シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2022>SweetRaspberry
オープニング
●
パステルグリーンの柔らかいラグの上に広げられた甘くて可愛いチョコレート。
毛並みの長いラグはチョコレートを優しく押し上げていた。
蓋を開ければ部屋の中に広がるカカオの香りと、舌触りの良い甘さを想像して胸が高鳴る。
「どれがいいですか?」
「えっと……」
チョコレートの入った箱を『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)へ傾けるのは『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)だった。
テアドールはチョコレートの形を一つ一つ見比べては興味津々で首を傾げる。
表面に絵の描かれたもの、アーモンドが埋め込まれたもの、赤いハート型、正方形のタブレットなど多彩な形があってどれも美味しそうだった。
廻はその様子を微笑みながら見守る。
テアドールは元々練達の研究所でシステムAIとして生み出され、外に出る事無く役目を終えるはずだった人工生命体だ。それが秘宝種として世界に認められ、研究所の外に出られるようになったのだ。
だから、無垢のテアドールには何もかもが新鮮に映っているのだろう。
「じゃあ、これで」
遠慮がちにテアドールが箱の中から摘まみ上げるのはハートの形をしたチョコレート。
テアドールは掌にチョコレートを乗せる。
彼は人工生命体の秘宝種だ。ロボットといえば無機質で冷たい印象を覚えるが、人と接する事の多いテアドールの『体温』は人間と同じ程度に保たれている。
ゆっくりとチョコレートの表面が溶け出す変化をじっと見つめるテアドール。
固かった表面が次第に柔らかくなり、水分のように肌に付着した。
「溶けちゃいますよ?」
「あ、ごめんなさい。溶けるのが不思議で……では頂きます」
口の中にチョコレートが入り込んで、ゆっくりと広がる。
ラズベリーの甘酸っぱさとカカオの香りが『風味』としてテアドールの中に蓄積される。
舌で触るごとに小さくなっていくそれは不思議な食感だった。
「これが甘くて美味しいチョコレート……」
先程までの宝石のような甘さを思い返しながらテアドールは溜息を吐く。
「温かいココアもありますよ」
トレーに乗せられたホットココアからは湯気が立ちのぼり、部屋の中に甘い香りを漂わせていた。
「あ、これはココアの香りだったんですね」
「どっちもですかね」
「グラオ・クローネ――希望ヶ浜ではバレンタインでしたか。僕はとても好きになりました。シリーズやお友達にも教えてあげたいです」
嬉しそうにはしゃぐテアドールに廻もつられて顔を綻ばせる。
「はい。大切な人に感謝の気持ちを込めてチョコレートを送る日なので、テアドールさんもお友達にチョコを渡すといいかもしれませんね」
大切な人が明日居るとは限らないから。
最大の感謝を送る日にしよう――――
「廻さん、少し元気が無いように見えますが……」
ソファに寄りかかった廻の隣に腰を下ろすテアドール。
彼はアバター被験者の状態を見守るのが仕事だ。だから、体調の変化を直ぐに察知する。
温かなココアを一口飲んだ廻は、膝を抱えるように俯いた。
ズボンの隙間から薄い太ももが見える。おおよそ成人男性とは思えない華奢な筋肉。
テアドールは少年として作られているけれど、廻は青年であるのに未発達な体つきをしているのだ。
しかも以前見た時よりも少し痩せているような気がする。
「そうですね。ちょっと色々あって。新年早々刺されて入院してたんですよ。その間にドラゴンが来て街も滅茶苦茶になって……僕達が一生懸命守って来た日常が一瞬で壊れてしまったんです」
「廻さんの不安な気持ちが僕にも伝わってきます」
テアドールは廻の頭を優しく撫でて、そっと抱きしめる。
人間はこうすることによって安心感を得ると知っているからテアドールは廻を抱きしめた。知識による行動だった。されど、触れた瞬間に伝わって来たのは安心感だけではない。もっと微細な心の動きだ。
驚きと嬉しさを経て、心配させてしまった事への後悔と、感謝の気持ちとが混ざり合う。
「無理して元気を出そうとしなくてもいいですよ。のんびりしましょう。僕も実は修理中なんです」
「本当ですか?」
「ええ、これは予備パーツなんです。少し動かしにくいです」
ふにふにと自分の太ももを突いたテアドールは廻へと微笑む。
「僕もまだ刺された傷が痛むことがあって、熱が出たりします」
無理はしないでくださいねとテアドールが廻の肩にブランケットを掛ける。
思えば一年前のバレンタインは攫われたりして大変だったと廻は眉を下げた。
今年はゆっくりと過ごせそうだと温かいココアを舌に転がす。
甘い香りが口の中に広がって、小さな吐息と共にアメジストの瞳を伏せた。
- <グラオ・クローネ2022>SweetRaspberry完了
- GM名もみじ
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2022年03月04日 22時05分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
サポートNPC一覧(7人)
リプレイ
●
冷たい風がマフラーを揺らし、寒々しい空模様を描き出していた。
ベネディクトとリュティスは幻想の街を緩りと歩いて行く。
「今年もこの季節が来たか、去年は……確か、君に対して弱音を吐いていた様な記憶があるが」
自分が幸せだと口にしてもいいのかと零したのをリュティスも覚えている。
「そういえばそんなこともありましたね。もっと昔のように感じてしまいます」
「少なくとも、今年は君に弱音を聞かせる様な事は無さそうだな」
「そうですか。それは喜ばしい限りです」
平穏というものが一番難しい事を二人とも知っているから。
微笑みを浮かべるリュティスに、僅かに瞳を伏せるベネディクト。
他愛ない会話と足音と小さな笑い声を連れて、広場まで歩いて行く二人。
名前を呼ばれ視線を上げれば、ベネディクトがチョコの包みを差し出した。
「こうしてまた君と過ごせた事、それと日々の感謝を込めて。チョコレートだ、受け取って貰えるかな?」
リュティスの瞳にはほんの少しの驚きが浮かぶ。
「はい。ありがとうございます?」
こういうものは女性から送る事が多いのだけれどと視線を上げた。
「俺の思う感情が何時か少しでも届けば良いなと思う、君は君のペースで構わないから。
君の事が好きだよ、リュティス。心から」
優しげに目を細めるベネディクトを見遣れば、穏やかな気持ちと僅かな焦りがリュティスの心に走る。
待たせている事実と、自分の中で不確かな恋心。その行方を未だ見つけられずにいるのだ。
可愛らしいカフェテリアのソファでアルエットと四音は温かなココアを飲んでいた。
穏やかに愛しい人との逢瀬を楽しむ。まさに正しい恋人の姿だと四音は微笑んだ。
「恋人……?」
「……四音さん?」
「いえ、何でもありません。私の可愛くて愛しいアルエット、チョコを受け取っていただけますか?」
「うん! アルエットもあるのよ。交換ね」
何故、恋人と思ったのかを四音は未だ理解出来なかったけれど。
其れでもプレゼントを喜ぶ愛しき天使の笑顔を見ていたいと思うのだ。
ユーフォニーの瞳に緋色と藍色のグラデーションが映り込む。
「わあっ、綺麗……!! ミーちゃん、ここってこんなに景色がいいんだね」
コートの首元から顔を出すミーフィアと共に見晴らしの良い高台で声を上げた。
手には屋台で気になっていたチョコミントドリンクを抱えている。
一口啜ればまろやかな甘さと爽やかなミントの風味が香った。
「……!! 美味しい……私、これ好きみたい……! ミーちゃんも飲む?」
ユーフォニーと同じように美味しいと示すミーフィアを撫で、再び景色へと視線を移す。
恋人にも憧れるけどと呟いて。
「今は、ミーちゃんとふたりでこうしているのが1番幸せかな」
ぎゅうとミーフィアを抱きしめて微笑みかけた。
幻想の繁華街にあるちょっぴり風変わりな喫茶店。それがサンティールの居候先。
「でも――そこからももう直ぐ巣立つんだ」
十八を迎えたら独り立ちしようと決めていたから。だからと少女は胸に手を当てる。
今年のグラオ・クローネはとびきりの感謝を込めて言葉を伝えたい。
「最初は包丁さえおっかなびっくりで扱っていた僕だけれど、今はふつうにごはんが作れるくらいには成長した。おかし作りは実験みたいで楽しくて、石造りのオーブンの前でにらめっこするのも、不安より期待のほうが勝るようになった」
思い込めたほろ苦ガトーショコラ。
「感動して泣いちゃったりして」
そう零すサンティールの瞳には薄らと雫が浮かんでいた。
●
ブラウンライトが静かに落ちてくるバーのライティング。
爽やかなジャズの音色が心地よく聞こえて来た。
「こんなお洒落なバーがあるとは、さすが練達ですねぇ」
チェレンチィはバーのカウンターに腰掛けてグラスを傾ける。
折角のバレンタインだから、チョコレートリキュールを使った甘いカクテルを作って貰った。
フードはカクテルに合うように紅茶のクッキーをチョイスする。
「……大切な人が、明日居るとは限らない。ええ、全くもって、その通りです」
だからこそ、大切な人がいる人はその人との時間を少しでも取りこぼさぬよう、大事にして欲しいとチェレンチィは目を細めた。
自分にはもう居ない。大切な『君』をこの手で殺した。それが願いだったから。
後悔は無いけれど、寂しさは雫となって溢れ落ちるのかもしれない。
右耳の砂時計のピアスに触れたチェレンチィは僅かに瞳を伏せた。
カイトは練達に起った事件を思い返し、何事も無く営業しているバーに感心する。
きっとこの希望ヶ浜の人々は務めて平穏を装っているのだろう。
「はぁ」
カイトは溜息を吐いて燈堂家の面々の顔を思い浮かべる。
何か抱え込んでいる事は分かっているけれど、不用意に深入りするのも気が引けてしまうのだ。
嫌な予感というものは常に渦巻いていて。
それを押しのけるように、カイトはチョコレートリキュールの甘いカクテルを煽った。
ルナールとルーキスは希望ヶ浜にあるバーに足を踏み入れた。
お互い忙しい身の上で、こうして練達まで足を運ぶのも珍しいのだ。
だからこそ新鮮で楽しい。
「ということで折角の縁だし。前行ったバーにご案内」
「ほう、バーは好きだぞ。結婚前はたまに飲みに行ってた」
「一人で?」
「まあ、な。でもルーキスと一緒にバーで飲む方が好きだな」
ルナールの言葉に嬉しくなって彼の腕を掴むルーキス。
ソファに並んで座った二人はアルコールのメニューを捲る。
「アルコールはうーん、今回は弱めかな? 今年のグラオクローネは軽い休肝日ってことで」
「休肝日かぁ、うん。別に構わんぞ?」
それにとルーキスはルナールに寄りかかる、アルコールはチョコに入ってるもので沢山取っているから。
過剰な砂糖は身体に毒だと微笑むルーキス。
「流石俺の奥さん、出来る嫁を貰って俺は幸せもんだよな」
「何事も過ぎれば毒って言うけど、お兄さんへの愛情は毒にならないから良いよねー」
彼女から貰う愛情ならば、毒だとしても構わないとルナールは目を細め妻の頭を撫でた。
ソファ席に並んで座る暁月とアーリア。
「たまには外で、もいいでしょう?」
気兼ねなく飲みに行くのは好きだけれど、流石に毎度は少し遠慮してしまうから。
それに本格的なカクテルが飲めるのはバーの醍醐味だろう。しかも、最近は和服で日本酒を飲む姿ばかり見ていたからスーツが新鮮に映る。
「暁月さんって、一番好きなお酒ってなぁに?」
アーリアは「アデプト・トーキョー」を揺らし上機嫌に言葉を乗せた。
「日本酒かなぁ。何でも飲むけど……君は?」
「私はワインをよく飲むわね。けど――思い出深いのは、何処にでも売っているようなウィスキーかしら。ウィスキーと煙草、って憧れだったのよねぇ」
煙草も年に一度、義理の父の誕生日には吸うけれど。今日はその日ではないし嗅ぎ慣れない残り香は欠月に疑われてしまう。
「……ね、暁月さん。煙草ついでに思い出したこと、この際だから聞いてもいい?」
「ああ、どうしたんだい?」
「前に棚の中に灰皿とオイルライターがあったのが見えたんだけど……暁月さんって、煙草吸うの? なんとなくあれは暁月さんのものな気がして、ね」
その言葉に一瞬だけ遠くを見つめた暁月はウィスキーをカランと揺らす。
「うん、私のだよ。前は吸ってたんだよね。でも止めちゃった……とめてくれる人も居なくなったしね」
物悲しさを乗せる唇にアーリアは「ま、深入りはしないわ。イイ女は、触れて欲しくない所には触れないの」と胸元をつついた。
ブラウンライトに紫煙が揺れ、ジリっとした音と共に赤く煙草の葉が燃えた。
「やあ、待たせたね」
カウンターに座る天川に手を上げたのは暁月と龍成だ。
「お? 来たか。二人共呼び出してわりぃな」
煙草の火を灰皿に押しつけた天川は二人に向き直る。
「廻の具合はどうだ? 例の事件で病み上りだろう? 気を利かせたつもりだったが、誘ったほうが良かったか?」
「いや、流石に保護者として病み上がりにバーは連れて行けないな」
「まあ俺が保護者でもそう判断するな。と、まぁ湿っぽい話はこの辺にして…飲むぞ。今日は俺の奢りだ」
口の端を上げた暁月と天川を横目に龍成は一人でカクテルのメニューを見つめる。
「マジで? やったぜ。何飲もうかな」
「それと龍成よ。この間は悪かったな……。逢引きの邪魔しちまってよ」
「は!? 何だよ逢引きって、ボディとはそういうんじゃねーし! あいつは親友で男だ!」
「男? 女性のように見えたが……」
「詳しくは分かんねーけど、何か女の身体にもなれるようになったらしい」
頬を染めて頭を掻く龍成の背を天川はバンバンと叩いた。
「龍成、姉ちゃんとはどうだ? うまくいってるのか? 何、デカイ家にはよくあるからな……。身内でも色々よ」
「ん? ああ、別に前よりは連絡取ってるし」
「そうか、そうか。それなら良い」
頭をガシガシと撫でる天川に「やめろやめろ」と猫の様に抵抗をする龍成。
「暁月は仕事も回してくれよ? 役には立つとは思うぜ。あとな……この町ぁなにか変だ。元刑事の勘としか言いようはねぇし、余計な世話かもしれんが気を付けろ」
「ありがとう。気を付けておくよ。何かあれば頼りにさせて貰う」
天川の呼び出しから始まった奇妙な縁。されど、この出会いに杯を交し、共に酔いしれる。
●
「ハッピーバレンタイン! チョコやクッキー、白雪さん達が好きそうな食べ物も持ってきたよ。
お肉とか……好き、だよね?」
「にゃーお!」
この所、祝音が来る度に白雪はとても嬉しそうだ。
祝音が用意してくれたお肉を必死な感じで食べている姿に自然と笑みが溢れる。
「見ていて幸せだなぁ……あ、僕もチョコケーキ1つ欲しい、です」
「はい、どうぞ」
廻が差し出したケーキを祝音は受け取る代わりに、チョコを渡す。
「あ、廻さん……大丈夫? 元気無いって聞いたけど。チョコ、食べれる?」
「ふふ、今は少し体調が良い感じです。ありがとうございます。白雪も祝音さんと一緒にチョコ食べたいのかな?」
「そうなの?」
猫の見た目ではあるが、おそらく何でも食べる事ができるだろうが、少し心配ではある。
「心配ならお肉でも。一緒に食べられるのが嬉しいみたいですね」
「そっか、じゃあ一緒に食べよう」
同じ味を共有し、楽しみ合うのは其れだけで仲良くなれたように思えるから。
祝音と白雪は楽しくバレンタインを過ごすのだ。
エルは手作りのおせんべいチョコを手に燈堂家に来ていた。
可愛くラッピングされたお菓子を手にエルはシャイネンナハトであった子供を探す。
「うーんうーん。シャイネンナハトに、お会いした、おめめを隠したあの子はどこに?」
目隠しをした少年を探してエルは人の気配が無い蔵へ来ていた。
戸が開いているということは入っても問題無いのだろう。
くいっと袖を引かれ振り返れば目隠しをした小さな少年が首を傾げている。
「シャイネンナハト、エルの事、内緒にして頂いて、ありがとうございます。あまあまぱりぱり、幸せ、おすそわけ、ですよ」
この少年を見ていると砂漠で会った『彼』を思い出す。強くて怖くて、とても意地悪で。
「だけど不器用で、とっても愛情深い方、なんですよ。もっとお話すれば、良かったって、エルはちょっと、後悔しています。だって、いなくなったら、お話が、できなくなっちゃいますから」
そういえばとエルは手を口元に当てて目を瞬かせる。
「エルはちゃんと、自己紹介していませんでした。エルです。よろしくお願いします」
「ふむ……我はこの地を統べる蛇神だ。繰切と呼ばれておる。まあ、この姿は分体だがな。お主が会ったのは我の前身だな。ああ、そうだ。この菓子も聖夜の菓子も美味かったぞ」
ぺこりと頭を下げたエルのつむじをむにむにと押した繰切少年は、口の端を上げて「ではな」と闇の中に消えて行った。
「やっほー、みんな元気してた? この前は大変だったね」
チョコの袋を掲げやってきたサクラは暁月の前にやってきて包みを手の中に置いた。
「はい、暁月さん。ハッピーグラオクローネ! 晴陽ちゃんからチョコ貰った?」
「いやぁ、絶対くれないと思うね。義理でもくれなさそう」
「あ、これ廻さんにもどうぞ! 日持ちするやつ選んだから、今食べるのしんどかったら調子良い時にでも食べてって伝えてね」
「ありがとう。渡しておくよ」
サクラは勢い良く振り返り龍成にもチョコを押しつける。
「龍成くんにもはい、どうぞ! 買ってきたやつだから美味しいと思うよ多分!」
「お、おうありがとな」
早速包みを開けた龍成の目の前をサクラの指が通り過ぎ、一つ摘まみ上げ戻って行く。
「ほういえば……」
「いや、お前が食うのかよ」
「晴陽ちゃん竜の襲撃で怪我しちゃったんだからね。大事ないみたいだけど、ちゃんとまたには元気な顔を見せとくんだよ?」
実の姉よりも世話焼きな姉貴分に「分かってる」と自分もチョコを食む龍成。
「わーい! 廻達のおうちのごはん、俺大好き!」
チョコケーキに目を輝かせるイーハトーヴは和リビングに顔を出した廻の手を握った。
「ねえ、廻。俺ね、苦しい時は無理に元気を出さなくてもいいと思うんだ。言ってる俺も、自分じゃ中々上手くできないんだけどね」
廻はいつでも大丈夫だと笑っているし、その笑顔が大好きだけど。その笑顔の下に無理を隠して欲しいわけじゃ無い。
「笑いたい時に笑う方が良い。廻、君は本当に頑張り屋さんだけど、ここ暫くだけで本当に、本当に色んなことがあったから。だから、その……君が、君の歩幅で、ゆっくり元気になれたらいいなって」
イーハトーヴは廻をふわりと抱きしめて大丈夫だと背を撫でる。
「……ありがとうございます」
「俺、また会いに来るね。君が少しずつ元気になれるようなお喋りを、いーっぱいできるように!」
「はいっ! 僕も頑張って元気に……」
「無理はしないように、だよ?」
「あ、う……はい」
頑張って元気にならなくても良いのだとイーハトーヴはぎゅうと廻を抱きしめて優しく微笑んだ。
「今年は和菓子に挑戦、してみました。……チョコと関係なくなってしまいました、が、気持ちはばっちり、です……!」
「凄いじゃないですかメイメイさん。じゃあ僕からも」
廻とメイメイはお互いに手作りのお菓子を交換しあう。
「わあ、廻さまのチョコもかわいくて、美味しそう」
紅茶と一緒に食べても、ココアと合わせて甘々に浸るのも幸せだろう。
けれど、気になるのは廻の体調だ。
「廻さま、やはりまだ本調子では」
「大丈夫ですよ。心配かけてすみません」
「いえ、いいえ、無理は、なさらず。その日その時の、楽しいひと時も大事です、が、わたしは、もっともっと、廻さまとお出かけしたり、遊んだり、したい、です」
何かあれば力になりたいのだとメイメイは廻の袖を握る。その小さな手を包み込んで廻は「ありがとうございます」と眉を下げた。
「僕もメイメイさんと一緒にお出かけしたいです」
「はいっ!」
傷が癒えたらまた何処かに遊びに行こうと約束をして――
「んー……流石にあちこちから匂いしすぎて鼻がバカになりそ」
バレンタインというものは甘い香りが街中から漂う季節だ。
あまり人に懐かない猫のようなラズワルドが燈堂家にやってきたのは、少なからず廻に『同じ匂い』を感じたからなのかもしれない。他人の心配なんてしない独りぼっちで気ままな野良猫とて、同類だと認識した者を気に掛けるぐらいには優しさがある。
「やぁ、まだ寒い日が続くねぇ? ちゃんとお腹あったかくしてるー?」
「ラズワルドさん、来てくれたんですね」
「まあ、ね。ぬくぬくしにきただけだよ」
お見舞いとかはよく分からない。ただ、チョコの時期なので手土産を持って遊びに来ただけ。
多少は気遣いもするが、ラズワルドにとって廻はまだ数回しかあったことの無い他人だ。
でも、弱ってるなら少し優しくしても良いかなと思ったのだ。
「手土産もちゃあんとココに。ねぇ、今日の僕はイイコでしょー? 褒めてもいいよぉ」
「ありがとうございます」
二つのチョコレートは普通のトリュフとお酒の入ったボンボンショコラだ。
「お酒の方は今日はお預けかなぁ……大丈夫、逃げないよ。また今度飲もうねぇ? だから、ほら、熱が上がらない内に寝なよ。大丈夫ぽんぽんしてあげるよぉ」
ふにゃりと笑ったラズワルドに促され、廻はお布団の中に潜り込んだ。
「ハッピー……グラオ・クローネ」
チックは燈堂家の人々が元気に過ごしているだろうかと思いながらやってきた。
子供達にチョコを配り、廻の所に顔を出す。
「安静にしてた方がいいから、ちょっとだけ来たよ。クッキー……とても美味しかった。ありがと、ね。それと手作りのチョコ……きっと美味しく出来てる、筈。元気になったら食べて?」
「わぁ、ありがとうございます。嬉しいです」
「そういえば、目隠しの子……知らない? あの子もお菓子、好きみたいだったから。良ければ渡したいな……って」
「あー、それは多分繰切様ですね。ええと……会えるかな」
「繰切様?」
「はい。この燈堂に奉られてる神様です」
そんなに簡単に神様に会えるのかとチックは首を傾げる。
「何だ、そんなに我に会いたかったのか? おお、それは菓子だな。有り難く頂戴するとしよう」
廻の布団の中から目隠しをした少年が現れ、チックのチョコを嬉しそうに頬張った。
「やあ、廻。調子は……まだ良くはなさそうだな。とりあえず、この間は命が無事でよかった」
あまねも大丈夫かと心配そうに眉を下げる竜真は、廻の隣に腰掛ける。
「あの時は流石に焦った。いや焦ったどころの話じゃなかったんだけどな。まさかここであんな沙汰になるとは思わなかったから」
「心配かけてすみません」
「無事なら構わない」
頭を撫でた竜真に廻は笑みを浮かべた。
「ああ、そうそう。今日はグラオ・クローネだからな。本当ならチョコを、と思ってたんだけど。まだ怪我が治りきってないだろ? 血の巡りが速くなるとまた障るかもしれない。だから俺からは今日はお預けだ」
「えっ」
しょんぼりとする廻の頬をむにむにと摘まんで「今度な」と微笑む竜真。
「その代わりにと言ってはなんだが和菓子を持ってきたんだ。どうだ?」
「わぁ! 嬉しいです!」
「逃げないから落ち着け」
目を輝かせる廻にどちらが年上なのかと竜真は溜息を吐いた
「お兄さん、体調良くないの? あのね、ルシェのお水飲むとちょっと元気になれるのよ! このコップ借りても良いかしら?」
キルシェはコップに注いだ聖水を廻に差し出す。
「ルシェもね、体丈夫じゃないから良く体調崩して寝込んじゃうの。でもルシェのお水飲んでゆっくり休むと元気になるの! だからお兄さんもお水飲んで、ゆっくり休んで元気になってね?」
こてりと首を傾げたキルシェは「そういえば」と居住まいを正した。
「ルシェはキルシェです! お兄さんのお名前教えてください!」
「あ、廻です。お水ありがとうございます」
「廻お兄さんね! 一緒に遊びたいけど、今は廻お兄さん元気になる方が大事だから、元気になったら一緒に遊んでください! あ、グラオクローネのチョコレートも元気になったら食べてね!」
じゃあと走り去っていくキルシェをぼうと見つめ、廻は小さく微笑んだ。
キルシェが走り去って行った直ぐ後に顔を覗かせたのはちぐさだ。
二人とも初めて会うイレギュラーズ。今日は何だか新しい出会いがいっぱいで嬉しくなる廻。
「はじめましてにゃ……廻、かにゃ? ちぐさにゃ!」
「はい。燈堂廻です。はじめましてちぐささん」
照れた様に顔を見せるちぐさに廻は微笑んで手招きをする。
「廻、まだケガ痛くないにゃ? おもてなしとか気にしなくていいにゃ。廻はちゃんとお布団入って横になるにゃ。これでものんびりお話とかできるにゃ」
ちぐさと廻は『初めて』会うのだ。
それがこんな風に弱った所を見せて申し訳ないと廻が謝るものだからちぐさは首を横に振る。
「違うにゃ、それは体が休みたがってるからにゃ。気にする必要ないにゃ」
廻を布団に押し込めて、ちぐさは頭をよしよしと撫でた。
「僕のこと屈強なおじさんとか期待してたかにゃ? ガッカリさせてないかにゃ?」
「ふふ……いいえ。可愛らしい方だなと。会ったら優しくて可愛くて」
「廻も思ってた以上にあったかくてふんわりだったにゃ!」
ちぐさははみ出ていた廻の手を握り布団の中へ仕舞い込む。
「元気になったら一緒にお酒飲むにゃ! だから、今はおやすみにゃ!」
「はい、また今度」
目を瞑った廻に満足したようにちぐさは笑みを零した。
眞田は廻の額に手を置いて熱を測る。
「まだ熱ありそうだね……こんなことになるとか思いもしなかったよ」
「あ、怒ってますか?」
布団の中に入っている廻の傍に座り込む眞田。親友の頭を抱き寄せて小さく溜息を吐いた。
「少しね。燈堂君にじゃないけど。去年も色々あったし、なんでこんなことになんのかなって」
コンビニの袋からチョコを取り出して廻に渡す。
「まあ、糖分摂ると元気になるよ」
「……じゃあ、半分こしましょ」
元気の無い廻に気遣われ、頭を掻いたあと眞田はチョコを半分に割った。
「慣れない事するもんじゃないな」
「ふふ、美味しいですよ」
「俺にとって燈堂君の存在って思ってるより大きいんじゃないかなって思う時あるよ」
素直な言葉に廻は瞼を瞬かせる。
「いや、まあ……今日ぐらいは。つまり、いつもありがとうってこと!」
「はい。僕も眞田さんが大好きですよ。感謝しています」
同じチョコを半分にして笑い合うぐらいには、きっと大切な親友だから。
この日々が何時までも続くといいなとお互いに思ったのだ。
「ハッピーバレンタインだよぉ~!」
「シルキィさん」
微笑み合う二人は離れで甘い一時を過ごす。シルキィから貰ったチョコのお返しに廻も自分で手作りチョコをプレゼントしたのだ。贈りたい人の喜ぶ顔が見たくて楽しくて。
「廻君の気持ちのこもったチョコ……もちろん頂いちゃうよぉ、大事に食べるからねぇ。これでお互い贈りあっちゃったねぇ……ホワイトデーも、きっとお互いお返しし合おうね」
こくりと頷く廻の顔を覗き込むシルキィ。
「それにしても廻君、ちょっと熱があったりしないかなぁ?」
これでも保健の先生だからと微笑むシルキィが廻と自分の額をぴたりとくっつける。
廻の頬が赤いのは微熱のせいもあるけれど、彼女の温もりを間近に感じるからだ。
「……わたしはいつだって一歩遅くて、キミが傷付いてからしか力になれなくて。
幸せでいて欲しいのに、『キミに苦しい思いをさせない』なんて約束は出来なくて」
「シルキィさんのせいじゃないですよ」
「うん、そう言うと思ったよぉ。けれどね……きっとキミも皆も、ずっと皆で仲良く過ごせる時が来る筈だから。来させてみせるから。だからその時までは、せめてわたしに癒させて」
だから休めるときに休んでと頬を撫でるシルキィの手を取る廻。
「じゃあ、少しだけ甘えていいですか?」
縋るようにシルキィを引き寄せ抱きしめた。その背をシルキィが優しく撫でる。
こうして『甘えて』くれるようになった事をシルキィは嬉しく思う。
最初の頃は大丈夫だと言って我慢していたのを知っているから。それだけシルキィが廻にとって特別な存在なのだろう。
「本調子になったらまた色々遊びに行こうねぇ。お酒だって奢っちゃうよぉ~!」
「ふふ……はい。楽しみですね」
二人で笑い合って和やかな一時が過ぎていく。
「廻君は、また熱が出ているのだろうか」
離れに顔を出した愛無は熱っぽい廻の首筋に手を当てて体温を測る。
この所色々な事があったから仕方の無いこととはいえ、儀式にしろ何にしろ廻への負担を減らせればいいのだがと愛無は眉を寄せた。
「まぁ、嘆いても仕方ない。できる事をしていくしかあるまい。此処は『看病いべんと』というヤツだな」
「看病イベント……」
「うむ。病気の時はじゃぱにーずかゆだな」
お盆の上に置かれた土鍋の蓋を開ければ湯気と美味しそうな匂いが部屋に溢れる。
「夕夏君と一緒に作ったのだ」
「え、夕夏さんと?」
廻の指先が僅かに震える。愛無は大丈夫だというようにその手を握りしめた。
「大丈夫一緒に作ったから『夕夏君は』何も出来なかった」
「愛無さんは……」
「君が回復しやすいように隠し味を入れたよ」
「隠し味」
何を入れたのかは敢えて聞かないが、愛無になら何をされても構わないし、悪いようにはされないと信頼しているから「ありがとうございます」と廻は微笑んだ。
「あと、手紙を預かってきたのだ。直接会うのはまだ怖いだろう。だからまずは手紙をな。きっと悪い子ではないから許してやってほしい」
「……はい。ちゃんと読みます」
「ありがとう。……さて、ふーふーしてあげよう。熱いからな」
「えっ」
小さな土鍋から掬ったおかゆに息を吹きかけ廻の口元に運ぶ愛無。
口を開けて大人しく待っている廻の舌に出汁の効いた優しい味が広がった。
暗がりの離れでボティは龍成を呼びつける。
「今から渡す物がありますから。ほら、そこに座ってください」
素直に畳へ座った龍成の近くに寄って後ろに隠していたチョコを目の前に出した。
「え、何……くれんの?」
龍成の問いかけにボディは己が緊張していることを自覚する。
「自分で作りました」
「は? お前が作ったの?」
一から十まで自分の手で作った『龍成の為』のチョコだ。
少し疑っているような瞳の龍成によく見えるようにもう一歩近づいて見せる。
「口に合うなら嬉しいし、喜んでくれるのなら更に嬉しいで……おっと」
前のめりに倒れかけたボディの腰を龍成が支えた。
さらりと落ちてくる黒髪、薄明かりにボディのエメラルドグリーンの瞳が揺れる。
「……どうですか、嬉しいですか龍成」
「嬉しい嬉しい」
「そうですか、それは良かったです。それと、後で感想を言ってくれると助かります。来年の為に改良したいですからね」
「来年もくれんの?」
チョコを受け取り畳の上に置いた龍成は向き直り、嬉しそうにボディの顔を覗き込む。
両手で頬を摘ままれてボディの顔に熱が昇った。
この理解不能な『熱』の意味が分からなくて、ボディはじっと龍成を見つめる。
何故と己の内に問いかけても解は見つからないまま。
されど、頬を包む手の温もりが心地良い事は確かだった。
鈴は暁月を自分の部屋に呼び出す。
先日の事件は大変だったと眉を下げ、暁月を心配そうに見つめた。
「先生は大丈夫ですか……? 少し痩せたんじゃ……」
「大丈夫だよ、鈴」
鈴は意を決して牡丹から聞いた話しを暁月へと問いかける。
暁月も廻も『封呪』無限廻廊へ取り込まれない方法。
「……無限廻廊の本霊のありかを教えてください」
その言葉に暁月は目を瞠る。
「それを知って俺に何ができるのかまだわからない。でも、廻さんにも負担をかけるんでしょう? 俺は、燈堂の誰かがひとりでもいなくなるのは嫌なんです!」
少年の必死な訴えに暁月は「そうだね」と肩から力を抜いた。
「ゆっくりするって言ったのに、ごめんなさい。俺にできることがあったら、何でも言ってくださいね。何もできなくても、俺は先生を守りたい」
「ありがとう鈴。これは燈堂の問題だ。門下生である君にも知っていて欲しいことだ。私ではどうしようもなくなるかもしれないからね」
しっかりと少年を見据え暁月は言い放つ。
「無限廻廊の本霊は――『廻の中に』ある。でも、誰にも奪われてはいけない。あの子の命と繋がっているものなんだ」
「廻さんの命と?」
「ああ、後ほど詳しく他の門下生の皆にも説明しよう――」
●
「初めまして、テアドール君! ハッピーグラオ・クローネ!!」
テンションの高い萌の声にテアドールは目を瞠り「初めまして」と挨拶をする。
「お見舞いと、君と一緒に甘いひと時を過ごさせて貰おうと思って、チョコを用意して来たんだ! 是非、君の事やシリーズの事をお喋りしよう! 決して取材などと言う気持ちは……まぁ少しあるが! 仲良くしてくれると嬉しい!」
早口で捲し立てる萌に圧倒されつつ、彼の手を握り返すテアドール。
「僕も仲良くして頂けると嬉しいです」
微笑む少年に萌は満足したように包みを取り出した。
「生チョコレートだ。普通のチョコよりも柔らかく、滑らかなんだ。美味しいよ?」
「ほわ……」
「コーヒーは好きだろうか? 生チョコレートにも合うんだ」
興味津々に頷いたテアドールと共に萌はお茶会を楽しむ。勿論、テアドールやシリーズをスケッチするのも忘れてはいない。
治ったら何処へ遊びに行こうかと期待を膨らませ、この一時を共に楽しんだ。
「テアドール殿、退屈していないだろうか?」
「見舞いの品として用意してきたぞ」
研究所に顔を見せたのはアーマデルと弾正だ。
弾正の手には時代劇アニメ『アバRainbow将軍』のBlu-rayコンプリートBOXが握られ、アーマデルはクッキーを掲げている。
「七色に輝きサンバを踊る将軍様が、弱きを助けて悪を断つ! 勧善懲悪モノの傑作! しかも練達の電気街ではなかなか手に入らない限定版だッ!!」
宝物ではあるが、是非受け取って欲しいとテアドールに差し出す。
「君が共に戦ってくれなければ俺は愛する人と共に生きて帰れなかったかもしれない。本当にありがとう」
「はい。とても嬉しいです」
「これはお見舞いのクッキーだ、よければ兄弟達と食べてくれ。あとこれは『必殺私事人』のコミックだ」
時代劇アニメに必殺私事人。テアドールの知らない未知の世界がこの世にはまだまだ沢山あるらしい。
「何があろうともプライベートを大事にする為、どんな手段を使ってでも裏と表の仕事を定時に納める敏腕始末屋の時代劇でな……おっと、これ以上はネタバレになってしまう」
しいと指を唇につけるアーマデルは本を指差して「参考になるぞ」と口にする。
「俺は起きてる時間は全て仕事か待機時間みたいな生き方だったからな、いろいろと参考になったぞ。弾正は頼りになる大人だ。多分」
「多分」
「だから、何か困った事があったら遠慮なく相談してくれ」
「そうだな。今後も、アーマデルと仲良くしてやってくれ。俺とも……回復したら、アバRainbow将軍ごっこで盛り上がろうじゃないか!」
勢い良く言い放った弾正を連れて、「じゃあな」と去って行くアーマデル。
彩り取りの花を沢山抱えたヴェルグリーズは星穹と共にテアドールの研究所を訪れる。
場違いではないかと心配する星穹は、それでも他でもない相棒のしたいことだからと着いて来たのだ。
「そうだ、テアドール殿。こちらが星穹殿。とても頼りになる、俺の相棒だよ」
「お話は予々彼から伝え聞いております。ヴェルグリーズの友人の星穹と申します。どうぞ宜しくお願いしますね、テアドール様」
機会があれば会うこともあるだろうと握手を交す星穹とテアドール。
「それでね、テアドール殿には一言謝らなければと思っていたんだ。先の依頼では無理をさせてしまって申し訳なかった」
「いえ! そんなこと無いです」
「相手が竜種とはいえ、それは何の言い訳にもならない。俺が甘かった結果、こうなってしまった。本当に申し訳ない」
ヴェルグリーズの謝罪にテアドールは慌てたように首を振った。
その間星穹はシリーズと共にお茶を用意する。人ならざる彼らが紡ぐ絆に割って入る事は無粋。
もし、彼らが助けを求めるのならばそれに応えれば良いのだ。
「――でも、最後に庇ってくれたおかげで俺は最後の一撃を竜に見舞うことが出来た。だからとても感謝しているというのも事実なんだ。本当にあの時はありがとうテアドール殿」
「えっと、はい。何だか温かくてそわそわしてしまいますね――これが生きて居て良かったという感情なのでしょうか」
「そうかもしれないね。そういえば今日はグラオ・クローネだろう? 一緒に食べようと思ってポテトチップスにチョコをかけたものを持ってきたんだ」
「ふふ、テアドール様は、甘いものはお嫌いではありませんか? お茶を用意しましたから、良ければ一緒に頂いてくださいな」
タイミングを見計らってお茶を運んできた星穹にテアドールはお礼を言ってチョコを食む。
「もちろん星穹殿も。今日は俺の我儘に付き合ってくれてありがとう」
「……まぁ。私、貰いすぎてばかりでは居ませんか?」
既にお互い交換したチョコレートがあるけれど、それは大切に食べたいから。
願うは溢れんばかりの祝福と、貴重な出会いが続いて行きますようにと。
ヴェルグリーズと星穹はお互いの顔を見つめ笑い合った。
●
見慣れた黒髪に目を細めた正純は「いらっしゃい」と遮那に告げる。
「明将なら奥の方で竹刀を振っていましたが……。呼んできましょうか? 街へ出かけるのであれば着替えさせてきますよ」
星の社に正純と共に住んでいる少年が目当てなのだろう。
「すまぬ。今日は買い物にな」
「ああ、今日はグラオ・クローネでしたか。なるほどなるほど、皆さんでお菓子を買いに行くのですね?」
くすりと笑った正純に視線を上げる遮那。
「あっ……。その、私は今年は特別にご用意出来てなくてですね。その代わりと言ってはなんですけれど」
この前練達国へと赴いた際に買ってきたちょこれいとを遮那に手渡す。
「帰ったら是非食べてみてください」
「ありがとう、正純!」
以前よりも朗らかに、温かく笑うようになった遮那を見つめ目を正純は細める。
逞しくなったその背に「いってらっしゃい」と声を掛けて星の社から手を振った。
「久しぶりな感じする……」
「そうだの。タイム達も色々あったと聞いておるぞ。会えなくて少し寂しかった」
「えっ」
「ふふ、その様な顔をするのが嬉しくての、ついつい揶揄ってしまうの」
悪戯な笑みを浮かべた遮那にタイムは頬を染めて「もう」と少年の腕を突く。
あの頃の様な細腕ではない。しなやかな筋肉が感じられる。以前より身長も伸びて逞しくなった。
何だか変な感じだとタイムは首を横に振る。
「……ええっと。 そうそう! 勧めのお店調べてきたの! ここ! 今日限定のチョコ団子があるんですって。一緒に食べようと思って、ね?」
共にチョコ団子を食みながら、街の中を歩くタイムと遮那。
ふと、遮那の指先がタイムの頬に触れる。
「んっ? なに?」
強めに触れた指の腹が離れたと思えば、それを遮那はぺろりと舐め取った。
「えっ、あ……」
「ふふチョコが付いておったぞ」
「……!」
顔に上がってくる熱と、表現し辛い情動に息をするのが精一杯で声を出すことさえ出来なかった。
「遮那くんのお気に入りのお菓子とかありますか?」
首を傾げるルル家に全部美味しいと微笑む遮那。
今年のチョコは自信が無いのだ。それを彼は気にしないだろうけど、乙女心は複雑だ。
されど、こうして間近で見る遮那の顔を意識してしまうと、どうしても聖夜の事を思い出す。
「どうしたのだ? 顔が赤いぞ? 熱か?」
「い、いえ!」
化粧で誤魔化せぬ程、朱を散らしている事に恥ずかしさを覚えゴーグルを装着したルル家。
「ゴーグル……」
「その! これは体調が悪いとかではなく! むしろ血行はすこぶる良好といいますか! それが問題といいますか!」
覗き込む遮那の顔から視線を逸らし、呼吸が荒くなるのを落ち着かせるように胸を掴む。
ふわり頭に置かれた指先に、ルル家の頬は赤みを増して――
一生懸命作ったマロングラッセを手に朝顔は遮那の隣を歩く。
「これは、初めて見る菓子だの」
「えへへ。これも甘味ですが食感はチョコとはまた違いますから。チョコとはまた違った味わいで美味しいですよ」
「其方が作ったのか?」
「はい! 味は一番マシなのを選びました」
頬を染めて焦る朝顔に遮那はくすりと微笑み、一口食んで「美味しい」と目を細めた。
「異世界では『永遠の愛を誓う証』の意味があるそうです。ある国の英雄が最愛の妻に贈ったのが由来だそうで……だから私も遮那君に渡したかったんです!」
「そうか、ありがとう、嬉しいぞ」
朗らかに笑う少年に朝顔は恋をしている。
彼の行く先を妨げる試練は多いのに、そのどれをも越えて往く誠実な心の在り方が好きだ。
この闇と差別が渦巻く豊穣の地で、誰もが平等だと疑わず輝かんばかりの笑顔が好きだ。
見た目なんて関係無い。その心に惹かれたのだ。
それに比べて自分はどうだろう。背が高くて割れ舌の見た目を気にする心。
弱い心を持っているけれど、それでも今だけは。
「遮那君。大好きです。私の思い事、受け取ってくれませんか?」
「ふふ……応とも。ありがとう向日葵」
この瞬間だけは朝顔只一人に向けられる朗らかな笑顔なのだ。
うつらうつらと舟を漕ぐ鹿ノ子は背に感じる温かさに瞳を瞬かせた。
「……ああ、ごめんなさい。眠ってしまっていたんですね」
「問題無いぞ」
忙しい遮那の貴重な時間を貰っているというのに、彼の温もりに安心して瞼が落ちてしまうのだ。
「……そうそう、今日はこれを渡しにきたんです。ハッピー、グラオ・クローネ」
今年は頑張って手作りしたのだというチョコレートを嬉しそうに受け取る遮那。
「……だいすきです。遮那さん」
目を細め伝う鹿ノ子に「ありがとう」と遮那は微笑む。
眠れない日々は続いていて、歌声も止まないけれど。
歌声の主が誰であっても自分にとって大切な人だったとしても。
「それでも、今の僕には遮那さん以上はいないって、それだけは本当です。本当なんです」
鹿ノ子は縋るように指先を遮那の頬に添えた。
「遮那さん」
許されるなら。どうか。拒まないで。獣の姿じゃなく人の姿でその頬に口付けを落すことを。
記憶の蓋はもう壊れていて、いつ中から溢れ出してもおかしくない。
何を得て何を失うか。忘れたくない、忘れて欲しくないと願うから。
だからどうか。あなたの心に『僕』を刻ませてほしい――
鹿ノ子の優しい香りと共に訪れた柔らかな唇の感触。頬に落された口付けに遮那の心臓は大きく脈打つ。
朱を散らし琥珀の瞳を見開いて、遮那は添えられた鹿ノ子の手を取り、指を絡ませた。
「……」
何をどういえば良いか迷っているような視線。それでも嫌がられているのでは無い事は分かる。
「照れる、のだ……」
真っ赤な顔をした遮那が絞り出した言葉に鹿ノ子は目を細め温かな笑みを浮かべた。
●
極寒のヴィーザル地方、夜空には星々とオーロラが浮かぶ。
シャールカーニはホットチョコから立ち上がる湯気を見上げ、満天の星空を眺めていた。
同じ夜空の元、雪原で星を見上げるギルバート。
それを見つけたエステルはゆっくりと近づいていく。
彼女が来た事を告げる精霊の知らせに振り向いたギルバートへエステルはチョコの包みを掲げた。
「ハッピー、グラオ・クローネ。ギルバート様。少し時間を貰ってもよろしいでしょうか?」
トリュフの小箱をあけて微笑むエステルにギルバートも快く頷く。
「今年はトリュフを作ってみました。どうぞ」
「ふふ、ありがとう。では遠慮無く」
エステルは摘まんだトリュフをギルバートの口に運ぶ。
秘めた想いを込めたチョコレートはきっととても甘いに違いない。
手作りのチョコを携えギルバートの家を訪れたジュリエット。
ソファの隣に座るギルバートを横目で見ては俯く事を繰り返している。
聖夜に彼へ気持ちを伝えたのは後悔していないが、正直どんな顔をして会話すればいいのか分からなくなってしまった。されど、このままではチョコを渡す事も出来ないまま時間だけが過ぎてしまう。
ジュリエットは心配そうに覗き込むギルバートに意を決して向き直った。
「あの。噂ですが、膝の上でチョコを食べさせると仲が深まると聞きました」
試しても良いかと問う少女をギルバートは軽々と持ち上げて膝の上に乗せる。
「これでいいかい?」
「……はい」
高鳴る鼓動に朱を散らし、ジュリエットはギルバートの口元へチョコを差し出した。
「それでは、どうぞ。あーん」
唇へチョコが吸い込まれていくのをじっと見つめて居たジュリエットの指先がギルバートの舌へ触れる。
「あ、すまない。チョコに夢中になっていた」
「いいい、いえ!」
恥ずかしさと胸の高鳴りと、楽しい気持ちが漂って。お互いクスリと笑い出す。
「ありがとうございます、ギルバートさん」
ふいにギルバートの頬に触れた温もり。家族にするような親愛のキスがジュリエットから送られる。
「お礼をいうのはこちらの方だよ、ジュリエット」
チョコも甘くて美味しかったと囁くギルバートの唇が、紅染まる耳朶にそっと触れた――
窓から見える雪景色と温かな暖炉の音。
レッドは不安げに靴を脱いだ。アルヴァになら全てを委ねても構わないと思うから。
「そういえばレッドさんは元々こっちの方に住んでたんだっけ?」
「ん、ヴィーザル地方には領地でお邪魔してるだけ」
隻腕のアルヴァがホットミルクを入れてくれるのをレッドが優しく支える。
他愛の無い会話。少し肌寒い室温。寂しいのだと零す代わりに伝う言葉。
「なぁ、少し寒くないか?」
「ん、寒い? ……こういう時は素直になってもいい……よ?」
甘えたいだけなのだと見抜かれている。
レッドに抱きしめられ心に温もりが広がった。
「言葉なくとも傍らに居るだけでも心はほっとしますから……ね。はい……貴方に幸福を、灰色の王冠を」
お手製のチョコを咥え、差し出すレッド。
外の雪の冷たさとは裏腹に、二人で過ごす夜は暖かく――
●
波の音が聞こえる十夜の自室に、美しい月の君が居る事が何だかむずかゆいと頭を掻く。
「洒落た部屋じゃなくて悪いな。これでもそれなりに整えたつもりなんだが」
「殿方のお部屋やし、そんなに気ぃつかわんでも。それに」
初めて訪れる彼の香りがする部屋に蜻蛉は目を細め安堵した。
棚に置かれた和柄の青い小物入れを見遣れば、懐かしさに目を瞠る。
初めてのグラオ・クローネで蜻蛉が贈ったものだ。
「あの時は寂しゅうて、どうやったら気づいて貰えるか考えあぐねて……んふふ」
ホットチョコカクテルを両手に懐かしいと伝う蜻蛉の唇。
「あの頃と比べたら……」
「――俺も随分と寂しがりになっちまったらしい」
大凡、十夜の口から出るとは思えない言葉に蜻蛉は目を瞬かせる。
「何でもねぇよ。『独り言』だ」
口の中に広がるほろ苦いカクテルの味。
あの頃と同じように、何時までも掴めない魚を追いかける蜻蛉が繋ぐ名。
「ねぇ、縁さん」
呼ぶ音が慣れなくて、自分の名を呼ばれていると気付くのに時間が掛かってしまった。
飲み干したカクテルは甘く甘く――
もじもじと此方を見つめるソアに目を細め、エストはぽんぽんと膝を叩く。
「おいで」
その言葉に笑顔で飛び込んだソアは膝に頭を乗せた。
「ソアの髪、とても手触りがいいね」
「撫でてくれるから」
エストの手が心地良いから髪を伸ばすようになったのだ。
「はい。ソア、あーん」
閉じた目を開けるとエストが薔薇のチョコを口元に運んでくる。
嬉しくて美味しくて彼の名前を何度も呼べば、近づいて来る唇にチョコが咥えられていた。
どうぞと視線を向けるエストにソアは嬉しそうに笑みを浮かべる。
とても恥ずかしくて照れくさいし、顔が赤くなるけれど。
「エストっ! あーんっ、ふふ……」
時間を掛けてゆっくりとチョコを端から食べて行くソア。
だって勿体ないではないか。エストがこんなにも可愛く差し出してくれているのだから。
続く抱擁も頭を撫でる指も、全部大好きで。
幸せが溢れて胸の高鳴りが止まらない。
アレクシアのツリーハウスでのんびりと過ごすグラオ・クローネ。
去年はシラスのお願いを聞いたので、今年はアレクシアが本を読んで貰うと約束していた。
「……こうして呪いが解けた女の子と旅人は結ばれて幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」
「ありがとう」
本を読んでくれたシラスの声が続く。
「これは幻想じゃ結構有名な昔話なんだけどさ、調べてみるとただの子供向けの作り話じゃあないみたいなんだよね」
実際に起きた事件がモチーフなのだという。それを調べればこの二人について分かるかもと首を傾けるシラスに勉強家だねとアレクシアは微笑む。
「私は物語はそのまま物語として読んでしまって、あまり背景まで調べたりしないことも多いからさ! そうやって調べてみようっていうだけでもすごいよね」
召喚されてから今までの分を取り戻すかのようにシラスは本を読みあさっているのだという。
幻想で上を目指すには何れにせよ知識はひつようだから。
「でもそれ以上に学べば学ぶほど色んなことが見えてきて息苦しく感じてるこの国が少し広がった気がするんだ」
「すごいね。……あ、でもモチーフになった場所があるのなら、今度そこに行ってみない? もっと新しい発見があるかもしれないし!」
物語の背景といえばグラオ・クローネの御伽噺にも元になった話しがあるのだという。
シャイネンナハトの聖女の話にせよ、語り継がれるものには来歴があるのかもしれない。
そういう物語を追ってみるのも楽しいかもと笑顔を見せるアレクシアにシラスも頷いた。
今年のグラオ・クローネは共に出かけることが出来なかったけれど、その代わりにザッハトルテを作って出迎えようと張り切るブレンダ。
「私とてやる気を出せばザッハトルテくらい作れるのだ……お、来たな」
疲れた顔で部屋に入ってくるシルトはテーブルの上に置かれたチョコケーキを見つめ感嘆の声を上げる。
「おぉー、前から思ってたけどブレンダって結構凝り性だよね」
「どうだ! 今年のチョコは! 力作だぞ?」
とりあえずシルトをソファに座らせて、ブレンダはお皿に小さく切り分けたザッハトルテを一掬い。
「ほ~ら、食べてみろ。あーん。美味いだろう? 私とてこれくらいは作れるのだ」
「ん、やっぱり美味い」
シルトは得意げなブレンダに目を細め、悪戯心が擽られる。
「あ、チョコついてるよ」
「味見したときについたか……こっちか?」
「そっちじゃないそっちじゃない。俺がとってあげる――」
次の瞬間訪れた唇への温かな感触。緩く開いた口の中に滑り込んでくるのは甘いチョコと温かな舌。
「どう? 自分の作ったチョコの味は」
「そ、そういう不意打ちはやめろと言っているだろうばかものが!!!」
口を押さえ真っ赤に朱を散らすブレンダにシルトは湧き上がる「可愛い」という情動に酔いしれる。
アントワーヌの部屋は白を基調とした清廉な雰囲気だ。
「可愛いお姫様達に囲まれるのも悪くないけれど、私の愛しいお姫様と二人で過ごすのは心地がいい」
「ふふ、俺からのプレゼントを受け取ってくれるかい? グラオ・クローネの贈り物、といったらチョコレートさ」
「ああ、愛しのプリンセスからグラオ・クローネの贈り物を貰えるなんて私は幸せ者だね!」
チョコを一粒摘まんだ行人はアントワーヌの口元へ運ぶ。
甘いチョコを味わう彼女に行人は視線を合わせた。
「俺にもくれないのか?」
「ふふ、じゃあ君にも……」
アントワーヌは行人の口にチョコを放り込んだ後、その手の甲に口付けを落す。
少し困ったようにアントワーヌを見つめる行人。
「驚いたかい? こういうの、嫌いじゃないだろ?」
一つ深呼吸をした行人の瞳は切なげに揺れる。
「こっちじゃなくていいのかい?」
唇を指差す行人の心の内側は分からない。いつものように揶揄っているわけでは無さそうだけれど。
お互いがお互いを好ましく思っている事を自覚している。されど行人は旅人である。
この先、元の世界へ帰還する可能性だってある。別離があるということだ。
一時の夢は不誠実なれど。想ってもいいのだろうか、この先の路を共に歩いてもいいのだろうか。
「いいのかい? あまり可愛いことを言うと本当にしてしまうよ? 行人君」
それでも、この一瞬の時を心通わせる事ができたなら。
アントワーヌの指先が行人の頬に触れた――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
ハッピーグラオ・クローネ!
幸せが訪れますように。
GMコメント
もみじです。バレンタイン(グラオ・クローネ)の日。
ゆっくりと楽しみましょう。
●目的
バレンタイン(グラオ・クローネ)を楽しむ。
●ロケーション
A:幻想国
・王都メフ・メフィートの広場や通りなどでお買い物。
ジルバプラッツ通りで少しお高いアクセサリーを選んでみるのも良し。
ラドクリフ通りで可愛いチョコをギフト用に包んでもらうのも良し。
プリマヴェーラ通りは少し怪しい露店で掘り出し物が見つかるかも。
・見晴らしの良い高台の広場などはデートスポットです。
昼は青空。夕方はオレンジ色に。夜には美しい夜景が広がります。雪がちらつくかも。
外はまだ寒いけれど、二人一緒にくっついているだけで温かいですね。
小さな出店もあり、簡単な軽食やホットドリンク、お酒があります。
・カフェやレストランでムーディに。
雰囲気の良い温かい店内はレースのカーテンと柔らかいソファで心地よい空間が魅力的。
カフェにはココアやミルクティ、軽食等があります。
レストランにはディナーが楽しめます。
B:BAR『luna piena』
練達国にあるバー。
ブラウンライトに照らされた室内に、ジャズが流れるお洒落なバーです。
本日は貸し切りなので店内では気兼ねなく寛げます。
カウンター席とゆったりとしたソファ席があります。
アルコールはもちろん、フードにもこだわっているので、どれも逸品です。
○アルコール
・アデプト・マティーニ
・アラウンド・ザ・セフィロト
・ミサオフィズ
・シンロン
・シュペリアル
・カスパライズ
・アデプト・トーキョー
・夜妖・オン・ザ・ビーチ
・他、ウィスキーにワインや各種果実酒、各種スピリッツ類、日本酒等
各種定番のカクテルにリキュールとフレッシュジュースを使ったオリジナルまで。
ノンアルコールやフードもあります。
C:燈堂家
練達国の希望ヶ浜にある燈堂家に敷地です。
日本の旅館を思わせる作りをしています。
中庭や大広間、和リビングなど。
振る舞われるのは、手作りの家庭料理が中心です。チョコケーキもあります。
子供達も大勢居ます。わいわいと騒ぎたい人はこちら。
庭園や離れに静かな場所もあります。
D:研究所
練達国にあるテアドールが所属する研究所。
アバター被験者管理システムAIのシリーズが沢山居ます。
一般人は立ち入る事はできませんが、イレギュラーズは特別に遊びに行けます。
シリーズが仕事をしていたり、お茶を出してくれたりします。
・テアドールが修理している所に行くことが出来ます。
(OPでは予備パーツで出歩いていました。本物のパーツの修理は時間が掛かるようです)
E:豊穣
カムイグラ天香邸の周辺。
天香邸や高天京では大陸から渡ってきたチョコをアレンジしたものが流行っているとか。
遮那は甘い物が好きなので、グラオ・クローネを楽しみにしています。
街でお散歩やお買い物も出来ます。
F:ヴィーザル地方
鉄帝国ヴィーザル地方、ヘルムスデリー村周辺。
雪に包まれた銀世界の村です。
冷たいチョコを温かい部屋で食べるのも良いですね。
静かに過ごしたい方にもおすすめです。
G:自宅
ゆっくり自宅でグラオ・クローネをお祝いしたい人向け。
国家や部屋の様子があれば分かりやすいです。
●プレイング書式例
強制ではありませんが、リプレイ執筆がスムーズになって助かりますのでご協力お願いします。
一行目:出来る事から【A】~【G】を記載。
二行目:同行PC(フルネームとIDを記載)。グループタグも使用頂けます。NPCはフルネームだけでOK
三行目から:自由
例:
C
【甘廻】
ハッピーバレンタイン!
えっと、幻想とかではグラオ・クローネって言うんですよね。
大切な人に感謝の気持ちを込めてチョコを送る日です。
最近、僕もちょっと怪我したりバタバタしてて落ち込んでたんですけど。
チョコ作ってると何だかわくわくしてきました。
よかったら、僕のチョコ貰ってくれませんか?
●NPC
【A】
○『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
カフェでまったりしているでしょう。
【B】~【C】
○『祓い屋』燈堂 暁月(p3n000175)
○『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)
○『刃魔』澄原 龍成(p3n000215)
燈堂家やバーに居るでしょう。
廻は少し元気が無い様子です。怪我が治りきっていないので熱があるのかもしれません。
【D】
○『揺り籠の妖精』テアドール(p3n000243)
研究所に居ます。修理中にお見舞いに行くことができます。
予備パーツで一緒にチョコを食べたり外に連れだしても大丈夫です。
【E】
○『琥珀薫風』天香・遮那(p3n000179)
Eで街へお散歩に出かけようとしています。
お目当てはグラオ・クローネのチョコでしょう。
自室や街へお散歩に誘っても大丈夫です。
【F】
○『翠迅の騎士』ギルバート・フォーサイス(p3n000195)
Fで家の中でまったりしていたり、雪原で星を見上げていたり。
他、もみじNPCは居そうな場所で呼べば現れる可能性があります。
バルバロッサ、アンドリュー、ラビ、キアン、ファン、朱雀。
●諸注意
描写量は控えます。
行動は絞ったほうが扱いはよくなるかと思います。
未成年の飲酒喫煙は出来ません。
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