PandoraPartyProject

シナリオ詳細

貴方の色は――

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天幕の中に入れば其処に広がる遊色のステンドグラスに目を奪われた。
 夜空に散りばめられた星屑の欠片が無数の光となって瞬いている。
 何処までも続いていくような空間にあなたは首を傾げた。

「ふふ、不思議な空間に見えるでしょう」

 宵闇の中から現れたのは極彩色を纏った美女――『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)だった。優雅な足取りでヒールを鳴らしたプルーはあなたに手を差し伸べる。
「此処は色彩の回廊――『月虹万華鏡』の中よ」
 妖艶な瞳を細めたプルーはいつの間にか現れたベルベッドのソファに腰掛けた。
「シャンティ・ブルーの瞳。少し焦っているのかしら? 大丈夫よ。取って食ったりはしないもの。貴方も座ったらどうかしら?」
 座ると言ってもプルーが座っている椅子は一人掛けである。他に椅子のようなものは見当たらない。
「そうね。思い描いてご覧なさい。貴方にとって座り心地の良い椅子を」
 それは家のソファであったり、自室の堅い椅子だったりするのだろう。
 もしかしたら簡素なベッドだったり、レンガの一つであるのかもしれない。
 心に思い浮かべれば、それが本当に現れる。
「ほら、それが貴方の椅子よ。さあ、座って?」
 プルーに言われるがまま、その椅子に腰掛けたあなたは人心地ついた。
 これまた何処からともなく現れたティーカップと淹れ立ての茶葉の香りが鼻腔を擽る。
「ジャスミンと桃のフレーバーティなのだけど、お口にあうかしら?」
 優雅な指先はティーカップを持ち上げて。透き通るアンバーの雫がプルーの唇を濡らす。
「さて、今日は何を話しに来たの?」
 深いアクアマリンの瞳が射貫くようにあなたを見つめていた。

 ――――
 ――

 プルー・ビビットカラーは色彩の魔女である。
 深き緑の国で生まれながら、世界に散らばる色に魅入られ、森を抜け出した魔女。
 それは偶然か必然か。
 彼女は黄昏の空に恋して青い湖を愛した。咲き乱れる花の一輪にまで愛おしく思えた。
 けれど、深緑という閉じた世界に居た彼女に。
 海の青さを。砂漠の白さを。人々の多彩を。歌った者が居たのだ。
 昔の彼女を知る者達は、嘘か誠かささやき合った。
 虹の精霊の仕業だと。

「なんて。貴方は信じるかしら?」
 プルーの試すような悪戯な笑みにあなたもつられて口の端を上げた。
「さあ、次は貴方の番よ。過去と現在。そして未来を占いましょう」
 この空間は月虹万華鏡。可能性の導が無数に広がる幻想の世界。
 言の葉に乗せられる色を紡ぎ。読み解く音色。
 優美な唇がゆっくりと微笑む。色彩の魔女は問うのだ。


 ――貴方の色は。


GMコメント

 もみじが貴方の色を紡ぎます。

●目的
 プルーとの会話で自分だけの『色』を見つけましょう

●まずは椅子を選びましょう。
 自分が寛げる椅子です。どんなものでも構いません。
 自宅のソファだったり、仕事場のチェアだったり。
 形状と色を思い描きましょう。

●プルーに話したい過去、現在、未来を決めましょう
 過去に出会った強敵の話。元の世界の家族の話。カムイグラでの冒険譚。
 希望ヶ浜での学校生活。何でも構いません。
 プルーが色を見出すヒントは多ければ多い程いいでしょう。

●好きな飲み物やデザートが出てきます。
 フレーバーティやジュース。成人にはカクテルやお酒など。
 フルーツタルトにシャーベット。パンケーキなど。
 お好きなようにかいてください。出てきます。

●欲しい系統の色があれば
 好きな色やイメージカラーなどあれば
 無くても構いません。おまかせでも大丈夫です。
 ペアで色を混ぜてほしい等もOKです。
 現実の色とはかけ離れたものになる可能性もございます。お気軽に。

●他のPCと同行する際には、お名前とキャラクターIDか、グループ名のタグ記載をお願いします。

●NPC
 もみじが所有するステータスシートがあるNPC、または死んだ敵NPCを登場させる事ができます。
 彼等は幻影ですが、本物と同じように振る舞います。

●諸注意
 未成年の飲酒喫煙は出来ません。
 UNKNOWNは自己申告。

●注意事項
 本シナリオは軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。

●最後に
 月虹万華鏡は可能性を貴方に見せてくれます。
 あったかもしれない過去。現在。未来。
 それを本当にするか。夢や幻として楽しむかは貴方次第。
 貴方だけの色を探して見ましょう。

  • 貴方の色は――完了
  • GM名もみじ
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年08月25日 10時44分
  • 章数1章
  • 総採用数54人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 月虹万華鏡からの光が満ちる。
 鬼灯と章姫は使い慣れた座椅子に座り込んだ。
 どんな色になるのだろうと二人で囁き会う。

「実は……」

 ゆっくりと語られる鬼灯の過去。
 気付いた時には今の自分だったこと。
 演じているとも言える記憶の断片。朧気ではっきりとしない破片。
 覚えているのは誰かが一心不乱に何かを作り続けていた背中。
 それが誰なのかは分からない。けれど、忘れられない一瞬。
「一体俺は何者なんだろうな」
 呟かれた声に章姫は鬼灯の服を引いた。
「私の鬼灯くんなのだわ」
「そう、だね」

 くすりと微笑んだプルーは月虹万華鏡から二粒の色を選ぶ。
 ――揺らぐ黒と燃ゆる朱。ふたりのいろ。

成否

成功


第1章 第2節

グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

 患者用の椅子に腰掛けたグリーフは目の前のプルーの瞳を見つめる。
 淡い綺麗な青はグリーフに宿るはずだった色だ。
 されど、伏せられた瞼の内側には透き通る赤が広がる。
 ニーヴィアの代わりにドクターに愛し愛されるはずだったのに。
 生まれ落ちたのはこの赤い目。
 彼女に成れなかったはずなのに。宿命は彼女と同じ『他者を看る』事を求めた。
 失う怖さを知っているドクターには『死なないこと』を命じられた。

 グリーフの迷い。
 生まれたときから他者に委ねられた選択。
「でも、そこに迷いが生まれたなら。貴方は変わって行けるわ」
 月虹万華鏡から零れた一滴。

 ――小さな瓶に詰められた紅玉色。形を変えて揺蕩うもの。

成否

成功


第1章 第3節

マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め

「椅子は……あぁえっと姉上からもらった茶色のソファでもいいか?」
 和室には似合わない椅子。されど大切なもの。

 リアナルが語る想い人の話。
 恋人であり師であり。何年も行方知れずのまま。
 時間はリアナルだけを置いて進んでいってしまう。
 差し出された日本酒をゆるりと舌に転がせば、チリチリとした熱となって喉へ落ちていく。
 それはまるでリアナルの心模様。

「私はいまだにそれを引き摺っている。いまだに夢にも見る」
 心象風景を写されれば、彼女の影は這い寄りリアナルを縛るのだ。
「笑えるだろ?」
「いいえ。そんな言葉で自分を傷つけなくて良いわ」
 プルーはリアナルの頬を撫で、月虹万華鏡から取り出した一粒を握らせる。

 ――月の灯りを宿したクレケンス・ブルー

成否

成功


第1章 第4節

グドルフ・ボイデル(p3p000694)

「オイオイ、ネーチャンよ。おめーがおれさまを呼んだんだろ?」
 悪態を吐きながら椅子に座ったグドルフはテーブルに並んだ酒を食らう。
「おれぁ、生憎今を生きるのに精一杯でね。過去だ未来だ、考える余裕がねえのさ」
 世界に名を刻み。金を握る為に『盗賊』の威厳を大げさに語るグドルフ。

 されど。グドルフが座るその椅子は。
 今は無き孤児院の長椅子。『三人』で並んで座っていたものだ。
 グドルフはチラリと横目で長椅子に視線を向ける。
 背もたれの傷もそのまま。未練と焦燥の証に眉を寄せた。
 そんな彼にプルーは僅かばかり目を伏せ、月虹万華鏡を回す。
 選ばれるのは。痛みを経て至る意志。


 ――誓いと祈りのアジュール・ブルー

成否

成功


第1章 第5節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

「貴方と会話ができて光栄です」
 リゲルは朗らかな笑顔でプルーに会釈し、黒皮のアーロンチェアに腰掛けた。
 揺らめく万華鏡からの光がグラスのシャンパン・ブルースに反射する。
 天義で過ごした日々と、ポテトや仲間と紡ぐ冒険譚。
 激しい戦いと未来への輝きをプルーに語るリゲル。

「……それと、会えるなら。父上に」
「そうね、これは心の中に在る幻影だけど」

 一瞬の揺らぎ。月光万華鏡が見せた幻。
 されど、そこには夜空に輝く星を宿した彼が居た。
 言葉を交す事も無い。ただ一撫。頭に乗せられた温もりはあの頃と同じままで。
 鼻の奥が僅かに痛くなった。

 ――思い出に灯るシリウス・ブルー

成否

成功


第1章 第6節

有栖川 卯月(p3p008551)
お茶会は毎日終わらない!

「ねぇねぇ! お話聞いてくれるの? なら彼の方のお話をしてもいい?」
 木のクイーンアンチェアと白いクッションに座った卯月は目を輝かせた。
 テーブルはさながらお茶会の装い。レアチーズケーキに冷たいアールグレイ。
「とっても素敵な人なのよ!」
 生粋のトリックスター憎めない帽子屋。
「私ね、いつか彼の三月うさぎになりたいの!」
「三月うさぎ?」
 プルーの疑問に卯月は前のめりに拳を握る。
「そう! 元の世界でアイドルだったからレンアイなんてできなかったけどもう、ただの女の子だもん」
 恋をしたって許されるだろうと少し寂しげに眉を下げる卯月。

「ええ、恋愛は自由だわ。そうね、今のあなたは彼を思い描いてる」
 月虹万華鏡から降り注ぐ一筋の光。

 ――赤紫の格子模様を詰め込んだ光の欠片

成否

成功


第1章 第7節

中野 麻衣(p3p007753)
秒速の女騎士

 椅子代わりの石に座り込んだ麻衣は小さく溜息をついた。
「ああ、久しぶりにお話したっすよ……」
 人とはよく会うけれど、此方の言葉が何処か零れ落ちているようで。
 他人の中に自分を見いだせない。
 それは悲しいことである。人は他人に認められているという実感が無ければ生きて行けない。
「はぁ」
 麻衣の手の中にあるアイスティーがカランと鳴った。
 月虹万華鏡の空間に寂しい色が落ちる。
「そうね。今見えてるものが全てではないわ。案外、窓の外には青空が広がっているものよ」
 プルーは一粒の色を選び出す。

「この色は貴女のものだけど。飲み込まれないで」
 ――深い色を内包したジェット・ブラック

成否

成功


第1章 第8節

古木・文(p3p001262)
文具屋

 月の虹。万華鏡。
「はたして夢か、現実か」
 此処で起きた事は夢幻。ならば楽しむのが道理と文は椅子に腰を下ろした。
 くすんだ緑のビロウド。古い木の椅子。
 お世辞にも座り心地が良いとは言えないそれ。
「気に入っているのね」
「うん、そうだね」
 きっとこの椅子は悩みも悲しみも受け止めて来たのだろう。

 家族と過ごす毎日は楽しくて。
 誕生日に三人が送ってくれた紺色の万年筆は、今も片時も離さず持っている。
「裕福ではなかったのに」
「それだけ、貴方が大切だったということね……何か飲むかしら?」
 珈琲の香り立ちこめる万華鏡の中。
 ころんと一粒落ちた色。

 ――紺色の万年筆から描き出すはインク・ブルー

成否

成功


第1章 第9節

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠

 ふかふかのあたたかいお日様の匂いに囲まれて。
 チックはトロンと瞼を落としながら言葉を紡ぐ。
 同じ一族の人々から疎まれたこと。
 色んな人に会って、思い出が沢山増えたこと。
「おれの弟……「かたわれ」に、会えるのか」
「気になるのね」
 プルーの声にチックはこくりと頷いた。
 アップルパイを頬張りながらリンゴとシナモンの香りに目を細める。

 月虹万華鏡は動き出す。思い出の色を振らせながらキラキラと宙を舞うのだ。
「今の貴方に選ぶのは。そうねこの色よ」

 ――アップルパイに掛かったハニーゴールドの甘さ

成否

成功


第1章 第10節

ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら

 虹の精霊の話にジルーシャは勿論と微笑んだ。
 精霊と出会って世界が変わったのは自分とて同じだから。
「このお茶、いい香りね。それにとっても美味しいわ♪」
「良かった」
 和やかに流れる空気。小さな椅子に腰掛けたジルーシャが語るは『今』のこと。
 この場所と同じように他人の話を聞いて香りを届ける仕事。
 今も昔も変わらぬ彼の生き甲斐。

 けれど、時々思い出すのだ。
 元の世界のこと。周りに居てくれた人達のこと。
 右眼に祝福(のろい)をかけたあの子のこと。

 隠した色は、まだ表に出すには勇気が無いから。
「きっとこの色が、今の貴方には合うわね」
 月虹万華鏡が落とす一滴。

 ――月夜のヴァイオレット
 




成否

成功


第1章 第11節

コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ

 ギッギッと月虹万華鏡に木の音が響く。
 白い椅子に腰掛けたコゼットはココアを飲みながら視線を落とした。
 捨てられ虐待され売られそうになった過去。
 けれど。
「いまはね、とっても幸せ」
 安心して眠ることが出来る。自分で稼いだお金を自分で使う事が出来る。
 仲間と美味しいご飯を食べることが出来る。
「さいきんはね、新しくやってきた女の子に『先輩として』同行してね」
 とても仲良くなった。必要としてくれることがこんなにも嬉しいなんて思わなかった。

 前の自分は未来なんて考える事が出来なかったけど。
 明日を夢見ることができるようになった。
「そう。貴女が嬉しそうなら。私も嬉しいわ」

 月虹万華鏡から降り注ぐ。一粒。
 ――傷だらけのガーネット。輝きを内包した石の色。




成否

成功


第1章 第12節

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵

 爽やかに青いカバーが掛けられたソファで寛ぐリゲルとノーラにポテトはくすりと笑う。
 ソファと一緒に二人の幻影も現れたらしい。
 ミルクティーとふわふわのパンケーキを頬張れば、バターと蜂蜜が口の中に広がった。
「そう言えばプルーは好きな食べ物とかあるのか?」
「私? そうね、今はミルキーカンブリック――ふわふわのパンケーキと紅茶かしら」

 聖域と呼ばれる場所で産まれ育ったポテトの話。
 世界樹の女神は子供の様な姿で、新緑の瞳を輝かせていた。
 それはまるで隣のリゲルが新しいものを見つけたときの煌めきに似ている。
 帰る場所は世界樹から星の隣になったけれど。
「とても幸せなんだ」
「ええ、溢れているものね」

 ――煌めく星に寄り添う、プリムローズの花のいろ。

成否

成功


第1章 第13節

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜

 華奢なアンティークの椅子に腰掛けた蜻蛉は長い睫毛に僅かばかりの溜息を乗せた。
「……聞いて欲し事は……そうやね」
 激しい戦いがあったこと。失いそうになるのが怖かったこと。
 だって二回目だったのだ。
 戦いなんて知らぬ指先を伸ばして。必死に伸ばして。掴んだ奇跡。
 本当にこれで良かったのかと迷う事もある。
 されど、その答えは後ろにあるはずも無いから。
 だから。
「もう後ろを振り向いたりせえへんの」

 湯の中の花が咲く。
 ジャスミンの香りが月虹万華鏡の中に漂っていた。
 林檎のドライフルーツを囓りながら微笑む蜻蛉に似合う色。
 愛しい人の全てを愛する。

 ――竜胆の青。

成否

成功


第1章 第14節

三國・誠司(p3p008563)
一般人

 己はどのような色で見えているのだろう。
 誠司は月虹万華鏡を見上げて目を細めた。
 黒基調のゲーミングチェアに腰掛けた誠司はぽつりと言葉を紡ぐ。
 二ヶ月程前になるだろうか。
 ごく普通の。ゲームセンターに通うような高校生だった誠司が無辜なる混沌に喚ばれたのは。
 帰る手がかりを探し、『御国大筒』や神威神楽での出来事を経て。
 虐げられている人々の現状を垣間見た誠司の心に灯る火があった。
 クレープとアイスティーを飲みながら、彼はプルーに瞳を向ける。
 そんな自分に、どんな色をくれるのかと。

 プルーは立ち上がり、月虹万華鏡から一つの色を選び出す。
「そうね。あなたなら」
 ――内なる炎、苛烈なる朱の魁。

成否

成功


第1章 第15節

ブラウ(p3n000090)

 黄色いひよこがぽてぽてと天幕を上げて入ってくる。
「あら、ブラウじゃない。どうぞ、お座りなさいな」
 ローレットの椅子を思い浮かべれば、ふわりと姿を表したのにブラウは目を輝かせた。
「あ、出てきた! すごい!」
 テーブルの上に置かれたオレンジジュースも美味しそうなクッキーも魔法のように現れる。

 情報屋の仕事というものについて、始めるまでは淡々と忙しい毎日だと思っていた。
 けれど、忙しさはあれど。そこにイレギュラーズ達の言葉や笑顔が溢れている。
「この前も紫陽花畑に連れて行ってもらったんです!」
 羽根をパタパタと広げ頬を染めるブラウ。
 ここへ来て良かった。この仕事が出来る事が嬉しいのだと伝わってくる。
 言葉にするのは少し恥ずかしいけれど。

 そんな愛らしい後輩に送るは。
 ――あたたかな陽だまりのダンデライオン。

成否

成功


第1章 第16節

メルナ(p3p002292)
太陽は墜ちた

 四人掛けのの灰色のソファを撫でながらメルナは懐かしさに目を細めた。
「この椅子に座ってると……家族の事思い出しちゃうな」
 優しくて大好きな母と父。大切な兄の記憶。
 四人で暮らしていた時間。何でも無い日常が色鮮やかに思い出せる。
 ココアを母が淹れてくれて。兄と共に笑い合いながら飲んだ。
 幸せな日々がそこにはあったのだ。
 ソファと共に、懐かしい声が聞こえてくるようで。
 メルナの瞳に涙の膜が張る。零れ落ちそうな雫は、されど落ちること無く。
「……あ、……その。混沌に来てからだって勿論楽しいけどね?」

 月虹万華鏡は回り出す。メルナの色を求めて。
 澄み渡る。兄の様ないろの雫。
 ――ドラジェ・ブルーの広き空。

成否

成功


第1章 第17節

カルウェット コーラス(p3p008549)
旅の果てに、銀の盾

「はじめまして、魔女さん。カルウェット、いう」
 愛らしい瞳でプルーを見つめるカルウェットは小首を傾げながら椅子を思い浮かべる。
 出てきたのは切り株だ。低く伐られたそれはカルウェットの小さな身体に合っていた。
「硬いけど、落ち着く」
「何か食べるかしら?」
「食べ物?」
 ずっと眠り続けていたカルウェットにとって、食べ物の知識はまだ未知のものだ。
「そうね。じゃあハニーミルクとマドレーヌにしましょうか」
「ん」
 カルウェットは語る。目覚めてから出会った友達のこと。
 守りたいと願ったこと。そして、雨月と伊助をその小さな身体で守る事ができた。
 嬉しそうに語るカルウェットにプルーは目を細める。
 新たな可能性に送る月虹万華鏡の欠片。

 ――アップル・ブロッサムの輝き

成否

成功


第1章 第18節

ラグラ=V=ブルーデン(p3p008604)
星飾り

「面白いですね、プルーちゃんが魔女らしい」
 眠たげな表情で僅かに首を傾げたラグラ。
 己の色と問われれば分からないと彼女は答えるのだろう。
 一口に語るには温い人生では無かったから。

「プルーちゃんの事の方が気になりますね」
 他人への興味からか。或いは己が内の表現を発露したいからか。
 それを誰かに聞かせて与える事の意味をラグラは問うた。
 宙の向こうでも知りたがっているのが大勢居るのだと彼女は紡ぐ。
「プルーちゃんでやらせてみたかったんですか?
 それともプルーちゃんだからやらせてみたかったんですか? ねえ、聞こえてます?」
 暗転。
 月虹万華鏡が光を無くす。

「それは同じ意味じゃないかしら。此処に至る事と私が私であることは同義」
 宵闇に落ちる雫。
 ――遊色の七つ星。

成否

成功


第1章 第19節

かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ

「……不思議な光景ね、これは。綺麗で、素敵だわ」
 かんなは宵闇に広がる月虹万華鏡に目を奪われる。
 使い込まれた木の色。貰い物の安楽椅子に座ってかんなは微笑んだ。
 過去のことはよく思い出せない。
 世界のために自分すら無くして、武器を振るっていた事しか思い出せないのだ。
 過去に寄る辺なき者、未来を思う事能わず。
 されど。今は世界に満ちあふれた色と。人から聞く話が嬉しくて。
 目の前に出てきたプリンだって。誰かに食べさせて貰ったものだから。

 プルーはかんなを見つめる。
 月虹万華鏡はくるくると回り出した。
「まだ、染まっていない純粋さが貴女にはあるのね」
 選び出す色は。
 ――ベビーホワイト。無垢なる白の少女が纏う色。





成否

成功


第1章 第20節

ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
太陽の隣

 ローレットの椅子に腰掛けたニアは「面白そうな話だね」とプルーに笑いかけた。
 過去と問われて少女は顎に指を置く。
「…あたし、里長の娘でさ。それ以外にも……嫌いじゃないけど、面倒なしがらみがあって」
 敷かれたレールの上をただ歩く猫のように。不自由の無い生活を送るのだと思って居た。
 憧れはあれど、それは『誰か』のもので。自分には届かない御伽噺だったのだ。
 タピオカミルクティを一口含んだニアは僅かに溜息を吐く。
「ま、選ばれたら選ばれたで、世界の広さとか、非力さを実感する事ばっかりなんだけどさ」
 けれど、その瞳には輝きが宿る。
 鳥籠の中に居た過去の自分ではない。
 今の自分が手の届く者達を守りたいと願っているのだ。

 輝く瞳に未来を映せば。
 ――アトランティコ・ブルーの意志を宿して。

成否

成功


第1章 第21節

夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師

 青い蝶の鱗粉が煌めく。
 幻の身体を包み込む柔らかな皮の、豪奢な椅子。
 彼女を彩るは青い薔薇と蝶、それに星だ。
 奇蹟の奇術師は瞬く星であれと願いが込められた夜乃 幻という存在が。
 恋を知ってしまったのは何時の事だろうか。
 切ない恋と刹那の別れ。その先に見た永遠の誓い――
 契りを交し。共に在るとジェイクの手を取った。熱い唇の感触は今でも鮮明に思い出せる。

「一緒に暮らし始めて、旦那様が存外料理が上手で驚きました」
 おはようという言葉に彼の笑顔が返ってくる幸せ。
 まだ、殺風景な部屋だけれど。此処から始まっていく予感に心が躍る。
 トリックスターである彼女が見せる幸せの笑み。
 月虹万華鏡が選ぶは幸福な愛を言葉に持つ花のいろ。

 ――ブルースターの光をここに。

成否

成功


第1章 第22節

天月・神楽耶(p3p008735)
竹頭木屑

 神楽耶はぼうと万華鏡の光を見つめていた。
 色とは何なのだろうか。
 左の手を草臥れた座椅子に着けて、右手を光に翳す。
 記憶の無い自分にとって話すべき過去が無いのだとプルーに告げた。
 何処の誰とも分からない鬼の子を拾い育ててくれた老夫婦に感謝をすれども。
 流れる血の繋がりを夜空の月に問う事だってあるのだ。
「水を頂けますか」
 注がれた清らかな水を一息に飲み干して神楽耶はぽつりと零す。
「鬼である自分を孫のように愛してくれたお二人の為にも」
 神使(イレギュラーズ)としてローレットに尽くす所存だと彼は言った。

「目標があることは良いことね。そうね、じゃあ……思い浮かべる風景はあるかしら」
「思い浮かべる風景」

 天へと伸びる若々しい竹の色。緑の葉。
 ――天穿つ若竹の青さ。

成否

成功


第1章 第23節

ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで

 グレープフルーツジュースにドーナツを囓りながら、ハルアはクッションに座った。
 シンプルな木製の四本脚は彼女を包み込んでくれる。
「おいしい」
 ドーナツの甘さに人心地着いたハルアはプルーの眼差しに僅かに視線を落とした。
「落ち込んでるの?」
「うん。ちょっぴり」
 元の世界のぼんやりな記憶。額の石に触れば懐かしさと故郷への愛着に胸が満たされる。
 けれど、引っかかるのは助けられなかった友達のこと。
 心を踏みつけてしまったこと。辛い気持ちを分かってあげられなかったこと。
 ハルアの瞳に雫が浮かぶ。
 胸の『海色の灯り』を握れば何処かあの子の温もりがあるようで。
「誰も見ていないわ。泣きたい時は泣いて。泣き疲れたら顔を上げればいいのよ」
 零れた涙は月虹万華鏡の光に伝う。

 ――ハルジオンの白に。願いを込めて。

成否

成功


第1章 第24節

ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer

「僕の色を教えてくれるの? 楽しみだね」
 微笑みを浮かべるルチアーノはよろしくとプルーに手を差し出す。
 ダイニングチェアーに深く腰掛けた青年は「素朴さが良いよね」と背もたれに身を預けた。
 ルチアーノの過去。
 面白い話じゃないと肩を竦める彼が内包する言葉には、混沌とした色が混ざる。
「でもね、今は幸せだよ」
 食べる事に困らない安定した生活。安心して寝ることが出来るベッド。
 何より守りたい導きの星が傍に居てくれるから。
「笑顔がとても素敵な子なんだよ!」
「ふふ、仲良しなのね」
 エスプレッソを一口飲めば故郷の味が広がる。苦みと香ばしさ。
 自分自身の未来の事は分からないけれど。
 ポラリスを幸せな未来へ送り届ける事が出来たら、他に何も要らないとさえ思うのだ。

 回る月虹。
 万華鏡の光は煌めいて。
 ――ターコイズの瞳は導きの星を見つめる。

成否

成功


第1章 第25節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽

 簡素なロープチェアがゆらゆら揺れる。
 尾羽根は開けられた穴から飛び出して。
 海の子――カイト・シャルラハは昔話に花を咲かせていた。
 水の中を駆ける鰭は無いけれど、翼で泳ぐことが出来た。
 海に住む生物の知識だってかき集めた。
「もうすぐ成人なんだけど」
 船乗りとして生きて行く意外にも、冒険稼業も楽しくて。父の様に軍人になるのも良いだろう。
 ああ、けれど。海に関わる仕事をしたいとカイトは思うのだ。
 オレンジジュースを器用にストローで飲みながら青年はカラカラと笑う。
「沢山悩んで、答えを選ぶと良いわ。その悩む時間も大切なものだもの」
 プルーはカイトに微笑んだ。

 月虹万華鏡は羽ばたきの色を見せる。
 ――蘇芳の翼を広げ。青き空を駆けるため。

成否

成功


第1章 第26節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「これはね自分で塗ったんだよ」
 イーハトーヴは青空の色をした椅子の背を撫でながら言葉を紡ぐ。
「……あのね、俺、死のうとしたんだ」
 召喚される直前。
 自分が作ったぬいぐるみ達が戦地で使われることにはまだ我慢が出来た。
 けれど、敵国の街に連れて行かれ。その結果何が起ったか。
 思い出したくも無い記憶。
 沢山薬を飲んで、全てを終わらせようとしたのだ。
 けれど、人体は些か丈夫で簡単に命の灯火を消させてはくれない。
 朦朧とした意識の中、愛用のナイフを握り自分の身体に突き刺した。
「そんなだったから、召喚されてから暫くのことは覚えてないんだ」
 それ程までに、精神的苦痛を味わった。
 温かいチャイと宝石チョコレートを頬張り俯く。

「とても辛かったのね。無理に思い出さなくても大丈夫よ。さあ、貴方の色を選びましょう」
 ――クローム・オレンジの哀愁

成否

成功


第1章 第27節

アイラ・ディアグレイス(p3p006523)
生命の蝶
ラピス・ディアグレイス(p3p007373)
瑠璃の光

「ご機嫌よう」
「ふふ、ご機嫌よう。愛らしいお二人さん。どうぞ座って?」
 二人で手を繋ぎ入って来たラピスとアイラをプルーは快く迎える。
 ラピスの膝の上が特等席だけれど。ここは家にあるソファを思い浮かべよう。
 ふわふわのソファとお気に入りの茶葉。それに美味しいタルトがいつものふたり。

 夏に出会ってからずっと二人きり。
 砂塵に塗れ。雨の日の傷だらけの肌を抱きしめてあげたいと願う日もあった。
 海の中の共闘。星空に浮かんだ結婚式。
 二人歩む全ては。笑顔と涙。全てが大切な思い出。

 宝石の躰から伝わる温もりに恋をした。
 氷に愛され、炎を秘める蝶のきみを。
 ――愛している。
 囁かれる言の葉。慈しみの愛情。月虹万華鏡は揺らめく。
「美しくて、愛らしい。愛情の指先ね。とても微笑ましいわ」
 幸せな笑顔は見て居る者さえも幸福に導く。

 二人の色を混ぜ合わせ、落ちてくるのは。
 ――何処までも澄んだ静謐の青。アウィナイト。

成否

成功


第1章 第28節

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀

 切り株に腰掛けたサンティールはころころと表情を変えながら話を紡ぐ。
 父母は傭兵で旅しながら色んな人を助けたこと。
「ちょっぴり『おせっかい』な傭兵なんだ。あはは! でも僕はそんな家族がだいすき!」
 そんな二人の背を見て育ったサンティールは彼等の英雄譚を紡ぎたいと願った。
 沢山の物語を紡ぎ、彩りを得て。

「ね、プルー。きみにはどんな彩が見える? 僕はね。きみが『ましろ』にみえるよ」
 色んないろを乗せるキャンバス。真白の期待。
 サンティールは笑顔で若草色のリボンを差し出す。
「きみはわらってくれるかな?」
「ふふ、嬉しいわ。ありがとう」
 カラカラと月虹万華鏡から光が落ちてくる。
 ――春の息吹。スプリング・ノートの香り。

成否

成功


第1章 第29節

ロト(p3p008480)
精霊教師

「お邪魔します……っと」
 目の前に現れた椅子にバッチリだと頷くロト。
 鰯コーヒーを飲みながら、宜しくと微笑んだ。
 彼の口から紡がれるは色の理。構築式。黒から始まる流れと移ろい。光の導きだ。
 可能性の無色。真理と世界を探求する者の言葉。
「――なんて。これが僕の研究。真理、世界はこうで有るという学説だ」
 色彩の魔女としての意見を聞きたいとロトは身を乗り出す。
「先ずは……どうだったかな? 僕の色?」
「とても素晴らしいわね。貴方の色とお話。すごく真剣に聞いてしまったわ」
 ロトの話にご機嫌なプルーに呼応して、月虹万華鏡も光を繰る。

 落ちてくる色は橙。
 ――導く光。暁のアムブロジア。

成否

成功


第1章 第30節

エーリカ・メルカノワ(p3p000117)
夜のいろ

 落ち葉がふわふわと降り積もる。
 エーリカと精霊達の一番のお気に入り。
「……わたしの、はじまりは」
 生まれ落ちた日では無い。空中庭園で広がる空を見上げたとき。
 エーリカは産声を上げたのだ。

「でも……」
 一度だけ母が微笑んでくれたことがあった。
『おうたが上手ね』
 その言葉を今でも覚えている。泣いてばかりの母の涙より。その笑顔を忘れたくない。
 亡くしても尚虐げられ続ける母の悲しみを。謂われ無き澱を。
「ぬぐって、あげたくて」
 それはエーリカにしか出来ないこと。

「プルー、わたしね」
 明日の彩を。生きて呼吸して『エーリカ』として見たいのだと。少女は笑った。
「ええ、大丈夫。見られるわ。だって、貴女の隣には彼が居るもの」
 月虹万華鏡は弾く。一片のいろ。
 ――夜空を詰め込んだ。ノクターンの紫紺。


成否

成功


第1章 第31節

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

 眩い沢山の色にランドウェラは目眩を覚える。
 綺麗すぎて眩しいのだと目元を手で遮った。
 シンプルな白い椅子に座った彼は、小首を傾げて視線を落とす。
「んー?」
 ギルドのソファを思い浮かべたのに違うものが出てきてしまったらしい。
「おかしいな」

 つい先日のこと。元の世界に行って来たのだ。
 本物ではないし、好きと言える世界では無かったけれど知りたかった。
 戻って来た時の記録はないけれど、また行ってみたいと思うほどには――
「プルーも今度、一緒に行ってみないかい?」
 一人は寂しいから。
「そうね。他の世界の色彩を見るのも面白そうだわ」
 微笑んだプルーは月虹万華鏡に手を翳す。
 落ちてきた光を手に取って。

 ――ルビーの輝きを瞳に宿して。

成否

成功


第1章 第32節

楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾

 清廉潔白それが羽衣教会会長に定められた色。
 白の座布団に座り抹茶を頂いているのは茄子子だ。
「いつか羽衣教会をうんと大きくして、沢山の信者に囲まれるんだ!」
 目を煌めかせながら彼女は言葉を繰る。
 翼を手に入れる為に頑張ったり、他の邪教を討伐したり。
 何れは信者を増やし国の一大勢力なりたいと胸をはる茄子子。
「そして、それが全部無事に終わったら……」
 自らが築き上げた羽衣教会の、その全てを『あの子』に渡す。
 それが茄子子が交した約束。家族を作ってあげる代わりにと自由を得ること。その天秤。
 その為に彼女は羽衣教会を継いだのだから。
 決意は揺るがない。
「とても綺麗な色だわ」
 何にも染まらず、己の意志を貫く精神。月虹万華鏡は眩い光を放つ。
 ――全てを照らす陽光の白。

成否

成功


第1章 第33節

夕凪 恭介(p3p000803)
お裁縫マジック

 自分の色と問われて恭介は考えたことも無かったと微笑んだ。
 アンティーク調の椅子の背もたれは柔らかく恭介を包み込む。
 フルーツタルトを食みながら彼は言葉を紡いだ。
「アタシはあっちに居る時も洋服を作るのが好きでね、特に女の子の服」
 ふりふりで可愛らしい少女趣味の洋服。
 その服が似合う可愛い従姉妹が居た。
「あの子と同じぐらいのおんなのこ(お人形)、こちらの世界に居ると良いのだけど」
 アイスティーを一口飲んで、恭介はプルーに視線を送る。
「それで、アタシの色はどんなのかしら?」
「そうね……」
 月虹万華鏡はくるくる回る。
 恭介の色を求め、光がキラキラ舞い落ちた。
 ころんと一欠片落ちてくれば。

 ――薄らと揺蕩う若草。優しい色合い。

成否

成功


第1章 第34節

笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華

「ほうほう、自分の色っ! このお洋服が似合うーとかとはまた別のお話なんだよね?」
「ふふ、いらっしゃい」
 早速、人をダメにするソファでオレンジジュースを飲んでいる花丸にプルーは口元を緩めた。
「色んなトコで活動するようにしてきたけど、やっぱり生活するって言うなら希望ヶ浜かな?」
 学園での生活もそれなりに楽しい。
 されど、馴染めない所もある。
 希望ヶ浜の住民は恐ろしい物に目を瞑って『見ようともしない』のだ。
 其処にある楽しさや発見も無かったことにする。
「――まっ、いいけどさ」
 花丸は色んなものを見たいのだと口を尖らせた。それが生きる事だと思うから。
「そうね。人それぞれではあるけれど、貴女の考えは素敵だと思うわ」
 月虹万華鏡から落ちる一粒。

 ――花咲く桜を内包したルビーの香り。

成否

成功


第1章 第35節

メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力

 下宿の自室にある一人掛けのソファは落ち着いたグリーン。
 メイメイはそっと腰掛けて、フレーバーティを一口啜った。
「ほっとする香りです、ね」
「美味しいでしょう?」
 ふわふわのスフレチーズケーキを頬張って微笑めば空気が和む。
 ずっと自分以外の物事を怖がっていたメイメイ。
 彼女の心を解したのは優しく声を掛けてくれた人たちだった。
「恵まれているのだと、感じました」
 弱く頼りない自分の心。けれど色んな人と出会い、世界を知って僅かに変われた気がするから。
 未知は果てしなく広がっているけれど、進んだ歩幅だけ変われたと思うから。
 今の自分の『色』が知りたいのだとメイメイはプルーを見つめた。
 月虹万華鏡の光は彼女の元へ振ってくる。

 ――風に揺れるヴァイオレット

成否

成功


第1章 第36節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

「ふふ、信じるわよぉプルーちゃん」
 真っ白な国に生まれたアーリアにもまた空や織物の色を教えてくれた人が居たのだから。

 アプリコット・フィズを舌に転がしたアーリアはソファを軋ませる。
「私ね、プルーちゃんみたいな幻想種でもない普通の人間だから、どう長く見ても100年は生きられない」
 二人掛けソファの片側を撫でるアーリアは愛おしそうに言葉を紡いだ。
 ミディーセラはアーリアよりずっと長生きで、きっと先に彼を置いて行ってしまうだろう。
 だから願うのだ。
 同じ時間を生きて二人で大好きなお酒を飲めるようにと。
「ねぇプルーちゃん。私の未来、何色になるかしら?」
「私は置いて行かれる方なのだけど、それでも強い願いは道を開いて行くわ。だから、諦めないで」

 月虹万華鏡に願いを込めて。
 ――ヘリオトロープに誓う愛の言葉

成否

成功


第1章 第37節

エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma

「ふむ、わっちの事でありんすか」
 ジンを煽りながら岩に腰掛けたウィートラントは己は放浪の身、根無し草だと語る。
 けれど目的が一つだけあるのだ。
 人に会う。その輝きに強く魅入られるのだ。
「人の意志に貴賤などない。人の強い輝きをもっと沢山見たい。魅ていたい」
 勿論プルーの事もとウィートラントは微笑んだ。
「その気持ち、とても分かるわ。私も沢山の色に魅せられた」
「同じでありんすね……ああ、そうそう」
 ウィートラントは懐からタイガーアイを取り出した。
「これを貴女に差し上げんしょう」
 好奇心の石。何かに魅入られた者同士。
「仲良くなれるやもしれないでごぜーますねえ?」
「そうね」
 くすくすと笑い合う二人に月虹万華鏡は降り注ぐ。

 ――光へ煌めくアルパイン・グリーン

成否

成功


第1章 第38節

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業

 藤色の座布団に座った瑠璃はプルーから苺ケーキと紅茶を受け取った。
 今度作る服の生地を何色にするか、貰った色から選ぶのも悪く無い。
「仕事着なら、闇に紛れ込みやすい黒に近い紺や茶をよく使いますが、それって色の好き嫌いとは違いますよね?」
「自分に似合う服と好きな色は必ずしも一致するとは限らないわね」

 過去を語るにも。故郷の話は口に出さず、混沌に召喚されてからの思い出を紡ぐ。
 仕事や食事内容を自由に選べること。上司がいないこと。
「希望が浜の学園生活は、交流に制限も嘘も必要ではないことが素晴らしい!」
 僅かに微笑んだ瑠璃は紅茶を一口含んだ。
 月虹万華鏡は瑠璃の色彩を選び出す。

 ――コバルト・バイオレットにアイス・グリーンを添えて。

成否

成功


第1章 第39節

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド

 自分の色など調べるまでも無いとサイズは自作の金属の椅子に座った。
 車輪付でとても早く坂を下ることが出来る逸品。
 妖精が作ったマナを宿したお酒は、少しだけサイズの心を落ち着かせる。
「傷だらけね」
 サイズの身体はあちこちに包帯が巻かれていた。
 命を削る妖精郷の戦い。
 その最中で負った傷なのだろう。
「色々あるが……」
 誰かを守る為に、誰かを傷つけるのだ。自分だけが傷つかないなんて有り得ない。
 この傷は誰かを守った証なのだ。
「特に好きな色はないが」
 自分の色と云えるのは血の色だろうか。赤黒く染まったいろ。
「……さて俺は何色に判定されるかな?」
「そうね。貴方の色は」
 月虹万華鏡は回り出す。サイズの色を選び出す。

 ――黒を抱くアルジェリアン・レッド

成否

成功


第1章 第40節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂

 古城の如き廃墟、玉座の間にある豪奢な椅子が現れる。
 ゆったりと腰掛けるはレイチェルだ。
「俺は双子として生を受け、妹の為に医者になった」
 けれど妹は吸血鬼に殺された。
「今の俺と同じ銀の神と、俺の右目と同じ色彩の双眸を持つ──人間離れした美貌を誇る異形に」
 落ちた視線に僅かに躊躇いが見える。
 復讐するため禁術に手を出し、同じ異形に身を堕とした。
「何もかもを捨てて復讐を果たしたはずだったんだ……」
 グラスに注がれた赤ワインで喉の渇きを潤す。

 だけど。
 迷宮で見たあの時の光景は。
 妹が男の手を取った記録は。
 自分は認識していた過去は。

 本当に正しかったのだろうか。迷う色が彼女の瞳に宿る。
 月虹万華鏡はレイチェルの心を読み取り一粒の光を落とした。

 ――揺れ動くビクトリアン・ローズの花の雫。

成否

成功


第1章 第41節

緒形(p3p008043)
異界の怪異

「はあい」
 天幕を上げて入って来たのは緒形だ。
 占いやおまじないは好きなのだと、長身の黒スーツは笑う。
「色で表してくれるのも新しくていいね。おっさん色とか詳しくないから是非とも視ておくれ」
 よいせと学生イスに腰掛けた緒形。子供用の椅子は緒形が座るとどうにも小さく見えてしまう。
 コトリと置かれた綺麗な水に嬉しげに頷いた。
「学校では呪いや泥水とか血だったり、何か混じってるのが多くてね」
 子供達に綺麗な水を飲ませるのは難しかったのだと思い出す。
「此処に来る前は学校に居てね」
 助けを請う声が聞こえたから。戦えるは自分だけだったから。
 化け物の攻撃に血を流していた子供達の姿が脳裏に浮かんだ。
「まあでも最期は、全員を学校から帰したさね。最期はね」
「そう……」
 語るべくは此処までだろうか。

 月虹万華鏡から落ちる光は。
 ――赤錆色の声。

成否

成功


第1章 第42節

小金井・正純(p3p008000)
ただの女

 色占いようなものだろうかと期待を胸に天幕をくぐった正純。
 星を使った占いは得意とするところだが、こちらは専門外。
「是非ともお話を聞かせていただきたいですね」
「ふふ、いらっしゃい。どうぞ、座って?」
 虚空に出現した座布団。それに煎茶から湯気が立ち上がる。

 過去について幼い頃の事は覚えていないのだと正純は紡いだ。
 幼い頃の記憶は曖昧で、覚えている価値などなかったから。
「それよりも星を見ている方が楽しかった」
 自我を得たのは満点の星空の下。正純の『過去』はそこから始まったのだ。
「素敵な話ね」
 プルーとて幼少時代の事など既に曖昧である。
 けれど、色を見た時の感動は正純と同じように覚えていた。

「さて、どんな色が点るのでしょうね?」
 くるくる回る月虹万華鏡。見出す色は。
 ――瞬く星のコメット・ブルー

成否

成功


第1章 第43節

ジュルナット・ウィウスト(p3p007518)
風吹かす狩人

 ジュルナットは選ぶなら未来なのだと頷いた。
 ありふれた木の枝。太めの枝。摘み立てミントのハーブティ。
「何、これから話すのは戯言のようなものさナ」
 彼の瞳に映り込む空の青。弓に矢を番え、弦が切れんばかりに引き絞り。
 狙いが向かう先は遙か空の彼方。
「己が命すら霧散させんとして空の向こうへ深緑の"伝承"を放ツ」
 それは星を落とすこと無く、帰ってくる事も無い。
 森林に覆い茂る草葉の如く、空を明るい緑に染めるだろう。
「だなんて、変な話さナ。さて、戯言にて出来上がった色を眺めようじゃないカ」
「貴方のお話からは美しい色が見えたわ」
 月虹万華鏡はジュルナットの頭上に燦々と輝いた。
 ――祝福のスプリング・グリーン。

成否

成功


第1章 第44節

リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように

「万華鏡――良い景色ですね」
 煌めく月虹に目を細めたリンディスは写本の際に何時も使っている椅子を呼び出す。
 語は未来への道筋。
「私は記録者でした。数多ある物語を記録し、後世へ"安全に"本を継ぐ者」
 この世界に来てからは余りにも多くの物語があったのだ。
「"人の生"という物語。"友人"という物語」
 絶海の青で垣間見た、一瞬で弾けてしまう"人の死"という終わり。
 記録者として世を渡り歩いてきたリンディスにとって、壊れそうになるぐらい膨大なアカシックレコードたち。そのどれもが輝いて見えた。愛おしく写った。
「だから、我儘に――過去を糧として、未来を"紡ぎだす"編纂者へなろうと、思うのです」
 紅い瞳で微笑んだリンディスにプルーもまた満足げに目を細める。

 未来を綴る色。
 ――移ろう遊色のオパール・グリーン

成否

成功


第1章 第45節

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み

 お気に入りのベージュのラウンジチェア。足を思い切り伸ばせて昼寝が出来るぐらいの大きなもの。
 ふかふかのクッションも忘れてはいけない。
 身体を沈めてアップルティーをこくりと飲めば爽やかな香りが口の中に広がる。
 フェリシアは自分には『今』しかないのだと紡いだ。
「温かい春、きれいな花畑でお昼寝を、したり……暑い夏、海で心ゆくまで、遊んで……」
 涼しい秋には紅葉を踏みながらお散歩。寒い冬の朝はあたたかい布団にくるまっていたい。
 そんな何の変哲も無い日常をフェリシアは愛おしく思っていた。
 きっと昔の自分もこうなのだろう。
 思い出せずとも好きなものは変わりないだろうから。
「そうね。今を幸せに歩いて行けるならきっと大丈夫ね」

 月虹万華鏡の色彩が一滴落ちてくる。
 ――碧のフローライト

成否

成功


第1章 第46節

辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた

 緑のクッションの揺り椅子に揺られ真は夕焼け林檎のお茶を口に含んだ。
「お菓子はサヨナキドリの竈の魔女謹製の……あなたもどうだい?」
「有り難く頂くわ」
 さて、とプルーに向き直った真は己の色を語り出す。
 夕焼け色だと、小説家だった母は言ったのだ。
 けれど真は姉の宵闇色も好きであった。
「今の俺は旅人だから、その時々で違う色になっているかもしれない」
 最近は夏の蒼と黒が多いだろうか。
 けれど、真は姉と揃いの夕焼け色が好きなのだ。

「ねえ? こんな話でも占えるかい?」
 真の挑戦的な目にプルーは微笑みを返した。
 同時に月虹万華鏡は眩い光を放つ。
「そう、貴方の色は」
 ――ファイヤオパール。夕暮れも宵闇に輝く星も。空が溶けた焔の色。

成否

成功


第1章 第47節

ユン(p3p008676)
四季遊み

 寛ぐのに何でも良いならと葉っぱで出来た座布団に座り込んだユン。
「色か」
 面白そうだと眉を下げたユンは、移ろい続ける世界の中に存在する自分に思い馳せる。
「明日には変わってしまうものなのか、或いはこずっと持っている色なのか」
「そうね。今貴方を包んでいる色かしら」
 明日になれば違う色なのかもしれない。けれど、生来にじみ出る色彩は濃いものだ。

「僕の昔話か……ほとんど覚えていないな」
 記憶の片隅にあるのは森で暮らしていたこと、仲間に囲まれ大切にしていたこと。
 けれど、それが今無いということは。
「僕は多分、大切なものを守れなかったんだ。だから、今ここに居るんだと思う」
 ユンは物憂げに視線を落とす。

 月虹万華鏡の色彩はユンの心を映し出す。
 ――儚く美しいルノワール

成否

成功


第1章 第48節

清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん

「やっほー! 元気かプルー?」
 天幕を勢い良く開けた洸汰はぽてぽてとプルーの前にやってきて丸椅子に座った。
「あっオレンジジュースちょーだい!」
「ふふ、どうぞ」
 快活な少年の声にプルーもつられて微笑む。
「えーと、最近ね、オレ、だいたいいっつも海洋に行ってるんだ」
 海洋に居る友達のところへ遊びに行ったり、海で泳いでみたり。
「あ、でも泳いだり水遊びしてるだけじゃないぞ。野球だって皆でやってるんだ!」
「あら、楽しそうね」
 プルーの言葉に洸汰はニシシと笑う。
「オレは選手兼コーチ兼監督!」
「監督なのね」
「けっこー忙しいんだぜー。楽しいからいいけど!」
 胸を張る洸汰に目を細めたプルー。
 きっと彼には青空が似合う。

 ――夏の白い雲を抱くアジュール・ブルー

成否

成功


第1章 第49節

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女

 思い浮かべるのは青い焔。
 されど心の色はどうなのだろうとアルテミアは物思いに耽る。
 白い片翼の意匠が彫られた椅子は彼女をしっかりと支えていた。

「私には双子の妹がいるの」
 病弱だけど、穏やかな微笑みを絶やさないとても優しい妹。
 エルメリアと過ごす日々は幸せで何時までも続くと思って居た。
「彼女が浚われ行方不明になるまでは」
 それからずっと探し続け新天地カムイグラでようやく掴めた手がかり。
 だけど、それはとても残酷で。
「それが事実なのだとしたら……」
 会いたい気持ちと真実を知るのが怖いという思いが交錯する。
「でも、貴方は会いに行くのでしょう?」
「……」
 プルーの言葉にアルテミアは迷った末に頷いた。
 どちらを選んでも後悔が付いて回るのかもしれない
 けれど、『会わない』後悔はきっと一生続いていくものだから。

 月虹万華鏡は彼女の選択に祈りを捧げる。
 ――未来は無数に広がっているから。ブルー・ワルツを共に。

成否

成功


第1章 第50節

恋屍・愛無(p3p007296)
愛を知らぬ者

 木製の質素な椅子を僅かに鳴らした愛無はパンケーキを頬張る。
 甘いカフェオレで喉の渇きを潤せば、プルーの視線に肩を揺らした。
「僕は甘党でね」
 過去を話すなんて今まで無かったからどうしたものかと考えを巡らせる。
「そうだな。実際、この世界に来て困った事はある」
「困った事?」
 この世界には法則がある。他者と言葉が通じるのだ。
 それは即ち今まで『餌』に過ぎなかったモノが何を言っているか理解出来るということ。
「餌が命乞いをしてくれば、流石の僕でも食べにくい。時には情もわく」
 取るに足りないモノは味も悪い。
 一方で言葉が通じる者を食べる時、それはとても美味しいのだと愛無は語る。
「食べたいけど食べたくない時もある」

 月虹万華鏡は愛無を照らし一つの色を選び出す。
 ――双色が混ざり合うユーディアライト

成否

成功


第1章 第51節

マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー

「昔の……『私』としての色は淡い女性らしい色だったと思いますが、今の『ボク』の色は、どんな色をしているでしょうか?」
 桃色の柔らかいソファに腰掛けたマギーの瞳には不安げな色が浮かぶ。
 乳兄弟が淹れてくれた紅茶からは甘い香りが漂い。テーブルの上には宝石のように輝くフルーツタルト。
「ボクの乳兄弟は……そのボクが物心つく前から側にいてくれて」
 僅かに頬を染めたマギー。
 婚約を破棄されたときも、文句を言いながらも慰めてくれた。
 家を出る決意をした時も『私がいないで生活ができるとでも?』なんて言いながら着いてきてくれたのだとマギーは微笑んだ。
「いつもは言えないけれど、いつかありがとうって伝えたいです」
 月虹万華鏡の光が舞う。マギーの心を映して。

 ――春の陽だまり。ペールグリーン。

成否

成功


第1章 第52節

節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

 鬼紋と同じ桃の花弁が刺繍された黒い座布団に座ったトウカ。
「俺、実は四つ子で」
 訥々と語るその言葉。
 トウカの村では多産は忌子として見做される。
 幼い頃より兄達三人は養子で、自分だけは本当の子供として偽りながら生きたのだとプルーに語った。
「二十歳になったから一族のお役目として、でっかい木の中で10年ぐらい眠る事になって」
 長男から一人ずつ眠る予定だったけれど、自分一人で兄弟三人分を担おうと無茶をした。
 兄達に守られてばかりは嫌だった。
 一度も彼等に稽古や勝負で勝てない自分よりも兄達が起きていたほうがいいと逃げた。
 されど、寝ている間に見た夢の中。
 誰かが傍に居てくれたから。
「強くなって思い出してから故郷に顔を出す! もう逃げない!」
「ふふ、良い心がけね」
 そんなトウカに送る色。――薄桃色のしるし。

成否

成功


第1章 第53節

シルヴェストル=ロラン(p3p008123)
デイウォーカー

 面白い仕掛けだと言いながらシルヴェストルは微笑む。
「少し、少しでいいんだよ。少し仕組みの話とか、そうじゃなくても解せ――」
「お座りなさい?」
「あ、はい」
 自分の店で使っているカウンターチェア。
 温かい紅茶を飲みながらシルヴェストルは言葉を紡ぐ。
「元の世界には戻れないからね。この混沌世界で生きる夢を語りたいんだ」
 幾星霜の永きを生き。自分の知らない場所の関わるはずの無かった人々の知識を得られる。
 そんな素敵な世界。
「僕の欲、未知に触れ続ける楽しみが尽きないなんて、素晴らしい以外に何と言えばいいのか……君には分かる?」
「分かるわ。私も沢山の色彩を見るのがとても好きよ」
 シルヴェストルの言葉にプルーが応える。
 月虹万華鏡は彼に色を選ぶ。未来へ繋ぐ未知の色。これからの色。
 ――白き炎が揺れるとき

成否

成功


第1章 第54節

 月虹万華鏡は光を帯びる。
 色彩の魔女はゆっくりと今日の記録を反芻した。
 燃える赤。流れる青。輝かしい橙。どの色も美しく思い起こせる。

 ふわりと天幕が引かれて見知った顔が入って来たのにプルーは僅かに目を見張る。
「あら、珍しい」
「たまにはね」
 其処にはフードを下ろしながら、近づいて来る黒猫のショウの姿があった。
 コトリと置かれたショットグラスには、グリーン・アラスカが揺れる。
 行きつけのバーのソファに腰掛けたショウはテーブルの上に置かれたカクテルを持ち上げた。
 カンとグラスが重なり甲高い音を立てる。
「ねえ、俺の色はどんなのかな」
「……あら、聞きたいの?」
 プルーの悪戯な笑みにショウは肩を竦めた。
 指先を月虹万華鏡に向けるプルーは彼の色を選び出す。
 届くことの無い儚き思慕。

 ――スモーキィ・アクアとシスティーン・モーヴ。

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