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異世界歴史学研究調査事務所

応接室の日常

 外面を整えまくっている異世界歴史学研究調査事務所だが、その実その取り繕った立派さを発揮する事は滅多にない。何故ならそれを利用する立場にある男が非常に面倒臭がりであり投げ遣りだからだ。
 例えば、己の伝記を書かせるのに大枚をはたきそうな金持ちの上客であれば、男は部屋を改めて整え、不精髭を剃り、髪の毛をキッチリ撫でつけて出迎えるだろう。
 だがそう言った上物の依頼客は事前の予約が必須としている。『忙しい≒凄い繁盛してますよ』アピールをする為にもそこは徹底しているし、そもそもそう言う類の客は普通事前に連絡か人を寄越すのでどの道飛び込みはほぼあり得ない。

 よって、平時の応接室はつまり、男にとってはのんべんだらりだらけるための休憩スペースに他ならないのである。

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(水を口に含んで、一息入れ)
ああ、かつてのわたしは完成された存在だった。無論、自給自足も不可能ではない。
だが、自分で自分の複雑さを食べるというのは、言わば、髪や爪、皮膚を食べるようなものだ。
汝も好まないだろう?同じようにわたしも好まない。
(ぎこちなく微笑んで、立ち上がり)
そう、複雑さにおいては不自由しない環境、それだ。わたしはとても好ましい星に降り立っている。特にこの場所は好ましい。なぜなら、ここでは旅人の複雑さを収集しているからだ。汝がそれをしているからだ。
わたしは邪神であったからな、ここに来た本来の目的はそれだ。汝は深く腰掛けている。今動くのなら、わたしの方が速い。
さあ、ここにある複雑さを、わたしに貢ぐのだ!

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