PandoraPartyProject

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黄昏に坐する者

コル=オリカルカは劣等種等に遅れをとった、と? 『煌魔竜』の名が泣いておるな」
 不遜なる男は鼻先で笑った。ラドンの罪域より撤退してくるであろう同胞が男が劣等種、下賎の者と呼ぶ『人間』にしてやられたというのだ。
 エルダーゴールドドラゴン、『将星』。その分類の名を汚したと男は不機嫌そうに頬杖を付く。
「しかも、アウラスカルトが同行していた、と」
「……どうやら、『フェリシア』などと名乗って居るようです」
 目を伏せた女は男、『燎貴竜』シグロスレアの傍付きであるかのように彼の手許に水の入ったワイングラスを運んだ。
 彼女が故郷より持ち込んだという品をシグロスレアは気に入っている。劣等種は竜の世話をするべき存在だ。竜たる己が過ごしやすいように振る舞うのが彼女の役目だと認識している。
 最も――彼女を愛する『葬竜』辺りが帰還した場合は「母様になんということを」と怒り出すのは目に見えているのだが。
璃煙
「はい」
「そのフェリシア等という不抜けた女はどの様な劣等種と森を抜けようとしていたのか知っているか」
「……リーティ、」
 ワイングラスの水を勢い良く『璃煙』へと被せたシグロスレアは「その名を呼ぶな! 戯け!」と鋭く叫んだ。
 リーティア――『光暁竜』パラスラディエはシグロスレアにとっては尊敬すべし金鱗であった。しかし、今や劣等種と連んでいると聞く。
「失礼致しました。小さな少女を始めとした幾人か、であると認識しています」
 目を伏せった璃煙はセララ(p3p000273)を始めとしたアウラスカルトの友人達がコル=オリカルカを越えてこの地を目指していると告げた。
 同じく、森の中を進む伊達 千尋(p3p007569)達は六竜の一角である『霊喰晶竜』クリスタラードより力を分けられたバシリウスと相対したらしい。
 シグロスレアに言わせれば『ワイバーン』という亜竜――こちらも竜である彼から見れば劣等種だ――を父だ、母だと仰ぐ愚か者である。
「くだらん」
「……それから、森に『白翼竜』様も向かわれていました」
フェザークレスが?」
 眉を吊り上げたシグロスレアは六竜でありながら人に対して好意的な態度を見せることのあるフェザークレスを愚か者であると認識している。
 此処までで分かるとおり、シグロスレアは『冠位魔種』たる強大な存在を尊んでは居るが、竜以外のその他を劣等種であると認識し、それらと戯れ同等であるかのように扱う者共を愚かであると認識しているのだ。
 シグロスレアが考えたとおり、フェザークレスはヴェルグリーズ(p3p008566)を始めとしたイレギュラーズと相対し、酷く惑うた事であろう。
「『地竜』ザビアボロス様の眷属は勝利を収められたとのことですが」
「其れは良い。やはり、劣等種達には圧倒してこそだ」
「いえ、それでもムラデン様やストイシャ様も……」
「聞きたくはない」
 勢いで言ったシグロスレアに璃煙は慄いた。
エチェディ殿達はどうなったか――」
「たしかホド様が乱入されたとの事ですが……ひとまず人間共は薙ぎ払った、と聞き及んでおります。ただ『薄明竜』クワルバルツ様もやや負傷されたと……」
「劣等種に傷を刻まれるとは……それだけでも権威に関わろうに」
 シグロスレアは再度吐き捨てるが如き言を零そうか。ただ、まぁ一応人間を掃ったという事であれば、先程よりは眉の顰め具合が少ない気もする。
 より仔細を話すと介入していた『叛逆竜』ホドはシラス(p3p004421)の奮戦によって、彼も少なくない傷を負ったという情報があるのだが――まぁそれを話すとまた不機嫌になりそうなので、璃煙は口を噤むに留めて。
「それだけではありません。ラドネスチタが停戦致しました。靄が……」
「あの愚か者めが」
 元より、黄昏に至ることを望む者達が踏み入るに適するかを見定める役割であった巨竜。それが停戦を選んだのだ。
 わざわざイレギュラーズを押し止めるために出て行った『怪竜』と劣等種――白堊と名乗った娘とフォスと名乗った関守は撤退を選んだか。
 同様に、『葬竜』と『花護竜』も様子を見に行ったが其方もさっさと停戦したというのだろう。
 冷静なマルク・シリング(p3p001309)の指揮を前に深手を負った白堊を護る為にフォスが『怪竜』と停戦し、状況を見守っていたか。
 ラドネスチタを相手取っていたユーフォニー(p3p010323)を始めとしたイレギュラーズ達にも余力は残っていないのだろうが竜が戦う事を辞めたというならば彼等にも武器を手に取る理由はあるまい。
「くそめが」
 呻いたシグロスレアは苛立ったように地を蹴った。
「さて、『葬竜』が帰ってくる前にお開きにしようか。
 ベルゼー様の事ばかりを考えて居る愚かなテロニュクスと『白堊』という劣等種が何やら下賎の者達と画策しているようだが……まあ、いい」
 シグロスレアはワイングラスに再度、水を注いだ璃煙を見た。
「璃煙」
「はい」
「この地に踏み込んだ下賎の者共はどうなるか分かるか?」
 璃煙はうっすらと唇に笑みを浮かべてから目を伏せた。言葉を返さない彼女に「詰らない者め」とシグロスレアは外方を向く。
 女はラドネスチタが停戦し、イレギュラーズと呼ばれた者達がこの黄昏の地に辿り着くと耳にしたとき真っ先に思ったのだ。
 眼前の竜は驕り高ぶり、竜こそが至高であると認識している。
 それは他の竜種達の基礎的な考えであり、揺るぎなき価値観だ。だが、その価値観を揺らがすときが近いのだろう。
 一度目の大いなる混乱は『冠位暴食』ベルゼー・グラトニオスがこの地に至ったときだ。竜種を愛し、対等に接し、その滅びの気配を腹の中に含みながらも穏やかな愛情を注いでくれた。
 彼を敬愛する竜達。ある者は肉親のように慕い、ある者は畏怖し従うことを選ぶ、ある者は良きパートナーとして彼を選んだ。
 そんな男以外に、この場まで及ぶ者が居るのだ。
 二度目の大いなる混乱が近付いている。
(屹度、白堊殿テロニュクス様はこう考えるでしょう――ベルゼー様の『暴走』を少しでも鎮める手段を彼等に与えれば……いっそ、苦しまずに済むのでは、と)


 ※ラドンの罪域での作戦報告が到着しています!


 ※新イラスト商品『イクリプス全身図』が実装されました。


 幻想でフィッツバルディ派の対立構造が急激な悪化の兆しを見せています!
 ※ラサに存在する『月の王国』にて大規模な儀式が行なわれています。反撃し侵攻しましょう――!


 ※天義騎士団が『黒衣』を纏い、神の代理人として活動を開始するようです――!
 (特設ページ内で騎士団制服が公開されました。イレギュラーズも『黒衣』を着用してみましょう!)

これまでの覇竜編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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