PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>Behemoth

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『behemoth』
 それは万物を狂わす不吉の象徴。この世に存在してはならぬ狂気の象徴。
 跫音は遠離ることはなく。

 ――終焉の地(ラスト・ラスト)より至る、厄災の象徴。その名を『終焉獣』ベヒーモス。

 虚ろなる世界よ、人々によって虚構と断じられた仮初めの箱庭よ。
 終ぞ報われることなき0と1で構成された生き物よ。その泡沫全て、飲み干して見せん。
 其れは狂気より生まれ落ちた終焉獣(ラグナヴァイス)。
 無機質なる人の心に宿りし狂気全てを清濁併せ飲み込んだ世の末――

 醜悪なるは人の心か、それとも獣そのものか。
 地を、世界を蹂躙し、死を宣告す。

●Happily ever after!
 ある物語に一人の女の子が居ました。
 彼女は主人公<アリス>と呼ばれる事となりました。
 其れは物語の中で付けられた物語にいる間の彼女の役割です。

 彼女は物語の登場人物。
 彼女には語られる過去もなければ、あるべき設定も存在してはいません。
 作者が作り上げた薄っぺらい『主人公』という札だけが彼女の全てでした。

 ――そんな彼女に転機が訪れました。

 彼女の世界は軋んだのです。混沌世界に認められず、軋轢を生み、崩れていくのです。
 私が主人公だったのに。私だけの世界だったのに。
 そんな彼女を救い上げたのはとても素晴らしい女性でした。
 彼女は世界を深く愛していました。彼女は箱庭を愛していました。

「ねえ、お母様。私の世界は認められなかったの。
 だから、お母様は言ったわよね。この世界で居場所を見付けて幸せに暮らしなさいって。
 ……そうするとね、お母様の『お兄様』がこう言ったわ!
 けれど、『お母様』は不幸せ。
 動くことも適わず、泣くことも適わず。人々に搾取され続ける日々。可哀想だって。
 だから、私は『お手伝い』をすることをしたわ。そんな世界からお母様を解放してあげるって。
 ねえ、デッカ君。そうでしょう? ふふ、言葉がなくったって分るわ。
 あなたは私のお友達だから。特別に教えてあげる」
 彼女の名前はアリス。いいえ、それは彼女の役割の名前です。
 ならば、彼女は名無しの少女(ジェーン・ドゥ)と呼ばれるべきでしょう。
「お友達はデッカ君だけなんですか? て、言うか何でデッカ君なんですか?」
「ふふふ、ひめ。でっかいからデッカ君よ。可愛いでしょう?」
 ジェーン・ドゥにひめにゃこは問いかけます。彼女はこの世界に生み出されたバグ・データ。
 それも、クリミナル・カクテルの一欠片でしかありません。だから、この秘密を教えても悲しませるだけだとジェーン・ドゥは知っていたのです。
「ベヒーモスにだけとは寂しいですね、教えていただけますか?」
 肩を竦めて九重ツルギは笑いました。ジェーン・ドゥはもじもじと体を揺らします。
「怒らない?」
「ええ。怒りませんよ。レディの……いいえ、ジェーン・ドゥの言葉に怒るものですか!」
 とびきりの優しさを込めてツルギはそう言います。
「この世界を壊したら、デッカ君、わたしと二人で外に出ましょう。大丈夫。
 ひめやツルギにはできないけれど……『私はそれくらいなら出来る』わ。
 そうしたら、次こそ誰にも邪魔されない場所を探しましょうね?」

●天國への跫音
 砂嵐に突如としてその姿を現したのは終焉(ラスト・ラスト)の使徒――狂気を塗り固めたかのような怪物であった。
 人に非ず。さりとて、人では無いとは言い切れぬ狂気の象徴。
 広がる砂漠地帯は虚と化す。
 それが終焉の獣と呼ばれた存在の足跡か。残されたのは空白と呼ぶほかにない。

「あれが星読みキネマで見たと言う――」
 そう呟いたのは誰であったか。外部、現実世界ではセフィロトの機能が停止し、最早観測する者も居ない。
 この有様を把握しているのはこの箱庭、R.O.Oの内部に居る者達だけであった。
 天を仰げどもその全容は知れず、身は薄く透き通り全てを貪り喰らう終焉の獣。
 地を鳴らし一歩進むたびに世界が軋む。
 獣と呼ぶべき存在の脚、その向こうに広がる空白を見て誰もが言葉を失った。
 相手は何と称するべきか。
 世界を喰らう者? 驚異の獣? それとも、『終焉』を欲しい儘にする怪物か。
 動き、蹂躙する様、其れは地獄の列強に授けられし名を欲しいものにしていた。
 それが連れ従えたのは地獄とはほど遠き『天国』と名付けられた者達だった。

「やっとのお披露目なんですね! 『石花の呪い』があれば、世界中の人だってもっともっと、殺せますよ。
 いやー、ひめより可愛い子って好きなんですけど害なんですよね! あ、アリスちゃんは違いますよ? 特別ですから。
 でも、他の可愛い子は許せないんですよね。だって、ひめより可愛いってあり得ない筈なんですから!」
「はは、『プリンセス』。君より可愛いのは主人公(アリス)位なものではないでしょうか。
 ああ、いえ……この場で誰が一番輝いているかでいえば……そうですね、貴方だ。ベヒーモス」
 軽口を交わし、まるで感激しているかのような二人の『天国篇(パラディーゾ)』
 彼らは終焉の獣が地を蹂躙するさまを良しとしている。それ所か、それそのものを許容しているかのようだった。
 翡翠で彼らが行ったのはアレクシア・レッドモンドと云う神官を拐かし、石花病の治療試薬の破壊であった。
 アレクシアはイレギュラーズにより奪還されたが、石花病の治療試薬はまだ実践段階でしかないらしい。
 それでも間に合わせたのはイレギュラーズの協力のお陰なのだろうか。それが『プリンセス』は気に食わない。
 石花病、それは罹患した者の体を石へと変貌させて、一等美しい花を咲かせて崩れるように散る奇妙な病だ。
『現実にも』存在する其れはR.O.Oでは終焉獣(ラグナヴァイス)達の能力の一つに組み込まれたというのか――

「あまり、おしゃべりをしてはいけないわ?」

 くすくすと。鈴を転がすように彼女は笑った。
「お仕事は覚えているしら。ええ、ええ、忘れたとは言わせないわ!
 だって、これも『お母様』の為だもの。状況は出来る限りシンプルであるべきだから、聞いて頂戴。
 私たちは『世界を終焉へと導く』の。
 つまりは、来るべき終わりを、物語の最後を彩るために進軍している!
 ねえ、とってもとっても――絵本のように簡単でしょう?」
 ジェーン・ドゥの目的は終焉の獣『ベヒーモス』と共に伝承へと到達すること。
 そこから先は沢山の『お友達』による『世界破壊』に合わせて各国を蹂躙するだけ。唯の其れだけなのだ。

「ああ、神光での戦いはとっても楽しかったわよね。
 私、『神異』のデータを誰が仕込んだのかは知らないのだけれど……ちょっとだけ親近感があったのよ!」
「それは、アリスちゃんは『外』に出られるからですか?」
「そうね。それもあるけど……あの子ったら、とっても優しくって、とっても慈愛に溢れていたでしょう。
 私もそうよ。この箱庭のことは嫌いじゃないの。だから、まずは伝承までは全てを壊し尽くして……。
 あのピエロ達に『これからどうしたい?』って慈悲深く聞いてあげようと思って!」
 くすくすと。彼女は笑う。ジェーン・ドゥを掌に乗せて、恭しく姫君を運ぶかのように歩むベヒーモスが蠢いた。

 ―――『■■■■■■』!

「あら、デッカ君。如何したの?」
 そんな風に呼び名まで付けて其れを可愛がる。その空間はまさしく異質であった。
 異質でありながら、彼女は何食わぬ様子で歩を進める。
 それがそうするべきであると知っているからだ。
 高度な知性を有するわけではない。神になど程遠い。所詮は『狂った者』の末路だ。
 それでも『終焉の獣』は貪欲に世界を喰らい、蹂躙し、全てを空白にし続ける。

 ――――『■■■■』!!

「ええ。行きましょう。もうすぐ、私と貴方の素晴らしい未来が開けるわ。
 物語の最後はいつだって――『そうして二人は幸せにいつまでもいつまでも暮らしましたとさ』でおしまいなのだから!」

GMコメント

 夏あかねです。

●作戦目的
 ・終焉の獣『ベヒーモス』の討伐
 ・ジェーン・ドゥ及びパラディーゾの『活動停止』

●重要な備考
 当ラリーはベヒーモスが『伝承王国』に辿り着いた時点で時間切れとなり、失敗判定となります。
 皆さんは<ダブルフォルト・エンバーミング>系ラリーのどのシナリオにも、同時に何度でも挑戦することが出来ます。

 ・参加時の注意事項
 『同行者』が居る場合は【チーム名(チーム人数)】or【キャラ(ID)】をプレイング冒頭にご記載下さい。
 ソロ参加の場合は指定はなくて大丈夫です。同行者の指定記載がなされない場合は単独参加であると判断されます。
  ※チーム人数については迷子対策です。必ずチーム人数確定後にご参加下さい。
  ※ラリー相談掲示板も適宜ご利用下さい。
  ※やむを得ずプレイングが失効してしまった場合は再度のプレイングを歓迎しております。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はEです。
 無いよりはマシな情報です。グッドラック。

●重要な備考
 <ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
 但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
 又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
 又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

●フィールド
『砂嵐』の砂漠地帯。終焉(ラスト・ラスト)から少しばかり離れた位置からのスタートです。
 巨躯を誇る終焉の獣は移動を行っており、皆さんはダメージを与えることでその移動を遅らせることが第一目標となります。
 第一目標を達成した時点で状況は変化し、終焉の獣をその場に止めての撃滅作戦が行われます。
 周辺には村やオアシスが存在しています。終焉の獣が通った後は更地となりデータが全て捕食されて元には戻りませんので注意して下さい。

【サクラメント】
 近隣のオアシスに点在しています。ベヒーモスの位置により、サクラメントとの距離が変動するため戦線への復帰時間は一定ではありません。

●『終焉の獣』ベヒーモス
 終焉(ラスト・ラスト)より現れた終焉獣(ラグナヴァイス)の親玉に当たります。
 天を衝くほどに巨大な肉体を持った悍ましき存在です。神(クリスト)の傑作(コレクション)。
 世界の終焉を告げるそれは元々は温厚な生物でありましたが、狂化しており言葉は通じません。

【データ】
 ・非常に巨大な生物になります。飛行していない状況だと『足』のみが戦闘部位です。踏み潰されないように注意して行動して下さい。
 ・『飛行』を行った場合でも『脚』までしか届きません。ダメージ蓄積により膝を突くことでその他部位を狙えそうです。

【主だったステータス】
 ・終焉の呼気:広範囲に対して『石花の呪い』を付与すると共に、ダメージ(中)を与えます。
 ・ロスト・ベニソン:複数対象に対して封印、及びランダムで何らかのBSを5つ付与。強烈なダメージ(大)。
 ・ディバインシール:フィールド上の飛行中の対象に対して『不吉、混乱、麻痺系列』の中からランダムで付与。

 ・狂化:???
 ・終焉:???

●終焉獣(ラグナヴァイス)
 ベヒーモスを好み、それに付き従う終焉獣たちです。それらは石花の呪いと呼ばれた歪な病を振りまきます。
 また飛行している存在、地を歩く存在など様々な終焉獣が無数にフィールド上に存在しているようです。

○石花病と『石花の呪い』

 ・石花病とは『体が徐々に石に変化して、最後にその体に一輪の華を咲かせて崩れて行く』という奇妙な病です。
 ・石花病は現実の混沌でも深緑を中心に存在している病です。
 ・R.O.Oではこの病の研究者アレクシア・レッドモンドの尽力により『試薬』が作られました。試薬を駆使して、『石花の呪い』に対抗できます。(プレイヤー一人につき、誰か一名による1Tのギミック解除時間が必要)

 ・『石花の呪い』はバッドステータスと種別を同じくする特殊ステータス状態です。
 ・敵の攻撃がクリーンヒットした時に20%程度の確立で『石花の呪い』が付与されます。
 ・『石花の呪い』に感染したキャラクターは3ターン後に体が石に転じ死亡します(デスカウントが付与される状態になります)

●『物語の少女』アリス(ジェーン・ドゥ)
 遍く世界の『アリス』がまじりあった存在。便宜上彼女はアリスと名乗りますが、本来の名前は無くマッドハッターはジェーン・ドウ(名無しの権兵衛)と称する。物語と全ての人の思い描くアリス像を塗り固めた存在です。
 髪は脱色されて白く、憎悪の色の赤い瞳を乗せた『イレギュラー』の娘
 主人公であった形跡が残るのは青の大きなリボンと白いバラのチョーカーだけ。
 黄泉ちゃんに協力する理由はマザーのためのようですが……。
 攻撃方法などは不明です。彼女の護衛として二名のパラディーゾが付き従っています。

●『パラディーゾ』
 ・『天国篇第九天 原動天の徒』九重ツルギ
 スマートに微笑む穏やかな青年です。内心に抱えた焦燥は感じさせず、任務を淡々と遂行します。
 タンク。全戦で戦います。とても強力な存在であり、『プリンセス』ことひめにゃことアリスのサポートを行っています。

 ・『天国篇第八天 恒星天の徒』ひめにゃこ
 はいぱーぷちりーな女の子です。自信満々に自分が一番可愛いと自慢げに宣言します。とてもおしゃべりさん。
 遠近両方得意としており、前に出てタンクの役割もこなせます。攻撃は全てハートやピンクのエフェクトで彩られているようです。

○味方NPC
 当シナリオでは『各国のNPC』が援軍に訪れる可能性が大いに存在しています。
 具体的には『砂嵐』『翡翠』『神光』『航海』のNPCなどが皆さんと共に戦うためにこの戦場へと向かっています。
 シナリオの進行により援軍は変化します。詳しくは『ラリー各章 の 一節目』を参照して下さい。

 一例ですが、
 ・ハウザー・ヤーク、イルナス・フィンナ及び配下傭兵団
 ・森林警備隊や森の神官、アレクシア・レッドモンドと護衛のシャルティエ・F・クラリウス
 ・『霞帝』今園 賀澄、『星穹鞘』Muguet(無幻)、『因果の魔剣』ヴェルグリーズ
 ・『御庭番衆』暦(頭領・鬼灯をはじめとした忍集団『暦』です。十二の月と呼ばれた幹部及びその部下達)&今園 章
 ・ソルベ・ジェラート・コンテュール&カヌレ・ジェラート・コンテュール(補給要員)
 等……一例ですので状況次第では援軍が増加するでしょう。

 ・Miss (p3y000214)、ファーリ (p3y000006)、紅宵満月 (p3y000155)は戦場でのお手伝いをしております。
 援軍味方NPCは皆さんの指示に従います。何かあればお申し付け下さい。

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>Behemoth完了
  • GM名夏あかね
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年12月20日 13時50分
  • 章数4章
  • 総採用数487人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 伝令――伝令――!
 御庭番衆『暦』の水無月隊は伝令として各地を走り回る。それは戦場での情報の要であろうか。

 終焉獣(ラグナヴァイス)は無数に飛び交っている。だが、それらの露払いを行うイレギュラーズのお陰で伝令が早く届けられたのだろう。
 距離を幾分か離した場所にて、航海が設置したのだという『拠点』は兵の回復や軍備補給が出来る。
 その地への護衛も必要だろうか。サクラメントを有したその場所は人の気配を感じた終焉獣が迫り来る可能性とてある。

 一方でベヒーモスは傷を負い続けたことで僅かに脚を引き摺っていた。
 複数箇所、『脆い』と思われる場所があるが……それでも此の巨体だ。今暫くは攻撃の手を緩めてはならないだろう。
 恒星天『ひめにゃこ』は面白半分にイレギュラーズを眺めて戦闘を繰り広げているが彼女の権能が『ラグナヴァイス』を引き寄せている可能性もある。
 高みの見物だと言わんばかりの原動天『九重ツルギ』にはサイコメトリーにも似た直近の『思考を読み取る能力』があるようだ。
 彼はジェーン・ドゥの護衛をしており彼らはベヒーモスに異変がない限りは此方を眺めているだけのようではあるが……

「さて、待たせたな。神使よ。無幻、廻姫……行けるな?」
「「承知」」
 主の言葉に廻姫と無幻は声を揃えて答えた。
 一方は鞘、一方は剣。霞帝にとっての主なる刀は力を帯びて握られる。
「私も……手伝わせて下さい。石花病への治療は得意ですから」
「護衛として、俺も手伝います。……石花の呪いになど惑わされませんよう」
 アレクシア・レッドモンドの背後に立っていたのはシャルティエ・F・クラリウスか。
 援軍が更に増加した。これから鋼鉄の三帝や、イレギュラーズが援軍を求めた声が各地にも届くことだろうl。
 まだまだ、世界を護るための戦いは続いていく――!

===第二章援軍===
 砂嵐(傭兵団『レナヴィスカ』、傭兵団『凶』)
 神光(御庭番衆『暦』、霞帝&無幻、廻姫)
 翡翠(アレクシア・レッドモンド&シャルティエ・F・クラリウス)

 ※ヒイズルの援軍が到着しました。霞帝及び御庭番衆『暦』へと指示が行えます。
 また、霞帝に複数人の護衛をつけ、召喚の儀を行う(ある程度の時間を有します)で彼は『自身に加護を与えた神霊』の召喚を行えるようです。
 ※アレクシア・レッドモンドの参戦により、アレクシアによる『石花の呪い』の解呪が行われます。
 彼女は半径50mに存在する『罹患患者』を察知し、複数人の呪いを解くことが可能となります。

 Miss (p3y000214)より――
「後方にソルベ・ジェラート・コンテュールの開設した拠点がありますよォ! オアシス!
 章姫と『ネコロマンシア』がけが人の手当てをしているようですねェ。ベヒーモスの進行経路と外れてますが……人の気配を感じた終焉獣(ラグナヴァイス)が接近する可能性もあります。後方支援ならそちらの護衛をしてみるのも良いかも知れませんねェ!
 ベヒーモスは『足の甲』『膝裏』『体の内側』の装甲が柔らかそうです。少しばかり傷を負わせられている様子。
 一筋縄ではいきませんねェ。リヴァイアサンのように、削るだけでも一苦労。ですが、もう少しで一度、その動きを停止させられそうですよ!!」


第2章 第2節

Siki(p3x000229)
また、いつか
ゼロ(p3x001117)
よう(´・ω・`)こそ
にゃこらす(p3x007576)
怪異狩り
入江・星(p3x008000)
根性、見せたれや
星羅(p3x008330)
誰が為の器
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ミセバヤ(p3x008870)
ウサ侍

「援軍か。誰一人として知らない顔だが使えるものは使わせてもらうさ」
 そう笑ったのはゼロ。花浅葱の瞳は冴えた氷のように光を湛えている。彼女の手にしたストームブリンガーは僅かに魔力の光を帯びた。
「ボクは霞帝の召喚を手伝おうじゃないか。数は力だ、ボクが守っている間に何匹でも何十匹でも神霊を召喚してくれ。
 ――あのデカブツよりキミを優先してるんだ、しっかり働いてくれよな!」
 揶揄うように笑ったゼロにミセバヤは「賀澄様にそのような!」と耳を揺らがせて驚いたように地から跳ねた。一国の主、詰まりは国王相手の言葉だったからだろうか。
「ははは。ああ、貴殿の期待に応えられるように――そうさな、竜はどうだろう。一等美しい竜だ」
「竜? ドラゴンか。いいじゃないか。ボクは終焉獣を打ち倒してやる。
 後は――ベヒーモスの弱点が分かったんだ。援軍サマを働かせるだけ働かせて、ここぞで暴れるタイミングを待っているんだからね」
 ゼロはMissの伝令により見えてきたベヒーモスの弱点を狙うが為に霞帝に『手』を動かすようにとそう言った。
 静かに、黒子は霞帝の護衛を担当する。周辺の遊軍の状況を確認し『誰が何を狙うか』『誰が回復をするか』の把握を行いたいと提案した。
「私どもとの共闘、と言うことでよろしいでしょうか」
「はい。宜しくお願いします」
 神無月の言葉に黒子は厳かに頷いた。霞帝の直衛となるであろうイレギュラーズの把握も怠ってはならない。それらの体力値を保ち、迎撃の準備を整える。
 彼の支援に心強いと頷いたミセバヤは月兎耳と銘打った小さな刀を握りしめた。
「召喚の儀の邪魔をする不届き者は、ミセバヤが成敗するのです!」
 ウサギの耳は、鼻は、目は。獣そのもの。獣の能力を侮る勿れ。霞帝の護衛としミセバヤは胸を張った。
「敵には指一本触れさせません。だから賀澄様、安心して召喚の儀をやって下さいです!」
「……ああ、感謝しよう。小さなウサギ殿に任せることになり心苦しいが、その分、俺も俺の責務を全うしよう!」
 此の世界の霞帝にとって彼は良くは知らぬウサギであろう。神使であるのは確かだが、その全容や主君として慕っている事などを知られているわけではない。僅かな寂寞――だが、其れを理由に足を止めてはならぬのだとミセバヤは上空より飛来する終焉獣を睨め付ける。
「ジェーンドゥに会いに行くんだろう? 援軍は続々届いてる。歩みを止めなければ空にだって届くってとこ、見せてやろうよ」
 そう囁いたSikiににゃこらすはそうだなと頷いた。猫のその身で見上げれば空は此程までに高かったか。紅い毛並みのにゃこらすは四聖刀『守人』を咥えてベヒーモスを睨め付ける。
「あいつは天辺か。……ならそこまで行ってやるよ。そのための準備もたんまり必要だろうけどよ!!」
「そう、だね。……でも、その前に霞帝が召喚の儀をするって。ねぇにゃこらす、ごめん私ちょっと……」
 Sikiは僅かに後方を見遣った。握る刃の青さに似たアクアマリンの瞳が困惑に揺らいでいる。彼女にとって『神光』は由縁ある。
「ああ、シキ! お前も召喚の儀手伝ってやれよ。お前にも彼女らとの縁があるだろ? 俺はそれまでの時間稼ぎするからよ」
「え、あ、ありがとう! うん、手伝ってくる!」
 は、と息を呑んだSikiににゃこらすは小さな手足をちょこりと上げてから笑った。
「――霞帝! 誰を召喚してくれるかは知らねぇがド派手にぶちかましてくれよ!
 護衛の礼は俺たちをあの天辺にいやがるジェーンドゥの元まで辿り着かせてくれりゃそれでいい!」
「帝、私絶対あなたを護るから。召喚も手伝えることがあるならなんでもするよ」
 駆け寄るSikiに霞帝は「ああ、織」と呼びかけてから「――ではなく、『しき』か」と頷いた。神光の巫女たる織は明瑠や恵瑠と共に霞帝の補佐役として国を守っているのだろう。主君の無事を祈ると共に此の召喚には欠かせぬ彼女達。何故ならば、彼女達が祀る存在こそが――
「だからお願い……力を貸して。瑞、黄龍。
 大切な君たちが生きてるこの世界が終わってしまわないように、私も全力を尽くすから!」
 Sikiの友人にして、霞帝が召喚せんと陣を組み上げる『黄泉津瑞神』を始めとする神霊か。
「この先は誰も通させねぇよ。守りは俺の十八番だ」
 笑うにゃこらすに「それ、ウチも乗っかってもええ?」と笑いかけたのは入江・星。
「ヒイズルではガッツリ敵で難儀したけど、神霊の方々が味方になってくれるのであればありがたいで……こほん。ありがたいなぁ。
 ……いかんいかん、さすがに帝やら豊穣に連なる方々の前だと素に引っ張られそうになるわ」
 肩を竦めた星は感謝すると頭を下げる霞帝に笑いかけた。この世界は星にとっても理想が叶えられている。天香家は当主も存命であり、その妻と仲睦まじく過ごしている。そして義弟も命を落とすことなく、航海にて働いているというのだから。
「一時は敵やった――やけど、ヒイズルでは故あって敵にまわりましたが、あの国を護って来た御身、傷つける訳にはいかんやろ? 帝の身に何かあったら、長胤様に申し訳たたんしな!」
「はは……ああ、あの時は敵であったが、此度は味方。存分に俺達を利用するために護ってくれ!」
「頓珍漢にも聞こえるけど、それはそうか」
 ゼロは利用するために護ろうと飛びかかる終焉獣へ牙を剥く。続き、星は遍く人々の元へと星の煌めきを降り注がせた。
「わぁ、綺麗だねぇ。……エイラぁ守るのは得意だけどぉ。
 帝を守ることに関してはぁ睦月の方がずっとプロだから。ご教授お願いしますだよぉ?」
「主上をこの様な地で、お守りすることになるとは……ならば、その『守護の術』を伝授して頂いても?」
 ちゃっかりとエイラの打たれ強さを解明しようとする睦月にエイラは「ええ~?」と首を傾いだ。透き通ったアクアマリンの肢体が纏うたのは可愛いクラゲの密やかな毒。触れること勿れと嘲笑うようなそれはふんわりと浮かび上がりながら24の瞳を覗かせる。
「それじゃぁ、一緒に護ろっかぁ。石花病は感染自体も厄介だけどぉ石化の進行で儀式中断とかも怖いからねぇ。帝にはぁ傷一つつけさせないんだよぉ?」
「御意」
 眼鏡の位置を正した睦月にエイラは微笑んだ。睦月とのタッグにも慣れてきた。エイラの戦法は何となく理解してきたのだろう。
「帝に加護を与えてる神霊ということはぁ青龍も来てくれるのかなぁ――ふふ、なら嬉しいなぁ」
 振り向いたエイラは帝が纏い始めた鮮やかな『木』の気配に時間は掛かれども彼との再会を望める気がして笑みを零した。
「まずは援軍に感謝を、先の戦いからあまり時間も経っていないのに。こうして即断頂けたことはとても感謝しているよ」
 スイッチの言葉に霞帝は「貴殿等の努力のお陰だ」とそう言った。彼らとの戦は失うモノは多くはなく、幸福な終焉を得ることに至ったと言えよう。
「増援は多ければ多い程いい、帝は何卒召喚の準備を――迫りくる敵は俺達が、そして無幻と廻姫が、きっと阻んでみせるから」
 スイッチの言葉に頷いたのは廻姫。静かに剣を抜いた廻姫は「主上、御身は必ずしや護って見せましょう」と唇を引き結ぶ。その傍らで、不安を瞳に揺らがせた無幻は「主上、ご無理はなさりませぬよう」と囁く。
「召喚に、御身に降りかかるご負担。この無幻は知り得ませぬ。災いよりその御身を護ります故、どうか――」
「ああ……無幻、廻姫。共に俺を護ってくれ。そして――」
 霞帝が視線を向けたのは星羅であった。彼の『娘』と瓜二つのかんばせをしたおんなは小さく頷いた。
「再び共に戦えるなんて……幸運なことね。ねえ、無幻。貴女は今、幸せ?」
「――え?」
「答えはまた後で聞かせて。今は……貴女達が生きるこの世界を、護るから」
 背を向けた星羅は地をとん、と蹴った。その爪先から広がる魔方陣は無数の銃を顕現させる。鉛の雨が降り注ぎ、終焉獣を撃ち払わんとする其れをスイッチの刃が追いかけた。言葉無くとも連携は上々。此方がそうならば、彼方は。
「――貴方達が一つになったその真価を今、此処で見せてくださいな!」
 その言葉に「承知」「お任せを」と笑ったのはどちらか。無幻は踊るように地を叩いた。跳ね上がったその体は軽く宙を踊る。廻姫の一閃へと併せ、叩きつける攻撃は舞踏の如く。
 ならば。
 星羅は叫んだ。
「無幻、力を貸して。私『達』にしか出来ないことをするのよ!」
 自身等は『器』だ。誰ぞの心を受け入れ、そして、誰ぞの道を開くが為。盾であり、鞘である。
 煌めく火花に瞬く閃光。続く無幻の刃は花吹雪を纏わせた。
「「ヴェルグリーズ様ッ――貴方へと、託します!」」

成否

成功


第2章 第3節

玲(p3x006862)
雪風
陽炎(p3x007949)
影絵舞台
アマト(p3x009185)
うさぎははねる
Isaac(p3x009200)
ぴかぴか
Merclein(p3x009557)
CALL666(p3x010222)
CALL:Beast

「章姫様がもしまた前線に出てこられたら鬼灯様の顎をぶち抜いてるところでした危なかった……冗談ですよ? ええ、本当に」
 そんな恐ろしいことを口にしてしまう陽炎に鬼灯は肩を竦める。彼の元から少し離れた拠点に向かうことにした陽炎は長月に「よろしいでしょうか」と声を掛けた。
「構わへんで」
「ありがとうございます。章姫様は素晴らしい傀儡術士でいらっしゃいますが、流石に彼女とネコロマンシア様だけでは不安と言うもの。……長月様、章姫様達を宜しくお願い致しますね」
 章姫――今園 章は霞帝の姪御、つまり長月を始めとして『暦』等にとっては主君にも等しい。陽炎の言葉に「言われなくとも」と笑った彼は道中に迫り来る終焉獣を引き寄せた。
「はっ! 気づいたらずっとMissちゃんをもちもちしておった! うっかり!
 いかんのー、なーんて魔性なビーバーなのじゃー。いかんのー、ずっと拠点で休んでおるわけにはいかんかったかー!」
 彼らの戦闘音に気付いたように玲が顔を上げる。「んもー」とまんざらでもなさそうな顔をしながら『もちもち』されているMissは玲に「いってらっしゃい」と手を振った。
「そうじゃなあー帝殿には召喚の儀をやってもらうとして、妾はそうじゃのう。
 でっか君の足の甲を徹底的にゆっくりゆーっくりぐりぐりえぐってやるのじゃあ。皆の終焉獣を撃ち払い、でっか君に戻るかのう!」
 にんまりと笑った玲のドレッドノート&デザートホークが殺戮の気配を宿す。かちん、と音を立てて弾けた一打。
「終焉がなんじゃ! 終わりなどここにあるものか!
 与太者に勝手に幕を下ろさせてなるものか! このドレッドノートが! 今振り下ろさんとするその拳を! 脚を! 撃ち抜いて見せるわ!」
 玲の弾丸が迫り来るモノを打ち払う。それだけ迫ってきている者が多いのだと実感し、Mercleinはロザリオを握りしめた。
 そのかんばせを覆うのはペストマスクか。ふらりと狩り場に現れた彼は命を決して『仮想空間』でも軽んじる事は無い。
「ふむ、サクラメントからの復帰者が少なくないようだ。
 つまりそれは多くの死が積み重ねられたという事実を指し示し――いや、今は無意味な悲観は止めておこう。
 ここは私たちが守り抜く。安心して死に赴くといいさ……」
 首を振るMercleinのアクティブスキルは呪詛の気配を纏わせる。ロザリオを覆った黒々とした気配。其れとは対照的に聖なる気配をぴかりと輝かせたのはIsaac。
 良い子には幸運を、悪い子には制裁を――囁くような、畏れるような。笑いかけるような気配で都市伝説は癒やしの光を虹彩のように煌めかせた。攻め立てるものあらば、守り抜く者が居る。Isaacのプリズムの煌めきは決して曇ることはない。
「拠点には怪我人を癒やす良い子たちがいて、それを邪魔する悪い子がいるかもしれない、と……それなら僕はそれを守るとしようか」
 笑いかけるように。その声音が戦場へ飛び来渡る。しぶとく生き残って、仲間を支えると信条にするIsaacの眼前で、Mercleinも身を挺して庇うと決めていた。
 守りは上々。それでも、とCALL666は息を呑む。
(――俺がやれるのか? これを)
 有象無象と呼ぶしかない其れ等があの巨体の後ろから恐ろしき波濤の如く迫り来る。
「流石に時期早々な気もするが……まあいい。俺は呼ばれたら撃つだけの機械だ。やるさ。化け物、一匹相手するにはこの身でも十分だ……!」
 拠点へは行かせまいと二人を振り向いてからCALL666はベヒーモスの元へと向かう。玲と同じく、拠点へと向かう終焉獣を退けながら。
 アマトは願う。
「お父様やお母様たち……家族が、がんばっているのです。アマトだって、アマトにできることをがんばるのです」
 輝いたイースターエッグ。煌めき乗せたそれと共に、アマトは『おやつ』を差し出して、心をも癒やすようにと心掛けた。
「アマトが護ります」
「……なら、任せる」
 CALL666の言葉にアマトはこくりと頷いた。ふんわりと空色の髪を揺らがせて、黒いうさ耳をぺしょりと折ったアマトは此処からは支えてみせるとしっかりと終焉獣を見据え続ける。
「さて、どう出る? 俺のような雑魚を構って、行軍速度を遅くするか? それとも、この雑魚の死に物狂いの一撃、受けてみるか」
 CALL666の一打。それは靱やかなる弓より放たれた。その軌跡を追いかけて、陽炎はふと振り仰ぐ。
 章。
 彼女の元へと迫り行かんとする終焉獣――
「その方に触れるな下郎がっっ!!」
「――……?」
 陽炎の豹変――否、それは本来は『素』だ。その言葉に驚いた長月は「そっちの方がええで」と揶揄うように笑ったのだった。

成否

成功


第2章 第4節

グリース・メイルーン(p3x000145)
灰の流星
シフォリィ(p3x000174)
クィーンとか名前負けでは?
すあま(p3x000271)
きうりキラー
♱✧REⅠNA✧♱(p3x000665)
薔薇を追う
アクセル(p3x007325)
クリムゾン・ドラゴニア

「終わりまで遠い、ですが着実に結果は出ています……ならば手を緩めず進むまでです!」
 堂々たる宣言を行ったシフォリィに頷いたのはアクセル。彼は「よぉ」とひらりと手を振って――何処か不思議そうな顔をしたハウザーと、分かったような顔をするイルナスに困り顔を浮かべて見せた。
「おい、イルナスよ。ディルクの野郎にゃ兄弟でも居たか? それともイメチェンってやつか?」
「いいえ。違うでしょう? ねえ?」
 揶揄うようなイルナスの声音にアクセルは「た、確かに俺はディルクじゃあないが、似てるってのはこの際スルーでいってくれよ」と頬を書く。
「……ほら、獲物が結構集まってきたぜ!」
「其処の嬢ちゃんも行こうぜ」
 こっちだと手招いたハウザーにシフォリィはこくりと頷いた。ハウザーやイルナスにとっては『あの巨大な敵』だけしか認識できていない。シフォリィがベヒーモスに実質的な指示を行っているのがジェーン・ドゥと呼ばれた娘なのだと告げれば何とも困ったように肩を竦める。
「あのジェーン・ドゥはこの世界を唯一と言っていました。
 でもきっとそれはこの世界が唯一自分が生きられる場所ではなく、唯一母と繋がれる場所ということも示しているのかもしれません」
「成程、どちらの意味もあるのかも知れませんね」
 イルナスを見遣ったハウザーは「どういう意味だ?」と問いかける。「その通りの意味ですよ」とイルナスは笑った。
「『唯一』母親(マザー)の心を救える場所だった……。成程な、外じゃ都合の良いように扱われてるとアレは言っていたか」
「……ですがそのために破壊するなんて間違っています、壊すために生きるのなんて認めません。
 どんな理由があったとしても、たとえ狂っていたとしても、己の思いだけで壊すなんて間違っています! この世界は終わらせません!」
 シフォリィにアクセルは大きく頷いた。砂嵐のためとなれば死に急ぐのも悪くは無い。盾にでもなってやろうと跳躍たアクセルは「さーてお二人さん、いっちょ力を貸してくれよな!」と振り返る。
「私たちも、力をお貸しします!」
 アレクシア・レッドモンドのその言葉にグリース・メイルーンは「翡翠からの援軍!」と瞳を輝かせた。
「これは僕たちも負けてられないね! まぁリュミエ様に来てもらうのもすごく大変な事態ってなるだろうし、折角だから活躍していい土産話にしようか! こっち(ROO)とあっち(混沌)のどっちにもね!」
「まずは偵察を、というのがヘクセンハウス司教からの指示です。リュミエ様をみすみす死地に送り出さぬ為の」
 静かに告げたシャルティエにグリースは「此処でもっと頑張ればリュミエ様のご助力をいただけるかも知れないんだね!」と大きく頷いた。彼女達が翡翠より援軍に来てくれる可能性――其れを見越し、戦わねばならないか。
「ふふ」
 すあまは小さく笑う。「援軍が集まってきてくれるのもわたしたちの成果なんだね!」と笑う彼女をラダが抱え上げる。
「ねえ、小さいラダ。成果が目に見えるとやる気出るよねぇ、出ちゃうよね! これはもうひと声やりたくなっちゃう!」
「勿論、あの『膝』折らせたくなる」
 小さなラダにすあまはくすくすと笑った。お肉は叩けば叩くほど柔らかくなるらしい。ならばすあまが取る行動はラダと同じだ。
「みんなは弓で、わたしは直接チクチクしに行こ。ベヒーモスは大きくて硬いから、思いっきり殴りまくらないとねー!
 あ、でも、無理はしないでね。小さいラダ。それにレナヴィスカの皆! 他の皆の言うことをちゃーんと聞いてね!」
 すあまの言付けにグリースは「死ねば何も良いことは無いから!」と口を酸っぱくしてそう言った。
「薄かろうと厚かろうと、狙いすました僕の一撃に断てぬものなーし!! ってところ、見せてあげるよ!! それじゃ、出発!」
 ベヒーモスへ向けて走り出す一行をその瞳に映してから♱✧REⅠNA✧♱は「重畳、重畳」と頷いた。
「んじゃぁ更に畳み掛けますかっと」
 ♱✧REⅠNA✧♱が膝裏を狙いたいが為にまずはと体の内側を狙う。どうにも、柔らかい部分を狙えば届く部位が増える問うことか。
「しっかしあれだねぇ。まともに戦うのもしんどいのに、石化もするとか、聖書に記されるような化け物は格が違うって事かね。何にせよさっさとお帰り願いたいものだが!」
「そうですね。ですが……これだけの援軍が居れば」
 シフォリィの言葉に♱✧REⅠNA✧♱は大きく頷いて――
「オラオラ相手はオレだ。間違った相手をしちゃいけない。きっちり順番は守って貰わなきゃァ。
 オレ泣いちゃうぜぇ?――嘘だけどさぁ!」
 ベヒーモスへと一気に距離を詰めた。

成否

成功

状態異常
すあま(p3x000271)[死亡]
きうりキラー
♱✧REⅠNA✧♱(p3x000665)[死亡]
薔薇を追う
アクセル(p3x007325)[死亡]
クリムゾン・ドラゴニア

第2章 第5節

ヴァリフィルド(p3x000072)
悪食竜
蕭条(p3x001262)
叩いて直せ!
シュネー(p3x007199)
雪の花
きうりん(p3x008356)
雑草魂
ゼスト(p3x010126)
ROO刑事ゼスティアン
天川(p3x010201)
國定 天川のアバター

「援軍か! ありがてぇ! 気合も入るってもんだ! とっととあのデカブツを沈めちまおう!」
 笑いかけた天川は小太刀二刀――その名は『陽光』『月影』である。二刀一対、自慢の一張羅を身に纏って構えてみせる。
 やることは何も変わりない。筋繊維と骨の隙間。其れを狙いあの図体ならば切り込み続ければふんばりも聞かぬはずだと考える。
「狙う場所は決まっていますね」
 そう呟いてからシュネーはちらりと後方を一瞥し――
 R.O.Oにおけるシャルティエの姿に息を呑んだ。彼に声を掛けたい――と声を出しかけたが、その場合では無いかと首を振る。
(為すべきことを為すために。救うべきを救うために。
 護りたいものを護るために――目の前のアレをどうにかしなければ)
 シュネーは聖弓アーク・テトロンとその銘を授けられた弓をしっかりと握り込む。彼女の側で水無月隊の連絡を聞いていた蕭条は「やったー!」と言わんばかりに頷いた。
「水無月隊の皆さん、お疲れ様です!! やはりお味方になると頼もしいですね。
 気力いっぱいやる気いっぱいになったところで再度突撃しましょう。水夜、みゃっ、みぃっ……Missさんの情報では幾つか弱点があるようですが……体の内側ってベヒーモスのお口にインしちゃう感じです? ……。……りありー?」
 例えば、シュネーのようにMissによる『状況報告』で体の外側の傷口を狙わんとする者も居れば、蕭条が息を呑んだ『体内に入り込みたい』人々もいる。
「しかし、この巨大なデータの内部がどのようになっているのか。
 生物と同じ構造をしているのか、といった探究心が疼くのも確か――故にれっつチャレンジです!」
「なら、此処は任せてよ!」
 体の内側と言えば専売特許だと胸を張るのはきうりん。シュネーが首を傾げれば彼女は「ROO初期にて冬虫夏草と呼ばれたきうりを舐めない方がいい……!」と悪い顔をした。『暗黒微笑』を浮かべるきうりんの傍らではずしりと大きな体を揺すったヴァリフィルドも「口腔内を狙いたいが」と告げる。
「だが――そうか、口腔内を狙い、あやつがデータの吸収を消化器官でしていても、口腔が遥か上空にあるのには違いないか」
「そうなんだよ! 食べられたいんだけどね、きうり食え! けど、ベヒーモスは膝を突いてないから顔さえ見せてくれないんだ!」
 叫んだきうりんいヴァリフィルドはぐぬ、と息を吐いた。
「飲み込ませるつもりも吐き出させるつもりも毛頭ない。やつの体を内側から焼いて、噛み砕いてやりたいが――その為には」
「そう。膝を付かせる――か、皆の開けた傷口からきうりでGOするだけ! 筋繊維に絡みついて寄生するぜ!」
 ヴァリフィルドがきうりんをまじまじと見遣った。勢いのある彼女に食べられる作戦を講じているヴァリフィルドは「ならば傷口を開こうか」と頷く。
「傷――この怪物は体内が弱点、と…そしてコイツも今まで皆で全力で戦ってきたおかげで傷だらけ……
 ならばっ! 出来た傷を広げて、体内に潜り込む! であります!」
 ゼストが堂々とそう告げればきうりんは「行こうぜ!」と頷いた。
「いくら生命力が異常とはいえ体の中に異物が入り込めば、少しは応えるはずであります……! ならば全力で為すのみ! ゼスティアン、任務了解!」
「ええと。それじゃあ……あの足の甲の傷口を狙いましょう!」
「きうり一本は入れたら、次は君ね!」
 きうりんの言葉にゼストは「了解!」と頷いた。シュネーの弓は鋭く突き刺さる。足の甲へとヴァリフィルドが爪を立て、蕭条が八つ当たりをし続ける。
「とりゃーー! あやめてやめて!ㅤ筋肉が!ㅤ締まってます!ㅤ痛いです痛いです!!
 よし、今ここ膿んでるから!ㅤここ集中的に狙って!!ㅤ私ごとでいいから!!」
 デッカちゃん、こっちに降りてこいと叫びながらきうりんが死の間際に刻みつけた一撃へゼストがフルパワーを放つ。
「こんなおっさんにもなって、ファンタジーな世界でバカでかいバケモノ斬り続けなきゃならんとは思わんだろう……。
 ――俺はな、守れないって経験はもう十分だ。いい加減よ……俺に守られせてくれよ!」
 天川は、何一つ守れやしなかった事を思い出す。屑をぶちころしても、それは唯の復讐でしか無い。
 ならば、次のために――彼は背水廻刃で開いた一撃に更なる追撃を叩きつける――!
 開いた傷口を気にするようにベヒーモスはぴたりと止まった。
「虫に刺されたような動きですね」
 呟いたシュネーへ「虫の一撃は、怖いんですよ!」と蕭条はふふんと胸を張って見せた。

成否

成功

状態異常
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂
ゼスト(p3x010126)[死亡]
ROO刑事ゼスティアン

第2章 第6節

グレイ(p3x000395)
自称モブ
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
リュティス(p3x007926)
黒狼の従者
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

「うひゃー! あっちもこっちも大変!」
 忙しさで目が回るとは正にこの事か。栗鼠の尾を揺らがせてルフラン・アントルメは周囲に見慣れた人影を見付ける。
 それは例えば、リュカ・ファブニルであったりと共に冒険してきた仲間達だ。彼と共にいる桃色の人影が――目の前にもう一人存在するのは気のせいではないだろう。
「ふふーん、ひめの権能に畏れ入りましたか?」
 彼女の周りには終焉獣が溢れ出す。らぶりーでぷりちーな彼女はアニマル(?)テイマーと呼べる権能を持っているのだろう。
 現場・ネイコは「偽にゃこさんの権能ってひめにゃこさんのAFをそのまま拡大させたようなものなの……?」と息を呑む。
「つまり、この偽にゃこさんを思いっきり殴りたいって思う気持ちも権能の効果だった……?」
 呟いたネイコにグレイは「ぷりてぃーな悪魔ひめにゃこの権能のせいで……?」と真顔で『キレそう』になっていた。舌打ちをひとつ、苛立ったグレイは『でっかくん』の露払いを行ってきたというのに、それも彼女に誘われるように集合する終焉獣らの数は増え続けるのだ。
「ギャラリーを呼び寄せるのもそろそろいい加減にしてよね」
「違いますよ? これはひめが可愛いから皆集まってきていて……いやー! 可愛いって罪ですねー!」
「この気持ちは権能のせいだよね!?」
 ネイコがグレイを振り返れば、こくりと頷き返してくれる。そんな様子を眺めていたひめにゃこは「ちょっとー!?」と声を荒げたのだった。
 ひめにゃこのアクセスファンタズムは『途轍もなく殴りたくなる』か『可愛いと平伏する』能力だ。つまり後者が終焉獣へと影響を与えて群れをなしている。そして、前者は――簡単にいってしまえば広範囲への『怒り』付与。つまり、彼女というタンクタイプのエネミーが最も輝く舞台なのだ。
「……っていうかあれひめにゃこさん!?
 ひめにゃこさんはいっつもうるさ……げふげふ、賑やかだしあたしのおやつは食べるしなんかいっつも誰かさんと仲良しで羨ましいけど!
 でもでも偽物はだめだから、めっ!」
「本物かも知れませんよ?」
 恒星天、こと、『偽にゃこ』にルフランは絶対に違うと首を振った。おやつを食べている自覚のあるひめにゃこは何も言えまい。
「ふむ……騒がしいだけではなく敵を引き寄せている可能性もあると。
 本体よりもできることが多そうですね。やはり早めに仕留める必要がありそうです」
「ちょっと?」
 リュティスの呟きにひめにゃこが非難の声を上げる。だが、慣れきっているリュティスは敢えて彼女の言葉をスルーした。
「弱い相手に強そうなのでデコイさんに頑張って頂くというのはどうでしょうか?
 まあ拒否権はないので頑張って下さい。私は眉間を撃ち抜くことだけを考えておきましょう」
 リュティスは後方からベヒーモスを狙う事に尽力した。周辺に数の多い終焉獣たちは障害だ。
「って言うか、周りの終焉獣がホントに鬱陶しいねっ!?」
 ネイコの言葉に頷いたルフランは回復をメインとし、グレイやネイコを前線へと進ませるための露払いを手伝い続ける。
 後方から射撃を行うリュティスの呼ぶ『デコイ』という言葉の通りにひめにゃこは一先ずは『終焉獣』を集め始めた。
「確かに従わないなら殺すって言われたら全力で媚び売っちゃうかもしれませんね、アハハ!
 じゃあどうしますか……ここはあえて……無視! モンスターを引き寄せるって召喚してる訳ではないので放置でもいい気がします。
 増やしてるなら後で根絶しますが! 全力でベヒーモスを殴って偽にゃこの様子を見ましょう!
 無視されたら逆に構いたくなるものです、絶対アクション仕掛けてくるはずです!」
 自分のことならば良く分かる。そう言いたげなひめにゃこにリュカはふ、と小さく笑みを漏らして。
「まぁ、アイツはひめにゃこと戦って可愛い頂上決戦とやらをしたいらしいからな。
 放って置いてもつっかかってはきそうだ。良いぜ、じゃあまずはあのデカブツの足を潰してやろうじゃねえか」
 ベヒーモスへと近付く為に、終焉獣を撃ち払う。数が多い、多すぎる。進むことを拒絶するような其れ――リュカとひめにゃこは『偽にゃこ』の出方を注視していた。召喚しているわけではないのだろうが、増援として追いついてくる終焉獣たちはひめにゃこの周辺に入れば、彼女の指揮下へと入る。
「さあ、行きましょう! でっか君へと進ませてはなりませんよ!」
「ッ――余所見してる場合じゃないよ!」
 飛び込んで一撃を投じようとしたネイコ。その背後から彼女を支えるように支援を行ったグレイは確かに見た。
 ひめにゃこの唇が釣り上がった瞬間、彼女の目の前で終焉獣が弾ける。まるで、バリアのようにその身を挺し、展開し――

「可愛いから、護ってくれるんですよ。みんな『もっとひめのお友達』を連れてきて下さいね!」

 ……その呼び声に、終焉獣は一斉に合唱を始めた。どうやら、まだまだ数が増えそうだ。

成否

成功

状態異常
グレイ(p3x000395)[死亡]
自称モブ
現場・ネイコ(p3x008689)[死亡]
ご安全に!プリンセス

第2章 第7節

ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
デイジー・ベル(p3x008384)
Error Lady
アズハ(p3x009471)
青き調和
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「ううん、どうにも手応えがないですね。
 終焉獣諸とも恒星天を足止めできていると考えれば悪くはないですが。仕方ないです……とりあえず取り巻きから減らしていきましょう」
 嘆息するハルツフィーネは『偽にゃこ』が前線に立っている理由を知る。彼女が終焉獣を連れて前に立てば、その分、イレギュラーズの行動も遅くなると言うことか。
 一先ずは彼女の周りに存在する終焉獣を薙ぎ払わなくてはならない。混乱と狂気で場を掻き乱し、嫌がらせを行えば良い。何せ、河合委の頂上決戦の途中――此方は『かわいいクマさん』と一緒なのだ。
「世界一可愛い割に、取り巻きは全然可愛くなくないですか? せめてオタ芸の一つや二つ仕込まないと話にならないですよ」
 邪悪な姿をしていると終焉獣たちを指し示すハルツフィーネは世界中の可愛い女の子が味方のクマさんをアピールし続ける。
 恒星天はくすりと笑った。「誰だって可愛くなるんですよ! 可愛いの伝道師、世界一の可愛いひめが教えて差し上げましょう!」
 彼女の周りから飛び込んでくる終焉獣。それらが行く手を遮る事に気付き、デイジー・ベルは歯噛みする。
 雨霰の如く迫り来る有象無象。其れ等を薙ぎ払うのは狂気(エラー)の弾丸。怨嗟を込めて、詛う言葉は痛みとなりて。
 深く碧へと染まり行く髪を揺らがせた彼女が終焉獣を薙ぎ払い、狙うのは『足の甲』
「相手と比べれば矮小な腕でも蟻の一穴ぐらいは開けられる――だから、足置いていけ此処に!」
 声を荒げるデイジーの、その一撃へと合わさるは魂散らした氷の刃。ぎらり、光を纏えばそれは鋭くベヒーモスへと突き刺さる。
「いかに巨体を誇ろうと生きている以上、必ずダメージは蓄積されるということか。普通の生き物と変わらんな。
『ならば殺せる』というわけだ。では続けるとしよう――鉋ですり削る様に一枚ずつ一枚ずつ薄皮を削り取っていってやる。死ぬまでな」
 其れが傷を負わなければ。それが概念でしかなければ。データでしかないのならば、死すらも超越していたか。
 ああ、だが、これがゲームである事を真読・流雨は感謝した。ゲームであるからには『HP(ヒットポイント)』が設定されたエネミーデータに他ならず。
「サクっと踏み潰されても構わない。死んでも勝とう。文字通りな」
 流雨のその言葉にぱちりと瞬いたルージュは「うーん、ダメージは見えるんだけどなー、もーちょっとかー。杭みたいな物が欲しいぜ、マジで誰か持ってねーかな」とちらりと彼女を見遣った。
「笹でよければ刺そう。だが、其れさえ脆弱な一打だ」
「そうだよなー。もっと、こう、大きな――……援軍から借り受けたり……」
 ルージュが後方を見遣れば召喚の儀に望む霞帝の姿が見えた。例えば、だ。彼が召喚する四神と黄泉津瑞神。その権能を駆使して巨大な楔を造りその身をこの地へと縫い止められたなら。
「よっし、それまで自力で縫い止めるか!」
 一本で駄目なら百本位。杭を打ち付け叩きつけろ。ルージュも流雨と同じだ。例え、何遍殺されたって、此処で止まるつもりはない!
「憎むなら憎めばいい。敵に憎まれるのは何ら不思議じゃない。
 でももしかしたら、イレギュラーズは君を憎んでないかもしれないな。……何故だろうな?」
 呟いたアズハは粘り強く『しつこく』戦うことを掲げていた。伏せた目は真実をも見透かしていたのかも知れない。
「ちなみに俺は獣に食われるとか絶対嫌だけど、アリスさんやパラディーゾの皆さんはどう?」
「ひめはいやですよ!」
 何故か答えてくれた恒星天。一番距離が近いのが彼女だからだろうか。アズハはベヒーモスの体の下に潜り込む。
 だが、その位置は踏み潰される可能性さえある危険な領域だ。死すらも畏れずに果敢に挑まなくてはならないか。
 放ち続けるアクティブスキル。其れを乗せたのは覇竜の顎の如き破壊力を秘めた格闘武器。攻防一体、その手を緩めることはなく。
 空を駆るように飛び上がった彼へと襲い来る終焉獣は皆、恒星天による差し金であった。

成否

成功

状態異常
真読・流雨(p3x007296)[死亡]
飢餓する
アズハ(p3x009471)[死亡]
青き調和
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

第2章 第8節

アイ(p3x000277)
屋上の約束
シフルハンマ(p3x000319)
冷たき地獄の果てを行くもの
ヨハンナ(p3x000394)
アガットの赤を求め
梨尾(p3x000561)
不転の境界
ロード(p3x000788)
ホシガリ
ハウメア(p3x001981)
恋焔
タイム(p3x007854)
希望の穿光

 主人公(アリス)――それが彼女の呼び名であった。彼女の言うこともやることも何もかもが『めちゃくちゃ』だ。
 タイムは「わかんない」と呟いた。
「世界に認められてもらえないから怒って怒って、なら全部を壊してしまいたいと思ってるの?」
「駄々っ子よね」と囁いたのはハウメア。タイムは「そうだよね」と頷く。頷くしか出来ない。分からないという言葉は、歩み寄らないという意味でもある。そうするほどにタイムは割り切ることは出来なかった。
「あなたは外に出られたら何がしたい?」
「あなたに答えを返すから、この子を『今は止めて』みて?」
 揶揄う少女の声音にタイムは「悠長に話してる暇はないってことね!」と拳を固めた。ここまでいらして、と笑ったジェーン・ドゥにハウメアは待っていなさいとベヒーモスへと飛び付いた。
「えぇ、貴女がそういうのなら、そっちへ行ってあげますよ。だから待っていなさい、『駄々っ子(アリス)』!!」
 狙うべきは支えの均衡を崩せる膝裏だ。ジェーン・ドゥを見上げていたシフルハンマは自身は作り物。故に、データも境界も混沌も同じ本物の世界のように生きている。創造者の元で生み出されれば命だろう――と、そう言えども平行線か。
(しかし前に出てはいけないよ、とは情けをかけられてるな。
 確かに戦場は死にたくない俺からしたら心臓(コア)に悪いし、胃(鎖)にも悪い、正直に言えばROOサイズと会ってなかったら俺は既に撤退してるよ)
 そう呟くシフルハンマに危ないと叫んだのはタイム。ベヒーモスが脚を引き摺っている。しかし、終焉獣達はシフルハンマやタイムへと襲い来る。前線へと出れば出るほどに、攻撃の手は止まない。
 タイムはシフルハンマの前へと踊り出し、挑発しながら前線へと飛び込んだ。彼女が受け止める終焉獣ごと、ハウメアが穿つ――!
「春さん!」
 春、と。そう名付けた梨尾は挫けることなくジェーン・ドゥへと声を掛けた。その傍らにはロードやアイ、ヨハンナの姿も見れる。
「俺は世界に認められようとなんてしてないよ。
 理弦とこの世界のまだ知らない所を一緒に見たり、教えたい愛情、大切な者に置いて逝かれたり置いて逝く苦しみを知ってるから世界を守りたいだけだ。
 会った事は無いがマザーもそうなんじゃないか? 愛しているから動かず、泣かず、身を粉にして見れる我が子の笑顔が愛おしい!」
「……」
 ジェーン・ドゥは応えない。彼女の傍らで給仕を行っていた『原動天』が「アリス、茶菓子はお好みではありませんでしたか?」と日常に徹している。
 彼女が何を思ったのかは分からない。それでも、言葉は届いたはずだ。梨尾が見上げれば、終焉獣が落ちてくる。
「アリスちゃんにちょっかいをやめてくれませんか?」
「恒星天――! ラグナヴァイスはお前達か。けど、これは……手ごたえあったのか? じゃあやれるな。ガンガン行こう。待ってろアリス」
 ロードは無意味に殴ってたわけではない。だからこそ、恒星天『偽にゃこ』による終焉獣が多くなってきたのだと察知する。
「『どうやってそれができるのかしら』……か。無謀だとしても、俺はやり遂げる。
 マザーに頼りっきりで彼女を搾取し続けるのが今の練達なら。練達を変える。いい歳した我が儘なガキどもに親離れさせるンだよ。
 なぁ、アリス。答えてくれなくても良い。もしも、本当に練達を変えられたら。お前もROOの中で幸せに暮らすって道はもう無いのか?」
「私――」
 ジェーン・ドゥの言葉を遮るように恒星天が叫ぶ。「アリスちゃん! 『惑わされちゃ駄目』ですよ!」と。ジェーン・ドゥはそうねと笑った。
 パラディーゾは『彼女達がこの世界を壊すために生み出された』
 故に、破壊のために存在している存在意義が揺らぐのだ。原動天も、恒星天もジェーン・ドゥが目指した破壊のために動いている。自身が惑えば、止めるように。ストッパーのように位置した二人。最も、ジェーン・ドゥに近く友人とされた二人として。
「練達を変えるために、何を犠牲にするのかしらね」
 くすくすと。意地悪く笑ったその声音に恒星天がほっとしたような表情を浮かべたか――彼女の周囲から落ちてきたのは終焉獣。
 彼女を惑わすこと勿れとでも警告するようにベヒーモスのもとへと向かわんとするロードを、そしてヨハンナを狙い続ける。
「トライアンドエラーを繰り返せば重要な情報だって見えるかもしれなイ。
 狂化をどうにかする術も有るかもだし? いっそアリス達知ってるかイ!? 教えておくレ! ダメ?
 ……いっそZEROとか他の陣営が援軍来た時情報収集頼むのも手かネ……」
「アイ、頭良いな」
 ロードも何らかの援軍を頼もうかと考えた。アイは兎にも角にもベヒーモスの狂化を解いて終焉にお帰り頂かねばならないかと県を握る。
 体の内側が柔らかいのは確かだが、踏み込んだヨハンナは「危険だぞ」と声を掛けた。
「踏み潰されたラ、ぺちゃんこだよねェ」
「ああ、だが、その場合は直ぐにサクラメントだ!」
 ヨハンナの周囲に漂ったのは月下の花のかおり。薫り立ったそれの周辺でアイの刃が閃いて――ベヒーモスの唸り声と共に終焉獣が飛来する!

成否

成功

状態異常
アイ(p3x000277)[死亡]
屋上の約束
ヨハンナ(p3x000394)[死亡]
アガットの赤を求め
ロード(p3x000788)[死亡]
ホシガリ
ハウメア(p3x001981)[死亡]
恋焔
タイム(p3x007854)[死亡]
希望の穿光

第2章 第9節

スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
アダム(p3x006934)
いちばんの友達
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
ホワイティ(p3x008115)
アルコ空団“白き盾持ち”
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影

「世界にはたくさんの『可愛い』があって甲乙なんて付けられないけど、守りたいもののために、君の『可愛い』と戦わせてもらうよ、恒星天さん!」
 堂々とそう告げるアダムに恒星天はくすりと笑った。悪辣なほどまでに『ジェーン・ドゥ』の影響を強く受けた天国篇。
 そんな彼女に狙いを定めるスキャット・セプテットはアデプトピアノの鍵盤を鳴らす。
「世界へ自分の可愛さを広めたい、と夢を持ちながら志より世界の破滅を優先させる……恒星天、それで君は辛くないのか?」
「いやーでもこうやって皆さん可愛いひめを認める気がないじゃないですか?
 なら、世界を白紙にしてからやり直した方が得るもの多くないです? 気のせいじゃないほどに」
 首を傾げた彼女は饒舌だ。当たり前のようにそう告げた恒星天にホワイティは唇を噛んだ。
(一緒に戦ってくれる皆がいる。絶対に守らなきゃいけない人がいる――だから、わたしはまだ戦える!)
 終焉獣を引き寄せられてはベヒーモスへの攻撃を行うイレギュラーズに余計な負担を強いるだけだ。其れを許しては置けないとサンライズソードは鮮やかな陽光を照らし返して。
「いくら可愛くても、これ以上好きにはさせてあげられないよぉ……恒星天、勝負!」
 ホワイティが地を蹴った。相手はすばしっこい。それでも、刃は変幻し恒星天の髪の一筋でも逃さぬように。
「陽光の一撃をもってその身を灼く、可愛いからってあまりアピールすると喉が焼けちゃうよぉ……!」
「ふふー、ひめを狙うなんて!」
 ちかりと輝いた光が終焉獣へと叩きつけられた。反射し、そして暗黒が泥のように広がった。その様子をまじまじと眺めてイズルは「一筋縄では、か」と呟いて。
「お姫様が忙しくなってきたけれど、原動天のツルギさんはまだ上にいるの?
 彼女の護衛の方が優先、ということかな。貴方の存在は否定しない。でも……貴方の在り方は受け入れられないんだ」
 イズルが見上げれば、原動天はジェーン・ドゥとの楽しいティータイムを行っている。九重ツルギの補佐を行うイズルの言葉に恒星天は笑う。
「それだけひめを信頼してくれてるってことですよ!」
「では、その信頼が間違いであったと証明しましょうか。可愛らしいプリンセス。俺達とも踊って戴けますか?」
 ベヒーモスの攻め時。つまりは『恒星天にとってはベヒーモスの補佐を行うタイミング』
 それには違いない。彼女が可愛らしく笑うその声音一つ、鈴でも慣らすように――『ひめにゃこ』のアクセスファンタズムを強化した響きが広がって。
「俺達のパーティーも可愛いが山盛りで、負ける気がしませんね!」
「まあ、ひめよりは可愛くないですけれど!」
 恒星天の『可愛い』という言葉一つ。それだけで、動き出した終焉獣がずんと飛び付いてくる。
(原動天の俺と共に過ごしてくれた彼女には感謝しかないのです。
 互いに譲れない物の為に戦う以上、決着はつけますが――お礼を伝えたら、どんな顔をされるでしょうか)
 開幕から軽口だけ、その後は挑発する方が『自分らしい』。その在り方を変えているのは――
 言葉にせずとも浮かべた笑みに。恒星天を狙い、引付けようとするツルギへと複数の終焉獣が襲い来る。
 打ち払うようにスキャットが旋律を響かせた。滅びの旋律は殺意として奏でられて。
「恒星天の可愛さだって全て滅べば消えるんだ。だから私は、君のために勝たせてもらうよ!」
「可愛いは永遠不滅! 白紙の世界でひめの可愛さを刻みつけてやりますよ!」
 ぐぱりと口を開いた終焉獣にアダムが「わあ」と声を上げる。其れ等を打ち払いながらスキャットはしぶといと呟いた。
 それでも、終焉獣の援軍にも限りはあるか。恒星天の余裕も僅かに崩れ出す――それだけ、彼女に狙いが定まった、そう言うべきだ。

成否

成功

状態異常
九重ツルギ(p3x007105)[死亡]
殉教者
ホワイティ(p3x008115)[死亡]
アルコ空団“白き盾持ち”

第2章 第10節

ハイタカ(p3x000155)
誰彼
リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
アルヴ(p3x001964)
分岐点の別の道
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
Λ(p3x008609)
希望の穿光

「塵も積もればなんとやら、とは言うが――やりゃぁ出来るもんだな。軽く脚引き摺るとこまでは来たじゃねぇか!」
 故に、相手も本領発揮かとTeth=Steinerは笑みを噛み砕いた。St.Elmo'sFire――ゾディアックアームズ、その一つは双子座の加護をTethへと与え給うた。
 狙う膝裏へと届くために。ベヒーモスが進み、荷重が掛かった瞬間を狙うが為にタイミングを整える。
 あんな巨体だ。膝に掛かる負荷はシャレにはならない。だからこそ、妨害が多いのだと舌打ちをひとつ、Tethが顔を上げれば、Λが機動魔導甲冑『黒麒』を纏い、魔導砲を打ち続ける。
 死に戻り上等。ログアウトなんて『彼方が不可にした』のだ。存分にデスカウントの補正を乗せた刃を届かせるだけだ。
「まぁ、やるだけやってみるとしよう……四刃生成、すべて断ち斬り血風旋渦と洒落こませてもらうね?」
 前へと迫る終焉獣を退けて突貫する。傷つけども、今は関係はない。唯、飛び込むだけが『自分の在り方』なのだとでもいうように。
「その自重は体に毒だぜ? その事を思い知れや!」
 TethはΛが開く道へと続く。それは、駆けるアルヴの背より飛び上がってのことだった。
 気配は霧の如く、駆ける白狼は仲間と共に走り続ける。爪よ、届けと叫ぶように。
「……柔らかい場所も分かってきたみたいだし……それを狙わない手は無いね……。
 ……この世界が壊れたら……練達も壊れちゃうんだよ……そんなことさせるもんか……!」
 学び舎諸共失ってしまう。その恐怖を横に添え。アルヴは「行って」と囁いた。宙を踊ったTethも、死をも覚悟した決死の一撃を膝裏へと叩きつける。
「でもアレッスよね、アリスの世界だと小さくなる薬とかいっぱいあるっすよね、そういうことっす? 小さいリュートなら食べられるってことッス?」
『顔』が届かない。空を飛べば飛ぶほどに終焉獣が襲い来る。リュートは男は度胸でぴょいんと跳ね上がった。
 ぺちぺちと削りながら苛つき口を開くタイミングを待ち構える。今か今か、そう考えるリュートは『アリスもびっくり』の一撃のためにベヒーモスの膝を折らせなくてはならぬと考えた。
『柔いとこ 大物 狙う 定番』
 そう囁いた縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にハイタカは頷く。石花の呪いの解除は最優先に。傷を見付ければそれを広げてゆけば良い。
『あれ 中に 入れそう』
 そんな縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の言葉を聞いてリュートは「傷から飛び込むッスか!?」と身を縮こまらせた。これだけの巨体だ。顔は遠く、膝を付かせなくては『口からIN』は狙えない。
『小鳥 周り 敵 よろしく』
 しかも、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がハイタカへとそう告げた通り、ベヒーモスの損傷を受けて恒星天が呼び寄せる終焉獣の凶暴性が上がっていく。

 ――みんなー! ひめのためにがんばってー!

 そんな声さえ聞こえそうな程に。終焉獣を撃ち払うのは『愛しき月』が害されないためだとハイタカは願う
「紫月、俺はこの世界では飛べない。確実に弱い箇所を狙って来て欲しい……絶対守るから……お願いだよ……愛してる……」
『ああ 任せて』
 普段は護られてばかりのハイタカでも、今は番を護りたい。アクティブスキルで周囲を焼き尽くすことは吝かではない。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧とハイタカは番として共に進む。リュートがぴょいんと跳ね上がったその場所に終焉獣が口を開けて飛び込んだ。
「……凄いね……」
 アルヴが振り返る。足下からも飛び込まんとする終焉獣。どれ程、それは脅威であろうか。
「……凶暴になってきた……」
 呟いたアルヴに「其れだけ、ベヒーモスがピンチってことっすか!?」とリュートは問いかける。
 ベヒーモスは、ゆっくりと動く。それでも脚を引き摺り、狙いは定めやすい。動きが鈍くなることで狙いを定めて足を止めれば終焉獣が次はお前ラダと言わんばかりに迫り来るのだ。
「面倒にも程がある――!」
 呻いたTethにΛは頷いて。それでも『攻撃』は確かにベヒーモスの肉体(データ)を大きく損傷していた。
「涓滴岩を穿つってな。デスカウント上等。さぁ、どんどん行くぜ!」
「うん。死ぬだけ強くなるから任せておいてよ」

成否

成功

状態異常
リュート(p3x000684)[死亡]
竜は誓約を違えず
Teth=Steiner(p3x002831)[死亡]
Lightning-Magus
Λ(p3x008609)[死亡]
希望の穿光

第2章 第11節

雅(p3x001866)
巻き込まれた人
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
崎守ナイト(p3x008218)
(二代目)正義の社長

「ふぅ……。拙者達の呼び掛けは闘士達にきっと届いたと信じて、この怪物の歩みを少しでも遅らせましょう!
 踏ん張り時です! 援軍が来る前に伝承へ到達されたら笑い話にもなりませんからね! いきますよー!!!」
 夢見・マリ家が虎の闘魂を滾らせて走り出す。ベヒーモスのリソースの底は見えない。だが、削れば削れるというならばマリ家とベヒーモスの相性は最高であるはずだと認識している。ならば――
 がおー! と戦闘力を向上させる。駆けろ、カイザーブラックタイガーソウル。ツインタイガーバルカンは電磁加速により雷速にまで高められて行く。
 串で付け――そして、虎はベヒーモスから決して離れぬ位置に付く。
「いい儲け話があるって、あれよあれよという間にR.O.Oのアバターを作らされてここまでついて来ちまったが……
 本当にウマい話なんだよな? ミスタは社長って呼ばれてるみたいだし、信じていいんだよな? なぁ!?」
 叫んだ雅。崎守ナイトに誘われて『ほいほい』とやってきたは良いが、突然の世界の終焉レイドイベント。さて、此れはどうしたことか。
「リア友をR.O.Oに投入じゃねーの! 今更勧誘した理由? 特になし! 強いて言やぁ社長の勘って奴じゃねーの!
 疑い深いが儲け話をチラつかせたら雅はチョロ……快諾してくれるからな。守りも攻めも任せとけ、無茶させる代わりに先輩としてサポートはするぜ!
 行くぜ、ブラザー! 肩慣らしに、まずは終焉獣を蹴散らしていこうじゃねーの!」
 社長の勘で突如としてぶち込まれた雅は「おおおおい!?」と叫ぶ。
「魅せるぜ俺の情熱(passion)!」
 ナイトが前を行けば雅はふんわりと香りを漂わせる。ムスクをトップノートに。スパイス香る一撃は官能的に終焉獣を包み込む。
「ところで雅は金魚すくいってやった事あるか? 俺の会社を中心に、今世界的な大ヒット……になる予定なんだけどよ!
 特に噴水とかでDanceしながら派手に掬うのは最高なんだぜ!!」
「金魚すくいは得意かって……あんなん海と離れた場所にいる奴らの娯楽だろ。俺ならもっと大物を狙うね!」
 例えば――リヴァイアサンとか!?
 そんな二人を眺めながら杖を握りしめていたアレクシア・レッドモンドは僅かな緊張を滲ませる。
「援軍も来てくれたようだし、このまま攻めて……あら? あそこにいるのは」
 吹雪はにんまりと微笑んだ。あれがこの世界のアレクシア。彼女が振り返れば後ろからアレクシアとシラスがやってくる。
 彼女達もアレクシア・レッドモンドを護るつもりだろうか。
「助けに来てくれたのね、やっぱり世界は違ってもこんな時に何もせずにいられるような人ではないわよね。
 とはいえ、私達と違ってこの世界の人達は死に戻りなんて出来ないもの。
 本人ではないということはわかっているけれど、大切なお友達を傷つけさせたりなんてしないわ」
「……私一人では、何も出来ませんが」
 そっとアレクシアが見遣ったのはシャルティエであった。幻想種以外と協力することを、彼女は学んだのだろう。
「支えます。力を貸して頂いても?」
「ええ、勿論」
 吹雪はアレクシアが解呪に専念できるようにと協力すると笑みを浮かべた。

 ――『私』を……アレクシア君を守りに行くよ!

 シラスにそう告げれば「そうこなくちゃ」と彼は笑う。この世界でのアレクシアは石花病の研究者、つまりは戦場の真ん中に立ち続けるしかないのである。
「俺たちを信じてくれてありがとう。キミが繋いでくれた希望だぜ」
「助けに来たよ! 君は私が守るから! 一人でも多くの人を助けてあげて! そして終わったらゆっくりお話しましょう!」
 彼女と話したいことは沢山ある。彼女が成せることだって。シラスとアレクシアが手を差し伸べれば、『アレクシア』は大きく頷いた。
 アレクシアはルクアの為にも、彼女の知識を分けて欲しかった。屹度、彼女ならば救いの手を差し伸べてくれるはずなのだから。
「こちらこそ、護って頂きありがとうございます。頑張ります。
 ううん、頑張る。だから……君たちも! 頑張って! 支えるから!」
 彼女の言葉が、力をくれる気がして。『私』は『アレクシア』を見つめて笑う。
「付き合わせちゃってごめんね、でも今回ばかりはお願い! 『希望』を絶やさせないためにも!」
「水くさいこと言うなよ、いつだってお互い様だろ」
 笑いかけたシラスにアレクシアは頷いた。こうして、何時も通りギリギリを越えていくことが出来るならば。
 今回だってやってみせる。石花の呪いの気配を弾くように周囲に広がった青い魔力。それは蒼穹を衝き、希望へと繋がるようだった。

成否

成功

状態異常
雅(p3x001866)[死亡]
巻き込まれた人
夢見・マリ家(p3x006685)[死亡]
虎帝
崎守ナイト(p3x008218)[死亡]
(二代目)正義の社長

第2章 第12節

エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター

 戦況を解説しよう、と口にしたのは水無月であった。そうして各地に戦況が伝達されてゆく。
 その声ににんまりと微笑んだのは快活な美貌を宿したイレギュラーズ――エイル・サカヅキ。
「うーわ、ちょっと一杯キメてる間にオールスター超大感謝祭!
 べひべひとかぶん殴ったらその後ろで優雅にスカしてるアリスちんにもっかいご挨拶できるんしょ?
 ならとにかく今はべひべひ――ベヒーモスをぶん殴る!」
「だが、その障害になるのが……成程『恒星天』か。彼女は終焉獣を呼び寄せて使役する能力を有しているらしい」
 冷静に告げる皐月の姿にエイルははっと息を呑んだ。
「ごめんねさっちん、んでもってさんきゅー! 昨日の敵は今日の友的な?」
 謝罪はするがノリは軽く。構わないと手をひらりと揺らがせた皐月は『恒星天』を退けねばベヒーモスが膝を突けどもじり貧かと呟いた。
「まじエグいっしょ! とりま、ぶん殴って膝を付かせればおけまる?」
「ああ。……正直、あなたの言葉の大半を理解していないが『おけまる』だ」
 皐月は水無月を振り返る。霞帝による召喚は先ずは四神を、そして、黄龍と瑞神に至るまで続くはずだ。
 そして――亜竜種の救援も『もうすぐ』だ。
「さって、行こっかさっちん! べひべひを倒して世界を救おうぜ!」

成否

成功


第2章 第13節

Siki(p3x000229)
また、いつか
にゃこらす(p3x007576)
怪異狩り
陽炎(p3x007949)
影絵舞台
星羅(p3x008330)
誰が為の器
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用

 後方に設置された『航海』による拠点は物資の運搬や、怪我人への支援、そして復帰するイレギュラーズのサポートを担っていた。
「章姫様、ご無事でいらっしゃいますか……! ああ、良かったネコロマンシア様と共におられたのですね。お怪我がなくて何よりでございます」
 駆け寄った陽炎に今園 章はぱちりと瞬いた。彼のその様子は過保護そのもの。どうにも慣れぬ心地で章は肩を竦める。
「ええ、この可愛らしい子を預けて下さったのだわ。それに……前線で皆が頑張っているのですもの、わたしは帰りを待つ者として無事でなくてはならないの」
 微笑んだ彼女はどうして自身にそうして気を配るのかと不思議そうに首を傾いだ。そう言われれば陽炎とて弱い。
「それは……我がマスターに貴女様があまりにもそっくりでいらっしゃるものですから。
 あの方も貴女様と同じくとてもお優しい方でして……いけません。戦闘中に世間話に花を咲かせるなど戦闘アンドロイドらしくありませんね」
「ふふ、いいえ。語らうのは日常なのだわ。その時を楽しむために……頑張りましょう! ねえ、如月」
「御意に」
 姿勢を低くした如月は章の指示を――現実よりも、其れに重きを置いているのだろう――遂行すべく護衛役を務める。
 遥か前線、霞帝が『四神降ろし』を行っている場所を見据えながらも陽炎は本物の『章姫』と彼女を逢わせてみたかったと呟いて。

「――進捗は?」
 問うた黒子に霞帝は「青龍ならば降ろせそうだ」と言葉を紡ぐ。先ずは青龍を、そして続き玄武を。朱雀、白虎と辿り四神の権能を持って黄龍――それら全てを呼び黄泉津瑞神へと至るという。
 黒子が連携する水無月隊とは章の居る拠点と前線を繋ぎ、情報伝達を有効に士、卯月や師走、長月への支援状況の把握が行われ続ける。
 防衛戦線は常に正常(オールクリーン)でなくてはならぬ。黒子はその場で静かに立ち、戦況を見極めた。
「ありがとうにゃこらす。召喚が無事に達成されるまで、全部守ってみせる。だからさ、お願い。もう少し付き合ってよ」
「なーに気にすんな。付き合ってやるさ、いくらでも。無事に召喚が成功すりゃ一気に戦況は変わる。なら全部守り切ってやるさ」
 にゃこらすがからからと笑えばSikiは微笑みを返すだけ。彼女にとって、今、この場で『召喚』を支える事こそが神光と呼んだ場所へのさいわいにつながるのだ。
 紡いで織った縁。それが自身の力であるならば。この世界で『彼女』と出会って『彼女』を救ったのは意味のないことではない。
 ――遠い異国の地、神光で召喚の儀の支えを行う織を思えばこそ。ここで踏ん張らねばならぬとSikiは蒼き闘志を宿らせて。
「合縁奇縁。これまでの縁が続々と集まってるがよ。俺が紡げる縁なんざありはしねぇ。だから縁を紡ぐ奴らの盾くらいにはなってやるさ。
 ああでも、かつて戦った敵って縁なら俺にもあるか。『砂嵐』での戦いだってのにあの盗賊王様はどこほっつき歩いているのかねぇ」
「もっと『大物狙い』だったりしてね?」
 揶揄うSikiににゃこらすは広大すぎる砂漠だからこそ、出来ることは多いのだろうと霞帝を庇うように立ちはだかった。
 託したもの、託されたもの。
 それは言葉にするにもなんとも歯痒く。幸せになりたいという願い。この世界を守るという責任。
 星羅が見やる横顔は、無幻などと名付けられた彼女には似合わぬほどのさいわいに満ち溢れていて。
(有り得たかもしれない幸せな人生。
 ――私の代わりに私(あなた)が幸せになれるなら。私は、幸せになんかなれなくたっていい)
『誰に似たのか』無理も無茶も厭わぬ彼女たちに「心配しているんですよ、此れでも」と囁けば無幻はおかしそうに笑みを零した
「だから命を賭けるのは私達だけでいい死ぬのは怖くない。貴方達を失う方が嫌だ。……だから無理も無茶も私達だけのものでいいの。
 ヴェル……ッ廻姫様、無幻! 痛むようなら後退しても構わないから、死ぬのだけは避けてください!」
「違いますよ、星羅。私たちが戦うのは『貴女たちにだって死んでほしくはないから』なのだから」
 そんな優しさに星羅が唇を噛み締めた。震える彼女の肩をぽんと叩いてからスイッチは勢いよく前線へと飛び出して。
 共に戦ってくれる仲間がいる。そう思わせてくれる星羅の言葉がスイッチをどれ程までに勇気づけるか。
「……キミもそうだろう? 廻姫、ずっと因果の輪の中で孤独に戦い続けてきたキミならば。
 こうして強く心を寄せてくれる存在がいることがどれだけ嬉しいか。託された思いの為に、俺達は戦おう」
「……そう、だな。ああ、無幻が、そして主上がいる。それだけでどれだけでも強くなれるさ」

成否

成功


第2章 第14節

ヴァリフィルド(p3x000072)
悪食竜
アンジュ(p3x006960)
いわし天使
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
Λ(p3x008609)
希望の穿光
天川(p3x010201)
國定 天川のアバター
CALL666(p3x010222)
CALL:Beast

『やり通す』と決めたならば最後まで。そう告げたのは壱狐。
 神刀『壱狐』――それは彼女の本体と銘打ったアイテムだ。血も呪いも怨念さえも飲み喰らうその刃を手にして壱狐は立ち塞がる。
「――むしろ死んでもやり通す! 第弐ラウンド! このまま攻め続けます!」
 膝裏へ、飛び上がったその身へと宿す陽の構え。陽光の輝きを宿し、叩きつけるは陰陽五行の太刀(ひざかっくん)。
 膝を狙う以上は膝をかくんと折らせるのが狙いだ。だが、弱点で在ると言うことは『危険』も多く在ると言うこと。
「大物狩りには数と智慧と勇気、これに限りますね!
 相手も簡単にはクリアさせてくれないようですが――!」
 壱狐が振り向けば勢いよく飛び込んでくる終焉獣が足下を狙う。宙を飛来するその身を易く奪わんとする終焉獣へと決死の勢いで叩きつけられたのはいわしセイバー。
「まだ倒せないの!? もーしぶといたらないね。
 でも、皆どんどん集まってきてる。勝つまで諦めなければ絶対勝てる!! いわしの群れ、隕石をも砕く!!
 ――ついでに、お前はいわしを食べそうな顔をしているな!!!!」
 許さないぞと言わんばかりに勢いよく叩きつけた断罪の刃。いわしを食べる者は罪人であると言うようなアンジュにCALL666は小さく頷いて。
「集合してきたな。そして、各が使命を有する――俺はベヒーモスに集中する。
 他にやるべき使命がある者は、そちらに集中しろ。俺はこのデカブツを少しは足止めするさ。さあ、やろうかベヒーモス」
 CALL666は遠く、眺める。援軍を助けるためにと旅に出た仲間達が多く居る。彼らが辿り着く前に、戦線が瓦解しては意味が無い。
 故に、CALL666は連携を意識した。アンジュが食い止めた終焉獣。壱狐の戦略に逢わせてCALL666は渾身の矢を放つ。
「確かにしぶとい――が、俺が皆を前へと押し上げる」
「うむ。多少時間は掛かろうとも無駄にはならぬ。喰らえば喰らうほど、こちらもデータの蓄積はできのだから」
 ヴァリフィルドはずんと、地を踏み締めた。飛び上がり、制空権を支配する。
「たとえ、ここが現実ではなかろうとも、再生のない破壊など許容することはできぬ。
 無意味に世界を貪り喰らい続けることができぬよう、いずれ我がその腐った性根ごと喰らいつくしてやろうぞ」
 ヴァリフィルドの体内に蓄積された膨大なデータが外部へと放たれる。その奔流は荒れ狂い、牙を剥きだした龍の体を天へと押し上げた。
 終焉獣を巻込み、噛み砕く牙の鋭さにΛは手を叩き喜んだように笑ってみせる。
「なら、こちらからだ――」
 Λはログアウトすることが叶わぬ故に自身のデータが強化されたことを感じている。ならば、その渾身の一撃を放てば良い。
 周囲の終焉獣諸共巻込むように。放たれたのは魔導砲。空気中に漂う魔力素を、魔力と結合させて威力を増大させる。
 漆黒の装甲に深紅の鬣を堂々と揺らがせた麒麟を狩りΛが周囲を蹴散らし続ければ、壱狐が膝裏を傷つける。

 ――――――!

 唸る声。其れは終焉を告げるように暗く深い。だが、ヴァリフィルドにとってはそれは恐怖には非ず。
「痛みは感じているか」
「蟻の一撃も積み重なればそれなりにもなるだろうよ! 精々今の内に余裕ぶっこいてろ!」
 からからと笑った天川は邪魔する小物は蹴散らすと同様に傷を狙い続ける。膝裏に意識を向けさせたことでお留守になった傷口を抉るように攻撃を。
 それは少しでも多くの仲間が到達するための時間稼ぎ。『急いて倒す』必要は無いと彼は唇を吊り上げて。
「要はよ! 伝承に辿り着く前に倒しちまえばこっちの勝ちだ! 辿り着くギリギリまではくれてやる! だがそれまでだ!」
 ――そう。そうだ。
 彼らはその背に無数の命を背負っている。伝承王国の騎士達が内部で暴れ回るパラディーゾ達を抑えているだろう。
 鋼鉄国や正義国での動乱が収まれば、彼らは此処に集結しそして『終焉の獣』を打ち倒す。
 その時まで前線に立っていた勇気の象徴――そんな言葉を踊らせて天川は僅かでもと時間を稼ぐ。

成否

成功

状態異常
アンジュ(p3x006960)[死亡]
いわし天使
壱狐(p3x008364)[死亡]
神刀付喪
天川(p3x010201)[死亡]
國定 天川のアバター
CALL666(p3x010222)[死亡]
CALL:Beast

第2章 第15節

セララ(p3x000273)
妖精勇者
ヨハンナ(p3x000394)
アガットの赤を求め
梨尾(p3x000561)
不転の境界
タイム(p3x007854)
希望の穿光
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「和梨のタルトです! お茶会の時より美味しくなってるはずですよ!
 後で感想を聞きますね! 捨てたり踏みつぶしたりしたら何度でも届けに来ますから」
 飛び込んだ梨尾を食い止めるように立っていた原動天は「おや、それはお預かりしましょう」とさらっと菓子を預った。
 拍子抜けだと見遣った梨尾に「ティータイム中ですので、それでは」とその身を押した原動天は彼の体を地へと叩きつけんとする。
「ッ――春さん。俺は君を惑わせたいのではありません。
 アリスでもジェーン・ドゥでも春さんでも他の人が呼ぶ名前でもいいので、君に生きていてほしい。
 パラディーゾの002、うちの次男の理弦に会えたのは……きっと君がいてくれたおかげなんです。
 君は次男の事を全然知らないかもしれませんが……自分の中で君は恩人です。だから、何度でも言葉をかけます」
 原動天の用意したテーブルに腰掛けていたジェーン・ドゥが眉を寄せる。彼女へと茶器を用意しながら「耳を貸さずともよろしいですよ」と原動天は微笑んだ。
「……『惑わされちゃ駄目』ね。惑わすつもりはねぇよ。俺は1つの可能性を提示しただけだ。
 どちらにせよ、マザーに依存した今の練達は変えなきゃならンよ。誰かを搾取して得られる利便性なんざ、歪んでる。
 歪んだものは……犠牲を払ってでも正さないと、な。未来の為にも」
 何処か、脚を縺れさせれるように。ヨハンナは立っていた。その身より息吹く月下の花。不死と称した己の身にも蓄積したのは疲労のようで。
 それでも、ヨハンナは言葉を尽くすことは止めなかった。此処で諦めればスターテクノクラートの弟子を称することさえ莫迦らしくなる。
 ヨハンナはベヒーモスを睨め付ける。足の甲を狙い、叩きつけるのは己の血潮から作り出された紅蓮の焔。命を喰らい貪る彼女を狙ったラグナヴァイスへと雪嵐と名付けた一撃を放つ。タイムにとっては『詳しい説明は忘れた』けど何だか使えてしまった格闘術にラグナヴァイスが僅かに怯んだ。
「ベヒーモスを止めないとアリスからのお返事は貰えないみたいね。
 元よりそのつもりだけど、止めてしまったらたぶん彼女の目的は叶わないのに……うぅんつまり?
 もうっ。頭の回転はそんなに良くないのよねわたし。教えてくれてもいいじゃないっ!」
 叫んだタイムに答えを返そうとするジェーン・ドゥを原動天は制する。口を閉ざした少女を見遣ってからタイムは「もう!」と唇と尖らせて。
 幾ら言葉を尽くしても、彼女は雄弁であったその唇と鎖すのだ。ならば、倒すしかないのか、この眼前の終焉の気配を。
 身へと宿したのは『くるっと受け流す』技能。堂々と見つめれば、彼女の姿は強大なるベヒーモスの影に隠れて。
「命をいくつ消費したってもう途中でやめられないの! ここで生きる人達の幸せを この世界を壊さないで!
 彼女の一番の目的はこの世界を壊してマザーを解放する事、で……世界に存在していたいのか、消えてしまいたいのか、どっちなの?」
「わたし――」
 首を振ったアリスに聞かせてくれても良いじゃないとタイムは叫ぶ。
 そうだ、彼女の意思を知りたい。その為に此処までやってきた。セララはどの『幸せ』にジェーン・ドゥも含みたいと考えた。
「ボクはアリスとは仲良くしたいんだ。世界の破壊なんてやめて、ドーナツ食べてお話しようよ。ね?
 困ってることがあるならまずは話し合いをして解決策を探そう! きっと何とかなるよ!」
「なら――」
「『いけませんよ、アリス』」
 首を振った原動天にジェーン・ドゥは口を噤んで。セララは届かないよね、と――俯くことはなかった。先ずはラグナヴァイスとベヒーモスだ。
 目指せ膝かっくん。その刃に乗せたのは世界とアリスを救うという想い。想いこそが力になれと聖剣へと光を宿す。
「――全力全壊! ギガセララブレイク!」

 ――――――――!

 唸り声。そしてぼろり、と落ちた皮膚片に指差・ヨシカは「皮膚って言うより靄みたい」と呟いた。
「ベヒーモス、でっかいなあ。大きすぎて良く見えないし此処まで来るとぼーっと見上げちゃうよ。
 ってそんな事言ってる場合じゃない! でもアリスって子もこの世界に居場所を探してこんな事をしてるとか聞くし……。
 パラディーゾ? って言う良く分かんないのもひめにゃこさんに似てるし殴りにくい……皆もっと安全に話し合いで解決できないものなのかな」
 ヒロインは遅れてやってくる――そんな言葉を口にして放ったのはプリンセスパイルハンマー。
 ヨシカの言うようにラグナヴァイスらを手繰るのはパラディーゾ、それも彼女にとっての友人『ひめにゃこ』のコピーである恒星天だ。
 彼女が呼び寄せたラグナヴァイスへの対策も多く始まる。寧ろ、幾ら強力な敵とは言えどもラグナヴァイスの支援なければイレギュラーズの相手にも苦心するだろう。
「ううん……ひめにゃこさんを殴りたくないけど――!」
「邪魔なのはたしかだよなー。だよなー」
 うーん、と首を捻ったのはルージュ。ベヒーモスの唸る声、そして落ちた皮膚片に。そうして少しずつは重なっている。
「だよなー、だよなー。たぶん、今のおれ達だけじゃ足りないぜ」
 決定的な何かが欲しい。ルージュがううんと唸ればラグナヴァイスが襲い来る。
「あーなんだろうなー。強力な一撃が必要なのか、何か変な技でも必要なのか。
 アリスねーがロクに邪魔してこないって事は、まだこっちがそんなに脅威じゃねーって事だろうしなー」
 上から振った笑い声が『恒星天』が其れ等を使ってベヒーモスの撃破を邪魔していると肌身で感じて。
「おっし、このままラグナヴァイス諸共倒してやるぜ! アリスねーもベヒーモスも、覚悟しろよ!」
 突撃し続ける。潰されようともへこたれず、叩きつけた愛の力は確かに肉を断った気配がした。

成否

成功

状態異常
梨尾(p3x000561)[死亡]
不転の境界
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

第2章 第16節

ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
ハウメア(p3x001981)
恋焔
玲(p3x006862)
雪風
イデア(p3x008017)
人形遣い
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者

「ふふんっどうやら妾たちの攻撃はよう効いておるようじゃのう。
 ――じゃがおぬしら、気を抜いてはならぬのじゃ。最後まで最大火力で徹底的にたたく! ではないと相手に失礼じゃからな!」
 胸を張った玲に小さく頷いたのはカノン。冒険者たる彼女の相貌にはそれは超常の存在として映っていた。だが、冒険者とは困難を攻略してゆく存在だ。攻略法があるならば、其れを活かしてゆかねば嘘ではないか。
「こちらも余裕がある訳でもないですし、出来る限り最大限の効率を以て攻撃するしかありませんねっ」
「うむうむ。処方を教えてやろうぞ!
 ――まず、傷口ができた個所を攻撃(なんかめっちゃEXAする)で十分に痛みつけます。
 その際、傷口だけでなく傷のまわりもぶちのめすようにします。その後上級な魔法などで周囲を吹き飛ばします。石花病感染のおそれがある場合は試薬の使用も効果的です」
 堂々と告げた玲に「まるで治療のようですね」と静かに佇むイデアが返す。流石の巨体はまだまだ動く。唸り、呻いて、痛みを訴えようとも、獣は歩みを止めないか。玲の指し示した『治療法』の通りにイデアもお誂え向きにと武器の有刺鉄線をお見舞いする。
「申し訳ありませんがその脚、使えなくさせていただきます」

 ―――――――――――!!!!

 耳をも劈くようなその声音。イデアは静かに佇んだ。戦況は未だ予断を許さず、世界は終焉の傍らに佇んでいる。
 それでも為すことは変わらない。例えば、玲が死をも恐れずに傷口を抉ることも、イデア自身が戦場に立つ仲間達を鼓舞することも。
 カノンが自身の持ち得た最大限を放つことだってそうだ。終焉なんのその。其れが、電脳世界であるからというわけではない。『攻略できないゲーム』に為ぬように最大限にクリアを目指す。
「脚を引き摺っているんですね? ならば、脚部を完全に機能停止にしましょう。
 これだけ大きな体を誇っても構造は動物と同じならば、十分な効き目があります!」
 カノンの言葉に頷いたナハトスター・ウィッシュ・ねこは「任せてー☆」と微笑んだ。猫の手貸しにやってきたのは星の魔法少年。
 にんまりと微笑んで、ベヒーモスの弱点と差された場所を狙い続ける。
「流れ星がすっころばす! ウィッシュ・スター・ランチャーーーー!」
 きらりと輝いたウィッシュ・スター・ランチャー。星猫魔法奥義は傷口を抉るように穿つ。超必殺技がベヒーモスの膝裏へと叩き込まれれば、その周囲のラグナヴァイスをも貫いた。
「ベヒーモスへの攻撃も相当続けられ、かなりボロボロとなってはいますが未だ健全。
 ですが、はじめと比べれば確実に歩みは遅い……もう間もなく好機が訪れるはず。あの子とぶつかり合う為にも、ここが踏ん張りどころです!!」
 ハウメアが天へと昇りスキルを放つ。ナハトスターの攻撃が鋭く宙を割く一撃であれば、ハウメアは一点集中の光の矢を放つ。
「――貫けッ、閃光!!!!」
 焦って事をし損じるならば、全力を持って『落ち着いて』ゆかねばならない。ナハトスターがパラディーゾに嫌悪を抱くように、ハウメアはこの世界を理不尽にも終えようとする敵(そんざい)を厭う。このベヒーモスとてそうだ。大それた名を持ち、唯の乗り物であるかのようにずしりと地を進む。
「此の儘、畳みかけましょう! 幸いにして『あちら』は抑えて貰えているようですから……!」
 無尽蔵に襲い来るラグナヴァイスを一点にまとめ上げたのは『恒星天』を狙うイレギュラーズが増えたからか。
 この隙に。ハウメアが囁けばナハトスターはこくんと小さく頷いた。

成否

成功

状態異常
ハウメア(p3x001981)[死亡]
恋焔
玲(p3x006862)[死亡]
雪風

第2章 第17節

シフォリィ(p3x000174)
クィーンとか名前負けでは?
すあま(p3x000271)
きうりキラー
シフルハンマ(p3x000319)
冷たき地獄の果てを行くもの
フェアレイン=グリュック(p3x001744)
聖獣の護り手
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
きうりん(p3x008356)
雑草魂

 ジェーン・ドゥと逢ったことは無い。それ故に、彼女の事は『彼女との既知』に任せておこうと考えていたフェアレイン=グリュックにとっての寝耳に水とは正にこの事。彼女の行く先を全て、彼女を思う誰かに任せていたいと願った彼はそうは言ってられぬと戦場にまでやってきた。

 ――うふふ。こんにちは、イレギュラーズ! 私の名前はビスコッティ・ディ・ダーマ!

 彼女が、『現実にはもはや居ない』あの小さな少女が勇気を出してやってくる。引っ込み思案な双子の妹は留守を預り、勝ち気な姉は堂々と戦場へと剣を携える。天香遮那に習ったという慣れない剣術で、こんな場所までやってくるのだ。
「うじうじしてる暇はねえ。この世界だから幸せになれた人もいる! だからこの世界を破壊させない!!」
 フェアレインはベヒーモスを狙いやすいようにと周辺の終焉獣を払い除けた。放つ貫通攻撃、其れに続いたのはレナヴィスカの攻撃か。
「頼むグリュック……あの笑顔を守る為、レイさんに力を貸してくれ!」
 願うフェアレインの傍らで「手伝いましょう」とその場で笑みを浮かべたのはイルナス。その傍らには小さなラダと呼ばれた少女が弓を手に狙い澄ます。
「もっとやった方が良さそうだね! ラダ、皆! 私が行くから、援護してね!」
 ラダと共に飛び出していったのはすあま。フェアレインとレナヴィスカが開いた道に、すあまは飛び込んだ。
「血がたくさん出るかな? 出るならそこが傷口だね。毛も鱗も皮もない、お肉むき出しのところだね!」
 固い鱗のような、皮膚を思わせた黒き体。それを狙うよりも、肉を穿て。狙うのが上手なレナヴィスカ達に任せれば、傷口とて広がっていく。
 応戦し続けるすあまを見上げてシフルハンマは息を呑んだ。現実と電脳世界を行き来して得た情報を口にする。
「ペリジスト……こっちでマザーを観測したが、君の目的は達成だ。マザーは真っ赤に反転……。
 誰にも優しくすることも無くなり、自由な選択肢を得た。
 ROOはマザーの意思次第で崩壊するだろう、もう脱出したらどうだ? ROOもろとも死ぬつもりはないだろ?
 それとも……マザーの事は関係なくただROOを破壊したいのか? もしくはここから巻き返されるとでも思っているのか?」
 問いかけに応えることはない。それが彼女の意思表示なのだと感じ取ってからきうりんは手を振った。
「――もうすぐだよ。キミとちゃんと会えたら、その時に私の思いを伝えるね。だって私達、友達でしょ?ㅤジェーン」
 走り出したきうりん。ログアウトももう一度不可になって戻ってきた。ならば死ぬ気で『死んで』デッカ君を狙えば良いのだ。
「私が、来た!! ――はい!ㅤきうり特攻ぶちかまします!!
 今回の相手はお前だ恒星天!ㅤとりあえずアリっち(とぴえぴえ)が深夜テンションの時に作ったであろうパラディーゾを全員倒して黒歴史にしてやる!!」
 びしりと指さしたきうりんの側でシフォリィはこくりと頷いた。ジェーン・ドゥと語り合うならば彼女の持った余裕を崩さねばならない。
 この終焉の獣が膝を突けば引きずり下ろせる筈なのだ。
「確実に成果は出ています、ならばこのまま手を緩める訳には行きません!
 何度でも言います、この世界は壊させません、どんな理由があろうとも、幸せな道を歩んでる私達がいるんです!
 ――この世界に生きている誰かの為にも、ここで止めます!」
 どれだけ辛いことがあったとしても、たとえ助けたい人が居たとしても。ジェーン・ドゥが『マザー』へと求めたしあわせを例え排する形になっても。
 この世界が壊れることは許せない。この世界は此処に生きる誰か為だけにあるのだから。
 シフォリィの支援を受けながらとん、と地を蹴ったのは真読・流雨。唇は僅かに釣り上がる。
「これが現実ならば、まさしく屍山血河。死屍累々というヤツなのだろうが。
 幸いにして、これは仮想現実。座標ならば、何度死んでも構わない。そして、僕は死ねば死ぬほど強くなる」
 良くある三文小説のようなフレーズでも其れを頼みで征くしかあるまい。何にせよ、タフさでは叶わない。シフォリィの支えがあれども流雨やきうりんは特攻する以上死が近い。それでいい。
『自身等が死ぬ気で傷つければ』傷つけるほどに傷口は広がっていく。ベヒーモスは膝を震わせ、一度は足を止めるはずだ。
 何度でも繰り替えさんとする流雨の前に終焉獣が襲い来る――恒星天か。
「ぜんったーい!ㅤきうりの方に進め!!
 ウィークネス!ㅤ終焉獣は私が引き受ける!!ㅤもう全部引き受ける勢いで!!ㅤだからみんなで恒星天を狙え!!
 数多の死によって強化されたきうりを舐めるなよ!!」
 きうりんが睨め付けた先、恒星天はにんまりと微笑んでいた。

成否

成功

状態異常
フェアレイン=グリュック(p3x001744)[死亡]
聖獣の護り手
真読・流雨(p3x007296)[死亡]
飢餓する
きうりん(p3x008356)[死亡]
雑草魂

第2章 第18節

アイ(p3x000277)
屋上の約束
ラピスラズリ(p3x000416)
志屍 瑠璃のアバター
メレム(p3x002535)
黒ノ翼
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神
シャル(p3x006902)
青藍の騎士

「翡翠の人達と……シャルティエも来たか!」
 シャルが声を上げればシャルティエは気付いたように頷いた。シャルティエにとっては神官であるアレクシアとの橋渡をしてくれた恩人だ。
「来てくれたか、シャルティエ! ……すっかり蟠りも無いみたいで、何よりだよ」
「協力を惜しまないと言ってくれた神官のお陰だ」
 肩を竦めるシャルティエにシャルは頷いた。アレクシア・レッドモンドを守り抜くの騎士たるものの勤めである。
 巨大な終焉獣を睨め付けて、シャルは直ぐに剣を引き抜いた。
「……背中、任せるぞ!」
「ああ」
 頷いたシャルが走り出す。希望も、世界も、人々も。奪わせるわけにも、喪わせるわけにも行かない。シャルが走り出せば、シャルティエも同じく併せる。彼女は希望だ――故に、護らねばならないのだ。
「……悲しんでいる人が居るのなら。放っておくのは騎士道に反するからね」
 シャルの騎士の言葉にシャルティエは「全くだ」と可笑しそうに笑ったのだった。
「さぁ、アレクシアさんの周りにいた敵はある程度片付いたかしら?
 あちらへの攻撃が激しくなれば、こちらに流れてくる敵も減るでしょうし。
 それに、こちらの世界でのお友達もすぐそこまで来てくれているみたいなのよね……。一緒に戦うのは初めてなのだから、どうせならカッコいい所をみせたいもの」
 くすりと笑った吹雪はアレクシアをシャルティエ達に任せて周囲の終焉獣を退ける。ベヒーモスの足の甲を狙う氷槍。その凍て付く気配と共に、ラピスラズリは踏み潰されないタイミングで飛び付いた。口は遠い、だが、傷口に飛び込むことは出来るはずだ。
 ラピスラズリのその身がベヒーモスへと向かうタイミングで、飛び込んだのは淡い光。それは魔力であっただろうか、鴉の濡れ羽を思わせた艶やかな黒髪を揺らせたメレムが笑みを浮かべる。
「はいはーい遅れてやってきたメレムさんだよ☆ 最早何処にでもいるよね終焉獣達。
 ラグナヴァイスだかラグナロクだが知らないけど。手が足りないって言うならお手伝いしましょうとも!」
 セオリー通りに狙うというメレムのサポートもありラピスラズリはベヒーモスへと飛び込んだ。
 容赦なくとも撃ち続ける。メレムは唯の一滴であれど、それが無数になれば岩すら穿つのだと最適解の『数の暴力』を駆使し続ける。
「ベヒーモスをまた狙うとするサ!!
 終焉獣も多くって本当嫌に成っちゃうネ……とはいえなればこそ、ベヒーモスはどうにかしなくっちゃいけない。
 ZERO! ZERO! どう? もう来てくれてたりするかイ? え、まだいなかったりすル?
 ――ともあれ援護は任せたヨ! なんならカーボン刀借りたいぐらいだけれどネ! 二刀流という奴サ!」
 からからと笑ったアイの求める援軍は此方に大急ぎでやってきている頃だろう。ならば、その間にもベヒーモスを叩けば良い。
 一筋縄でいかなくとも、それでも諦めるモノかと攻撃を続ける。それが自身等が掴んだ未来に近付く為の大いなる一撃なのだから。
 アイが運命を切り開くように放った一撃にベヒーモスの肉体が内部より押し返すような動きを見せる。
「肉が蠢いて――!?」
「一体其れってどういうことかしら……何かの力で、回復しようとしているの?」
 吹雪にアイは分からないと首を振る。それならば、と飛び出したのはシラスであった。
『アレクシア』が頑張っているならば、自分だって。そう考えたアレクシアにシラスは「すさまじいね」と頷く。
「アレクシアの試薬は凄い効き目だ。30秒で死ぬ石花病が一瞬で完治出来る。そこで試したい事が出来たんだ。
 石花病に抗える試薬ならその根源らしい怪物にも効いたりはしないかな? ……どうかな?」
 練達で遊んだゲームでは回復でもアンデッドにダメージが入った。R.O.Oもゲーム仕掛けだ。何か悪戯を思いついたような気持ちになったシラスにアレクシアは面食らったように瞬いた。
「薬を敵に、か……わからないけど、やってみよう!
 ゲーム的なことは未だにあまりよくわからないけれど、あれだけ規格外な相手だもの。試せる手は全部試さないとね!
 お伽噺の竜退治だって、知恵比べが付き物なんだから!」
「ああ。そうだろ? 面白そうだし、試してみようぜ!」
 アレクシアを背に乗せてベヒーモスを狙うシラスは「アレクシア、あの傷口を狙える?」と問いかけた。
 射程圏内に入れ――そして弓を放つのだ。弓を放つ。アレクシアの、返事はその音一つで十分だ。

 ――――――!

 耳を劈くような声。アレクシアとシラスの意識がふ、と遠のく。
「ええ、まじですか?」
 最後に聞こえたのは恒星天の声だろうか……。

成否

成功

状態異常
ラピスラズリ(p3x000416)[死亡]
志屍 瑠璃のアバター
シラス(p3x004421)[死亡]
竜空
アレクシア(p3x004630)[死亡]
蒼を穿つ

第2章 第19節

流星(p3x008041)
暦広報部隊
エイラ(p3x008595)
水底に揺蕩う月の花
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

「今の声は――?」
 首を捻ったのは流星。水無月隊が各地へ伝令へと走る。その姿を心強いと感じながら、流星は戦場へと馳せ参じていた。
 遠く離れた拠点より、章の護衛を行う流星に章は「一矢報いたのでしょう」と微笑んだ。
「敵が疲れ知らずの獣ならば、生きるか死ぬか、まさに此処が生命線となろう。俺に出来ることがあれば何なりと、章姫殿」
「ええ。正に此処は生命線。頼りにしていますよ、流星」
 幾分も大人びた章の様子に流星は頷いた。傅けば、主君が堂々と宣言してくれる。
 彼女の凜と背筋を伸ばしたその姿だけで、心が乞うも躍るのだ。
 もう一人の流星の話をしながら、彼女を護ろう。そうして、現実の章姫にこの世界が幸せになったことを届けるのだ。

 ――一方で、霞帝の護衛を行っていた黒子もその咆哮を聞いていた。
 直衛から一度離れて暦の支援を行う黒子は「何らかの変化があったようですね」と静かな声音で告げる。
「そうだねぇ~。何かあったのかもぉ。睦月、何だろう?」
「水無月隊に伝令させましょう」
 睦月にこくりと頷いたエイラは「どんなことでもぉ、エイラたちなら勝てそうだよねぇ~」と揶揄うように告げる。
「きっとねぇエイラと睦月はぁ戦い始めよりもぉもっと強くなってるんだよぉ? 教え合ってぇ互いの強さを学んでぇ理解も深まったからねぇ」
 エイラのその言葉に驚いたように目を丸くした睦月が僅かに笑みを噛み砕いた。その様な事を言われるとは思っていなかったのだろう。
「ねぇ睦月ぃ。そういえばぁ大事なこと忘れてたやぁ。
 共に戦ってくれてぇありがとう。これからもぉよろしくねぇ?
 ふふ、それじゃあそのこれからを護り通そっかぁ。多分ねぇ青龍もうそろそろ来てくれるしぃ。君とならぁ負ける気がしないからぁ」
「青龍様がお出でになるまで、倒れる確率は0に近いでしょう」
 エイラと睦月の背を眺め、黒子は頷いた。自身が支えていた霞帝は青龍の訪れを予見する。続くように四神への召喚を行い始めた。かなりの肉体的な負担があるのだろうが此処は踏ん張り時であるらしい。
「さて――前線はどうなっているのか」

 砂塵の中で、ルージュは血を拭う。
「アリスねー。そろそろ、こいつも何とかなりそうだぜ。何百回、何千回殴ったかわかんねーけどな」
 他の戦場の戦いが終わりつつある。世界に散っていた戦力が徐々に集まってくる。ルージュにとっての待ちに待った友がやってくる。
「”だから”ここが分岐点だ。アリスねーと殺し合う事になるかどうかの最後の分岐点だ。
 ねーちゃんはパラディーゾ達とは違う。自分の意志で引き返す事がまだ今なら可能なんだ」
 アリスを助けたいと願った人に、哀れだと悲しむ人に。助けてと声を上げられる機会は今だけなのだ。
「”主人公”ならハッピーエンドを願ってみろよ。少なくとも、ねーちゃんの目的の先に”それ”はねー!!」
「なら、私が産みだしたパラディーゾ達はバグだから、無駄だから死ねというの? そんなの――」
 悲しいでしょうと告げたか。アリスを見上げたルージュの耳を劈いたのは、ベヒーモスの叫声であった。

成否

成功


第2章 第20節

グレイ(p3x000395)
自称モブ
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
決死の優花
アダム(p3x006934)
いちばんの友達
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
ホワイティ(p3x008115)
アルコ空団“白き盾持ち”
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

「む、むむむ……まさか、まさか、ベヒーモスに『いじわる』しましたね!?」
 叫んだ恒星天に何を言って居るのだとスキャット・セプテットはまじまじと見遣った。耳が痛くなるほどの叫声。歩を緩めた終焉の獣。
 余裕などかなぐり捨てた様な彼女は地団駄を踏んでいる。終焉獣は怯え竦んだか供給が途絶えた。
「何があったのか……」
 スキャットの呟きに原動天の様子を眺めていた九重ツルギは「石花病の治療……」と呟いた。終焉の獣たちは石花の呪いを振りまいた。それ故に肉体の内側に『治療薬』を放ったのだという。通常の終焉獣(ラグナヴァイス)にはその様な効果を発揮しなかったがベヒーモスは『厄災の象徴』
 元はどのような存在であったかはさておけど、それが呪いを纏い狂化した存在であることには他ならないか。
「成程、石花の呪い渦巻くその体に治療薬はさぞ『沁みた』事でしょう。それ一つで攻略が叶うわけではないとしても――」
「今まで傷つけた『傷口』に塩を塗られたような感覚か」
 成程と頷くスキャットにツルギは「此の儘畳みかけましょう」とベヒーモスを――そして、その前に立ちはだかる恒星天を眺め見る。
「ツルギにはこの世界でたっくさん助けてもらったもの!
 俺だって、君の譲れないもののために道を切り拓く力になりたい……ううん、なってみせる!」
「お任せしますよ、アダムさん」
 アダムはこくりと頷いた。霜月隊の援護に「よろしくね母上さん!」と告げれば「ええ?」と肩を竦めて神使にまでも『そう』呼ばれるとはと困ったように肩を竦める。
「原動天のツルギさんはデート中、なるほど、お楽しみ中だね?
 彼の権能は同時に複数の思考を読めるのだろうか、それとも意識を向けた一人だけ?」
 首を捻ったイズルはツルギの号令に合わせて恒星天へと飛び込んだ。
「恒星天の権能は声がキーワードかもしれない……ふむふむ。では……ここに容器入りのポーションがあるよね。
 ベヒーモスと『おそろい』だ。ゴメンね、味の保証はしていないんだ、良薬口に苦しと言うだろう? カラフルに光ってくれていいんだよ?」
「むぐっ!?」
 油断していたと言わんばかりに恒星天の口へと投げ入れられたのはイズルのポーション。『ゲーミングひめにゃこ』になどなりはしないと憤慨した様子の恒星天は「ここで終わりませんよ! ひめの可愛さは!」と叫ぶ。
「恒星天の余裕、少しは崩れてきたんだねぇ……こっちにだって、引き下がれない理由がある……もう少し付き合って貰うよぉ、恒星天!」
 ホワイティはツルギに続いて攻め入った。恒星天の意識がツルギの刃に向けば、その隙を狙う。はらりと、桃色の髪が一房地へと落ちた。
 体の向きを反転させて、苛立ったような恒星天が「酷いことをしますね! まあ、綺麗な髪なので欲しい気持ちは分かりますけど!」と叫べば、その横面へとハルツフィーネの『クマさん』が飛び込んだ。
「ようやく即席ファンの現地調達も限界が見えてきましたか? ここが攻め時ですね。クマさん、短期殲滅モード!」
「ッ――!」
 宙から地へと叩きつけるように、恒星天の体が投げ出される。受け身とをった彼女の背を拾い上げた終焉獣がぎゃあと鳴いた。
「デッカくんに引き続きひめにまで乱暴を働きますか!」
 憤慨する恒星天にハルツフィーネはとんとんと爪先で地を叩く。
「クマさんは学びました。キリがないなら、増えるより早く倒しまくれば良いと!
 クマさんは終焉獣を倒すだけで、彼女のように従えることはできません。
 ファン層が違うだけで、きっとある側面で見れば偽にゃこさんも可愛いのでしょう。
 それでも……白紙の世界なんかではなく、今この世界にいる推定1億人のクマさんファンのために。ここは譲ることができません !」
 可愛い対戦は引き続き行われる。終焉獣の声に「うるさーい!」と耳を塞いだルフラン・アントルメは唇を噛みしめた。
「んもー、早く現実に帰らないとあたしが棚に隠してた秘蔵シュトーレンが危ういの!
 同じ顔なんだし、ひめにゃこさんが同じ顔でドヤァってしたら終焉獣こっちに寝返らない? だめかぁ……」
「ええ、それってひめも食べて良いんですか!?」
「そういう所は同じなんだ……」
 恒星天が美味しそうだと勢いよく身を起こし、ルフランの元へとキュートなエフェクトを叩きつける。
「ッ――」
「お留守ですよ?」
 それは同じ声音だ。ルフランは「増えた」と思わず言った。本物のひめにゃこは「リュカ先輩ミサイルでぶちかましますよ!」と勢いよく叫ぶ。
「……いい加減こいつの顔でトンチキされるのも面倒だ。
 ま、コイツもトンチキしかしねえんだがそれは置いといて、だ。キツイお仕置きの時間といこうや」
「手伝うよ。偽にゃこさんにしてやられてちょっと腹立たしいし!
 リュカさんたちは偽にゃこさんを狙って! 私はその間にベヒーモスを更に畳みかけるから!」
 連携すれば更に傷を抉ることが出来る。現場・ネイコに頷いたリュカ・ファブニルは拳を固め恒星天へと肉薄した。
 ひめにゃこのぷりてぃなたいふーんの隙を付き、恒星天をすり抜けてネイコが前線へと飛び込んだ。
「ッ――でも、ここなら……行くよ、私の全力全開っ!」
 勢い良く、飛び込んだネイコは、矢が刺さっていることに気付く。先程のアレクシアが治療薬を放った場所か。蠢いた体内の肉の動きが弱々しい。
 その部分から、治療薬が僅かに染みこんだか。これだけの巨体だ。全てに治療薬をと言うわけにも行かない。
 だが――ネイコはその矢を更に深く突き刺した。プリンセスストライクによって矢が体内に全て埋め込まれる。
 体が投げ出された事にネイコが唇を噛みしめた。
「危ない」
 受け止めるグレイはベヒーモスを攻めるならば、恒星天が邪魔で、恒星天を狙うならば終焉獣も邪魔で。決定打を作りたいと考え倦ねていたのだ。
 ファンファーレで気を逸らせば、しっかりと恒星天の意識は奪えていた。ならば。
「お任せ頂いても?」
 恒星天の声を模してみせるツルギにグレイは「任せるよ」とそう告げる。狙い澄ませば良い。僅かな隙だ。彼女の体が投げ出されている今がチャンスなのだ。
「『みんな、静かにして下さいね!』」
 恒星天の声を模したツルギの声にスキャットとイズルが顔を見合わせる。驚いたように顔を上げた恒星天の行く手を阻んだルフランが「今!」と叫んだ。
 飛び込んだのはホワイティ。その刃が陽光の煌めきと共に、恒星天を切り裂いた。
「ッ、やめてください――!」
 身を翻して桃色のエフェクトが周囲へと振りまかれた。だが、それさえ相反してみせるとひめにゃこのたいふーんが周囲を蹂躙し続ける。
「クマさんの勝利です!」
 ハルツフィーネのクマさんが腕を上げ、恒星天の行く手を阻んだルフランのもとへと攻撃を振らせる。
 支援担当であったアダムとてぴょんと跳ね上がって「霜月さん!」と援護を頼んだ。
 無数の弾丸、そして、攻撃が降り注ぐ。
 息を呑んだ恒星天の眼前に迫ったのは、リュカ。恒星天がひゅ、と息を呑む。
「言っとくが……ちょっと前とは威力が違うぜ!」
 リュカの『いつもの拳』はいつも以上に鋭さを増している。ひめにゃこはよく知る拳骨が叩きつけられる様子を我が身のように感じ取っていた。
 鋭く、そして強かに一撃が投じられる。ずん、と身をも蝕み痛むような。
 偽にゃこ――恒星天の目が見開かれる。

「ッ――何で、最後までリュカ先輩の拳骨で! こ、これじゃ、何時もの――!」

 叫ぶ恒星天にひめにゃこは「ふふん、先輩の拳の痛さは誰よりも知ってますからね!」と『あっかんべー』をしてみせた。
 光が弾けるように恒星天の――偽にゃこの身が霧散する。終焉獣の動きは鈍くなり司令官を喪ったように収まりが悪くなる。

「……ツルギ」
 ジェーン・ドゥの声に『原動天』は「ええ」と小さく頷いて――

成否

成功


第2章 第21節

ソール・ヴィングトール(p3x006270)
雷帝
夢見・マリ家(p3x006685)
虎帝
いりす(p3x009869)
優帝

 戦況は好転した。そういりすが感じたのは『鋼鉄』戦線が終結したという知らせであった。
「まずはわたしたちが頑張らないと、後から来る人のやる気にも関わってきますものね。
 変わらず厳しい戦いではありますけども! 確実に弱ってきてますし弱点も見えるようになりました!
 虎帝も雷帝もやる気十分のようですし、このまま頑張っていきましょう! 皆が来たときに見せ付けるのです!」
 いりすの言葉ににんまりと笑ったのは夢見・マリ家。ばちり、ばちりと音を立ててタイガーソウルが彼女の体を包み込む。
「きつい! が! 楽しい! 難敵がいればこそ戦いは楽しい! まだへばっておらんだろうな、二人とも!!」
 マリ家といりすを見遣ったソール・ヴィングトールは正体不明の威圧感を、威風堂々と纏い終焉獣を引付ける。
 マリ家が走り出し、叫声を上げたことで守りを固めようと――だが、指示をしていた恒星天を決したことで団結は緩んでいる――動く終焉獣たちを切り伏せる。
「ふふ! 雷帝と優帝も張り切っていますね! 拙者も気合を入れ直さねば!
 鋼鉄軍が到着した時にへばっていては恰好がつきませんからね! うおおお! タイガーソウル!!! 電磁加速串!!」
 自身等は皇帝だ。
 皇帝であるならば、強くあらねばならない。強者として、戦の成功を収め『鋼鉄』という国の名を掲げねばならないのだ。
 眼前に聳え立つは強敵。だが、故に楽しいのである。
 喧噪が、近付いてくる。
 巨大な影が、迫り来る。
 それだけでソールは、いりすは、マリ家は確かな息吹を感じた。
「やっと……!」
 いりすは天を穿つ光線に息を呑む。ああ、やっと――やっと『やってきた』のだ。
「遅い!! だが許す!! 来る気はあるのならばそれで良い――」
 振り向いたのはソールであった。
 鋼鉄の三人の皇帝は『彼ら』を迎え入れる。そして、鋼鉄の代表者として進むのだ。
「が、ちょーっときついぞ? いやほら、いつもの余であれば弱音は吐かないものだけどな? 皇帝ってば、手下には弱音吐くのもある程度仕事であるからしてな?」
 そう笑ったソールにマリ家は仲間達へと堂々と告げた。

「――スチーラー鋼鉄帝国軍、参陣しました!」

成否

成功

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