PandoraPartyProject
一千年の夜の終わりと

――たった幾億の星達と、月と。
なだらかな砂の丘陵は、夜風を受けて微かに形をかえた。
いつしか辺りを照らしていた月は姿を消し、空が白澄み始めている。
長い長い夜が終わろうとしていた。
「それでも、拙者は友達ですよ」
砂の上に立った夢見 ルル家(p3p000016)が、一人の魔種へぽつりと零した。
「断ち切ったんだ、何も、何一つ残させやしない」
新道 風牙(p3p005012)は、かの博士を思い眩しげに瞳を細めた。
辺りは徐々に、徐々に、明るくなってきていた。
――思えば長い旅路だったように思う。
始まりは妖精郷の事件だ。
かつて妖精郷を蹂躙した魔種タータリクスの師は、アカデミアと呼ばれる私設研究所の博士だった。
長い年月をつぎはぎした肉体と、錬金術を操る博士は怪物そのものに成り果てていた。
市場に流通していた紅血晶なる呪いの宝石と、人体の怪物化、偽りの死者蘇生、魂の冒涜――把握しきれないほどの犠牲者が居ただろう。それもこの夜に、全て潰えたことになる。
博士は、リリスティーネの血を使い、吸血鬼なる怪物――擬似魔種を作り上げた。
その全てが討伐出来た訳ではないが――
「……まずいな」
シラス(p3p004421)にアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が頷いた。
この目眩のような感覚は、空間の歪みか。
月の王国を維持していた精霊の力が、あるいは博士とリンクでもしていたのだろうか。
掃討作戦を終えた王宮からは脱出がはじまっていた。
腕利きの傭兵達が、イレギュラーズ達が、次々に王宮の外へ姿を見せ始めた。
誰かは笑い、別の誰かは疲労を隠せず。あるいは互いに労いあいながら――
「これを、リュシアンさんが」
リンディス=クァドラータ(p3p007979)の言葉に数名が頷いた。
博士を構成していた『精霊カーマルーマ』の命を代償に生じた大樹に実る果実だ。
『細かく刻んで煎じて飲めば良い』
それがリュシアンの言葉だった。
烙印が刻む後遺症への処方箋だろう。全てが元通りかは、各々次第ではあろうが。
『吸血鬼』達に効果はなく、あくまでも烙印の残日数が残るもののみに効果が現れるようだ。
詳細については、またラサ上層部がデータを纏め、イレギュラーズに共有してくれるらしい。
「これで終わりさ」
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は溜息一つ。
博士は討伐された。月の女王は討伐された。
幻想種を拉致し、月の王国へ売りつけていた悪徳商人ラーガの命も潰えた。
エーニュから奪ったという強化烙印兵の技術も、そのアンプルごとこの月の王国の中で朽ち果てることになるだろう。
ラサを引っかき回そうと暴れた男の物語も、この沈み行く月と共に終わるのだ。
「とにかく急ぎましょう」
ドラマ・ゲツク(p3p000172)の心境は複雑だった。
平素、冷静沈着な彼女の気は少々急いている。。
烙印を受けた何名もの同胞(幻想種)の救出には成功したが、すぐにでも治療を開始したい。
その点において、この『果実』の存在は朗報であるとは言えた。
ともかく、イレギュラーズが一連の戦いに終止符を打ったのは間違いない。
「本当に、こういうことはこりごりですわね。それでは戻り、お茶と参りましょうか」
「賛成!」
ディアナ・K・リリエンルージュ(p3n000238)が肩をすくめ、セララ(p3p000273)が両手を上げる。
「それではエスコートさせて頂いても?」
新田 寛治(p3p005073)の誘いにディアナが「是非」と微笑む。
月の王国に客人として招かれていた魔種レディ・スカーレットは、本来は天義に伝承される魔種である。
「放っておくつもりはないわ、これ以上」
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)の視線は鋭い。
おそらくレディ・スカーレットは博士と何らかの技術交換を行ったに違いない。
彼女は何らかの儀式を行っていたが、クロバ・フユツキ(p3p000145)の分析では、恐らく『月の王国を地上へ落とす』ためのものだった。
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は考える。
おそらく今、天義で起きている『神の国』の事件に通じるものがあるのだと。
練達の人員であるディアナは『全世界へ波及する恐れがある』と述べた。それが練達の推測だ。
現に幻想と海洋に類似した事件が発生しはじめてもいる。
練達とくれば後は公社――機関がどう動くか。佐藤 美咲(p3p009818)は思案する。
長月・イナリ(p3p008096)は考える。それは間違いなく狂神へも連なっている。
そして恐らく残された最後の冠位――天義に居るのはまさか――傲慢ではないのか。
点と点とはまだ結ばれず、しかし恐ろしい推測の片鱗は見え始めている。
レディ・スカーレットが残した言葉には、他にも気になるものがある。
「そして多重反転――か」
リースヒース(p3p009207)の言葉に、アリシス・シーアルジア(p3p000397)が頷いた。
博士もまたそのメカニズムに言及していた。
それこそ魔種が反転するとどうなるのかという問いへの解答。
かつて幻想を襲ったサーカス団の団長ジャコビニが見せた暴走と、その先にあるものか。
「……」
「で、赤犬の大将はどこに居やがる?」
どこか気まずそうなパドラを連れ、ハウザー・ヤーク(p3n000093)が吼えた。
常夜の亜空間に、朝日が昇り始めていた。
視線の先に居たのはエルス・ティーネ(p3p007325)と――
※<月だけが見ている>の決戦に勝利しました!
※烙印状態が解除されました(反映には多少の時間がかかる場合があります)。
※烙印の後遺症には個人差があり、現在ラサ上層部が調査中です――
※海洋王国方面にも『帳』が降り始めたようです! 神の国に渡り対抗しましょう――!
※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
(特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)