シナリオ詳細
<ラドンの罪域>三首喰滅ウロボロス
オープニング
●三首喰滅ウロボロス
――竜は長命だ。
生命力が強い。それはまるで永遠に成熟する果実であるかのように。
人を遥かに凌駕し。魔物すら歯牙に掛けず。
竜は竜の儘に最強である。
だから竜にとって同族の別れなどというのは――無いとは言わないが少ない。
もしもあるとすれば、それは、きっと。
予想だにしない程に……唐突なものだ。
「薄明殿。薄明殿。ご気分でも優れないので?」
「――ああ。まぁ、こんな環境下であれば、な。多少は煩わしいものだ」
「はー! 姉御でもそんなマトモな竜みたいなの言う事が……うおー! イテー!!」
覇竜領域が一角。ピュニシオンの森――の更に奥地。
『ラドンの罪域』と呼ばれる領域があった。
元々ピュニシオンの森は前人未到の地でもあったがイレギュラーズの度重なる懸命な調査により、遂に出口付近へと辿り着いたのだ。この先に……七罪冠位ベルゼーが潜んでいると思われる地が存在している。
――が。ベルゼーは竜王とすら呼ばれる存在。
彼と縁深き竜は彼を護らんとする動きを見せていた。
その一人が『薄明竜』と呼ばれるクワルバルツだ。傍らには彼女に付き従う様に控える、老竜エチェディ……と。竜にしては若き少女と言える『金剛竜』アユアの姿もあった。クワルバルツに纏わりつく様にじゃれつけば、彼女に指で額を弾かれ悶絶。
何故か喜んでいる風のアユアは、さて置いて。
「此処はいつもこんな天候だ。ラドンめ、やってくれる。
『先代』はよくもまぁ……この近くに居を構えていたものだな」
「ほっほ。『先代』様は、まっことお美しい方で御座いました。あの方はヘスペリデスの地を愛しておられましたからな……この地を護らんとする意志も強く御座いました。まぁラドネスチタ……いやラドンめが正式な門番である手前、先代様はほとんど勝手に縄張りをこの辺りに持っていた、というだけですが」
「……先代ははたしてどこへ行かれたのか」
クワルバルツは瞼を伏せながら思い耽るものだ。
その瞼の裏に映るは――己が先代の姿。
……天帝種とされる『特別な血脈にある竜』達は何も永遠に生きている訳ではない。むしろ若い世代もいるものだ。例えばアウラスカルトなどが顕著なものであろう――クワルバルツもまた竜としては比較的若い方に位置している。
故に『先代』がいるものだ。
だがクワルバルツの先代はある日、消え失せた。
その原因が何かは分からない。あれほど強く、気高い方がどこへ。
ただ、その日から私は――
「あの方の後を継ぐと決めたのだ。ならばあの方が成していた事も引き継ぐが道理」
「――侵入者共を追い払われますか」
「当然だ」
目を見開く。彼方を見据え、至らんとする人間共へ闘志漲らせるように。
練達では傷を負わされた。深緑での折にはもっと深い傷を。
――人間が私に傷を刻もうとは。
どこか。胸の奥底が血沸き肉躍る。この感覚は『楽しい』とでもいうものだろうか。
まぁ、いい。
先代が不在の今、この地を護るは私の役目――通しはせんぞイレギュラーズ。
来るのならば今度こそ我が全霊をもってして撃滅してくれよう。
己に忠実な竜であるエチェディにアユア……まぁアユアは勝手に付いてきたようなモノだが……ともあれ竜が三体もいれば打ち破れぬ存在などあろうか。『神代種』クラスならばともかくとして万全の状態と言えよう。
と――そう思っていた、正にその時。
「むぎゃー! 姉御、なんかさっきから雨風が強くなって……!!」
傍に引っ付いていたアユアが、ラドンの罪域に吹き荒れる天候が激しくなったことを察知する。この地は黒い雹や霧、風。更には雨や雷まで激しく瞬く災厄の地だ、が。それにしても何か――妙だ。
突発的に天候が悪化した気がする。
雨や雹が此方に襲い掛かって来るかのように吹き流れて……
「むぅ。雨風がまるで意志を持っているかの如く……これは」
「――『あのバカ』か! この忙しい時にッ!!」
●
覇竜領域は竜の住処である。
多くの竜種が存在し、竜の間では交流もあろう――
だが。その地に住まう竜同士の仲が必ず良いとは限らぬものだ。
「薄明め。人間如きに何体揃えるつもりだ……竜の面汚しが」
――『叛逆竜』ホド。
その竜は好戦的な者であった。自らこそが神代種を除き頂点者であると信じて疑わぬ……故に特別な血脈などという天帝種の存在は認めぬ。屈服させるべき対象であるとしか目に映っていない。
故に彼はクワルバルツの先代と幾度も争った者であった。
……まぁ長命種であるが故にこそ、その『幾度』という尺度も数百年に一度というレベルなのだが。ともあれ彼は他の竜を敵視する事が多く――隙あらば襲来しよう。今日と言う日の様に。
このような暴風吹き荒れる戦場こそ彼の『真髄』を発揮できる環境なのだから。
「わぁわぁ。本当にあそこに行くの? いくら何でも数の上で不利なんじゃないの~?」
「黙れ虫が。貴様は貴様の役目を果たせばいい。邪魔をするなら消すからな」
同時。そのホドへと語り掛ける存在があった――
その者は夏雲(シアユン)。
竜ではない。骨の様な羽を宿す亜竜種だ……
ただし。その身の内からは只人にない狂気を感じる。
――つまりは魔種、だ。事情は分からぬがホドに協力する様な雰囲気を見せていて。
「こわ~い♪ まぁ手伝えって『言われてる』からね、今は従うよ~」
更には口端には微笑みの色が常に張り付いていようか。魔種と言えど混沌世界最強の種族たる竜に抵抗するのは容易い事ではない。むしろ返り討ちにされる方が当然といえる――のに、余程怒らせなければ殺されないと踏んでいるかのようだ。
主従の間柄には見えない。むしろ夏雲には他になんぞやの主がいるかの如く……
「クワルバルツを打ち倒す。殺してでもな。
――亜竜共も行け。竜を倒せとは言わん、時間稼ぎに徹しろ」
まぁ。夏雲の事はさておきホドが動き出そうか。
武と威によって従えている亜竜をも突撃させ、自らもまた飛翔していく。
その歩みを――ラドンの罪域に吹き荒れる天候は邪魔しない。なぜならばホドは……『流れるモノ』を操りし権能を宿しているから。彼にとってこの環境は全て味方だ。彼にとって此処は有利極まりない。
……とはいえ、それでも複数の竜がいるのであれば。
環境の有利程度など吹き飛んでしまいそうだ、が。
「まぁいっか。『三対一』ではないみたいだし――ね♪」
夏雲は微笑もう。
願わくば自らの渇望を満たす事が叶う事態が齎される事を――願いながら。
●
「――わぁ。凄い状況な気がするんだけど?」
「あんなの放っておけばいいんじゃないか……ってそういう訳にもいかねーか」
ラドンの罪域。その領域へと踏み込んだイレギュラーズの中にはスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)やファニー(p3p010255)の姿があろうか。七罪冠位ベルゼーの存在を追う為にイレギュラーズ達は依頼を受け此処へ来た――
――だが何故か竜同士で争っている光景が目に映る。
複数の竜が入り乱れているのだ。なんだアレは、この世の終わりか?
まだ距離はある、が。近付けばどんな災厄が降りかかってくる事か……
正直竜同士が争うのであれば放っておきたい所である、けれど。
「竜達の戦い……激しいよ。凄い移動しながら戦い合ってる。
――もしもあれがどんどん戦場を移したら」
「此処以外の戦場に影響を及ぼさないとも限らない、な。
ラドンの罪域を超える為にも、竜達を此処にせめて押し留めておかなければ」
そう。ハリエット(p3p009025)にラダ・ジグリ(p3p000271)の懸念通り……ラドンの罪域を踏破する為の動きに影響がない、とも限らぬのだ。全体の戦況として奥地へと進めれば問題ないが故に、例えばこの戦場で竜を倒す必要はない。
必要なのは全体の調査を援護する為にも、竜達をこの地に釘付けにする事。
あわよくば竜にダメージを残す事が叶えば今後も続くであろう覇竜での戦いに影響を齎すかもしれないが、それは必要という程ではない。可能であれば成しておきたい、と言った程度か。
「災厄の中に飛び込む必要がある、か」
「クワルバルツとも何度か戦って来たんだ。戦い方は目に覚えてる、無謀って程じゃない筈」
「う~ん今度はまた一段と激しいデートになるかも?」
然らば、クワルバルツと交戦経験のあるブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)にアイラ・ディアグレイス(p3p006523)。そしてコラバポス 夏子(p3p000808)は彼方に見える存在――クワルバルツの存在に言及しようか。
練達や深緑において戦った事のある竜。
いずれも強大であった。けれど、無傷で完勝された訳ではない。
たしかに刻んだ傷があったのだ。防いだ一撃があったのだ。
きっと届く目もあろう――
まぁ。今回はなんというか……他にも竜がいるのが懸念であるが……
「む。あれは、エチェディ、だな。此処にも、現れよう、とは」
「うう。やっぱり怖い存在だね……でも、もう一度挑んでみたいよ……!」
直後。その竜の一体……前回の森の調査で出会った事のある竜種たるエチェディを見据えたのはエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)にリリー・シャルラハ(p3p000955)だ。帰れ、と言われたがそう言われて大人しく帰る訳にもいかないが故に此処へとやってきた――
「芳醇なる実、というのがこの先にでもあるのでしょうか。
……いずれにせよこの地を御さなければ始まりませんね」
然らば同様にココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)もエチェディを見据え呟こうか。
かの竜は老竜に見える、が。それでも竜として只人を隔絶する力を宿している。
――油断は出来ない。
だけど今回は竜の首を取る事が目的ではないのだ。ならばやりようもあろう。
成してみようか。喰らい合う竜の戦いへと踏み込もう。
この地の更に奥にあるとされる――ヘスペリデスへと……
誰も踏み入れた事がないとされる地まで、往くために。
- <ラドンの罪域>三首喰滅ウロボロスLv:50以上完了
- GM名茶零四
- 種別EX
- 難易度VERYHARD
- 冒険終了日時2023年04月25日 22時05分
- 参加人数20/20人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 20 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(20人)
リプレイ
●
竜は一体だけでも脅威の塊である。
混沌世界最強の種族。その名は伊達ではないのだ――
かつての練達で戦った事がある者は、その実力を肌に感じた者もいるだろう。
「あの時はこんな強い竜はそうないように思えたのに――普通に相手する奴がいるのは流石覇竜と言うべきか。彼らの住処たる領域であればこそ……何体いても不思議ではない、か」
「しかし大嵐の中、竜種が四体に多くの亜竜も入り乱れ……空を見上げれば、まるで、この世の終わりのような有様だ、な。精々、滅びに巻き込まれないように、足掻かせてもらうとしようか――」
その一人が『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)だ。『愛された娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)もジャバーウォックと練達で出会った事があったか――あの時も練達での大きな事件が終わった直後でありインパクトはあった、が。
此度の一件もまた凄まじいものだ。
しかも竜と竜が争う一幕など……しかし想い馳せていても事態は変わらぬ。
動き出すとしようか。意を決して。
ラダは森を駆け抜けるものだ――あえて敵の目に映らんとするその意図は、クワルバルツの気を引かんとする為。更にエクスマリアは天より撃を降り注がせ、アユアの肉体を討ち抜かんと試みようか。
さぁ来い。此方に視線を寄こせ。
――人間達がやって来たぞ。
「竜同士の争い……危険ではありますが他の場所に被害を出させないためにも! ここで押し留める! いざ、参るであります!! 本官も全霊を賭しましょうッ――!」
「なんとかして抑えとかないと! こんなのが他の所に行っちゃったら、滅茶苦茶になっちゃうよ!」
更に続くのは『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)に『自在の名手』リリー・シャルラハ(p3p000955)だ。相手は強大。ああ分かっていれども、自らに出来得ることを成さんと――往くのだ!
豪雨にも負けず前進。紡がれる一撃はやはり竜を狙うか。
だが何もわざわざ真っ向から対峙する必要はないと――リリーは森の中で立ち回る。
「嫌がらせでもなんでもさせてもらうよ! 全力を尽くすんだから!」
「わー! なんじゃこりゃ――!! うおー人間だ、めんどくせ――!」
「チッ。連中が来たか……ホドがいなければ万全に迎え撃てたものを……!」
然らばアユアやクワルバルツがイレギュラーズに気付き始めるものだ。
横槍――いや元々イレギュラーズに備える為に此処にいたと思えばホドこそが横槍なのだが――ともあれ、イレギュラーズから横から至れば流石の竜と言えど無視は出来ぬ。彼らは只人に非ず。彼らは覇竜の領域に足を踏み入れる事が出来る強者達なのだから。
ましてや。練達で、そして深緑で戦った時よりも――更に強くなっている。
クワルバルツの心中に炎の様な昂りが灯れば、その時。
「――私を覚えているか? クワルバルツ」
刹那。踏み込んだのは――『薄明を見る者』ブレンダ・スカーレット・アレクサンデル(p3p008017)だ。練達で戦ったあの日より、これで剣を交えるのも三度目。一度目は歯が立たず二度目はなんとか傷をつけ……
「三度目の正直と行こう。今日と言うこの日こそ! 貴様の記憶に我が名を刻むッ!」
「小賢しいぞ人間が! 多少腕に自慢がある程度で、私に届くつもりか!!」
故にブレンダは往く。その魂に己が矜持を届かせる為。
――貴様に私という存在を認めさせる。
クワルバルツの放つ重力の槍が地上に炸裂すれば、爆薬が炸裂したが如き衝撃が幾重にも生じるものだ。只人であれば呑み込まれれば死ぬかも知れぬ領域……だがブレンダに恐れはない。ブレンダに躊躇いは無い。
跳躍する。黄金の魂魄を纏い、穿ち貫く一閃を――此処に!
「届かせてみせますとも――ええ! クワルバルツ! 会える日を楽しみにしていましたから! 忘れたとは言わせません。知らないとは言わせません。前よりうんと強くなったんですから!」
直後には『生命の蝶』アイラ・ディアグレイス(p3p006523)もまた至ろうか。
彼女もブレンダと同様にクワルバルツと幾度も交戦した事のある一人だ。
ずっとずっと戦って来たんだ。そしてようやくまた会えたなら――
「再会を記念して……ボク達とまた踊ってくれませんか!」
「躍るだと? 痴れ者め――振り落とされても知らんぞ!」
この一時を刻もう。共の記憶に。
アイラは槍の軌道を、その殺意の軌道を瞬時に気取りながらクワルバルツへと一撃一閃。かつての海での戦の呪いを此処に顕現せしめよう……その一撃をもってして狙うは翼だ。まずは撃ち落とす。ええ、躍るのならば上下の概念は必要ない――共に地に在らねばならぬのだから。
「すっごい戦場だね……これが竜。これが覇竜領域かぁ……!
いこうスティアちゃん! いつも通りに頼りにしてるからね!」
「おっけー! 頑張ろうね、サクラちゃん!
ここで会ったが三回目、そろそろ名前を覚えて帰って貰うよ!」
更に『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)と『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)も戦場へと出でるか。可能であればクワルバルツとはもう少し落ち着いた――或いは眼前の相手にだけ集中出来る環境で相まみえる事が望ましかった、が。
儘ならぬものだ。全てが望ましい場へ収束する訳ではない、か。
――それでも。
「こういう状況もあんまりないからいい経験になるかもしれないし、ね!」
「えぇい小うるさい連中だ……! 今度こそ消し飛ばしてくれるわッ!」
スティアの瞳に迷いはない。ピンチの後にチャンスあり! って言うしね!
クワルバルツへと彼女は極小の炎乱を放つ。周囲、治癒が必要な者がいないか注意を張り巡らせつつも、一手も無駄には出来ぬと彼女は動き続けるのだ。さすればスティアの放った一撃と共に――サクラは前へ。
周囲を保護する結界を張り巡らせつつ、自らの剣を振るおう。
(周囲の自然に罪はないしね――! 護れるなら守っておかなきゃ!)
その一閃は高速を超えて光を纏う。叩きつけるソレはクワルバルツを押しのけんとする程で。
「……それにしてもベルゼーさんが魔種なら、イレギュラーズは戦うしかない。ベルゼーさんを守っているクワルバルツさんとも戦うしかないってことだよね。どうしても戦いは避けられないんだね」
そして『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)もまた、皆の為に引き金を絞り上げようか。
周囲。天候は最悪だが、木々の多いこの地は己が身を隠すに足る地が多い。
狙撃手としては万全の立ち回りが出来ようと――彼女は狙い定め、射撃を一つ。
だが。竜多きこの戦場で全てを相手取るのは危険極まりない。
(どうにかして説得出来ないかな――? せめて情報を得る事だけでも出来れば)
故に彼女は思考を巡らせよう。クワルバルツの傍にいる、あのくっ付いている子から何か得られないだろうかと視線を向けて……
「――全く。縁だよねぇ、正に縁だ。腐れ縁? それとも運命的な?
まぁ三度目の邂逅ともなればさぁ、偶然ってもんじゃ片付けられないよねぇ!」
だがまだイレギュラーズ達の動きは終わらぬ。『八百屋の息子』コラバポス 夏子(p3p000808)は――クワルバルツへと言を投げかけながら往こうか。依頼内容の厄介さは底なし。だけれども、あぁ。こうもありと汎ゆる厄介事が世界で溢れちゃってると――
そりゃあ我々ヤル気も出るってモンですよ。
「えぇいどいつもこいつも……! 彼方の街より見知った顔が幾つも出てくるものだな!」
「何度も眼前に現れる人間って良く居る感じ? 覚えてもらえてたんだったら光栄ってもんだね~ほら、こないださ~自分より弱いヤツ興味無いって言ってたじゃ~ん? 記憶に残ってるんだったら『そう』じゃないって事だし」
「口を閉じろ、痴れ者めが!」
夏子は軽口を叩きながら、クワルバルツの撃を全力をもってして凌ぐ。
集中。彼女から放たれる殺意の槍――接触し過ぎず程よく距離を取りつつ、見切らんとするのだ。少なくとも致命傷たる一撃は受けまいと彼は立ち回りつつ……
それでも流石は竜と言うべきか。或いは混迷する状況であると言うべきか。
全ての撃を躱すのは難しいものだ。
「人間! 邪魔するんだったら潰してやるからなー! うおー姐さん此処は任せろー!」
クワルバルツの重力の槍は当然として。更にアユアの無邪気な暴力が襲い掛かってくるのだから。彼女の一撃はクワルバルツ程の洗練さはないものの……単純な圧倒的身体能力から繰り出される拳は地を砕かんほどに。
そして刹那でも隙が出来れば重力に囚われる。
傷が増えればいつそこから致命に繋がるか……
――故に。そこへ至るのが『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の治癒術だ。
「これが、竜としての純粋なパワーですか……
数多の権能を駆使してくる厄介な魔種は今までに何度も見たことがありますが。
それとはまったく違う別タイプの強さですね――」
彼女は紡ぐ。まるで不死鳥が如き輝きが負傷した者を包めば、即座に傷を癒そう。
――今までとは違う戦いになると彼女は確信していた。
これが竜。これが最強の種族。
だけれども……どんな戦いが待ち受けていようとも医術士の目的は変わらない。
「誰一人として奪わせはしません」
戦って、皆で生き残る。その為に彼女は自らの力で、命を繋ぎ続けよう――
「――虫共にかまけるなど、随分と余裕だな」
と、その時だ。クワルバルツやアユアへと暴風が牙をむく。
――ホドだ。彼女らと争い合っていたホドが、イレギュラーズやクワルバルツ諸共、己が能力にて襲い掛かったのである。ホドにしてみれば人間など虫。虫にかまける同胞など塵同然。隙を見せるのならば容赦はせんと……
しかし。
「ふん、俺達に見向きもしねえ――いつでも潰せるとでも思ってやがるのか、あの野郎?」
「ほっほ。ならば教えてやらねばならんの。世界の夢心地の名を――竜に刻んでみせようぞ!」
そんなそんな舐め腐った態度を見せるのであれば思い知らせてやると『竜剣』シラス(p3p004421)に『殿』一条 夢心地(p3p008344)は動くものだ。元々クワルバルツはイレギュラーズの迎撃に来たはず――それが混迷としているのは、ある意味好都合だとシラスは分かっている。
が。それはそうとして、人間を『虫』と見られるのは不本意だ。
――その『虫』の意地を見せてやろうではないか。なぁ、最強種族さんよ?
「行くぞ。あの野郎の横っ面を、ブチのめしてやる」
シラスは空を飛翔。全霊たる集中を身に宿しつつ、ホド側へと駆け抜けようか。
更に数多の撃を弾く障壁も展開すれば、そうそう傷を受けるものではない、と。然らば夢心地も怪物の下へと夢心地ビーム一閃。機を見計らい、奴の意識を此方へと向けさせようか――
「私たちだって黙って見ているだけじゃないってことをわからせないとね! さあ、全力で行くよ! こっちを向けさせてやるんだから!」
直後には『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が皆を援護する様に動くものだ。周囲を索敵するべくファミリアーを放つもの……豪雨に暴風の影響があるが故にあまり素早くは動けぬが、元より竜の戦いに巻き込まれればひとたまりもない子達だ。
あまり近づけさせないように指示しつつ、アレクシア自身は皆に治癒を齎そう。
「厄介な存在が多いッスけどね。でも、全部が全部協力している訳ではない上に……全部倒すのが目的じゃないのであれば、やりようもあるってものッス」
「あの争い。彼らも一枚岩ではない、という事なのでしょうね……
竜種同士の争い、此処までとは……凄まじいですね……!」
であれば『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)に『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)もホドへの対応へと回ろうか。ライオリットは自らに戦いの加護を齎しつつ、速度と共に駆け抜ける。止まれば竜の吐息の的になるだけだ――
同時にチェレンチィは周囲を俯瞰する様な視点と共に『何か』がいないか探ろう。
――この戦場のどこかにいると思われる魔種を見つける為にも。
(動きを見るに、どうもホドに付いているように感じられますが……さて如何なる思惑があるのか)
竜でさえ厄介なのに、この上魔種の存在など面倒極まりない。
放置する選択肢はないと彼女は探り出す。木々を透視し、人の温度が無いか視線を巡らせ。
「ったく。なんの目的があるんだか……さっさと見つけ出して動きを把握しておかねぇとな」
そして魔種を探るのはチェレンチィだけではない。その動きに追随する様に『Stargazer』ファニー(p3p010255)も続こう。ファミリアーの烏を使役し、地上からも上からも探すのだ。無論、同時に戦いの為の加護を己に齎しておくのも忘れない。
敵意を感知する術も張り巡らせながら彼は行動する。
一刻も早く見つけ出さねば。チェレンチィと共に捜索に全力を出し、て。
「あはは。なんて事――私だって雷は得意なのにグラムの光すらもってかれそう。
これが竜。正にタツマキ。災害を食い止めろって? ――面白いじゃない」
「つくづくとんでもない連中なのです……
しかし。抗いきれない程でもありません。共に行くのです、リカ!」
然らば、ひとまず魔種の捜索は味方に任せつつ『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)と『雨宿りのこげねこメイド』クーア・M・サキュバス(p3p003529)はホドへの対応へと回ろう。
ホドが翼を振るえば、ソレに伴って風と雨がリカ達に襲い掛かる。
体が飛ばされそうだ。気を抜けば瞬時に呑まれるやもしれぬ。
――だがこの程度、初めから覚悟の上で此処にいるのだ。
直後には動き出す。刹那の風の弱りを見抜きて。
「とびっきりの花火とお邪魔……見せたげる」
「虫共が――命の血花を咲かせろ。お前達の価値などその程度しかないのだから」
「人を虫と舐めるのは結構ですが、調子に乗った生物に未来などないのがお約束ですよ」
リカは己が武器に魔力を纏わせホドに一閃。続け様にはクーアもヒットアンドアウェイの如き動きで剣技を振るおうか――リカはホドの怒りを誘い、己に意識を向けさせるように。クーアは周囲の環境を利用し己が身を幾度も隠しながら奴の意識の狭間より穿つ――
「拮抗狙い、ではありますが。よもや大山が幾度か小突いた程度で崩れる筈もなし」
同時。クーアは思考するものだ。
よもや大山が幾度か小突いた程度で崩れる筈もないだろう、と。
ならば――相応の死力は尽くそう。
恐らくそれでも足りるかは知れぬ程だ。
「――我が全身全霊の雷光と紅蓮、魅せて差し上げましょうか!」
「ほざくな虫。お前らが見せるのは、無様な血華だけで十分だ!」
激突する。最終的に相手するなら、目の血走った虎一匹よりは。
互いを喰い合う蛇弐匹の方が――幾分かマシであろうから。
「叛逆竜って名前、俺は結構いい名前だと思うぜ?
――まぁやってることはただの暴れん坊だけどな。
ちょーと体がデケェからめっちゃ迷惑って感じの、な!」
瞬間。超速の瞬きと共に飛来したのは『有翼の捕食者』カイト・シャルラハ(p3p000684)か。彼もまたホドの下へ。極限の天候下と言えど、彼はその流れにむしろ乗らんとしている。
心構えがあれば避ける事も不可能ではないだろうと。
どの道、この天候自体はどうにも出来ないのだ。
ならば逆らわない。読んで、見切って、乗ってやり。
「行くぜ。鳥さんの羽ばたきに――付いてこれるかよ!」
「鳥など食料にもならんよ。菓子にも満たぬ風情が、誰に向かって口を利いてるつもりだ!」
そうして激突する。大きな緋色の翼を開き、穿つ羽の射撃がホドへと降りそそごう。
さすれば小賢しいとばかりにホドは暴風を操りて羽らを掃わんとする――
少しでも射線を狂わせ、更にはカイトへ一撃紡がんとする意志だ。
――あちらこちらで激しい介入が始まる。
さて。地獄の様な戦場であるが……
勝利を目指してみようか。この果てに在るとされる地に用があるのだから!
●
「あら怖い、気を散らしてたらあの子に押しつぶされるんでなくて?
まさか鼠が近くで鳴いてた位で負けるのが竜なの? わあ怖い……」
「挑発のつもりか? 虫の戯言などに耳を貸すとでも思ったか――さっさと死ね」
激化する戦場。ホドへと相対するリカは、撃のみならず言による挑発も繰り返そうか。
一撃で芯を貫く事が出来なくても、二度三度と手数をもって繰り返す。
――あぁしかし。辛うじてホドの撃を凌いでいるが、とても一対一では勝てそうにない。
(これ、ホント少数だと死ぬわね。全く、なんて戦場かしら)
零す吐息。だが、同時にリカの心には高揚感も生まれていた。
勝ちようがないってのにこうも心が踊らされるなんて。
最強の種族。その由縁を肌に感じればこそ、彼女の口端には笑みが灯ろうか。
(……感じますね、魔種の気配を。必ずこの辺りのどこかにいる筈)
同時。リカと行動を共にするクーアは、やはりホドに対抗しながら……同時に周囲を索敵していた。暗きを見通し、木々を見通し。周囲を俯瞰する視点と共に把握しよう――何か己らに利用できそうな障害物があれば積極的に使ってやるのだ。
少しでも。少しでも役立つのであれば、全て使って見せよう。
……そしてソレはどこぞより感じる魔種を探す為でもあった。
ホドの――竜の一撃は脅威であるが故に中々竜も魔種も、とはいかないが。
それでも自らに出来得ることは全霊をもって成さんと……クーアは動く。
「フン。余所見か? 最近の虫とは随分余裕で――ぐっ!!?」
「テメーも余所見してるんじゃねー! 俺が相手だ――!!」
然らばそんなクーアに隙があると見たか、ホドは雨をまるで射撃の様に彼女らへと紡がん……とした瞬間。そのホドへと、竜のアユアが蹴りをぶち込んだ。
――轟音。空を飛翔していたホドが地へと叩きつけられる。
直前に反射的に繰り出したホドの手刀がアユアの首筋へと叩き込まれていれば、彼女もまた別の地へと叩きつけられようか。『うおおー! イテー!!』という利いてるのかよく分からない軽い声がどこぞより聞こえてくる――
そう。イレギュラーズが干渉し始めたとはいえホドやクワルバルツ、アユアの戦いが終わった訳ではないのだ。イレギュラーズに対処しつつも、それぞれの竜はそれぞれの事情と共に未だ相争っている。
「……力のある貴方達が全力で戦い続けると、この森はぼろぼろになっちゃうんじゃないかな。さっきから凄い衝撃が響き渡っているよ――少し動いただけで全部壊れちゃいそう」
「あん? なんだぁ? 俺達の喧嘩に口出すつもりなら、容赦しねーぜ!」
「待って。そうじゃないんだけど、な」
「やれやれ、竜はやはり竜と言う事、か。これはどうするにせよ、骨が折れそうだな」
然らば地上へ落下したアユアへと声を掛けたのはハリエットだ。木々が折れている。この地が泣いていると伝え――ようとしたのだが、アユアは怪訝な表情を向けるだけで耳を貸そうとしない。どころか邪魔だとハリエットへと拳を紡ごうか。
――また薙がれる。木々が、自然が。
どうにか止まってほしいのだけど、無抵抗の儘でいれば殺されて終わりそうだ。故にハリエットは衝撃より身を庇いつつ、再び射撃を行う。さすればエクスマリアもアユアへと再び星を降らそうか――
「堅牢なのは確かそうだが、しかし、無敵ではあるまい。
――マリアの降らす星に貫けぬものは、無い」
「こなくそ! 星なんざ全部砕いてやるよ!」
その星は絶大なる威力を秘めた一撃。如何に金剛と謳われようが全て貫いてみせよう。
であればアユアは抵抗の拳を振るいて対抗するが――同時にエクスマリアは彼女の様子を見定める。ある筈だ。竜も生物であれば弱点、逆鱗が。そしてあるのならば生物の本能として咄嗟に庇う様な仕草が……
別に。分かったからといってそこを即座に穿つという意味ではない。
だが下手に触れて逆上させてしまえば――命が危ういかもしれぬから。
知るのだ。竜を、その魂を。その肉体を。
「わわ、ホントに凄いね竜同士の激突は……!
でもでも、だからこそやり様があるよね……!」
続けてリリーはアユアとホドの衝突を見据えながら、周囲を探るものであった。精霊達から情報を得られないだろうかと――優れた五感も用い、音も匂いも光景も全てから情報を集めんとする。
無論、戦いの為の加護を自らに付与しておくのも忘れない。
いつ竜達の熾烈な攻撃に巻き込まれるとも限らぬのだから。
攻撃する時も味方の流れに合わせて。呪いを纏った魔法の弾丸を的確に投じようか。
「えぇい馬鹿力め……! この暴風の中を無理やり突っ切って来るとは……!」
「――やっぱ竜とは言っても無敵でも不死身でもねぇよなぁ。見えたぜ、隙がよ!」
「行くぜ! 捉えられるかよ、俺達の動きがな!」
そして同時。地に落とされたホドの側には、隙を突いてシラスが跳躍していた。
強襲する一撃。初動すら霞む神速たる一撃はホドを正確に捉えよう――
例え鉄の塊で在ろうとも打ち崩す程の衝撃。更にはカイトもまた大雨の中を突っ切る。
さすれば自ら達に負の要素が齎されるものだが……それは彼の紡ぐ白き風が掃おう。空舞う猛禽が皆を導くのだ。暖かな風と、敵の喉を穿たんとする猛禽の加護を備えつつ。更に緋色の羽根を投じて竜へと紡がん。
「子蠅共め! ちょろちょろと動いた程度で、私の首でも獲ったつもりか!」
「させないッス。こっちはチームで来てるんスから、ソレを十全に活かさせてもらうッスよ!」
然らばカイトを打ち落とし、シラスが纏っている遮断の加護ごと砕くべくホドが再度撃を繰り出そうとしようか。故にライオリットは即座に攻撃を繋ぐ。速度を落とさず介入し、その射線をズラすのだ。
特に狙うのは翼の部位か――倒す事よりも動きを鈍らせる事を狙おう。
……暴風に豪雨。ラドンの罪域を覆う天候は過激の一途を見せるばかりだ。
これらの影響を全て気にしないでおけるのは、ホドのみ。
奴だけは風を操り雨を操る力をもってして除外されている。
本気で力を出せば彼自身のみならず、例えば配下亜竜のヨドミらも天候から守る事が出来る筈だ、が。
「ほっほ。あ奴め、まぁ亜竜如きを護ってやる意思など欠片もないわな」
そうしないのは彼自身が意味を見出さぬからだとエチェディは推察する。
己だけを頂点と見定めるホドは下等種族たる亜竜など気にも掛けぬ、と。
故に無謀な戦いにも繰り出すものだ。亜竜らは老竜たるエチェディへと嗾けられる――が。如何に老竜と言えど竜は竜。そこいらの亜竜如きに抑えられるはずもなく、遊ばれるのが精々だ。
――食われる。エチェディによって、ヨドミは徐々にその数を減らしていようか。
しかし彼らも逃げれない。逃げれば後にホドによって粛清されるだけなのだから。
「エチェディの方は……亜竜とまだ戯れてやがるな。
アレが自由になる前に、こっちも用事を済ませておきたい所だが――行けるか?」
紡ぐはファニーだ。エチェディはあまり前に出る気がないのか、空で亜竜と弄んでいる。ホドを狙う際に余計な巻き込みを心配しなくて良さそうなのは、よしと見るべきか? 何はともあれファニーは動き続ける。ホドへ指先の死を投じつつ森の中を探すのだ。
魔種を。天候が天候であるが故にファミリアーの使い魔……特に空を飛ぼうとする個体は影響が大きくやや捜索は苦戦しているが……魔種の独特な気配は近い様に感じる。そう遠くはない筈だ、と思っていれば。
「――いました。あそこですね」
「あれ、同業者がいる……? ううん、なんなんだろう。まぁいいや、あっちは他の皆が対応してるみたいだし……リリーはやっぱりクワルバルツ達の方を抑えないと、ね。急がないと……! 天気も悪いし、あんまり長居してたら大変な事になりそうだよ……!」
見つけたのはチェレンチィだ。数多の捜索技能に加え気配を殺す技が役に立ったか……魔種である夏雲は、まだチェレンチィの存在に気付いていない。夏雲自身、なんの思惑かクワルバルツやアユアへこっそりと一撃投じている為、意識の矛先が別方向を向いていたのも作用しているか。
同時にリリーもその姿を確認した。
攻撃してるのは同じ側――ならば利害の一致はあるのでは、と。
空にお祈りしながら彼女は往くものだ。クワルバルツへと引き続き、足を止めるべく撃を放つ。計算し尽くされた射撃が――彼方へと至ろう。
ともあれ、チェレンチィにとっては気付かれていないのであれば僥倖。近くにいたファニーと合流しつつ、暫く尾行しておこうか。彼女が一体どのような意図と動きを見せんとしているか――と。
「あれぇ? 何々? もしかしてイレギュラーズ? ――邪魔するつもりなの?」
「邪魔? 存在がドブに落とされたゴミより劣ってる魔種っていう世界のゴミに言われたくないわね――クーア! さ、私たちはちょっとくらい体重が重くなるくらい慣れっこよね? 飛び込むわよ! ゴミ掃除と行きましょ!」
「ええ。この場で策謀巡らす手合いを、徒に放置して良いことはないでしょうし。
魔種滅ぶべし。滅相の意と共に潰しておくとしましょうか」
しかし夏雲も只人に非ず。世界に仇名す魔種の一端であれば、やがてイレギュラーズの存在に気付くものだ――口を開きてチェレンチィやファニーが隠れていた木々を諸共『喰らう』
それはまるで空間ごと己が口の中に頬張るが如く。
その一撃こそ二人を逃したが、立て続けに夏雲は喰らわんとする
――だが。ファニーのファミリアーを経由して仲間に情報共有していれば、援護が間に合ったものだ。リカにクーアである。ホドに幾らか干渉した上で、今度は夏雲への対処に赴くはやや簡単な事ではなかった――幾らか追撃を受けて負傷も見られようか。
しかし行動不能となる程の傷ではない。
であれば動き続ける。まだ、まだだと。
特にクーアは痛みを覚えれば覚える程――自らの力とする事も出来るのだから。
「アンタ、何? あの竜の配下なのかしら――?
でもあの竜に殺されてないなんて……どういう事情があるのかしらね」
「ふふ。気になるの~? ――腕一本食べさせてくれたら教えてもいいよ?」
「腕一本じゃすまないって感じに涎が垂れてるわよ。なんにせよ好き勝手させるもんですか!」
夏雲へと攻勢を仕掛けるリカ。流石に竜とある程度交戦した後では中々厳しいか――押される様子が見えて。
「させない。誰一人だって犠牲にさせたりなんかするもんか……!」
刹那。その戦況を支えんと奮闘しているアレクシアの治癒が満ちた。
薄紅色の花弁が負傷せし者を包むのだ。
自らに宿す輝く宝冠もあらば――更に治癒力は昇華するもの。
「竜だって人だって、命には変わりない……! 人の強さは、魂は折れたりなんてしないんだ!」
「然り。怪物同士の戦いは実に派手であるが――人の抗いもまた、劣らぬよ」
アレクシアは自らの底より魔力を紡ぎ続けよう。誰しもを支えるのだと、強い想いと共に。
続け様には夢心地も竜を見据えつつ言の葉を零すものだ。
怪物同士の戦いに割り込むのは正直、肝が冷える。
――だが仕方あるまい。
ここで麿達が成さねば誰ぞの戦場にこ奴らが往くかもしれぬのだ。
騒動をこの目で確かめ、この場で沙汰を下すのも殿的存在の務めよ。
夢心地はホドの操る雨や暴風を凌ぎつつ、きゃつの権能を見定めよう。これだけの天災の影響を受けぬとは恐るべきもの――要注意じゃ。なんともはや、こちらの攻撃そのものを操る事は出来ておらぬ様だが……しかし豪雨を中心とし防御に転じさせる動きは見える。
「やはりか――予測通りと言えばそうじゃが、の。器用な奴じゃて」
「下らん。我が力、無視如きが測る事が出来るとでも――?」
「さて。しかし知らねば分からぬ。分からねば知れぬ。万民を知るが殿たる者の宿命よ!」
次いで此方へと撃が放たれれば夢心地は咄嗟に跳びすさみ、反撃の一手を繋ごうか。
やはり穿つは夢心地ビーム。殿ビームが雨を貫き、ホドへと至らん。
――直後。見えたのは夢心地の一閃とは異なる……別の一撃だ。
それはクワルバルツの重力槍。ホドはソレに関しては躱す動きを見せて。
「クワルバルツめ、隙があるとでも思ったか――?」
「さっきあったろうが。アユアに吹き飛ばされた事をもう忘れたか? 鳥頭め」
流石にクワルバルツの一撃は警戒していた、と言う事だろうか。
ホドとクワルバルツは互いに軽い敵意の言を口にした後――争い合う。
イレギュラーズも巻き込みながら、だ。ホドの流動の力はクワルバルツを主に狙いつつ、更に近場に存在せしイレギュラーズも逃さんとしていく。木々が邪魔であればそれらを薙ぎ払う様に。
一方のクワルバルツは周囲の環境に配慮している……様に見えるが、流石に竜同士の対決では手が抜けぬのか重力の力を用いて抵抗するものだ。ただそれでもホドと比べれば地上の被害は少ない様に見える――
「此処に足止めの為の勝機がありそうだな……
さぁクワルバルツ、こっちを視ろ!
どうでもいいというのなら勝手に先に進ませてもらうぞ!」
「――チッ!」
であればラダは森を移動しつつクワルバルツへと射撃を行うものだ。
可能であればアユアも狙いて。移動の為の翼や足を狙いすまそう――
竜とて攻撃が効かぬ訳はないのだ。ラダも幾度もの交戦を経て、実感している。
そして注意を寄せつつ己は木々を盾にして身を隠そう。クワルバルツへと攻撃してくるホドは周囲の状況を一切配慮しないが故に、そこを気を付ける必要はあるが……クワルバルツ自身は地上への攻撃はやはり手を鈍らせるだろう。
「こっちは人なのでな。使えるものは使って、事を成させてもらうぞ」
「そーそー。そもそも俺って守専だからさあ。
要するにクワしゃんが打ち倒せなけりゃ 僕の勝ち って事でイイよねぇ?」
「誰がクワしゃんだ。死ね! 滅びろ!!」
「わーぉ過激ぃ!!」
次いで夏子も立ち回る。距離を取りつつ、互いの勢力の攻撃具合を見定めながら……ちょっかいを出すのはここぞという時だけだ。下手に近付けば本当に死ぬ。幸いに周囲にはこれでもかと利用できる木々やらに溢れているから――環境と共に生きるのだ!
「さーて。戦況的にはカオス。カオス極まってるねぇ。
どっちが有利なんだろ。うーーーんやっぱクワしゃんの方かなぁ?」
「拮抗している様にも見えるでありますが……
竜は三体。エチェディとやらが此方に来れば、一気に戦況は流れるかと……!」
ともあれ夏子はクワルバルツの攻勢を凌ぐことを主体としながら、戦況を見定めるものだ。イレギュラーズの介入以降、数多の攻撃は分散し今の所は拮抗状態に追い込めている様に見えるが……しかしそれもエチェディが亜竜を全て踏みつぶせばどうなるか分からない。
エチェディが援軍として至ればクワルバルツがまた優勢になる筈だ――が。
ただなんとなく、エチェディと亜竜の戦いはやけに時間がかかっている気がする。エチェディが遊んでいるのだろうか? このままではクワルバルツやアユアが無為に傷が増えるだけだ。まぁイレギュラーズとしてはエチェディが未だ此方に来ぬのであれば都合は良いのだが。
――なんにせよ夏子と同様に戦況を見ていたムサシのやる事は変わらない。
戦場に立ち続ける。戦場に敵を留まらせ続ける。
例え過酷なる環境が聳えていようとも。
「自分は役目を果たすであります! クワルバルツ――覚悟!」
刃を手に、挑むだけであるのだ!
敵を叩き落とさんとする。二天一流・宙の技が一つを討ち抜き――竜を薙がん。
「数が多い程度で――仕留められると思うなよ。先代の愛した地へとは進めさせん!」
「気高いな、クワルバルツ。過去の者を想い、此処にいるのか。
――だが私も手を抜くつもりはさらさらない」
反撃の一手。重力がムサシやイレギュラーズを押しつぶさんとする――
だが。大地を護らんとするクワルバルツにはやや隙があるとブレンダは気付くものだ。
――ならば踏み込もう。手を抜けばそれこそ失礼であればこそ。
「薄明よ。黄金の輝きを――知れ」
「むっ――!!」
跳躍。クワルバルツの鱗の硬さは知っている――それでもブレンダは往くのだ。
傷は気をもって治癒し。クワルバルツと相対し続け。
その刹那を見切ろう。
竜を穿つ一撃を此処に。痛みを知れ――クワルバルツ!!
「チィ!! だがこの程度でッ!!」
「ま、終わらないよね――ならちょっとお邪魔するよ!」
重力を操り迎撃の槍を紡ぎあげるクワルバルツ。そこへ至ったのはサクラだ。
「戦いを邪魔するのは本意じゃないけどこっちにも理由があるからね!
遊んでもらうよ、もう少し。私達と一緒にね――!」
「この地では戯れぬ! 先には――進ません!!」
彼女は矢継ぎ早に斬撃を繰り出そう。で、あればクワルバルツもサクラと切り結ぶものだ。
――重力槍を応用して重力の剣を作り出したのか。
超接近戦だ。サクラの剣撃、ブレンダの一閃。両の手に抱く二刀紛いを振るいて凌がんとクワルバルツは動こう。が、剣の技量に関しては一流と言う訳ではなさそうだ。持ち前の身体能力で打ち合うも、技術の合戦となればサクラやブレンダに軍配が挙がろうか。
「無茶しないでね、サクラちゃん――! クワルバルツの一撃は重いよ!」
「うん、分かってるよスティアちゃん! 大丈夫――私を信じて!」
「スティア。そうか、お前はスティアというのか。以前から鬱陶しい奴だ……!」
刹那。クワルバルツの眼光がスティアを捉える――
それはクワルバルツが与えた傷を彼女が即座に治癒するからだ。
優れた治癒の使い手であるスティアはしかし、落とすのも難しい。
防にも優れているのだから。重力の槍で狙おうと隙を見せない。
(クワルバルツ……やっぱり敵対心は変わらないんだね。ううん、でも)
もしかしたら実力を認めさせれば分かり合う事も出来るのではないか――?
スティアは治癒の力を振るいつつ思考するものだ。
クワルバルツとはもう何度も交戦してきたが、段々とクワルバルツの人間に対する認識も変わっている気がする。以前ほど下には見ていない気がするのだ――今もってスティアを『スティアだと』認識したのも、その証左。
竜種らしく不遜で傲慢って感じだけど。それでも。
「まだまだ足りないなら、私達の全力をぶつけるだけだー!」
スティアは叫ぶ。クワルバルツの記憶に刻まれる様な、大声と共に。
「ええ、そうですよクワルバルツ! 私達はいつだって全力なんです!」
さすればアイラも似たような想いを抱いていようか。
彼女は特に目や翼といった、鱗で覆われていない箇所を的確に狙うものだ。実際、目を狙われた際はクワルバルツと言えど、やや痛みを訴える様な表情が微かに見えようか――必中と言える一撃をもってして精密なる一手を紡ぎつつ。
「竜の怖さは知ってるつもりです。でも、もう折れてなんかあげません」
「――矮小なる人間が、大きな口を叩くものだ」
「ええ。ひとは小さくて弱くて、きっとそれは貴方の言う通り」
でも!
「それでもここに存在証明してやります。
僕達がいたんだって――貴方と戦う僕達が確かにいたんだって!」
彼女は往く。クワルバルツが恐ろしい迎撃の槍を放って来ようとも。
胸に灯る想いは溢れんばかりで。恐怖よりも、ずっとずっと大きい心があるから。
――そして心を定めれば彼女の動きが更に洗練とされるものだ。
逃げない折れない。さぁもっともっと――一緒にいましょう!
「とッ! 上です、皆さん警戒を!!」
瞬間。続けて叫んだのはココロだ。
クワルバルツを引き付けている者に支援の術式を紡いでいれば……巨大な重力の球がそこにあった。落ちてくるつもりか――!? だがさせぬとばかりにココロは更に治癒の力を振り絞る。
彼女の力があれば負の要素から逃れる事も叶うのだから! そして――
「人間共よ。お前達は――あぁ。強いのだろうな!」
クワルバルツは、叫ぶ。
「だが私は負けん。私は負けれん。先代に誓って、勝利を捧ぐ――!
――エチェディ! そろそろそっちを終わらせろ! 遊んでる場合か!」
「ほっほ。老竜の扱いが厳しいですなぁ……まぁ薄明様のご用命とあらば」
力の限りを振り絞り、彼女は自らの矜持と共に此処にいるのだから。
故に。やる気の今一つ見えなかったエチェディに――指示を出すものだ。
ならば老竜も、至る。
己が邪魔をせんと立ち回っていた亜竜ミドヨ達を食い散らかして。
――戦況を覆さんと竜がまた、やってきた。
●
「あれれ~? 上の状況がなんだか変わって来たなぁ。うーんどう動こ」
圧倒的な気配の更なる介入。
エチェディがクワルバルツ側へと至った事に夏雲は気付いた――
いや彼女でなくても気付こうか。戦局の天秤が傾こうとしている事に。
「貴方の目的はなんですか? どうも、クワルバルツ側を邪魔する動きな様に見えますが……しかし意図が掴めませんね。魔種がわざわざ竜に喧嘩を売るなど、なにがしか強い目的でもなければあり得ない事でしょう」
「ん? そうかな――? あ、そうかもね。ふふふーん。
でも私にはね、ちゃーんとあるんだよ。
だってさ。上手い事すればさ。もしかしたら――竜のお肉が食べられるかもしれないし」
故にチェレンチィは最大の警戒を巡らせながら夏雲へと言を。
彼女からは何か『異なる意図』が含まれている様に感じるのだが、その目的はなんだ――? 竜を喰らう事? それ自体は嘘を言っていないように思えるが、しかしそれならばなぜ戦いが終わった後に来るのではなく、戦いの最中から行動しているのか。
自らの命を危機に晒しているだけではないか。竜にちょっかいを出すなど。
それとも。例えば亜竜ヨドミの様に。
誰かから竜を攻撃しろと言う強い命令でも受けたか?
疑問に思考を巡らせ――しかし。次の瞬間、夏雲は口を開きてチェレンチィに襲い掛かってくる。さればチェレンチィは雷を纏い、神速の一撃を放とうか。
誰が相手になろうとも構わないように常に気を付けていたのだ。
魔種であればこそ油断出来ぬ相手ではある、が。
「誰かの小間使いかしら? クワルバルツを攻撃してるって事は、ホドがアンタの主――? でもなんだか違和感があるわね。そんな忠誠心が高いような匂いが全くしないもの」
「――どうあれ此処で仕留めに掛かるとしましょうか。
魔種を生かす道理はありません。不安の種は全て摘むものです」
「えへへ。いいのかな、でも。私一人にかまけてると――きっと大変な事になるよ?」
それでもリカやクーアも参戦すれば夏雲が魔種と言えど簡単には押し切れぬ。
手に抱く何らか強靭な『骨』を用いてリカにクーアの一撃を防ぐが――二人もイレギュラーズとして相当な使い手だ。リカは誘惑の権能を用いて夏雲に隙を作らんとし、その間隙を突く形でクーアの魔術が襲い掛かろう。
それは夢魔『クーア=サキュバス』としての真髄。
逃さぬとばかりに夏雲へと至ろうか――
が。夏雲はそれこそ良いのかと不敵な笑みと共に言の葉を。夏雲は魔種だ。竜の方が苛烈で強力であったとしても、とても放置して良い存在ではない……何をしでかすか分からぬのだから。
されど夏雲自体は嫌がらせの攻撃を行う程度の消極的な行動が主であった。
あくまでこの戦場における最大の脅威にして抑えるべきは――竜なのだ。
「それは道理だな――だから放置してはおかねぇよ」
と。その時、言うはファニーである。
彼は優れた聴覚をもってして周囲の状況を常に取得せんとしていた。酷い天候環境でえあるが為、暴風の音があればいつもよりやや聞き取り辛い面があったが。それでも夏雲をリカやクーア達に任せる事が出来れば、戦闘面以外にもある程度手を割ける。
――そうして彼が紡ぐのは、やはり死の指先だ。二番星を降らす術が、星屑を敵に。
竜を狙う。夏雲の事を探りたい思いもあるが、彼方の戦況も手伝わねば、と。
「あーいーけないんだ、いけないんだ。殺しちゃお♪」
「おッっとぉ! やれやれ、骨の翼と尻尾か……仲良く……は出来なさそうだな」
刹那。夏雲がファニーを狙ってくる。彼の『骨』に魅力でも感じたのか?
強い敵意が己に向いているのは確かだった。
骨仲間として仲良くするのは難しそうだ。
――彼女はファニーを『餌』としか見ていない。
その瞳は濁っている。狂気なまでに。暴食の感情を込めて。
そして――ファニーが先程放った一撃はアユアやホドを巻き込んでいた。
降り注ぐ星屑。だがそれでも、金剛の名を冠するアユアは止まらない。
「死ねー! 今すぐ死ね! 百回死ね! オラオラオラ――!!」
「えぇいなんと鬱陶しい犬だお前はッ!」
アユア自身も、このラドンの罪域に降り注ぐ悪天候の影響を受けているはずだが、彼女の熱意と闘志は収まらぬ。クワルバルツの為にと、まるで忠犬が如く。ホドをぶん殴って吹っ飛ばしてやらんとし――
故にホドの権能に囚われるのだ。雨と雹、そして風を複合した一閃がアユアへと。
さすれば如何にアユアとはいえ吹き飛ばされようか。
再びに地に落下。木々を薙ぎ飛ばし、て。
「ほら――また壊れる。ね? 私たちも森を壊すのは嫌だ。
戦うにしてもこの場から動かずに足を止めない?
そうすればきっと森が傷つく事はない筈なんだよ」
「うっせーな、お前! さっきから何なんだよ! がるる!」
さすれば再びハリエットが会話を試みんとするものだ。
一度程度で諦めない。もしも仲良くなることが出来れば……この子からクワルバルツに話が伝わって、状況が変わるという期待も出来るかもしれないから。アユアは随分と人間を警戒――或いは見下して――いるようだが。しかし根が悪人である様にも見えなければハリエットは希望ぐらいはあるのでは、と思考するものだ。
彼女にもアユアに吹き飛ばされた傷が残っている。
だけど、それでもと。
「人間の言う事なんか聞いたら姐さんにぶっ飛ばされるぜ!
これ以上付きまとうなら、ぶちのめすぞ――!」
「……仕方ない。やっぱり力を示さないとダメ、かな」
「やれやれ。どうする、逆鱗なら、ある程度当たりは付けてあるが……
もしもやれば、とんでもない事に、なりそうだぞ」
が。竜と真っ当に語り合うには資格が必要だ。
それは竜自身に認められるという――大前提。
さすればエクスマリアが言を紡ごう。かの堅牢さを誇るアユアは素の体力も大きいのか……鱗を討ち抜けても中々芯に届きづらい。その為か、アユアは怯むというほどまではいかぬようだ。もっと攻撃を重ね、体力を削る事が出来れば話は別だったかもしれないが。
しかしこの混迷する状況で贅沢は言えまい――
それよりも。エクスマリアは度重なるアユアへの干渉である程度予測がついていた。
――逆鱗の位置の事だ。
そこを穿てば、力がある事を示す事が出来るのではないだろうか。
或いは上手く潜み、ホドの攻撃に合わせて逆鱗を穿つことが出来れば……ホドが逆鱗に触ったと見せかけて彼に怒りと全力の矛先を結びつける事も叶ったかもしれないが。それは至難の業とも言えるか。
それよりもエクスマリアは天も見る。
エチェディの気配を感じているのだから――
「急がねば、な」
ハリエットは逆鱗をどうするにせよアユアの隙を見つけんと再度射撃を敢行。エクスマリアは皆に活力を齎す号令を齎しつつ――更に星を降らそうか。とにかく攻撃するにせよなんにせよ、流れを途絶えさせてはいけない。
「アユアの逆鱗を狙うのか? それなら手伝おう。
――当てるにせよどうにせよ『狙える』とは教えておきたいな」
「うん? ああ、成程。そうだね……それなら力の示しにもなるかも」
「ああ。それに……なぁ? 我々ばかり必死なのも不平等だろ?」
その時。ハリエットに合流したのは、連星重力より間一髪逃れたラダだ。
撃つのなら手伝う、と。掠めるだけでもきっと効果があるのではないだろうか。
少しは相手を焦らせたい所でもあるのだから。
二人は狙いすます。銃口をアユアへと向けて……気を狙おう。
逆鱗を狙った事が分かったらそれだけで怒られるかもしれないから。
一瞬のチャンスを――者にするのだ。
そして。それなりの時間は既に経過しつつあった。
あともう一刻。もう少しクワルバルツらを此処に留まらせる事が出来れば……作戦は成功と言ってもいいのではないだろうか。
「矛を収めろとまでは、言わない、が。
場所は移さないで貰おうか、薄明竜。喧嘩に水を差して、すまないが、な。
そちらも、この地を護る意思が強いのであれば、我々の言も、分かるのではないか?」
「――フン。痴れ者め、そもそもお前達が此処に、いやこの奥に至る意志を見せなければ問題は起こらなかったのだ。今更人間の意に沿う必要はない!」
「意固地、だな。なら、仕方あるまい。ホドの操る天災も凄まじいが――」
マリアの落とす星の鉄槌も、ちょっとしたものだ、ぞ?
エクスマリアはその言と共にいくつでも魔力を収束させよう。
喰らえ喰らえ砕かれよ。天の星に裁かれよ。
超速の詠唱こそ彼女の真髄が一端。
――落とす。鉄の星を、竜の頭上へ!
「下らん! こんな程度で私が……竜が怯えるものかッ――!」
「いや~偶には怯えちゃってもいいんじゃない? 女の子なんだから、さ。
怖いものはこわいって震えるのも正直でぼかぁいいと思うな~」
同時。クワルバルツがエクスマリアへと反撃の重力を放つ――と。
夏子が至った。ノンノン、クワちゃん! 女の子を虐めようとしちゃダメ!
「てかさ。強さにも色々あるからさ、まずはお互い良く知ってみようよ。
そんで僕と子供作ってさ 種族間を超えた平和の象徴を。
分かる? 俺達の子供が新しい未来を作るんだよ。さしずめ僕らは新時代のアダムとイヴ」
「死ね!!!!! なぜ私が人と番にならねばならんのだ!!!!!」
わぁ段々返答がド直球になってきた! まぁ前々からストレートだった気もするけど!
重力の槍が一斉に夏子に襲い来る――クワちゃん殺意全開。僕は闘志全開。
やっべ死ぬマジやばいってこのクワちゃんの愛情の欠片達。あ、そういえば。
「ねぇねぇクワちゃんにももしかしたら逆鱗あったりしちゃったり~!?
胸の下側に隠れてたりしませんかぁ!?
一生に一度のお願いでいいからちょっと拝見させてもらえると実に嬉し」
直上から二つの重力球が落ちてきた――ぎぇ~~!
――と。コミカルな様に見えるが、夏子の行動自体は正に迅速であった。
数多の言にて自らに注意を寄せ付け、隙あらば奪命剣手でクワルバルツに触れんとする。
その刹那。確かにクワルバルツの意識は夏子に引き寄せられていたのだ。
連星重力球で地に縛り付けたもの、の。そこ以外の注意が微かに逸れて。
「私も本当は真正面から戦いたいんだけどね!
だけど――今はちょっと余裕がないんだ。だから、ごめんね!!」
直後。至ったのはサクラの斬撃だ。
クワルバルツが反応を見せて彼女の頭上から重力の槍を一つ落とすも――サクラの反応の方が早い。紙一重で躱したサクラは、微かに服の一部が損傷したのみ。そのまま竜を堕とす一閃をもってして、クワルバルツに肉薄しよう。
「ちゃんと挑戦にいくから、今日は退いてくれると嬉しいかな!」
「竜が退く? 戯言だ。そんな事はあり得ない。竜が退くなど――!」
「ほっほ。然り然り。それでこそ先代様の御意思を継がれる方。
なんたる気高さか……あまりの御美しさ、このエチェディ。
目が潰れるようでございます」
「ッ! エチェディ……!!」
と、その時だ。空より舞い降りるは――エチェディか。
ココロが見据えたと同時。エチェディの口より放たれるは、風の塊。
ラドンに吹き荒れる暴風より強き一閃だ。
イレギュラーズ達を薙がんとする。すかさずココロが治癒の力を振り絞りて、辛うじて戦線は崩壊せぬ、が。それでも今の一撃をなんとか凌いだだけの事だ。エチェディが本格介入すれば終わる――
「く、ぅ……! エチェディ、あなたは……言っていましたね、以前」
『――ベルゼーがお主ら程度に負ける可能性などあるまいよ』
「その通りでしょう、先日までは。
しかしわたし達はイレギュラーズ、負ける未来を覆せる存在」
「愚かな。増長の極みだな、たかが世界の危機を幾つか救った程度で、竜に勝てるとでも?」
「断言しましょう。可能性が変化するのを――そこでよく見ていてください」
エチェディの尾がココロに振るわれる。
超速の一撃だ。右の腕が防いだが――あまりの衝撃にココロが吹き飛ばされようか。
厭な、音がした。折れただろうか?
だけど。ココロの目は死なない。
ココロの魂は死なない。
――戦って、みんな生き残ると決めていたのだから。
「絶対に、皆さんを……生かして、帰すんです……!」
「然り! 身命を賭しても果たすべき役目がある……!
例え相手が竜であろうと、何も変わらない――!」
絞り上げる治癒。ココロの暖かな風が吹いた、直後。
至るのはムサシだ。強い意志と共に、彼は竜へと挑もう。
「二天一流の技……ッ! 焔閃抜刀・撃ッ!!」
「ぬぅ……なんと小癪なッ」
「小癪だろうがなんだろうが――負けませぬッ!!」
「無茶しないでね! 誰か死んじゃったりしたら……元も子もないんだから!」
それは彼の全霊たる一閃。正に奥義たる一撃。
誰もやらせない。蹴り飛ばしてでも、押し戻す!
どれ程強くても。どれ程絶望的でも。最後の最後まで……乗り切ってみせる!
正義の炎は――決して潰えないのだ!
故にリリーもまた動きを支援しよう。彼女は敵の動きに応じて一撃を使い分ける。
なんでもする。この戦いを乗り切れるなら、この戦いから――皆で生きて帰れるなら!
「さーて俺は俺は水竜さまの信仰者だからな、他の竜に興味はあるが負けたら水竜さまの顔に泥を塗ることになるからな! 絶対に生き残ってやる……! わりーがこんな所では死ねねーな!!」
「むっ……その鳥顔、以前見た事がある様な……はて……」
「おいおいこの前会ったろ! もう忘れたのか!? マジモンの鳥頭か!!?」
さすればカイトも敵の抑えにかかるものだ。足止めに全力。
緋色の翼と共に彼は戦場を飛翔する――
エチェディにしろクワルバルツにしろ、その攻撃の余波に気を付けながらだ。うっかり当たりで撃墜なんてこと、認められるはずがねぇ……! しかしエチェディの野郎、ボケてるのか鳥さんの事を忘れてやがる……!?
「思いださせた方がいいかぁ? 水竜様の話――もう一回すっか!」
鳥種勇者なので負けないめげない。
水竜様の銀鱗に誓って――抑え続けてみせよう。
そして生き残る事も誓って、だ。
「そうッスよ。竜だからって、それだけでなんでもかんでも勝てると思ってるなら――それこそが増長ってもんッス。耄碌してそうな老竜さんには、分かんないかもしれないッスけど」
更にはライオリットも至ろうか。基本的にはスルーしておきたい所だったのだが、エチェディがちょっかい掛けてくるのならば致し方ない。ライオリットの吐息が襲い掛かる――それはまるでドラゴンのブレスが如き一撃。
本当はもう少しホド側の様子を探っておきたかった。あの権能は一体どこで制御しているのか。そういったものが掴めれば、と……優れた感覚と共に常に観察していたのだが、よく分からなかった。もしあるとすれば外からは見えない――体内にあるという事だろうか。
ともあれエチェディの介入を始めとして段々とイレギュラーズ側が崩れ始めていた。
いや正確にはホド側も、だろうか。
亜竜を失い、夏雲をイレギュラーズに抑えられているホドはほとんど孤立無援だ。
「チッ。エチェディめ――なにをしている。
『ここではない』とでもいうのか? 人を奥に通す事になるぞ」
「……?」
瞬間。ホドが零した言葉は、なんだったのか。聞いたのはアレクシアだ。遠巻きにだが潜ませていたファミリアーがホドの呟きを微かに拾っていた。その意を追求する暇は――残念ながら今の彼女には無かったが。
「皆――生きてるね? 大丈夫。絶対に、生きて帰ろう……! 私が必ず皆を支えてみせるから……!」
直後。彼女は天使の雨が如き力を皆に宿そう。
治癒力を増強させたうえで――一気に傷を癒すのだ。
まだだ。まだ終わらぬとばかりに。
負を撒き散らす天候に負けるか。横暴な暴力に負けてたまるか!
「愚かな。そんな事をしても、貴様らの苦しみが長引くだけだぞ」
「そうかな。舐めるなよ、人間を――来いよホドッ!」
然らばアレクシアの行動を嘲笑するホド……の注意を引いたのはシラスだ。
果敢と前に出続けた彼、も負傷が著しい。
だがそれでもホドを留め続ける事が出来たのは彼の力量あってこそだ。
数多の撃を遮断する術は何度か破られこそすれど、時間稼ぎには大きな意味があった。
場より齎される負に対しても彼は自前の力で抑え続ける事も叶う程なのだから。
――そして。彼は未だ力を振り絞る。
一矢報いるのだと。『仕掛け』を仕込んで。
その仕掛けはタイミングこそが重要であった。
なにせ――クワルバルツの方に関連していたのだから。
「クワルバルツ。まだだ。まだ行くな。私は――生きているぞ」
紡ぐのはブレンダだ。
体中が悲鳴を挙げている。ああ、そうだ。お前は、そうだったな。
痛みが生を実感させると言っていたな。
「私にもわかる。そしてその喜びも。
――故に与えよう。貴様が痛みを望むというのならいくらでも刻んでやる!
我が刃は貴様に届く! その身に、その魂に、そして永遠に記憶に残る刃だ!!」
「図に乗るな人間。そんなモノが」
「私は、ブレンダだ。ブレンダ・スカーレット・アレクサンデルだ!」
――お前に痛みを刻む者の名だ。
知れ。強者故の孤独などもう感じさせない。私が貴様の敵になってやる。なってみせる。
知れ。楽しさを。楽しいだろうクワルバルツ!
全力でぶつかり合い、傷つけ合うというの快感は極上だ! これまで誰も届き得なかった貴様の首に私が剣を突きつけてやろう。貴様の生を脅かしてみせよう。貴様の生は私が刻んでやる!
「――そうだ。今ここに断言してやる」
薄明竜を討つのはこの私だと。
「他の有象無象に負けるのは許さんぞ! お前は孤高で在れ。天で待て!」
「大言をほざくか――!」
「大言かどうかは、その瞳で確かめろッ!」
竜と人は馴れ合わぬ。ならば敵として在ろう!
ブレンダは往く。全霊を賭し、全霊をもってして。
この一時。エチェディにもアユアにもホドにも誰にも邪魔させぬ。
――刃を紡ぐ。クワルバルツの迎撃を乗り越え、繋ぐのだ。
重力の槍も連星重力も怖くない。
むしろ、あぁ、楽しい――ッ!
「ふっ――強欲たる人間どもめ! いいだろうかかってこい、捻り潰してやる!」
「だーかーら! いいですか、クワルバルツ!
ボクの名前はアイラ! ア・イ・ラ、です!
――貴女が呼んでくれるまでごねる痴れ者です!!」
更に、アイラも至ろう。とっておきを胸に秘めながら。
傷はある程度自らで治癒した。柔らかな黄の花弁が舞い踊り、幾多の蝶が纏いて。
そうして往くのだ。だって今度こそ知ってほしいから。
「何度でも。何度でも会いに行きますよ。
貴女がもっともっと奥に引っ込んだって、必ず見つけてあげます」
「正気か、小娘。名前一つに、そこまで意を見出すのか」
「そうですよ。だって名前って――その人だけのモノなんですから」
貴女だってそうなんじゃないですか。クワルバルツ。
誰が名付けたかは分かりませんけれど。
クワルバルツって名前だって――特別なモノなんですから。
「次に会うときはちゃあんと名前を呼んでくれないと――拗ねてやるんですから!」
「ならば。生きていたら――呼んでやろう。お前達の顔も、流石に覚えた」
相打つ。アイラの一撃は、依然として己が出し得る最高の一撃を。
呪いにして乗り越えるための技――
彼女は好いてはいないけれど。それでも、クワルバルツに一撃刻む為ならば。
「おやおや薄明殿。それ以上人間に付き合えば、流石に傷は免れますまい」
「邪魔をするなエチェディ。散々サボっておいて今更保護者面か――?
これらは、私が潰してくれる! この人間共は、私こそが!!」
然らば。クワルバルツの心臓の鼓動が跳ね上がった。
ああこれだ。この感情だ。傷を負い、血を流し。命を感じる一時。
――至高の一時だ。
故に紡ごう。我が身の全力をもってして!
「またその技? 流石にもう見切ったかなぁ」
「何っ……?」
「だって二回も見たしね! 嘘だと思ったら私に使ってみると良いよ!」
「言ったな小娘――いやスティアよ。ならば生き残ってみせるが良い!」
直後。クワルバルツを挑発したのはスティアか。
彼女の身にも幾重もの傷跡が見える。
それでも彼女は立っている。それでも彼女はまだ生きている。
――瞳の奥に輝く魂が、其処に在る。
故に投じた。クワルバルツの全霊を。グレート・アトラクター。
究極の重力を――さすれば。
「こっちだ、ホド!」
直後。シラスの声が――響き渡った。
先の『仕掛け』だ。時を見据えた彼が行ったのは幻影と声の合わせ技。
クワルバルツの姿をもした幻影とクローンが如き声をもってして、紡ぐ。
本物とは正反対の方向から。
ホドが騙されるかは分からない。だが、もしすぐに見破ったとしても。
数瞬の硬直が――ある筈だ。
……苛烈なる戦いの中でそれだけの暇があれば十分。
巻き込まれろ、ホドよ。
「ぬ、ぉぉぉぉお――!! 舐めるな虫がああああ!!」
であれば――ホドは即座に動いた。自らの権能の力を一点に収束させたのだ。
それはグレート・アトラクターを警戒しての事。
スティアを狙ったとしても動きが鈍ったホドもまた巻き込まれる位置にある。
故。ラドンに吹きすさぶ『雷』を一点集中させ――対抗しようとしているのである。
完全に防ぎきれぬまでも直撃を避ける事が出来れば十分、と。
恐らくこれはホドにとっての最大の技でもあったのか――?
いずれにせよ、轟音が響き渡る。
超撃の衝突は鼓膜を突き破るが如く。空間が振動し、誰しもの身を揺らそう。
「成程。グレート・アトラクターは――ホド。流石のお前も受けれない様だな」
その姿を見たラダは呟こう。森の木々を盾に、衝撃を凌ぎつつ。
アレは竜にとっても脅威であるらしい。
全く、アレを受けて生き残ったのは誇っていい事だろうかと思うものだ。
「おっとぉ。これで終わりじゃ――ねぇぞ!」
だが、シラスは前へと進もう。幾度も繰り返した一撃によって、ホドにも堅い場所と比較的柔らかい場所があるのは分かった。そこへ――放つのだ。鉄帝での戦いの折に受け取った名誉の証を胸に抱きながら。
「舐めんなって言ったろ?」
人間を。そして。
「――俺達を」
ぶち込んでやった。その横っ面に――天を裂く雷光の如き、拳の殴打を。
「き、さ、ま、らぁ――!!」
「おぉ怒髪天を衝くが如く起こっておるの!
ならば覚えておくが良いぞ叛逆竜、麿が……麿こそが……」
――変なお殿様じゃ!
憤怒するホドへと夢心地が更に煽る様に。あぁ一方的に見下されるだけの関係なんぞつまらんからの――絶好の機会を狙っておったのよ。故にぶち込む。いずれガチンコでやり合う日が来るかも知れねばこそ、その記憶にこの顔を刻み込んでやる。
夢心地、最後の一撃が紡がれる。
それはホドの命を奪うには到底足りなかったが――
しかし。プライドの高いホドの顔が確かに歪んだのを、シラスや夢心地は見たのであった。
……そしてクワルバルツの側も終わりが訪れる。
グレート・アトラクターは皆に炸裂するまでに微かなタイムラグがあった。
先程のホドによる対抗だ――故に。
「どう? 人間だって――そんなに弱くないでしょ」
彼女は事ここに至って、治癒ではなく攻勢へと転じた。
振り絞る。魂の奥底から。
聖なる刃を――此処に
「ぐッ――ぉ、ぉぉ、おおお!!」
スティアの一撃がクワルバルツへと。
以前の御返し。直後にはクワルバルツの腕による払いが、スティアを押しのけたが。
ああ――これで少しは、認めて貰えるかなぁ?
●
……戦いは終わった。
激しい竜同士の抗争を抑えるのは一歩足りなかった。
エチェディ介入後に生じたイレギュラーズ側の被害がかなりのものだったからである。エチェディの介入がもう少し遅ければ――もしかしたら、話は別だったかもしれない。魔種たる夏雲は不敵な笑みと共に涎を抑えつつ、どこぞへと姿を消した。
そして竜たるホドも、グレート・アトラクター封じの際に少なくない傷がその身に刻まれ、怒り狂って人間共に暴れ回ったが――やがてアユアがまた横から殴りつけてきて撤退すれ、ば。
「うおーこえー! なんだあの人間共、逆鱗狙ってきやがった!!
姉御~! 首の所傷ついてないですかね!? 大丈夫っすよね!? んぎゃー!」
「煩い。今、息を整えるのに忙しいのだ」
――アユアが壮絶に喚いていた。どうも、エクスマリアの見つけ出した逆鱗の付近をハリエットとラダが的確に『掠め』させたらしい。人間がそんな針の穴を通す様な事を出来るなんて――世界の広さを知ったアユアは、微かに恐怖を覚えた、のかもしれない。
なまじそこ以外はかなりの堅牢さを誇るアユアであればこそ……
ともあれ。アユアのやかましい声をクワルバルツは拳で黙らせる。
……クワルバルツ自身も、かなりの負傷を負った。
イレギュラーズ達が強くなっている。練達の折よりも、もっと、もっと。
「ふ、ふっふふふふ」
「薄明殿。お加減は」
「やかましぞエチェディ。お前があ傍時にもう少し早く来れば傷は浅かった筈だ」
「それは申し訳なく。どこか楽し気に感じましたので」
「そうか?」
痛みがある。痛みが心地よい。
ああ――これだ。心臓を跳ねさせる、この感覚。
また来い、イレギュラーズ。
あの領域を通してしまうのは先代に申し訳ないものの……
今を生きる我が身の猛りが、確かに其処にあるのだから。
成否
失敗
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ。
ヘスペリデスは、すぐそこに。
ありがとうございました。
GMコメント
●目標
・一定時間、竜種達を戦闘区域外に出さない事。(ただし竜が撤退して戦域外に出た場合はOK)
・イレギュラーズ側に死者が出ない事。
・可能な限り竜種にダメージを与える事。(努力目標)
●フィールド
ピュニシオンの森の出口付近『ラドンの罪域』と呼ばれる地です。
周囲は深い木々に囲まれていますが、天候としては黒き靄、霧、風、雷などが吹き荒んでいます。本戦闘域では一定ターンの始まり毎に、敵勢力を含めて以下の症状が付与される事があります。
・一定の固定ダメージが与えられる。
・【毒系列】【火炎系列】【凍結系列】【足止系列】BSが1~2個ランダムに付与される。
ただしこれらの効果は『防技』『抵抗』『回避』の値が高いと効果が減少したり、回避する事も可能です。
//////////////////////////////
●敵勢力A
●『薄明竜』クワルバルツ
天帝種バシレウスの一角、六竜とも称される竜種です。
深緑での戦いにも一時ですが参加しており、その際にイレギュラーズ達の実力に興味を抱いている節があります……が。竜としての強い誇りを抱いている者でもあり、協力体制を築くのは難しいでしょう。竜は竜。人とは馴れ合わぬ存在です。
主にホドと交戦しています。
かなり激しくやり合っており移動を繰り返しています。
・『重力槍』(A)
重力を槍の様に集め放つ一撃です。恐ろしい貫通能力を持ちます。
威力を小さくして複数の展開し、銃撃の様に降らせてくる事も可能です。
・『連星ブラックホール』(A)
域攻撃です。攻撃前に、まず範囲内にいる対象には機動力・反応・回避にマイナス補正が付与されます。特殊なBS扱いでBS解除系スキルか、ターンが経過する事によって解除されます。(ただしそもそも回避や抵抗が高ければ、この効果は回避は不可能ではありません)
・『グレート・アトラクター』(A)
当たったら非常に危険です。しかしクワルバルツにとっても切り札級の一撃なのか、以前の戦いでも『ここぞ』と言う場面以外では使用していません。それは今回も同様でしょう、乱発は出来ない技と思われます。
・『空間歪曲』(P・使用停止中)
クワルバルツへの攻撃は、全てレンジが-1されます……が。今回は使用していないようです。
どうも周辺の環境にやや影響があるのでしょうか。クワルバルツは気にして使用していない様です。
●『金剛竜』アユア
『金剛』の異名を冠する将星種レグルスに位置する竜です。
異名通り非常に頑強な竜であり、ちょっとやそっとの攻撃では身じろぎもしません。天候による異常もその頑強さで強引に乗り切ろうとしてきます。あくまで強引なので無影響ではなさそうですが。
いずれにせよどこかに逆鱗となり得る弱点箇所は存在していると思われます。
クワルバルツに懐いており、現状では彼女と共にホドと戦っています。
●エチェディ
分類は不明ですが竜種の一角です。どうも老竜と言える程長命な存在であるらしく、あまり動きが機敏ではないように見られます。アユアの様に硬くも無い事でしょう。とはいえそれでも竜は竜。強靭な戦闘力を宿していますので、ご注意ください。
また、クワルバルツに仕えている存在なのか彼女に忠実である様に見えます。
主に亜竜の対処を行っています。
//////////////////////////////
●敵勢力B
●『叛逆竜』ホド
将星種『レグルス』に位置する竜です。
天帝種嫌いの竜であり過去にクワルバルツや、クワルバルツの『先代』に戦いを挑んでいた野心的な存在でもあります。
クワルバルツよりも更にプライド高い竜であり人間など見下しています。と言うよりも過去に何かあったらしく人間の事は滅茶苦茶嫌ってるレベルです。協力体制を築くのは絶望的でしょう。でもクワルバルツの事もぶちのめすつもりなので、人間が邪魔してきても彼女と組む事も無いと思われます。
『流れるもの(流動)』を操る権能を宿しており、フィールド上の雨風や雷などは彼の支配下にあります。その為、ホドは例外的に『フィールドの効果を一切受けません』(『ホド陣営』ではなく『ホドのみ』です)
更にこの能力を応用した広範囲攻撃を得手としています。
クワルバルツを執拗に狙っています。かなり激しくやり合っており移動を繰り返しています。
●『夏雲(シアユン)』
亜竜種の魔種です。
具体的な戦闘能力は不明です。ただ、竜よりも強いというのは些か考えにくいです。
森の中に隠れながらクワルバルツやアユアに嫌がらせの攻撃を行っているようです。イレギュラーズを目の当りにした場合の行動は不明ですが、友好的ではないでしょう。
●亜竜『ミドヨ』×15体
ホドの配下たる亜竜達です。
空を飛翔し炎のブレスを撒き散らしたりして攻撃してきます……が。
正直竜種と比べれば左程大した戦力ではありません。シナリオ開始時は懸命に竜種と戦っています。
//////////////////////////////
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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