PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【初心者さんも!】夏生の祓と実戦訓練

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●強者ふたり、此岸に降り立つ
「新天地ですねっ!」
「随分と空気が違う。混沌(こっち)に呼ばれた日の事を思い出すねぇ」
 絶望の向こう、豊穣の地――カムイグラの此岸ノ辺に、アンネリーゼとマクシミリアンが先んじて立つ。
「しかし……」
 マクシミリアンが同行者を横目で見る。老齢ながらぴんと伸びた背筋に、堂々たる立ち姿。只者でない事は、纏う空気ですぐに分かる。一方のアンネリーゼは、というと――
「!!! す、すみません慌ててましたっ!」
 上下揃いのよく言えば動きやすく、悪く言うと怠惰な服で。片手には、暑いからと脱いだカムイグラ風の羽織。この新天地に合わせたという訳でもなく、単に普段着のまま来てしまったとか。
「……皆が来る前に、着替えておいで」
「ふぁい……」
 アンネリーゼはそそくさと手近な小社へ向かう。
(大丈夫かねぇ……いや、大丈夫なのは分かっちゃいるが)
 マクシミリアンは言うまでもないが、このアンネリーゼも劣らぬ強者であり、覇者の器すら備えている。異界の剣聖の目と勘はそれを見抜き、確信もしている。
「さて、そろそろかね」
 マクシミリアンが振り返った方向。此岸の門に、次々と人が降り立つ気配があった。

●豊穣と無病息災を祈って
「皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます! 今回はざっくり言うと、比較的安全な魔物退治のお仕事です!」
 此岸に降り立ったローレットの冒険者たちと、今回行動を共にする現地の鬼人種、巫女、祈祷師たちを前にして、軍服姿の戦乙女が凛々しく立つ。
 近頃は喜ぶべきことに、新しく異界から呼ばれた者や、新しく特異点として見出された者が多い。ローレット単位での大規模な訓練も定期的に行われるが、それまでの間路頭に迷ってしまう者が減るようにと、彼女の発案でイレギュラーな訓練を行う事になった。

「もう少し、もう少し詳しくお話しますと、こちらはカムイグラでの儀式を兼ねています」
 冒険者たちの引率を行っていたプルサティラが、依頼主から聞いた内容を語る。普段は新兵の訓練を兼ねた場だったが、ここ最近の豊穣の地はやや荒れており、儀式に必要な人手が集まらなかったという。そこでこの稀人たち、イレギュラーズも協力する事となった。
「今回は『夏生の祓』と言いまして、こちら……紙で作った人形に、この地に溜まった『穢れ』『淀み』を降ろして形を持たせ、それを倒して『祓い清め』を行うものです」
 カムイグラの地では人の心身や空間の清浄を重んじており、この『穢れ』や『淀み』は異質な妖が生ずる原因や、意図しない召喚の原因にもなるという。
「儀式だかケガレだか、分からん事も多いだろうが、お前さん達はとにかく『ヒトガタ』を倒して貰えばそれでいい。つまりは、『掃除』だね」
 穢れに淀み。マクシミリアンの居た世界や混沌の地では、あまり馴染みの無い考え方だろうか。カムイグラと似た世界からの旅人は、よく親しんだ概念かも知れない。
「あの神殿に呼ばれた時に聞いたとは思うが、すべては『可能性』の為。私達は何をしても自由。……だが、自由が故に迷う子も居る事だろう。特に旅人は、元の世界と勝手が違って、苦労しているかも知れないね」
 この女傑、マクシミリアンも旅人であり『レベル1』の時期もあった。故に少しでも『迷子』が減ればとの思いがある。生きてきた中で幾度となく『失ってきた』が、失うことは何度遭っても辛いものだから。

「さて、敵は物言わぬヒトガタ……? です。降ろすケガレの量と数は、祈祷師さんが皆さんに合わせて調整してくれるとの事で、余程に余程の無茶をしなければ危険はありません」
 アンネリーゼが差した方向、縄で囲われた此岸の一角。その中心には菱形に連なる紙をぶら下げた祭具と、水を張った器が置かれている。榊と鈴を持った巫女がその周りを舞い、涼やかな鈴の音が一帯の空気を清めていく。
 祈祷師たちは『ヒトガタ』の元になる紙に息を吹きかけ、中央の水に次々と浸す。紙人形たちはみるみるうちに大きくなり、意志を持ってゆらりと動く。歪んだ顔の怨霊や痩せこけた小人など、別の形に変じる者もあった。鬼人種の新兵たちが、見慣れぬ光景にごくりと喉を鳴らす。
「今回一緒に戦うカムイグラの皆さんは――カムイグラの皆さんも、初めての実戦になる方がほとんどですね」
「私達もサポートするから、頼ってもらって構わない。ローレットである程度慣れた子は、一緒にフォローに入って貰えると有難いね」
 アンネリーゼとマクシミリアンが語る間にも、大小様々なヒトガタが次々と生み出されていく。異界の剣聖は相棒の一振りを、鉄の戦乙女は愛用のハルバードを高らかに掲げ、今一度、場の全員に語り掛ける。

「ローレットの子もカムイグラの子も、準備はいいかい?」
「ヒトガタはどんどん出てきますが、頑張ってじゃんじゃん倒しましょう!」

 新天地の雨季の終わり頃。稀人を交えた祓の儀が始まる。

GMコメント

●目標
ヒトガタと戦って場を清めたり、混沌での戦闘に慣れたりしてみよう!

★初心者さんへ
こちらは相談不要、随時リプレイが返却されるラリーシナリオになります。
PPPには細かい戦闘ルールや立ち回り方がありますが、今回については
ざっくり指定でも大丈夫なので、こちらのシナリオで戦闘の書き方と
リプレイ描写を簡単に体験していただければ嬉しいです。
勿論、移動や副行動などの細かいルールが分かる方は、
それに準じて書いていただいて構いません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●エネミー
 〇ヒトガタ×適正な数ずつ(たくさん)
  穢れを人型に切った紙に移して受肉させたモノで、紙人形以外にも様々な姿をとります。
  PCさんの能力に合わせたスペックと頭数で出てきます。複数ぶっぱもどんとこい。
  物理寄り/神秘寄り/両面と多彩で、スキルの方も、皆さんに合わせて
  丁度いい感じに調整されます。

 スキル一例
 ・素殴り(物至~近):素手や持ってる武器で殴ってきます
 ・飛び道具(物中~超):射撃武器や、身体の一部をぶん投げてきます
 ・衝波(神近~超):魔法攻撃です
 ・修復(神近/HP・BS回復):自分か他のヒトガタを修復します

  ↑PCさんにあわせて、攻撃の威力・範囲が調整される場合があります。

●友軍について

 〇鬼人種の新兵×15人ほど
  儀式の人員として集められた新人たちです。能力傾向は様々ですが、初めての戦闘で
  とても緊張しています。一緒に戦ったり、庇いや回復などの支援も喜ばれるでしょう。

 〇アンネリーゼ・フォン・ヴァイセンブルクさん
  ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)さんのお姉さんです。
  物理も神秘もいける前のめりなアタッカーで、攻撃力上昇などの補助スキルも
  一部持っています(近くの方にかけてくれます)
  ハルバードを振るう凛々しい戦乙女で、確かな実力と器の持ち主なのですが……
  危険が無い場所ではかなりのドジっ娘(高ファンブル)なので、フォローがあると心強いです。
  して欲しい事があれば聞いてくれます。

 〇『異界の剣聖』マクシミリアン・リミッツさん
  練達の私設自警団『サーベラス』を纏める女傑。弓削 鶫(p3p002685)さんのお知り合いです。
  元の世界で『剣聖』と呼ばれていたほどの人物ですが、混沌でもその腕は健在。
  攻防一体の剣技の持ち主です。面倒見の良いおばあ様で、戦場に的確な指示を出してくれます
  (参加者さん全員の命中・回避が上がっています。彼女の近くに居るほど強くなります)
  それ以外もアンネリーゼさん同様、して欲しい事や会話に応じてくれます。

 〇プルサティラ(p3n000120)
  ローレットの駆け出し情報屋です。神秘型で支援・回復寄りの構成になっています。
  HP/AP・BS回復などをメインに、皆さんをサポートするように動いています。
  ご指示やして欲しい事などあれば、お気軽にお声おかけください。
  
 以上4名が皆さんのサポートに参加しています。組んでみたい方はプレイングにて
 名前をご指定の上(NPCはID不要です)、絡みたい内容など自由にお書きください。
 NPCは常時動いていますが、リプレイではプレイングで触れられた分だけの描写になります。

・・・・・・・・

●プレイングの書き方(基本の書式)
一行目にポジション(今回は大雑把に前衛/後衛だけでOKです。細かく書いても可)
二行目に同行者のフルネームとID、または【】で括ったグループタグ、
三行目以降は使用スキルや台詞、心情など自由に書いてみてください。

 ※庇いや回復など、連携については今回自動処理なので細かい指定は不要です
(同じタイミングで参加された方の中で連携が発生します)
「会話などで特別この人と絡みたい」という場合、プレイングでご指定ください。

 ※同行者欄に【絡みOK】とご記入いただくと、他の参加者さんと
 少し強めの絡みが発生する場合があります。

●プレイングの書き方(ちょっと詳しく)
・ポジション(どこで立ち回る?/今回はひとまず前衛・後衛だけでもOKです)
・使用スキル(誰に対して、どんなタイミングで使うか?)

行動面については、上記を意識するとより良い感じです(今回は大雑把でも全然OKです)
キャラクター的な部分、心情、セリフ、仲間への声かけ、その他やってみたい事は何でも
自由に書いてください。どんなキャラなのかを白夜に教えるイメージで書いていただくと
内容が決め易いかと思います(書き方の縛りは特に無いので、伝わりさえすればOKです)

以下、割と典型的な前衛と後衛のサンプルを置いてみます。
はじめての方はこちらを参考に、ご自分のPCにあわせて必要箇所を書き換えてみてください。

--------------

前衛
【カピバラ過激派】+マクシミリアン
マクシミリアンさんに教えて貰いつつ、鬼人とも一緒に戦って皆でイイトコ見せるぞ!
真っ直ぐ行って、手近な奴を一刀両断! 各個撃破を意識するぜ!
怪我した鬼人が居たら庇う!
「へへ、カッコつけさせろよ!」
HP・APが持たなくなってきたら戦闘続行で立て直しだ!

--------------

後衛
アンネリーゼ【絡みOK】
私は回復と支援です。一番傷ついている方にライトヒールを施します。
必要がない時は、倒せそうなヒトガタにマギシュートで攻撃を。
APが切れたら遠術を撃ちます。
戦うのはあまり…ですが、頑張らないといけませんよね!
「あっ、アンネリーゼさん! 後ろ後ろ!」

・・・・・・・・

それでは、ご参加お待ちしております!

  • 【初心者さんも!】夏生の祓と実戦訓練完了
  • GM名白夜ゆう
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月11日 21時39分
  • 章数1章
  • 総採用数61人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

黒影 鬼灯(p3p007949)
零れぬ希望
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
天目 錬(p3p008364)
魔剣鍛冶師

●頼れる先輩新人たち
「人の形をしたものに穢れを下ろす。俺たちの『流し雛』に似ている気がするな。嫁殿はどう思う?」
『そうね! 流すのと倒すのとでやり方は違うけど、大体同じ事だと思うわ!』
『お嫁殿と一緒』黒影 鬼灯(p3p007949)が元居た世界でも、穢れや祓いは馴染みが深い。彼に返した声の主、『嫁殿』と呼ばれた少女の姿は、一体何処に――その正体は、鬼灯が操る少女人形。
 旅人が付喪神を? 鬼人の新兵は首を傾げたが、正体は鬼灯の腹話術である。
「新人さん達も多いみたいだし、被害が及ばない様に注意しないとね」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)の活動歴は半年ほど。経歴的にはまだまだ新人だが、されど半年。
「ああ。時期を考えれば、俺も新人になるな」
『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)の混沌での初戦は、なんとかの海洋大決戦――冠位魔種からリヴァイアサンまで、実に濃密な初陣だった。
「『竜神様』の事を考えれば、まあまあできる新人……ぐらいにはなるか」
 あの戦いで生き残れたのかと、鬼人たちがざわめいた。錬本人も同意見で、今、生きているのが不思議なくらいだ。
「ここはひとつ、先輩新人ズとして頑張りましょうか!」
「そうだな。ここはフォローついでに、新技も試させて貰おうか」
 先輩と新人。言葉同士が衝突している気もするが、同期かそれに近い者の存在は、新兵にとって非常に心強いもので。
 カムイグラのそれに近い在り方をした三者の前に、穢れを降ろしたヒトガタが飛来する。ヒトガタの群れは分厚い壁を形成し、イナリ、錬とそれ以外を分断するように辺りを舞った。
「わわ、ちょっと多過ぎない!?」
「だな……いや、丁度良い」
 錬の中に巡る赤い血潮と、続けて放った陽の式符が戦いの始まりを告げた。

『私たちもみんなのお手伝い、頑張るのだわ!』
「そうとも嫁殿。さぁ、舞台の幕を上げるとしようか」
 錬とイナリを救出すべく、新兵たちが鉾を振るい紙のヒトガタを薙ぎ払う。ひと回り大きく払いきれなかったものが新兵に襲い掛かる前に、鬼灯が不可視の糸で絡め取る。
 既に舞台の幕は上がった。ヒトガタ(人形)はヒトガタらしく躍って貰おう。勿論、主役は戦う人間たちだ。黒衣は黒衣らしく、役者に華を持たせよう。
「そりゃー!」
 物理と神秘、二重の障壁で守りを固めたイナリがヒトガタの壁に突っ込んでいき、魔を祓うふた振りの剣を大きく振るい念じる。

 ――祓え給い、清め給え――

 異界の火の神をその身に降ろし、圧倒的な二重の熱量でヒトガタの壁を焼き払う。どこか神々しさを感じるその大火に、数名の鬼人が思わず頭を垂れた。
「火の神の力か。俺が扱うのも、また炎――」
 火に関わるふたりが居合わせたのも面白い偶然。或いは、何かの縁か。
「さて、新作の術符のお披露目だ」
 錬の放った十数枚の符が、頭上で無数の鏡へと変じる。鏡は陽光を増幅させ、光の線を無数に形成し。
「――薙ぎ払え!」
 号令と共に其れを放つ。飛び交う光線は面となってヒトガタ達を押し潰し、一気に場を清めていった。
「よく燃えたわ!」
 二発目を放とうとするイナリの方へと、『鬼』のような形を取った大きな個体が迫り。障壁ごと打ち砕かんと、大槌を振るう。
「あ、やば……」
 この障壁は維持自体にも力を要する。一度破られてしまえば、素のイナリはやや脆いが。
「……さてさて」
 裏方に徹していた黒子、鬼灯が、イナリとヒトガタの間にすっと割り込み。

「雪が消えるは紫苑の月」
『心惑わせ、壊す月』

 操る魔糸の纏う紫光が、敵の弱点を照らし出す。魔糸は鎖付きの鉄球に変じ、確かな威力を持ってその弱点へと放たれた。裏方の思わぬ攻勢に、鬼人たちは目を丸くしたが。
「闘い方は何も、ひとつに拘ることは無い。手を替え品を替え、舞台を盛り上げてやればいい」
 このヒトガタは相当に頑丈だが、鬼灯の攻撃で弱点は見えた。弱点目掛けて、新兵たちは弓や術を一斉に放つ。
『みんな頑張るのだわ!』

 新兵にとってはやや手ごわい個体も混じっていたが、新人の先達の導きによって無事、第一陣を崩しきる事ができた。

成否

成功


第1章 第2節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
終翼幻想
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound

●剣魔と剣聖と猟犬と
「マックスさん!?」
「鶫か、久しぶりだね。調子はどうだい?」
 まさか彼女が来ているとは。『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)が放った炸裂弾が鎧武者姿のヒトガタに着弾、炸裂と同時に二重の呪詛を展開。とにかく今は、やるべき事を。
「これに続いて後方から、距離をとって撃ってください! 前の方は、斜線を塞がないように!」
 二人で新兵に指示を出す。従った新兵の一人が放った弓の一撃が、鎧武者を穿った。
「サーベラスの方は、マリーさんや鴒さんが居れば大丈夫でしょうけど……何か、戦の気配でも?」
「まあ、そんな所だ。何となく、こう――予感がしてね」
 彼女の霊能(よかん)は幸か不幸か、危険であるほどよく当たる。謎の多い新天地、何事も無ければと鶫は思う。
 大量に現れるヒトガタの量に圧されないよう、マクシミリアンと鶫が的確に、自らの動きでもって新兵を導く。その一方、『讐焔宿す死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)の放つ雪崩の如き弾幕と剣戟が、次々とヒトガタを切り伏せてていた。
「初めまして、『剣聖』殿。お邪魔でなければ、色々と話させて貰えれば」
「勿論。構わないが……随分と危なっかしい戦い方をする」
 守りを捨てて二刀で繰り出す、怒涛の攻め立て。一撃目で殺し、二撃目、三撃目でもまた殺す。殺しきれるまで。『死なず』をも殺さんと。『剣聖』をこの手で殺す、その為に磨き上げた悪意の刃。
「……少年。命を粗末にするんじゃないよ」
 眼窩の奥で冷たく揺らめく炎は、やがて自身をも焼くだろう。優しき剣聖の声は、死神に届いただろうか。

「ちょっとお高いのですが……」
 武者姿のヒトガタに、鶫が再びの呪弾を放つ。先ほどと同様、新兵たちの刃がそれに続いて畳みかける。
「――討ち取った!」
 新兵たちが徐々に成果を上げてきた。ひとつの勝利が全体の士気を上げ、更なる勝利を呼ぶ。
「良い流れが出来たね」
「何であれ、成果は自信に繋がり易いものですから。……私もそうでしたし」
「ああ。……懐かしいね」
 つもる話は後ほど、と。マクシミリアンの『剣圧』が、迫るヒトガタの強打を弾き返した。
 この場の強者に合わせたヒトガタは一筋縄でいかず、クロバは思わぬ深手を負ってしまう。彼はまるで、死に急いでいるようで。心配だと、癒術を施しながら新兵が呟く。
「心配かけて悪いが、これが俺のやり方なんだ。皆もそれぞれ、自分のやり方があるか……」
 己の強みは、やってみないと分からない事も多々ある。その為にもまずは色々な『型』を覚えて、自分に合ったものを選ぶといい。新人たちに贈る、死神なりの実践論だ。

成否

成功


第1章 第3節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
恋屍・愛無(p3p007296)
砂の幻
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖

●ヒトとオニの定義
「穢れや澱みをヒトガタに乗せて祓う、ねぇ……」
 昨晩もついつい飲み過ぎた。この二日酔いもヒトガタに乗せて祓えないかと、『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が冗談めかして言う。
「身代わり供養のようなものであろう」
 前衛に立つ『らぶあんどぴーす』恋屍・愛無(p3p007296)が、フォローすべき仲間たちをざっと確かめる。後衛側には、プルサティラの姿もあった。
「そういえば。あの時は、鎌も振るっていたな。ぷーちゃん君は、結構な力持ちか」
「あの時は。あの時は……だいぶ、自暴自棄になっていましたから。今思うと、やはり鎌は重たくて……です」
「そうなのか。まあ、君なら心配はないだろう」
「ねえねえ。これって鬼を斬るんじゃなくて、鬼を守る仕事なの?」
 新兵たちに緊張が走る。俄かに張り詰めた空気の中心に居るのは『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)。異界の鬼殺したる彼の存在が、鬼人たちを不安にさせるのだ。
「鬼って言っても、頼々くんの世界の『鬼』とはちょっと違うかも?」
「……大丈夫だ。依頼は絶対であるしな」
 やや危なっかしい頼々だが、その根は至って真面目である。

 穢れを乗せたヒトガタが迫るのと同時、アーリアの頭がズキリと痛む。無理なきようにと新兵が言うが、戦闘に支障は無いと返す。
「おねーさん、こう見えてそれなりに経験豊富だからね!」
 どう考えても二日酔いの症状だが、これも穢れの所為にして。後輩がのびのび戦えるように、しっかりと場を整えようか。
 琥珀色の俄雨、ぴりりと痺れる雷撃をヒトガタの群れに注いで酔わせる。
「今よぉ!」
 アーリアに並び立つ術師が、雷撃に乗せて毒の術式を展開。二重に酔ったヒトガタ達がどろりと溶ける。
「斬る対象が鬼であればよかったが……まあ良い」
 頼々が持てる最強の技、紫染の鞘から抜くのはソレ自体――今、この鞘は刀へと再定義され、もう片方、頼守の鞘へと納められ。空の刃と共に抜き放たれる。
 実体を持たぬ空の刃、虚の一撃は怨敵の角の核を得て、『鬼を殺すまで』あらゆるものを貫き通した。
「右からも来るわぁ」
 特に前衛は、目前の敵で一杯になりがち。視野は広く。アーリアの指示に気づいた新兵が、右に迫るヒトガタを寸での所でそれを斬り伏せ、事なきを得た。
「怖いか?」
 ヒトガタの群れ深くへ切り込む者の重圧は特に大きい。その背を守ろうと、愛無が身体の一部、黒い粘液を拡げる。吸い込まれていくヒトガタ。これから対峙する妖なるものとこの神人(ウォーカー)との差は、果たして如何ばかりか? 彼らが味方で良かったと、胸を撫で下ろす新兵たち。
「細かい火の粉は引き受けるゆえ。君たちは存分に攻めるといい」
 敵の数は依然として多いが、傍らには頼もしい盾と鉾がある。愛無に護られた前衛の新兵たちは思い切り各自の武を振るい、ヒトガタを落としていった。
 それでも、取りこぼしはどうしても出てしまう。出過ぎた癒し手に迫るヒトガタ。アーリアが彼を護らんと手を翳し、迫る穢れを赤色のショックで弾き飛ばした。
 これ以上はお触り厳禁。ショットグラスは小ぶりなれども、油断すればコロリと一撃。
「これが終わったら、ココの地酒で一杯やろうかしら!」
 二日酔いはさて何処へやら。お礼に酔い醒ましを煎じておこうと、鬼の癒し手は思ったのだった。

成否

成功


第1章 第4節

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
山賊
篠崎 升麻(p3p008630)
特異運命座標

●破滅と破壊がやってくる
「ほぉん、戦闘訓練を兼ねた定例行事ってか」
 存分に暴れられそうだ。『特異運命座標』篠崎 升麻(p3p008630)が空を斬りながら敵陣へと突っ込んでいく。
「升麻さん! 出過ぎは危ないです!」
「おっと、そうだな。連携だ連携!」
 アンネリーゼが升麻との連携に応じ、共に大きく踏み出すが。
「きゃーっ!?」
 盛大に転んで尻餅をつく。どうやら、只の紙切れとなったヒトガタを踏んで滑ったようだ。祓われた怨念の悪足掻き……という事にして。
 後方より、無防備となったアンネリーゼを弓武者のヒトガタが狙う。避けられない、そう思った瞬間。不可視の衝撃が武者の鎧を砕いた。
「間に合った、か」
 『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)の放った『破滅』そのものである。
「た、助かりましたっ!」
「礼は不要。これも前衛あってこそだ」
 アンネリーゼがぱっと立ち上がり、後方の恩人に敬礼をする。
 周囲のヒトガタは射手がやや多い。R.R.と鬼の狙撃手による長距離の応酬が始まる。波のように押し寄せる弓や術は、絶海の戦いを思い出させる。
(もっと強くならねば――憎き『破滅』に届かない)

「オウオウ──てめえら、最高に運がいいな」
 飛び交う弾丸のその間。耳をほじりつつ、その大男は悠々と最前線に現れる。彼こそは『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)。
「このグドルフさまの戦いを、間近で見れるんだからなあ!」
 無造作に放つ、嵐の如き回し蹴りが周囲のヒトガタを蹴散らす。本当に嵐が来たかと、新兵たちは錯覚する。
「山伏? ――うんにゃ、世界最強の山賊だ!」
 大嵐に高波、あの海からの生還を果たした『山賊』の力、存分に焼き付けていきな!

「隙ありだ、喰らいやがれ!」
 負けじと繰り出す升の掌打が、鎧姿のヒトガタを裡より破壊する。暴風の如き最前線の二人に圧倒されていた新兵もやがて気を持ち直し、彼らに続く。

「へへ……いー感じにギアが入ってきたぜ。行くぞオルァ!」
 退く事を知らぬ鳳圏の将校が、より多くの闘争を望み。

「オイオイ、こんなもんかよ!? まだまだ暴れ足りねえぞッ!」
 刺し違えてもぶった斬る。山賊の闘気が意志持たぬヒトガタをも圧倒し。

 後方より響くフューネラル(銃声)、傷だらけの破滅が放つ必殺の一撃が前線を支え、前衛や新兵たちの隙を補う。
「大丈夫か」
「……はい!」
 R.R.を横で見ていた新兵が一矢を放つ。それは見事に、遠くの怨霊を撃ち抜いた。
 破滅の化身が行動で以って示したものは、言葉よりもしっかりと、新兵たちへと伝わっていた。

成否

成功


第1章 第5節

雨宮 利香(p3p001254)
永遠のキス
クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)
血禍美人
紅迅 斬華(p3p008460)
首神(首刈りお姉さん)
アナスタージオ=A=マディッツィーニ(p3p008634)
特異運命座標

●危険なおネエさんの集い
「新しい土地、新しい縁ーーふふ、楽しくなりそうですね?」
 鬼人の皆さんもよしなにと、『血禍美人』クシュリオーネ・メーベルナッハ(p3p008256)がしなを作って語りかける。
「カタくならないで? お姉さんがちゃんと教えてアゲルからっ」
 欲望に忠実であれ。『永遠のキス』雨宮 利香(p3p001254)もクシュリオーネ同様、本当はもっと『深く』付き合いたいが、まずは仕事だ。
 ふたりが振りまく色香に、新兵の青年が目のやり場に困る傍ら、『首神(首刈りお姉さん)』紅迅 斬華(p3p008460)がヒトガタの群れを見定めている。
「んふふ~♪」
 元は紙切れでやや物足りないが、彼女が思えばみんな『首』。故に問題は無い。
「はぁ~い、ぴっちぴちの新人のアナスタージオよぉ。ナーシャって呼んでね?」
 後衛、射手や術士の中には文字通りびちぴち(海種)の『特異運命座標』アナスタージオ=A=マディッツィーニ(p3p008634)がどすん、と巨大な何かを設置した。
「コッチでは大筒とか、そんな風に言うのかしら? このとぉってもおっきぃ火器で撃ちまくりたいのよぉ」
 最高の威力に最悪の取り回し。使い手たるアナスタージオの練度も新兵たちとさほど変わらず、一人で撃てばあっという間に限界となる。鬼人の剣士が申し出て、彼の護衛に付いた。
 これで安心してぶっ放せる。敏捷性を上げてから、いの一番に。精密かつ極めて重い一撃を敵陣にお見舞いしてやる。砂埃と何かの破片が派手に舞い、大音量が新兵の鼓膜を揺らす。
 その確かな威力と精度で、大柄で頑丈そうな樹のヒトガタを一撃で、文字通りの木っ端微塵に粉砕した。

「あんな感じで、まずは動き回る的に当てる練習……引き付けてアゲルから、落ち着いて狙いなさいよ?」
 アナスタージオの初撃に続き、利香が悠々と敵陣に切り込み翼を広げる。夢魔の十八番、魅了の瘴気が辺りに広がる。
「いひひ、お姉さんと遊びましょ♪」
 このゆびとまれ。悪戯っぽく微笑む利香に、意志持たぬヒトガタが囚われもがく。彼女に釘付けとなったヒトガタの側面から新兵が槍を突き出し、同時に2体を貫いた。
「そうそう、とっても上手! もっとガンガン突いちゃって♪」
 その場ではいただかず、新芽を育てるのもまた楽しい。美味しく育ってねと、夢魔は未来ある新兵たちにウィンクを贈った。

「それでは、私もお仕事ですね」
 ヒトガタと適切な距離を取ったクシュリオーネが少し目を瞑り、手近なヒトガタを指差す。何が起こったのか、次の瞬間、ヒトガタが真っ二つに切れた。
「ねえ皆さま。一列に、私のところまで。誘導はできますか?」
「おっけー♪」
 利香と前衛の新兵たちが、クシュリオーネの要請通りに立ち回り、ヒトガタの群れを一直線に整えていく。
「それでは――」
 先ほど同様、目を伏せ、ゆっくりとヒトガタを指差す。その一撃はより深く、強かな『死』となって、ヒトガタを纏めて刺し貫いた。
 その様子は、色香に惑った末路のようで。ある新兵は、己の未来を見たような気がして肝を冷やした。

「ふふ~ん♪」
 摺足でゆらゆらと進む斬華。その斬撃には何の敵意も拍子も無く、動き自体も不規則で捉え難く。ヒトガタはいとも容易く翻弄され、次々と宙を舞う。
 その後方からは、新兵の手助けを得たアナスタージオの重い一撃が着弾し、強固なヒトガタをも確実に撃ち祓う。
「あらあら? アナタの『カタチ』、面白いわね?」
「分かるんですね♪ お褒めありがと♪」
 アナスタージオの『万華鏡』は彼のギフトでもあり、趣味でもある。覗いた首神の魂の『カタチ』は、混沌の精霊種と似ているようでだいぶ違う。命を持った都市伝説であり『本人ではない』ようで。その在り方が面白い。

「ひい、ふう、みい……首がたくさんあるのはいいことですね♪ うんうん♪」
 首どころか四肢までを刈る殺人剣。されどその手に剣は無し。
 首を刈るのに、特別な技や道具など不要。万象斬首の極致である。

成否

成功


第1章 第6節

ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
号令者
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)
成果を伝う者

●麗しの戦乙女たち
「アンネ御姉様……確か褞袍とか炬燵とか好きでしたね。この国にあるらしいから来たんでありますかね」
「そ、そんな事はありませんよっ! 私はただ、新人さんが心配でですね」
『魔法少女一番槍』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)が言ってはみるものの、根は真面目な姉の事だ。新兵を案じてというのは本心からだろう。自室に居る時は、炬燵から出て来なくても。
「アンだー久しぶりー。こっちきてたんだー」
 アンネリーゼの双子の姉、『今日は様子見』クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)がローレットで活動する理由はずばり、自由に他国を見て回れるが故――いわゆる自国、鉄帝のスパイ活動の為であり。
「ねえマリー。アレ着ないのー?」
 妹の魔法少女姿も見てみたい。軍人である事に誇りを持っているハイデマリーは、解せぬといった顔で返した。
「あの子にはデレデレなのになー。姉としては悲しいもんだー」
「そ、それより! 任務! でありますよっ!」
 乙女たちの目前で次々に浮かび上がり、迫るヒトガタ。

「カムイグラの地では怨霊なども多いんですよね。これは良い訓練になりますね……!」
 真面目な姿勢で挑む『慈愛の英雄』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)がまず行ったのはずばり、スイーツタイム。甘いものは即座にエネルギーとなり、非常に効率が良い。クリスティーナが羨ましそうに見ていたが、これはあくまで効率を考えた結果。
 その力を以って英霊の生き様を纏い、自身や仲間の肉体と精神に強固な棘の守りを施す。頼もしい護りを得た新兵たちは、臆せずヒトガタの群れへと切り込んでいった。
「キャーこわーい」
 ヒトガタ相手にただ逃げ回るクリスティーナだが、『見てるだけ』が彼女の仕事であり本分である。
 新天地の立ち位置が鉄帝にとってどう在るかは未知数だが、情報は母国にもローレットにも、或いはカムイグラの地にも確実に利をもたらす。持ち前の記憶力で、細部までしっかりと見て行こう。
 一方のハイデマリーは異世界の魔法騎士を祝福する『剣』で、遥か離れたヒトガタを撃ち抜いていき、その前方では、ユーリエが意志力を効率よく変換し――
「――ガーンデーヴァ!」
 かの炎神の武器に似た弓を生み出す。放たれた烈光の矢はヒトガタに炸裂し、一瞬で清めていった。
「数はまだまだ多いですが、頑張っていきましょう!」
「頼りにさせて貰うであります!」
「お役に立てて嬉しいです!」
 ユーリエと新兵の後方より、ハイデマリーが援護射撃を継続。休みなく狙撃を続けられるのは、努力と技術の賜物だ。
 自分達がやらねば。姉のひとりはあの調子だし、もうひとりは――

「きゃーっ!?」

 言わんこっちゃない。アンネリーゼの振り回すハルバードが明後日の方向に飛んで行った。
 更に悪い事に、クリスティーナが複数のヒトガタに囲まれてしまう。新兵たちが不安がったが、姉妹たちは『分かっている』。

「――――!」

 アンネリーゼの眼に鋭い光が宿る。瞬きほどの間にクリスティーナの傍へ至ったと思えば、いつの間にかその手にはハルバードが握られており、残像すら伴う一閃でヒトガタ達を派手に散らした。
「姉上……! ご無事ですか?」
「見てのとーり。新人君たち、見たー? アンネってできる子なんだよー」
 傷ひとつないクリスティーナが、誇らしげに妹について語った。

成否

成功


第1章 第7節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
秋の約束
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
笹木 花丸(p3p008689)
人為遂行

●三者三様の神人たち
「カムイグラの人達の役にも立てて、自分の鍛錬にもなるんだ! いい催し物だねっ!」
 とりわけ最近は新人が多い。『新たな可能性』笹木 花丸(p3p008689)や『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)もまだ新人と自称はするが。
「僕らなら、潜ってきた修羅場的にこっちの新人よりは動けるよね」
「そうだね! 絶対何とかなるよっ!」
 目前のヒトガタは数えきれないけれど、フォローするから安心してぶつかっていこう。『花丸』の笑顔は今日も元気に、緊張する新兵を勇気づけた。

「………僕の心も、こうやって『祓い清め』られたらいいのに」
『だいじょうぶ?』
『おもちゃのお医者さん』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)にだけ聞こえるないしょばなし。声の主、彼の身を案ずる者は、大切に抱きかかえられた兎のぬいぐるみ。
「え? ……うん、大丈夫。何でもないよ」
 いとしい僕のオフィーリア。
「あのね。最近覚えた、新しい魔法があるんだけど――」
 今後の為にと覚えた魔法は、あらゆる苦痛を内包する黒い匣の中で相手を『治療する』もの。この術自体に直接の殺傷力はあまり無く、祓い切れなかったものは新兵が追って祓う。
「さて、僕もこの場は、支援に回るのが良さそうかな」
 息切れは厳禁。カインは瞬時に判断し、この場に最適なスタイルへとスイッチを行う。
「ねえ、新兵さん達。不安な気持ちもあるかもしれないけど、ココには頼りになる先輩達が沢山いるんだ」
 花丸は優れた防御技術を力へと代え、迫るヒトガタへとカウンターを放つ。
「頼りないかもだけど、花丸ちゃんだって居るし!」
 最前線には頑健な花丸が並び立ち、後方からは着実に敵を落とすカインの魔弾とイーハトーヴの放つ青の衝撃が飛来し、前線の新兵が囲まれないようしっかりと支える。
「っと、危ない!」
 ともに切り込んだ新兵がヒトガタの集中攻撃を受けているのに気づき、花丸が咄嗟に身代わりとなって痛打を避ける。
「花丸さん、新人さん!」
 カインが見えない糸を放って他のヒトガタの追撃を封じ、イーハトーヴの癒しの術が傷ついた新兵と花丸を直ちに癒し、大事無く戦線は保たれる。
「大丈夫! マルちゃん達にお任せだよ!」
 果たして、これで頼りない筈があろうか。

 イーハトーヴの放つ苦痛(ちりょう)の匣は、戦況が長引くほどにじわりと敵を苦しめる。
「ねえ、オフィーリア。この魔法なんだけど、そのままだと味気ないよね。いい感じにアレンジできないかなぁ?」
『確かに、もっとかわいく飾りたいわね。ぬいぐるみとかドレスみたいに、おリボンとかキラキラとかで!』
「そうしてみようか。可愛い方がきっといい」
 どんな『可愛い』が似合うだろう。愛でられるべき愛らしい君のため、腕によりをかけて飾ろう。

成否

成功


第1章 第8節

クーア・ミューゼル(p3p003529)
めいど・あ・ふぁいあ
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
火夜(p3p008727)
夏宵に咲く華

●浄焔、浄火、夏宵華火
「今日から僕もイレギュラーズ!」
 早速の仕事にと馳せ参じた『夏宵に咲く華』火夜(p3p008727)が、華を求めてヒトガタの群れへと勇み出る。
 これは喧嘩ではなく『戦い』であり、一人で出来るモノではない。なので、逸る気持ちは抑えめに。同期の新兵たちとも、足並み揃えて当たるべし。
 派手な花火を上げたいのなら、事前の仕込みが肝要なのだ。

「ヒトガタとやらの末路をも、我が焔で彩って差し上げるのです!」
『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)の目的はあくまで『火のおすそわけ』である。穢れや儀式にも馴染みは薄いが、この混沌やカムイグラを含む多くの世界において、火それ自体は神聖なもの。それ故か、この穢れたちはよく燃えそうだ。
「私が望んだ焔色を――至上の末路を描くのです!」
 放火の為に放った砲火。それは一気に広域を焼き祓い清め、開戦の烽火が派手に上がった。
「大丈夫?」
 混戦の只中、毒に穢れた鬼人に気づく。穢れの浄化ならお任せと『炎の御子』炎堂 焔(p3p00477)が傍に寄り添い、祓い給えと福音を奏でた。
「まだやれそう?」
 穢れがすっかり抜け落ちて、万全となった鬼人が頷く。
「よし! 皆で祓って清めよう!」
 掲げるは天の火。焔には元世界と同じ――とまではいかないまでも、強力無比な神の炎が宿る。
 半神の巫女舞、炎神のひと凪ぎが、ヒトガタを列ごと燃やし尽くした。

 立て続けの大火事で、ヒトガタに隙が生まれる。ひと華咲かせるなら今と、火夜が一気に肉薄する。
「そーれ!」
 灰と塵と崩れるヒトガタ。火事と喧嘩は何とやら、伊達に酔狂、前のめりこそが『彼』の本分。
 その心意気に火が付いた鬼人たちが我も我もと炎を纏い、或いは放ち。厳かなる儀の最中、大きな花火を打ち上げていった。
 次々上がる火の手の中、異界の赤猫はその思考をつとめて冷やす。燃やす相手はしっかり見極め、臨機応変、神出鬼没に火を放て。頭まで煮やしてしまっては、上手に火を点けられないから。
 災厄の業炎はこの場に絶えず、この場の誰もが滅茶苦茶に燃やしており、熱さが体力気力を奪う。流石の火夜も燃やし過ぎたか、滝のように流れる汗で体中がぐしゃぐしゃだ。
「ねえねえ。これ終わったら、皆で水浴びに行かない?」
「いいねー! ボクも行く!」
 祓った後には仕上げの禊を。そんな楽しい約束をしながら、皆で『お務め』を果たしていった。

成否

成功


第1章 第9節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ユーディット・ランデル(p3p002695)
虚白の焔
木南・憂(p3p008714)
やまぶき
花榮・しきみ(p3p008719)
荊棘
鬼ヶ城 金剛(p3p008733)
ちびっ子鬼門守

●初陣を彩るしろいろ
「ひぇ、ここどこー!?」
 言わずもがなの此岸ノ辺。豊穣育ちの『ちびっ子鬼門守』鬼ヶ城 金剛(p3p008733)も勿論知ってはいるが、前触れなく呼ばれたその場で武器を貸し与えられ、そのまま儀式に参加とは。
『やまぶき』木南・憂(p3p008714)と『荊棘』花榮・しきみ(p3p008719)も彼と同様、豊穣生まれの鬼人種であり、神使としての初陣となる。
「リゲルと申します。よろしくお願い致します」
「今回、ご一緒させて頂くユーディットと申します。皆さん、よろしくお願いしますね」
 爽やかに敬礼を行った青年は『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)、静々としたお辞儀と共に挨拶を行った少女は『虚白の焔』ユーディット・ランデル(p3p002695)。白き稀人ふたりの姿は、穢れた場に於いて頼もしく映った。
「紙に受肉させるだなんて面白いな」
「祓い清めは、大切なものでありますし」
 だから頑張っていきたいと意気込む憂。天義育ちのリゲルの目には、豊穣にある色々なものが新鮮で興味深い。
「えーい! 訓練ならやるだけやってやるー!」
 金剛が支給されたばかりの短杖を片手に切り込んでいく。やる事自体は村で行っていたものと同じ。まずは『負けない』ようにと、守りを固め――
「あ」
 時既に遅し、敵陣に飛び込んでしまった後で気づく。しかしまだこれからだ、しっかりと深呼吸をして。大丈夫。落ち着いていけ。
「こっこここから先は通さないよぉ!」
 持ち前の打たれ強さで、どうにかその場に踏み留まった。

「姓は木南、名は憂。いざ尋常に勝負であります」
 憂も金剛同様に、優れた防御技術の持ち主である。名乗りに応じたヒトガタの打撃に耐え、その力を以って返しざまに強打を放ち、まずは一体。
「初白星……です!」
「おめっとー! 僕も負けてられな……ひぇっ掠った!」
 とは言っても金剛は、近づけばぐさりと刺さる槍衾。周りの敵は見事に掛かったという訳だ。掛かったヒトガタを盾で思い切り殴り、金剛もひとつ金星を上げた。
 そんな彼の様子に、この緊張は自分だけではないと、憂や他の新兵が知る。張り詰めていた気持ちが、少し落ち着くようだった。

「――では、私も。此れより初陣と参りませう」
 しきみの想いが焔と燃える。一度火が点いたのなら、己か相手を焼き尽くすまで――静々としたこの娘も、やはり鬼。愛持たぬヒトガタは、ひとたまりもなく灰塵と化す。
「ふふ、この身に力宿し貴女好みとなりませう――ねえ、私の愛しい貴女(ひと)」
 彼女の目は、ただひとり以外を映さない。それでも足並みは決して乱さず、ただ粛々と。

「あまり自信はありませんが……皆さんと一緒に、頑張りたいと思います」
 敵陣にじわりと広がる毒の霧が、穢れの群れを纏めて蝕む。放ったのはユーディット。霧の正体は分からずとも、底知れぬ悪意の存在は分かる。
「巻き込まれないよう、気を付けてくださいね」
 この穏やかな少女の一体何処に、ここまでの悪意が渦巻いているのか。新兵たちは畏怖を抱きつつも、弱ったヒトガタを確実に祓っていった。

 ヒトガタは絶えず生み出されるが、どれほど束でかかろうが、銀の煌めきには届かない。リゲルの放った流れ星が、戦場に白銀の尾を引き穢れを祓う。
(あの子、苦戦してるかな)
 連携も訓練のうち。光輝の白獅子は終始、仲間への気配りを欠かさない。新兵の剣士が大きなヒトガタと相対しているが、少し厄介な相手のようだ。援護せねばと、今度は黒い流星を放つ。惚けたヒトガタの動きが止まる。
「お願いします!」
 剣士は頷くと、動かぬヒトガタを思い切り両断した。

 目立って強いヒトガタが混じり、今、槍使いの新兵が深手を負った。すかさずリゲルがその盾となる。
「1人でも欠けたら、チームの戦力が大きく下がりますから。皆で戦うというののは、そういうものです。今回のように長引く中では、なおの事」
「そうですよ」
 ユーディットが死者の怨念を束ねて放ち、前線を援護する。追撃の手は緩めない。
「焦らずに。一体残らず、きっちり倒しきりましょうね」
 そう、何も残さないくらいに――柔らかに微笑む虚白の少女。底知れない白い闇は、此岸の穢れをも呑み込むようで。
 そんな中、憂が猛攻に膝を折る。
「憂君!」
「ご心配なく、リゲル様。俺は頑丈ですから」
 山吹の鬼は立ち上がりざま、手近なヒトガタへと組みついた。
「任せて!」
 金剛がすかさず援護に入り、短杖でヒトガタを祓い清める。
 命が続く限り守る。少し不器用で実直な、憂の生き方そのものだった。

「邪魔立てしないでくださる?」
 茹だる様な夏。しきみが『あの人』と出逢ったのもこの季節。彼女に纏わりつく邪霊の怨嗟を、周囲の兵も聞いただろうか。しきみ本人は意に介さず、障害物を只焼いていく。
 これでは何方が『オニ』なのか。そんな疑問を抱かれても、彼女が気に留める事はない。

「改めまして。――ご機嫌よう、ローレット。私、花榮と申します。皆さまと、目的を同一にするものですよ?」
 豊穣の地に生まれながらも、『可能性』を身に宿す者なり。

成否

成功


第1章 第10節

アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
晋 飛(p3p008588)
マジ卍やばい
ラムダ・アイリス(p3p008609)
流離人
アティ・ザン・フィニガン(p3p008703)
特異運命座標

●発進せよ!
「カムイグラ……か」
『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)の元世界と似た新天地。彼の技は、この地で果たして通用するか。
「ちょいとばっかし、試させてもらおうかァ!」
 初手から一気に、ヒトガタに向けて紅き殺意を振り下ろす。『アラン』その人として振るうこの剣は己自身をも傷つけるが、その威力は絶大。さぁ、耐えられるなら耐えてみろ。
「消しとべやァァ!」
 最後に立つのは、この俺だ――!

 派手に立ち上る砂埃の中、人の身の丈の倍ほどもある大きな影が浮かび上がる。『鋼鉄の冒険者』晋 飛(p3p008588)が操る『AG(アームドギア)』のシルエットだ。
「よっし、野郎ども、てめぇらの得意を活かせ。一緒にやんぞ」
 AGに登場する飛自身には、違法に近いブースターが搭載されている。ブースト込みで最適な軌道を瞬時に割り出し、AG腰部のユニットから榴弾に通常断、大量の弾を惜しみなく打ち出す。爆ぜる弾丸と上がる爆炎は、この時期に咲く爪紅の花を思わせた。
 最前線で先導する鉄の塊は、豊穣の地には馴染み薄いもの。しかし大きく強いという事は、種族や世界を超えて――特に男子にとっては、きわめて魅力的に映るもの。豪快にヒトガタを蹴散らす様子に、士気も自然と大きく上がる。

「戦闘は初めてですが、私は前衛ですかね?」
 起きたばかりという秘宝種の『特異運命座標』アティ・ザン・フィニガン(p3p008703)が、歴戦のマクシミリアンに教えを乞う。
「そうだね。アンタは丈夫そうだから、私と一緒に前に出て欲しい」
「承知しました」
 長く眠っていた身体を温めるよう全力で移動し、至近のヒトガタに拳闘を挑む。これだけでは倒しきれないが、この場には頼れる仲間が多く居る。
「よし、叩き込むんだ!」
 マクシミリアンが剣圧でヒトガタを吹き飛ばし、作った隙に拳と蹴りを。コンビネーションよく展開される打撃を容易くは防げない。まずは一体、されど一体。アティがヒトガタを落としきった。
「ふむふむ、面白そうだね」
『流離の旅人』ラムダ・アイリス(p3p008609)。一見『徴無』と変わらぬ見た目だが、彼女もまた秘宝種である。
 うねる軌道に蛇腹の剣。変幻自在の間合いと速度で、敵に動きを読ませない。突然、気配がふっとかき消える。
「残念。お別れだ」
 ラムダの気配が戻る。味方にも分からないほど、気配を消しての完全奇襲。伸縮自在の蛇時雨が、ヒトガタの喉を貫いていた。

 頑丈な岩のヒトガタを落とすべく、飛が駆る重装甲で体当たりを繰り出す。左半身を当て旋回しつつ、右腕の散弾による零距離射撃をぶち込めば、さしもの大岩も体勢を崩し。その勢いに乗って、新兵の拳士が鋭く斬り込む。
「そのまま勢いで、とことんやっちまおうぜ!」
 後方からの攻め立て、雨あられと注ぐ弓や術も次々と刺さり、岩のヒトガタを崩しきる。共に切り込んだ者は男子が多かったが、後衛には女子が多そうだ。
「後ろの子達も、よくやったな。女の子は後でカ……茶屋でも行こうぜ」
「あ、私美味しいお店知ってますー」
 ホウセンカが爆ぜる季節でも、過剰な火遊びには注意されたし。

 気力が枯渇したアティは、単純な打撃で生き残りを図る。柔和な印象に反して、その戦い方はだいぶ荒々しい。
「アティさん……!」
 間に合え、と。後方からプルサティラが緑色の癒しを送り、アティの気力を賦活した。
「ありがとうございます。では、引き続き。無理せずいきましょう」
「それがいいね。粘り強いのがアンタの長所だ。自分のペースで行くんだよ」
「はいっ」
 マクシミリアンの太刀に合わせて地道に打ち込み、一体ずつ焦らず確実に。眠れる秘宝種は、一歩ずつ踏み出していった。

 この場には強力な個体が多く、大鎧武者のヒトガタが被害をまき散らす。この場を一気に決めるべく、アランは一瞬限りの聖剣を抜いた。

「光になれ……!」
 右手には太陽、左手には月。その双剣より繰り出されるは、紅と蒼の十字の軌跡。二色の光の奔流が、大鎧を丸ごと呑み込み。光が収まる頃には、強固な鎧も跡形も無し。
「……ッ!」
 混沌の制約を受ける旅人の身に、この双剣はあまりに重い。それでも。
「全ッ然、大したこたァねぇなぁ!」
 立ち止まってはいられない。反動にふらつく身体に喝を入れ、敵に味方に、そして己に向けての見栄を切る。

「今日は儀式だから真っ正面。だけどまぁ、こんな真っ向勝負みたいなことは、普段はあんまりしないのだけどね?」
 アイリスの返す刃が、ヒトガタに別れの文字を刻む。技の流れや細かい工夫、やり方は色々あるという事を、己の動きを以て示した。
「そうだね~。理想は――」
 相手はおろか、傍の味方でさえ気付かずに。気付いた頃にはすべてが手遅れ。アイリスの背後に迫ったヒトガタの凶刃が、アイリスに届く事は無かった。

成否

成功

状態異常
アラン・アークライト(p3p000365)[重傷]
太陽の勇者

第1章 第11節

ヨハン=レーム(p3p001117)
Raven Destroy
ダーク=アイ(p3p001358)
おおめだま
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
シルフィナ(p3p007508)
はじまりはメイドから

●不落要塞のマーチ
「私に、戦など出来る訳が……」
「いいえ。どんな人でも戦えるように指揮するのが僕のお仕事です。安心してください」
 踏み出す勇気が無く迷っていた新兵たちを『ステンレス缶』ヨハン=レーム(p3p001117)が即席の部隊に仕立てる。
「ふむ。吾輩は闘いそのものはあまり得意では無いのだが──困っている者は捨て置けぬ故」
 ヒトの為。『おおめだま』ダーク=アイ(p3p001358)と、『はじまりはメイドから』シルフィナ(p3p007508)も支援に加わった。
「実戦の経験は、ある程度身につけてきましたが……まだまだ未熟です。皆さんと一緒に、この場を糧とする所存です」
 シルフィナがスカートの両端をつまんでお辞儀をし、目玉だけのアイは挨拶代わりに瞬く。妖のような姿形だが、その眼の奥には『アイ』がある。
「いい感じに揃ったね。じゃあ始めようか――皆、武器を構えろ!」
 栄光の指揮杖を掲げ、ヨハンが号令を放つ。号令を聞いた新兵たちの身に、不思議と力が満ちてくる。これならいける。臆病な鬼たちは、恐る恐る武器を構えた。
「カムイグラの皆さんに、鉄帝国の兵法というものを教えてあげましょう!」

「それでは……」
 ヒトガタの中には、鎧武者や獣などの姿に変わる者もある。メイドたるもの、どんな姿でも冷静に。シルフィナが先行しつつ集中を行い、白銀の刃をその手に生成。軽やかかつ、切り裂くのに最適な軌道で刃を振るい。先んじて、まずは一体。
 しかし彼女は、慢心も油断も決してしない。それらは『お仕事』の大敵であるから。

「俺らの中にゃタンク――盾役が多いが、複数居りゃあ動きは大体似通ってくる」
 妖憑、というよりそのもののような『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だが、これでいてヒトより情が深い面もある。
「つまりは……」
 聞かせるのと、やって見せるのは両方揃ってこそ。自身に聖なる守護を降ろし、敵の密集地に突っ込んでいく。敵の只中でゴリョウの存在感がますます強まっていくのを、未熟な新兵でも感じ取る事ができた。
 密集の度合いを強めるヒトガタ。次の瞬間、ゴリョウに向けて一斉に穢れを放つ。まったくの無傷とは言わないまでも、いまだ健在。
「……こうやって『敵の動きを制限して』『ダメージを引き受ける』。こうする事で……」
 ゴリョウに向かうヒトガタの一体に向け、シルフィナが霊力を伴う言の葉を放つ。ゴリョウを打った際、聖なる護りによる『棘』で傷ついていたヒトガタは、その一撃で霧散した。
「支援手や攻撃役の被弾を防いで、思い切りやって貰うのが基本の動き、って訳さ」
 そう言って、ゴリョウがニンマリと笑う。特に後方の支援手が見える彼の背は、とても大きく頼もしかった。

「凡そヒトのものとはかけ離れている故、容赦など不要か」
 アイの接近に気づかなかったヒトガタがばっさりと切り裂かれる瞬間を、新兵の術師は確かに見た。しかし、自分の真横にもアイが居る。
 どういう事か? ヒトガタを裂いたのはアイ本体ではなく、アイの影。眼前だけに気を取られていては、これを避けるのは難しかろう。
 アイの本体は、ヒトガタからその術師をかばうように立ち回る。
「吾輩に痛覚等無いのである。頑丈な存在では無いが、存分に盾として使うがよい」
 己の眼が黒いうちは、死者や怪我人は決して出すまい――と。
 大目玉のひとつ目が、ひときわ大きく見開かれる。魔眼より全霊で放つ魔砲が吹き荒れ、迫る脅威を吹き飛ばした。

「誰かが死ぬくらいであるならば、我が身を滅ぼしてみるがよい」
 尤も、滅ぼせるならの話だが。

「ほら、頑張って!」
 軽傷を負い怯んだ新兵に対して、鉄の指揮官が聖なる盾を授ける。ゴリョウの加護と似たそれは新兵を大いに護り、穢れの浸食を許さなかった。
「皆、標的はできるだけ絞って! 各個撃破を意識してください!」
 絶えず飛び交う鉄の号令。ヨハンがタクトを振るう度、鬼人たちの身体が自然と動く。それも、初陣とは思えないほどの精度で――自分の力とは思えないと、新兵のひとりがふと呟いて。
「いいや。今の金星は、確実にお前さんが挙げたモンだ」
 実力以上の力に震える新兵の背を、ゴリョウがぽんと軽く叩く。その間にも、ゴリョウが受ける攻撃は多い。
「オメェさんらがタンクになるかどうかはともかく、こういうポジションの奴が居ればこんな風に、迷うことなく壁にしてやってくれ」
 それが俺らの仕事だからと、撃たれながらも再びニンマリと笑う。やがて一瞬、ヒトガタ達の猛攻に隙間が生まれて。

「よし、今だ。やっちまえ! 俺に遠慮なんざするんじゃねぇぞ?」
 この場には今、ゴリョウを始め頼もしい盾が共に在る。臆病だった新兵たちも、今はもう恐れない。その背を先達たちに任せると、それぞれの全力で向かっていった。

成否

成功


第1章 第12節

ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
闇討人
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀の約束
小金井・正純(p3p008000)
不義を射貫く者
エメリー・アステリズム(p3p008391)
小さな煌めき
アイシャ(p3p008698)
雀の守護者

●半夏生に六ツ花ひらく
「鬼人さん達、緊張してる……わかるよ、私も同じ」
 豊穣の民同様に初戦となる『砂漠の冒険者』アイシャ(p3p008698)も、不安と緊張が隠せない。
「私もまた、ある意味新人だな」
 新しい地での実戦訓練。ラサ出身の『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)も、乗らない手はないと部隊に加わる。
「一緒に頑張りましょう。精一杯、支援させて頂きますから」
 不安な気持ちは皆同じ。だから、アイシャは笑顔で歌う。優しくも勇壮なる歌が、新兵たちを大いに勇気づけた。
「穢れを祓うのであれば、普段の仕事とさほど変わりませんね」
 これなら大丈夫そうと『星満ちて』小金井・正純(p3p008000)が銃を構える。祓うなら弓が適しそうだが、生憎と弓は修繕中。代わりに銃で穢れを射抜く。
「的は多少遠いですが……外しませんよっ!」
 銃も『射抜くもの』であり、弓を用いるのとほぼ同じこと。優れた視力で標的を見据え、精神を落ち着けてトリガーを引く。見事、銃弾はヒトガタの中心を射抜き、穢れは塵と祓われた。
「なるほどな……塵も積もれば山となる」
 見習いであっても騎士は騎士。騎士たるもの、常に高貴であれ。『小さな煌めき』エメリー・アステリズム(p3p008391)がその信念を護りと変えて、威勢よく名乗りを上げる。
「私はエメリー・アステリズム! 掃除に来たぜ!」
 声に釣られたヒトガタの群れがざわざわとエメリーへ向かい始め、本格的なぶつかり合いが始まる。

「悪いが前衛は任せるぞ」
 頷く新兵。前を張った新兵の後ろから、ラダも愛用の巨大なライフルを構える。安全装置を外した――と思った次の瞬間。
 通り雨? 否、ラダが放った鋼の驟雨だ。広範囲かつ大量に放たれた弾丸はそれでも、ヒトガタの群れのみを的確に射抜く。大量の紙屑が舞い踊る。

「散らばった埃は定期的に集めて捨てよ、という事でござるな。新天地でも、勝手はそこまで変わらぬか」
 先達として手本にならねば。先んじた猛攻の中、『闇討人』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)はつとめて慎重に、囲まれぬように距離を取る。
「気は抜かずに参ろう」
 幻術の鴉が群れと舞い、嵐のようにヒトガタに群がる。鴉の姿が消える頃には、穢れは幽谷へと祓われていた。

「僕みたいにか弱い乙女は一撃の火力が低いッス! そういうときは……」
『黒犬短刃』鹿ノ子(p3p007279)が振るうは、かの魔剣『黒犬』の小型なレプリカで

「――雪の型『雪上断火』!」

 その一撃は、本人の言葉通りふわりと軽いが。
「もう一発!」
 同じ個所を斬りつけ。更に重ねて。
「まだまだ! 続くッスよ!」
 しんしんと降りやまぬ雪は、やがて灯火をも穿つ。ヒトガタは力を失い宙を舞い、新兵の手で刈り取られた。

「! 左から来るぞ!」
 横から打たれそうな新兵に気づき、ラダが注意を飛ばす。声掛けはごく基本的な事だが、こういった積み重ねは後々の状況を大きく左右する。
 素早く弾を詰め替えて、新兵に迫るヒトガタのみを狙い撃つ。上がる爆風。燃えるヒトガタ。
 耳の良い者の中には、聞こえた者も居るだろうか。普通の者には聞こえない、音なき音が辺りに響く。ヒトガタには響いたようで、奇妙に身体を震わせやがて動かなくなる。
「……ありがとうございます。助かりました」
「お互い様だ。君達が居なければ、私は碌に撃てないからな」
 そして――撃てさえすれば、殲滅できる。新兵に迫ったケガレの群れは、そのほぼ全てが灰となった。

 その一方。不思議な音の中、咲耶がそれ以外の音を正確に聞き分ける。別方向にも、包囲を受けそうな新兵が居る。援護にと幻の鴉を飛ばしてヒトガタに当てつつ、するりとその至近へ至り――
「暇など与えぬ」
 紅牙流の暗殺術で、確実にその息の音を止めた。
「さてお主、まだ戦えるでござるか?」
 強力な個体が在ったのか、新兵は浅くない傷を負っている。
「厳しいのならば一度引くが良い。まずは生き延びる事が大事ゆえ。引く事もまた重要でござるよ」
「……すみません」
 一礼し、後列へと下がる新兵。彼を狙わんとしたヒトガタは、直ちにラダが撃ち落とした。
「今後、君達と共闘することもまたあるだろうからな。今はしっかり傷を癒してくれ」
「後は任せるッスー!」
 鹿ノ子が飛び出し刀を振るう。気が遠くなるほど打ち込んできたが、彼女自身はまだまだ元気だ。
「こうやって、じりじり追い詰めて、動く気力を失ったところに!」
 重ねてもう一打。それ自体の殺傷力はあまり無い。しかし、幾度となく斬られたヒトガタは徐々にその力を失い――やがて、気の喪失が致命打となり崩れ落ちた。
「僕みたいにか弱い乙女は、こういう変則的なことをして勝利を掴むッス!」
 大事な事は、この剣のように重ねて言うべし。これもまた、大事な学びである。

 流れる血が止まらない。後方の新兵が震えるところに、そっと暖かい手が重ねられる。
「大丈夫ですよ。お傍に居りますから」
 アイシャの手だ。流れ込む魔力が、傷を塞いでいく。そして、癒えた身体の傷よりも――心が温かい。
 その笑顔はとても愛らしくあたたかいのに、何故か少し物悲しい。それは豊穣の夏に咲く、鮮やかで少し悲しい橙の花を思わせた。

『もう、調子に乗って怪我しないでよ、ルビア!』
 多くのヒトガタを引き受ける『エメリー』には小さな傷が絶えず、もうひとりの彼女、サフィアが裡より叱責を飛ばす。
「わーってるよ!」
 サフィアの忠告もどこ吹く風か。半ば刺し違えの形で思い切りヒトガタを打ってその動きを止めると、敵の密集する場が出来る。
「――来ましたね!」
 ドカンと大きな音を立て、清め給えと正純の魔砲。ヒトガタの群れは跡形も無く、その場自体にも清浄が戻る。
「んー! スカッとします!」
 戦巫女や戦の神事も珍しくはないが、それにしては少々派手か。
「し、仕事ですからノーカン、ノーカンですよね!」
 相手は穢れ。神様もご納得の事とは思うが、直接の回答は特に無かった。

 少しずつ、少しずつ。アイシャを中心として、後衛の支援手たちが機能を強める。プルサティラも同じ場で治療や支援に当たっており、ずっと見ていたアイシャが問う。
「あの。プルサティラさんが、皆さんを守る為に心掛けている事はありますか……?」
「心がけ、ですか? ……あまり、あまり深く考えた事はないのですが」
 少し逡巡する間にも、アイシャは治療の手を休めず。その様子を見て、プルサティラの中に答えが浮かぶ。
「恐らく、ですが。志は、あなたとほぼ同じだと思いますよ」
 人の気持ちに寄り添って、護りたい。あの日心と命を命を救われたから、私も救いたいのだと。
(それでも……あなた程には、出来そうにありませんが)
 誰かの心を護る度、その心もまた痛むのだ。アイシャの徹底的な自己犠牲を見て、プルサティラはその身を案じた。

成否

成功


第1章 第13節

シルキィ(p3p008115)
la mano di Dio
わんこ(p3p008288)
シャウト&クラッシュ
八寒 嗢鉢羅(p3p008747)
笑う青鬼
鐵 祈乃(p3p008762)
穢奈

●前のめり攻撃班
「『夏生の祓』かァ。なるほどな。修行としちゃあうってつけだ」
 北の寒村で育った『笑う青鬼』八寒 嗢鉢羅(p3p008747)も、神使に選ばれた者のひとり。村の期待を一身に背負い、此度の儀に挑む。
「良くないものを降ろして倒し、浄化する……だっけ。何だか不思議だけど、面白い儀式だねぇ」
「あたしは仕組みはしらんけん。それはそれとして、祓うって普通に戦えば良かとね? 難しかことならできんよ?」
『la mano di Dio』シルキィ(p3p008115)にとっては新しい概念、『穢奈』鐵 祈乃(p3p008762)にとってはよく分からない習慣。しかし、やる事自体は決して複雑でない。
「つまり……今日は殴り放題という訳デスネ!!」
『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)にとっては、趣味と実益をバッチリ兼ねた催し物だ。この機に身体を極限まで酷使してみたいと、ぶんぶん腕振りやる気は満々。
「因みにわんこはバッチバチの至近前衛、支援を知らぬ純アタッカーデス」
「俺もそうだな。こう見えて農村の出で、戦なんてのはからっきしでよ……」
 わんこと共に進み出る嗢鉢羅。喧嘩はともかく、槍もまともに振るえた試しが無い。そう言って豪快に笑う。
「でしたら護るより、とにかく攻めまくるのが良さそうですカネ?」
「そっちのが性には合うな。……それじゃあいっちょ、お祓いと行きますか!」
「了解デス! パーッといきまショウ!」
 我先にと飛び出したわんこが、手近なヒトガタを起点として大いに暴れ、纏めてぶん殴る。ひと足早い野分の襲来。わんこの生み出す暴風域に、嗢鉢羅も負けじと飛び込んでいく。
「オラァ! 多段牽制! 多段牽制! 多段牽制ィーッ!」
 祝いに貰った十文字槍で滅多打ち。霊験あらたかなこの槍は、闇雲に繰り出すだけでも相手を怯ませる。
「さぁどんとこい人形ども! 八寒の鬼、嗢鉢羅様が相手してやらぁ!」
 増援は次々沸いてくるが、氷の鬼は怯まない。別の場所で戦う幼馴染や、村の爺さんに胸張る為に。

「それじゃ、わたしも頑張って行くよぉ」
 嵐に巻き込まれないように。敵との距離を程よく取って、長く連なる雷を放つ。雷撃は蛇のようにうねり渦巻き、大量のヒトガタのみを巻き込む。
「あたし達には当たらん雷かぁ。おヘソも取られんで、良かとねぇ」
 雷が通り過ぎた後、落としきれなかったヒトガタに祈乃が迫り、拳の一撃で落としきった。

 おかわり求めて、わんこは次の標的へ。今度の的とはやや距離がある。
「そんな時は、わんこフィンガーを喰らうデス!!」
 指でっぽうで相手を差せば、飛び出すエネルギー弾が相手を崩す。遠近両方でぶん殴る、わんこ驚異のメカニズムだ。
「そこだッ!」
 体勢を崩したヒトガタに、嗢鉢羅の十文字槍が迫る。
「突きッ! 突きッ! 突きィィーーッ!」
 ヒトガタの反撃に怯むことなく、どんどん前に出ては槍を突き出す。
「こうか!? 槍ってのはこう使いやいいのか!? 薙いだりしていいのか!?」
「突いても凪いでも! ぶっ飛ばせれば、どっちでもいいと思いマス!」
「うーしっ! オラオラァーッ!!」
 ふたつの暴風はなお勢いを増す。

「まだまだいくよぉ」
 嵐に雷。シルキィの電撃も絶えず戦場を駆け巡る。あれだけ撃ってもまだ撃てるのかと、鬼人たちが息を呑む。
「遠慮いらないよね。どんどん撃っちゃうよぉ!」
 豊富な精神力を弾丸と代え、今度は一体のヒトガタへ放つ。シルキィの精神力に圧し負けたヒトガタは、その動きを曇らせる。
「ほい。これでおしまいっと」
 そこに打ち込まれる拳と脚のコンビネーション、祈乃による連続攻撃。軽やかに繰り出される拳と蹴りは、丁度良い力加減でヒトガタを崩しきった。
「これ、ちょうど良い訓練にもなるばい。あんまり戦闘なんてしよらんかったけん、ちょっと自信がなかったんばい」
 祈乃の堅実な戦いぶりは、最前線で暴れるわんこや嗢鉢羅をフォローする形となって手堅く前線を支えている。
「皆と動きば合わせる練習にもなるね。さぁ、頑張るよ」
 祈乃の動きを見て、新兵たちもそれに続く。持ち味は人それぞれだが、どの戦い方も素晴らしい。新兵たちはまた多くを学んだ。

成否

成功


第1章 第14節

赤羽・大地(p3p004151)
D1
フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)
支える者
矢萩 美咲(p3p008713)
豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)
鬼子母神
鈴鳴 詩音(p3p008729)
特異運命座標
武者小路 近衛(p3p008741)
一期一振

●稀人と鬼の響宴
「いれぎゅらぁずの新兵として、そして誉れ高き武者小路家の者として、良い戦働きが出来るよう務めなければ……」
 安全だからあまり気張らず、と。連戦で少し慣れた新兵が『守り刀』武者小路 近衛(p3p008741)にやんわりと言ったところ。
「喝っっっっっっ!!!!」
 大音量の返しを喰らう。肩をすくめる新兵に、近衛はまだまだとまくし立てる。
「武士は常在戦場!! 訓練であっても真正の戦場と変わらぬ腹積りで励まねばなんの意味があるでござるか!!!!」
「まあまあ、近衛。無理はないが、張り詰めすぎが良くないのも本当だぞ」
『双色クリムゾン』赤羽・大地(p3p004151)も混沌に来るまで戦った事など無く、路頭に迷う日もあった。そんな日もあったと思い出しながら。
『……まァ、ここは一ツ、お手本になってやるかネ?』

「念願の『夏生の祓』っ!」
「懐かしいわねぇ~。私も若い頃、よく訓練で使っていたモノだわ」
 菓子処の看板娘にして正義の女侍、矢萩 美咲(p3p008713)の初陣を『鬼子母神』豪徳寺・美鬼帝(p3p008725)が温かいまなざしで見る。山の如き巨躯、貪欲を表す赤の肌。まさに『鬼』といった容貌のミキティこと美鬼帝だが、慈愛に満ちたまなざしは母親そのもの。
「今までお義母様から「まだ早い」と言われてて……今回、特異……えーと何だっけ? になって、やっと許可をもらったんだ」
「そうなのねぇ。焦っちゃだめよ? ……でも大丈夫、私がついてるから。一緒に成長していきましょうね」
「うん! 皆もよろしくな! 頑張ろう!」
 美咲はニカッと笑い、腕を振り上げ。

「えいえいおー!」
「……ぉ……」

 美咲や新兵たちと共に小さく腕を上げた『特異運命座標』鈴鳴 詩音(p3p008729)だが、声を出すのはやはり苦手で、上手く合わせられない。
(うぅぅ……でも……)
 少しでも変わりたい、そう思ってこの場に来たのだ。しっかりやらねば。

「穢れ祓い、ですか。微力を尽くさせて頂きましょう」
『支える者』フィーネ・ヴィユノーク・シュネーブラウ(p3p006734)が真っ先にと己の生命力を削り、他の仲間を大いに支える。
「お恥ずかしい話、私にはほぼ、戦う力はありませんから……そういう意味では、あなた達と同じです」
 そうは言うものの、迷いなく自らを差し出す彼女に新兵達はやや戸惑い、大丈夫かと声をかける。
「大丈夫です。……喪いたくは、ありませんから」
「そうよね~。しっかり護りましょ!」
 美鬼帝自身を含め、豊穣に生まれた鬼人の多くが一度は通る道。続く子らよ、どうか健やかに。祈りを込めて、その精神をを研ぎ澄ます。
『よぉく見ておけヨ、この『赤羽』の魔術ヲ』
『赤羽』の神気、激しく瞬く聖なる光がヒトガタの群れを大いに清め。新兵たちの初舞台の火蓋が、斬って落とされた。

「やあやあ! あたいこそは矢萩美咲! 今は無名なれど、いつか最強になる女だ! 我こそはというものは掛ってくるがいい!」
「武者小路家長女、武者小路 近衛(さむらいろーど がーでぃあん)、推して参るでござる!!!!」
 美咲と近衛が元気いっぱいに、全力で駆け抜け、
「全身全霊!!」
「一刀入魂!!!」
 力を乗せての一刀両断。まだ新兵の域とはいえ、鬼の剛力はさしたるもの。しかし、特に近衛の方は、最初からやや飛ばし過ぎの気がある。気を配っておこうと、後ろで支えるフィーネは思った。

 敵は四方八方から迫り、容易には防ぎきれない。怨念が詩音に迫り、美鬼帝が身を挺して詩音を庇った。
「……、……!」
 庇って貰ったのに、お礼も上手く言えないなんて。喉を震わせる詩音に、美鬼帝は問題ないわと微笑んで見せる。
(あぁ……そうだよね、訓練だもんね。ほかの人達と連携して倒さないといけないんだよね……)
 詩音は今日も自己嫌悪。その一方、美鬼帝が庇い切れなかった新兵がヒトガタの攻撃を受けてしまう。
「――あ?」
 美鬼帝のこめかみがピクリと動く。
「可愛い子達に何すんのよ! この紙屑風情が!」
 新兵を傷つけたヒトガタの元へ真っ直ぐ行って、鬼の剛腕でぶん殴る。
「覚悟できてるじゃろな! ……くぉら!」
 お仕置きにと、もう一発。可愛い子のため『鬼』となる。オトコだって母性は持てるし、母親にだってなれるのだ。

 やがて混戦となり、一方的に殴られ続ける詩音だが。
「――……!」
 痛打を受けたところで、詩音の目つきが急変する。素早い剛撃でヒトガタを押し込み、今までの様子からは予想できないほどの素早いステップでそれを追い。鮮やかに――高らかに笑いながら何度も斬りつけ、穢れを紙屑と変えていった。

 大地が放つ、色鮮やかなアネモネの花。一抹の希望を灯しながらも、花の命は短く。儚く枯れ行く花と共に、ヒトガタも力を失っていった。
『ほラ、ぼさっとしてんじゃねぇヨ! お前らもシャキシャキ動きナ!』
 惑っていた新兵の槍使いに『赤羽』が激を飛ばし、気を取り直した新兵が弱ったヒトガタを串刺しにする。
「……お前もイキってる場合じゃないだろ」
 大地の身体は首の皮一枚。気を抜けば真っ先に落ちるのは己だと、「消えたくない」と言う片割れを窘めた。
 その至近、ゆらりと現れるヒトガタ。言わんこっちゃないと思った瞬間、美咲が放つ弓矢が飛来、襲い来るヒトガタを見事射抜いた。
「遠近両方、死角なし! まさにあたいってば最強ね!」
 と、誇らしげに無い胸を張る美咲だった。

(つ、疲れたでござる!!)
 序盤に力を出し過ぎたのか、近衛の腕はふにゃふにゃとして力が入らない。
「今、私にできる事を……!」
 フィーネが近衛の精神に寄り添う。あなたの痛みを、私の痛みへ。精一杯の献身が、近衛の気力を呼び覚ます。
「――あ!」
 フィーネの献身と、腕を痛めたのが功を奏したか。折れるよりは曲がれと。近衛の身体から、自然と力が抜けて。
「こうやって斬ればいいんでござるね!!」
 柳のように、情念に燃える刃を振るう。全力で振りかぶらずとも、そこまで威力は落ちないらしい。経験を以てそれを学んだ。

「あははははは……!」
 詩音の方は相変わらずで、只の棒切れでヒトガタを叩き続けている。
 大丈夫、喪わせない。身を削るフィーネの献身は、戦線を強固に支え続ける。
(そうしていつか、『お姉様』の隣に立って――いえ、今は関係のない事ですか)
 強くなれるのは、護りたいものがあるからこそ。彼女と並び立つに相応しい者でありたいと。外の世界を知った少女は、強く願うのだった。

成否

成功


第1章 第15節

氷室 沙月(p3p006113)
オールレンジ委員長
鉢特摩(p3p008715)
地獄小僧
隠岐奈 朝顔(p3p008750)
夜明け前
日向寺 三毒(p3p008777)
瞑目の墓守

●鬼人たちの目醒めと門出
「初めての依頼、初めての戦闘……」
 安全な訓練とはいえ少し不安と『特異運命座標』隠岐奈 朝顔(p3p008750)が所在無げに辺りをきょろきょろと見渡す。傍らのマクシミリアンと目が合う。彼女は頼りになりそうだ。
「と、取り敢えずこう、全力で殴れば何とかなるんだよね?」
「そんな感じだね。アンタの持ち味を大事に、あまり気負わずやるんだよ」
 朝顔の手には勇者王の剣。その威力を早く試したいとの意気込みを語る。
「ほう。未来の勇者様って訳かい?」
 明るく意気込む朝顔を、異界の剣聖は微笑ましくも危なっかしく思った。

「ドーモ、ハドマでごぜェます。カムイグラの辺境出身の田舎モンでごぜェます。ろぉれっとの先輩方、どうかご指導の程を……」
「あァ……よろしくな。俺は三毒。俺もこの地の生まれだが」
「さ、沙月です。これでも剣には自信はあります……頑張ります……!」
『地獄小僧』鉢特摩(p3p008715)が行った一礼に、日向寺 三毒(p3p008777)と『元々は普通の女の子』氷室 沙月(p3p006113)も一礼を返す。
(イレギュラーズっつったか。種族に偏見はねェらしいが、何も怖がらんワケでもあるまい)
 鬼の新兵以外には、沙月とマクシミリアンを始め海向こうからの稀人も居る。
 目も口も噤んだままの三毒だが、そんな彼でも場に馴染む。鬼人や稀人の背景は十人十色、様々な事情や出自の持ち主ばかりが故に。
「ところで姐さん、その刀は? ……なんか凄そうですが……」
「えっと……はい! よくわからないけど、なんかすごい妖刀です」
 鉢特摩の問いに対する沙月の答えは曖昧だったが、ある冒険者より譲り受けたという事実と、手にした際に古武者の記憶がよぎる事以外の一切が分からず『なんかすごい』としか答えようがないのだ。
 その妖刀を以って、素早く踏み込み一刀両断。剣道を習っていてよかったと、沙月は今心から思う。元の世界に戻れぬ以上、覚悟を決めなければならないのだから。

「将来はもっとこう、頑丈になって盾役でも出来りゃアいいんですが……」
 初めて目で見て、初めて挑む夏の儀式。鉢特摩が今出来る事といえば、前に出て単純に殴って蹴ること。鬼の膂力で真っ直ぐ打ち込むが、対する相手はかなり頑健。鉢特摩の目指すところにも重なるようで。
「ここはひとつ、喧嘩とは違う本物の戦い方ってやつを学びましょうかねェ」
 千里の道も一歩から。まずはこれを乗り越えてやろうと、拳を思い切り振るった。

 背水の構えで攻撃一辺倒の朝顔が、いつの間にかヒトガタに囲まれてしまう。そんな彼女を助けるべく、沙月がヒトガタの背後から近づき活路を斬り開く。闇討ちは卑怯かも知れないが、ショーではないので勝てば良い。
「ありがとう!」
 協力者が居るのは有難いこと。朝顔は本心からそう思う。
(でも、私は死ぬ時を決めてるから、下手に知り合いを増やしたら……)
 今はその時でない。震える影は、笑顔の仮面にそっと隠して。

(オマエらがこの理不尽な今を変えられるモンなのか、お手並拝見といこうじゃねェか)
 そして『戦闘』の経験の無い己自身にも、何処までの事が出来るのだろう。三毒が繰り出す拳の手ごたえは――まずは上々。盾で思い切り叩いて仕留める。近くで戦う鉢特摩も今、組み合った相手を仕留めたようだ。

 沙月に武者型のヒトガタが迫る。その姿は、何者かの過去を強烈に想起させて。妖刀からイメージが流れ込む。
 まずは柄で突き、刃で斬り下ろし、相手を斬り裂きながら斬り抜ける――イメージ通りに、流れるような多段の刃を繰り出して。
「――切り捨て御免! です!」
 この刀に宿る何かと、使い手の沙月の方が数枚上手だったようだ。

 後方にも気を配っていた三毒が、狙われた鬼の術士に代わりヒトガタの打撃を受け流す。長期戦を意識した立ち回りは新兵たちを大いに助け、これまでの経験も活きている。
(まァなんだ、紙っぺらが相手ならやりやすくていいわな)
 変わらず口は噤んだままで、更に迫るヒトガタを強烈な反撃で吹き飛ばす。
 こんな風に。長いこと閉じた豊穣の地にも、新しい風が吹けばいい。三毒と鉢特摩はふと、同じような事を考えた。

(……早く……強くならなくちゃ……!)
 その時が来たら、確実にその場所に行けるようにと強く願って。朝顔は、生き急ぐように剣を振るう。

 確実に穢れが祓われていく中。それぞれの思いを秘めて、可能性の子らは旅立っていく。

成否

成功


第1章 第16節

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
アシェン・ディチェット(p3p008621)
玩具の輪舞
鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)
血死一殺

●ひかりも影も
「こちらの指を押し込めば弾が出るのね?」
 前触れなく轟く銃声。『草刈りマスター』アシェン・ディチェット(p3p008621)が意図せず放った弾丸は、幸いにも新兵を素通りしヒトガタに着弾した。
「前にいる方々に当たらないように、けれどヒトガタには当たるように……」
 仕事の流れと銃火器の使い方を学びたい、と参加したアシェンだが、実際にやってみるとやはり難しい。
 新兵の中にも砲兵は居り、新兵なりに使いこなす姿に少女人形は尊敬を覚える。
「……私も頑張らなくてはね」

「ええ、ええ。私も最近に特異運命座標として召喚された身、言い換えれば新人ですね! 皆さん、共に頑張りまし」
 咄嗟に下を向いてえづき、血を吐く『特異運命座標』鏖ヶ塚 孤屠(p3p008743)。その様子を見て、新兵の癒し手が慌てて駆け寄る。
「ちょっ!?」
「……ああ、これですか? ただの呪いなのでご心ぱ」
 その最中にも再びの喀血。大丈夫かと周囲を不安にさせるが、本人は文字通り血濡れの顔で笑って見せる。いたって元気だ。曰く、特異運命座標に選ばれた後、身体が少し楽になったとも。
 久しぶりの戦いとなる『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)も、意気揚々と新兵の列に混ざって儀式に挑むが、その心の裡はやはり不安で――それでも。

『もっと勇気を』
 ――そう望んだのは自分自身。だから今日も、風になって唄うんだ!

 サンティールと新兵が前衛を張り、ヒトガタの群れへと立ち向かう。高めた魔力を三日月の曲刀に纏わせ、一閃。サンティールの初撃は、まず一体のヒトガタを仕留めた。

 世界が騒がしくとも、己は流されず淡々と。『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は集団戦での在り方を模索する。
 自身の命を媒介に相手から「冷静さ」を奪い、怒りに溺れたヒトガタの群れを、じっくりと引き付けて攻撃の導線を形作る。
 その際は、自己修復も忘れずに。己の損耗具合を見極めなければ、この役割は果たせない。博打よりも堅実を。前回の反省を踏まえ、より慎重に立ち回る。
 それと同時、ヒトガタ達の構成を見極める。どれだけの打撃をどれほど受けるか。傷ついてから出る己の力との兼ね合いを、慎重に計算する。計算通りにいかない分は、データを集めてより正確に。
 火力を担う後衛射手を撃たれるのは拙い。射撃手段を持つ個体に注視し、積極的に引き受けていく。
 決死の盾を持ってしても、一度に守れるのは二人まで。どのタイミングで誰を護る? 半ば事務的に弾き出していくが、護りたい気持ちあっての事だ。あまり物言わぬ黒子だが、新兵たちにも充分すぎるほど伝わった。

「しまった、囲まれた……!」
 一体ずつ落としていた弧屠だが、ヒトガタの増加に追い付かずに包囲を許してしまう。
「こうなったら……」
 血を吐きながらも槍を振り回し、嵐の如くヒトガタを薙ぎ払う。吐いた血が赤い煙へと変じて拡散し、周囲はまさに血戦の様相となる。

「──さぁご覧あれ、鏖ヶ塚流」

 元より無き命なれば、潰えたとて同じこと。この槍を一度繰り出したなら、ただ一切を穿つのみ。障子紙のように易々と、ヒトガタをその字面通り破っていった。

(まずは焦らず、きちんと狙って……)
 実践の中で経験を積み上げていくアシェン。大技もあるけれど、充分慣れてから慎重に。そして今ぞと狙いを定め、彼女のとっておきを放つ。その弾丸は長い距離を貫通し、一直線に敵を縫い止めた。
「……それにしても、使い過ぎると、耳が痛くなってしまいそうね?」
 耳が良すぎるのも考えものか。素敵な音に出来ないかしら、後で考えてみましょうか――

「――天雷よ、集いて奔れ!」
 サンティールがヒトガタ向けて蒼く閃く光を放ち、新兵たちを援護する。
 今回が初陣の仲間は決して少なくなく、初めての脅威に震える者も居る。そういう時、自分に何が出来るだろう? 仲間想いの小さな雲雀は、精一杯に考えて――

「僕も怖いよ、でも大丈夫。きみはひとりじゃないよ。ほら」
 こんなにも、なかまがいるよ!
 たとえ空元気でも、精一杯笑って呼びかけよう――

「……!」
 怯えていた新兵が、その声に再び前を向いた。呼びかけた彼女自身にも、共鳴するかのように不思議と勇気が湧いてくる。誰かを元気づける事で、自分も元気づけられるのだ。

「よっし、みんながんばろ! おー!」
「おー!!」
 サンティールと共に、新兵たちも元気いっぱいに駆け出した。

成否

成功


第1章 第17節

●末ながく、幸え給えと
「――これで、最後っ!」
 開始直後にに比べて、新兵たちの動きが格段に良くなっている。百聞は一見に如かず、混沌に名だたるローレットの戦いぶりを目に焼き付け共に戦ううちに、知らず成長を遂げたようだ。
 最後の一体を落としきるのと同時。鳴り止んだ巫女の鈴音が、儀式の終わりを告げて。此岸は再び、しんとした静寂に包まれた。

「ローレットの皆さんもカムイグラの皆さんも、本当にお疲れ様でした! 大量の穢れも、すっかり綺麗になったそうです!」
 よく頑張った、と。外す事も多かったが、ここぞという所で大いに参加者を助けたアンネリーゼの傍らで、後輩を導いてきたマクシミリアンが思案する。
(この辺のケガレは無くなったみたいだが。あの子の言う通り、どうにも嫌な予感がするね……)
 多くの混沌の民にとって、カムイグラは未知の領域。いまだ見知らぬ土地や風習、秘められた脅威も当然多いだろうが、予感はあくまで予感でしかない。何より、彼らには『可能性』がある。
「アンタ達なら、しっかりやっていけるさ。……きっと、ね」

 新天地での物語は、まだ始まったばかり。誰一人失わぬよう願いを込めて、歴戦の剣聖は激励の言葉を送った。

PAGETOPPAGEBOTTOM