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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>日進月歩はキミとなら

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ラド・バウ独立区からの提案
 熱狂の渦は鳴りを潜め、避難民を受け入れるために開かれた門の前には闘士達が門番のように立ち塞がる。
 観戦チケットは存在しないが、此れを機に暴動を起こす不届き者達を彼等は許すことはない。
 常ならば興奮したように眸を爛々と輝かす観客達も今は怯え竦みながら救いを求めるようにこの地を訪れていた。

 鉄帝国の象徴ともされる大闘技場ラド・バウ――その場所は現在は独立した立場で運営されていた。
 目標は『ラド・バウはラド・バウであれ』である。
 その為に通常通りの運営が行われ、イレギュラーズ達のチャレンジマッチも連日行われている。
 だが、国家の転覆とも揶揄される未曾有の事件への対処に手を拱いては居られない。

「報告するね!」
 メッセンジャーとして『炎の御子』 炎堂 焔 (p3p004727)が告げたのは幾つかの提案であった。
 耳を傾けるのは焔が大ファンでもあるラド・バウ誇るアイドル闘士、パルス・パッション (p3n000070)その人だ。
 多忙を極める ビッツ・ビネガー (p3n000095)に代り彼女が意見を纏め上げ、各地に奔走してくれるらしい。
「決定事項は資源確保のための炊き出しや、資源確保のためにチャリティーを行って外部に働きかける動きを始める事だよ」
 短期的な改善案は様々存在するが、その中でもパルスが直ぐにでもと働きかけたのは個人的ツテによる解決策である。
 これは『陰陽式』 仙狸厄狩 汰磨羈 (p3p002831)が言う通り侵略国家である鉄帝が敵対する幻想や天義以外の国家への救援要請だ。
 現時点でシレンツィオの対策に追われる海洋は『不凍港』を使用したとしても支援は受けられず彼女も省いている。
 ならば、海路を更に擁する豊穣や大打撃を受けたばかりの深緑、まだ未開拓と言える覇竜も選択肢の外だ。
「汰磨羈ちゃんたち皆の提案を受けて先ずはボクがライブの資材調達で時々お世話になるラサの商人さんに声を掛けたよ」
 それはラサの大商人であるファレン・アル・パレスト(p3n000188)のことである。
 パルスからの提案を受けての支援ではあるが『イレギュラーズへの支援』として個人的に協力を申し入れてくれたそうだ。
 それは派閥に関わらず少量ずつ備品の支援を行う代わりに輸送ルートの確立はイレギュラーズに任せるという意味合いを含んでいた。
 安定した仕入れルートの確保は『筋肉こそ至高』 三鬼 昴 (p3p010722)の言う通り優先度が高い。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ (p3p000854)曰く『レイディ・ジョンソン』などの顔見知りに協力を要請して出来るだけの備蓄を掻き集めておきたいのが現状だ。
「フリークライさんが言ってた家庭菜園とかは今からラド・バウの敷地内に整備しても良いかもしれないね。
 あとね、焔ちゃんが言ってた狩りなどの資材確保は今からでもやっちゃった方がよさそう!」
『水月花の墓守』フリークライ (p3p008595)の家庭菜園の提案や『玉響』レイン・レイン (p3p010586)の保護した観客達との食料整備は長期的目標となる。

「それから、ビッツ達とも話したんだけど焔ちゃんが提案してくれたライブはボクもばっちり頑張るね!
 で……ボク達の救世主を表彰していこうと思います!
 ――と、言っても頼り切りにすると24時間ブラック労働に一直線だから少しだけ協力してね?」
 パルスがお立ち台に呼び寄せたのはパン屋の屋台を引いてやって来た『恋揺れる天華』 零・K・メルヴィル (p3p000277)、彼のギフト内容を聞き水さえあれば葡萄酒を作り出せる『アーリオ・オーリオ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン (p3p010347)、ティーパーティーセットを呼び寄せることの出来る『ょぅι゛ょ』ルシア・アイリス・アップルトン (p3p009869)である。
「パンを呼び出すギフトと、葡萄酒を作り出せるギフトと、お茶会セットを用意できるギフトを持った三人だよ!
 おいしいパンと葡萄酒、それからティーセットで少しは凌げる可能性があるよね」
「……たべものギフト、こんな時に役に立つとは……英雄なのでは?」
「ユーはこういう時ホントに最強だな!」
『瀉血する灼血の魔女』 ルトヴィリア・シュルフツ (p3p010843)と『喰鋭の拳』郷田 貴道 (p3p000401)に零は胸を張る。
「寧ろこーゆう腹が減ってる時こそ!
 俺のギフトが光るってもんさ。まぁさすがにそれだけだと栄養は偏っちまうが、その辺はまぁどうにかなるだろ。
 葡萄酒のアルコールは?」
「一旦加熱すればアルコール自体は無くなるかと。度数を高めれば燃料の代わりになるかも知れません」
 アンジェリカに「暖をとるならボクもギフトがあるよ!」と焔はにんまりと微笑んだ。
「ルシアが用意できるのは飲料と趣向品ですので! これで食の面完全コンプリートでして!!!」
 にんまりと笑ったルシアに「食糧問題……これで、解決、だな?」と『金色凛然』 エクスマリア=カリブルヌス (p3p000787)も頷いた。
「三人に頼りきりで、人が増えたら過労死しちゃうからそれでも当面の準備は整えなくっちゃね。
 皆が言うように冬が来ちゃうと……鉄帝国民は鉄騎種が多いから過酷な環境化にも耐えられる可能性は高いけど、他の種族は――」
 ラド・バウの次の課題は『居住スペースの確保』だ。此の辺りはまだまだ派閥内での相談を行う事になるだろう。

「それで、皆にお願いしたいのは資材の確保と、避難民達の中で自警団になる事を希望する人達の訓練教育だよ。
 少しずつでも『ラド・バウ独立都市』としての形を整えて、危機に対抗できるようにならなくちゃならないから……。
 協力してくれる? 勿論、僕のライブを見に来るだけでも大丈夫。こんな時だからこそ、皆で手を取り合わなくっちゃね!」

GMコメント

 ラド・バウ派でのラリーとなりますが、別派閥の方もお気軽にご参加下さい。
(報酬は平等に配られますので、自派閥で自由に使用可能です。あくまでもラド・バウ派の提案から出るラリーとなります)

●目的
『ラド・バウ独立区』で資材を集めよう!
『ラド・バウ独立区』の避難民で自警団希望者に稽古を付けてあげよう!

●ラリー
 当ラリーは1章または2章までの構成で運営される予定です。

 ・参加時の注意事項
 『同行者』が居る場合は【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイングにご記載下さい。
 ソロ参加の場合は指定はなくて大丈夫です。同行者の指定記載がなされない場合は単独参加であると判断されます。
  ※チーム人数については迷子対策です。必ずチーム人数確定後にご参加下さい。
  ※ラリー相談掲示板も適宜ご利用下さい。
  ※やむを得ずプレイングが失効してしまった場合は再度のプレイングを歓迎しております。

●プレイング書式
1行目:(活動選択肢)
2行目:同行者指定
3行目:活動場所の指定があれば記載

例:
【1】
パルス・パッション (p3n000070)
ヴィーザル

●活動
 下記説明は一例です。比較的自由に動いて頂けます。

【1】資材集め
 ラド・バウ周辺及び、少し脚を伸ばした鉄帝国のエリア内で狩りや資材確保を行います。
 場所によってはヴィーザルの入り口や銀の森など他派閥に近い場所での活動も可能です。
 場所の指定が有る場合はプレイングにご記載下さい。
 資材集めを外で行う際にはモンスターや敵対対象と出会う場合も有ります。戦闘が発生する可能性にも留意して下さいね!

【2】ラド・バウ避難民訓練
 ラド・バウ周辺で魔種やモンスター、荒くれ者に襲われていたことで身を寄せた避難民やD、C級の闘士達への訓練を行います。
 ラド・バウ内部もしくは外周付近であり危険はそれ程多くありません。(実戦訓練ではモンスターを相手にします)
 避難民&闘士の中には知った顔(関係者)も居るかもしれません。
 彼等は、ラド・バウを維持するべく尽力する者達です。優しく教えてあげて下さい。

【3】パルスちゃんのライブ
 皆を元気にする為にやって来ましたパルス・パッション。
 何時も通りのチャリティーライブを行います。元気を与えるために歌って踊りますので一緒にチャリティーライブで詠って下さる方や踊って下さる方、演奏して下さる方も募集中。
 勿論、ライブの観客や、ライブの警備を行う方も募集です。

【4】その他(各国への支援要請)
 各国に働きかけるなどがあれば此方へ。現時点(9/28)での国外情勢です。パルスちゃん調べ

 幻想:敵対国。アーベントロート派にて動乱が起っているようです。冷戦状態です。
 天義:敵対国。現状では鉄帝国からの侵略は行われず、冷戦状態です。
 練達:中立国。何処に対しても練達は中立スタンスをとります。
 海洋:元・敵対国。グレイス・ヌレでは戦争を行いましたが、海域踏破の際の協力国です。シレンツィオでの動乱対処中。
 傭兵:中立国。傭兵と商人の共同体であるため、スタンスは『依頼があれば』です。
 深緑:(不明)。幻想種達は交流を好まないため、鉄帝国へのスタンスは不明です。
 豊穣:(不明)。海を隔てていたため鉄帝国との交流は行われていません。また、海路は海洋の協力が必須です。
 覇竜:(不明)。現時点では未踏の国家であった覇竜は関わりがありません。

 上記はあくまでも国家のスタンスであり個人(関係者や依頼での協力者)全てがそうであるとは限りません。

(10/02追記)
 外交に関しては各国スタンスを含め、個人的な案件でもとても難しくなりがちです。
 その為「荷を運ぶ」という確定した内容ですと採用が難しくなる場合も有ります。
 ※交渉などは採用し、返答させて頂くなどアクションをご準備致します。

●NPC
 ・ビッツ・ビネガー
 ・パルス・パッション
 この二名はこのラリーでお声かけ頂けます。
 また、他NPCにつきましてはご希望にお応え致しかねる場合がありますのでご了承下さい。

●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <総軍鏖殺>日進月歩はキミとなら完了
  • GM名夏あかね
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月20日 13時40分
  • 章数2章
  • 総採用数108人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

「皆、お疲れ様。ライブも盛り上がったね! 定期的に開催していっても良いかも!」
 にんまりと微笑んだパルスははっとしたように闘技場の入り口を見遣った。其処には悩ましげな顔をしているビッツ始めラド・バウの闘士達が立っている。
「ああ、アンタ達。聞いて頂戴。
 外で資材集めしていた子達が目にしたことなんだけどね……いやね、どうやらコッチの様子を伺ってる奴らが居るみたい」
 気味が悪いと肩を竦めるビッツはそれが『新皇帝派』ではないかと推測していた。
 ラド・バウは帝都に存在している。それ故に『最も危険地帯に存在している』からこそ『避難民の受け入れが多くある』のだ。
 避難民達の自警団化や自らを護る為にと、早期にラド・バウが動き出したのもそうした事情が起因している。
「……避難民の護衛をして入りたい子はさっさとお招きした方が良さそうね。
 この周辺が更に危険になる可能性は十分にあるわ。アンタたち、一寸頼まれてくれる?」
 ビッツからの頼み事とは―――

=====
★二章情報
『資材集め中に索敵し得た情報』による追加項目となります。
 下記の『●活動』より行動をご選択下さい。

●プレイング書式
1行目:(活動選択肢)
2行目:同行者指定(なければ未記入でOKです)

例:
【1】
パルス・パッション (p3n000070)

●活動
【1】周辺警戒
 どうやらラド・バウ周辺に何らかの人影やモンスターの襲来が確認されています。
 人影は『ラド・バウの動向を伺っている』ようです。ビッツは『新皇帝派』ではないかと考えているようですが情報は不完全だと言えます。
 どの様な者達が動向を伺っているのか、ラド・バウに対してどの様なアクションをとるのか。調査を行ないましょう。
 また、モンスター達はノーマル相応難易度の敵となります。比較的容易に撃破できるような弱いモンスターが周辺まで『逃げて』来ているようにも思えます。
 避難民達が巻込まれぬように撃破してあげましょう。

【2】ラド・バウ避難民訓練
 ラド・バウ周辺で魔種やモンスター、荒くれ者に襲われていたことで身を寄せた避難民やD、C級の闘士達への訓練を行います。
 ラド・バウ内部もしくは外周付近であり危険はそれ程多くありません。(実戦訓練ではモンスターを相手にします)
 避難民&闘士の中には知った顔(関係者)も居るかもしれません。
 彼等は、ラド・バウを維持するべく尽力する者達です。優しく教えてあげて下さい。

【3】護衛送迎
 避難民をラド・バウ内部まで護衛してあげましょう。
 モンスター達の襲来が予期されている事もあり家財等を諦めなくてはならないかと彼等は落胆しています。
 そんなスチールグラードの民達をラド・バウの安全圏まで護衛してあげてください。家財などは運んであげてもよいかもしれません。

それでは何だか焦臭くなってきましたが、どうぞ宜しくお願いします。

=====


第2章 第2節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
カイト(p3p007128)
雨夜の映し身
雨紅(p3p008287)
愛星
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ

 ――有り難う、イレギュラーズの皆! ライブは大成功!
   けど、少し周辺が怪しそうだね。警戒しておいた方が良いかも。此処って、新皇帝派の拠点の近くだし。

 パルス・パッションの言葉を思い出し、隠密行動を行なう『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は嘆息した。
「せっかくライブで盛り上がったのに、水を差すようなコトは困りますね」
 ラド・バウは帝都にある。ある程度の景観維持のために後方に広がる森や周辺家屋には疏らな人影が見えた。
 それらが避難民であるかパルスが警戒している存在であるかは定かではない。常に物陰に隠れられるようにと意識する雨紅が行なうのは隠密での追跡や情報収集だ。
(冬前にこの動乱は静まらないでしょう……せめて、ここを守り切り乗り越えられるよう、備えねば)
 越冬を見越せば、出来るだけ動乱を鎮めておきたい。だが、そうとも言って居られない状況であるのも確かだ。
 がさがさと音を立てて歩く者達は、あまり戦闘に慣れている雰囲気ではない。だが、此処を斯うして歩き回っているならば――?
「僕ちょっと友達と過ごせなくて怒ってて、八つ当たりしたい気分なんだよね。とっとと細切れになってくれない?」
 苛立ちを滲ませた『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は木陰から姿を現した男を睨め付ける。
 男が連れていたのは天衝種(アンチ・ヘイヴン)と呼ばれるモンスターか。ヘイトクルーの揺らめく陽炎を前にして、『願望器志望の魔術紋』はその指先に気糸を魔力で練り上げる。
 機銃による激しい乱射が降り注ぐ、その全てを絡め取るようにして気糸はヘイトクルーの身体を切り裂いた。
 夜の星の破撃(ナハトスターブラスター)の神秘的破壊力を駆使すれば、周辺全てを粉々にしかねない。
 気糸を手繰るヨゾラは出来る限り調査に赴く者達の支援となるように対象を選別し、外敵の殲滅に当たっていた。
「接近を行なうのは天衝種ですか。成程」
 それを追従させる人間はいてもあくまでも様子見でしかなさそうだと『群鱗』只野・黒子(p3p008597)はあからさまな誘引は相手側にも情報収集に当たっている事が露見するのではないかと考えていた。
 堕天の輝きはモンスター達を呪う。淡々と、敵の動向を見定める黒子は天衝種達は『帝都』である以上は無尽蔵に此方を攻めてくると考えても良さそうだと認識していた。
 ラド・バウが現状で無事な理由も闘士達の数が多く、一筋縄では行かぬ場所であるが故だ。だが、同時にラド・バウは他派と比べれば外部に救援を求めづらい立地である事が認識できる。斯うして『戦闘にもなれて居なさそうな何者』かが統率されたように天衝種を嗾けるのもそうした理由があるのだろう。
「新皇帝派らしき人影の動向も気になりますが…変に警戒されて尾を隠されても困るので、まずは目下モンスターへの対応が急務という事ですね」
 目視で周辺警戒を行って居た『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は輝剣『プリンセス・シンデレラ』を握りしめる。
 国を代表するプリンセスに贈られるというそれを握る彼――否、彼女と表記しておこう――はオーロラに発光した半透明の刃を天衝種ラルグへと突き立てる。
「こちらは"今回の目的はあくまでモンスター討伐のみ"というていで、派手に暴れさせていただきます!」
 地を踏み締め、闘志を滾らせて雷撃に変換する。『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)は首を捻る。
「まぁ近所に親玉の巣窟が有る以上、ラドバウには避けて通れない問題ではあるんだが。
 ……モンスターが『逃げて』来てる? 追い立てられてるのか?」
 偵察を兼ねてこの地までやって来たカイトの前ではラルグと相対するトールが戦闘を続けて居た。気配を隠し、その様子を眺めれば何となく状況は読み取れるだろうか。
(モンスターを連れてる奴らは戦闘は素人だな。……けど、焦ってるようにも見える。
 此処を攻めるように指示されたのか? それとも更に強力なモンスター、いや『新皇帝派』がバッグに居て天衝種が怯えてるのか)
 悩ましげなカイトの傍で『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)は「魔種の前じゃ天衝種も子猫のようなものなのかもしれないな」と呟いた。
 勢い良く雷撃を放った大太刀を振り下ろす昴。昴とトールがカイトの護衛役に当たっている現状では『新皇帝派』の手のものは姿が見られない。
 だが、戦闘に不慣れな男と天衝種の背後にはそうした存在が潜んでいることは確かなようだ。

成否

成功


第2章 第3節

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫

「パルスちゃんのライブのおかげでせっかく皆が楽しい気持ちになれてるのに、ここでまた不安にさせちゃうわけにはいかないよね」
 ラド・バウ周辺には分かり易く脅威になるモンスターが存在している。避難民の中には縋る気持ちでここまで遣ってきた者も多いだろう。
 彼等に安心して貰う為にはただ勝つだけではなく、分かり易く派手に『イレギュラーズは強い』事をアピールしておきたい。『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はにんまりと微笑んだ。
「大丈夫。ボク達は強いから」
 ラド・バウはショーを見せる様にあくまでも平常運転だ。突如として破壊された日常を取り戻すように生活を立て直そうとする避難民達を安心させるべく焔は前線まで飛び出す。
(それにしても、どうしてこんな所までモンスターが? なんだか逃げてきてるみたいにも見えたけど……だとしたら、何から?)
 例えば――魔種?
 焔の傍らをするりと抜けて行くのは魔力の糸。限られた物資を購入などし、空中庭園で運び込めども僅かな量となってしまうだろう。
 だが、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は自身に協力をと申し出てくれる人が居た。シレンツィオの動乱が収まれば、きっと、頼ることも出来る筈だ。
 それまでは成せることを――「敵は殲滅する。全部切り刻む……!」
 どの様な思惑で誰がこの場所までやって来ているのか。其れを見極める必要もあるだろうが、ラド・バウにまで敵を到達させないことが一番の目的だ。
 地を走る傀儡を繰る糸。祝音と焔がモンスターと相対する横をすり抜けて『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は単独での調査を行って居た。
(ミーが戦闘を避けるためには仲間達の協力が不可欠か。一人でも複数人タッグの気持ちだな)
 調査結果は持ち帰らなければ意味が無い。持ち帰る場所を護る者、足止めを行なう者。そうした仲間達の尽力を受けて貴道は林の奥へと辿り着いていた。

 ――……ですが、………。

 人の声か。貴道の視界に僅かに入ったのは紫色の男であっただろうか。その背には特徴的な鳥を思わせる骨のみの翼が存在している。
 貴道の気配を察してか、突如として飛び出してきた天衝種に『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が「来る」と囁く。
「あーーーら! 全く! 何処まで木の実取りに行ってるのよ! それともアタシとデートしたいわけ?」
「ビッツ・ビネガー――!」
 ゲオルグが情報共有を行って居たのはビッツ・ビネガーその人か。貴道が振り返ればビッツは「一寸帰ってきなさいよ。鍋を運んで欲しいのよ」と素知らぬ顔で告げ、早足で歩き出す。

 少し時を遡り、ゲオルグはビッツへと相談を持ちかけていた。
「他の派閥は現在のラド・バウ独立区とは関係を悪くはしたくないだろう。
 そうなれば新皇帝派の可能性は高いとは思うが、予測だけで終わらせておくわけにはいかんな」
「他派閥は敵じゃないわ。だって、同じイレギュラーズでしょ? 後々手を取り合う可能性はあるとアタシは認識してる」
 周りが受け入れてくれるならば、と告げるビッツにゲオルグは頷いた。不審な人影が新皇帝派であれど、他派閥に罪をなすりつけようとする可能性があるとゲオルグは考えていたからだ。
「今、鉄帝は複数の派閥に分かれてしまっているが、いつかはなんらかの形で一つになるだろう。
 その時、お互いに疑い合った、争い合ったという事実はきっと溝や枷になる……味方になれる者同士で争うわけにはいかないのだ」
「アタシも同じ意見よ。そうね、もしも『敵だ』とアタシが持ってくるなら……革命派かしら」
 穏健派と呼ばれるクラースナヤ・ズヴェズダーはさておいても革命派は急進的思想の持ち主だ。何事にも構わぬ動きをする可能性さえある。
 ビッツにゲオルグは緩く頷いて「そう仕掛ける相手は『絞れそうだ』な」と呟いていた。

「ビッツ、見たぜ」
「何を?」
「――魔種だ」
 貴道の言葉にビッツは「警戒しなくちゃね、人を護るってのも大変だわ」とその背を叩いた。

成否

成功


第2章 第4節

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ナハトラーベ(p3p001615)
黒翼演舞
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)
瀉血する灼血の魔女

「―――」
 空似燦々と輝く太陽は秋を孕みやや肌寒い。『黒翼演舞』ナハトラーベ(p3p001615)は唐揚げを一口頬張ってからまじまじと眺めていた。
 憎まれっ子世に憚ると言うべきか、不審者の影は大胆不敵だ。地に影も映らぬほどの高空で太陽の傍に控えるが如くナハトラーベは見下ろしている。
 鉄の脚と機動力に支えられたナハトラーベは森の中で追跡を行って居た。
 先程、貴道の元に直ぐにビッツが追い付いたのはナハトラーベによる『追跡』のお陰だ。木陰に隠れて全容が知れぬのは確かだが魔種が周辺に姿を見せていることを知れただけでも僥倖か。
「魔種が居る?」
「うん、魔種もメロメロにして欲しいそうだよ」
 適当なことを言うと唇を尖らせたのは『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)。
「……折角楽しい訓練してたのに頼み事? 仕方ないわねえ。じゃ、あとは任せたわよ」
「任せてね!」
 にっこりと手を振ったパルスにリカは肩を竦める。パルス達は避難民誘導にも忙しそうだ。外敵を排除しながら、出来る限りその手伝いをして欲しいと言うのがパルスたっての願いなのだろう。モンスターを却けていれば『様子を伺っているだけの魔種』は攻めては来ないはずだ。
「ほら、ボウヤ……お姉さんの側にいなさい♪ ホントは色々と挟んであげたいケレド……いひひ」
「お、おねえさん」
 グローカスと名乗った少年は蕩けるような目をしてリカを見上げていた。少年を追掛けていたのは天衝種と其れを連れていた『人間』か。
「……あら、怖い目。貧乳派かしら……そこまでしないと弱い者虐めできないなら魔種の真似なんてやめなさいよ」
 下がってなさいな、と優しく声を掛けたリカはグローカスを庇うように立ち、眼前の男を睨め付ける。
「闘士ばっかり集まりやがって……!」
「そう言う場所じゃない」
 肩を竦めるリカが一度目を伏せる。暗澹たる森からするりと飛び出したのは『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。
 中立を掲げたラド・バウ。他派閥からの偵察に警戒をするモカは目の前の男が戦闘慣れしていない乍らも武器を握りなれていることに気づく。
 黒豹(Pantera Nera)の牙を突き立てるようにその頸筋にまで迫ったモカは「何者だ」と囁く。
「……ッ」
 身を固くした男は惑うように「革命派だ」と告げた。その言葉を耳にして『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)はやれやれと肩を竦める。
「わざわざ偵察に来た人間が所属を言う筈がないじゃないですか。
 追い立てられて此処まで来たモンスターを見れば、只の人間の仕業じゃないだろうことも推察できますし」
 ルトヴィリアの言葉に男は舌を打った。どうやら、各地に分れているイレギュラーズを内部分裂させることも狙いか。
(そういう事を考えそうな魔種が居るとも聞いたな。しかも、革命派に一枚噛んでいそうな――)
 イレギュラーズとは因縁浅からぬ男。ペストマスクを付けヴィーザルに姿を現し、内部から引っかき回そうとする嫌らしい『砂蠍の右腕』だ。
 モカは「大人しく立ち去れば見逃してやろう」と囁いた。男が武器を取りこぼしてから後退する。
「バックに誰か居るんですか?」
「居るだろうな」
「……ろくでもない相手じゃなきゃいいんですけど。
 レベル、下がってますからね、あたし。ヤバそうな相手なら皆さんや闘士達、訓練してる人たちにも撤退促して逃げますからね?」
 ビッツも偵察に出掛け始めたというのだから、ルトヴィリアが感じた警戒はそうそう解けるものではないだろう。
 治癒の術を教えた『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)に訓練を受けていた者達は「手当に回ります」と堂々と宣言していた。
 荒事に対して出来る限りの対処をしておきたいと考えたシルキィは上空より周辺の人物の警戒を行って居る。
 モカが見逃すことに決めた男が何処に戻って行くのかも注目すべき点ではあった――だが。
「あ」
 シルキィが息を呑む。男の姿が掻き消えたか。否、雷が劈くようにして男を射貫き木へと磔にしたのだ。
「雷……?」
 その攻撃がモンスターによるものではなく、人によるものだというのは一目瞭然であった。黒いローブが揺らぐその姿だけをシルキィは見下ろしていた。
 ラサからの僅かな支援物資を受け入れていた『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)ははっとしたように息を呑む。
「そうか、ラサから銀の森を通って物資を運ぶとなれば必然的に銀の森に住んでいる子たちが巻き込まれる。
 戦闘を起こさない、巻き込まないような安全の確保は必須ね。……と言うわけで、来てみたのだけれど」
 オデットが慌てて訪れたのは銀の森であった。その地にはラサの温暖な空気が吹き込み非常に心地よさだけが溢れている。
「オデットちゃん、こちらです。あ、『ちゃん』を付けるべきだと習いました」
 オデットを呼び寄せたのはエリス・マスカレイド。銀の森の精霊女王その人だ。
 彼女曰く、銀の森は『銀泪の間』と呼ばれるエリスの固有領域が存在しており精霊達はその中に避難しているらしい。
 だが、戦火を免れなくては森が被害にあう。其れは避けて欲しいのだと彼女は苦しげに語った。
「任せて頂戴。皆が巻込まれないように情報を集めておくわ」
「はい。銀泪の間をイレギュラーズちゃんに解放しますから、皆さんでこの地を護って下さいね」

成否

成功


第2章 第5節

イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)
薄明を見る者

 ライブが終わってもやることは山積みだ。パルスは「今度一緒にライブしようね!」と『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)と微笑んでいたが、アイドル活動だけでは騎士は務まらない。
「久々の荒事ね。しかし……不安を彼らに抱かせる訳にはいかない」
 レイリーの前を行くのは『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)とレイディ・ジョンソンその人である。
 誰かの笑顔を護るのはアイドル活動だけではない。そう、戦場でだって花開くような笑みを護る為に戦い続ける必要がある。
「もう心配いらないわ。私が来た!」
 馬上で旗を掲げるイーリンと共にレイリーは手を差し伸べる。天衝種をやり過ごし、直ぐにでもラド・バウへ向かわねばならないのだ。
「大丈夫です、ラド・バウまで護ります。家財道具はイーリンの馬車の中へ」
 騎兵隊の筆頭二人がやって来たと旗を掲げるイーリンが振り向き、レイディの名を呼んだ。
 ひらひらと手を振ったレイディは眼鏡のブリッジに手を掛けてからうっとりする程の笑みを浮かべ余裕を見せる。
「レイディ、避難誘導と馬車は任せた! 私とレイリーが抑え込む!」
「もちろん! おいしいご飯を食べてくれる人が増えるのは私も嬉しいから。頑張って手伝っちゃう!」
 治癒魔法での初期治療。それからイーリンの準備したチャリオットに家財や荷物を載せて住民達を運ぶ事こそがレイディの役割だ。
 家財道具も思い出も、どれも失いたくはない者である筈だ。
「守るでしょう、私たちはそう決めた、レイリー!」
「ええ、この先は行かせないわ! 迂回禁止よ! ――そうよ、シスター! 絶対護って見せるんだから!」
 イーリンと心の中で名を呼んだレイリーにイーリンは「行くわよ」と吠えた。護るべきが何であるかは何方も知っている。
 牙を突き立てるようにして、行く手を遮る物を払い除けて行く。
「お疲れ様」と手を振るレイディに気付き、ふと、レイリーは問い掛けた。
「レイディ殿、炊き出しとかそういう活動を? 貴方なら他にも道はあると思うのですが」
「え? どうして炊き出しって……だって、皆で食べるご飯は美味しくて。皆助けたら、皆幸せだわ! そうでしょう?」
 戦う以外の道――それを示すかの如く、天真爛漫に微笑んだレイディにイーリンとレイリーは顔を見合わせた。

「苦労しましたのね。でも、もう大丈夫でしてよ。私達がきっと、無事に送り届けて差し上げますわ。ねっ、マリィ?」
 家財道具を背負っていた父親に、泣きべそを掻いた小さな子供。ボロボロになったぬいぐるみを抱き締めた少女ルルアの手を引くのは兄のロイ。
 彼等の家財道具を馬車に乗せて『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は穏やかに微笑んだ。
 そんな彼女の笑みに『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は胸をぎゅうと押さえてから「勿論だよ!」と声を掛ける。
「皆とても大変だったろうけど、後は任せて! しっかり皆を守るよ! 家財も積んで大丈夫だからね!
 重い物は私達も手伝うし、皆で協力して積み込みしよう! ヴァリューシャの言う通り無事に送り届けるよ」
「ええ。何度かに分けて運ぶ事も出来ますわ」
 護衛を行なう二人に「いいの」とルルアが問い掛ける。膝を付いて視線を合わせて。
 勿論だと頷いたヴァレーリヤにマリアは「必要なものは何でも言っておくれ」と少女の頭を撫でた。
 護衛の最中、「念のため確認した方が良さそうですわね……マリィ、確認をお願いしてもよろしくて?」と呟いたヴァレーリヤはあくまでも住民達に不安を抱かせぬようにと気を配る。
 頷くマリアは空中からの偵察を行ない出来る限りの戦闘を避けられるルートを模索していた。
 ラド・バウ近郊にまで辿り着けば自警団を担うこととなる避難民達が武器を構えて待ち構えている。
「おかえりなさい!」と声を掛けてくれる者達を見るだけで穏やかな心地になるものだ。
「意外と重かったですわね……。マリィ、疲れていませんこと? 良かったらお茶でも淹れてくるけれど」
「ふふ! そうだね! 中々大変だった! 私は大丈夫!
 ヴァリューシャは平気かい? ……ありがとう! ちょうどいいしお茶にしちゃおうか!」

「――あれも足りない、これも足りない。あるのは腕っぷしだけとは困ったもんね。
 ん-、馬車やらなんやら、備品の洗い出しなんかも必要そうねえ」
 帝都である以上、多くの避難人が集まってくる。あくまでも中立を掲げているが、ラド・バウの住居を整え周辺警戒を行う事は急務でありそうだと『風と共に』ゼファー(p3p007625)は実感していた。
「資材を集めた後は難民の護送か。困っている人がいるのなら助けないわけにもいかないな。
 力仕事は得意分野だ。任せてくれ。馬車でもあればよかったがそこまでの準備はできなかったしリヤカーでも借りられればいいが……」
 大きな者を全て運ぶ事は出来ないが、困り切った人々を見捨てることも出来まいと『導きの戦乙女』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)はゼファーと共に外周部へと歩き出す。
 帝都の人間は決して善人ばかりではない。誰かを斬り捨てなくてはならないという不信感さえも胸を過るのだ。
 出来る事をやるしかないという実情に、何とも不安が滲む。
「……集まった人間に何が出来るかを先ずハッキリさせておきたいわね。
 今日見た人間も、色んな職の人がいたみたいですし、寄り集まって暮らすなら役割分担は重要だもの」
「ああ、そうだな。資材も集め、人も集まり次の一手はどうするか……考えるより動くしかないな。
 この後何が起こるかわからない。今はできるだけ大勢の人を安全な場所へ運ぼう。特に内部にも注意の目が必要だ」
 ブレンダは荷車に荷物を載せながらそう呟く。ゼファーは肩を竦めた。そうだ、内部に何者かが入り込む可能性だって十分存在している。
「さてさて、寄り道はあまり出来なさそうね。こわーい新皇帝派が出てきて、取って食われちゃうかもしれませんからねぇ……」

成否

成功


第2章 第6節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
刻見 雲雀(p3p010272)
最果てに至る邪眼
スースァ(p3p010535)
欠け竜
フーガ・リリオ(p3p010595)
君を護る黄金百合

「1人でも多く無事にラド・バウに入れるように、おいらも護衛しよう。
 ……命さえ無事なら何度だってやり直せる、と言いたいところだが、大事なものを簡単に手放せるわけねえよな」
 雑多に転がる家財を抱え込むように立っていた住民に『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)は手を差し伸べる。
 派閥が違えども音楽が人に勇気と希望を与えると信じている。パルス達とそうして奏でた旋律を繋ぐように彼は此処までやってきた。
「よし。護衛ついでに家宝を運ぶのも手伝おう……手で持って運べるサイズならなんとかなるかも、手放せないのはどれだ?」
 抱えて見せようかと手を差し伸べるフーガに住民で在る男は「ありがとうよ」と重い腰を上げる。
 彼が抱えていたのは仕事道具である工具のようだ。脚を怪我しているのか、満足に動けない様子でもある。
「リズクッラー殿、これは俺からの依頼だ。避難民の送迎や荷物の運送を手伝って欲しい。
 避難民や他のイレギュラーズ達にもUMA殿はちょっとお茶目な力持ちだと知らせておくから」
 その様子を眺めていた『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は『骸骨運送』リズクッラーへと声を掛ける。
 ラサで活動する運送屋であったリズクッラーはアーマデルの依頼に応じて鉄帝国入りを果たしていたのだろう。
「避難民に縁ある霊よ、近くについて見守ってやってくれ」
 UMAと共にやって来たリズクッラー。集団で移動するべく運送屋としての本領を発揮する。
「大きな荷物も此方に任せてくれ」
 フーガの傍で座り込んでいた住民にアーマデルは声を掛けた。此方の動向を伺う影は気に掛かる。彼方が気にしているのはイレギュラーズだけではなく避難民の動向も含まれている可能性もあった。
(曲者が紛れ込みやすいタイミングでもある。
 ……とはいえヒトの想いも言動もそれぞれだ、あからさまにダメなの以外は気をつけて見ておくこととし。
 避難民を希望する者はみな避難民として扱おう、今は)
 ――誰ぞが紛れ込む可能性は今は捨て置けない。オフィーリアとメアリに『オフィーリアの祝福』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)は静かに声を掛ける。
 亥の如き勢いで真っ直ぐ進む様から名付けられた、海洋や鉄帝に生息する大型の海老は今はイーハトーヴの傍で穏やかな空気を纏って佇んでいた。
「一寸待っていてね」
 ……一応声を掛けておかねばいきなり飛んで言ってしまうかも知れない亥勢海老『Kutsche』なのである。
「外で感じた気配、ちょっと気になるね。皆不安だろうし、些細なことがパニックを引き起こすかもしれないね」
 皆のことは護ると声を掛ける。その為に使える技能は全て使うべきだ。ある程度の人数を纏め、統率し、人々に安心を与える。
 広域での俯瞰で眺めれば、ぐずぐずと涙を流してお気に入りのネックレスを探す少女の姿が目に入った。
「どうした?」
 声を掛けたのは『欠け竜』スースァ(p3p010535)。危ない場所や厳しい場所を通ってラド・バウへと到達せねばならない避難民達を放っては置けないと手を貸す覇竜の民は膝をつき少女へと声を掛けた。
「お母さんのくれたネックレスがね、なくなったの」
 一度、荒くれ者が此の辺りで暴れたのだろうか。逃げ果せた少女はその際にネックレスをなくしたと泣いている。
「探しながら、避難しよう。大丈夫だ、ちゃんと見つかる筈だ」
「ほら、ローレットも斯う言ってる」
 背中を撫でた少年は「俺は丈夫だからこいつ連れてくよ」とスースァに自慢げに胸を張る。
「危ないかもって思ったら、見栄張らずに休むんだよ」
「解った!」
 歩いて行く少年少女を見送って、スースァが周辺警戒に当たる最中に『最果てに至る邪眼』刻見 雲雀(p3p010272)は「ネックレスはどこだろうね」と呟いた。
「警戒しながら探していれば見つかるかもしれないな」
「……うん。そうだね。人命が最優先だけど、かといって家財を全て手放すのも……だよね。特に宝物を手放すのはきっと寂しいことだ」
 馬車を手配したという雲雀は其れ等にある程度の家財を乗せていた。家の名前の書いた張り紙をしっかりと貼り付けてラド・バウへと運搬する。
 家財を皆に配るだけでも一苦労だろうが、それで住民達の心が安定するのならばやる価値もありそうだ。

成否

成功


第2章 第7節

リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)
約束の果てへ
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
社家宮・望(p3p010773)
牛乳プリンは罪の味

「つまり、『私は新皇帝派のスパイを探しつつ、呼び出しがあったら速攻で駆けつけて敵を倒せ』って事っスね……!!
 何なんスかその過剰労働! 訴えてやる……労基に訴えてやる……!」
 頭を抱えている『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)にジオルド・ジーク・ジャライムスは敢えて聞こえないふりをした。
「敵の間諜の影有り、か。それなら俺たちはある程度戦えるであろうD、C級の闘士を集めて実践訓練と行こう。いいか?」
「いいですけどッ」
 数人で班を組み警邏に当たらせる。敵と遭遇した場合は倒せる相手かどうかを判断させるのだ。
 ジオルドは美咲に囁いていた。自分の任務を怠るなよ、と。これは美咲の訓練も兼ねていると告げられて蒼い顔をしたのは先程のことである。
 飛行状態で訓練生を確認し続ける。周辺警戒を行なう美咲は近郊で警邏に当たる彼等が敵との接触をしないことだけを願っていた。
 警邏を行なう前に、出来る限り練度を上げておきたいと願う者は『赤頭巾の為に』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)や『無限牛乳プリン製造機』社家宮・望(p3p010773)の元に集っている。
「私の専門は狙撃銃だ。。
 まず基本的に狙撃は高所、ないしは遮蔽物の裏から標的に対して撃つことになるよ。圧倒的なリーチで敵を寄せつける前に狙撃する。
 勿論一撃で倒せればいいけれど、足元に撃ち込んで威嚇射撃や足止めをすることもできる強力な武器だ。
 ただし一撃外せば場所はバレるし接近されると一気に不利になる。速やかにその場を離れるんだ、そして他の場所からまた狙撃する」
 例を見せる様にと銃を構えたリーディアの周辺では距離を取り戦う事を目的とした者達が集い美咲が見付けたというモンスターを誘導して貰って銃撃を行って居る。
「そう上手、良い子だ」
「有り難うございます!」
 嬉しそうに微笑む青年の傍で望は緊張していた。『ちびでもやし』だと己のことを称する望。戦闘経験も皆無ではあるが防衛魔術と医療技術と知識を生かせばそれは十分斯うした場所では役に立つ。
「俺みたいに、その、よ、弱くても、で、出来る事は、きっとありますから……っ!」
 疲れたときには牛乳プリンもお裾分できる。甘味はご褒美だ。故に、望の周りにも人集りが出来ている。
(本当にスパイなんてくるんスかねー)
 美咲はそんな様子をまじまじと眺めているだけだった。勿論、ジオルドの言葉を疑っているわけではない。
(いや、スパイが入ってくるかどうかじゃないか。内部から『崩しに来る』可能性はあるんスよね。
 ……革命派にはブリギットと名乗る魔種が居る。その後ろにあるのも新皇帝派のアラクランという連中。
 さてさて、そいつらが此方に仕掛けてきて革命派の所為だとイレギュラーズを混乱させる可能性は――ないわけでもないか)
 ビッツには世話になったからとやる気を見せていた『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)は「パニュラ!?」と驚いたように義妹を見詰めた。
「姉さん?! なんで此処に……突然鉄帝が大変になって、避難民として世話になってたけど。
 私も、お母様や姉さんみたいに戦える者になりたいから……! 其れで此処まで来たの」
「パニュラも十分戦えると私は思うのだけれど……まぁ良いわ!」
 義妹の訓練を兼ねて周辺警戒に行きたいとセチアはカンパニュラに声を掛けた。
 攻撃を重ね、その様子を眺めるカンパニュラは流石と『姉』の戦闘に拍手を送っている。
「看守といえば此の攻撃よ! さ、パニュラも一緒に行くわよ!」
「あ、その……お姉ちゃんは私よりも強い事、知ってるよ。けど…無茶はしないでね。何か起きそうで……私は怖いんだ」
「んー…この先どうなるか分からないけれど。私は死ぬつもりなんてサラサラ無いわよ! ”絶対、起きた時に会いに行く”って約束もしてるんだから」
 微笑んだセチアはすん、と鼻を鳴らしてから嗅ぎ慣れた気配を感じていた。
 そう、それは『囚人』達の居る刑務所でよく感じた事のある気配でもある。
「……まさか」
 戦闘になれていない者達。人を殺した経験はあれど、踏み込みきれない者達。それはもしかして――

成否

成功


第2章 第8節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
暁 無黒(p3p009772)
No.696
レイン・レイン(p3p010586)
玉響

「派閥こそ違えど競う理由もない。ここは一つ協力して事にあたるとしよう」
 うんうんと頷いたのは『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)。どうにも広域での探索を行なえばあまり力が強くはないモンスター達の逃走が見て取れる。
(……しかしモンスターの動きは気になる。何か強力な個体が周囲に存在しているのだろうか)
 愛無は首を傾いだ。避難民達は帝都に住まっていたが突如として街中に『囚人』が溢れ出したという。
 正式に声明は出ていないが幾つか存在している更生施設からの脱獄が行なわれたか、それとも何らかの恩赦でも与えられたのだろうか。
 何にせよ、略奪や略取になれた者達が溢れ出したのは確かなのだろう。だが、それだけでモンスターが逃げ果せるわけがない。
「……普段の鉄帝は兎も角、今は多様な人材が欲しいな」
 愛無は悩ましげに呟いた。だが、其ればかりにも構っては居られないだろうか。ぐずぐずと泣いている子供達や怪我人は市井に溢れかえっている。
『玉響』レイン・レイン(p3p010586)は妖精の木馬を駆使して人々の護送を担当することに決めていた。
「モンスターの誘導とか退治では戦力にならなさそうだし……それこそ戦闘訓練なんて無理だし……
 ライブは……ギフトがあるから少し考えたけど……できる事……よりも……やりたい事を優先したよ。
 ただ……この木馬……初めて使うから言う事聞くか心配かも……」
 妖精達は少し悪戯っ子。それでも、レインの想いにはしっかりと応えてくれることだろう。人々もそうだが思い出の品も運んで行きたい。
 そう願うレインに「あ、手伝おうか」と手を振ったのはパルス・パッション。
「スティアちゃん! レインくんのお手伝いをしようよ!」
「オッケーだよ!」
 にんまりと微笑んだ『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はパルスと共に避難民をラド・バウ南部まで護衛している最中であった。
 家財を出来る限り持ち出せるように家の周辺を確認し、回収する荷物を『No.696』暁 無黒(p3p009772)に頼む。
 広域を確認し障害物を排除する無黒は残業時も対応すると「オシゴトタノシー!」と叫んだ。
「ヒャッハー! ま~だまだ行くっすよ~!
 資材集めの次は難民と家具の運搬っす! これはもうブラック企業も尻尾撒いて逃げ出す程の超長時間残業っすよ~!」
「無理しちゃダメだからね?」
「オッケーっすよ~! パルスちゃんも何かあったら教えて下さいっす!」
 手を振ったパルスに応えてから無黒はドラレコ、こと、KURNUGIA-P508を利用して周辺の確認をする。
 映り込んでいた紫色の髪の男は何者であっただろうか――
「ねえ、パルスちゃん。ここって長期間の生活ができるようになっているのかな?
 帝都の避難民が増えていっちゃうと大変じゃないかな? って思ったんだ。
 もし帝政派の方で避難民の受け入れとか行った方が良いなら教えてね。持ち帰って伝えてくるから!」
 そこまでの道のりが大変そうだけどと肩を竦めるスティアにパルスは「そうだなあ」と悩ましげに呟く。
「ボクは皆と協力できれば嬉しいなって思うよ。避難民はラド・バウで受け入れて、帝都が平和になればいつもの日常に戻るかな?」
「そう、かも」
「冬が、不安だね」
 鉄帝国の冬は厳しい――同じくそうした点を懸念していたのは『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)も同じであった。
「……闘技場だからな。このまま避難民が増え続けたら、収容限界も訪れるンじゃねぇか?」
「そうね。早く冬を越す準備をして置かなくちゃならないし、此処が幾ら堅牢でも厳しいでしょうね」
 ビッツ・ビネガーは鉄帝国全域と比べれば雀の涙程度のエリアだとわざとらしく肩を竦めた。
「一人でも多くの命を守るのが、医者としての俺の願いだ。
 民は力だからな。その為に、派閥を超えて出来る事を探してるンよ。派閥を超えた『国境無き医師団』。何れ結成出来れば……な。ビッツ達はどう思う?」
「アタシは勿論、良いと思うわ。ラド・バウに来たお客様は救ってあげたいもの。
 けど、帝政派のことはアタシには解らない。ラド・バウは政治に触れてこなかったもの。アタシには政治中枢の事は分からないの」
 ビッツはレイチェルをまじまじと見詰めてから「アンタがしたいならアタシも手伝えるかも知れないわ。けど、ウチの可愛い子たちと話し合って貰わなくっちゃアタシの一存じゃ決められない」と告げる。
「今はこの国も別たれているもの。アンタ達、銀の森に精霊女王が用意した場所が出来たんでしょ?
 そこを利用して、活動出来るエリア拡充を狙いなさいな。一人二人じゃない。全員なら国を帰れるかも知れないもの――」

 ビッツは言う。無黒が持ち帰った映像に映っていた紫色の髪、ペストマスクの男は『必ず此方に何か仕掛けてくる可能性がある』と。
 彼が程近い場所に来ているのならば接触し、その思惑を聞き出せるかも知れない――

成否

成功


第2章 第9節

オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
鏡花の矛
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
三鬼 昴(p3p010722)
修羅の如く
ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)
瀉血する灼血の魔女

「精霊の女王に『ちゃん付け』で呼ばれるのってなんか不思議ね」
 深緑では相対した『冬の王』オリオンの影響を多大に受けているのであろう銀の森の精霊女王エリスが「オデットちゃん」「イレギュラーズちゃん」と呼びかけてくることには違和感を禁じ得なかった。『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)は優しげな彼女の声を思い出す。
「――でも頼られたんだもの、全力で頑張らなきゃ。銀の森の精霊たちの平穏のためにも、ね」
 森の周辺にはそれ程危険な生物はいない。時折モンスターの姿見られるのは平時の通りなのだろう。
 ラサとの通行路になっているこの場所を観察していてオデットはこの地は他の場所よりも安全である事を確かめることが出来た。

「天衝種を操る者たちとその陰に潜む魔種か……どうにか魔種を仕留めたいところだが、今はその時ではない」
 悩ましげに呟いた『筋肉こそ至高』三鬼 昴(p3p010722)が立っているのはラド・バウ近郊であった。つまり、帝都スチールグラードだ。
 避難民達は多く、ラド・バウでは彼等を観客として受け入れ保護をしている。市井の住民の味方であり続ける事が目的だからだ。
 昴は周辺の捜索を行ない、極限まで鍛え上げた己の肉体を武器に天衝種を相手取る。
(テイマーは戦闘慣れしていないが……捕まえても余り情報を吐かないか)
 やはり裏で手を引いているのは魔種なのだろうか。全戦で戦う昴の背後では状況を確認しながら広域に攻撃を放つ『群鱗』只野・黒子(p3p008597)が立っていた。『思惑を理解していない人間』と自身の事を称する黒子は敢えて戦場で天衝種を狩ることで同行を確認出来るのではないかと考えていた。
「さて、魔種は此方の出方を見ているか、それとも――」
 ラド・バウが斯うして広域捜査に出ているからこそ捜査網に引っ掛かっただけで、各地に散らばっている可能性もあるのか。
 例えば――『ゲヴィド・ウェスタン』『ボーデクトン』そして、『ブランデン=グラード』。
 そうした場所の偵察に新皇帝派が乗り出しているならば、一悶着有りそうだ。
 避難民達を救う昴や『瀉血する灼血の魔女』ルトヴィリア・シュルフツ(p3p010843)。ルトヴィリアは「まだまだ居ますねえ、不届き者」と唇を尖らせた。
「あたし、戦闘得意じゃないんだけどなあ。ま、聞きたいこともあるからいいんだけどさ」
 ルトヴィリアは敵をじわじわと追い詰める事を目的としている。魔種に会うのはリスキーだ。避難民を却けながら、出来る限りの情報を得ていたい。
「では――……少し前にラド・バウを襲撃してきた一派。
 連中が語っていた、ヴェルクルスという名に心当たりが無いですか?」
 スマイルも忘れずに。邪悪さをにじみ出しながら問うたルトヴィリアに「今の鉄帝国じゃわんさか悪人がいる。解らない!」と男は首を振る。
 どこもかしこも動乱の気配が濃いのだ。捕縛した男を一瞥してから『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)はリズクッラーと共に住民達を運び続ける。
(曲者が怪しまれず入り込みやすそうなのは人の多い最初のうち……。
 だが逆に、少し落ち着いて状況が見えてから潜入するものもいるかもしれない。
 避難元が分散し、ご近所同士、見知ったもの同士の集団ではなくなりもするだろうからな)
 自身等が運ぶ避難集団は怪しい者であるかどうか。それを確かめなくてはならないのだ。周囲に迷惑を掛けているならばそれは避難民と言うよりも不届き者の類いなのだろうが。
「リズクッラー殿とUMA殿は基本的に輸送の方に集中してくれていい。
 避難民の密度が低くなるほど、多くの荷を持って行きたい者が増えそうだ。
 ……気持ちはわかるが先に避難したものとの兼ね合いや、途中で合流するものもいるかもしれない。
 そこは臨機応変か、そういうのが得意な行政絡みの仕事の者が避難民の中にいるといいんだが」
「了解した」
 UMAと共に運ぶリズクッラーに驚く様子を見せた鉄帝国の住民達もいる。その様子に小さく笑ってから荷物を馬車に積み上げて『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は活動で滲んだ汗を拭った。
「私達が運ぶ分は、これでお終いかしら? 結構頑張りましたわね。お家に帰ったら、美味しいお酒でも飲みましょう!」
「中々ハードだったね! これで終わりかな? お疲れ様だよ!
 いいね! 今日は甘いお酒が飲みたい気分! 何かおつまみでも買って帰ろうか!」
 満面の笑みを浮かべる『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)に「マリィ」とヴァレーリヤが袖をつんと摘まむ。
「そういえば、この辺りで怪しい人を見かけたという話がありましたわね。
 ……何事もなく無事に送り届けてあげないと、ね。この人達にとっては、この馬車に載っているものが全てなんですもの」
「そうだね。貴重な財産だ。大事にしてあげよう。
 それにしても鉄帝というか混沌って割と怪しい人ばかりな気がするけど、その中でもとびきり怪しい人なのかな!?
 このご時世だしね……確かに警戒は必要かも……」
 二人は顔を見合わせた。確かにこの時勢でなくとも混沌は多くの怪しげな人が多い。マリアの言葉にヴァレーリヤは「あら、私も該当しますこと?」と揶揄う。
「ヴァリューシャは可愛いよ」
「うふふ。目撃情報、思い出せますこと? 
 ペストマスク……なんだか似た人を知っている気がするのは気のせいかしら?
 もし出会ったら、何のためにここにいるのか聞いておいた方がいいかも知れませんわね」
「ペストマスクか……嫌な記憶が蘇るね。
 関係あるかは分からないけれど、次にあったらリベンジしてやるんだ。念の為に警戒はしておいた方がいいかもね!」
 ――彼女の脳裏に浮かんだのは、フギン=ムニンと名乗った男だった。
 新生・砂蠍と呼ばれたラサの盗賊団が幻想を攻めた際に逃げ果せた彼は今、鉄帝国に居るという。

成否

成功


第2章 第10節

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
シラス(p3p004421)
超える者
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

「ペストマスクを着けた如何にも怪しい人間がいるとは……世も末だな」
 こちらはマリアやヴァレーリヤが思い浮かべた方『ではない』ペストマスクの『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)。
「冗談はさておき。その仮面を着けているという事は、やはり医師なのだろうか?
 捕縛はまあ何方でもいいとして、挨拶程度は交わしたいものだ。ふふっ」
 さて、彼がどうしてそうした装備をしているのか『人となりは語られていない』為、深く考えることは出来ないだろう。
 ペストマスクの青年が軍部と革命派の橋渡しをしているという話しは革命派トップのアミナから語られたこともある。
「本当に革命派の仲間だというのなら、出てくるのに躊躇う必要は無かろうに。私も革命派だぞ? ――照れ屋なのかな?」
「それとも、出て来ることができない事情があるのか、だ」
 ファミリアーでの偵察を行って居たルブラットの傍らで『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)はそう口にした。
 魔種が出向いてきたという事は何かの意味がある。例えば、偵察。例えば、錯乱。例えば、動き出す可能性の示唆。
「次はいつ尻尾が掴めるかわからない以上少し調査は必要だろう。
 ……とはいえ、ここで全てが終わるわけでもない以上、無理は禁物、危険になる前に退避するように気をつけなければな」
 魔種達が話している内容が真実であるかは定かではない。出来る限り姿を隠し敵に見つからないようにと耳を欹てようとゲオルグはルブラットの索敵に従い『ペストマスク』を探していた。
「モンスターが逃げて来たの魔種のせいなのだろう。しかし目的となると見当がつかないな。
 聞いた話とイメージでは言葉と策を弄するタイプには見えるが。会えれば本人に聞くのが手っ取り早いか。
 ……僕には人間というのは何を考えているか良く解らんからな」
『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)に「我々と話すのはなく仲間内での会話を聞いてみよう」とゲオルグは告げた。
 頷く愛無は「何が目的なんだろうな」と呟いた。マリアが思い浮かべた男――フギン=ムニンその人なのであれば、砂蠍の復権でも考えているのだろうか。
「……ラサに魔種か。そういえば『おばぁちゃん』も雷使いで憤怒の魔種か。まるで僕の恩人のようだ。その原点も。
 何にせよ人間ってヤツは何を考えているか本当に分からないな。だからこそ面白いのだろうが」
 耳を欹てて、ゲオルグは聞く。雷の気配の女と、その眼前で『わざとらしく』話す男だ。

 ――どうしてこの様な場所へ?

 ――顔見せですよ。『ドルイド』。ブランデン=グラードへは貴女は行かないのですか?

 ――……革命派でファントムナイトの宴に誘われました。アミナも一緒です。子等の期待には応えませんと。

 日常会話と呼ぶべきなのだろうか。一方は『ドルイド』と呼ばれている。その口ぶりから革命派で自らを魔種だと名乗った女で間違いないのだろう。

 ――ギュルヴィ。

 ぐるんと振り返った『ドルイド』の目線がゲオルグや愛無が潜んでいた草叢を射る。
「……道に迷ってしまってね」
「道に迷った方は、その様な動きは致しませんわ。獣は虎視眈眈と獲物を見定めるだけですもの」
「これは参った。
 ……さて、何考えてるか教えてくれよ。おしゃべり好きなんだろう。僕ととーくしよう。僕は君が何を考えてるか知りたいんだ」
 そちらの、と愛無が視線を送った先にはギュルヴィと呼ばれた男が立っている。
『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は「ブリギットちゃん?」と呼びかけた。雷の攻撃を確認し、それが彼女であると勘付いたのだ。
「もしかして、今の混乱を解決するために、また協力出来るのかな?
 あ、……それとも、もうあの時に言ったみたいな『もしかしたら』が来ちゃったのかな……」
 不安げな焔にブリギットは「ホムラ」とその名を呼びかけた。焔とて気付いて居る。ブリギットが皆を救いたいという正義感で動いているわけではないのだと。
(魔種である以上いつかはそうしなくちゃいけないこともわかってる。そう、そうしなくちゃ、でないとあの時ボク達がしたことは――)
 誰かを救うために共に闘える可能性があるならば、そうして為したい。
 ブリギットと呼ばれた女を見詰めて愕然としていたのは『蒼輝聖光』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)であった。
「ブリギット、さん」
「ご機嫌よう」
 スティアが知っているブリギットの様子とは様変わりしている。あの美しかった紅色の髪も金色の眸も、今はその色彩に変化が出ている。
 それでも尚、僅かに残っている『彼女』を顕わすように幾許かの色彩が残されているためか。ブリギット・トール・ウォンブラングは穏やかさを保ったまま立っていた。
「……ブリギットさん、その後ろの人は?」
「友人です。名を『ギュルヴィ』」
 ギュルヴィと呟いたのは『竜剣』シラス(p3p004421)であった。その後ろには『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が立っている。
 魔種の系にモンスター。気になることが多いと二人はファミリアーや広域に広げた視界で索敵を行って居た。
 木々の声音は確かに教えてくれた。雷の気配と魔種の存在。それがブリギットを――二人にとっては『おばあちゃん』とあだ名された革命派の魔種を差していた事をその現場に至り、知る。
「……嫌な気配がする人を、と探してたの。ブリギットさんのことだったのかな?」
「おばあちゃん、悪い事は言わないが友達の趣味が悪そうだぜ」
 ブリギットは「あなたは人気がありませんのね」とギュルヴィを振り返る。紫の髪の男の姿を見て、スティアは「フギン=ムニン」と呟いた。
「他人の空似ですよ」
「……今度は何が目的なのかな? この周囲にいるってことはラド・バウの関係者が標的ってことかな。
 ただの下見に来ているって訳ではなさそうだしね。となるとパルスちゃんかビッツさん? んー……どちらかといえばビッツさんの方かなぁ」
 どうかな、と微笑んだスティアにギュルヴィは「とんでもない!」と戯けるように肩を竦めた。
「今の私は只の見物客ですよ! ほら、モンスターを嗾けてくる彼等なんてこの騒動に乗じた囚人や闘士気触れでしょう。
 お優しい皇帝陛下は勅令通りに弱肉強食を掲げ、動いていらっしゃる。囚人達も解き放たれたというわけだ。
 ……ええ、それは、革命派としてもそれはそれは見過ごせませんからね」
「善く回る口だな」
 呟く愛無に全ての言葉を聞き漏らさぬようにとゲオルグは耳を傾けた。
「ギュルヴィ、お前は『アラクラン』と呼ばれる連中の一味か?」
「ええ。新皇帝派『アラクラン』――簡単に言えば、皇帝陛下直属の軍人部隊ですよ」
 シラスの傍でアレクシアはぴたりと動きを止めて動向を見守っている。スティアは、問う。

 ――私達の敵なの? と。

「『今は味方』ですよ」
「今は――? ……含みのある言い方だね」
 焔がじいと睨め付ければ、男は笑った。
「革命派ですので。
 それに私は下見に来ただけですよ。事を起こすのは恩赦を受けた者だけで良い。
 『六つも派閥がある』のだから消耗するのは得策ではないでしょう?
 帝都の中央。物流の要。全ての路線が集結するあの駅――『ブランデン=グラード』のね。
 ええ、何かに使えるのではないかと考えただけ。冬は人智の及ばぬ魔物。今のうちに対策したいのは誰だって同じではありませんか!」
 まるで芝居がかったように告げる男は「ファントムナイトでは楽しみにしていますよ」とシラスに意味ありげに微笑んだ。

 一同が帰還した後、給湯室に集まって欲しいとビッツ・ビネガーは告げた。
 そうして、彼は口にするのだ。「鉄道調査に向かうのよね? ラド・バウは『ブランデン=グラード』を獲りたいわ」と。

成否

成功

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