であろう。
「おう、気になるところがあったか?
 やばそうな地域がありゃはやめに血の気の多い連中に伝えて、さっさと片して貰おうぜ」
「お、声かけるんすか?」
「てめぇ一人で無茶はしねぇよ」
 協力し合ってこそだろうと肌感で『今は平和でも何時、状態変化が起きるか分からない』と感じていた『探す月影』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)はチャリオッツを使用しながら木材や周辺の民の荷物運搬を担っていた。
 欲張って大きな荷物を運ぼうとする避難民達は今までの生活の豊かさを忘れられない。物資として持ち込めばラド・バウでもより活かせるはずだとも考えていたのだろう。
「あのー」
 避難民達の声かけに「行ってくる」とルナは背を向けた。運搬もイレギュラーズが担えば、其れなりに早く進む。
 協力し合ってラド・バウを独立した都市へと仕立てるための準備は着実に進んでいた。

成否

成功


第1章 第3節

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)

 ラサへと足を運んだ『砂国からの使者』エルス・ティーネ(p3p007325)の傍にはElias・Tine・Meissen――母、エリアスの姿があった。
「エルス、余り役に立てないかも知れないわ」
「……いいの。母様の助けになればと思っただけだから。現状の把握になるしね」
 食糧問題もそうだが、これからの冬を思えば越冬の準備も必要だ。ラサは昼夜の寒暖差がある。赫々たる太陽による陽射しを受けたかと思えば、身をも竦ませる寒さが訪れる。そうした側面を知るエルスだからこそ商人達に支援を呼びかけたい。
 ラサで活動するイレギュラーズとして高い名声を誇るエルスならではの『自分の名に対する賛同者集め』が出来ればと考えていた。
「んー……」
 エルスの言葉に渋い表情を見せたのは『光彩の精霊』イヴ・ファルベ(p3n000206)であった。先んじてイレギュラーズに協力するファレン・アル・パレスト(p3n000188)の名代である。
「暖かくすれば身も心も落ち着く、軍事に励めば汗もかくし熱くなると言う意見もあるでしょう。
 でもその汗がこれからは更なる冷えを起こし命に関わるかもしれない。
 こう言う発展途上国だと衣類は娯楽品と捉える方もいるでしょうが……どうか考えてみてほしいわ」
「パレスト商会はファレン個人が応じただけ、で、政治的判断の出来る存在だからっていうのが大きいんだって。
 それに、商人達は鉄騎種が多い鉄帝国では過酷に耐性がある顧客の多さを懸念しているから」
「ならば、他の相談事はどうでしょう。イヴ様」
『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)を連れてやって来たのは『ジャウハラ』ムゥ・ル・ムゥであった。
 ファレンとは懇意にしてきた彼女だが、どちらかと言えば『ファレンの意見』を愛無に伝えて欲しいという姿勢のようだ。
 鉄帝国とラサにおいては過去の軋轢が比較的に少ない。傭兵と商人の共同国家である事からもルートの確保や招待の護衛ノウハウもある筈だ。
 だが、パレスト商会はファレン個人が品を用意し深緑の一件でイレギュラーズに対して好意的なレナヴィスカの傭兵に『森の入り口』まで護衛させただけだ。今回の騒乱に利を示す事が出来るかどうかが問題だと愛無は踏んでいる。
 傭兵も商人も利がなくては動きやしないのだ。
「鉄帝という点において、僕も一構成員でしかないからな。帝政派の少佐クラスの軍人ならば紹介できそうだが……。ラサはまずどう考えている?」
「正直、難しいって。ファレンは個人的に『今後のラサで問題が起きたときのため』に支援をしておきたかったみたい、だけど。
 深緑の支援で、かなりの負担が掛かっているから、これ以上は国家としての疲弊を免れないし、自国から多数を派遣できないって」
 現在の情勢下では商人も傭兵も容易に動く事が出来ないという事なのだろう。

 ――所変わって海洋王国では『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)はやれやれと肩を竦めていた。
 海洋の様子は良く分かっている。国軍に何らかの要請をすることは出来ない。
 エイヴァンとて海洋王国はシレンツィオ・リゾートの一件で情勢的変化を免れていないことを理解している。場合によっては鉄帝国とグレイス・ヌレ海戦を再来させる可能性さえあるのだ。
「視察に来て貰うことは?」
 個人的交友を得ていたのはカヌレ・ジェラート・コンテュール(p3n000127)その人であった。口で説明するよりも現状を見せたいとも考えていた。
 だが――カヌレは渋い表情を見せる。
「わたくしとて力になりたいことは山々です。ですが、『不凍港ベデクト』の現状は不明。
 わたくしはイレギュラーズではありませんから、お伺いするのも何かと準備も必要ではあるのです」
 肩を竦めるカヌレは「わたくしたちも海驢の手でも借りたいくらいの状況ではあります」とシレンツィオ・リゾートのことを思い浮かべる。
 カヌレがエイヴァンや『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)と相談するために訪れているのはフェデリア総督府であった。
「んー……」
 正直気が重かったイリス。その傍らには彼女の父、エルネスト・アトラクトスが立っている。
「鉄帝国内は資材の確保が急務、かつ冬越えの為の備蓄も心許なく、加えて治安も政情も不安という状況なのはご存じと思いますが。
 海洋王国としては、せっかく良好化しかけた鉄帝との外交関係がご破算になるのは避けたいし、支援する理由はあると思います」
「ええ、勿論。エルネストもそう思うでしょう?」
 頷くエルネストは言葉もなく非常に渋い顔をしていた。家出状態の娘が顔を出したかと思えば難題がやって来たからだ。
「……当然問題があるのも分かります。
 ダガヌ海域への対応、特に新皇帝に与するわけにはいかないこと、国内勢力が群雄割拠状態。
『どこに対して貸しを作ればよいか』の判断が難しいこと……。この点でラド・バウ派は自衛力が高く勢力として生き残りそうで政治的中立なのはメリットもデメリットもありますけど」
「――確かにラド・バウ派はお前の言う通り中立的で良いのだろう。だが、ダガヌ海域の難題をフェデリア総督府は優先しなくてはならない。
 それに、カヌレ嬢が言った通り『不凍港ベデクトの現状』が把握されておらず『安全確保』が出来ていないならばおいそれと手出しは出来ないな」
「うぐ……」
 イリスは詰まった。確かに不凍港ベデクトの安全確保は現状では出来ていない。其れ処か、状況さえ未知数だ。
「ちなみに、個人として、アトラクトスの族長としての立場としてはどうなのでしょうか?
 ニュー・カリュプス島への投資に相当使ってるのは知ってるので、即座に鉄帝に投資できるものを捻出するのは難しいのは存じていますが
 特に必要な内需品はクヴィートが、外国とのコネについてはスヴァートが強いので、そちらとの折衝で一族として商談をまとめるのは……。
 覚悟はあります。それが必要なら、自分の事は自分で何とかできます」
「その覚悟もベデクトの確保、それからダガヌの難題を攻略した後だ。……頼りにしても良いのか?」
「覚悟してます」
 凜と言い放ったイリスに父は心の中で大きくなったなと呟いていた――其れを見透かしたカヌレはエイヴァンにやれやれと肩を竦めたのだった。

成否

成功


第1章 第4節

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
アト・サイン(p3p001394)
観光客
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
シラス(p3p004421)
超える者

 聖教国ネメシス――その屋敷に訪れた『優しい絵画』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)は「アネモネ」とその名を呼んだ。
(こういう時はパオロ司祭を真っ先に頼った方が色々と円いんだろうけどな。
 彼女を信じてみたくなったんだ。今年の夏にはかき氷をこっそり送って一緒に食ったし、グラオ・クローネではチョコもくれたし。
 昔みたいにとは言わないが心の距離は縮まってきた……と思う)
 屋敷の庭園。初めてアネモネ=バードケージと出会った天使の像。その下でスケッチをしていたベルナルドに「珍しい客人ですわね」と微笑みかけた。
「月明かりの綺麗な夜は、いろんな情景がはっきり見えて描き甲斐がある……なぁ、アネモネ。話を聞いてくれないか」
「鉄帝国のことでしたら、お答えできませんわ」
「……どうして? お前の鳥籠からコレクションをラド・バウの支援に充ててくれないか?
 戦力にはならいだろうが、天義には文化人が多いから生産力は上がるだろ。
 ……代わりに、鉄帝の動乱が落ち着いた後で、俺はアネモネの願いを何でもひとつ聞いてやる。
 特異運命座標って立場に守られてる俺を自由に出来る最初で最後のチャンスかもしれないぞ」
「非常に魅力的ですけれど、天義も越冬は多分な準備が必要になる。それに、かの帝国には我が国も警戒を緩めずには居られないのです」
 ――もしも、新皇帝派が徒党を組んで他国家へ手を出したら? 幻想か、天義か。その何方かが標的になる可能性が高い。
 アネモネは目を伏せてから「折角、小鳥が自ら籠へ飛び込んでくれたのに。……ええ、とても残念ですわ」と呟いた。

『竜剣』シラス(p3p004421)が最初に目を付けていたのはレガド・イルシオンの貴族『エミリジット・ローニャック』であった。
 以前から目を付けて関係を気付いてきたフィッツバルディ派の女傑は若く有能だ。家名を上げる野心も有している。
「次世代の国交の立役者となる好機を逃す手はないでしょう、みすみすと他派の貴族あるいは他国に譲ることなどがあっては俺も公に合わせる顔がなくなります。どうかご検討を」
「非常に『魅力的』ですけれど、レガド・イルシオンの現状も酷いものでしょう」
 エミリジットはシラスをじっくりと見詰めた。冠位魔種に襲われた鉄帝国は現時点では被災地と呼ぶに相応しく、人道的支援を必須としていることはエミリジットも認識してくれていた。
 分裂した鉄帝の派閥の大半は幻想への侵略に関心は薄い。アーベントロート領の騒乱に脅かされても『北部戦線』――南部戦線と同義である――は状況変化をしていない。輸送ルートはイレギュラーズの協力も得られるはずだが、エミリジットはじっと身を動かすことはない。
「ですが、件のアーベントロート家での騒動は幻想そのものを揺らがす可能性もあります。
 現時点で悪目立ちすることを避けるべきだと貴族達は認識しておりますし、その理由も――『私はアーベントロート派ではないが故に動きを出せば其方に目を付けられる』かもしれません」
「……それは、ヨアヒム・フォン・アーベントロートへの警戒か?」
「ええ」
 せめて現況に変化が訪れるまでは難しいとエミリジットはティーカップに手を掛けた。

「僕は深緑の大領主なんでね。鉄帝直行交易ルートが欲しい。
 地図で見れば国境を接してるのに交易がない……山々か、海を超えなければならないからか」
 そう呟く『観光客』アト・サイン(p3p001394)に指導者の名代としてやってきた『灰薔薇の司教』フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)は「ううん」と唸った。
「深緑は牛乳の名産地、ということは牧場があるはずだな?
 ウール素材の衣服を買い付けたい。木材と食料も。それを北回りに海を越えて輸出するんだ。
 海路は陸路と比べ大規模な輸出ができる。更に国境を跨ぐ回数が減れば関税も安く抑えられる。操船は僕だ」
「アトさんが?」
「あのリヴァイアサンで荒れ狂う海を超えた操船技術のある僕がやる。
 それに、今の僕は帝政派、関税交渉に有利だ。さあ、決断してくれ……海が凍る前に……!」
 テーブルを叩いたアトにフランツェルは悩ましげに頭を抱えてから一念発起したように「ふんっ」と声を上げた。
「現状の深緑は冠位魔種から受けた被害の回復が未だ出来ていないわ。それに、この国は閉鎖的な国家。
 国民感情的にも鉄帝国との交易を望む声は少ないのが実情なの。深緑としては今は自国の立て直しに専念したい」
 鉄帝国への支援も惜しい状況なのだとフランツェルは苦悩した。ラサの支援を受けている状況だ。それで他国に更なる支援を捻出するのは難しいのだろう。

 これは長期的な目標だと『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は告げた。
 勿論、それは『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が個人的なツテを頼っていること同様の内容である。
「さて。私は、私にしか出来ぬ事をやるとしよう」
「ミーも個人のツテを頼ってみた……が、さて、どうか。勝負に出るのは心当たりを潰してからでも遅くはない」
 まず貴道の前に顔を出したのはボブ・クラークであった。会うのは久々だが利益があれば協力してくれると踏んでいる。
「ハロー、ボブ、久しぶりだな。要件は抜け目ないユーの事だ、もう分かってるんだろう?
 別に支援しろってんじゃない、商売をしようって話さ。HAHAHA、心配するなよ、金ならある」
 多分な、と後ろに着いた言葉が透けている気がしたが敢えてボブは何も答えなかった。
「この内乱はどう解決しようと後に引くぜ? ラド・バウは娯楽施設。政権なんて狙ってねえし、金さえあれば取引できるだろ
 一度『独立都市』になっちまう以上、ずっとここは『都市』のままだ。ユーにとっても、太い客になるんじゃないかい?」
「魅力的ではあるが、輸送ルートの確立が不安だな」
 輸送ルートか、と汰磨羈は呟いた。「佐伯先生はリモートです」と告げてタブレット端末を手に同席している『ゲーム研究室主任』陽田 遥(p3n000155)は暗い顔をしていた。
「汰磨羈さんの領地の資産を頂く事やボブさんのビジネスを、というのもやはり輸送ルートが心配ですよね」
『ああ。我らは中立国である以上輸出には否定的ではないが、それも安全が確立してからでは難しい。特に相手は冠位魔種だ』
 タブレットからコメントする佐伯 操(p3n000225)に汰磨羈は「イレギュラーズとして、難民を救う。人道的支援だ。流通ルートは考える」と操と遥を見遣った。
「馬車一台分程度の小規模な輸送を試すのはどうだろうか。
 使うルートは2つ『鉄帝直通の海路』、『ラサ経由ルート』だ」
「海路に関しては『海洋王国の協力』を取り付けることが出来れば輸出も出来るかと思います。
 防寒具が必要なんですよね!? あ、違いましたっけ……ヒンッ……」
「いや、ユーの言うとおりだ」
 貴道に「アザッス」と頷いた遥は「海洋はシレンツィオ・リゾートで騒がしいですから海路はそっちの状況が安定次第ですかねえ」と首を捻る。
「確かにそうだな。海洋との『貿易』を我々はすれば良いだけだ」
『それからラサだが……そちらも難しそうだな。ラサ自身は深緑と覇竜のどちらにも協力をしている為に国家的に疲弊が大きい。自国の余力を考えればそちらの協力は難しそうだ』
 ならば海路かと汰磨羈は頷いた。その為にはシレンツィオ・リゾートの一件を何とか落ち着かせねばならないか――

成否

成功


第1章 第5節

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
リフィヌディオル(p3p010339)
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く

「わたしはラド・バウ派じゃないけれど、少しでも力になれるなら……と思ってねぇ。出来ることをやらせてもらおうと思うよぉ!
 ――という訳で、わたしは自警団希望者への訓練を担当するねぇ。よろしくお願いします!」
 朗らかな笑みを浮かべた『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)は治癒術の使い方に含めそうした技能が無くとも対応できるようにと講義を開く。
 希望ヶ浜の養護教諭(ほけんのせんせい)でもある。教授する方法もきちんと経験してきていた。
 自警団をラド・バウで組むとなれば怪我は避けては通れない。だからこそ、その苦しみを和らげる方法を彼等には認識しておいて欲しい。
「さあ、頑張ろうねぇ」
 救急バッグに詰めてきた必要な備品。自身の知識を活かして苦しむ時間を短くし、最適な治療を受けられるように――
「あらアイちゃん! インクくん! 無事だったのねよかった。あ、こっちのイー……シスターちゃんは私のお友達なの♪」
 にんまりと微笑んだのはレイディ・ジョンソン。その傍らには『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が立っている。
 紫苑の髪の美しいシスターは穏やかに微笑んでいるが、レイディ・ジョンソンは落ち着き払ったイーリンとは対照的に武装難民候補と握手やハグを交している。
「我々は手を取り合わなくてはいけない、家族のように。そのために我々は知恵や力を使うべきよ」
『シスター』は相手の有利を奪うことや囲んで叩くこと、そして自分たちの退路を確保することを提案する。
「いつでも、訓練でも、実戦でも全員がそれを実践する。
 ここに避難してきた貴方達は、自分たちが危険な状況で、身を寄せ合って、ここを選んだ。
 それができるだけの素地があるのよ。さあ、私達相手にどう戦うかしら。シスターと炊き出し女くらい倒せなきゃ、話は進まないわよ!」
 早速訓練を始めましょうと声を上げたイーリンに「あんっ。アイゼンシュテルン撃っちゃう」とレイディ・ジョンソンはウィンクを一つ。
「ラドバウに世話になってる以上、何かしら手伝いはしたいと考えていた所だ。
 調達や他国に向かう人が多いようだし、私は民間人の訓練を担当しよう」
『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)は個々人の能力を見極め、初球から上級までのクラス分けを行ない複数の班を作った。そうして仲間意識や連帯感を持たせることが目的なのだ。
「基本は体力と筋力、戦闘術はその後だ。
 午前は走り込み、昼休憩を挟んで午後は筋トレをして貰う。やることは変わらないが上位クラスは量や負荷を増やしてよりハードになるぞ」
 着いてこられるかと問うた昴は避難民の事は優しく丁寧に扱い、出来るだけ褒めて伸ばすことを指導方針に定めた。
 必要に狩られている彼等は士気が高いわけでもなく、戦士でもない。出来る限りの気遣いは必要だろう。
『真竜鱗』オウェード=ランドマスター(p3p009184)はラド・バウも協力を考えた勢力の一つであったという。故に、この状況下では協力を惜しまない。
「ワシはイレギュラーズのオウェードじゃ! ワシも身を鍛えに来た!」
 肉体言語で避難民達の協調性を上げて行く。戦士ではない彼等は基礎の基礎から丁寧にじっくりとだ。
「そうじゃ! お前さんは不意打ちが苦手じゃな……ワシの案としては……」
 いきなり実力を引き上げるのは難しいだろうとリフィヌディオル(p3p010339)も認識していた。オウェードが丁寧に指導する傍らで、一度でも実戦の経験を積ませてやろうと弱いモンスターを選別する。
「普通なら恐ろしくて竦み上がったり、緊張でわけが分からなくなる人も多いと思います。それを経験してパニックを安全に卒業してもらいましょう」
「成程……ワシも手伝おうか……」
「はい。私達でモンスターをブロックして抑えます。
 その後ろから難民のみなさんに攻撃をしてもらいます。
 危ないので最低でも近距離以上の攻撃手段を用意頂くのが良いと思いますね、これは実戦でもそうです」
 実践により近い形式であれば、やる気も未散るはずだろうとリフィヌディオルは提案した。
「本番になると正々堂々は難しくなるじゃろう……用心するんじゃよ!」
 昴の指導で体が良く動く。シルキィが傷の手当てを教えてくれた。レイディ・ジョンソンと『シスター』は強敵ではあったが――避難民達は恐れることなくモンスターへと飛び掛かった。

「よく頑張った。お前たちなら出来ると信じていた」
 昴の一言にホット胸を撫で下ろした避難民達を見詰めてからリフィヌディオルはにこりと笑う。
「初めての戦いはどうでしたか? なかなか思うようにいきませんよね。けれど次は同じことを慌てずに出来ると思いませんか?」
 その為に頑張りましょうと手を差し伸べるリフィヌディオルに避難民達は大きく頷いた。
「ご飯の用意はすぐにするわね!」
 声を掛けるレイディ・ジョンソンに感謝しながら未だ未だ彼等は訓練を続けるのであった。

成否

成功


第1章 第6節

グドルフ・ボイデル(p3p000694)
蘭 彩華(p3p006927)
力いっぱいウォークライ
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏

 薬草と言えば、そう。イシュミル・アズラッドである。医神の眷属である彼は薬学にも精通している。
 アーカーシュでも薬草の採取に協力してくれた彼を『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は誘い、食用の植物を出来る限り入手せんと考えていた。
「薬膳、というのだったか……。
 直接薬として使用するのではなく、炊き出し等に使用する事で少しずつ健康を増進する、そういう植物がここらにもあるかもしれない」
 脚を伸ばし採取範囲を被らせないように時を配る。アーマデルの背後を歩くイシュミルは興味深そうに周囲を見回し、壁のように立っていたGハイペリオン様がこてんと首を傾げる。
「薬草の見分けはイシュミル、頼んだぞ。たまには真面目なカタギの仕事も悪くはないだろう?
 ……あんたのカタギじゃない仕事の結果がここにいるわけだが、それは、まあ……それだ」
 結果ことGハイペリオン様が首を傾げたのと同時にイシュミルは「え?」と声を上げた。
「私は仕事に関してはいつでも真面目だよね??? んんっ、まあ、趣旨は理解した。では、そういう薬草がありそうな土地は……」
 ほら、あそこと指し示した先には『オフィーリアの祝福』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)。
 この動乱でイーハトーヴは出来る限りの命を救うことに尽力していた。避難してきた人々の助けとなりたいというのはラド・バウ闘士としての決意だ。
 自然知識を駆使し、周辺の警戒を行って居たイーハトーヴの傍でメアリとオフィーリアがイシュミルに気付いたように合図を送る。
「その草は食えるぞ」
「あ、これ?」
「ああ。これとこれ、似ているが片方が毒で、片方は薬だ。どこで見分けるか分かるかな?
 まあ、毒の方も少量を使用する事で薬となる。毒と薬は表裏一体……使い方だ。武具と同じさ」
 すたすたとイーハトーヴの傍へとやって来たイシュミルは草を摘み取ってからGハイペリオン様の籠へと放り込む。
 イーハトーヴは「此れも食べれそうだね」とその隣の草を手にして――俯瞰した視界に何者かの気配を察知して警戒を強めた。

「ハッ! 資材集めだ何だ、チマチマとかったるくてやってられねェな。やるなら一気にゴッソリ奪い取るのが性に合ってるのさ。
 さあ、そこら辺をウロつくゴミカス共からカツアゲといこうじゃねえか。
 ゴロツキでも犯罪者でも。武器や防具、何でも良い。金目のモンがあるなら上等だ。組織的な連中なら、アジトに乗り込んでまるっと資材を頂きだぜ」
『悪役』のように堂々と宣言したのは『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
 ラド・バウ周辺には避難してくる者を狙う火事場泥棒や己の存在を誇示するための弱者へ仕掛ける不届き者のみならず新皇帝派の者も多い。
 グドルフはそうした者達を却けながらも資材を粗方奪い取ることを目的としていた。
 斧を振り上げ、殴りつける単調な戦法でもそれだからこそ強力だ。
 振り上げた腕によるスピードは火事場泥棒程度では避けることも難しいだろう。
「……まあ、狩りでもないけどこっちも狩られる側ってことか」
 困った者だと呟いたのは『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)。外に資材を集めに行く者達のサポーターを行なう彼の前を『力いっぱいウォークライ』蘭 彩華(p3p006927)が進んでいる。
「随分と荒れてきたものですね。元からスラムが広がっていたとはいえ……人の気配もあまり感じられない」
「まあ、引き籠もるのが正解だな。
 冬場の北国って結構しんどいしな……不要な戦闘は避けたいところだが……」
 カイトが周辺警戒を行なう最中、彩華は兵器や車両などの部品を調達していた。食糧庁達も確かに必要だが機械類も今のうちから備蓄しておきたい。
 出来る限りの負担を減らすのが目的だ。資材の選別は趣味の鍛冶仕事が役に立つ。
 部品単位でも拾い集めればそれらは見た目は塵であれど技師にとっては宝となる筈だ。
「そっちには何かあったか?」
「宝の山です」
 安全な内に運びきってしまおうと朔(p3p009861)は提案する。精霊達に周辺の警戒を願うが、精霊達も何かに怯えた長子でアル。
 資材も運びきれなくなる前に運搬を担うイレギュラーズの元へと持ち帰ってしまわねばならない。何せ、敵の牛耳るエリアの只中とも言えよう。
 何処から敵がやって来て自身等を狙い撃ちするかも定かではないのだ。
「……にしたって、冠位魔種が皇帝ねえ。
 鉄帝の流儀に則るとは律儀なもんだが、このままにはしておけない……んだろうな。
 正直、実感はわかない。元の世界でも外国で戦闘があったりはしたが、わざわざそこへ近づくこともないから。
 はあ……平和で平凡な生活が一番なんだが、なあ」
 これからどうなるかを憂う朔に精霊達はこの場所を離れようと合図をした。どうやらラド・バウ派の動きを観察する何者かが居るようだ――

成否

成功


第1章 第7節

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者

 豊穣郷カムイグラ。その地での交易への提案に顔を出したのは『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)である。
「よぉ、久しいなァ。今日はちょいと相談に来たんだ」
「久方振りじゃの。晴明、茶を出せ。吾はぬるめが良いぞ」
「……」
 ひらひらと手を振った黄龍に晴明は肩を竦める。中務卿としてこの場に同席している者に対しては苦い反応だ。
「今、鉄帝が冠位魔種に国を乗っ取られて大変な事になっちまってなぁ。
 それ関連の相談。流石に魔種を放置は世界が滅びるンで不味いので、鉄帝を魔種の手から取り戻そうと考えてる。
 ……何れ、分裂した派閥をイレギュラーズの手で団結させてな」
「ふむ」
 黄龍はレイチェルの提案を察したのか渋い顔をした。つまりは物資不足による豊穣からの支援の打診である。
 一先ずは彼女の話を聞いてみようと考えたのだろう。茶を机へと置いた晴明も居住まいを正す。
「今、豊穣の交易ルートって海洋メインだろ。海洋経由で鉄帝と交易って出来ないだろうか? 無論、海の安全面を俺らが確保した後に。
 少なくとも宰相バイルは話が分かりそうなんで……此処で助けたら恩はちゃんと返すんじゃないかなぁと。
 ……豊穣の負担にならない範囲での交易を行いたいって考えだ」
「無論、我々も神使に世話になった身だ。貴殿等の提案には出来うる限り応えたい。
 レイチェル殿の言う通り『海の安全』だ。シレンツィオ・リゾートの安全確保が無くてはその決断も下せない」
 其方の解決を願うと晴明は頭を下げた。だが、この一件は霞帝の耳には入れておくと約束をして。

 ヴィーザルの入り口付近にやって来た『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)は首を捻る。
 森林資源は豊富そうだが、凍えるヴィーザルは越冬にも困るだろう。首都方面からの道はイレギュラーズが一人旅をする程度ならば問題も無い。
「ノーザンキングスや不凍港の情報を得たいが――……」
 信憑性がある話が聞けるかは定かではない。現時点でもイレギュラーズ達がノーザンキングスに警戒を行って居る派閥が存在する程にその情勢は不透明だ。
 不凍港さえ現状では海洋王国さえも内情を把握していないのだという。この動乱で実情が分からず港からの物資が途絶えていると村の者達は告げる。
「ふむ……」
 詰まりは現状では情報が少ないのだ。不凍港に関しては幾人かがチームを組んでそれ相応の調査を行なうべきであろう――

「こんにちは。元気にしている?」
 にんまりと笑った『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が訪れたのは銀の森であった。
 身を潜めていた精霊達はひそひそと囁き会いながらオデットの前へと姿を現す。
「この木の実なんか、貰っていっても良いかしら? 今は少しでも食べるものが多くあったほうがいいものね」
 オデットの提案を受けたのは『銀の森』を拠点としている氷の精霊、エリス・マスカレイドであった。
「構いませんよ」
 穏やかな微笑みを浮かべたエリスは自身の配下であるマスカレイドチャイルドたちに手伝うようにと声を掛けた。
 しかし、それでも資源は少ない。ラサからの交易路に使用されればこの地も敵に脅かされる可能性があるのだとエリスは不安げにオデットへと語ったのだという。

「さて……ラド・バウが独立都市としてやっていく為には食糧や資材といった物が継続的に必要な分だけ入手出来るというのが最低条件。
 そして可能であればある程度余裕が出来るくらいに確保できれば御の字といったところだろう」
 首を捻った『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が立っているのはスチールグラード郊外に存在する彼の領地であった。
 そこから食糧などの資材を運び込めるかどうかを考えたのだ。他国から運ぶ込むのは相応の経路が必要だ。だが、自国ならばどうか。
「今の鉄帝において食糧などの資源の確保はどの勢力でも決して軽視は出来ない問題。……方法は色々と模索しておいて損はない」
 この動乱の間だけでも領地から資材の提供が出来るようになって欲しい。領内が困窮するほどの提供は難しいが余裕を持てるならば提供したいという心構えだ。
(……元々、鉄帝で何か起こった時に、助けになれるようにと思って持った領地だ。今が正にその時だろう。
 特に私達イレギュラーズはラド・バウには凄く世話になっているから。まぁ、ちょっとした恩返しといったところだな)
 ゲオルグの提案を受けてビッツは「少し相談させて頂戴ね。ルートを考えるわ」と告げた。
 其れと同時にビッツは声を潜め、彼へと言ったのだった――どうにも、『困ったことに何者かが此方を伺っている気配がする』と。

成否

成功


第1章 第8節

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
社家宮・望(p3p010773)
牛乳プリンは罪の味

 ラド・バウ闘士カリスト・カルクに『激推し』されてしまい牛乳プリンで『パルスちゃんのミルキープディング』を作り続けることになった『無限牛乳プリン製造機』社家宮・望(p3p010773)。
 デフォルメした可愛らしいものからリアルなもの、それから中には自分の熱意(がんぼう)を形にして欲しいと望むものなど様々だ。
 猛者の要望に応えながらひとつひとつを丁寧に作る望の周りにはファン達が集っている。
 ――正直、このギフトは何の為に授かったのか望も分かって居なかった。
 それでも誰かに喜んで貰えることはとても喜ばしかった。美味しくなぁれ、可愛くなぁれと想いと心を込めてプリンを作り続ける望にカリストは大きく頷くのであった。

「今回はラド・バウ派のお手伝いだー! 帝政派としてはラド・バウ派と協力関係が構築できれば良いなーって考えてるからね」
 特に帝都に存在するラド・バウだ。手を取り合う未来があればと『純白の聖乙女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)も願わずには居られない。
「それにこんな時だからこそ笑顔になれる催し物も必要だと思う!
 落ち込んでいる人達が励ましてあげたいしね。私も全力で頑張るよー!」
「やったー! それじゃあ、スティアちゃん、宜しくね!」
 チャリティーライブのアンコールはしとやかな曲も似合うはずだ。後方スタッフ面中の『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は「スティアちゃんがんばれ!」と声援を送る。
 元気と笑顔で多少の失敗には目を瞑って――スティアの持ち歌「God bless you.」の演奏が始まる。

 ――思い出は大事にしまって、明日を切り開いていかないとだね!

 微笑みながらも歌うスティアの様子にうんうんと頷いていた焔はライブ観客達がパンを食べていることに気付いた。
 元気になるためならば出し惜しみはしないと『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)は他国への交易は長期的問題になると、単純にパンの販売を行なうという作戦に打って出た。
 ライブは心の元気に繋がるが、腹が減ってはライブ鑑賞も出来ぬ、と言うわけである。
「安くはしとくから懐にも優しいぜ」
 パンだけではなくドリンク等気軽につまめる商品を用意している零は全てが終わった後にでもパルスのライブで斯うして商品を販売できれば良いなと考えていた。
「プリンもあって、パンもあって、イレギュラーズも舞台に出て……大盛り上がりだよね。
 はぁ、今回は観客としてパルスちゃんのライブは見られなかったけど、ライブの裏側でパルスちゃんやスタッフさん達がどんな努力をしてたのかがわかって今までよりももっともっとパルスちゃんのことが大好きになっちゃったよ!」
 興奮冷めやらぬ様子の焔にリンス達共にバックヤードに居た子供達は大きく頷いた。
「それにいつも素敵なライブを実現してくれてるスタッフさん達にも感謝しないと!
 ――って、今はまだそんなことを言ってる場合じゃなかったね。
 今日のボクはスタッフの一員! ライブが終わってからも後片付けっていうお仕事があるんだから!」
 次もパルスが輝けるように。皆の笑顔のためにしっかりとお仕事をやりきらねばならないと拳を振り上げる焔にバックヤードのスタッフ達は同じように声を上げた。

 喧噪を眺めながら『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は傍らに立った男を一瞥する。
「……なんで伊藤3等陸佐がいるんスか」
「今は3佐ではないしこの国でその3佐は不自然だ、訂正するように。
 それとこの国ではジオルドを名乗っている。趣味で観戦していたことは否定しない」
「……あー、昔からボクシングとか好きでしたものね。い……ジオルド氏。そりゃラド・バウにも来るか」
 傍らに立っていたのはジオルド・ジーク・ジャライムスである。美咲は一瞥してから足元の石ころを蹴り飛ばした。
「佐藤、お前の任務でもあるラトラナジュの火の監視はどうだ?
 南部戦線に撃たれたら幻想の隣国である我々練達にも影響が出るし、新皇帝派などに奪われたら言うまでもない。
 お前に続き俺も追加要員としてこの国に入ることとなった。
 情報を集め必要に応じ連絡する。そちらも報告を怠るなよ」
「……了解でス。適宜対応しまス」
 美咲は考え込むようにジオルドから視線を逸らした。
(ま、対新皇帝派については鉄帝の味方として動くでしょうね。
 ……アレがウチの室長の気に食わない使い方をされる前に空撃ちさせようとか考えかねないのが気になるけど)
 美咲は非主流派と名乗るアーカーシュの実情を彼に情報提供(リーク)しなくてはとそそくさとパルスのライブに行こうとし――
「それより『共に対応する』というのなら私の仕事も手伝ってもらいまスよ。
 ほら、私のレンジャー研修の時みたいに気合満々でしごいてくださいよ。
 さすが鉄帝人に劣らぬ筋肉主義者。楽しそうに走らせまスね。って私も……」
 ――自身も巻込まれたことにたった今気付いたのだった。

成否

成功


第1章 第9節

古木・文(p3p001262)
文具屋
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ソア(p3p007025)
無尽虎爪
ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)
深き森の冒険者

「気づけばすっかり秋になりましたわね。冬が来る前に、食べ物をたくさん貯めておかないと……」
 実りの秋と言えども、領土的には『食べる蓄え』を用意する段階であると『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)はよく理解していた。
「ふふ! そうだね! もうすっかり秋だね。鉄帝の冬は厳しいから、たくさん食べ物を貯めて備えなくちゃね!」
 穏やかな笑顔を浮かべた『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は秋と言えば――と楽しげな笑顔を浮かべたヴァレーリヤに応える。
「秋! それは収穫の季節! ということで、森に入って色々と集めるつもりでございますわー!」
「秋といえば食欲の秋! とも言うからね! よーし! 私も一生懸命たくさん食べ物を集めるよ! 任せておくれ!」
 二人で薪を厚め、動物を狩ることを提案するマリア。鹿などは干し肉にしておくと貴重なタンパク源にもなる。
 薪と言えばと樹をよじ登って行くヴァレーリヤは「マリィ!」と呼んだ。ベリーの入った籠を手にしていた彼女は眸を煌めかせマリアを見下ろし――
「見て下さいまし!こんなに大きな樹の実が……あわわわっ!」
「わぁ!? ヴァリューシャ!? 大丈夫かい!?」
 慌てたマリアに支えられてからヴァレーリヤはほっと一息ついた。「し、死ぬかと思いましたわ……」と呟きながらもその腕にはしっかりと樹の実が抱えられている。
「わ、私も心臓が止まるかと思ったよ……何事もなくて良かった……」
「けれど、たくさん採れましたわねっ! ……ちょっとだけ、持って帰っては駄目かしら」
 冬の寒さをよく知っているから。作物を分け合い、慎ましく生きていきたいと、そう望む。

 そんな二人の下を走り抜けて行くのは鹿であった。リトルワイバーンに跨がり、鹿を真っ直ぐに見詰める『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)の一撃が穿つ。
 動物を狩り、食料や毛皮を手に入れることが出来れば避難民の役にも立つ筈である。
「自分は帝政派に属していますけど、そういう事を気にして困っている人を助けないのは”格好悪い”です。頑張らないといけませんね」
 同じ国ではあるが派閥が割れてしまっている。それは主義や思想、はたまた立地条件などによる分裂だ。
 何時かは手を取り合う可能性もある。それ以上に、人を救う為には分別を付けすぎるのは正しく『格好悪い』なのだ。
 オリーブはモンスターの存在を確認するように上空から俯瞰する。ラド・バウ近くには何者かの気配を察知する者も多い。
「何かありましたか?」
 地上で自然知識を活かして薪を集めていた『結切』古木・文(p3p001262)の呼びかけにオリーブは「『今のところ』は動きはないですが……」と呟いた。
 これから何かあるかも知れない。文もオリーブと同じ現在は帝政派に属している。ラド・バウに世話になった以上、友人の助力と考えての資材集めである。
 帝政派とてこれから何か起る可能性もあるが――この場所は立地的にも危険を孕んでいる。
 リーヌシュカから貰った軍帽を手にし、友好的アピールを行って居た文は願わくば鉄帝国が平和になればと願っていた。
「……これは傷薬、これは熱冷まし、これは痛み止め……」
 薬草を集めていたのは『深き森の冒険者』ルカ・リアム・ロンズデール(p3p008462)。強い魔物が出なければ長期間探索も可能ではあるが、オリーブ達が警戒するように何があるかは分からない。
 出来るだけの薬草を探し、手に入れることで人々の助けになる。
 よく使われそうなものを保存用に小分けにする。説明書きを添えておけば訓練を行なう民達にも重宝されることだろう。
 イレギュラーズと違い、その命は儚く可能性がその足を奮い立たせることもない。
「どうかこれで助かる人がいますように」
 全ての人が救われる未来を願わずには居られなかった。

 銀の森の冷ややかな空気は暖かな気温と共に『雷虎』ソア(p3p007025)の身体を包み込んだ。
 故郷である銀の森での狩りは『元の姿』で行なう方が自身には合っている。……あまり、見られたくはない姿ではあるけれど。
 するすると木々の囁きに耳を傾けながら獲物を探すように駆け抜ける。
「食べ頃の子はいるかしら? たくさんお腹を空かせているの」
 縄張りに変えるのは久方振り。だからこそきっと『大物』も沢山育っているはずだ。兎、いや鹿か。それとも熊も喜ばれるだろうか。
 誰かの笑顔を思い浮かべればソアの頬も緩む。雪を踏み締める前足も後ろ足も、自由に動けば心地良い。
「こうしてると昔を思い出すね」
 それでも今は沢山獲っても分け合う仲間が居て寂しくない。ソアは人間だ。人間は仲間を助けるものだと学んだ。
 お腹を空かしている人々のために張り切って狩りを行なおう。誰かの助けになるのだと信じて。

成否

成功


第1章 第10節

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
スースァ(p3p010535)
欠け竜

 訓練前にまずは避難民の治療を、と。一通りの確認を終えた『紅矢の守護者』グリーフ・ロス(p3p008615)は彼等と向き合った。
 回復スキルについての実地での確認は避難民達に一定の信頼を与える。その上で訓練に協力できればと考えたのだ。
「それでは、よろしいでしょうか」
 グリーフが『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)に頼んだのは一撃を自身に投じて欲しいという事であった。グリーフは自身の堅牢さを彼等に見せることで『自分が的になる事』への信頼を得たかったのだ。
「よろしいですか? 他人に手を上げること、傷つけることは、できる方もいますが、人によってはとてもハードルの高いことです。
 向き不向きがあります。
 誰かを害することになっても守りたいか、そうではないか。それを知ってもらえれば。
 そのためにどうぞ私へ剣を、拳を振るってください。戦う以外にも、できることはあります」
 自身の得手不得手を確認するためだと告げたグリーフの傍では義弘は「そうだ。やれることは山ほどある」と頷いた。
 自身の様なヤクザ者では戦い方もまともとは言えないと前置きをした彼は真摯に避難民達へと向き直る。
「まずは周囲を良く見て、状況を把握しろ。そしてできる限り単独で戦おうとしない事だ。
 ラド・バウの闘士が群れて戦うなんて、とか思ってるんじゃねえぞ」
 ラド・バウは正々堂々とルールを守る場所だ。だが、実戦ではそうとはならない。示し合わせて戦闘が起るわけでもない。
「俺達が戦うのは戦えない人間を守る為、だけじゃなく自分自身が死なねえ為だ。
 自分が死んじまったら、守れねぇし酒も飲めねぇし、パルス達のライブも見れねえぞ?
 分かったら、死にたくねえなら隊列を組め。仲間と連携して敵を排除しろ。囲んで、側面から敵を叩け」
 そう言う状況に毎回出来れば良いんだがと呟く彼に背筋を伸ばした民達は「はい」と頷いた。
 避難民達の様子は様々だ。自警団を組んでおかねばこの地は敵地のまっただ中であると言う事情さえもある。
『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は穏やかに声を掛ける。革命派は人道を優先する者達だ。
「特に我々は、万人の救済を掲げている立場だ。力を貸しにきたよ。
 ……宣伝活動と受け取られるのは心外だが、そう考えたいのであれば、好きにするといい」
「大丈夫よ。ローレットの宣伝なら何時だって受け付けてやるから」
 受けるだけだけれどとビッツが唇を三日月の形にして笑う。ルブラットは避難民達へと効果的な応急措置や救命の方法を教えることとしていた。
「実戦能力も重要であることには変わりないが、案外こういう知識こそが生死を分かつ時もある。
 非力さを嘆く者にも、出来ることはあると……」
 伝わるわよ、と返したのは『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)であった。待ち合わせのように周囲を見回す夜の娘は大仰に嘆息する。
「ガチの道楽商人が本腰入れてくれるんじゃあ。200万の金融でも誤差ですかねえ……はぁ。
 ……資産には自信あるんですが相手が悪い。ま、節約できましたね。ってことで……」
「アレに勝とうとするなら結構なことよねぇ」
 ビッツがクスクス笑えば「ですよねぇ」とリカは肩を竦めた。彼女の眷属は此処に向かっているであろうか。
 一先ずは時間潰しだ。リカは避難民達に教導を行なう。
「私の剣術は誰にも頼りません。一人きりであろうと生き残るための力です…このご時世なら役に立つでしょう――さあ、殺す気で殴ってください?」
 耐え続けることで、避難民達に教導を行える時間を延ばす。そして、確実なる強みを見せるのだ。
「生き残る為には何よりも体力、そして確実に急所を狙う事です、そして追撃で確実に……ん?」
 ――瘴気(フェロモン)が民達を消耗させたか。肩を竦めたリカにルブラットが回復で民達を支援する。
「お疲れならば此方で陣地構築の方法を実施しましょう。戦闘以外の協力の仕方も座学として如何でしょうか」
「座学ならば此方でも」
『群鱗』只野・黒子(p3p008597)と『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)の声かけに休憩時間には丁度良いかと移動する民もいる。
 予め訓練であると言うことを宣言し、瑠璃はイレギュラーズ・レコードを読んで聞かせた。自身等の相対する敵の強さをしっかりと理解して貰う為だ。
 黒子は自信のノウハウを実演しパーツを予め造り必要な場所に置くだけでも十分だと苦労の分割を提案した。
「荷車や背負子で持ち運べるサイズなのが望ましいですね。
 玄関先に『頑丈なテーブルと椅子』を置き、それを倒してバリケードにする、というのも良いかと。
 予め裏に鉄板打ち付けておいて、その裏に土嚢を積めばそれなりにはなるでしょうし」
 ラド・バウに存在する備品などでもバリケード造りには向いているはずだと黒子は言った。
「ああ、ですが、あまり信頼しすぎず、後退する時に背中を撃たれにくくする程度です。
 ここらの『強者』はそういうのを簡単に粉砕してしまいますし……。
 後は日頃のランニングを欠かさずに、自力で逃げられれば、戦うべき人が戦う余裕ができますから」
「というわけで座学の次は運動の時間です。基本、すばやく避難できるかどうかを見ていきますが、迎撃や足止め、救援を呼ぶなど。
 危機に対する対処を考えて行っているかも評価ポイントですね」
 生き残る術は言葉だけでは伝わりきらない。身体を動かしてこそだと瑠璃は告げた。
「こんな我流で宜しければ、幾らでも協力は惜しみません。派閥などは知りませんが困った時はお互い様でしょう?」
 避難民達に防御の訓練を行なうと『ぬくもり』ボディ・ダクレ(p3p008384)は穏やかな物腰で彼等に告げた。
 生きる為に逃げてきた彼等に必要なのは『勝つ』事ではない。『死なない』事である。
 剣でも槍でも魔法でも。グリーフやリカと同じく自身が防御を行ないその攻撃の受け流し方を教えるとボディはその身を張る。
「暫くしたら私が攻撃役になって避難民が実践できるか試行させて頂きますね。大丈夫です攻撃力は低いので」
「で、でも……」
「勝つにしても逃げるにしても、まず攻撃を防がなければ始まりません。生きる為に、徹底的にです」
 死にたくないならば痛みを越えなくてはならない。凜とした声音で告げるボディに民達は覚悟を決めたように走り出した。
 イレギュラーズと違って、可能性は彼等に味方はしない。『欠け竜』スースァ(p3p010535)は負傷というハンデがあれども戦いたいと言う者が居ればアドバイスしたいと声を掛けた。
「困ってる人いるんなら放ってはおけないだろ?」
 その為ならば派閥は関係はない。スースァは隻腕であれども戦う事は出来るのだと実戦訓練を行って居た。
「敵をなるべく戦いやすい方向におさめるとか色々あるけど……。
 まぁほら、隻腕でもこんだけ戦えるの見せるってのは、励ましにもならないか? なったらいいな」
 何かあれど生きるという希望さえあれば戦える。此処に居るイレギュラーズ達と『カバーし合う』戦法もしっかりと叩き込んでおくべきだ。
 まだまだ彼等には難しいことばかりであろう。
 だが、甘えたことばかりは言っていられない。危機は直ぐ其処まで迫ってくるのだから――

成否

成功

PAGETOPPAGEBOTTOM