PandoraPartyProject

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Stahl Gebrull III

 ――アーカーシュ中枢、ショコラ・ドングリス遺跡の掌握に成功しました!

 鉄帝国軍の兵士達が一斉に諸手を挙げて叫び出す。
 だが最大の課題が残っていた。
 浮遊島アーカーシュは徐々に高度を下げており、帝都への落下は時間の問題となりつつあるのだ。

 ――魔種の撃破に成功しました! 作戦は成功です!

 何人ものイレギュラーズが制御コンソールの前で険しい表情を浮かべている。
 報告される戦果自体はどれも喜ばしいものだが、こちらはといえば、どうにも出来ていない。
「さあて、本番はここからだ」
 ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)がコンソールの操作を始めた。
「どうにか出来ないのか」
 投影された幻影のようなスクリーンを見ながら、レリッカ村長アンフィフテーレ・パフは不安げに、カシエ=カシオル=カシミエ(p3p002718)へ視線を送る。
「ヘルプとか説明書とかはないんすかね」
「こんな結末ではなんとも締まらないからね、君もそう思うだろう?」
「ええ愛無、反論の余地はないわ」
 日向 葵(p3p000366)恋屍・愛無(p3p007296)に続き、リーヌシュカ(p3n000124)達鉄帝国軽騎兵隊も周囲の捜索を始めた。
「私も手伝うわ。この精霊都市レビカナンには詳しいもの。アルヤンもリュティスも手伝って」
 アルヤン 不連続面(p3p009220)リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)にマイヤ・セニアが振り向き、両手をわたわたさせた。
「わかったっす!」
「もちろん、お手伝いしますよマイヤ様」
「ええと、ええと」
 確か偶然にも遺跡の制御機構(システムメタトロン)の鍵(キー)とされたユルグ・メッサーシュミット少年は最高権限を委譲したということだが。
「レリッカ住人として登録された場合、誰かが最高権限を得ることが可能かもしれません」
「ならばシステムにお問い合わせですわ!」
 カシエの言葉を聞いたフロラ・イーリス・ハスクヴァーナ(p3p010730)がコンソールに尋ねる。

『現在の最高権限は存在しません、暫定権限者として登録します』

「!」
 コンソールの無機質な案内音声は、驚くべき結果を告げた。
 それと同時に、ログへイレギュラーズの名がずらりと並び始めたではないか。
 もちろん全員の名前が含まれている。
 ということは――
「えっと、えーっと……とにかく」
 嶺 繧花(p3p010437)リドニア・アルフェーネ(p3p010574)がコンソールに指を打ち付ける。
「止まれえええ!!」

『アーカーシュの軌道を正常高度へ変更します』

 一瞬の静寂の後、身体の芯を揺さぶるほどの喝采が轟いた。
 だが、しかし。

「アーカーシュの高度低下が止まりません!」
 計測を続けていた黒服の男――特務軍人が悲鳴をあげた。
「どういうことですか!?」
 歯車卿が問いただす。
「すぐに再計算を」
「ハッ!」
 戦闘が終了し撤収作業が進む中、中央制御室の空気は冷え切っていた。
 一分、五分、十分。経過している時間は長くないはずだが、余りに遅々と感じられる。
 エッダ・フロールリジ(p3p006270)が腕を組み、即時撤収と帝都への再連絡を試みようとしたその時。

 ――落下速度に僅かな緩みが見られます!

「目下の観測だけでなく結論まで出してくださいよ、何のための参謀、何のための特務ですか!」
 歯車卿の叫びに黒スーツの男達が慌てて計算をはじき出す。
 極めて簡単で、自然で、分かりやすいことだ。

 重量物は急には止まれない。

 停止命令を送っても、即座の停止とは行かない。
 むしろ『突然この島から放り出されなくて良かった』とまで言える訳だが。
 このまま間に合わなければ、これは帝都に落ち、甚大な被害をもたらすだろう。
 そうなれば万事休す、作戦の成功もなにもない。
 島は失われ、帝都は壊滅するだろう。
 それはこの国の終焉、少なくとも呼び水となる可能性さえある。
「幾星霜の果てに、これまで多くの浮遊島が地に墜ちました」
 アイル=リーシュがぽつりとこぼす。
「けど、セレンディだってラトラナジュだって居てくれる」
 ジェック・アーロン(p3p004755)の言葉は、あらゆる意味での希望そのものだった。
 最終的な結論は出ていない。
 上昇する力が勝つか、落下が勝つか。
 問題はそこだ。

 帝国軍とイレギュラーズ、そしてレリッカの住人達はワイヴァーンや気球などの準備を始めた。
「全員の点呼と避難経路の確認は終わったよ」
 刻見 雲雀(p3p010272)の報告に、幾人かが安堵に胸をなで下ろす。
 歯車卿は帝都としきりに連絡を取り合っていた。
 最後に残るべきは『責任者』は誰なのか。歯車卿もエッダも、覚悟は決めている。
「いい加減、アガれええええええ!」
 茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)が叫んだ、その時――

 ――アーカーシュが静止し、徐々に高度が回復しています!

 一瞬、耳鳴りがするほど空気が静まる。
 兵士達はへたり込み、乾いた笑い声をあげはじめた。
 手を高く違いに打ち合う者、抱き合う者、拳を振り上げ叫ぶ者。
「……絶対に尻尾を掴んでやる」
 そんな中で、シオン・シズリー(p3p010236)が拳を握った。
「また忙しくなるっスね」
 キャナル・リルガール(p3p008601)も工具の準備を始める。
「まあ鉄帝国としてはこれからスもんね」
 ぐっと伸びをした佐藤 美咲(p3p009818)が、大あくびを零す。
 全てが終わったという訳ではない。戦争屋、パトリックを反転させた魔種の正体、ノイスハウゼンが被った被害の全容、そしてアーカーシュにおける都市やゴーレム達の修繕やインフラの整備。
 どれもこれも山積みだ。

 特務軍人の解析によれば、徐々に高度をあげノイスハウゼン方面へと南下をはじめたアーカーシュは半日ほどをかけて、ようやく正常高度へと回復したようだった。

 夕刻。
 エッダが壇上へと登ると、居並ぶ兵士達が一斉に敬礼する。
「これをもって鋼の咆哮(Stahl Gebrull)作戦の終了を宣言する!」

 ――その後日

 ※鋼の咆哮(Stahl Gebrull)作戦が成功しました。イレギュラーズの勝利です!
 ※アーカーシュの高度が回復しました!

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