PandoraPartyProject

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時間という損耗

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 混沌の――ひいては外世界も含めた全ての世界の命運をかけた戦いは初動より壮絶を極めていた。
 人類圏が辛うじて統合した意志は彼等に持ち得る最高の戦力を集結させている。
 最精鋭部隊に運命を捻じ伏せ従える可能性の獣達(イレギュラーズ)を加えた乾坤一擲の進軍は影の領域に食い込み、ジリジリと魔種の軍勢を圧迫していた。
 しかし、足りない。
「こいつァ、いい展開とは言えんな」
 バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が言う。
「幾らでも敵が居るのは――」
「――或る意味で、愉しめる話だけれど」
 イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が、白薊 小夜(p3p006668)が言う。
「――さっきからあんまり進んでなくない!?」
 目の前の敵を一発殴り倒し、叫んだ炎堂 焔(p3p004727)の言う通り!
『人類圏の総攻撃は乾坤一擲のものである』。
 つまり、この後に大きな増援の目は見込まれていない。
 翻って魔種陣営はと言えば。
「うむむ! 実に面妖奇怪な!」
「……まぁ、ラストステージだし。この位はやってくるとは思ってたけどね」
 刀を、全身の膂力の渾身を振るう一条 夢心地(p3p008344)Я・E・D(p3p009532)の視界の中で先程倒した筈の敵が理不尽な再生を見せていた。
 無論即座ではないのだが敵の軍勢は復元する。後の無い人類軍が振り絞った進軍を嘲るように彼等は何度でもその目の前に立ち塞がる。
 ……単純な力のぶつかり合いならば、押してはいる。
 押してはいるが、焔の言は正確で『その割には進めていない』。
「まずいですね、ハッキリ言って」
「……こんな所でモタモタしている時間は無いのに!」
 その致命的な事実はトール=アシェンプテル(p3p010816)レイリー=シュタイン(p3p007270)のみならぬ、誰もの共通認識だ。
 この戦いにおいて、時間というリソースが魔種側にしか与しない。
 一方的にして理不尽な前提は『魔王座(Case-D)が顕現する前に』それを阻止する事をイレギュラーズに求めている。
 つまる所、『神託』が実現してからでは全ての戦いが無駄になるという事だ。
 それが成った後、引き返せない領域に届いた後に原罪(イノリ)や黒聖女(マリアベル)を降しても意味はない。
「元から不利だってのに全く――無茶苦茶要求しやがるぜ……!」
「ま、そういう難儀な仕事だったろ。何時も、何時だって」
 カイト(p3p007128)が動きを封じた敵をエレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)の一撃が打ち砕いた。
 ……不可能状況があったとして、ならばどうするかという切り替えの早さは彼等が潜り抜けてきた修羅場の重さを何よりも示している。
「どうかしっかり!」
 フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)の挫けぬ笑顔が幾度と無く仲間達を励ました。
 事これに到っても当然のように諦める者は無く、愚直な進撃が勢いを減じていないのだから筋金入りだ。
 しかし。『ずっと』それでも――やはり負けだ。
「そろそろ、頃合だのう」
 全軍の将帥たるザーバは各所で展開される猛烈な戦闘をそう評価していた。
 イレギュラーズを戴く人類軍はその奮戦で魔種軍勢の陣形を、迎え撃つ防御をかなり攪拌している。
 乱戦は言い換えれば綻びの産まれであり、それは雑兵の多い魔種陣営にとっての明確な弱味であった。
 ザーバだけではなくレオパルザーズウォルカアベルト・フィッツバルディイーリン・ジョーンズ(p3p000854)等、優秀な指揮官を持ち、イレギュラーズはじめ明確な意思を以って戦う人類軍に比して魔種陣営の有り様は隙が多い。総戦力では五分より悪く、相手に復元能力まであるとなれば人類軍がやがて黄昏を迎えるのは確実な事実だが、この決戦の短い時間だけを切り取るならば一瞬の長が彼等にないとは言い切れない。
 更に言えば、先程の『爆発』。
「行くわよ、ルル家!」
「ええ、ええ! 拙者は初めからドラマ殿達を信じておりましたとも!」
 リア・クォーツ(p3p004937)の言葉に快活に応えた夢見 ルル家(p3p000016)が腕をぶす。
 影の領域の現在において『戦闘』が起き得るシチュエーションは多くない。
 人類軍は『この』ワーム・ホールを進撃路とし、進撃にパンドラの加護が必要だった以上は別路はない。
 即ち、この進撃路の近辺で別の戦闘が起きているとするならばそれは、先にこのルートを踏破したドラマ・ゲツク(p3p000172)華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が『何か』したという可能性を考えるのが一番早い。
「そろそろお迎えの時間でせうか」
 ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)が珍しく皮肉もなく幽かに笑った。
 どうしようもないお姫様もいい加減目が覚めた頃だろう。物語は、もう佳境なのだから!
「よぅし……」
 故にザーバは総合的に状況を『好機』と見た。否。塊鬼将は誤らない。『ここしかなかった』。
「目標は影の城だ! これより精鋭部隊を切り離し、『神託』阻止の作戦を発動する!
 ……まあ、残る連中は更にキツイが勘弁しろよ。俺も勿論、この場に残るのでなあ!」
 人類軍の攻略目標が影の城である以上、遅かれ早かれの決断であった。
「ええ、ええ。まだまだおかわりもいけますからね」
「そうだね。気分も上がって来た所だよ!」
 ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が嘯き、セララ(p3p000273)が何時も通りの堪えない笑顔を見せる。
「《パン屋》、零・K・メルヴィル!全身全霊で行かせてもらう!」
「ここまで来りゃあ――出し惜しみはナシだ!」
 零・K・メルヴィル(p3p000277)が、日向 葵(p3p000366)が声に一層勢いを増していく。
 元よりの不利を飲み込んで死地を更に死地に変え、信じる仲間をより濃密な死地へと送り込む。
 決して嬉しい事実ではないのだが――
「うおおおおおおおおお――ッ!」
 獣のように咆哮した郷田 貴道(p3p000401)の拳が魔種の腹に大穴を開けた。
 この戦いが誰にとっても最後のものならば、最早是非もなし。
「行くか、アレクシア」
「……うん。後ろは任せて」
 シラス(p3p004421)にとっても、アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)にとっても、
「一体一体狙ってる暇も無いし、簡単過ぎるけど。
 それでも『当たる』ってのはスナイパー的には悪い気分じゃないよね」
 運命をスコープを覗き込むジェック・アーロン(p3p004755)にとっても、
「退けねえ理由が――あるんだよッ!」
 喉も枯れよと裂帛の気合を吐き出したルカ・ガンビーノ(p3p007268)にとっても!
 退けない戦いの総ゆるコストは妥当なものと肯定されよう。
「サクラちゃん!」
「……っ!?」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)の警告の声にサクラ(p3p005004)が振り向く。
「だ、大丈夫!?」
「……うん、これでも結構頑丈なんだ。
 ヒーラーだって前に出れなきゃ、こんな場所じゃ戦えないからね」
 自分を庇ったスティアを今度はサクラの刀がフォローした。
「それにしてもやっぱりお兄様達は……!」
 少しの恨み節を思わず漏らした彼女に声が応える。
 ――これが終わったら許してくれよ?
 影が降り、同時に周囲の獣達が撃滅される。
『風の暗殺者』の異名を持つフウガ・ロウライトはサクラの実兄だ。
 少し前の事件で溺愛する妹に(暫く)絶交されていた経緯はあるが……
「……今回頑張ったら、少しだけ考えてあげる」
 サクラのその言葉は今、参戦した彼にとってはかなりの『励み』になったに違いない!

 ※最終決戦が進行中です!
 ※影の領域の戦闘でパンドラが30000消費されました。
 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
 ※Bad end 8首魁と見られるマリアベルとの戦いの報告が上がっています……!
 ※世界各国にて発生した戦いの、結果報告があがっています……!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(終焉編)

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