PandoraPartyProject

シナリオ詳細

チャリーンどるんどるんチリンチリンチリン

完了

参加者 : 56 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●すっからかんでも大満足
 ギャンブル好きの公爵、アッテンボロー氏が自分の領地にカジノを作ろうと考えたのは至極当然の帰結だった。
 普段からカードゲームにふけり、寝食を忘れて打ち込んでいる彼は、海洋の豪華なカジノにすっかり魅せられてしまったのだ。高い天井に輝くシャンデリア、その下へ次々と表示される電光掲示板の「Jackpot!」の表示。練達から輸入された数々のカジノマシーンに、アッテンボロー氏のテンションが爆上がりしたのは言うまでもない。その日は散々に負けに負けて負け越したにもかかわらず、彼は喜色満面であったと言う。
 そして領地へ戻ったアッテンボロー氏は私財を投じてカジノの建築へ着手したのだった。

●というわけで
「アッテンボロー公爵から、カジノの試遊依頼が来ているのです」
 と、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼書をばんと壁に貼り付けた。
「先日とうとう念願のカジノ建造が終わったのですが、肝心のカジノ遊技台、練達製のマシーンの動作確認が終わっていないのです。というのは建前で、イレギュラーズの皆さんに楽しく遊んでもらってコネを作ろうという依頼なのです」
 ぶっちゃけるユリーカ。
「本場海洋に比べるとこじんまりとしたカジノですが、マシーンは最新なうえに腕の立つディーラーも集めたらしいので、楽しめると思うのです」
 用意されているのは、ルーレット、スロット、ブラックジャック。このうちスロットとブラックジャックがマシーン、ルーレットがディーラーだ。己と勝負したいならスロットかブラックジャック、みんなでわいわい騒ぎたいならルーレットがおすすめだ。
「皆さんには入場した時点で試遊チップが与えられるのです。チップの上限は10万G分です。帰りに回収されるので皆さんの懐はいたまないのです。まあ増えもしないのですが、今回はあくまで試遊なのでそこんところよろしくなのです」
 遊び疲れたときのために、リラックスルームも兼備されていると言う。ふかふかのソファが並び、カウンターではジュースやカクテルなどを頼むことができる。
「僕のぶんまで遊んできてくださいね……!」
 ついてはいけない情報屋。くやしげに拳を握りしめた。

GMコメント

ようこそこんばんは、みどりです。
カジノでの体験が経験値に、依頼費が報酬になります。
プレイングは一行目に行動タグを入れてください。
同行者がいる場合は待ち合わせタグを利用するか、フルネームとIDをお願いします。
各ゲームの詳しいルールにつきましては続きはウェブで!

>行動タグ
【1】ルーレット
 お好みの賭け方を3回まで指定してください。
 1d100のダイスで判定します。
 ちなみに赤が奇数で、黒が偶数です。

【2】スロット
 反応で判定します。戦闘ルールの反応判定と同じです。何回でも遊べますが、リプレイで描写されるのはハイライトシーンのみです。
 3回連続で勝利した後、なんの役かを命中で判定します。クリティカルなら777です。

【3】ブラックジャック
 お好きな数字を5つまでプレへ記入してください。かぶりはなしです。実際にカードを引いて判定します。

【4】リラックスルーム
 カジノの喧騒から離れてのんべんだらりとするお部屋です。ドリンクやおつまみは無料。間接照明に寄って薄暗くも穏やかな空間になっています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • チャリーンどるんどるんチリンチリンチリン完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年08月15日 20時35分
  • 参加人数56/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 56 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(56人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
透垣 政宗(p3p000156)
有色透明
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
琴葉・結(p3p001166)
魔剣使い
エリシアナ=クァスクェム(p3p001406)
執嫉螺旋
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
ノワ・リェーヴル(p3p001798)
怪盗ラビット・フット
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
灰塚 冥利(p3p002213)
眠り羊
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
アリエール=フォン=ウィンクルム(p3p002309)
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
クァレ・シアナミド(p3p002601)
額面通りの電気くらげ
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
秋空 輪廻(p3p004212)
かっこ(´・ω・`)いい
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
シュリエ(p3p004298)
リグレットドール
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ヨダカ=アドリ(p3p004604)
星目指し墜ちる鳥は
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
宮峰 死聖(p3p005112)
同人勇者
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
ロク(p3p005176)
クソ犬
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
イーディス=フィニー(p3p005419)
翡翠の霊性
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ぱんつ・ぱんつ(p3p006189)
特異運命座標
アニー・ルアン(p3p006196)
鳳凰
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
鞍馬天狗(p3p006226)
第二十四代目天狗棟梁
イーリス・リュッセン(p3p006230)
掃除屋
リナリナ(p3p006258)
ロゼ(p3p006323)
聖ロゼ
27(p3p006366)
生涯皆殺し
フローラ=エヴラール(p3p006378)
白き閃刃
ティー・ティー・フー(p3p006402)
ジプシー女

リプレイ

●そこは別世界
「ふわあごーじゃす! まるで億万長者になった気分なのです!」
 カジノの扉をくぐるなり、クァレはぴょんと飛び跳ねた。
「あふふ、今日は気前がよいのです。なにせチップが10万Gもあるのですから!」
 スロットのひとつにどんと陣取り、クァレは意気揚々とリールを回し始めた。
「……あれぇ、チップ、減ってるですね、おかしいですねえ。うし……本気で行くですよ」
 今までなんとなく止めていたリールをじっと見つめ、絵柄を確認。この日初めて、目押しというものを覚えた彼女だった。しかしみるみる減っていくチップの山。
「運よ来い、来るです、来いです! 神様仏様、チップ一枚やるから助けるのです……!」
「よっ、儲かってるか?」
「ひゃわ!」
 そこへ声をかけたのはことほぎ。
(練達製のスロットなァ。中々おもしろそーなモン置いてンじゃねーか! まずは情報収集からだな)
 そう思い声をかけたのだが。
「びっくりしたのです。集中してるときに声をかけないでください、うう……」
「あーわるいわるいオレのことは気にせずやってくれ」
 涙目のクァレに謝り、自分も彼女の横に座る。チップをいれてスタートレバーを引くと絵柄が残像を描いて回転しだす。
「これ見て止めるってどんな目ェしてんだよ……」
 聞くとやるでは大違い。目押しに苦戦しているうちにチップは減る一方。と、思いきや。
「しゃー、来た!」
 彼女の台ではチェリーがそろっていた。ちゃりんと出てくるチップ。全体でみると赤字なのだが、それ以上に得たのは大きな達成感。
「よっしゃ次だ次! つぎこめ! この台は出るぞきっと!」
 スロットにいれこんだ彼女、チップは回収されることなどすっかり忘れていた。

「我輩こういうの初めて! どの遊びもとっても楽しそう!」
 ボルカノはホールの真ん中で目をキラキラさせていた。
「試遊? らしいのであるが、竜人の血が騒ぐのであるからして! 目指せ億万長者! である!! ウォオオオオオ!」
 ボルカノの咆哮は小さなカジノ全体に響き渡り、何事かと目を向けるイレギュラーズがあいついだ。震源地にたつ竜人をみて、ああ、なるほど、と納得して戻っていく。
 ボルカノは闇商人おすすめの呪いの人形を握りしめ、反応とクリティカルを極限まで引き上げた体で台の前へ座る。
「当てたい目のところでガッと押してカッと止めれば良いのであるな? うーん、この7がよいのであるか?」
 深呼吸してリールを眺め……。見えた!
「――セイヤァァァァァー!」
 ガッ! ガッ! ガッ!
 揃った! 画面に燦然と輝くスリーセブン。ザラザラ出てくるチップに、喜びのガッツポーズをとった。

「いいなあ、あやかりたい……」
 そんなボルカノを見ていたエリシアナ、反射神経には自信があるも、ちまちまと勝ったり負けたりをくりかえしている。スロットの極意はどんな小さな役でもそろえること。そうすれば大きな負けはない。理論上ではそうだが、エリシアナのチップはゆるやかに減っていく。
 またこの目押しがけっこう疲れるものだったりして。
「ふぅ、案外……大変ね、コレ」
 眉間をマッサージするエリシアナ。ここらでひとつ大きめの役がきてほしいものだと思っていたら、1列目の下段にスイカが来た。
(お、きたきた。狙おうっと)
 2列目のリールをストップ。
「……むう」
 リールがずれてスイカは中段へ。これは負けたなと投げやりな気持ちで3列目を止めたら、まさかのファンファーレ。斜めのラインでスイカがそろった。
「ふふっ、やっぱり当たると楽しくなってくるね」

「ふふー。ゲームセンターで鍛えたボクにかかれば、こんなの楽勝だよ」
 と、セララは胸をはってみせた。反応は十分、目指すはスリーセブンだ。
「ふふーんスロット開始。ぽち、ぽち、ぽちっとな。えーはずれ?」
 いきなりの敗北だった。自信があっただけに相当くやしい。
「むむむ……もう一回」
 ぽちぽち。はずれ。
「まだまだ、あと一回!」
 ぽちぽち。はずれ。
「もう一回だけ……」
 ぽちぽち。プラム。
「やった! ほら、がんばったら当てられるんだよボク!」
 ぽちぽち。はずれ。
「こ、これが最後の1回だから」
 ぽちぽち。はずれ。
「この1回にボクの全てを賭ける。うおー!」
 ぽちぽち。はずれ。
「この程度じゃ終われない! ラストチャンス!」
 ぽちぽち。チェリー。
「燃え尽きちまったよ。まっしろにな……」
 椅子の上で灰と化すセララだった。

 セララの動きをじっと見ていたリナリナは、彼女が立ち去った席に座った。
「ここに円いの入れる。棒動かす。おーっ、回った! 動いた動いた!」
 特異運命座標原人を名乗る彼女に、ルーレットやブラックジャックは複雑すぎた。セララの動きを見て、これなら自分にもできそうだと思ったようだ。
「回った、えーと、次! 止める! 止める! どうやるんだ? えーと、えーと、こうか!?」
 マシーンをばんばん叩き始めるリナリナ。マシーンが壊れてブザーが鳴るまであと5秒。

「カジノか……混沌に来る前に何度か通ったことはあるが……あまりいい思い出がないな。しかし依頼で、しかもチップが貸してもらえるならやるしかないだろう」
 楽な仕事だ。アレンツァーは鼻歌を歌いながら立ち並ぶスロットマシンの間を歩いた。
「スロットか……なかなか面白そうじゃないか」
 アレンツァーは悠々と台のひとつに座り、画面と対峙する。さりげなくギアチェンジをかけてもとから高い反応をさらに高めれば、小役つぶしに精を出す。じわじわと増えていくアレンツァーのチップ。
「換金できないのが残念だな。だがまあアッテンボロー氏の情熱の注ぎっぷりには感謝しないとな」
 ぽんぽんぽん、とリズミカルにリールを止めていけば、また小役があたった。

「さて――カジノと来たもんだが。結は経験あるか?」
「あるわけねーじゃねーか、この小娘がよぅ」
「ズィーガーは黙ってて」
 クロバに話しかけられた結とその相棒魔剣ズィーガーがそれぞれ答える。
「そうか。じつは俺もカジノは初めてでな。どれにするか決めかねている」
「そうねー、どれも楽しそうだもの。チップがなくなるまで遊び倒せるもの、何かないかなあ」
「とりあえずそのへんにあるものにすればいいんじゃねぇの? 飽きたらショバを変えりゃいい話だろ」
「なるほど、もっともだ。シンプルに”回して”いくのが手っ取り早くていいか」
 言うなり、クロバは席についた。スロットマシーンへコインを入れると、威勢のいいBGMが流れ電飾が派手に光る。
「狙うはジャックポット……一攫千金!! とまでは行かなくてもある程度儲けを狙う!」
 普段は運より不運につきまとわれているたちだが、今回は違う。己の動体視力と反応の勝負だ。
 さっそくチェリーを引き当てた彼につられて、結も台を選んで座った。
「元の世界じゃこういうカジノって年齢制限があったりで、興味はあったけど、できる環境じゃなかったのよねぇ。せっかくただで遊べるって言うのだから楽しまないと。とりあえずスロットで遊んでみようっと」
「イヒヒ、賭け事に興じるのはかまわねぇがハメを外しすぎるなよ?」
「だからズィーガーは黙ってて」
 集中を乱した彼女は、はずれを引いた。
「イッヒヒヒヒ! 残念だったなぁ。才能ないんじゃないか?」
「今日は遊びに来たんだから。それに私が本気をだしたらこんなものじゃないんだからね。見せてあげるわ!」

●21の境界線で
 手持ちのカードは2と9。合わせて11。マシーンの手札からは8がのぞいている。
 ヒットすべきかスタンドすべきか。スタンドするには危うい数だ。マシーン側がバストしてくれればいいのだが。ならばヒットしたほうが有利か。
 と、ぱんつは悩んだ。
 賭け事は初めてだが、こんなに頭を使うとは思わなかった。とはいえ、自分の懐はいたまないのだから強引にサクサクと進めるのも手ではある。覚悟を決めてスタンドのボタンを押す。ひりひりするような緊張感。このスリルを味わいに来ているのかもしれないと、ぱんつは思った。
 景気の悪い音楽がなり、ぱんつの敗北を告げる。
「お、おいマシーン! なぜバストしない! 俺の金(じゃないけど)を返せ! もっと遊ぶんだ!!」

「カジノですかー。昔家族で行ったことはありますー。ブラックジャックならルールは大丈夫かなとー」
 メリルナートはなつかしそうに、あたりを見回した。贅を尽くした幻想風の室内は目に楽しい。
 彼女はそこここに置いてあるブラックジャックの掛け率を見て回り、気にいった席へ座った。強気の金額設定で、勝負を始める。
「さあ、自分の懐もいたまないことですしー、ギリギリまでせめていきますわよー」
 マシーンの表面をつるりと撫で、不敵な笑みを浮かべる。
 手元へ配られたカードは4と9。合わせて13。
「ヒットですわー」
 複数回のヒットの結果、19。ブラックジャックまであと2、いい数字だ。
 結果はマシーンがバストし、メリルナートの勝利。慣れた手付きでチップを集め、さらに試合へ興じる彼女だった。

「試遊とは言えまさかカジノで遊ぶ日が来るとはな」
「そうなのかい? じつは僕もそうなんだよ。……何事も経験だ!」
 イーディスとクリスティアンはずらりと並んだマシーンの間を闊歩していた。シャンデリアをながめてイーディスが言う。
「こういうとこって、絶対に縁が無いもんだと思っていたが。これもローレットの――ひいてはレオンの手腕様様って所なのかね」
「そうだね! さっそくだけど僕はこの台でブラックジャックに挑戦するよ!」
(フフフ、実は今日はとっておきの天然綿100%使用パンツを履いてきたんだ。きっと勝てるはずさ)
(妙に自信満々だなこいつ?)
 いぶかしがりながら、自分も手近な椅子に座る。
「よし、18までそろったぞ。ここはスタンドで堅実にいこう」
「あちゃ~バストしちまったよ。7がくればなあ」
 勝ったり負けたりと忙しい二人へ、新たなカードが配られる。
 クリスティアンはキングと5。イーディスには11と9。
「15か……むむむ。マシーン側のバスト狙いをするか?」
「うーん、まず負けない数字だな。こりゃスタンドでいくか」
 両者手札が揃ったところで、勝負!
 盤面に手札が公開され、勝敗を伝える。
「よし! 勝ったぞ!」
「んー、まあこんなもんか」

「えっと、ルールは……『カードの合計値を21に近づけつつ、かつ21を超えないようにする』。なるほど、シンプルですが面白そうですね」
 フローラは興奮に赤い瞳をきらめかせた。
「それでは早速遊んでみましょう!」
 ベットすると手札が配られた。3と5で合計8。これはヒットせざるをえない。7がきたので合計で15。微妙な数字だ。手札勝負では負ける可能性が高く、勝つにはバストを狙いにいくしかない。そのバストは運任せだ。
(ここは勝負に出るしか!)
 もう一度ヒットすると、6。21がそろう。
「やったー! あ、ごめんなさい、騒いでしまって」

「玉をパチパチするあれなら何度もやってるんだけど……」
「にゃにゃ? それはなんなのかにゃ? 冥利のいた世界にもカジノがあったのかにゃ」
「あったけれど、こんな本格的な場所へは足を踏み入れたことはなかったよ」
 まとわりついてくるシュリエに困ったように微笑む冥利。
「そうだなあぁ、最初は様子見。掛け金は低く設定して、と」
「おおっブラックジャックをするのにゃ? シンプルだけどなかなかたのしそうにゃ? わらわもやってみるのにゃ!」
 チップを放り込み、わからないなりに考えて手札を揃えてみる。
「2と6と7……15。うーん」
 なにか得られるものがないかと、マシーンの表示を隅から隅まで眺めるも。
「ぜんぜんわからんにゃ!」
 まあ相手は機械だから仕方ない。
「それならそれで勘で行くにゃ。それなら駆け引きも何もあるまい。ふはは、わらわの運を見せつけてやるにゃー!」
「シュリエ君は元気だねえ」
 冥利もだんだん熱が入ってきたようだ。盤面を見る目が大人気なくなっている。
「勝てるかなー。勝てたら今夜はステーキにしちゃおっかなー!」
 手元のカードはJと8。つまり18。悪くない数字だが、あと一手ほしい。などと冥利は考えてしまった。
「ヒット」
 手札がもう一枚プラスされる。3。21ぴったりだ!
「よっしゃあ! あ、ヒットじゃなくてダブルダウンかけておけば良かったな。あーもったいない!」

 華蓮が思うに。
「レオンさんってこういうカードゲーム好きそうだと思うのだわ!」
 実際に好きかは本人のみ知るところだが、レオンとの駆け引きの引き出しを増やすつもりらしい。やりながらルールを覚えていくつもりで手帳を持参している。
「えっと……賭ければいいのよね。ルールを覚えるのが目的なんだから少額ずつ賭けましょう。あっ……ちょ……負けた、また負けた! 負け続けたら遊べる回数が減るわ……ここは増やさないと!」
 負け越してすっかり頭に血が上ったのか、手帳を取る手が止まっている。
「連敗したんだから次は勝てる! 多めに賭けて……あっ…………うん、私は賭け事は向いてないのかしらね……」
 しょんぼりとうなだれる華蓮。けれど手帳に書き込んだルールの数々はそのうちきっと役に立つだろう。

 くるりとあたりを見回して、ルチアーノは満足げにうなずいた。
「皆楽しそうだよー。こういう雰囲気で遊ぶのも素敵だね!」
 BJマシーンに向かうとどこか真剣な雰囲気に変わる。
(僕の世界での賭博は全財産とか……時には命をかけて挑んだものだけれど、僕は運に任せるよりも培われた銃の腕で戦うほうが得意かな。それでも強気で運を掴み取ることも大切だ)
「運否天賦は神の思し召し。勝利の女神は微笑んでくれるかな?」
 配られたカードは10と11。ブラックジャックだ。パチンと指を鳴らし、喜ぶルチアーノ。
(この勢いに乗る……!)
 次の場ではヒットを繰り返し、19以上を狙った所、バスト。
「うわ……よかった。この世界で。これが僕の世界での現実だったら、下手すれば奴隷になっていたね」

 リェーヴルは楽しさを隠しきれない表情で笑った。
「賭け事は嫌いじゃないからね。戦いのスリルも良いものだが、この緊張感もスリリングでなかなかそそるね」
 ついとひとつのBJマシーンに寄り、椅子へ腰掛けた。
「さあ勝負と行こうか」
 チップを入れれば果し合いの始まりだ。画面上の手札はクラブのエースと6。
「17か。スタンドかヒットか悩むところだな」
 ヒットするなら4以下の数字でなければならない。確率的に考えると難しいところだ。
「仕方ない。スタンド」
 マシーン側はバスト。試合はリェーヴルの勝ちで終わった。
「へえ、これは気分がいいものだね。我を忘れるのもわかる気がするよ」

「ふむ、3と5で8か。ダブルダウンだな」
 ジークは冷静に試合を進めていく。新たに手札へ加わったカードはエース。
「19か。これでスタンド。勝負だ」
 結果はマシーンが20でジークの負け。
「ありえんだろう今のは。おのれ。まあ一喜一憂しても仕方がない。全体で勝ち越せば済む話だ。ヒット!」
 今度は16、マシーン側がバストしてジークの勝ち。
「低い数字でも勝てるときは勝てるものだな。まさに人事をつくして天命を待つといったところか……」
 その後も勝ったり負けたりを繰り返していくうちに、じわじわと増えていくチップの山。
「これが換金できないのが残念なところだな」
 そういいつつもカジノを目一杯楽しむジークだった。

 BJブースに備え付けられたソファのうえで、一人の男が仰向けになっていた。
「クッソォ……」
 ポケットの中に手を入れ、取り出したのはわずかなチップ。
「777さえくれば一気に取り返せたのに。あと少しだったのに」
 敗北者はただ去るのみとばかりにゆっくりと上体を起こした。
 そこへ。
「そこのお兄さん、僕と賭け勝負をしない? 勝ったほうが何か奢るって条件でさ。どう、悪くはないでしょう?」
「ああ? 誰に向かって物言ってやがんだ。アラン・アークライト様だぜ。ったく、良いぜ。乗ってやろうじゃねぇか。どん底だった運もあがってくるだろうしな」
 返事を返すと、相手はうれしそうに笑い、透垣 政宗だと名乗った。
「なーんだ。お兄さんも不運なんだね。僕もさ。ルーレットとスロットで大負けしちゃったんだ。だから種目選びはお兄さんに任せるよ。どうせ不運だもの。振り出しは一緒だからね」
「いいぜ、手っ取り早くブラックジャックはどうだ。こいつはまるっきりの運任せじゃねえ、実力が介入するからな」
「うん、いいね。それはまだ未知の領域さ。わくわくするよ」
 ふたりは同じマシーンの席についた。
「4と6で10かー。どうしようかな」
「2と3で5。俺はヒットしまくるぜ」
 アランは攻撃的に手札を揃え、政宗は安全圏を探して動く。試合の結果はマシーンがバストして二人の勝利。
「まだまだこれからだぜ、金欠の現在、お前相手に奢るわけにもいかねぇしな……!!」
「ふふっ、お兄さんってわかりやすいね。ポーカーとかはやめといたほうがいいよ」
 勝っても負けても楽しい政宗。アランをからかって遊ぶのもやめられなかった。

「秋空さん、今日は付き合ってくれて、そして僕の挑戦を受けてくれてありがとう。せっかくのカジノなのに勝っても負けても関係ないじゃ寂しいからね……だからこれから3時間でどちらが多く稼げるか勝負だ。負けたら今日一日は相手の言いなり。どう?」
「……誘われてカジノへ来たら、なるほど、勝負、ね。私に何かをさせたいみたいだけど、そんなに面白いことは出来ないわよ?」
 死聖の言葉に輪廻はけだるげにうなずく。
「もし僕が勝ったら秋空さんにはこのすぺしゃるばにーを着て、何をされても抵抗したりせず受ける、だよ?」
「はいはい、わかったから。私はルーレットに行ってくるわ」
「じゃあ僕はスロットへ行こうかな。今日の僕は何かいける気がするよ♪ 待っててね、秋空さん」
 呪いの人形をぶらさげた車椅子でキコキコと音を立てながら死聖は移動する。
「チェリーチェリー、うーん、プラム。チェリー」
 彼の目押しテクは半端なかったが、スリーセブンまではあと一歩及ばない。とはいえ、小役でも数が揃えばけっこうな額になるもので。制限時間が終わり、死聖は自信満々に待ち合わせ場所へ行った。そこで待っていたのはドル箱の山に座っている輪廻だった。
「秋空さん、そ、それは一体?」
「ルーレットで大勝ちしちゃったのよ。3連続パーフェクト。まさか最後の6目掛けまで当たるとは思わなかったわ」
 あからさまにがっかりする死聖に、輪廻はくすりと笑ってみせた。
「そうそう勝負ね。別に希望はないけどそうね……マッサージでもしてくれるかしら?」
「……これ、勝っても負けても僕に+だけど良いのかな?」
「構わないわ……だって、私に触りたかったのでしょう? これでwinwinよ」
「ふふ、ありがとう……秋空さん」

●一方リラックスルームでは
 メイド服が衣擦れの音を立てる。メートヒェンは、リラックスルームでくつろいでいる人たちに、より快適な空間を提供できるよう気を配っていた。
(なに、まだプレオープンのようなものだし、従業員の皆も仕事に慣れていないだろうから、1人くらい増えていても気づかれないさ、きっと)
 周りを見回せば、同じことを考えたのか、アドリ、タルト、黒羽、27がウェイター服に身を包み、ドリンクを運んでいる。
 メートヒェンが部屋の中を周回しているうちに、ソファにうつぶせになっている姿を発見し、あわてて駆け寄る。
「どうした。気分でも悪いのか?」
「ああー……まあ気分は悪いッスね。最悪って感じ」
 不機嫌な声。しかし体に異常があるわけではなさそうだ。メートヒェンは胸をなでおろし、彼女、クローネの隣に座る。
「……何でここにいるかって? ほら、ここのアルコールとおつまみ無料じゃないッスか。……え? カジノ? ……全部スッたよ、畜生……」
「ご愁傷様」
「メートヒェンさんは楽しめてるッスか?」
「私はこうして誰かの為に働いているのが性に合うからね。十分に楽しませてもらっているよ」
「……はぁ……さすが鉄帝、まっすぐでまぶしいッスね……それに比べてアタシは……」
「まあそう落ち込まずに。ドリンクのオーダーはあるかな。ご希望とあらばお茶も淹れてあげよう」
「……あ、マティーニお願いします……あー誰かチップゆずってくれる神様はいないかなー……」
「呼んだ?」
 急な声かけにクローネはソファからずり落ちそうになった。顔をあげてみるとそこに立っているのはヨハンだった。
「試遊チップなら余ってますよ。賭博はねー……いや、実際にやり取りはしないんでしょうけど、自分ではちょっと。僕にはまだ早いかなって」
 物珍しさからついてきたものの、どうやら性に合わなかったらしい。
「だからこれ、使ってください。僕は夢を追いかける人の姿を応援するみたいな感じのあれです」
「あ、ありがとうッス! このご恩は明日の昼くらいまでは覚えてるッス!」
「ちなみに利率はワンプレイにつき10%の複利です」
「えっ、想像以上に鬼畜ッス」
「ふふっ、冗談ですよ。みんなで遊ぶ空気は好きですが、ギャンブルはほどほどにー……ですね!」
 そこへずしんずしんと地響きを鳴らして現れたのはゴリョウ。
「いやぁスッたスッた! おぅ、どうだそちらさんは!」
 彼が勢いよくソファへ腰掛けると、反対側にいたクローネとメートヒェンがシーソーの要領で宙に浮いた。
「おう、そこの姉ちゃん、景気悪そうなツラしてるな。この手のヤツはアレだな。よほど自分の運とか目、頭に自信がねぇならドカンと散財する目的でやるほうがむしろ楽しいわ。あ、そこのメイドさん。ジントニックひとつ」
「……おー、なるほど、そういう考え方もあるッスねー。元はといえばあぶく銭。ぱあっと使うも……うっ、やっぱり負けるのはくやしいッス……」
「ぶははっ! たしかにおめぇさんの言うとおりだな! だが、そうさなあ。純粋に運のいいヤツ、、様々な知略を尽くして勝ちを握りにいこうとするヤツ、純粋に運の悪いヤツ、見事に裏を書かれて負け札を握らされるヤツ。そういう色んな人間模様が見られるってのが、ある意味ではこういうカジノの良い楽しみ方なのかもしんねぇな!」

 彼らから程近いところに座っていたLumiliaがうんうんと首を振る。
「たしかにあの方の言うとおりかもしれないですね。だとしても私には期待はずれでした。連達の技術に触れられる機会と喜んでいたのですが……」
 すこしばかり遊んでみたものの、すぐに飽きてしまった。
「刺激的で、熱のある娯楽ではありましたが、もうおなかいっぱいと言いますか」
 激しい電飾やゲーム音、熱狂する人々の声は彼女の神経を刺激してやまず、すぐにここへ逃げてきた。
「やっぱり人の多いところは落ち着かないです。代わりにこちらで食事を楽しんで、たっぷりと感想と意見をメモしておきましょう」
 バニラアイスにさじを入れ、そっと舌の上に乗せる。とろけていく甘味に、心底幸せそうに微笑んだ。

「ワーイ、給仕さんごっこだー! ふっふー!」
 ロゼは目にも危ういバニースーツ着用。凹凸が少ないのが残念なところではある。え? 何がでこぼこだって? 大人の事情がだよ!
 とはいえ、彼女がドリンクを運ぶ姿はまるでステージ女優のよう。
「ジントニックお待たせしました。ここから先はマジックをご覧あれ」
 彼女はギフトで自分の似姿をしたバニー人形を作り出し、それにトレイを運ばせた。はたから見るとまるで魔法だ。とことこと人形が歩き、トレイの上のものを渡すとぺこりとお辞儀。
「よくできましたー! チップは胸元にお願いね。って、おい、今凹凸なさすぎてチップが滑り落ちるって言ったやつ出て来いやこら」

「ほら、リゲル。こっちでゆっくりしよう」
「ああそうだな。……俺は賭け事には向いていないらしい。懐は痛まないといえど落ち込むな」
「そんなのいまさらじゃないか。リゲルのまっすぐなところ、私は好きだぞ」
 さらりと言われ、リゲルは目を見開いた。ギャンブルも恋も駆け引きとは言うが、そんなテクニックも持ち合わせていないのは自覚していた。鍛錬ばかりの朴念仁だと。そんな自分を受け止めてくれるポテトにいとおしさがつのる。
「こ、こんな俺でもポテトは大丈夫なのか……」
「さっきから何を言っているんだ? よくわからないぞリゲル。わかるのは今日のリゲルは格好良くてすてきだということだけだ。その格好、似合ってるぞ」
 せっかくのカジノだからと二人は貴族たちのドレスコードを基準におめかししてきたのだ。リゲルは燕尾服に蝶ネクタイ。ポテトはシャンパンゴールドのマーメイドドレスだ。胸元と背中がぱっくりとあいていて彼女の魅惑的な曲線をさらしている。
 身長差から、胸元をもろにのぞきこんでしまったリゲルは顔を赤らめて視線をはずした。ポテトはふしぎそうにまばたきし、自分のチップの入った袋を取り出す。
「あぁ、私のチップはまだ手付かずだ。もう一回遊んでみたいものがあれば一緒に遊ぼう」
「ありがとうポテト、チップは今度こそ有効に使う……はっ、ポテトのチップ……ポテトチップ、か」
「……どう返せば良いのかな……?」
 恋人の渾身のジョークは見事にあさっての方向へ滑っていった。

●くるくる回る
「カジノ! 大金ベットしたときのあの手の震え……最高だよね! ルーレットが回ってる間なんて、全身ガクガクブルブルだよ! アッテンボローさんと気が合いそう!」
 このしゃべる犬、ではない、コヨーテであるところのロクは、かつてウォーカーからの入れ知恵で必勝法を知り、はっちゃけていた時期があった。だがしかし。
「そう、10連敗をくらったあの日、……わたしは恨んだ……。赤を! ディーラーを! 台を! でもあのスリルと絶望感はクセになる!」
 おもいっきりだめだめギャンブル狂なセリフを吐きながら、ロクはルーレットの席へ飛び乗った。
「そう、これは雪辱! 雪辱のルーレットなんだよ! 女は黙って全額黒ベット! そう! わたしはルーレットの女王!!」
 その言葉通り盤面上の黒へ10万Gをつぎこむ彼女。ホイールが回転し、ボールが投げ入れられた。
 結果は、80の黒! 勝利の雄たけびがカジノ中に響き渡った。

 そしてここにも一点掛けに執念を燃やす男がいた。名をラクリマ。
 初めてのカジノ、ルーレット。知っているのは色だけでも賭けられるというルールだけ。
「えっと……とりあえず貰ったチップを賭ければ良いのですよね?? じゃあ黒好きなので、黒に全部なのです!! 男は思い切りが大事!! 闇市での黒歴史はここで塗り替える!!」
 闇市で背負った傷はカジノで取り返すつもりらしい。後先考えずの全額黒ベット。というか後先考えていたら闇市なんて手を出さない。それでも行ってしまうのが闇市の魅力ではある。
 ルーレットが回り始めた。ラクリマは祈るような思いでそれを見守る。
 結果。36の黒。ざらざらと増えたチップを抱え込み、ラクリマは声をあげた。
「やりました、勝利です! ああチップが換金できたら闇市へ行くのに!」

 イーリスは緑色のテーブルに描かれたベット表を見つめた。チップはたっぷりあるが、数字に手を出すのはまだちょっと怖い。ここは色掛けでの2択にしてしまおう。
 まずは黒に5千G。普通ならまずしない賭け方だが今回はお試し。わかっていても緊張と高鳴りで胸ははじけそうだ。
「ああ、もう少し……!」
 一回目は90の黒。周囲からの祝福を受けながら増えたチップを受け取る。
 二回目は1の赤。まさかの二連勝。周囲の歓声が高くなる。
 最後は60の黒。見事な三連勝だ。
「こうなるなら全額ベットしたらよかったかしら?」

「ルーレットですか、面白そうですね。ルールは……ふむふむ、色々な賭け方があるみたいですね。ここはシンプルに赤に賭けてみましょうか」
 黒が優勢な中、赤一点張りをしたのはエリーナだ。
 彼女の周りをふよふよしているペットの妖精が、がんばれとエールを送っている。
 74の黒。14の黒。二連敗、だがまだあきらめない。チップはまだまだ残っている。エリーナは最後に、これまでの負け分をこめた大量のチップをずしんと赤へ載せた。
 15の赤。逆転勝利だ。
「んふふ。気持ちのいい勝ち方をしてしまいました。次は何をして遊びましょうか」

「せっかくデスから遊びつくしたいデスぅ! んー、見たところルーレットが一番簡単そうデスしぃのんびりとやってみマスよぉ」
 そう言って美弥妃は席に着いた。
「まずは簡単に様子見デスねぇ」
 2万Gをぽんと黒に賭けると、38の黒が彼女を讃える。
「柳の下のどじょうってことにはならないデスよねぇ、たぶん」
 今度は赤へ2万G。89の赤が結果に結びつく。予測が当たってほくほく顔の美弥妃。
「さあラストチャンスデスよぉ。全額賭けちゃいマスからねぇ」
 彼女はテーブルをざっと眺め、一番勝率の高そうな相手を選んで同じ色に賭けた。
 結果は28の黒。美弥妃は黒に賭けていたその人とハイタッチをして健闘を讃えあった。

「ふふ、規模は小さめとはいえ。こういう場所は胸が躍る、な?」
 アリエールはスキップでもしそうな雰囲気でチップを小脇に抱え、ルーレットの台へ向かった。何せ10万Gも使いたい放題なのだ。普段はできない豪勢な賭け方をして、大富豪の気分を味わってみたい。
 赤へ3万Gを賭ける。残念ながら96の黒。
「まあ浮き沈みも楽しめてこその大人だよ、な。」
 次の一手も赤へ賭ければ、71の赤がヒット。負け分を取り戻して、これでとんとん。3回目は0に10万Gを一気に置く。ずしりとした重みが手に心地よい。負けても平気、勝ったら儲けもの。ルーレットの出した答えは96。アリエールはすっきりとした笑みを見せた。
「多くのチップが動く様は見ていて心地いい、な。」

「カジノ。ギャンブル。希望を夢見る破滅、絶望の中に見る希望。実に、素晴らしい。これほど洗練されて心躍る文化は中々ないのではないかな? 私も是非遊ばせて貰わなくてはね。何、無様に散るのも一興さ」
 マルベートは余裕の笑みで6に全額ベットした。
「ルーレットはシンプルなゲームだ。色々な予想やディーラーによる影響がないゲームとは言わないけど、悪魔の賭け方は決まっているんだ。一回勝負と行こう。あぁ、数字に深い意味はないよ。単純に、この数字が好きなんだ」
 そう言う彼女の前でルーレットが回り、ボールが小さな音を立てて穴へ落ちる。16。残念がる観衆を相手にマルベートは言った。
「破滅を賭してでも、粗雑に我が身を運命に委ねるのが「悪魔のルーレット」というものだよ。今回はお遊びだけど……まあ、無聊の慰み程度にはね?」

 鞍馬天狗はルーレットの席へおっかなびっくり座ってみた。ふかふかの椅子が彼を出迎える。
「それにしても、こんな依頼があるとは。これで遊べばいいのだな。しかし、こういう時に、うまく稼げると、もっと遊びたくなるっていうか」
 実は競馬中毒のギャンブラーな鞍馬天狗。いざ席に座るとがぜん闘志が湧いてきた。
「しかし、残念なことに、今回、換金は出来ないんだよな。まぁ、焦らず、ゆっくりやらせてもらうとするか」
 まずは赤へたっぷりと。結果は29の赤! 幸先がいい。
 次は黒へと河岸を変えるも39の赤。
「そこ、当たってくれなくては」
 といいつつ、また赤へ賭ける。残念ながら68の黒。
「ふぅ、中々に難儀なものだ。とにもかくにも本営業が始まったら呼んでほしいところだ」

「勝つか負けるか、赤か黒か。正直運はない方だと思っちゃいるが……折角の機会だし、どうなるか試してみるか」
 まずは自分に合いそうなテーブルを探す。そこから勝負は始まっているのだ。ディーラーの雰囲気。出玉の傾向。そしてイカサマの有無。ひととおり、ながめまわして、アオイはここならばと思った席についた。
 運に身を任せる文字通りの真っ向勝負の始まりだ。
 まずは赤へ賭けるアオイ。6の黒で読みは外れた。
 気にせず次は黒へとベット。今度は61の赤。二連敗だ。
 最後のチャンスと賭けたのは赤。75の赤がアオイの勝利を約束した。負け分を取り戻したアオイは席を立つ。賭け事はほどほどに楽しむのが一番と肝に銘じていたからだ。
「へへ、俺の運もまだ尽きてないってことだな」

 ゴージャスな空間に立ち尽くしている乙女がとなりの少女へ話しかけている。
「カジノはなんというか、……道徳的に、あまり良くないのではありませんか……? ま、まあ、汰磨羈さまがいらっしゃいますし、ちょっとだけ……ほんと、ちょっとだけですよっ。ほんとに、少しですから、ね?」
 汰磨羈と呼ばれた少女は2本の尻尾をふりふりしながら答えた。
「心配するな、アマリリス。こういう場所はな。大金を持て余している者達が、賭博を楽しむという行為を通して、その金を還元する所だと捉えると良い。金は使って回す物。過度に抱え込む方が非道徳的さ」
「そういうものでしょうか……」
「そういうものだ。さておき、今回は試遊だからな。こういう文化もあると触れる程度に楽しんでいこう」
「は、はい。どのゲームをやりましょう?」
「カジノといえばルーレットが定番だな」
「ルーレットですか、初めてやります。なるほど、あの玉が入るであろう場所を当てればよいのですね」
「んむ、ここに来るだろうと思った所に賭ければ良いぞ」
「とてつもない確率の予感です……では、私は赤の1で」
「いきなりその賭け方か。……強気だなアマリリス。私は手堅く赤と1st12にしておこう」
 ディーラーがルーレットを回しだした。
「運命の時間だ。んむ、祈るとしよう」
「はい、どきどき致しますねっ、なんとなく楽しくなってきました! 天の神様、私たちにご加護を……」
 誰も気づかなかった。アマリリス自身も気づかなかった。幸運のギフトが発動していたことを。
 出目は赤の1。
「……ん、うん? 御主、凄いな?」
「は、はいっ! 私もびっくり致しました!」
 思わずスペースキャット顔になってしまった汰磨羈に対して「神のご加護です!」と盛り上がるアマリリスだった。

「誘ったのは俺だからな。紳士なんて柄じゃねえがエスコートさせてもらうぜ」
 グレンから笑顔を向けられて、はにかまずにおられようか。衣は頬を赤らめたままこっくりとうなずく。
「……ん、誘ってくれてありがと。こういうの初めてだから、いろいろ教えて欲しい」
「そうだな。じゃあまずはルーレットにしようぜ。どこに玉が落ちるか当てる簡単なゲームさ」
「うん、それなら私も、できそう……」
「勝負といこうぜ? そのほうが盛り上がるだろ」
「う。うん。勝てるかはわからないけど、グレンとなら、勝っても負けても、良いかな……」
 虚を突かれたグレン。ポーカーフェイスでその場をしのぐ。
「よーしそれじゃ、最初は赤か黒かから選ぶといいぜ」
「……うん。えっと、じゃあ赤。なんとなく」
「なら俺は黒だな」
 両者2万Gを賭け、一歩も引かぬ構え。結果は69の赤。
「あーあ、チクショウ~。負けちまった」
 ぐんにゃりとしてみせるグレンに衣が小さく笑みを浮かべる。
「次は?」
「お、やる気だな? 俺は黒に賭けるぜ。衣は赤にしろよ」
 あえて自分の勘とは逆にする。これで衣が勝って喜んでくれたなら、それがグレンにとっての勝利だ。出目は63の赤。無表情ながらも尻尾を振り回す衣。
「可愛らしいレディ連れじゃ、幸運の女神にそっぽ向かれちまったかね?」
 なんて白々しい言い訳をしてみれば。
「……え、ご、ごめんね?」
 真に受けてうなだれる衣の姿に内心あわてふためく。
「冗談だって冗談! 3戦目、行こうぜ。せーので、黒!」
「赤!」
 79の赤が出た。振られる尻尾の勢いに、自分もうれしくなるグレンだった。

「また応竜に連れ出されて来てみれば、カジノ……ねぇ」
 アニーは目の前の竜祢へ不服気な視線を投げかけた。
「カジノは、私は嫌いではない……なに、賭け事の話ではないさ。ここには人の輝きに満ちている 皆一様に儲けを出そうと身と時間を削り熱中する様のなんと輝かしい事か!」
 と、竜祢が返す。
「それはそれとして、今回はただの遊びだ。ならば鳳凰を連れ出す他あるまい。理屈が分からない? ……くくっ」
「ほんっとーに食えないわね、応竜。わかったわ。ゲームをしましょう。ルーレットで私は赤、応竜は黒。お互いに違うほうに賭け続けて、買った回数が多いほうが勝ち。負けたほうは買ったほうの言うことを1つ聞く……なんてどうかしら? 私が勝ったら応竜には『明日から1週間、私の前に現れない』と約束して」
 期間限定とはいえ、こいつに会わなくていいなんて清々しい気分になれるわ、なんてアニーが思っていると。
「罰ゲームありとはいいだろう。私が勝った場合、『向こう一週間は私のメイドとして従うこと』だ。お前が培ってきた奉仕の精神を存分に見せてくれ!」
「……何考えてるのよ! くっけど、こちらが1週間という期間を指定した以上妥当なところではあるのよね。屈辱だけどこの条件は受け入れないと……」
 視線をバチバチとかわしながらテーブルに着く。
 結果、94の黒、53の赤、34の黒で応竜の勝ち。
「ふむ、妥当な結果というやつだな」
「くぅ~……誰かこいつをぶん殴って」
 律儀に一週間メイド生活を送ったアニー。もともと所帯じみているのでまるで水を得た魚のようだったとかなんとか。

「カジノだっていうからお仕事かしらぁ、ってバニースーツを持ってきたのに、遊ぶほうだったのねぇ~」
 と、浴衣姿で残念がるのはアーリア。結い髪からうなじへ垂れるおくれげがなまめかしい。
「でもただ遊ぶだけじゃつまらないし、折角だから一勝負しましょ~! 終わったあと残っていたチップが一番少ない人が、このあと行く二次会のお会計を奢り! 負けないわよぉ、タダ酒は私のものよぉ……!」
 なんやかやで人を集め、奢り勝負が始まった。メンバーは発起人のアーリア、そしてファンドマネージャの寛治、カオスシーカーのラルフ、ジプシー女のフーの4名。そろいもそろってカジノの楽しみ方をわかっている大人な面子だった。
「私、賭け事は得意ではないのですよ」
 などとフォーマルスーツを着た寛治が言う。
「人事を尽くして運否天賦ならともかく、初めから運否天賦に賭けるしか無いですからね」
「そうかね。ルーレットはディーラーのクセを見破るなり傾向を見抜くなりの駆け引きが楽しいゲームだよ。とはいえ、奢りの件はともかく、一人でやるのは寂しいからねえ、仲間ができて何よりさ」
 と、ラルフが答える。
「占いで決めるのは神頼みの一種かね。くくっ、勝負が楽しみだよ。アーリアはルールに詳しいのかい?」
「えっ……ルールわかってないけど、勘よぉ勘! こういうのはビギナーズラックっていうじゃなぁい? お酒への光が見えている方に、私は賭けるわぁ!」
 ようするにノリと勢いらしい。硬くなりがちな面子なのでアーリアのゆるさはちょうどよかった。席に着いた4人はそれぞれのチップを取り出す。
「ま、お祭りですし、わかりやすく賑やかに賭けようじゃありませんか」
 というなり寛治は黒へオールインした。
「本気かね」
「勝つか負けるかわかりやすいでしょう? 要するに丁半博打ですからね」
 驚いた様子のラルフに涼しげな顔で答える寛治。
「私は手堅くいかせてもらうよ。赤と奇数ダースへ合わせて1万G」
「あたしは黒。もう決めてあるんだ」
「んー、えっとぉ、手持ち半分を赤っと」
 全員がベットを終えたところでボールの動きが止まる。
 47の赤。
「おやさっそく脱落ですか。やはりギャンブルは難しい」
 言葉とは裏腹に涼しい顔のままの寛治。いすへ深く腰掛け、勝負を傍観する姿勢だ。
 2回目。ラルフとアーリアは同じ手で、フーも赤へ賭ける。
 今度は91の赤、全員の勝利だ。寛治がメガネのブリッジを押し上げる。
 ラストバトル。
「……うふふ、赤ばんざぁ~い。こうなったら最後も赤よぉ!」
 一枚残して全額赤へ賭けるアーリア。
「黒だ。チップに幸運を」
 占いの結果を信じて突き進むフー。
 そしてラルフは赤へベットしたうえで、これまでの儲けをすべて99へ賭けた。
「99も赤だ。悪くはない。余興だ、それに赤が好きなのでね? 遊びがなくてはな」
 ボールの落ちた先は35の赤。
「……いい勉強になったよ先輩がた。あたしの占いなんて当たりゃしないと、よーくわかった。あたしなんかまだまださね」
「あははん。脱落した時点で寛治くんが奢り役決定よう。辛気臭いことはぜんぶ忘れてぱーっと飲みにいきましょぅ!」
「そうとも負けたら負けたで美女二人と酒盛りだ、悪くはない。ははは、酒が美味く飲めるならプライスレス、という奴かな」
 ラルフがそう言えば寛治も、もっともだと続ける。
「どちらにせよ、アーリア様と飲めるなら、既に私の利益は確定しているのです」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
すこし癖のあるシナリオでしたが皆さん楽しんでいただけましたでしょうか。
私はひとりでサイコロを振ったりカードをシャッフルして一喜一憂しては「あれ、今自分ヤバイやつなんでは?」と心の深淵に囚われるところでした。
またのご利用をお待ちしております。

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