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『夢の牢獄』に佇む娘
『夢の牢獄』に佇む娘
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)はその牢獄に一人で立っていた。
仲間達が尽力し、巨大な月を攻撃している。あの夢の核が落ちるまで、どれくらいの時間を必要とするだろうか。
それは『夢の牢獄』に立っているリドニアとて鏡写しで仲間達の活躍を感じている。
月を壊そう、と。プラック・クラケーン(p3p006804)はそう言ったらしい。
無駄なオブジェクトの存在しない場所だ。月が『不要なもの』ではない事を確かめに向かったオラン・ジェット(p3p009057)とウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)はそれが巨大な『眠りの核』であることを知ったのだろう。
長期的活動を目標にしているンクルス・クー(p3p007660)とマッチョ ☆ プリン(p3p008503)、フリークライ(p3p008595)はその月が傾くのを見ていた。
夢魔達を相手にしながらも愛しい人のところに帰る為にと懸命に努力をするノリア・ソーリア(p3p000062)は「夢だからこそ意志のつよさが力になる」と口にしたものだ。
アルチェロ=ナタリー=バレーヌ(p3p001584)は『夢を聴いていた』。それは決して素晴らしき微睡みではなかったのだろう。
『煉獄篇第四冠怠惰』カロン・アンテノーラは拒絶の意思など見せない。停滞する事への怠惰。其れ等は全てを受け入れる。
何もかもを否定せず、全てを受け入れていた。故に、聞いた音は美しかった。
核を破壊し続ければ皆が救われる。そう聞こえた夢の囁きは仲間達の大きな活力になっただろう。
セレマ オード クロウリー(p3p007790)が見付けた『鳥かご』は霊樹の力を束ねてリュミエ・フル・フォーレ(p3n000092)が眠りから覚めた時に牢獄に落ちたものだったのだろう。
それはリドニアの前にも存在して居た。
イレギュラーズが囚われた牢獄と、イレギュラーズ達がカロンの権能を封じる為に尽力する領域は互いに影響を与え合う。
だからだろうか、危険であろうと思われた夢魔を避けてリドニアが鳥かごまで遣ってくることが出来たのは。
(……此処は本当に心地良い。この夢が覚めなければ良いのに――)
『二度』、その場所でそう願ったリドニアは夢の牢獄に未だ佇んでいた。
聞こえてくる声は思考回路をも阻害する。それでも、リドニアは此処に残ることを選んだ。
――今の私は少し知った夢の案内人。私が夢から覚めるのは、最後でいい。
本当は覚めないで欲しいけど。
どうかこのまま夢に揺蕩う事を許して欲しい。まだやる事が沢山あるの――
帰り道が分からなくなろうとも、構わなかった。
遠くにアルチェロの、セレマの、新道 風牙(p3p005012)の声が聞こえた気がする。
――さあ、起きろ。起きろ。起きろ。
目覚まし時計はとっくに鳴ってるぞ!――
「そうですわね」
リドニアは微笑んだ。目の前に『ふたり』が居る。
まだ、眠っているだろうか。彼女達はこの荒野をさまよい歩いているのだろうか。
「私は、良いのですわ。この眠りにまだまだ、沢山の人が歩いている。
イレギュラーズだけではないの。妖精も、精霊も、幻想種も……たくさん、たくさん。
冠位魔種(あのひと)を斃すまで、この檻はなくならないのでしょう?
あの月を落して、檻が軋む音がするまで、まだ少し――
貴方は私と違って自分を覚えてるはず。なら、行く道は一つでしょう?
いってらっしゃい。今度は貴方が夢に囚われないように」
祈るように、リドニアは微笑んだ。それが彼女が『二度』繰り返してきた行く先への決定。
――――――――
――――
「起きる時間ですッ!!!!!」
大層心配したのであろう、唐突に声を荒げたジョゼッフォ・アトアスワラが肩を掴んだのはココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と橋場・ステラ(p3p008617)であった。
「ゴ、ゴホッ、ジョ、ジョゼッフォさん。勢いが良すぎて思わず酒が気管にインしてしまったの」
「どうして飲んでいるんだい? 景気付けなら分けて欲しいカモ?🤩 ナンチャッテ😅」
盛大にむせたストレリチア(p3n000129)の傍で軽やかに笑ったのはライエル・クライサー(p3n000156)であった。
冠位魔種との戦闘への出立に際しクオン・フユツキの元へとクロバ・フユツキ(p3p000145)とリュミエを送り出したフランツェル・ロア・ヘクセンハウス (p3n000115)は呆気にとられる。
ジョゼッフォが今にも鍋でも叩いて『実の』娘を揺さ振り起こそうとする勢いであったからだ。
「ゆ、夢檻ってそんな勢いで目覚めるのかしら……」
「分からない……」
困惑するイリス・フォン・リエーネの傍で目を閉じていたライアム・レッドモンドは「其の儘、呼びかけて」と言った。
「え?」
「これで起きる?」
「冠位魔種、朝寝坊でもしているの?」
困惑する一向にライアムは違うと首を振った。
「誰かが『案内人』として其処に佇んでいる。……僕の元に、送り届けてくれて居るみたいだ。
もうすぐ、手繰り寄せられそう――だから、彼女達を導くように呼びかけて。もうすぐ、もうすぐだ――」
無理はしてはいけないとイルスが声を掛ける。ライアムは『期間限定』での正気に戻っている。魔種の領域に、『カロンの権能』にアクセスをし続けることは其れだけ魔種に近くなると云う事だ。
「……檻の中で月を落そうとする皆もいるんだ。この戦いのために準備をしている人が――」
脂汗を滲ませたライアムを見てからジョゼッフォはもう一度「起きろ、起きろ」と声を掛けた。
「起きるのォ――――! 女王様だって、何処かに行ってしまって、とってもとっても怖いんだから!
イレギュラーズが起きてないと、困っちゃうの! お酒を飲んで良い気分でパーリィできないの!」
ストレリチアは声を荒げた。
ずっと、傍にいてくれると思った妖精女王。帰れば、そこで笑ってくれる彼女。
今はアルヴィオンへの道は閉ざされた。彼女だって『外に出てきてから行方』が知れない。
――その時点で、ストレリチアは実感していた。もう、あの優しい笑顔には出会えないかも知れない、と。
眩い光が、あのひとを連れて行った。
だから、その心に応える為に一人でも多くのイレギュラーズの助けが欲しい。
それに妖精郷アルヴィオンへ到達する方法は、一切無くなった。ヘイムダリオンを通ることすら出来ない状況である。親友フロックスにだって、もう金輪際、会えないかもしれない。
救援に来た妖精達も、みんなそれだけの覚悟を背負っているはずだった。
(……わたし、何もできなかったの)
だから、イレギュラーズの皆に助けてほしい。いや、己自身だって一緒に――
――見付けましたわ。さあ、いってらっしゃい――
ライアムはリドニアの声を聴いた。外へ、送り出してくれたのだろうか。
そうしてから、目を開けてココロとステラに向かって「おはよう」と笑いかけた。
※『夢の牢獄』からイレギュラーズが脱出しています。案内人を宣言したただ一人を除いて――
※『夢の牢獄』内でイレギュラーズによる『巨大な眠りの核(月)』の破壊作戦が行われています。
※冠位怠惰との決戦『<太陽と月の祝福>』が開始されました!
※リミテッドクエスト『<太陽と月の祝福>Recurring Nightmare』が公開されています!
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