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ラトラナジュの火Ⅱ

ラトラナジュの火Ⅱ

 最悪の事態だ。
 そう、誰かが言った。
 もしかしたら、あなたが言ったのかも知れない。

 天空の島アーカーシュが形を変え、紅の雷を落とし鉄帝国に巨大なクレーターを作ったのだ。
「ノイスハウゼンに着弾。街が全壊――いや、してないわ!」
 魔王城のモニター室にて、セレナ・夜月(p3p010688)がモニターへとかじりついた。
 同じくモニターを覗き込むマカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
 煙のはれたノイスハウゼンの街は確かに壊滅していた。建物やのどかな段々畑の風景が巨大なクレーターへと変わっている。
 だが、『半分だけ』だ。
「破壊したのはノイスハウゼンの南半分だけだ。なぜだ? あれだけの威力を持った兵器だ。中心部に着弾させれば全て破壊できたはず……どう思う」
 話をふられたルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)はじっとモニターをみつめていた。
「これだけの兵器……狙いがズレたなんてことはないのでして。狙った場所に必ず着弾できたはず」
「パトリック・アネルよ。魔種ではない。人間としてのパトリックが、未だ彼の中で抵抗しているのよ」
 レイリー=シュタイン(p3p007270)がモニターを見つめ、悲しげに目を細めた。脳裏によぎるのは、かつてギアバジリカに飲まれたショッケン・ハイドリヒ。皮肉なことに、彼らは悲しいくらいに人間だった。
 きびすを返し、歩き出す。
「私はエーデルガルト遺跡の防衛にあたるわ。ここは……彼のことは、お願い」

 はるか天空。アーカーシュの砲身のすぐそば。
「砲身――ラン・カドゥールより再び高エネルギー反応!」
 オペレーターの叫び声を聞き、御子神・天狐(p3p009798)はハッと顔をあげた。
「『ラトラナジュの火』をまだ撃てるのか!? 一発だけって大佐言っておったじゃろ!?」
 うどん屋台を引いて走る天狐。走るっていうか空を駆けていた。屋台からは飛行機めいた翼が展開し、ジェット噴射で推進している。(なのに天狐は前方でバーを掴んでしゃかしゃか走っている) 「言っていない。『少なくとも一発』と言ったんだ。角度計算――狙いは、まずいな。鉄帝首都スチールグラード近郊だ」
 声に応えたのは咲花・百合子(p3p001385)。屋台の屋根の上に乙女立ちし、とんでもない速度で飛行しているにもかかわらず長い髪が優雅に靡く以外身体を微動だにさせない。  並走するように飛行する飛空艇ハンドレッド号から、改造屋ハンドレッドはため息まじりに声を発した。
「あそこは良い仕事が沢山あったのに、残念だね」
「諦めるの早すぎぬか!?」
「一発撃っただけで地図を書き換えるレベルの兵器だぞ。人間が束になって間にはいった所で何になる? 掃除機のまえにホコリをまくようなものだね」
 ハンドレッドがどれだけ早くこの場所から逃げられるか計算しはじめたところで……キラリと空に光るものが現れた。
 白き閃光。真昼の太陽を直視してしまったかのような眩しさについ目を細める天狐。
 一方で目を見開き、百合子は大きく両腕を広げた。
「案ずるな。我々の手番は……まだ終わっていない」
 それは――大空に広がる翼であった。

「――間に合います。いいえ、間に合わせるのです!」
 大空を高速で駆け抜ける、それは『神翼獣』ハイペリオン(p3n000211)であった。
 その背にしがみつくように乗っているのは『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)。そして、『黒冠』セレンディ。
 アーカーシュ下部より露出した『砲身』はぴったりと鉄帝国首都へと狙いを定め、次なる砲撃を放つべく紅のエネルギーを先端へと集中させている。
「まもなく射程範囲です。距離70m――60、50、今!」
 ハイペリオンの声に併せ、伏せの姿勢でスナイパーライフルを構えていたジェックは砲身へと発砲。
 たった一発で常人を殺しきるという、総威力8000をゆうに超える射撃が――紅のバリアによってはじかれた。
「無効化結界!?」
 射撃の隙は突かせないというつもりだろう。そして今度こそ砲撃が放たれようとしている。
「大丈夫だよ」
 ジェックはそうガスマスク越しに呟いた。
「アタシたちは、これまで沢山戦ってきたよね。
 ずっとずっと前から。君が神翼庭園ウィツィロから目覚めた時から。
 復活した古代獣と戦って、空を目指して飛んで。アーカーシュを見つけて、いろんな新しい発見があって。
 嵐の領域を越えて、アイルと再会して、セレンディと出会って、魔王城を攻略して……」
 ジェックは冷静にライフルをリロードする。『次』に備えるのだ。
「アタシたちには、積み上げてきたものがあるんだよ。勝ち取ってきたものが、ある。
 こっちにも『切り札』があるとしたら――それこそ」
 豪速で回り込んできた巨大な球体と共に、セレンディが砲身と鉄帝国の間へと割って入った。
「通さない――『ブーク・カドゥール』!」
 一瞬で展開される黒く分厚い障壁。
 それが、紅の砲撃を完全にうけとめたのだ。
「思い、出した……そこに、いたんだね。『紅冠』のラトラナジュ!」

●『紅冠』ラトラナジュとラン・カドゥール
 砲身から、紅の結晶を自らの周りに展開した精霊が姿を現した。
 ただの精霊でないことは『ラトラナジュの火』を見れば明らかだ。
「『ラトラナジュの火』……確か、アーカーシュに残る文献にあったはずです。セレンディの盾と並ぶ、アーカーシュの超兵器!」
 気象精霊ポポッカ&フラペペに両サイドから抱えられる形で飛行していたマリエッタ・エーレイン(p3p010534)が叫ぶ。
 ハイペリオンの加護をうけた彼女たちは、簡易的な飛行能力を拡張され自由かつ高度な戦闘機動をとれるようになっていた。
 ドラネコクッションに跨がり、臨戦態勢となった無数のドラネコたちに囲まれたユーフォニー(p3p010323)が振り返る。
「あの『ラトラナジュ』も大精霊……あるいは神霊クラスということですか?」
「さしずめアーカーシュの最終兵器専用AI、といったところか」
 ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)が炎の翼を広げ、グリーザハートを抜く。
 オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)も臨戦態勢をとるべくプリズムの輝きを放射状に散らした。
「だったら、あの子を倒せば大砲を無力化できるのね!」
「その通りです」
 ターンして戻ってきたハイペリオンがホバリングをかけ、治癒の光をまっすぐセレンディへと浴びせる。
「ですがもう一つ――『ラトラナジュの火』を防御できるセレンディを倒されても終わりです。見てください」
 ハイペリオンに言われて視線を向けると、ラトラナジュの背後にある砲身『ラン・カドゥール』より無数の攻撃精霊が出撃。
 人間の子供ほどのサイズがあるピンク色の結晶がとなった精霊たちは次々にセレンディめがけて赤い結晶弾を発射した。
 四方八方から取り囲んでの集中砲火――だが。
「つまり、この子のボディガードが俺たちの仕事ってワケだ」
 黒騎士フォームとなった耀 英司(p3p009524)がその剣で飛来した結晶を防御。
 反対側では澄恋(p3p009412)が血色の巨大な爪を生成して結晶体を粉砕していた。
「子供を寝かしつけたあとは護ってさしあげる……実に花嫁力が試されますね!」
「ハイペリオン様のオーダーだ。それに、こういうフィールドは得意だしな!」
 その周囲を紅蓮の炎を渦を巻いた。――否、カイト・シャルラハ(p3p000684)が翼を広げ高速で飛び回り、結晶弾を弾いたのだ。
「わっふー! トリヤデさん、お仕事だよ!」
 ミスト(p3p007442)がぱっと両手を広げトリヤデさんを大量召喚。ヤデーと言いながら跳んだトリヤデさんの顔面に結晶弾がメリッとした。
「ヤデー!?」
「うわートリヤデさーん!」
「セレンディさんは、ぼくたちが守るよ」
 リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が空中にできた黒い足場の上に立ち、身構える。
 リュコスたちはぐるりとセレンディを囲むように布陣し、その更に外周から狙う攻撃精霊たちを威嚇するように構えた。

※帝都へ撃ち込まれたラトラナジュの火を、セレンディの盾が無効化しました!
※決戦の時が間近に迫っています! ただちに出撃準備を整えて下さい!

これまでの覇竜編深緑編シレンツィオ編

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