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ギルドスレッド

異世界歴史学研究調査事務所

応接室の日常

 外面を整えまくっている異世界歴史学研究調査事務所だが、その実その取り繕った立派さを発揮する事は滅多にない。何故ならそれを利用する立場にある男が非常に面倒臭がりであり投げ遣りだからだ。
 例えば、己の伝記を書かせるのに大枚をはたきそうな金持ちの上客であれば、男は部屋を改めて整え、不精髭を剃り、髪の毛をキッチリ撫でつけて出迎えるだろう。
 だがそう言った上物の依頼客は事前の予約が必須としている。『忙しい≒凄い繁盛してますよ』アピールをする為にもそこは徹底しているし、そもそもそう言う類の客は普通事前に連絡か人を寄越すのでどの道飛び込みはほぼあり得ない。

 よって、平時の応接室はつまり、男にとってはのんべんだらりだらけるための休憩スペースに他ならないのである。

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(大きく広げていた両手を閉じて、小ささをアピールするように胸前で手の平を組む)
すべては考え方の問題だ。
わたしはこちらに来ていくつかの文献を見聞したが、ここではない世界の話、ああ、旅人の話ではなく創作の民話などだ。そのようなもので見かけたことがある。
たとえば、巨人の国。その国では、巨人が巨大な箱……何度も言い間違えていた、家か。巨大な家に住み、巨大な武器を振り回して主人公を追いかけたりする。
わたしはそういったものだ。巨大な宇宙に住み、巨大な星々を糧にした、より大きな大きな巨人というだけだ。
それは勿論、瑣末な部分に差はあろうが、やはり知的な生命体なのだよ。
一方、ギルドで他の人が話すところを漏れ聞いたのだが、この世界に召喚される時に体が縮んだりなんだりと肉体の変化を起こすことは、本来は起こっはいけないことらしい。
つまりわたしは、虫眼鏡で見るような小人たちが住む小人の宇宙の、宇宙サイズの存在だったというだけで……仮にこの世界を基準とすれば、やはり今のサイズくらいなのかもしれない。
真実は分からない。もう、過去にいた世界には戻れないのだからな。
要領の得ない内容になってしまっただろう。もう少しわかりやすい所から話すか……
……ふむ。ちょっと待ってくれちょっと整理する。
焦るとこんがらかりそうだ。
(腕組みして暫く黙考)

うん……なるほど。何となくだが多分分かった。
考えられるのは2パターンあるって事だな。
俺達の基準で測るからとんでもなく聞こえるだけでラクタ君の世界じゃ普通の事なんだよってパターンと、そもそもラクタ君の居た世界が何もかもが超小さいミニチュア世界だったんだよなんだってーってパターンか。なるほど……
こりゃあ興味深い。君の言う通り確認の取りようが無いからただの思考実験に過ぎなくはあるが……Tipsとしては面白い考察になりそうだな。

いやいや要領を得ないなんて事はないさ。俺みたいなおっさんにはちょいと難しくはあったがね。それも何とかかんとか追いすがれる範囲だ。
(肩を竦めて笑って見せる)

まあしかし、そこは君が言った通り語りつくしても此処までだろう。
別の方向から話をしてくれるってなら、それ自体には賛成だ。
ああ、それと、長くなりそうなら珈琲はどうかね。
流石に聞きながら凝ったのは淹れれないから、インスタントになるがね。
わかってくれるか。それはありがたい。
到底信じてはもらえぬものと思っていた。なにせ、確かめようがないことだからな。
(目を閉じて、少し安心したように息を吐く)
珈琲とは……飲み物、嗜好品か。いただこう。丁度、喉が渇いて舌が回らなくなってきたところだ。
疑いやしないさ。と言うか、そこで疑うならそもそもこんな仕事してないよ。
(笑って席を立ち、部屋の隅にある湯沸かしを操作。世界によっては……例えば地球の日本なら免許なしでは所持を禁じられてそうなレベルの火力で湯が急速に熱されて行く)

それに、俺もこの仕事はそこそこ長い。ホラ話かどうか位の見分けは付く心算だ。
……そりゃ、君が名うての詐欺師だったり本音を隠す事の出来るギフト持ちだったりしたら知らんがね(肩を竦めて)その時はもうしょうがないさ。
(インスタントの粉をガサガサと入れながら)
砂糖とミルクは……あー、いや、物言い的に飲んだ事ないっぽいな……
ま、心持ち甘めにするか。
(※会話RPのテンポを保つ為湯が沸き珈琲が入るまでの時間を省略!)

ほい、完成だ。
雑な淹れ方で済まないがね。インスタントとは言え一応、飲み比べて割と味の良いと思った粉を選んである。好みに合えば良いが……
(ラクタの前に珈琲と砂糖壺とミルクを置く)
甘さが足りないと思ったらそっち、苦いと思ったらそっちを足してくれ。
好みは人それぞれだからな。

(自分の分も置いて席に着く)
さて、じゃあ聞こうか。
そうだな……伝記にするって意味では、君が故郷でどんな事を成したか辺りの話が順当かね。
安心して欲しい。わたしは邪神だが、口はそう上手くない方だ。
ここで真実を捻じ曲げるつもりはないし、権能も細やかなものではない。
(少し手を動かすが、何もせずに戻し、湯が沸く様を眺めている)
インスタントこーひいー……やはり口が回らぬな、その飲み物をまず頂こう。
(躊躇なくコップの中身をすべて呷る)
(表情を変えずに、コップをテーブルに戻す)
ああ、これは良い。毒の味がする。気に入った、覚えておこう。
しかしそちらのふたつを使いそこねてしまったな。次は少しずつ消費しなければ。

さて、質問に答えなければならない。
故郷は、わたしにとっては、それは暮らしていた場所、星々の寄り集まった所に当たるのだろう。
わたしはそこで、生存のために主に星々を食べていた。
……邪神。しれっと邪神って言ったな今。
まあ、そんだけのサイズがあればそうとも呼ばれるか。

…!
(一気に呷ったのを見て絶句)
……ちょ、お、おい大丈夫か熱くないのか!?

(慌てて中腰になって立ち上がりかけるが、平気な顔でコップを戻すのを見て数秒固まった後ゆるゆると座り直す)
……ふー。脅かさないでくれ。いや、そんな心算も無さそうか……
毒の味、ね……確かにこいつはある種の薬効があるらしいし、過ぎれば毒になる代物ではあるな……いや、そもそも苦味の事か?
ああ、砂糖とミルクは必要なら使う物であって、別に使わなきゃいけない物じゃない。調整用さ。気にしないでくれ。
……ふうむ。
(暫し無言で親指を顎にやり不精髭をガリガリと掻く)

なるほど。星喰いか……そりゃ確かに邪神か……
生存の為って事は、まあ要するに君にとってはそれは食事だったんだろう。
栄養源は主に何だったんだ?
確かに熱かったが、星の火と比べればどうということはない。
昔を思い出して少し懐かしいくらいだな。だが驚かせてしまったのは良くない。
わたしは今小さき者の姿で小さき者の規範に従わなければいけないのだ。わたしは普通を学ばなければいけないのだ。
栄養源、にあたるものは……これはばべるとやらで通じるのだろうか。
一言で表すのなら、そう。
「複雑さ」だ。
それは混沌の中にある整然さ。物質と物質のつながり。編まれた鎖、飾り付けのレースのようなもの。伝わるだろうか。
まあ、星の火より熱い物はこの世界にはそうそうないと思うが……
(頭をガリガリと掻いて)
その、多分だが君は混沌肯定って奴によってその辺の丈夫さも大分……いや、天文学的な分量が削られてると思うし……普通を学ぶというか、昔の認識のままだと色々と危ないと、思う。
……無事だった見たいだから良いんだがね。

(掻くのを顎に変えて少し考え込む)
「複雑さ」ね……ふむ。
(少しの名目の後、片目ずつ目を開けて珈琲を一口)
……意味的と言うか、概念的と言うか、兎も角物理的な物では無い事は分かる。
一番近い言葉を無理矢理出すなら、情報……か?
いや、シンプルな情報もあるか……複雑な情報、では結局範囲を狭めただけだな。……とすると矢張り結局『複雑さ』と言うのが最も過不足なく正しい表現な訳か……
丈夫さが減じたのは承知している。問題はない。
珈琲の複雑さを摂取したのだ、そこに含まれる熱もまた複雑さの一部分。繰り返すが問題はない。
だが、水をくれてもいいのだぞ?
(片目をぎこちなく瞑る仕草)
そして、汝の考え方はおおむね正しいと言えるだろう。
おおむねと言うのは、「複雑さ」には物理的な側面も含まれるからだ。
長い時を過ごし、おおよそあらゆる力を、権能を身に着け、不老であり不死であったわたしが、存在を消失しないために必要だったものが複雑さなのだ。それもわたしのあずかり知らぬところから生まれる、わたしが由来ではない複雑さが欲しかったのだ。
この姿であってもわたしは複雑さを得ることで身を保っていると認識している。
ただそれは……嗜好品?に当たるものと言えるだろうか。先程の珈琲のように、必須ではない。
小さき者の体となった今、維持のために必要な複雑さは以前よりもはるかに少ない。
そしてそれは、一般的に食事と呼ばれるもので十分賄える。
ありていに言えば、普通に飲み食いすれば良いという話なのだ。

話を戻そう。何を成していたか、だったかな?成すというのは、作り上げる、達成する、そういった概念だろう。複雑さの消費だけでは物語にはなるまい。そこで次に、わたしが邪神と呼ばれたことについて話そうと思う。問題はないだろうか?
(肩を竦めて少し笑い)
かしこまりましたお嬢様。ただいまお持ちます。
(少しおどけてそう言うと水差しの水をコップに入れてラクタの前に置く)

……ふむ。進化と成長の行き付いた最後の果てに、必要なのが複雑さか……
(不精髭を弄りつつ少し考え)
先入観で物を言うと、そんだけ時間を掛けて色々身に着けていったなら、寧ろ外から得るまでも無い位に複雑な気がするんだが……いや、だからこそ尚新しい複雑さが必要と言う事だろうか……

ともあれ、今は普通に飯を食えば良いというのはなによりな情報だ。
まあ、それこそ旅人が一気に増えた現状、此処は複雑さに置いては不自由しない環境にはなっていると思うが……それでも、有限である以上自ずと限度は来るものだろうし。

(椅子に改めて深く座り直し)
邪神と呼ばれる原因となった理由、か。確かに興味深い題材だな。
ああ、是非頼むよ。
(水を口に含んで、一息入れ)
ああ、かつてのわたしは完成された存在だった。無論、自給自足も不可能ではない。
だが、自分で自分の複雑さを食べるというのは、言わば、髪や爪、皮膚を食べるようなものだ。
汝も好まないだろう?同じようにわたしも好まない。
(ぎこちなく微笑んで、立ち上がり)
そう、複雑さにおいては不自由しない環境、それだ。わたしはとても好ましい星に降り立っている。特にこの場所は好ましい。なぜなら、ここでは旅人の複雑さを収集しているからだ。汝がそれをしているからだ。
わたしは邪神であったからな、ここに来た本来の目的はそれだ。汝は深く腰掛けている。今動くのなら、わたしの方が速い。
さあ、ここにある複雑さを、わたしに貢ぐのだ!
……なるほど。
俺は子供の頃は爪やら指のささくれを噛む癖があったものだが……じゃあ今もどうぞと言われても、嫌だ以外の返事が無い。みっともない以前に、不味いからな。
(微笑みを前に、少し怪訝な顔で立ち上がる様に合わせて視線を少し上げる)

………

(相手の言葉が終わってからも数秒、動きを止めている)
……ああ、うんすまない。少し待ってくれ整理する。
(押しとどめる様に手の平を向け、首を軽く振って額をもう一方の手で抑える)

えーと、一連の流れがスムーズ過ぎて逆に分かり難かったんだが、つまり、なんだ?
あー……
要するにザックリ大枠で言うと強盗か!?
わたしは強盗ではない。わたしは邪神だ。
神がそこにある物を手にするのを、盗むとは言わない。
だから、わたしは強盗ではない。しかし逆らうのなら……こうだ!
(裾から拳大の石を取り出して、ギフトの力でグシャリと潰し、指で摘めるビー玉大にする)

(そして反応を伺う)
なんだその暴論は。……いや邪神論か?
ともかく、どっちみち君が邪神だろうが何だろうが此処では混沌肯定が……
……
(不意に言葉を止め、改めてビー玉大になったそれを見る。それからテーブルや席の周りにある物をチラチラと見回して、ちょっとだけ考えてから溜息を一つ)

……あー、ラクタ?
別に俺は逆らうとは言ってない。と言うか逆らわん。面倒だからな。
(首を曲げコキリと鳴らせてからよっこいせと席から立ち上がる)

……それで、要求は他の旅人の伝記で良いのかね?
いまいち反応が薄いな。
かつてのわたしであれば、小さき者は恐れ慄き縮み上がっていたというのに。
(石玉を袖にしまい、目線の動きを見、言葉を聞いて)
しかし心の動きは見て取れたぞ。
よく語られる勇者のように、わたしに逆らってもよいのだぞ。その場合、わたしの乏しい知識で高そうな物品から、こう、星にするまでだ。
いや逆らわぬのなら何もしないが。
わたしは分別を学び、汝らのあり方はある程度理解した。所有する意味もだ。
(手をグーパーさせて、少し名残惜しそうに周りの小物を見つつ)

ともあれ、わたしが望むのはそれだ。他の旅人の伝記だ。
心配はしなくてよい、この体となってからは複雑さの摂取は物体を消滅させずとも良いようになった。
吟遊詩人の声を聞いて腹が膨れ、本を読むと満足感が得られる。
しかし手垢のついた物語はいけない。手を変え品を変えても、大元の味は同じだ。
大量生産された物語はいわばジャンクな味がするのだ……と、ジャンクと名乗っている汝を誹るつもりはないぞ?
(何事もなかったかのように椅子に座り直して、コップに残った水を口にする)
だからそう、そうだな、この場合の言葉は……そう、読者。
わたしは汝の書く伝記の読者になろう。
そして新しく書きあがった伝記の最初の読者となり、その味わいを汝に伝えよう。
悪くはない契約だと思うが、どうか。
それは、そうだ。
(耳を掻いて肩を竦め)
君は力を見せつけるって時に持参の品を使った。
……つまり、先ずこっちに被害が出る物を使うのを避けてくれた訳だ。それだけ気を回してくれてる相手を前に一方的に慄き縮み上がるなんて寧ろ失礼じゃないかね。

多分、これまでの相手は単に君とのサイズ差に目が行ってて、対話とか交渉とかそう言う発想がハナから無かったか……寧ろ君に人格がある事すらいまいち把握できてなかったんじゃないか?

(言いながら傍らの棚に近づき、中の本を物色しながら)
ジャンクな味ね。俺の知る限りだとそうだな、大量生産が出来る様になった世界で、安価かつ安定して同じ味の品をってコンセプトで作られてる店売りの料理の味を指す言葉だろう。
(一冊を手に取り)
丁度この本の主役の好物がそれだ。確かバブラデュゴバーガーだったか…
(歩み寄ってその本を差し出す)
君の言い分は分かった。

だが、それなら先ず完品を一つは賞味して見るべきじゃないかね?
俺がこれから書いた物を読んで、けれど君の味の好みに全然合わない物だった。
何て事になったらお互い気まずいだろう。

俺としても、君の伝えてくれると言う味わいの内容がどんなものでどんな表現になって、そしてもちろんそもそも君の口に合うものなのか、正直気になるしな。
あまり気を使い過ぎるのも邪神らしくはなかっただろうか。
ずっと昔、わたしを定義した小さき者の一人もよく言っていた。我が汎ゆる権能をもってすれば、気を回すのも、人格を再現するのも簡単なのだがな。
かつてそれを求めた者がいたから、わたしは今の人格の根本を得たのだ。
(本を受け取る)
ありがとう。これはいわゆる試食というものだな?少し時間を貰えるだろうか。
(ぺらぺらとページをめくり始める)
(読む速度が段々上がっていく)
うむ、うむ。面白い。味わい深い。これは良い作品だ。
群像劇でありながら、最終的にひとつの事件へと繋がる……その描き方は確かに定石の一つであるだろう。だが、群像劇ひとつひとつの味が良い。結果として滋味深いラストへと繋がり、余韻を残し、さらには次に続く希望を抱かせる。確かに良い作品だった。

……少々、恥ずかしさを感じているが、このようなものでよかったのだろうか?
邪神の定義にもよるのだが……
まあ、崩れないバベルが翻訳する所のこの言葉は、俺が知る限りでは『自分の意志や考えに沿って好き勝手する』超越存在に銘打たれている事が多い印象だな。
(両掌を顔の両側に立てる芝居がかった仕草と共に少し笑い)
だから、逆に言えば『気を回すも回さないも好きにする』のが邪神らしいんじゃないか?
つまり君がしたいと思うようにすれば良いと言う事だ。
(小理屈を並べながら席に戻ってヨイショと言い掛けて堪えながら座り直し)

勿論。何せ急かされて読む本ほどつまらない物はないものでね。
仮にも自分の著作をつまらない代物に貶めるほど俺も被虐趣味じゃない。
どうぞごゆっくり御賞味下さい。
(気障ったらしく一礼すると、後は自分の珈琲をゆっくり飲みながら待つ)
(速度が上がって行く様に相好を崩して嬉しそうな顔をするが、読み終わるまでは自分の頬を叩いてすまし顔に戻しておく中年男)

そうか、そうかね。気に入って貰ったなら何よりだね。
良いとも。良いですとも。
勿論、協力してくれた旅人づての話から組み立てているのだから、俺の手柄では無い訳だが……しかし、文章化して編集した身としては。その、まあ、うん、有難い評価だ。
(ちょっと目を逸らしながら軽く頭を下げる)

さて、ともかくもだ。
(パンと手を叩いて誤魔化す様に声を上げて)
そう言う事ならまあ、問題は無いだろう。
為すように為すのが邪神だと、そう言うのだな。であれば、わたしはいまだに邪神だろう。
(少し胸を張り、本をそっとテーブルに置く)
うむ、では契約成立だな。わたしに物語を提供し、わたしがその味を言葉にする。
……ああ、それと。いずれわたしについての伝記も書いてもらうことにしよう。今はまだせずとも良い。わたしも体に慣れ、言葉に慣れ、小さき者のあり方をもう少し学べば、伝えられることも増えると思うからな。
(瞑目し、少し腕組みをして)
俺達人間のあり方を学べば……か。
元々が全知全能に近い存在だったにしても……いや、寧ろ、だからこそか。
ただの人としての『人生』は、これから知って、経験して行くしかない。
……なるほど。
(腕を解いて、少し笑い)
君がその姿である事は、極めて道理に敵った事と言える訳だ。

(手を差し出して)
これからよろしくラクタ君。
君のこれまでとこれから、どちらも興味と敬意に値すると、そう思う。
全知全能であればこそ、だ。
必要とあらばどんな智慧もたちまち引き出すことができたが、そうでなければ無と同じ。
まして今のわたしはそれを失った身、人として学んでゆくしかない。
昔々、全能ならぬわたしがかつて歩んだ道だ。いずれ同じ場所へ辿り着けよう。
(差し出された手を少し見た後に、そっと手を取り)
ああ、小さき者の習慣だったな。そちらこそ、わたしの興味と敬意を満たしてくれることを期待しているぞ。
(ひんやりと冷えた手で、やんわりと力を込めて握手する)

ところで。
わたしは知っている、新たな物語を紡ぐにはそれなりに時間がかかると。
その間、わたしはここで何をしよう。すべては権能を取り戻すための道程だ、何かして欲しいことはないだろうか?
(握手を終え、手を離して一歩下がってから)
ん?
ああ、まあそうだな。長さや内容にもよるが、それなりの期間は開く物だ。
何せ聞き取りや取材に資料集めなんかも挟む物ではあるし。

……ふむ。
して欲しい事か……(不精髭を撫で)
そんな気を遣う事も無いとは思うが、ただ待つだけなのも所在無いだろう事も分かる。
積むべき経験にもなるだろうし……
(少し考え込み、それから思いついた様に顔を上げ)
そうだ。それなら……
(少し笑って)
良ければ珈琲の淹れ方を覚えてはくれないか?
その言葉は、以前図書館で呼んだキーフレーズの変種だな。ええと、そうだ。
「ぼくに味噌汁を作ってくれないか」という奴だ。言葉以上の意味をもつことをわたしは知っているぞ。
馬鹿め、邪神に婚姻を迫るなど!今は小さき者の体だからと言って侮ったな!
え、違う?裏はないのか?そうか……では、珈琲の淹れ方というものを学ぼう。
時間はかかるかもしれんが、汝が驚くような美味な珈琲を作れるようになってやる。
味噌汁か……なるほど(クックと苦笑して)
その言葉は完全版とは言えないな。プロポーズの言葉として用意る場合、正しくはそこに『毎朝』を付けるべきらしい。つまり毎朝の食事を世話を願う事で、婉曲に己を家長とする家庭に入って欲しいと言う要求を伝えるそうだ。
そう言う意味では珈琲でも意味が通る言葉だと言う認識自体は正しいな。

まあ、ともあれ……
美味い珈琲を淹れてくれると言うならそれはそれこそ願っても無い。
楽しみに待たせて貰うよ。
結局疑念については否定しないのか……気の多い男は物語では大抵ひどい目に遭うものだぞ?
まあ、楽しみに待つがいい。なにせわたしは全知全能の邪神だったものだ。不可能はない。きっとな。
勘弁してくれ(肩を竦める)
意味は通っても俺がその意味で珈琲を頼む事はない。
……と言うか逆に、珈琲を頼むのがプロポーズになるとしたら、俺は気が多いどころか後宮持ちの王様みたいな有様になる。いや、その前に刺されて死ぬかな?

……元全知全能の珈琲か、中々期待させるフレーズだ。
気に入りのカフェの女給に色目を使う中年、というのは絵になるような、そうでもないような。
この珈琲とやらは、材料を見るかぎり植物の類だろう?ならばまずは栽培と品種改良からだ。改めて言うが、楽しみに待つといいぞ。
まあ、確かに良く聞く絵面ではあるが、表題は間違いなく『迷惑な客』だろうな……

栽培と品種改良……そ、そうか。そこからか。
異世界のアイドル見たいな発想をしているんだな、君は……
アイドル?ふむ、わたしの像を作られて、崇められたこともあるからわたしはアイドルでもあるかもしれないな。
以前のわたしであればまず土というか最適な位置に惑星を配置するところからなのだが、さすがに今は無理だろう。
ああそうだ、珈琲の淹れ方についての指南書の類はあるだろうか。無論、情報は多い方がよい。後は今現在の汝の淹れ方を観察して、そうだな、この星の店を渡り歩いて情報を増やし……
まあ、偶像崇拝と言う意味では確かにそれもアイドルかも知れないが……
と言うか星の配置からか、それは俺が思っていた以上のスケールだ。

指南書なら幾つかあったと思う。見かけると思わず買ってしまうしな。
後で探し出して置こう。
(ちょっと目をきらめからせ振り返り)
ほほう、飲み比べか。それは良い。
俺自作の『珈琲マップ』を渡しても良いが、それでは新しい発見が無いからな。
よしメモ帳を進呈しよう! 是非君ならではの珈琲マップを作ってくれ。
(ノリノリである)
星の配置は重要だぞ。
数多の星に生まれる数多の生命はそれぞれ類似点と相違点が存在する。ひとつの銀河にまたとない植生を見るためにわたしはよく星々に手を加え……例えると、庭園を作るようなものだろうか。それを大きくしたものだ。

その自作の珈琲マップとやら、とても手間がかかって複雑さが高く美味しそうな匂いがするのだが。せめて一口……いや、わたしなりに複雑さを作れというなら従おう。
(白いメモ帳を受け取って)
こういう趣向も悪くはない。見た者が発狂するようなすばらしい珈琲マップを作ろうではないか。
飛んだ庭弄りもあったもんだ(降参とばかりに両手を軽く上げつつ溜息)
だが、イメージは伝わったよ。なるほどね。

君のマップが出来たなら、俺のも写しを進呈するさ。
見比べるのもまた一興。そして良い店の情報の共有は有益だ。

……いや、発狂はさせなくていい。
良いか? 発狂はさせなくていいからな?
何故だ。見たものを発狂させるような芸術が良いとわたしは聞いていたのだが。
曰く、その方が邪神「らしい」とな。
ともかく交換は了解した。いつだって基本は等価交換だな。汝の持つマップの情報量に見合ったものを用意できるかはわからないが……
邪神らしいと言えば邪神らしいのかも知れない。だが……
(親指から中指までの3本を揃えた手でラクタを示し)
君は君だ。
当時はどうか知らないが、少なくとも今の君は『邪神』の一言で説明が終わる様な存在では無い。ラクタ君であり、見目を見る限りは少女であり、旅人であり、それから俺の仕事の第一読者であり……それら君を彩る要素の数々の中に『邪神』と言う言葉が入っているだけだ。
一要素であって全てでは無い。であればそれ一つにばかり腐心する理由も無い、と。
そう、俺は思うがね。
(肩を竦める)

まあ、情報の総量に関しては俺の方には年季のアドバンテージがあるからな。
だが量だけが全てでは無い。
質に関しても、味の好みが人それぞれな以上、一元的に評価が適う類の情報では無い。

だから、ま、余り出来栄えは気にせず気軽にやってくれ。
その方が良い物になるさ。きっとな。
その言葉は素直に受け取れば嬉しいと思うことなのだろう。
かつてのわたしは、いくつもの姿を持っていた。銀河を渦と見るか、川と見るかのように。同じものでもなぞらえる言葉はいくつもあるのだ。
(真似るように、指を三本立てて)
だが、それぞれは等価ではない。
(中指から順に指を折り、親指だけ残して)
わたしにとって、邪神は親指なのだ。わかるだろうか?
(少しだけ首を傾げ)
(立てられたままの親指を見ながら)……なるほど。
であればどうやら余計な世話だった様だ。すまないね。
(肩を竦めて少し笑い)
どうも年をくってからこっちお節介になっていけな……
……あ、いや、別に年はくってはいないな。まだ若い。若いとも。
特に君の様な存在と比較すれば如何なく若いだろう大丈夫だ。
(何が大丈夫なのかいまいち判然としないが、兎も角何度も頷いて納得してる)
わたしと比べれば、確かに若い。
いや(無遠慮に上から下まで観察し)……小さき者の外見としては、わたしより老年かもしれないな。
しかし、成体としては平均的な部類なのではないか?大丈夫だ。だいじょうぶだとも。
外見に君より年上なのは全くもってその通りで、正しく我が意を得たりなんだが……
(ペタンと己の顔に手の平を当てて溜息)
出来れば、その『老年』と言う表現は避けて貰いたい所だな……

(顔を上げ)
まあ、しかし実際。これは只の経験則から来る目測ではあるが。
旅人には外見年齢と実年齢が合わない個体が実際多いんだ。
なので大なり小なり馴れはある。俺に限らずね。
(顔に手の平を当てる仕草を真似つつ)
老年、という言葉は適切な表現ではなかったか。
どのような言葉で呼べば良い?青年?壮年?いや、違いがあることは知っているが、わたしにはまだそのような見分けがうまくできないのだ。

外見年齢と実年齢の差異は、確かにそうだろう。
種族が違えば、生まれ死ぬまでの年月も大きく違う。まして世界が異なれば、時空間の単位も異なる。
バベルとやらである程度は補完されるだろうが、やはり見目と年齢のものさしは小さな者たちの基準だ。
わたしは汝らは等しく年下の生命体であると思っているが、汝らから見ればわたしは少女。
どう見られているか、どう思われるかも学ぶ余地があるところだな。

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