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シナリオ詳細

<夏祭り2023>夏色のスーベニール

完了

参加者 : 47 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 明け空の淡紅を焼き尽くすような、鮮烈な黄金の光。
 覇竜領域の東端に位置するフェーローニアに訪れる美しい朝日は、天国に最も近いとも伝承されている。
「海、いいですよね海。プールってのも気になってるんですけど!」
 そこはかつて光暁竜パラスラディエが制し、コル=オリカルカという竜へ禅譲された地である。
 険しい山の高原であり、海は、ない。
 湖はどうかな。

 ともかく一行は浮遊島アーカーシュ(ここならいまさら友好的な竜とか出ても騒ぎにはならない)で、バカンスの予定を立てているという訳だった。
「ぱりぴ? っていうんですか、そのすまほ? えーほん? に映ってるの? いいですね憧れますね!」
 一行へ向けて、嬉しそうに話しかけてくる女性の名をリーティアという。
 パラスラディエが人の形を取った際の名であり、イレギュラーズとは親しい。彼女は覇竜領域の戦いの中で、イレギュラーズの奇跡により、不可逆な消滅の途上を少しだけ先延ばしされている。
(そうね……りーちゃん)
 リーティアの魂は、その横顔を眺めたアーリア・スピリッツ(p3p004400)の術式に封じられていた。
 終わるのは一年後かも、三年後かも、十年後かも、あるいは明日かもしれず。
 けれど奇跡を対価としたこの儚い夢――塗り替えられた宿命ならば、きっと『優しいに違いない』ということだけは、誰の胸中にも明らかだった。
 すくなくとも再度の顕現は叶ったのだ。一安心だろう。
 そんな彼女と一行は件のフェーローニア、その美しい高原を見物する約束をしていたのだが――
「フェーローニアって山じゃないですか、絶対暑いですよ。秋でいいですよ秋にしましょう」
 風向きが変わってきたような気がするというか。

「ところがぎっちょん! この私リーティア! 海とかプールとかに行きたいんですね!」
 リーティアは星型のサングラスを額に顕現させていた。
「ナイトプールいぇー! ナイトプールって騎士みたいでかっこよくないですか?」

「めぇ……プール、ですか」
(ぎっちょん、とは。なん、でしょう……)
 頷いたメイメイ・ルー(p3p004460)は事情を理解したが、かみ砕けない単語に首を捻った。
「そうかもしれないね」
 得心いった様子でジェック・アーロン(p3p004755)が一行を振り返る。
 リーティアには『時間的猶予』が出来た訳だが、彼女は好奇心の塊だ。
 フェーローニアを見せたがっていたのは確かでも、どうせなら既知より未知が良いのだろう。
(言いにくい問題もあるが、どう解決すべきか)
 リーティアが体験したことのない系統の海やプールとなると練達が思い浮かぶが。
 とはいえ――ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は思案する。さすがに練達へ竜を連れ込む訳にもいくまい。それにどこへ行くにせよ、呼んでやりたい顔(ケーヤ)もある。
 一同がそんなことを考えていた時。

「その案件、私にお任せいただけませんか?」
「で・す・わ~!」

 現われたのは新田 寛治(p3p005073)と、ディアナ・K・リリエンルージュ (p3n000238)だ。
「それならば、こちらのホテルなどはいかがでしょう?」
 寛治がノートPCのディスプレイを裏返すと、プレゼンソフトが立ち上げられていた。
「こちらはシレンツィオリゾートの幻想資本ホテルなのですが、練達の技術が入っておりますの!」
「売り込みはかけさせてもらっているからね」
 そう述べたのは練達復興公社のマキナ・マーデリックだった。
 公社は資金調達などの名目で、練達の『枯れた技術』と引き換えに様々なものを得ている。
(なるほど、確かに機関はシレンツィオにも進出したいスよね)
 佐藤 美咲(p3p009818)の分析通り、各国の思惑交わるシレンツィオは情報の宝庫だろう。
「そんな訳で、アルバイトなんですよ~」
「シレンツィオで……?」
 思わぬ豊川・イナリの出現と言葉に、長月・イナリ(p3p008096)が考え込んだ。
 しかも『あの』竹駒までもが、顔を出すようだった。杜が動こうとしているということか。
「……なるほどね」
「天義――か」
 ここの所、立て続けに天義――というより『神の国』に関する問題が多発しているが。
 アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)とリースヒース(p3p009207)が追うレディ・スカーレットなる魔種も、そこに絡んでいると思える。こちら側のピースも揃いつつあるようだが。
 とはいえ今回は、まずは今後共闘するために親睦を深めておくのも悪くない。
「あれ?」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が首を傾げる。
 なんとなく指輪――リインカーネーションに違和感があるのだが、気のせいだろうか。
 気のせいかな!
「まあなら名簿にほむら氏と私の名前お願いしまス」
「えっ」
 普久原・ほむら(p3n000159)がむせていた。

 ホテルにはプライベートビーチの他、プールなどもあるらしい。
 夜は練達の技術でライトアップもされるとのことだ。
「どぅん、どぅん。ぶんつくぱっぱ!」
 これなら機嫌良さそうにボイパを刻むリーティアのご希望にも沿えるだろう。

「コル=オリカルカはどうされるのですか?」
 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が、不機嫌そうな女性へ水を向ける。
「わたくしには関係ない事情、行くわけなど――」
「はいはーい! 行きます! コルご案内!」
「なっ」
 行かねばならないらしい。
「ゼフィラさんも、折角ですし、ね」
「……」
 めずらしく黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は歯切れが悪かった。
 呼べということだろうか。
「もちろん、無理にとは言いませんけど」
 そして――


 ――燦々と煌めく日差しに、足元の砂浜は眩いほど白く。
 シレンツィオ・リゾート三番街に敷かれた色とりどりのタイルは可愛らしい。
 瀟洒なコロニアル様式のホテルは広い敷地を抱いており、まばらな蒸気タクシーが来客を告げている。
 自慢の庭園は広さを確保しつつも視線を遮るように配置されており、波音と、ゆったりとしたボッサのリズムが心地よかった。
「そういえば、去年ぶりね」
 朱華(p3p010458)は去年、ここグランド・バルツ・ホテルに来たのを思い出す。
「広いっスねえ」
 ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は思わず感嘆した。
「さっそく遊びにいこうよ!」
「こっちですよ、こっち!」
「そうか」
 セララ(p3p000273)としにゃこ(p3p008456)がアウラスカルト(p3n000256)へ振り返る。
「うん、行こうか」
 隣で案内していた笹木 花丸(p3p008689)も、微笑みかけた。

「来ると思っていたわ!!」
 夏のバカンスをとっていたリーヌシュカ(p3n000124)が現われた。
 どことは言わないが、やはり目に見えて育っているのが確認出来る。
 この島には帝国の租界もあり、休暇に利用することは多くなってきている。

 エントランス近くのロビーから外へ。
 涼やかな日陰の下では、派手なシャツ姿のオリオン(p3n000257)が、可愛らしいトロピカルドリンクを共に読書をしているようだ。鉄帝国での決戦を経て、どこか落ち着いた様子も感じる。
「アルコール、アルコールしか勝たんの!」
 そう言ってバーへ向かったのはストレリチア(p3n000129)だ。
 これはまあ、こういう生き物だが――
「ダッハハハ! たまんねえぜ! なあ! おい!」
 大笑いが聞こえるあたり、ヴェガルド・オルセン (p3n000191)あたりも居るのだろう。
 あれでも今はラド・バウ闘士であり、また決戦では一兵としても戦っていた。
「まったくこれだから帝国は野蛮だ馬鹿だクソだと誹られる。もっと品位と知性というものを――」
 だが意外や意外。渋い表情で帝国メンバーの取り纏めをしているのは、エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ(p3n000290)ではないか。とはいえ休暇はしっかりとるタイプではある。
「白虎君もいるなんてね!」
「がおーう!」
「ストレリチアにヴェガルドじゃありませんの! ということは!!!」
 マリア・レイシス(p3p006685)は、バーのほうへ駆けだしたヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)を追う。やることが、やることが多い!
「……」
 その遠く向こう側。
 カフェで一人なのは、アルテナ・フォルテ(p3n000007)の姿だった。
 どこか物憂げであり、何か考え込んでいるようにも見えるが。
「冗談よね、父に似ている人の目撃情報だなんて――」

 なにはともあれ。
 夏はまだまだ終わらない。
 遠浅の浜で、エメラルドグリーンの波がくるぶしをくすぐろうと待っている。

GMコメント

 pipiです。
 うーーーーーーーみいいいいいいいいいい!!!!
 高級リゾート&ラグジュアリーホテル『グランド・バルツ・ホテル』で遊びましょう。

 いくつか若干きな臭い情報がありますが、今回そちらは親睦が深まる以上の想定はありません。
 今回はレジャー優先な感じです。

●目的
 遊ぶ。

●時刻
 昼、夕、夜を扱います。
 真昼のビーチで遊んだり、エモーショナルな夕陽を楽しんだり。
 夜はちょっとオトナに、ライトアップや花火も楽しめます。

●プレイング書式
 一行目:他の同行PC名とIDかグループタグの記載をお願いします。
 二行目:以降は自由に記載下さい。

 例:
  ドラゴンぱーりない
  これナイトプールっていうんですか! いいですね、アガりますね!!

●同行NPC
・アルテナ・フォルテ(p3n000007)
 皆さんと同じローレットのイレギュラーズ。
 物理的距離に頓着しない系の陽の者です。
 手に取り過ぎたサンオイルとかを、勝手になすりつけてきます。
 食べ物や飲み物を、何の気なしにシェアする傾向があります。
 水遊びも大好きです。陽の者だからです。
 ですが今日はなんか思わせぶりな空気を醸し出しています。

・白虎(p3n000193)
 豊穣の四神の一柱です。遊びに来ています。
 肉に目がない食いしん坊。陽の者です。
 酒も(お供えされてきたため)好みますが、いわゆるザルです。水と一緒。
 水遊びも大好きです。猫は水が無理ですが、白虎は真の虎だからです。
 マリア・レイシス(p3p006685)さんの関係者でありつつ、NPCです。

・ストレリチア (p3n000129)
 バーに入り浸り。いつものストレリチアです。
 パリピ上等の陽の者っぽいのですが、意外と陰の者です。

『帝国関係』
・リーヌシュカ(p3n000124)
 鉄帝国軍人にして、ラド・バウ闘士。バカンスです。
 ジュースとかアイスとかを、勝手に一口奪う系の陽の者です。
 こちらも食べ物や飲み物をシェアする傾向があります。
 カニとかアメフラシとかを、つついたり眺めたり、波打ち際では水などをかけてきます。
 ずいぶん育ちました。

・ヴェガルド・オルセン(p3n000191)
 休暇中のラドバウ闘士です。ヴィーザル出身のバイキング。
 魚釣りをしたがります。
 肉と魚と酒に目がない陽の者ですが、ちょっと陰な所もあります。

・エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ(p3n000290)
 バカンス中の歯車卿。
 鉄帝国の政治家で、決戦までアーカーシュ派閥を下支えした人物です。
 鉄帝国組の引率として、苦虫をかみつぶしたような表情をしています。
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)さんの関係者であり、NPCです。
 陰とか陽とかはなさそうです。

・オリオン(p3n000257)
 知識を何でも吸い込む、元大精霊の精霊種です。
 帝国の決戦を経て、ずいぶんと落ち着きが出てきました。
 陽の者ですが、本来的にはちょっと分からないところもあります。

『ドラゴン関係』
・アウラスカルト(p3n000256)
 皆さんに良くなついているドラゴンです。
 好奇心が強く、知識を重んじる魔術師的な性格です。
 間違いなく陰の者です。

・パラスラディエ(p3n000330)
 人の姿ではリーティア。
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)さんが顕現に成功した幻影です。
 触れたりなどは出来ませんが、楽しく遊んだりおしゃべりしたいようです。
 陽の者です。

・コル=オリカルカ
 パラスラディエを慕う竜です。人の姿で付いてきました。
 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)さんの関係者です。
 陰の者な気がします。

・ケーヤ
 フリアノンの知恵袋。
 大人しく内気な少女ですが、皆さんに救われたことを深く感謝しています。
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)さんの関係者です。
 南国の海でさえ本を読んでおり、間違いなく陰の者です。

『天義練達関係』
・普久原・ほむら(p3n000159)
 一応、皆さんと同じローレットのイレギュラーズ。
 陰の者です。キョドりますが雑魚いので、引っ張ればついて行きます。
 趣味はアニメ、漫画、ゲーム好きのオタクで、ハマっているのは百合ソシャゲです。

・ディアナ・K・リリエンルージュ(p3n000238)
 練達の依頼筋であり、普通に味方です。
 練達実践の塔に所属し、天義へも出向している人物です。
 可愛い女の子に目がないようです。
 陽の者っぽいですが、割と陰なところもあります。

・竹駒と豊川
 長月・イナリ(p3p008096)さんの関係者です。
 なぜかホテルでバイトしています。
 おそらく『00機関(マキナ)』や『練達政府筋(ディアナ)』と、情報の収集と交換に来ています。
 陰とか陽とかはなさそうです。

・マキナ・マーデリック
 練達復興公社(00機関)の人員です。
 現在は天義の『神の国』事件を追っています(練達でも神の国が問題を起こしたため)。
 興味赴くままに早口で喋るタイプの陰の者です。


●メニュー
『Food』
 鶏肉と海老と野菜のスープ
 タラの唐揚げ
 豚肉のブラッドスパイスソーセージ
 タラとコンク貝のスパイスソーセージ
 ハヤトウリの詰め物
 カニの詰め物
 ヤギのスパイスシチュー
 魚のトマトソース煮
 タコのスパイス煮
 コンク貝のスパイス煮
 ジャークチキン
 ジャンバラヤ
 ローストチキンのローズマリーソース
 牛フィレ肉のカルパッチョ仕立てトリュフソース
 サーロインステーキ(グリーンマスタードソース)
 近海魚のポワレ
 特大海老のグリルと温野菜
 オマール海老とホタテと野菜のグリル
 オマール海老の唐揚げのサンドイッチ
 キャッサバのお団子ココナッツ風味
 各種パン、ライス
 オリーブ
 チーズの盛り合わせ
 ソーセージ盛り合わせ
 ジャーキー盛り合わせ
 ドライフルーツ
 季節のフルーツ盛り合わせ
 バナナフランベ
 フラッペ(シトラス、マンゴー、パイナップル、珈琲)
 シャーベット(マンゴー/ブラッドオレンジ/カシス)
 アイス(バニラ/チョコレート)
 紅茶のシフォンケーキ
 その他、ありそうなもの

『Drink』
・ソフトドリンク
 各種フレッシュジュース、コーヒー(ホット/アイス)、紅茶(ホット/アイス)
 各種サマーティー(ライトブルー/サンレッド/サマーイエロー)

・カクテル
 スタンダード各種、スモーキング、ナイトロジェン
 お好みに応じます。

・ウィスキー
 ブラックウォーカー、ブルーウォーカー、グレイクラウン...
 グレンローレット、アドバーグ、ハイランドガーデン、ザ・サントヒル、ベイサイドデプレッション...
 アールスローズプラチナム、ビルダーズエンブレム...
 エコーズ...

・テキーラ
 ラサブランコ、ラサレポサド、ネフェレストアネホ、ブルースパイダー...

・ラム
 ムルシエラゴ 、ロンリッツパーク、キャプテンドレイク...

・ジン
 ビーフイーター、エルダートム、スカイブルー、No.10...

・ウォッカ
 スチールグラード、バニラ、シトラス、バイソングラス...

・ブランデー
 フォルデルマン、フィッツバルディ、バルツァーレク...

・カルヴァドス
 バルツァーレク...

・ベルモット
 マルセイラン、フランセスコ...

・ビール
 メフ・メフィートペールエール、パドラディ、ミットヴォッホカッツェ、ヘイローEX、ルーベルグ...

・リキュール
 カシス、ラズベリー、等々各種。

・ワイン
 フィッツバルディ(赤、白)、アーベントロート(赤)、バルツァーレク(赤、白、ロゼ)、フルネメシス(白)、デモニア(赤)、ブラックキャット(白)、ポルタ(強化)...

・スパークリングワイン
 バルツァーレク(ロゼ)、エストレージャ(白)...

・薬草
 修道院系、草系、アニス系、ルート系、各種...

・ノンアルコールカクテル
 各種...

・オリジナルカクテル
 シレンツィオマティーニ2010、シレンツィオモヒート...

『他』
 各種シガーあり(バーカウンターのある分煙ルームにて)。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 実際のところ安全ですが、情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
 夏だからです。

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio


行動場所
 以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。

【1】プライベートビーチ『バルツ』
 穏やかで透明度の高い遠浅の海です。きらっきらなエメラルドグリーン。
 ビーチには、色とりどりの花が咲く庭園から渡り廊下が続いています。
 屋外ですが日陰は大変涼しく、渡り廊下にはきちんと屋根があり、心配ありません。

【2】ホテルプール
 ホテルに併設されたオシャレなプールです。
 カフェのドリンクやお料理を楽しんだり、浮き輪で遊んだり出来ます。
 夜はライトアップされるようです。

【3】ホテルレストラン『エメロード』
 幻想風+南国風(旅人っぽく言えば、フレンチやクレオール料理、ケイジャン料理)。
 白磁の大きなお皿に、ちょこんと乗った料理を、重たい銀のナイフやフォークで頂きましょう。南国ならではの工夫がこらされており、とても美味しいです。

【4】ホテルバー
 ワインやカクテル、蒸留酒などが幅広く楽しめます。

【5】客室
 全てロイヤルスイート。
 パーティーでも出来そうなほど広いリビングと、これまた広い寝室に別れています。
 ベッドはキングサイズの天蓋付きで、お姫様気分が楽しめます。
 バスルームではシャワーや、泡々のお風呂も楽しめます。
 蒸気テクノロジーによって空調も涼しく、また冷蔵庫にはミネラルウォーター(ガス/ノンガス)の他、シャンパンなどが良く冷えています。
 ルームサービスで飲食物をお願いするのも可能です。
 開放的な窓や広大なバルコニーからは、庭園と海が眺められます。

【6】その他
 ありそうなものがあり、出来そうなことが出来ます。

  • <夏祭り2023>夏色のスーベニール完了
  • GM名pipi
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2023年08月19日 22時05分
  • 参加人数47/∞人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 47 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(47人)

ギルオス・ホリス(p3n000016)
綾敷・なじみ(p3n000168)
猫鬼憑き
天香・遮那(p3n000179)
琥珀薫風
メープル・ツリー(p3n000199)
秋雫の妖精
澄原 晴陽(p3n000216)
夢見 ルル家(p3p000016)
夢見大名
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
すずな(p3p005307)
信ず刄
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ハッピー・クラッカー(p3p006706)
爆音クイックシルバー
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
運命砕き
陰陽丸(p3p007356)
じゃいあんとねこ
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
三國・誠司(p3p008563)
一般人
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
越智内 定(p3p009033)
約束
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
リースヒース(p3p009207)
黒のステイルメイト
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
國定 天川(p3p010201)
決意の復讐者
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
煉・朱華(p3p010458)
未来を背負う者

サポートNPC一覧(11人)

アルテナ・フォルテ(p3n000007)
冒険者
リーヌシュカ(p3n000124)
セイバーマギエル
ストレリチア(p3n000129)
花の妖精
普久原・ほむら(p3n000159)
ヴェガルド・オルセン(p3n000191)
氷剣
白虎(p3n000193)
武神
ディアナ・K・リリエンルージュ(p3n000238)
聖頌姫
アウラスカルト(p3n000256)
金嶺竜
オリオン(p3n000257)
冬の王
エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフ(p3n000290)
歯車卿
パラスラディエ(p3n000330)
光暁竜

リプレイ


 ゆるゆると迫る波が、くるぶしをくすぐった。
 片足立ちでバランスをとったルル家が顔を上げると、緑柘榴の瞳に眩い陽光が差し込む。

「折角なのでビーチバレーでもしませんか?」
「そうだのう」
 こうして遮那とシレンツィオに来るのも、思えば毎年恒例となりつつある。
「豊穣ではなかなかそういう遊びに興じる事も難しいですし!」
 とはいえこうした団体遊戯を二人だけというのも味気ない。
「あ……ちょうどいいところにオリオンくんが!」
「おお、ルル家ちゃんではないか! それに東の国に少年か!」
「遮那くん、紹介しますね! こちらはオリオンくんです! 元大精霊で拙者が名前をつけた友人です!」
「左様! 余こそオリオンである!」
「オリオンくん、こちらは遮那くんです! 拙者のえーっと……主君ですかね?」
「うむ。私は天香・遮那だ、よろしくお願いするぞ、オリオン! ルル家は私の側仕えとしてよく働いてくれる私の大切な人だ。オリオンはルル家の友人なのだな!」
「そうだ。この日より貴様もな! 遮那ちゃんよ!」
 楽しげな談笑に遮那は悪戯気の赴くまま、ルル家の頬を指先でつつく。
「遮那くん!」
 ふいの出来事にルル家は耳を赤く染め、遮那が笑う。
「と、ともかく! 一緒に遊びませんか? ビーチバレー!」
 ボールを手にしたルル家が頭上に掲げる。
「オリオンくんは冬の王ですがこんな暑いところに来て大丈夫なんですか? 溶けない? 格好も見るからに暑そうですし水着買ってきましょうか?」
「オリオンは溶けるのか? 氷で出来ているのだろうか」
「余の纏うアロハなる装束は、涼やかなると聞いたが、やはり波打ちでは届かぬか」
 ではまずはショッピングとでも行こうか。
「オリオンくんも身長高いですからねえ。サイズどれぐらいかな?」
 彼の水着を用意し、いざ白い砂浜でビーチバレーだ。
「がおーう!!」
「白虎殿にも来ていただきました! 豊穣の方の方が遮那くんも馴染みあってやりやすいでしょう! オリオンくんは多分何も気にしないでしょうし!」
「うむ、強敵だな。私は風を操るがビーチバレーは真剣勝負! 能力を使わずに勝たなければならぬのだ。いざ、尋常に勝負!」
 楽しげな遮那の声にルル家は自分も嬉しくなる。この時ばかりは使命や任務を忘れただ楽しむのだ。

「……という訳で、覇竜領域から帰ってきたよ。怪我はまぁ仕方ないよね」
「竜が、いたんだよね。うん、よく……帰って来てくれた」
 ギルオスとハリエットは夜のビーチの傍らに在った。
 眺める水面。同時にハリエットは指先をギルオスの手に重ねようか。
 手袋が無ければ直に体温が交わる。二人が傍にいる証……
「あの、ね。私の休む場所は『ここ』だから。これからも私はお仕事に行くけれ、ど」
 一息。
「……約束する。絶対に帰って来る」
 そして疲れた時は貴方の所で羽を休めると。
 決意を告げようか。されば……
「ああ――約束だよ。忘れないでくれ……僕も君の事を」
 片時も忘れない。想い続けているから。
 同時に花火が上がる。派手な音が響き渡りて、声は浜辺に蕩けて消えそうになるも。
 紡がれる想いの雫は――重なる手から確かに二人に通じ合うのだ……

 そんなビーチの木陰では、陰陽丸がチェアで液状に溶けて――もとい寝そべっていた。
 柔らかな毛並みは降り注ぐままの陽光を受け止めてしまうのだが、御守の涼風があればへっちゃらだ。
「強めに吹いても毛がぶわーってなるだけなので無敵なのです。えへん」
 波打ち際ではしゃぐ仲間の楽しげな声が陰陽丸の耳に届いた。
「そういえば、アウラスカルトお姉さんはお元気でしょうか」
 ふいに、竜の存在を思い出す。
「何かご家族っぽい人を見かけたのできっとどこかにいそうですね」
 今年も元気に泳いでいるのだろうか。
 そんな砂浜に姿を見せたのは、ベネディクトだった。
「折角此処まで来たのに本を読んでいるのか? ケーヤ」
 ベネディクトはパラソルの下、椅子に座り本を開いているケーヤの元へやってきた。
「あ、あの。はい、新刊が出ていて」
「もちろん知識も大切だがな」
 言葉を選ぶ。
「せっかくだから実際に色々と体験をして来たらどうだ。実体験も友人と赴くのであれば悪くない物だぞ」
 顔を上げたケーヤが、眩い砂浜を見つめて僅かに顔をしかめる。
「身体を動かすのが苦手なら、ちょっとした買い食いを一緒にしてくるだとか。飲み物とかな」
「そういえば喉が渇いて……」
 立ち上がりよろめいたケーヤを支えてやる。
 本に夢中で軽く脱水しているのではないか。すぐに飲み物を買ってやらなければ。
「なんだ、汝等か」
「ひゅー! 皆さんお揃いですね!」
 現われたのはアウラスカルトと、なにやら水着姿で顕現したリーティアの幻影ではないか。
 額のサングラスのような装飾品には『どらごん』と書かれたスクリーンが瞬いている。
「ケーヤに飲み物を買いに行こうと思ってな」
「水気の不測とは、なんと脆い肉体か。ならばこれを進ぜる、飲め」
 アウラスカルトが、ハイビスカスとパイナップルを飾った青色のトロピカルドリンクを手渡す。
「は、はわわわ、尊――」
 ケーヤは目をぐるぐるさせながら受け取った。
「いいから飲め」
 ストローに口を付けたケーヤは、なぜだかむやみやたらと幸せそうに見えた。

「フハハ! 見つけましたよアウラちゃん! 確保ォー!」
「な、なんだ」
 飛びかかってきたしにゃこを受け止めたアウラスカルトは、手のひらでしにゃこの顔をそっと押す。
「放置しておいたら部屋に籠もって読書してそうだからね。皆でビーチで遊ぶのだ!」
 セララにしにゃこは「そうそう」と頷いた。
「ビーチ! ビーチ行きますよ! こんな所に居たら茸生えますよぉ!?」
 しにゃことセララに両腕を掴まれ、アウラスカルトは白い砂浜に出てくる。
「そうだ! 皆で大きな砂のお城を作ってみようよ。
 魔術の使用もOKにして、豪華なのを作っちゃうのだ!」
「よっしゃ砂城建てますか! 立派な奴行きましょう! 風雲しにゃこ城!」
 しにゃこがねこ車いっぱいの砂を盛り付けた。
「ドラゴンはあんまりモノを創ったりしないよね。でもね、何かを創るのって楽しいんだよ。
 それをアウラちゃんにも体験してみて欲しいなって」
 砂をぺたぺたと打ちながらセララはアウラスカルトに向き直った。
「一人じゃ難しくても三人ならきっと素敵なモノを創れるから」
「しにゃも不器用なんであんま物作りしないです。でもこうやって皆で作るとなんか楽しいですね!」
 アウラスカルトは泥だらけになった手を見つめこくりと頷く。
「砂城はいつか崩れちゃいます……あまりにも儚いしにゃこ城。しかしこうやって写真を取れば! 思い出が残っちゃうんですねぇ!」
 自撮り棒でカメラに三人を収め――
 出来上がった城は、ヘスペリデスの建物にも不思議と似ていた。

「ヒューッ! アウラさん、私が選んだ水着を着てくれたんだねっ!」
 花丸はアウラスカルトの水着を見つめ顔を綻ばせる。
「汝からの贈り物ゆえ感謝を」
「コレだーって思ったものを選んだつもりだったけど、ちゃんと似合ってるようで安心したよっ!
 ねっ、リーティアさんっ! アウラさんの水着姿、とっても可愛いよねっ!」
「やばいですね! うちの子! きゃわわわわ!」
「じゃあ脱ぐ」
「脱がないでください!」
 花丸たちの会話を見つめ朱華は不思議なものだと肩を竦める。
「人と竜とが手を携える……って言ってたけど。ええ、悪くないわ」
 日陰は涼しいけれど飲み物は用意しなければならないかとアウラスカルトを見上げる朱華。
「……ドラゴンが暑さで倒れたりするのかは少々疑問だけど」
「って、海まで来ていつまでも話してても仕方がないよねっ!」
 花丸はビーチボールを持った朱華に振り返る。

 束の間の休息にスティアとサクラもまたはしゃいでいた。
「まだまだ大変なこともあるけど夏! 海! 今ぐらいは羽を伸ばしちゃおう!」
「そうだね。せっかくだからアウラスカルトちゃんやリーティアさんも誘ってみよう」
 自分とサクラに掛かれば日陰にこもっているアウラスカルトを連れ出すなぞ造作もないのだ。
 スティアは意気揚々と彼女の前に姿を現した。
「私はリーティアさんははじめましてだね! うちのスティアちゃんがお世話になっております」
 深々とリーティアへとお辞儀をしたサクラの肩を掴むスティア。
「サクラちゃんが私の保護者みたい顔してる!? 許すまじお姉さんマウント! 同い年だよ!」
「これは! 仲良しさんの気配ですね! うちも仲良しです! いぇー!」
 リーティアの幻影がアウラスカルトの背後をうろちょろすると、アウラスカルトは無言で顔をしかめた。
 それにしても――サクラは目をみはる。ずいぶんご機嫌な人のようだ。
 まさかアウラスカルトも将来はこんな風になるのだろうか。テンションの違いに驚くばかりである。
「それにしても、アウラスカルトちゃん水着凄く似合ってる! かわいいー!」
「もっと見て下さい、きゃわわなうちの子!」
「リーティアさんとアウラスカルトカーニバルを開催しないと」
「そうでしょう! そうでしょう!!」
 今回は以前の教訓を生かしてビーチバレーはやめて水遊びだ。
 不意打ちでスティアはアウラスカルトとサクラに「隙有りー!」と水を掛ける。
「やったなスティアちゃん! 反撃だ! アウラスカルトちゃんも喰らえー!」
「ががーん! 即反撃なんてずるいよー!」
 ずぶ濡れの三人をリーティアは微笑みながら見つめた。
 しばらく波打ち際で遊んだスティア達はフラッペを買いに出る。
「私はマンゴーにするけど皆は?」
「……同じでいい」
 砂浜の木陰に座りスティアはこの前メテオスラークと戦った事を語る。
「サクラちゃんが極まったらあんな感じになるのかなーって感じの性格で、大変だったなぁ」
「私はあんな感じにはならないし! 流石にもうちょっとおしとやかだし!」
 スティアとサクラは命がけの戦いに思い馳せる。
「早くあのぐらい強くなれるよう頑張らないと! そうしたら竜形態のアウラスカルトちゃんとも戦いたいな! とは言え、勝ちは勝ちだよね! リーティアさん褒めて褒めて!」
「凄いでしょー!」
「すごいですね! えらい!!! 100万ドラゴンポイントを進呈します!! いえ5000兆点!!」

 ――そうですか。また一柱が欠けたのですね。メテオスラーク。


 午後。
 夏の高い太陽は、まだまだ傾きそうにない。
 遊んだ後は、お腹もすいてくるもの。あとは少しの飲み物だってほしい。
「なんかこう、高級感がありすぎて水代わりと化する雰囲気じゃないような気もするっスけど」
 ライオリットはプライベートビーチを見渡し感心したような声をあげる。
 これなら人が少なくて気兼ねなくビーチを満喫できるだろう。
「せっかくなら、アウラスカルトとかも誘ってもいいかもしれないっスけど……」
 彼女は日陰で本でも読んでいそうな雰囲気だ。
 しかし、今後は人との付き合いが増えていくこともあるだろう。
 何事も経験だとライオリットはアウラスカルトを探す。
「スイカ割どうッスか? ホテルに腐るほどあったっスから、割り放題っス」
「スイカ? 割るのか?」
 首を傾げるアウラスカルトにライオリットは目の前でスイカを割ってみせる。
「スイカ割り用に準備されたものじゃない?多分、気のせいっスよ。アイスも食べ放題っスからね! 疲れたら存分に涼めるっス!」
 言いながらライオリットはアウラスカルトにスイカ割の棒を握らせた。
 破壊しないよう、そっと棒を振り下ろす。
 スイカは割れずに、棒がぽこんと跳ね返った。

 ベークはお礼にとリーヌシュカの元を尋ねていた。
「この前はありがとうございます」
「え、何のこと?」
「決戦とかですよ! とにかくこれ。おやつです」
「隠していた何か、ついにくれるのね!?」
 なんかちょっと嫌なことを言うリーヌシュカだが、鯛焼きに瞳を輝かせている。
「いいの? 頂戴! ねえってば」
「今後も肩を並べて戦うことがあるとは思いますが、その時はよろしくお願いしますって」
「これおいしいのね。なんていう食べ物なの? てかあついー!」
 …………あの、聞いてます?」
「あーづーいー!」
 すずなとリーヌシュカは白い砂浜へと照りつける太陽に焼かれていた。
「シュカさん! はやく泳ぎましょう! こんな砂浜に居たら焼け死んでしまいます><」
「もちろんよ、すずな!」
 暑さを吹き飛ばすべく昼のビーチへと走り出すすずなとリーヌシュカ。
 今年はカニに負けないように気を付けたいが、多分挟まれるのだろう。
 一頻りはしゃいで、パラソルの下へ戻って来たすずなを迎えるのはリュドミーラだ。
「果汁入りのアイスティーをご用意しました」
 彼女が用意してくれたドリンクが火照った身体に染みる。
「いえあの、至れり尽くせりで大変ありがたいのですけどここでもメイド服なんです……?」
「あーいえ、まあ」
「いやー、そんなことないですよね! お義姉さんちゃんと中は水着ですよね!!!!!」
「お義姉ちゃん、そうなの?」
「ですよね、シュカさん!!!!!!!」
「じゃあ脱がす!?」
「ちょっと!」

「オリオンさんあーそーぼー!」
 フラーゴラはオリオンへと手を振りながら近づいて行く。
「おお! フラーゴラちゃんではないか!!」
「そういえばオリオンさんって泳げるのかな? ……そもそも暑いの大丈夫なのかな?」
「去年の今頃、手ほどきを受け若干泳げんこともないようになった!」
 オリオンは胸を張り「暑い!」と一声叫ぶ。
 だったら――
「じゃーん!」
 取り出したのは、ビニールのゴラぐるみ。
「ゴラぐるみ夏バージョン! ふかふかでプカプカだよ」
「おお! 憧れのもふもふ! ではないな。これはつまり――」
「いつものゴラぐるみは濡れるとしおしおションボリになるからお留守番で」
「なるほどしょんぼりはいかんが、これなら水にも浮かぶという寸法だな! さては天才だな!」
 砂浜にビニールのゴラぐるみを置いて砂の城をつくりだす二人。
「せっかくだから立派なお城を作ろうよ! オリオンさんはどんなお城が好み?」
「よくぞ聞いた! 余が好むは傲岸にして不遜なる偉容! 天貫かんばかりの巨塔よ!」
 なんかすごいこと言ってる気がするが、ちょっと難しそうだが。
「だが我等が作る城ならば、理想の幻想へ勝るとも劣るまい!」
 ならばあとは心ゆくまで作るまで。
「あっゴラぐるみがゆっくり出来る屋上も作ろう……! ここ貝殻もシーグラスいっぱいあるねえ」
 ほらっとフラーゴラは空に手をかざす。
「オリオンさんの名前みたいに星みたいなサンゴ。これを飾って……かんせーい!」

「夏といえば、見渡す限りの海! ビーチ! そして、お酒でございますわ~~!」
 フロートチェアに寝そべり酒瓶を煽るのはヴァレーリヤだ。
「うわー! やっぱりシレンツィオはいつ来てもすごいね!」
 その隣で声を上げるのはマリアだ。
「ふふ! ヴァリューシャ早速酒盛りかい? フロートチェアから落ちないように気を付けるんだよ?」
 何があってもすぐ助けるけれどと微笑むマリアの向こうにはヴェガルドが心配そうな顔で見つめる。
「ヴェガルド君も見ててあげてね! 白虎君も久しぶりだね! 相変わらず元気そうで何よりだよ!」
「がおーう! これは無沙汰していたね!」
「私はこんなんなっちゃったけど!」
「とらぁ」
 とらぁ君は白虎を頭に乗せバシャバシャと水音を立てる。どうやら二人(?)は気が合うらしい。
 どちらも真の虎だからだ。
「けどよ、その、なんだ。フローキなんちゃら。落ちたら危なくねえか。アンタ泳げんのか?」
「フロートチェアでしてよ。って、そんなこと言っても、このお酒はあげませんわよ」
「一本や二本いいじゃあねえか、ケチな坊さんだな」
「これはマリィが私のために買ってくれたのですもの。一口だって……」
 不満げに頬を膨らませたヴァレーリヤは、それでも少し可哀想かと思い直し。
「ヴァリューシャったら! お酒を貰われちゃっても私がまた用意するから安心していいんだよ?」
 白虎を肩車してぐるぐるとはしゃぎながらマリアは振り返る。
「ねえ、マリィ。このお酒ってもう一本あったり……ひあああ!!??」
「ああああ!!! ヴァリューシャ!?」
 マリアに声をかけようとしてバランスを崩し、海中に沈むヴァレーリヤ。
「あぶっあぶっ、助け……このまま沈んだら、海底の美し過ぎる女神像になってしまいますわー!」
「本当に女神になっちゃったらどうするのさ!? 大丈夫?」
 水の中から何とか引き上げられたヴァレーリヤは肩で息をする。
「はー! びっくりした! 水飲んじゃってないかい?」
「た、助けてくれて有難う。死ぬかと思いましたわ。でもお酒、折角マリィが買ってくれましたのに」
 空になった手をにぎにぎしてしょぼくれるヴァレーリヤ。
「むー! 片腕じゃお姫様抱っこし辛いのが難点だね! 早く作って貰わなきゃね!」
「……でも、しょんぼりしたままでは駄目ですわよね。お酒の仇は、お酒で取る!
 行きますわよ、ヴェガルド、ホワイトタイガー(白虎)くん、とらぁくん!」
 亡くなったお酒を弔うために、いっぱい飲んで供養しなければならない。
「ほら、マリィも。先に座っていて下さいまし。私が注文して来て差し上げますわっ!」


 ――それにしても。
 浜を望むホテルプールで、イナリはウォータースライダーを滑る狐娘を眺めていた。
(手駒を使わずに竹駒・豊川姉妹が杜からわざわざ出張してくるなら杜も本格的に動きそうね)
 楽しそうな豊川はともかく、表情一つかえない竹駒も居り、なんというかまさかの事態だ。
「で、竹駒、豊川……まさかとは思うけど、稲荷神(式神の方)様を連れて来たりしてないでしょうね?」
「あーそれはー……」
「え、と」
 豊川が言葉を濁し、竹駒が視線をウォータースライダーの上へ移す。
「……!?」
「プール! 最! 高!」
「ああああ」
 予感は的中。
 きっとご自分の立場すら考えず「杜でのニート生活は嫌ー!」とか、駄々をこねたに違いない。
 竹駒と豊川に無理矢理同行してきても違和感はない。
 というか来たいがために、無理矢理連れてきたまであり得る。
 ともかく、まあ、その。
 きちんと見張っておかなくては。

「ふふー、折角の夏、ですから……存分に楽しみましょう、ね」
 メイメイはリーティアとアウラスカルトを連れてホテルのプールへと赴く。
「まあ! アウラさまは浮き輪をお持ちなのです、ね」
「これがあれば、だいじょうぶだときいた……」
「かわいいですよねえ! 浮き輪!」
「かわいくはない」
 だがふよふよ浮きながらメイメイを見遣るアウラスカルトは何処か楽しげである。
「ぷかぷかと浮くのも楽しいですよね……!」
「わるくない」
「海ですと果てしなく流されてしまいます、が……プールならその点安心です」
 アウラスカルトが乗った浮き輪を手で押しながら、メイメイはゆっくりと泳ぐ。
 プールサイドでエンジョイしているリーティアに手を振れば、笑顔でピースサインが返る。
 あとはaPhoneで、こうして、母娘も一緒にうつるように自撮りして。
「えと、こうして……はい、アウラさま、あちらを見てポーズ、です!」
 撮れた写真を覗き込めば視線を向けてくれるアウラスカルトが写った。
 休憩にはトロピカルジュースは良いだろうか。
「シュワってするの、平気ですか?」

 プールがジェックが姿を見せると、アウラスカルトは浮き輪に座って虚無顔をしていた。
「あれ、そういえば……去年もアウラスカルト、泳いではなかった、んだっけ?」
 もしかして泳げないのだろうかと疑念の視線を向けるジェック。
「泳いだことは、そういえば、ないな……だが」
「ああいや、馬鹿にしてるわけじゃないよ。人型で泳ぐの難しいもんね、うんうん」
「われもおよげる、たぶん。たぶんだが、やってみたことはないが」
「大丈夫だよ、アタシも覚えるの苦労したし」
 アウラスカルトの肩に手を置くジェックの傍らには大きい浮き輪が用意されていた。
「浮き輪とやらがあれば」
「この浮き輪は寝転べるんだよ。ふふふ、プールの上で水に揺られながら日光浴とか、贅沢でしょ」
 プールの上でプカプカと浮かぶジェックの浮き輪をアウラスカルトは掴む。
 大きい浮き輪なのでバランスが取りづらい。
「ま、まて。うまく、つかめん」
「あっ待って揺らさないであっーーーー!」
 降ってきたジェックと一緒にアウラスカルトも沈む。
 頭までずぶぬれになった二人は、プールサイドへ両手をついて、顔を合わせて笑った。

 そんな頃。
 アンナはひとつ伸びをしてから、プールサイドのカフェに立ち寄った。
「リゾートというものは何度来ても良いわね……」
「ええ、肩こりもほぐれるというものです」
 連れ添うディアナもまた、大きく伸びをする。
「どうせまたこれからも事件が次々起こるのは目に見えているし。羽根を伸ばすとしましょう」
 アンナ達の前に置かれるのはフルーツの盛り合わせとアイスクリームだ。
 これを食べ終えたらステーキを摘まもうかとメニューを見つめるアンナ。
「メニュー制覇できるかしら? ねえ、ディアナさんはどう思う?」
「これはあと数名は必要ではないかと思いますが」
「じゃあ好きなものにしましょう。ディアナさんは何が好きなの?」
 アンナがメニューのページをめくる。
「お肉? 果物? 何でも食べさせてあげるわ」
「何でも! ならばならば」
「そういうのは駄目よ」
「こほん、それはともかく。そうですわね、わたくしは何でもローストしたものが良いでしょうか」
 お肉もお魚もお野菜も、ディアナはオーブン料理を好むらしい。
 そんなこんなで、運ばれてきた料理を前に会話も弾む。
「そういえば実践の塔って普段からフィールドワークも多いの? わざわざ天義の出向したりとか」
「いえ、滅多にございませんわね。皆様出不精ばかりです」
 ディアナの研究は亜空間と異世界への境界線に関するものらしく、やはり元の世界へ帰りたいという思いから来るものなのだろう。
 プーレルジールの仕事も来そうだということで、これから忙しくなるようだ。

 そんなプールを望むのは客室だ。
「こりゃすげぇな……」
 部屋へ足を踏み入れた天川が目を見張る。
「無料で泊まらせてもらうのは気が引けるぜ……」
「そうですね。……ふむ、斯うしたものがお好きでしたら再現性東京でも準備しましょうか?」
 天川の驚いた横顔へ晴陽は僅かに微笑んだ。
 最近は激務続きだったから、たまにはゆっくりしたいと思っていたのだ。
「体を痛められませんように。気にしないとは私もいい歳ですので、おいそれとは言いませんが」
 ソファで寝ると告げる天川に晴陽は眉を下げる。
「体を痛められる用でしたらもう一部屋何とかする事も出来ますしベッドを運び込ませることも可能かと」
「幸いバカ広いリビングにこれまたバカでかいソファがある」
 天川はソファへ腰を下ろして両腕を預けた。
「むしろ俺の事務所のベッドより寝心地はいいんじゃねぇか? あとはそうだな……。君が風呂に入ってる間は俺は部屋を空けるようにしよう。いくらでもぶらくつ場所はあるだろうしな」
 言いながら天川はウェルカムドリンクのボトルを手にする。
「さて、早速だが一杯やるか? タダ酒ってのはいいもんだぜ」
 見れば数本の瓶が戸棚に用意されているではないか。
「余り知らない銘柄もありますから、味見に付き合って頂いても?」
 グラスを手にした晴陽が小首を傾げた。
「今回も付き合わせて悪いな。大きな仕事を終えた後ってのは気が抜けていけねぇ」
 ボトルから注がれる酒の音が室内に響く。天川が選んだのはラム酒だった。
「だが、こうしてきっちり休みを入れりゃ切替えも捗るってもんさ。晴陽はそういう所もしっかりしてそうだから余計なお世話かもしれんが……俺は一緒にゆっくりしたいって望みに付き合って貰ったが、晴陽は何かしたいことはないか? この際だ! なんでも付き合うぜ」
 トランプでも映画鑑賞でも散歩でも何でもこいと告げる天川に「そうですね」と考え込む晴陽。
「あとでホテル内を散策しましょう。 売店には新たな発見(ぶさかわ)が居るかもしれません。ええ、休暇を楽しんだ後で思う存分に」
 いつもより和らいだ笑顔が天川を見つめていた。


 かくして日も暮れ、満天の夜空には月が輝き始めた。
「海岸の方で花火をして遊びませんか?」と鏡禍に誘われルチアは夜の浜辺へ足を踏み入れる。
 打ち上げ花火もいいけれど、手持ち花火の仄かな灯りもまた素敵であると鏡禍は微笑んだ。
「たった二人で打ち上げ花火をするのは流石に大変だから、そっちじゃなくて良かったわ」
 ルチアは手早くロウソクへ火を灯すと、石の上へ固定した。慣れた扱いだ。
 手持ちの花火を一本取り出し、構えた鏡禍へ――
「へっぴり腰よ」
「だって……結構勢いあるんですよ」
 色とりどりの光が爆ぜ、二人の瞳へ煌めきを散らす。
 持ちやすいものから消えていき、残ったのは線香花火だった。
「……あ、落ちちゃった。線香花火、綺麗なんですけどなかなか最後まで行かないんですよね」
 言いながら鏡禍はもう一本線香花火を手にする。
「見た目は簡単そうなのにすぐ落ちちゃってなんだか儚いです。ルチアさんはどうですか?」
「線香花火、嫌いではないけれども儚さが強くて、あまり好きにはなれないわ。別に、玉をすぐ落としてしまうからではないわよ?」
 夜の静けさと花火の仄暗い灯り。
 永遠にこんな幸せな時間が続けばいいのにと思ってしまう。
 けれど、この平穏の後にはきっとさらなる戦いが待って居るのだろう。
 願わくば全ての人が、そして隣の大切な人が無事で居られますようにとルチアは願う。
 ――波の音も潮風の香りも彼女の横顔もずっと忘れないでいられますように。
 重なるのは鏡禍の祈りだ。

「せっかくのロイヤルスイートですしルームサービスで、とも思ったのですが」
 寛治が眼鏡に指を架ける。
「こちらの方がディアナさんの水着姿を拝見できますから」
 ディアナを誘ってナイトプールのプールバーへとやってきたのは寛治だ。
「あら、お上手ですわね」
 寛治が選んだのはNo.10のマティーニ、ディアナはセブンスヘブンだ。
「今回のリゾートプロジェクトの成功と、ディアナさんの水着に乾杯」
 桃色や紫色のライトが揺れるナイトプールには、カクテルはよく似合う。
「そういえば、フリアノン・ジンは試されましたか?」
「いえ、お噂だけしか」
「あれ、私が考案に一枚噛んでましてね。結構自信作なんですよ」
「それは気になりますわね、是非頂きたいものですが、あら、これですわね」
 ではお次はフリアノン・ジンのマティーニにしようか。
「しかし、ディアナさんとの縁も奇妙なものです」
 水を向けた寛治に、ディアナがくすくすと微笑んだ。
「R.O.O.のNPCとして敵対し、今では現世で共犯者、といった所ですか」
「不思議な縁ですわね……わたくしもずいぶんと考え方を変える切っ掛けになりました」
 それまではNPC同様、世界など滅んでしまえばいいと思っていた。
 前向きになれたのは、間接的かもしれないが寛治達のお陰と言える。
「天義周り、だいぶきな臭くなってきていますね」
 冠位強欲の戦いに参加し、エルベルト・アブレウの暗殺を試みた身とはいえ寛治は天義にとって余所者なのだろう。本来ならば縁のない男に過ぎないと自嘲する寛治。それでも。
「貴女と縁が紡がれた事で、私は遂行者テレサに関わるようになった。もし貴女に手駒と言える存在が居ないのなら、どうぞ私をお使いください。報酬は……そうですね、今夜、お代を頂くというのは?」
「それは私達二人で協力して一夜の恋人を何人かふん捕まえて、食っちまおうと?」
 たぶん、ちょっと、ちがう。

 そんなプールを離れると、ホテルバーに一組の母娘が姿を見せた。
「ゼフィラさん」
「ああ、こっちだ」
 ――当然ながら『さん』付けか。
 このところどちらも忙しかったから、休暇をと思ったのだが。
 やはりこの母娘も、以前のどこかの竜と似たぎこちなさがある。
 かの竜等とは敵から味方へと複雑な因縁があり、そして母娘の向き合いがあった。
 そして諭されてしまった。
 誘われてしまった。
 だが、だからこそ。
 こうして何の因果か、時空を越えて再会したこと自体は事実ではあり。
「いつのまにか妙な関係になったものだなぁ」
「なんだか不思議なものですね」
 隣席にもまた母娘がおり、語りかけたゼフィラにリーティアが微笑む。
 はじめはアウラスカルトが、ゼラムの住む練達を襲撃し、それを迎え撃ったのが縁の始まりだった。
 それがいつしか手をたずさえ、覇竜領域の冠位魔種を討伐する運びとなり、今はこうして――
 ゼフィラは右側へ腰掛けたゼラムにメニューを手渡してやる。
 煙草は、娘の前で吸う気にはなれないのだけれど。
 こうして共にカクテルを飲み交わすのは、いやあるいは父親の役目という気もするが――
(……生憎と酒に弱かったからねぇ)

 ――きっとベルゼーはこういうこともしたかったのではないか。

 その向こうで、リースリットはキール・インペリアルのグラスを傾けた。
 隣のアウラスカルトはスクリュードライバーを美味そうに飲んでいる。
「そう言えば」
 リースリットが切り出した。
「……前にシレンツィオで色々と勧められていたと記憶してますが」
「……」
「アウラスカルト。あの時の料理や飲み物は如何でしたか?」
「いずれもみな、うまかった」
 竜がどんな味覚か検討もつかないが、以外と大丈夫なものらしい。
 けれど、尋ねてみる。
「リーティアさん、申し訳ないと思うのですが……アウラスカルトとコル=オリカルカのお二人に、好みや味覚に合いそうなお勧めの飲み物などはないでしょうか?」
「そうですねえ。お酒ならジュースっぽいのがいいんじゃないでしょうか!」
 なるほど、そういうものか。
「お酒に不慣れなら、ほら、そういうほうが飲みやすいかなーって」
「カシオレは、うまい」
「気遣いは無用。結構だ。わたくしは帝竜と姫君の付き添いにすぎない」
「まあまあ、そう言わずに。幻影で誤魔化すだけの私の代わりをして下さいな」
「無理にでもと仰るならば、多少なら」
 そんなやり取りをリースリットは、どこか微笑ましいようにも感じた。
 コル=オリカルカはしかめっ面のままカシスオレンジを一口。
 しばらく硬直し、それから口元だけを微かにほころばせる。
「どうでしたか?」
「悪くない」

 そんなバーでは、しっとりしたジャズが流れ――
 リースヒースはディアナの手をとり、エスコートした。
「……これは嬉しいお誘いですわね」
 ディアナからの身体を見定めるような視線は――正直少々気になる。
 気にはなるが、件のレディ・スカーレットからの視線にも似ているというか、ともあれ。
 そう、そのレディ等と戦うにあたって、互いを知るのは大切だろうから。
 別に戦い方の話をする訳ではなく、とりとめのない会話もまた大事だ。
「私はこちらを、御身は?」
 リースヒースは修道院系のリキュールソーダで割ってもらった。
 爽やかな苦みと、甘みと。それから美しい緑色が好みだ。
「こういったものを好きだと思うようになったのは、最近だが」
 精霊に近い生き方をしてきたリースヒースにとって、こういった『人間的な』楽しみを覚えるようになったのは、比較的最近のことだ。
「そうなのですね」
 ディアナはスプモーニを注文して続ける。
「わたくしも異界の出ですので、練達のような文明には長らく不慣れでした」
 こと最近までは、そうだったらしい。
「――さて、御身のことを、少しばかり教えてもらえぬか、ディアナ」
 ディアナは元の世界へ戻ることを目的としている。
 以前は練達の技術に頼った強引な方法を考えていたが、ローレットのイレギュラーズの活躍を知り、先に世界を救うという正攻法に転じたという。だからローレットと協調するらしい。

 少し離れた所に座っているのは、ミルヴィと誠司だ。
「……そうだ、もう僕も飲めるんだよ」
 一緒に飲むのは初めてだろうか。何だか嬉しくなるとミルヴィは微笑む。
 誠司が恋人に視線を向けると、バックレスドレスから美しい背中が見える。
 彼女に釣り合うように誠司もジャケットを着てきたのだが。
「こういうムードあるところってどうするのが定番なの?」
 いっそのこと、聞いてしまうのが手っ取り早い。
「あ、僕とりあえずお酒の種類解らないんで、軽いやつでお願いします」
「かしこまりました。季節の果物と炭酸を合わせたものなどいかがでしょう?」
「それでお願いします」
 グラスが並び、乾杯するとミルヴィが囁いた。
「意外とフォーマルな格好似合ってるじゃん?」
「いや、彼女が美人なんでどうしても浮くんですけどね。でも、やっぱドレスもきれいだよ」
 ミルヴィは誠司の顔を見つめ、琥珀色の酒を一口煽る。
「知ってる? ブランデーってワインから出来るんだよ? 今は甘いだけの関係かも知れないけれど年月を経て円熟する……けどアタシは苦い思い出も甘いだけの関係は嫌なの」
 愛する人の目を真っ直ぐに見つめ微笑むミルヴィ。
「貴方に付いてく、貴方の世界で一緒になろ?」
「なら、離したりなんかしないよ。どこまでもついてきてもらうからね」
 ミルヴィの手を優しく握った誠司は確りと頷いた。

「くはははッ、今日の俺は作る側じゃなくて頂く側だ」
 レストラン『エメロード』にふらっと現れる浴衣姿の男。
「このエメロードでは極めて高いクオリティの様々な料理を出すと聞く」
 この日こそ授かり物のスマートな肢体で現われたのは、ゴリョウだった。
「今日はそれらを味わい自身の料理技術の糧にしてやるぜ」
 まさに求道者。
 メニューを開いたゴリョウは『Food』の項目をじっくりと目でなぞり。
「上から下まで全部だ!」
 説明しよう!
 ギフトの使用よりゴリョウの身体は灼熱し、熱気感じんばかりの勢いで脂肪燃焼しているのである!
「つまり物凄い勢いでカロリーを消費している! これを利用する! だが汚い食い方は許されぬ!」
 ばくばくと意地汚い振る舞いではない。極めて丁寧な食事風景だ。
 このある種の極楽は、無限に続くこととになるのだ。

 遊び倒せば夜こそ本番。
「……な、なんか緊張するなぁ!?」
 ホテルバーへふらりと姿を見せたのは、アルムだった。夏の想い出を沢山作ろうと思ったまではよいものの、キラキラしたオシャレさは、逆に気疲れだって感じるが。
 こんな時には――
「アルコールしか勝たんの!」
「お、あれに見えるはストレリチア君!」
 ――飲むに限る。
「よかったぁ知ってる顔がいて。隣いいかい?」
「大歓迎なの! 飲酒100日チャレンジ、今日も更新していくの!」
「……え。ふふ、楽しそうだなぁ」
「まさかりーちゃんとまだこうしてお喋りできるなんて不思議ねぇ」
「本当ですね、あーちゃん」
 なんだか順調にパリピ化しているように見えるが、ともあれこれからいろいろな世界を一緒に見ることが出来るのは、嬉しい限りだ。
「あ、アーリア君! こっちだよ~、一緒に飲も!」
「もちろんよ! ヘイ、ストレリチアちゃん肝臓の調子はどう? ヘパってる?」
「ヘパ! 早速ぶちあげていくの、乾杯なの!」
 ピースを繋げてW印。今夜もキマっているらしい。
「乾杯だよ」
「かんぱーい。あ、そうそうアルムくんには手加減してあげてね」
「出来るだけ気をつけられたら気をつけていくつもりはないでもないの!」
 行けたら行くみたいなことを言い出すストレリチアはさておき。
 手始めにNo.10のジントニック。フレッシュライムとボタニカルの香りが気分を高める。
「アンタがリーティアか、それにアウラスカルトだな。俺は冥・璃煙の息子、ルカ・ガンビーノだ」
「汝か」
「へいガンビーノ! 冥の方ですね! 存じております、ご先祖様を!」
 よろしくと挨拶をかわし――ところでリーティアは幻影ということは。
「ふふふ、実はですね。念!」
「念!」
 アーリアとリーティアが何やら術式を紡ぐと、リーティアの手元にジントニックが現われたではないか。
「あーちゃん経由でうちの子から魔力を少々拝借して、味覚、触覚、嗅覚あたりをエミュってですね」
「あー……」
 仕組みは謎だが、とりあえず飲めもするし酔えもするらしい。
「驚きました。最近のお酒ってめちゃくちゃ洗練されてるんですね……」
「そうなのよお。って、来たわね、どーん!」
「何、アーリア! おさけくさい。どーん!」
「な、なんだ」
 次なる来客にアーリアが肩をあてると、リーヌシュカがけたけたと笑い、アウラスカルトがうろたえる。
「これは皆さんお揃いで」
「お、リーヌシュカにマルク、歯車のニーサンも来たのか」
「先程無事に夏休みがとれたらしきお二人を発見したもので」
「ええ、ご無沙汰しております」
「ルカ!」
 マルクはエメラルドグリーンのアロハシャツにハーフパンツとラフな出で立ちだ。リーヌシュカは白のチューブトップにデニムのショートパンツで、足元は二人ともサンダルだ。かなり攻め気味のリーヌシュカはお腹が冷えないか心配になるが。さすがの歯車卿とてジャケットを脱いだジレ姿である。
 いずれも帝国本国ではあまり見られない、夏らしい姿だ。
 女性ばかりで少し気圧されていたアルムも、男性陣の出現に少しほっとした。
「初めましてだ、アルムだよ」
 早速互いに挨拶を交し合う。
 今後も依頼などで一緒するかもしれず、これを機会に交友を深めることが出来たら嬉しい。
「今日は完全にオフなのねえ」
「ええ、お陰様で」
「 はは、こりゃ良いな! 楽しくなってきやがる!」
 こうして二度目の乾杯となり、音頭はルカがとった。
「そら、乾杯!」
「乾杯!」
 アーリアはお次のモヒートで調子を上げつつ、レアキャラの出現になんだかちょっと嬉しくなってくる。
 歯車卿には今日ぐらいは眉間の皺をとって和やかに過ごしてくれるなら、なんだか安心する。
 さてフードはどうするか――マルクは戦略立案にかかる。
 お肉も良いが、海沿いなら海鮮が気になる所。
 ホタテやエビに焼き牡蠣も良さそうだ。
 そこにイカやタコの串焼き、魚の塩焼きにカルパッチョもつけてやろう。
「そうそう、そういえばこの前手に入れたエフィム・エフィス闘法って――」
「あー、どうも。その、最近、闘士名鑑に再録で載ったらしく、いやお恥ずかしい」
 グラスを片手にはにかんだ様子の歯車卿は、ちょっと新鮮だ。
 それにしても、花に溢れる妖精郷に、老いるの匂いの鉄帝国に、覇竜という新しい地に――
(――私達の歩んできた道のりがこうして交わって)
 そして共にお酒を楽しむことが出来るとは、なんと幸せなことか。
 あと二ヶ月もすれば三十歳にも届き――大げさなようだが生きていて良かったとしみじみ想えた。
「うちのしにゃこが世話になったらしいな」
「あやつは友だが、まれによくやばい」
 ルカが微笑みかけると、アウラスカルトからはなんとも胡乱な答えが返った。
「だったら王道のカシスミルクなんてどうだ? せっかくだから作ってやるよ」
「作る……作れるのか」
「ああ任せとけ」
 ハードシェイクでふわりと泡だった一杯は、とろけるような味わいだった。
「これは、うまいな」
「私にも欲しいの! ついでにアルムさんにも飲ませるの!」
「おう、ストレリチアも良い飲みっぷりだ」
 ブランデーをちびりとつまみ、ルカが肘をつく。
 洒落たバーでなければ、歌と踊りが欲しくなるところだ。
「今度うちの店に来いよ、奢るぜ」
「その話、詳しく聞かせてほしいの」
「おう」
 ところでいつもはクールなルカだが、実はそわそわとした様子を隠せずにいる。
「で……だ……まぁ、その…………なんだ…………」
 珍しく煮え切らない態度だ。
「どうした」
「俺とも仲良くしてくれねえか!?」
「っ!」
「ガキの頃から竜に認められて仲良くなりてえって思っててな!」
「そ、そうか」
「やっぱ格好いいじゃねえか! なぁ! 竜!」
「ど、どうしたとつぜん」
「何なら戦って認めて貰ってからでも良い!」
「いや、戦わずとも構わんというか。汝等とは戦いとうない……」
 そんな様子をくすくすと微笑みながら見ていたリーティアは「今日から仲良しですね、いえい!」と、ピースサインした。
 しかし未だ素面のマルクは自制している。
 何せこの間みたいに倒れたら大変な上、明日あたり二日酔いのまま海に行ったらと思うと――
「でも折角のお休みなの! いっぱいぐらいならだいじょうぶなの!」
「あー……」
 ならば致し方あるまい。
 マルクが『妖精の呼び声』に応じてしまった。
 魂を揺さぶり、その者の在り方を変えてしまう危険な誘惑で、ええと。
「じゃあ、このキャプテンドレイクを……」
「飲み方はいかがなさいましょう?」
「飲み方? えっと、初めて飲むから、そのままで」
「かしこまりました」
 琥珀色の甘やかな酒は、舌の上でバニラやスパイスが芳醇に香り――
 水のように飲み干せば身体の中心へ熱が落ち、視界がぐらりと傾く。
「ごめん、皆……」
「ねえマルクやばそうだけど、誰か居る?」
「マルクさん立てますか?」
「あらぁ……」
 これで二度目か。
 雑にお水を処方しておこう。
 そんな様子を遠巻きに眺め、ひとつ身震いしたアルムであった。


 夜も更ければ、皆徐々に客室へと足を運んでいく。

 そんな一室で、定がソファに身体を預けていると――
 突如聞こえてきたのは、ドアをノックする音だ。それもかなり激しい。
 訪問者の気配に定は目を見開き、勢いよく立ち上がった。
「始めに言っておきます。やましい気持ちは一切ありません!!!」
 宣言すれど胸の鼓動は否応なく高鳴り、定は生唾をごくりと飲み込んだ。
「だってロイヤルスウィートだぜ? リゾートの!」
 そしてドアノブに手をかける。
「海は練達にもあるけれど、ロイヤルのスウィートはない!」
 そう、そうなのだ。そういうことだ。そうに決まっている。
 ともあれ定はもう一度生唾を飲み込み、未だ打たれ続けるドアを、そっと開けた。
 そこには――予想通り――にんまりと笑顔をみせるなじみの姿があった。
「お邪魔します! 定君、見た? 凄い大きい部屋だよ、私の言いたいことはわかるよね?」
「はい! これはもう……」
「部屋を探検しようぜ!!」
 なじみは虫眼鏡を持ったまま、定の前を風のように通り過ぎていく。
 追わねば、そう、これは探検だ。それ以外の何ものでもない。それ以上でも以下でもない。
「お風呂! デカい! 泡!? ジャグジー!
「凄いぜ水着着て入れそうじゃない? 後で入ろうよ! 淡々がいい!」
 次は瓶入りのミネラルウォーターに天蓋付きのベッド。学生寮の部屋よりも広くて落ち付かない。
「お姫様ベッドだ。小さい頃に憧れたんだよねえ……」
「夜はバルコニーから花火が見えるらしいぜ。それまでは……」
「花火? うんうん、良いね。花火の時は贅沢にルームサービス頼もうぜ! 大人気分でさ!」
 大きなベッドの前でなじみが振り返る。
「……で、さ……」
 定が再び生唾を飲み込む。
 なじみが言いたい事なんてお見通しだ。
 こんな大きなベッドを前にやることは一つ。
「ふふ。君にはお見通しだったか」
「トランポリンだー!!」
「だー!!!!」
 ベッドの上にダイブした二人は転がって笑い合う。一頻り楽しんだあとなじみは定に視線を上げる。
「ふふ……楽しいね」

「よし、まずはしっとり飲もうじゃないか」
「いいですね」
「おうよ!」
 エフィムとリチャード、それからエッボを引き連れ、ヤツェクが部屋にやってきた。
「まずは復興お疲れ様だ、楽しい今日に乾杯と行こう!」
 よく冷えたエストレージャをグラスにサーブすれば、きめ細やかな泡が踊る。
 積もる話はいくらでもあるが、とりあえずルームサービスを一通り楽しもう。
 青カビチーズには蜂蜜を沿えて、薄切りのバゲットを。
 白カビチーズに、濃厚なウォッシュチーズ。それからハードなやつもある。
 生ハムにフレッシュな野菜、それから口直しのピクルスとなんでもござれだ。
 こうなれば五番街(租界)のヴルストも欲しいし、二杯目は爽やかなモヒートで行きたい。
「そんならお次は、鉄帝とアーカーシュの明るい未来を願って」
 謳うようなヤツェクの声音に、男達の「乾杯(プロージット)」が唱和する。
 スチールグラードの力強い味わいが喉に染みてたまらない。
 さながら鉄帝国祭りだ。
「で、どうすんだ?」
「さあ、何か面白い話でもあるんだろう?」
「そいつはこれをやりながら決めようじゃないか」
 エッボとリチャード、それから歯車卿へ、ヤツェクがカードを配り始める。
「スチールグラードホールデム、ですか」
「あたりだ! あんた相当読みが強いだろ」
 酒にも強そうだし、賭けも強そうとみた。これは楽しくなるだろう。
 少し酒をいれてやるポーカーは、面白いものだ。
「何なら負けた奴が酒を飲んで、最初に飲み潰れた奴が何かする、ってのもいいな?」
「おっと、そう来ますか」
「いいねいいね」
 まあ、これからも復興を一緒にやっていくのだから。
 互いのやり方や癖を知っておくのも悪くない――なんて方便を付けて。
 言い訳だなんて分かっていても、構いやしない。
「さて、行くぞ?  おれも容赦なしだ」
 ゲームの腕前やいかに。

「えー、とりあえずお疲れ様でしたということで」
 また近くの部屋では美咲がディアナとほむら、それからマキナを連れていた。
 ひとまず食べ物はルームサービスに任せ、甘めの酒を頂くとしようか。
 今日は仕事ではないのだ。それに職場の飲み会は、その、なんだ。日本の悪習が煮詰まっているから。
「それじゃ乾杯といきましょうか」
「かんぱーい」
 マキナはというと、ソファで一人黙ったまま、結局自分用に購入したその名鑑を読みふけっている。
 まああれはあれでいいだろう。
「ところで、つかぬ事を伺うのですが」
 ディアナがしずしずと手をあげる。
「ひとまずこの状況を整理しても?」
「それは、どうぞっス」
 美咲が怪訝な視線を返す。
「これは据え膳、つまり全員食っちまって良いという判断でよろしいでしょうか?」
 ほむらがビールを吹き出した。
 駄目に決まっている。
「冗談はさておき、ゆっくりしましょうか」
「……そっスね」
 絶対に半ば本気の様子伺いだったとは思うが、それはさておき。
 しかし今日はずいぶん予想外のエネルギーを使ったものだ。
 まさかマキナが実家へのお土産として『大号令艦隊名鑑』など持ってきた時には頭を抱えた。
 なぜたかがお土産選びにこれほど難航するのか。
 それに陽の気もずいぶんと浴びさせられた。
「良く軌道修正出来ましたよね」
「ほんとスね」
「美咲の課金用金券よりはマシじゃないか?」
 マキナが反論する。
 振り返った美咲の、ぎくりという音が聞こえるようだった。
「触媒だなんだ言っていたが、結局実演で爆死していたし」
「あー」
「それは……スね」
「とにかく二人の発案には助けられた」
「それはよかったです」
「上の弟は私が行けなかった学園に進むつもりらしくてね」
 マキナがぽつりと語り出す。
「だから、こういった国外の物品で見聞を広めてもらいたいものだ」
 そんな時ディアナが突然、美咲の肩越しに手元を覗き込んできた。
「ちょっ」
「そのaPhoneのゲーム、わたくしも興味があります」
 可愛い女の子が沢山いるからに違いない。
 結局各々が適当に飲みながら、携帯端末やらに視線を落としたまま、ぽつぽつと語らう空間になった。
 なんというか『陰の夕べ』だ。
 いっそこれが心地よいまであるが。
 度数のことも、明日のことも、頭から追い払って。
 とりあえず、今のことだけ考えていたくて――
「美咲はだいぶ飲んでいるようだね」
「あー、なんか、疲れてるんですかね」
 マキナに、ほむらが曖昧に笑い返す。
 美咲はソファで寝息を立てており、ディアナがへらへらしたまま顔を覗き込んでいる。
「……本人が寝ているから話すが、美咲はあれで君たちの事が心配らしい」
「……」
「まあ、毎年供える花が増えていたらそうなるだろうね」
「それは……」
 切実な心境なのだろう。
「私達も同じだ。無理せず、程々にやってくれ」

 たまにはのんびり羽を伸ばそうとヨゾラはホテルの客室でくつろいでいた。
 ファゴットたちも呼んでゆっくりと過ごすのだ。
「ベッド大きいーきゃっほーい!」
「わーいロイヤルスイートだー! 初めてー!」
 ベッドも大きいとごろごろ一緒に転がるヨゾラたち。
 ルームサービスのデザートを頂きながら窓の外を眺める。
「シレンツィオの海に、青い空……綺麗だね」
「涼しいお部屋、綺麗な景色に海……良いよね」
 夜は綺麗な星空も眺められるだろう。楽しみだとヨゾラとファゴットは微笑み合った。
「今度はみんなで来たいね」
「そうだね……今度は4人で一緒にお泊りしよう! その為にも……今日はのんびり楽しむよー!」
「せっかくのロイヤルスイートだからね」
 ベッドに転がったヨゾラとファゴットはくすくすと笑い合った。

「うわぁ……ベッド、ふかふか……!」
 祝音は客室で猫と一緒に戯れる。手触りの良いシーツは幸せだと猫も思っているだろう。
 のんびりと楽しみたいけれど、テーブルの上に広げるのは筆記用具。それに。
「夏休みの宿題…ある程度進めておくんだ。みゃー。銀路さんはどうする?」
「暇つぶし用の本等は持ってきてるから大丈夫だ。解らない所があったら聞いてくれ。可能な範囲で教える……が、間違ってたらすまん」
 優しい言葉を掛けてくれる銀路に顔がほころぶ祝音。
「ありがとう、銀路さん。教えてもらえるのが嬉しい……みゃ」
 カリカリと静かな部屋の中に響く鉛筆の音。
 遠くから漣の音も聞こえる。ふと、窓の外を見れば美しい海が広がっていた。
「夜になったら、きっともっと綺麗だよ。きらきらした星空が、窓の外に広がっているはずだから」
「それは、楽しみだな」
 こうしたのんびりとした時間が幸せだと祝音は思い馳せた。

 ――また別の部屋。
「こうしてバルコニーで外の景色みながらホテルで過ごすのも、色々しんみりできてわるくないよね」
 メープルはハッピーとサイズを見つめながらそう囁いた。夜はオトナの姿でサイズに甘えたいからだ。
 サイズを囲んだハッピーとメープルはバルコニーで海を眺める。
 両手に花を抱えてサイズは少し嬉しそうだ。
 メープルとハッピー両方の体温が腕に伝わってくる。たまには此方から甘い言葉を掛けてやるのも悪く無いかもしれない。そういう趣向を凝らしてみるのもいいだろう。
 サイズはメープルとハッピーを抱きしめる。
「ああ、キミが小さな方が好きなのは承知の上さ、好きにしてやるつもりでいるから♪」
 サイズからの誘いにメープルは「キミからそんな甘い言葉が聞けるなんて」と目を輝かせた。
 二人を膝に乗せたサイズは妻たちの柔らかな肌にそっと口付けを落す。
「さて……泡々のお風呂を三人一緒に使おうか、その後は大きなベッドで」
「うん、今日も一緒に踊ろうか」
 二人が楽しいならそれでいいとメープルは笑顔を浮かべた。
「三人で泡風呂……いや問題ない、二人には性別既に明かしてるからね……いや結婚した時点で知人全員にバレてるようなものだけどな」
 サイズは照れた様に視線を泳がせ、ハッピーとメープルの手を引いてお風呂へと向かった。

 夜も更け、夜半。
 夜の漣が聞こえてくる。シフォリィはアルテナと共に浜辺を歩いていた。
「リゾートは楽しめましたか?」
「ええ。楽しかったです」
「悩み事でもあるのでしょうか? なんだか今日はどこか心あらずという感じでした」
「そうですか?」
 思えばアルテナのことなんて殆ど知らない。言いづらいこともあるだろう。
「もし難しいなら無理にとはいいません。でも、私はアルテナさんが楽しんでいる方がいいです、もし心の底から楽しめない事があるというのなら、力をいくらでも貸します」
 自分は仲間であり、友達なのだからと微笑むシフォリィにアルテナは決意したように一つ頷き。
 そして、この夜の打ち明け話は――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れ様でした。
 夏の平和な、なんでもない一時をおくつろぎいただけたなら幸いです。

 最後のお話は、タイミングを見てTOPで。

 それではまた皆さんとのご縁を願って。pipiでした。

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