シナリオ詳細
<太陽と月の祝福>その揺りかごへ花束を
オープニング
●
母なる大樹が燃えていた。
幻想種(ハーモニア)というものは、元来保守的な生き方をしている。人間種(カオスシード)と比して、悠久の時を生きる者達は、極めて長い尺度で物事を測る気質があった。
例えばカラトリーの一つである、小匙を得るならばどうだろうか。人間種であれば、木枝を手折り削るのを躊躇うまい。あるいは鉄騎種であれば鉄鉱に様々な技術を加えて溶かし鋳型に流し込んで固めるのだろう。
他種族でも、おおよそ似たり寄ったりだ。
けれど典型的な幻想種は、そうではない。
森の木々というものは、ただそのままにすると互いに干渉して枯れてしまう。そんな予兆を感じたら、幻想種は微かな心の痛みと共に、枝を間引くことがある。木々がより豊かに育ってくれるようにと願いながら。
そうして得られた僅かな――けれど豊富な木材を丹念に削って、朽ちるまで使い続ける。いよいよ朽ち果てたなら、木々の養分となるよう願って、再び森へ還すのだ。
幻想種は森に生まれ、森と共に果てしない時を過ごし、木々と同じように森へと還る。
だからこそ幻想種は火を厭い、故郷の中心にそびえる大霊樹ファルカウを尊ぶのだ。
山のように巨大なファルカウの内部には多くの空洞があり、幻想種達はそこに暮らしている。
ファルカウは信仰の中心であり、心の拠り所であり、魂の安息をもたらす場所であり、またここ深緑アルティオ=エルムにおける、事実上の首都でもあるのだ。
そのファルカウが、今、炎に包まれている。
――この世ならざる邪悪の成せる業によって。
事情を端的かいつまむのは、すこし難しい。
なぜなら、そんな聖地ファルカウに、生きとし生けるものの天敵――冠位魔種『怠惰』カロンが寝ていたなどと、誰が想像出来ただろう。そんな代物が突如活動を開始するなど、一体全体誰に予見出来たというのだろう。ましてや全ての民が眠りに落ち、ファルカウへたどり着くことすら困難な状況になるなど。
それでもイレギュラーズは深緑の民等と共に、深緑全土を包む咎の茨を踏み越え、吹雪のヴェールをくぐり抜け、積み上げた努力により、冠位怠惰を狩るため、その喉元に迫らんとしている。
そんな燃えさかる大樹、その都市下層にて、何者かが蠢いていた。
「そう――可愛いわね」
幻想種の少女が恍惚とした表情を浮かべ、唇同士を繋ぐ銀糸が溶ける。腰を抱くのはもう一人の少女――幻想種にも見えるが、けれど蝙蝠のような翼を持つ美しいサキュバスだ。
「あーあ、つまんな。担当じゃないのになー。けど、この娘は美味しかったから、許してあげる」
より厳密には夢魔でなく、冠位色欲に連なる魔種(デモニア)である。名をハンナラーラという。
「苔臭い、こんな木。全部もえちゃえばいいわ。あっは!」
本来は幻想(レガド・イルシオン)で活動する魔種であるが、今日ばかりは事情が違うらしい。
深緑を魔の手に堕とさんとしているのは、冠位怠惰だけではない。冠位暴食も配下の竜を引き連れ、この戦闘に参画していた。イレギュラーズはこれを退けたが、もう一つ見えるのは、冠位色欲の影である。
「面倒なことになりました……はぁ、リリさま」
少女の横で、浮かぬ表情を見せているのは、エルナトという少女だ。繰り広げられる淫らな光景に、愛する女主人からの寵愛を思い出し、憂いている。見目ならば騎士然――あるいは令嬢然とした居住まいは、とある旅人(ウォーカー)の寵姫であり、また自身も同一世界の旅人であった。彼女は――純種と違い反転という現象が確認されていない――旅人であるが、同じく色欲の呼び声(クリミナルオファー)によって、狂気に侵されている。実際のところ、ハンナラーラとエルナトの目的は異なるが、敵の敵は味方(もう少し踏み込めば同陣営ではある)といった、多少曖昧な関係で、共闘をはじめたのだ。
ハンナラーラの目的は、冠位怠惰と比してかなり勤勉な冠位色欲の使いである。どこにでも顔を出す冠位色欲は、ここにも手ひどい悪戯を仕掛けてきたという訳だ。ハンナラーラはイレギュラーズと幻想種達が召喚した炎の大精霊フェニックスの指揮権を間接的に奪い、ファルカウへ炎を放った。対するエルナトは、深緑と古くからの同盟関係にあるラサ傭兵商会連合で暗躍している。
傭兵達がイレギュラーズの援軍に来たというから、使わされたという訳だ。来た限りには何らかの成果を持ち帰らねばならないが――エルナトは使命果たした際の褒美(本当にしてほしいこと)を想像して恍惚とし、しくじった時の仕置き(眼前で繰り広げられているような)も想起し、頬を染めて身もだえした。
「……ああ、リリさま」
●
ファルカウに攻め入ったイレギュラーズが目の当たりにした光景は、ひどい有り様だった。
火の手がどんどん、広がりつつあるからだ。
フェニックスを操っているのは魔種であることが判明しており、フェニックス自体を鎮める方法も分かっている。しかし魔術的パスを切断しない限りには、解決するのは難しい。その方法も『魔種を追い払えば良い』と分かってはいるのだが、いずれにせよ困難な状況であるには違いない。
「こりゃこりゃ参ったねえ、月英(ユグズ=オルム)に火が回ったら、さすがに事だよ」
「いずれにせよ、どうにかしなければ、なりますまい。尽力しましょう」
「いつもすまないねえ、ジョゼッフォ君」
ジョゼッフォとニュースが、火の手へ鋭い視線を送る。
「その後であれば、どうにかしてあげられるかもしれないね。リュミエが望むのなら――だけどね」
述べたのは水の大精霊ヴィヴィ=アクアマナという存在である。
「ま、少なくともキミ達が炎に巻かれないよう、尽力はしておくよ。敬い賜え」
フェニックス自体は上層へ向かおうとしており、これを追う必要もある。食い止めねばならない。
更には、どうやら夢魔や魔種が跳梁跋扈しているらしい。これもどうにかせねば。
そして――
一行の前に姿を現したのは、予想した通りの存在であった。
「聞けい、民草よ! 生きとし生ける全ての者よ! これより放つは王の言葉である!」
ファルカウ内に陣取ったのは、整然と列を成した氷の精霊達であった。
演説の主は、冬の王オリオンという、伝説の大聖霊である。
「余はかつて、氷河、冬の威、暴力装置、ただの天変地異であった!
古の勇者アイオンの世に、余はあらゆる大地を蹂躙し、妖精の住処を奪った!
それだけではない! 氷河の化身たる余は、さらなる太古に、軒並みを震わせた!」
――余こそが王である!
「後に長きを眠り、ここに再び顕現し、盟友を得た!
再臨は、盟友の尽力あってのものである!
盟友たる彼の者――クオン・フユツキは世界の滅びを願った。
王たる余は、一宿一飯の恩を決して忘れぬ。故に盟約した!
クオンは、余へと願った、力を欲すると! 余は初めに貸し、今は与えた! それこそが盟約!
この戦場へ立つのも、それが所以である!
クオンなる者の願いを、ただ一度だけ叶えんと欲したからである!」
――余こそが冬である!
「つまり貴様等へ剣を向けるのも、また盟約であるからだ!
されど! 貴様等はそこへ抗った! まこと天晴に尽きよう!
そして、この戦の終結を以てして、盟約は成就する!
盟約は違えぬ、しかし! 貴様等――友よ! イレギュラーズちゃんよ!」
これなる存在と剣を交えることは、どうしても不可避であるらしい。
「今や余は、言葉を知った!
食を知り、眠りを知り、オリオンという名をもらい受けた!
ゴラぐるみという、愉悦さえ知っている!
喜怒哀楽、感情起伏のなんたるかなど、今なおも、浴び続けておるわ!」
精霊などというものは、どだい人の尺度で推し量れた存在ではない。
それが大聖霊ともなれば尚更である。この存在が語りかける言葉のおかしさ――妙な幼さ――は、人格形成がごく最近発生したことに発端しているが、それは妖精郷への封印や、短期間での数々の権能行使、クオンへの力の贈与など、様々な要因により『暴威』から『人へ近付いている』証ではないかと推測される。
オリオンの弟分にあたるライエルは、かつて『嵐の王』と呼ばれた存在であり、勇者アイオンの時代に力を減衰したことにより、長い年月をかけて――なにより銀の森で精霊とイレギュラーズが邂逅した結果、精霊種(グリムアザース)として『人の内』に数えられる存在となった。そんなライエルは大昔に『嵐の王』であったことを、ひどく後悔しているらしい。ならばオリオンはどうなのだろう。
「だがな、余はあくまで冬の暴威である!
貴様等イレギュラーズちゃんと、この剣を交えんとすることに、愉悦している!」
――来い。その全てを凍て砕こうてくれん!
見せてみよ、闘争の果てにある、未来を! イレギュラーズちゃん!!
オリオンの狙いとは、願いとは、果たして何であろうか。
- <太陽と月の祝福>その揺りかごへ花束をLv:30以上完了
- GM名pipi
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年06月30日 23時05分
- 参加人数58/58人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 58 人
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参加者一覧(58人)
リプレイ
●Re dell'inverno I
整然と居並ぶ冬の軍勢は、一個の騎士団そのものであった。ただし――純白の。
ファルカウの内を吹きすさぶ吹雪は、ここが北国の荒野であるとさえ感じられる。
実際おそらく空間が歪んでおり――敵が怪物(ばけもの)じみた存在であることを痛感せざるを得ない。
「わっはっは、バケモン退治なら私ちゃんの領分だぜっ」
けれど秋奈は勝ち気に歯を見せた。傍らには紫電の姿も見える。
「ゴラぐるみの一件で面白くなりすぎだろうあの王様……」
紫電は遠く、剣を構えた冬の王『オリオン』を見据え――
「地上全てを覆い尽くす厳かにして聖なる滅び、全地凍結の権能――白き大氷河!
貴様等が眠るは、冠位怠惰が権能に能わず、凍れる我が腕の内と知れ! 余こそが冬である!」
――全軍、突撃せよ!
宣告と共に、地響きを挙げて冬の軍勢が迫り来る。
「なら手加減なしの、本気の殴り合いだ。最早それ以上の言葉は不要」
「ちゃちゃっと手早く終わらせて、帰りにコンビニ寄ってこーぜ紫電ちゃん!」
「手早く終わらせて、ローレットで祝賀会と行こう、秋奈!」
「さあ、ちゃんオリ! お喋りはここまでだぜ、覚悟しろよ!」
――我は紫電、弍ノ刀、紫電! いざ、参る!
――刮目して視よ! 我は戦神! 叛逆の聖剣なり!
いよいよ激突が始まった。
戦場の刃が二つ。駆け抜ける刀身が冬の軍勢へと閃いた。
「……行ってこいイーリン。騎兵隊としてではなく、一人の司書としてな」
紫電の口から溢れる言葉。己が戦線を開くのは彼らのため。
此処が決着の時なのだ。不倒、不屈、不滅。
「……簡単に倒れちゃ駄目だぜ、クロバくん。もしも、もう立ってらんねえって時にはいつでも私ちゃんを呼びな! 秋奈ちゃんがいつでもトドメ演出持っていってやるからよ!」
「ああ……」
炎の向こうに消えたクオンを追わなかったのは、リュミエの無事の為だ。後悔はしていない。けれど――
「クロバ、クロバ、今あなたの心に直接語りかけています」
「……幻影か何かが目の前にいて、普通に口を開いてるんだが」
「そういう事を言うもんじゃあないよ、クロバっ子。デートはまだかね」
「悪い、埋め合わせはいくらでもするから、このまま皆を頼んだ、ヴィヴィ」
「では一つだけ約束したまえ、『何があっても』会いに来るんだ」
ヴィヴィの幻影が掻き消える。
「思わせぶりだな」
そうやって何でもかんでも背負わせて――だから『死神』か。
美咲もまた馴染んだ短刀(ほうちょう)を、すれ違い様に見えた『その先』へ当てる。氷精に顕現していた腕が外れ、霧散した。かの王との対決を望んでいる仲間――イーリンに借りを返すため、美咲はヒィロと蛍、珠緒を、この戦場に呼び寄せた。本人に伝える程ではないが、世話焼きをしたいと願い、道を切り拓く。
「暴れるのに3人の力を貸してね。やるからには徹底的にいくよ」
「はいはいはーい!」
「かの塔に挑む際、珠緒らは美咲さんとヒィロさんのお世話になりました。そのお返しと思えば、一戦お付き合いするくらい如何程でもありませんよ」
「以前お世話になった美咲さん達への感謝の気持ちを込めて、全力で行くわよ!」
珠緒に合わせ一斉に戦陣を斬る四人の影。彼女の肩には『目』となる梟が止まっている。
「……ボク達が前座を蹴散らしてる間に、本懐遂げてもらえたらいいなぁ」
月星の輝きを手にヒィロが軍勢へと切り込み、人差し指を煽るように動かした。
「ほぉら、こんな小さなボクに良いようにされてるの? 指揮官なのに無能だねぇ?」
自分の挑発に憤る敵の攻撃を舞うように躱し、笑みを浮かべるヒィロ。戦場は早くも乱戦の様相を示しているが、オリオンは軍略を知らないと見える。ただ暴風のように迫り来るだけだ。
「さぁさぁ次のターゲットは、ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪」
彼女の後ろから蛍の桜色を湛えた剣が戦場に翻る。
ヒィロとは逆方向へと向けるは、白き桜吹雪が舞い散る幻影桜技。
「こっちが効率的に、目立つように動いて敵の注意を引き付ければ引き付けるほど、冬の王を目指す人達への支援になるはず。誰かの真摯な願いを叶えるのに、遠慮も躊躇も理由も要らないわよね。
さぁ珠緒さん、派手にいきましょう!」
「えぇ、珠緒と蛍さんの輝きで、道を照らしましょう!」
足を止めず、前に進む。これは、後に続く者達に託す希望の道標だ。
三人の攻撃に重ねる美咲の刃。虹色の魔眼は先を見据え、一閃を解き放つ。
「――軍勢って割りに統制が鈍いのね。だからって容赦とかしないけど」
氷の粒子が弾け飛び、冷たい空気となって空へと消えて行く。
「……まさか……冬の王……オリオンがまた……こちらと敵対することになるなんて……」
グレイルは本当に分からないと頭を抱える。今の自分には理解出来ないのだろうか。
理由があるのなら敵対する前にでも彼の口から分かるように説明してほしかったと零すグレイル。
「……僕の投影した氷雪の嵐が……どこまで通用するか分からないけど……でも……冬の王に少しでも知ってもらえれば……面白い存在として……またこちら側に移ったりしないかな……?」
精霊というものは往々にして気まぐれではあるけれど。
「……でも……なんでこんな時に……せめて全てが終わってからにして欲しかったな……」
それでもやるしか無いのだとグレイルは顔を上げた。できる限り多くを手中に収め戦力を削ぐ。
「相も変わらず激戦地だな此処は……」
リーディアは「さて」とライフルを構えた。
「愛弟子が別の戦場で頑張っているんだ。私も負けていられない。ここらで露払いと行こうじゃないか」
冬の王に想いをぶつけたい者とそれを助けたい人達が居る。彼女達の邪魔は無粋というものだろう。
「私の氷と君達の氷。どちらが鋭いか勝負と行こうじゃないか。
――氷の狼の遠吠えを聴くがいい」
青い瞳で冬の軍勢を見据えたリーディアがトリガーを引き――狙い違わず穿たれた氷精が霧散する。
「いいぞ、イレギュラーズちゃん! それでこそ我が友よ!」
突如、風のように突進し、オリオンが斬り結んで来た。
弾くは無明永夜――紫電の切っ先。重く鋭いが、それ以上に、ただ一刀交えただけで肘まで凍り付くが。
「――あえて踏み込む!」
論理演算通りの連撃に、冬王が纏う凍気が霧散した。
「後は任せな!」
一条の鋭い光が駆け抜け、秋奈が王に初めての傷を付けた。
「滾るぞ、名を申せ! イレギュラーズちゃんよ!」
「秋奈だぜ、こっちが紫電ちゃん!」
「覚えたぞ」
オリオンが掻き消えるように移動する。
「冬の王……なんていうか……その」
白虎は戦場の最奥――冬の王オリオンを見遣り困った表情を浮かべる。
「私達をちゃん付けするせいで、庶民っぽいっていうかなんていうか……うん! いいんじゃないかな!」
オリオンへの興味は尽きないけれど、自分では足手まといになるからと、その眼前に立つ仲間の為に白虎は軍勢を退ける役目を自ら引き受けた。
「といっても一人じゃ危ないから……仲間の傍で戦うよ」
待避経路も確保しなければならないのだ。やることは数え切れない程ある。
白虎の傍を駆け抜けるのはみーおだ。
「冬の王オリオンも気になるけど王の軍勢も何とかしないとですにゃー! オリオン、生き残ったらみーおももふもふしますにゃ……?」
魔法陣から飛び出した、鋼の弾丸は驟雨となって、敵の頭上に降り注ぐ。
「みーおはこっちですにゃああああ!」
自らを囮にし、敵の注意を引きつけるみーおは、向かってくる氷の軍勢に真っ向から挑みかかった。
敵の攻撃はいずれも鋭い冷気を感じるが、みーおの動きは全く鈍らない。
彼らに恨みはないけれど、冬の王に従うならば、戦いは避けられない。
「失礼のないよう、真剣に全力で戦うのですにゃ! 手加減できにゃいけどごめんなさいにゃ……こういう出会いでなかったらみーおをもふもふさせるのにー! にゃーん!」
「冬の王オリオンさん……あくまで冬の暴威であろうとするのはきっと、盟約だけでなく彼なりの矜持。冬の暴威という試練を超えて、春を迎えるためのものだ、と私は受け取りました。
闘争の果ての未来、掴んでみせます……!」
フローラは冬の王がただ暴れているだけでは無いと思案する。
味方を支える事で、この戦場をより優位に回す。それがフローラの戦いだった。
「冬の軍勢が細かい連携を取らないということは、付け入る隙があるということです。
……さあ、行きましょう! 冬を巡らせるために!」
フローラの合図を皮切りに、戦線が弾ける。
――ああ、任されたよ司書殿――ご武運を。
背を任せると告げたイーリンにフェルディンは剣を掲げ誓いを立てる。
「此度の我が剣は、かけがえのない友の為に捧げる」
彼女の道を斬り開き、後顧の憂いなど、微塵も残さないのだと柄を握る手に力が入った。
「我が名はフェルディン・レオンハート! 諸君の主への道行き――押し通らせて頂く!」
レイリーと左右に展開したフェルディンは剣を冬の軍勢へと突き入れる。
「私の名はレイリー=シュタイン!さぁ、皆さん、この私を倒せるかしら」
相手取るは大精霊『冬の王』が配下の軍勢だ。相手にとって不足などありはしない。
「自分の全て教えてあげるわ!」
名乗りを上げたレイリーは、自分自身へ殺到する氷兵と斬り結ぶ。
(私の役割はイーリン達を冬の王まで届けて、彼らの戦いを私なりに支援する事。いつも通り倒れるまで戦い戦う限り倒れない。それが不屈の白騎士レイリーレイリー=シュタインなのだ)
レイリーは氷騎士の剣を弾き返し、不敵に微笑む。
「堂々たる名乗りやよし! フェルディンちゃん、そしてレイリーちゃんよ!」
空間が滲んだように見えた、刹那――戦慄が走った。
「冬の王――!?」
一合、また一合。鎧が凍り付くほどの冷気と共に繰り出される剣をはじき返す。
踵が足元の氷を砕き、流氷のように爆ぜた。
「さすがに寒いのでして」
ルシアが大型の狙撃銃を構える。
「どういうことだ」
ジェイクが眉をひそめる。あれは何のつもりで戦場のあちこちを転戦しているのか。
いや、だが読めてきた。
おそらくあの存在は、破壊衝動のようなものを持ち、力の行使に楽しみのようなものを感じている。
しかし同時に、何らかの、未だ言葉に出来ない、情のようなものを芽生えさせている。
その情や好意のような感覚を『友』と表現してぶつけてきているのだろう。
そしてあの転戦は、まるで「誰かに捕まえて欲しい」と言っているようにさえ感じられる。
だったらやはり話に聞く通り――
「今は何かの盟約でそれが出来ないのであれば! 冬の王……ううん、あの人の呼び方を真似て、オリオンちゃんに! 勝って戦いを終わらせるのでして! そして終わったらお話したいのですよ!」
魔力がルシアの周りに光の粒子となって現れる。溢れ出るマナが狙撃銃の尖端に集まった。
ルシアを穿たんと放たれる敵の剣を受け止めたのはエクスマリアだ。
「マリアの友達の邪魔は、誰にもさせない」
星を掴まんとするイーリン達の道を支援するのが彼女達の目的。
「――即ち、盟友であるイーリン・ジョーンズが、友と認めあった冬の王と語らう時を作ること、だ。その為に、王の軍勢を蹴散らし、道を拓く。そして道程を守り切る」
エクスマリアの後方にはジェイクが狼の双銃を重ねるように構えた。
「冬の王の話は聞いていたが――あれは『子供』だ」
垣間見える余りの幼さは、人格形成すらままならぬ稚児同然と感じられる。
「だったら見捨てられるわけがない」
いいだろうと言ったジェイクの笑みは、どこか優しさを帯びていた。
「今回に限り、俺はあの娘達に手を貸す。実の父親に比べたら微々たるものだがな」
狙うはルシアの砲撃が放たれた直後。道筋を走り抜けるその瞬間だ。
「周りの心配事はルシアたちが何とかするのですよ! だから、今は前だけを見据えて勝利を掴んできてほしいのでして!」
解き放つ閃光。穿たれる光の渦。
「いけ、イーリン。冬の王のもとへ。それから、あとで紹介してくれ」
「さぁ、全力でぶつけてくるのよ、イーリン!」
エクスマリアとレイリーが、光と共に。イーリンの背を押した。
空気を振わせて迸ったルシアの砲撃に続き、ジェイクの弾丸が戦場を切り裂き――
前へ、前へ。戦線が押し上がって行く。
●Fiamma e armonia I
轟々と空が――否、大樹ファルカウが燃えている。
幻想種の信仰が、故郷が、魂の揺りかごが、焔王フェニックスの炎によって、赤く染まっていた。
「全く、面倒くさいことになってやがるな……まあいいや」
エレンシアは大きく溜息をついて、ファイアエレメンタルに切り込む。
「こっち自分のやる事だけをさっさと済ませてしまうか……さっさと済むとは思わない案件だが。ま、さっさと済むように祈りつつやるか」
この精霊共はフェニックスへの攻撃の障害となる。戦いは始まったばかりだ。
抜かりなく大太刀を振うのみ。冴え渡る斬撃がその眷属共を次々に屠る。
「ファルカウを、深緑の人たちの故郷の自然を、これ以上壊させるわけにはいかないよね!」
チャロロは炎を物ともせず、仲間の攻撃を引き受けていた。
「あいつを倒すまでオイラが守ってみせるよ!」
「ありがとう」
チャロロの手を借りて立ち上がったリサは群れになっている夢魔にターゲットを合わせる。
「はっはー! 今度はのこのこ現れて出てきたんすねー。
んだったら夢から出てきたんならまた夢に帰りやがれ!」
魔導蒸気機関搭載巨大火砲『Final Heaven』はリサの背丈を大きく上回るが。
されど、その巨体から放たれる鋼の弾丸は、夢魔の群れを撃ち貫く驟雨となる。
「ちょっとした被弾も上等! その分だけきっちり反撃し返してやる!
雑魚はとっとと散れ! その分ウォリア、任せた!」
「冬の王の如し快き啖呵は……望めそうもないな。炎の大精霊……その荒魂鎮め奉る」
リサの声に応えるように、ウォリアは神滅剣を掲げた。
「竜共は追い返したここからが本番か」
そう呟いたバグルドは煙草をもみ消して顔を上げる。
「さてと、魔種は無論だがフェニックスの対処もムエンたちに任せた……」
ならばバグルドがすることは決まっている。
「雑多な雑魚共の掃討。精霊も夢魔も関係ありゃしねえ、彼奴等の邪魔する奴らは全員蜂の巣だ」
バグルドは不敵な笑みを浮かべ、ファイアエレメンタルとバクアロンを照準に合わせた。
「風穴を空けてやる。固定砲台上等! 落とす前に落としてやるよ!」
ばら撒かれる弾丸は砂嵐の如く吹き荒れ、多くの敵を巻き込んで爆散する。
「おっと、だからといって手近のやつに対応できない道理はねえわな」
腰のナイフをリバースグリップで抜き放ち、バグルドは飛びかかるバクアロンに拳を突き込むように払いのけ、即座にくるりとナイフを回して突き、切り刻む。
「火の制御が難しいのはわかるぞ、油を入れた鍋を火にかけたら爆発したからな」
アーマデルは腕を組んで燃え盛るファルカウを見上げる。
「操り切れず暴走した時は、叩く。叩いて勢いを弱めるのだ。
師がそう……言ってはいなかったが、行いを見て学んだ」
「死なぬなら操ってみようホトトギス……とは、なかなか大胆な発想だな。何にせよ焔王と殴り合える機会もそうそうない。俺達の燃える様な愛とどちらが熱いかひと勝負いこうじゃないか」
アーマデルの肩に手を置いた弾正はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「大丈夫だ弾正、もしあんたの鍋から火が出たら、俺がこの身を持って消し止めて見せる」
飛び上がったアーマデルに続き、弾正がフェニックスへ肉薄する。
炙られるほどの熱量に、けれど尚踏み込み――
「――さあ、今こそ俺の爆発音を聞け!」
弾正の蛇腹剣は唸りを上げ、戦場に奇怪な軌跡が描かれる。
「フェニックス、世界によっては死と再生を司るもの、か」
アーマデルは弾正の刃に重ねるように、自分もまた蛇鞭をしならせた。
ジェードは揺らめきながら炎を燃やす焔王を見上げる。
「フェニックスもアンラッキーだったよな。
魔種なんかに操られて……今すぐ助けてやるよ。この業運の亜竜種がさ!」
「やれやれ、炎上商法(物理)とは洒落になりませんね。速やかに正気に戻すと致しましょうか。俺が盾で貴方が矛です。ジュート、貴方の幸運、頼らせて戴きますよ」
ジュードの傍らには冥夜がリトルワイバーンに跨がり、羽ばたいていた。
「ハッピーに行こうぜ冥夜くん。守りは任せなっ!」
ファルカウの外へフェニックスが出てしまえば、縦横無尽に暴れ回る鳥となってしまう。
それは厄介だと、冥夜は焔王の前に、ワイバーンで立ち塞がる。
「お客様、そこから先は立ち入り禁止だ。お引き取り願おうか!」
「深緑って神秘的な場所だよな。女神サマがいるかもしれねーもん、ぜってー守る!」
美しき緑の森。それを灰にしてしまう蛮行は許されざるものなのだと、ジュードは不可視の刃をフェニックスへと解き放った。
●Intervento della lussuria
ファルカウ内部、幻想種が静かに暮らしていた街並みは、今や大炎に包まれていた。
フェニックスが羽ばたくたび、辺りが燃え上がるのだ。
「えらいことになっておるのう……」
五十琴姫は眼前に迫るバクアロン、夢魔の群れに眉を顰める。
「これだけの数、よう揃えたもんじゃの。この場はわしらにお任せを。
おんしらの所へは、蟻一匹通しません。琴、準備はええか? ヘマせんようにの!」
「ふん! 言われずとも! 支佐こそ下手を打つでないぞ!」
光が五十琴姫の持つ銅鏡へと集い――
眩い閃光は、降り注ぐ太陽の如く鮮烈に、戦場を穿ち貫いた。
「――皆の道を切り開く!」
その光を追うかのように支佐手もまた果敢に切り込み、火明の剣を一閃する。
剣尖は夢魔の身体を袈裟懸けに引き裂き、滴る赤が花開いた。
「敵は冠位のネコさんだけかと思ったけど、もっといっぱいいたんだね。
それだけ向こうも本気で来てるって事……だよね?」
カナメは五十琴姫が開いた戦線から敵の只中へと舞うように踏み込む。
「沢山痛めつけてくれるなら本望だし、それでみんなが戦いやすくなるから誰も損しないね♪ うぇへへ、どんなのが来るんだろう楽しみだなぁ」
この身が傷付く事を想像するだけで頬が染まるというもの。
カナメは夢魔と対峙し、満面の笑みを浮かべる。いっそ不気味な程の笑い。
「ここにいるザコモンスターにカナが負けるはずないもんね~♪
悔しかったら、カナの魂……食い荒らしてみせてよ」
怒りの儘に攻撃を受け止めるカナメは「まだまだ、そんなのじゃ物足りないなぁ」と口角を上げた。
「一身上の都合で君らを抑えさせて貰うよ。回りが気持ちよく戦えるようにね」
行人は誰かの想いの為に、自らを戦場の只中に置くと決めた。
夢魔やバクアロンの軍勢を抑えなければ、どの道物量に潰されてしまいかねない。
「傭兵や弓手の方々も援護は欲しい所だが、それよりも重要な方が一杯あるからな」
気が向いたらで頼むと後方支援の仲間に言い残し、行人は最前線へと駆け抜ける。
そこが最前線であるからこそ、戦況の機微を把握出来るはずだ。瞳を閉じ、広域を俯瞰する。
「左の通路へ回り込もう、そうすればフェニックスを挟み撃ちに出来るタイミングがあるはずだ」
「あらあら、キス程度で恥じらうとは随分甘い呼び声ですねえ」
すみれは艶やかに微笑む。。
「その先まで愉しまれているかと思いましたのに。お可愛らしいこと」
その声に身体の芯を疼かせ、甘く息を零した幻想種の懐へ飛び込むように――
「多幸感を得たなら放っておきますが……何事もヤりすぎは苦しいですからね」
下腹部に彼岸花を思わせる紋様を輝かせる幻想種の、その耳元へ囁いたすみれの吐息。
「長命種なら堕ちぬともヒトの身で味わえる快楽を貪り尽くす暇くらいあるでしょう。試しにお互いその長耳でも舐め合ってみたらどうです?」
よく音を聞く長い耳はそれだけ、敏感であるのだろう。
「魔種からのお誘いは魅力的でしょうけど。応えてもただ寂しい思いをするだけですよ。だって――」
朗らかに笑うすみれの唇が、鋭い三日月を思わせる。
「――その魔種、この場で死にますから」
すみれの後にはハビーブの姿が見える。
「男には、たとえ三人の妻が家で帰りを待っていたとしても向かわねばならぬ戦場というものがある
……自ら身を持ち崩すような屑共には厳しいわしとて、罪なき女達が苦しむ姿は見たくなどないのだ」
さて、と顔を上げるハビーブは色欲の呼び声に抗う最善の策は『純愛』なのだと語る。
「わしとて下心が無いとは言わんが、今はただ寄り添うべき時だ」
よく耐えたのだと、その頭を撫で、抱擁を交そう。
それこそ、殺されても本望だとハビーブが目を細めれば、操られた幻想種とて、攻撃の手を止めざる終えないのだ。涙ながらに謝罪を述べる幻想種にハビーブは許しを与える。
「大丈夫。もう、大丈夫だ」
ただ夢魔の能力が祓われたというのに、眼前の彼女が頬を染めているのは、さてどうしたものか。
彩嘉もまた幻想種へと駆け寄り、眉を寄せた。
「魔力のパスが繋がっているというのなら元を絶つまで。幻想種の方々も未だ抗いの気持ちが残っているのなら声が届くはず」
禁書から得た情報を元に紐解く魔力の断絶。意識の回帰と不浄を打ち祓う力。
「今、目を曇らせている場合ではないでしょう」
知識は彩嘉の源であり武器であろう。
「それで救われるものがあるのであれば惜しむものもない」
書から放たれた清らかな光が、魔的で淫靡な力をはじき返す。
「イーリン様がご自身の思いを遂げられる覚悟を決めたのであれば、わたくしはそれをお手伝いすべく、微力ながらも露払いをさせて頂きましょう」
ヨミコはイーリンの為にその身を戦いに投じる。
「無粋な真似は決してさせません。指ひとつこの世に残しませんわ」
血を媒介に礼装を身に纏ったヨミコは、密やかに毒手で幻想種を絡めとった。
「ごめんなさいまし。無作法者には無作法をもって応じさせて頂きますわ」
自分達はこの先に向かう者の道を拓かねばならないのだ。
邪魔立てするものは容赦しないとヨミコは更なる巫術を編み上げる。
「とてつもない数の夢魔だね……このままじゃ戦線を前に出せないかも」
乱戦を極める戦場において、幽我は真剣な眼差しで戦況を見据えた。
「みんながみんなのやるべきことをするように、僕も僕のやるべきことをしなきゃ。邪魔をさせるワケにはいかないから……!」
翼を広げ、陣営の後方から大局的な動きを見極めるのだ。
「何か変化があれば伝えられるように、ね。こんなに大きな戦場だ。何が起るかわからないしね」
ヨミコを援護するように、幽我は紫電の鎖を迸らせる。
忘我の状態を逆手に取る作戦に出たのはゴリョウだ。
「本能的に敵対心があり殴ることに抵抗のないオークで相手に、攻撃が通用しないわけでもなく、反撃されるわけでもなく、他の幻想種も居て孤独でもない」
そんな本能的なストレスを排した状況に持ち込み、反転に至るまでの時間を稼ぐ。
いわば『殴られ役』として、彼らの苛立ちを受け止める役目。
それは果てしない『耐え』の境地だ。並大抵の精神力では成し得ないもの。
「まぁ傍目には幻想種(エルフ)に囲んで叩かれるオークというちと情けねぇ図だけどな! それで反転遅らせれるなら上等だろ!」
あとは仲間(フォルトゥナリア)達に任せるとゴリョウは背中で語った。
「任せてよ!」
フォルトゥナリアはゴリョウの意思をくみ取り、杖を握り締める。
「さっきぶりだね」
深緑の民の力を借り、フォルトゥナリアは戦場に溢れる操られた者達を取り戻す作戦に打って出た。
「――助けに来たよ! 呼び声に今まで耐えてくれたから私達が間に合った! でも我を忘れてるみたいだから今から強めに気付けをするよ!」
戦場を覆う眩い閃光と共に、幻想種がうめき声を上げる。
これは殺す為の戦いじゃない。助ける為の光なのだとフォルトゥナリアは杖を掲げた。
「えらい数揃えてきたもんだぜ……」
トキノエは夢魔の大群を目の前に大きな溜息を吐く。
「魔種を追っ払うにしたって、まずは夢魔の大群をどうにかしないと邪魔でしょうがねえよな。これで最後ってんなら猶更、気合入れて露払いしてやるか!」
魂の輝きを直接削るバクアロンへ、トキノエは毒の魔石を放つ。
乱戦であることは承知だが、ゴリョウや行人が敵を引きつけてくれているのだ。
盾役以外が傷付かないことは戦場において大事な意味を持つ。
その回復の手を攻撃に耐えるゴリョウ達に回すことができるのだから。
「――楽しい楽しい戦場が私を呼んでいる!」
クリムは歓喜の声と共にバクアロンを見遣り笑みを浮かべる。
「この戦場ではどんな血肉を味わうことができるのか楽しみですね!」
数が多いというのは単純に厄介なものだとクリムは片目を瞑り頷いた。
「今回は血は質よりも量を求めることにしましょうか」
離れた場所に居る敵目がけ、魔力の奔流を解き放つクリム。宙を舞う血飛沫に身体が沸き立つ。
「オォ……なんと惨い……望まぬ行為を強いられると」
自分はなんて無力なのだろうと黒い手の形状をどろりと崩れさせるビジュ。
「しかし、この汚れた手でも掴み取れるものがあるのならば」
夢魔をその身に引き寄せるは己の役目であろうと前線へとその身を晒す。
「彼ら勇者の瑕を、少しでも肩代わりを。最後まで……この目が潰されても。この汚泥が朽ちようと。
白鳥はその手で幸福(ハッピー・エンド)を掴み取る!」
己は醜い手であろう。美しき白鳥とは似てもにつかぬ汚泥。
「思い出して下さい。真なる愛を。妄念よ、邪念よ、色念よ、全て私が飲み込もう。
私を愛する等、誰ができようか! 私を情愛に狂わす等、誰ができようか!
私は触れるものみな腐らす泥漿なのだから!」
苦しむ者を捨て往くなど出来はしないとビジュは吠えた。
「魔法騎士セララ&マリー参上!」
愛らしい声が戦場に響き渡る。
ハイデマリーは「参上?」と頭に思い浮かべつつもセララの傍を離れない。
「何か寒気がしました、セララにもですが、私にも近づかないでほしい」
「うん。魅了攻撃が来そうだね。でもボクには効かないよ。だって、この場にはマリーがいるからね」
手を繋ぎセララとハイデマリーはお互いを見つめたあと、ハンナラーラへと向き直った。
「可愛い子達、見つけちゃったわ。おいでなさい、印を刻んで私の眷属にしてあげる」
「ボク達の絆(友情)は最強なんだ。さぁ、行くよマリー!」
こくりと頷いたハイデマリーは二人の絆(意味深)は最強が故にと。
セララの事を想い、屈しないと共に駆け抜ける。
「ギガセララブレイク――!」
ハンナラーラへ刃が迫り、咲いた血花は人ならざるどす黒い瘴気を帯びている。
「……失礼ね。永遠の快楽に浸らせてあげたいだけなのに」
「そんなものは、いらないよ!」
「あれを追い返せばフェニックスを操る幻想種への呼び声も途切れるはず」
リディアはセララとハイデマリーにあまり幻想種の刺激的な姿を見せたくないと首を振った。
少女二人に伸ばされるハンナラーラの魔の手を、振り払ったリディアが宣言する。
「魔法少女は二人だけではありませんよ。セララさん、マリーさんに変なことしないでくださいよね?」
ハイデマリーへと魔力供給を施し、即座に重ねてハンナラーラへと連続術式を放つ。
「あなたも可愛くって、欲しくなっちゃった」
頬へ触れる指先に、身体の芯が疼きをあげた。
眼前に迫る唇にゆっくりと舌が這う様に、腰が震え、頭の中が溶けそうになる。
「――私は……まだ何もできていない……!」
リディアは強い意思で魔種の誘惑を振り払った。
「だからここで貴女をを撃退して深緑の、ファルカウを守るための役に立ちたい。負けたくない!」
「あぁ、フェニックス……私のフィニクスとよく似た大聖霊。フィニクスと何か関係があるのか、それともただの偶然か。ねぇ、フィニクス。あの焔を少しだけ食べてみない? きっと、強くなれるわ。今よりも」
傍らの精霊を撫でたフルールは遊びましょうとフェニックスへと手を広げた。
「素敵な焔ね、あなたの焔が私は欲しい。あんな子達よりも、私と契約して欲しいくらい」
そうするには全力で焔王を鎮めなければならない。
「私の愛しいフィニクス、全力で焔に食らい付きなさい。あの力を学んでいきなさい」
フェニックスへ放たれるフルールの紅蓮閃燬はとめどなく。
「焔王だかなんだか知らぬが、こちらは炎上王よ! 燃えっぷりで負けるワケにはゆかぬ!」
リトルワイバーンに乗った夢心地がフルールの傍を駆け抜けた。
「こちらを獲物として見てくれているのであればまだ良い」
そうであってくれれば助かるのだが――夢心地は言葉を続ける。
「じゃが今回の敵の動きは、上層を目指すというもの……」
加えて暴走の可能性があるのであれば、追尾して気を引く事は重要だろう。
夢心地はフェニックスに自己回復能力があるか確かめる為刀を振う。
「フェニックスと言えば不死鳥的なイメージもあるからの……無ければとにかく削り続ければ良いが」
それを備えていた場合、回復度合いを判断すべく夢心地はフェニックスの傷口を注視する。
炎そのものが身体に見え分かりにくいが、確かに再生していると見る。ならば――
「焦りは禁物じゃ、確実に仕留めるぞえ」
余り長い時間はかけられない。
「楽しかった戦いの余韻に浸りたい気持ちはあるんだけどよ、かといって満足したんでハイさよならってのは流石に道理が違うってもんさね」
リズリーもまた大戦斧を振りかぶり、フェニックスへと顔を上げた。
「ま、終わった後周りがシケた面してないで済むように、気合入れてやろうか!」
この戦場で要となるであろうニュース・ゲツクと大精霊ヴィヴィを背に守るように、殺到する敵の群れへ『楯壊し』とされる大戦斧を、けれどシールドバッシュのように叩き付ける。
「雑魚も無視はできねえが、生憎と炎はこの鎧をとおさねぇ……だから、大人しく守られときな!」
ニュースはリズリーに感謝を述べて、戦場を見渡した。
そこにはマカライトの姿が見える。
「こりゃまた随分な火の元だ。契約したやつは何考えて森の守護任せたんだ? まぁ完全に消滅させなきゃ良いならまだ楽な仕事だな……!」
ジーヴァに跨がり、フェニックスへと接敵するマカライトは、その片翼に攻撃を集中させる。
「精霊だから飛行に影響してるか分からんが、バランスを崩す事は出来るだろう」
氷の鎖がフェニックスの翼へと絡まり、ぐらりと上半身が傾いだ。
「狂ったかどうかは知ったこっちゃないが、一旦降りて頭を冷やせ!!」
抗う様に焔王は天に向かって高く――そして奇妙に澄んだ鳴声を上げる。
●Fiamma e armonia II
「ちょっと待って……あなた、あなた……どこかで…?」
そんな戦場の片隅、エルスは目の前に現れた少女に目を見開く。
「これはこれは、面白いものが発見できました、あの方がお喜びになります」
細い剣が頬を掠れば、エルスはくるりと反転し彼女から距離を取った。
「っ、随分と攻撃的になったものね……確かあの子の使用人だったかしら。名前は……エルナト。
……知ってるわ、私はあの城の使用人の管理もしてたのよ。お義父様の命令で離れの塔から出る事はなかったけれど。あの子の仕事は全部廻って来たんだから」
「怠惰だけで厄介というのに、こんなところにまで出張しないで欲しいわ……これ以上目に毒な戦場が増えても困るし。ここでお引き取り願いましょう」
アンナは狙いを澄ませエルナトを相手取る。
「剣の寵姫と呼ばれているのでしょう。一手、手合わせ願うわ」
彼女には執着する相手が居るのだろう。されど、今は目の前のアンナと剣を交える他無い。
「貴女は邪魔です!」
「ええ、そうでしょうね」
それこそがアンナの思惑だった。邪魔立てして妨害をする。エルナトの注意を引きつける事が出来ればそれだけ仲間への被害も抑えられるのだから。
エルスは攻撃を仕掛けながらもエルナトに言葉を投げかける。
「あの子は……リリスティーネはやっぱり近くにいるのかしら? 二年前からこの世界にいる事は知ってたのだけれど。あの銀狼の……名前は……確かアレイスター……だったかしらね? あの子がうっかり口走ったのよ、リリスティーネの名を」
エルナトはおそらくエルスの身柄を狙っているが、アンナの鋭い斬撃を捌くので手一杯らしい。
二人は幾合も舞うように剣を交え続け、鋭い踏み込みが互いの頬に一条の細い紅を引く。
そこへ飛び込んできたのがフェニックスだった。
潮時とみたのか、エルナトとハンナラーラがとびすさる。
「覚えていなさい、あなた達を私の虜にしてあげるから」
「ああ、リリ様……申し訳ございません。その責め苦、甘んじてお受け致しますから、どうか」
だがそれを追うより、やらねばならないことがある。
「パスが完全に途切れましたねェ、でしたらアタシが暴走までの時間を引き延ばしましょう」
彩嘉が術式を展開する。おそらく長くは保たないが、千載一遇のチャンスでもある。
「全員合わせよ、あれは再生する」
夢心地の言葉に一同が頷き、イレギュラーズが総攻撃を仕掛け始めた。
ムエンもまたフェニックスに肉薄し、その翼へ斬撃を刻む。
痛みに叫声を上げるフェニックスへ、ムエンは語りかけた。
「焔王フェニックス……魔種に奪われたと聞いた時、私の魔剣も呼応するように震えたぞ。なぜかわかるか? お前の焔がこの魔剣に『飛び火』して、この魔剣もまたフェニックスの焔を纏う剣となったからだ」
羽ばたく霊鳥はムエンを見下ろす。
「……問うぞ、焔王フェニックス――お前は私達に何を望む」
フェニックスはもう一度、澄んだ声で鳴いた。それはまるで――
「終わらせて欲しい……か。私も命を燃やして全身全霊全力をもって、お前を終わらせる!」
「かの存在を禁書から解き放ったのは、我々です――ファルカウへ火を放つという、大罪は……」
ドラマが唇を噛んだ。
あの時は、ああするほかになかった。かつての前例を――リュミエの判断を書は残して居たから。
そして実際に、冬の檻を穿ったのだ。
けれど――
「それ以上は望まない、これ以上は赦さない……回収させて頂きます!」
行人が見つけ出したルートを頭に叩き込んだドラマが、一気に走る。
「ニュース、申し訳ありませんがサポートお願い致します」
「パパ使いが荒いったらないね、まあそうするつもりだけどさぁ」
ムエンの攻撃に重ねるようにウォリアが大剣をフェニックスへと叩きつける。
続けざまにニュースが術を放ち、ドラマが炎の渦中を駆け抜けた。
「夜闇……即チ絶望ト死ノ先触レ」
ウォリアの追走。その向こうから、ニュースが展開する青い色彩が仮初の水流となり、フェニックスを撃つ。前方のウォリア達とフェニックスを挟み撃ちするように、放たれたドラマの一閃は蒼剣をも想起させ――
「――魔種の無粋な鎖に囚われぬ、本来の雄大で美しいオマエに挑み、詞を交わしたかった。故に……畏れ疎まれる焔を、同じ炎として受け止めて勝つ!」
真っ向勝負だとフェニックスの眼前へ、ウォリアは何度も剣尖を突き立てた。
「オマエの業を今こそ焼き尽くす!」
斬撃が炎を散らし――
ようやく、霧散した精霊力が一冊の書へ舞い戻った。
●Re dell'inverno II
「ごきげんよう、貴方がオリオンさんですわね!!!
ワタクシ、名をシャルロッテ・ナックルと申しますの! 是非お相手願いますわーー!!」
「その果敢! 好もしい! シャルロッテちゃんよ、余へ挑むがいい!」
腕を回して首を鳴らしたシャルロッテは冬王オリオンへと一直線に駆け出した。
一度目はオリオンの剣に阻まれた拳を、二度目の攻撃が僅かに軋みを与える。
「細かいことは不要、ブン殴って全てを解決しますわー!!」
踏み込んで、拳を突き入れ。姿勢を低くしてもう一度同じ場所へ力を込めた。
「嫌なことも苦しいことも悲しいことも、ワタクシの拳で消し飛ばしてあげますわ!」
「伝説の大精霊と聞いた際は厳かな印象でしたが……」
澄恋はオリオンを見つめ「モフ吸いが好きなら趣味での夜更かしもお勧めです」と微笑んだ。
「どりんくばーでの炭酸飲料かくてる、深夜らーめんにぽてち。そして……雪をも溶かす熱いばとる!
眠りの中では味わえなかった心のときめく数々を知り。オリオン様にもこの世界を愛してほしいですね」
だから澄恋の目的は。
「あなたに勝ち、あなたを感動させること!」
紫の蝶が舞い上がり、戦場に群れが羽ばたく。
「友と呼ぶ我々が冬の暴威にも勝ることを証明してみせます――大喧嘩の後は友情が深まるというもの
命を燃やして真正面から本気でぶつかり。友を越えた『親友(ライバル)』になりましょう、オリオン様!」 澄恋の声は戦場に高らかに響き渡った。
「よかろう! ならば万物の極北たる余の全知全能を以て、貴様等を凍てつかせてくれん!」
「水臭いな、オリオン。お前の盟友がこの始まりだとするなら、俺を忘れるなよ」
クロバの刃が炸裂と共に加速する。友として、全力でぶつかってやる。
「お前は未来を見ようとした、それなら。俺はクロバ・フユツキ。お前の盟友の”息子”にして、アンタを春へ、命輝く季節へと導く存在だ!」
”父”に力を贈った今が千載一遇の好機、冬尽きの――その先へ連れて行ってやる!
「ま、背中ぐらいは任されるさ」
――倒す、でも殺したくない。
(司書にしては感傷的な無茶を言う、だが仕方がない、ここは僕とあいつの運命の交差路)
「天主、我に力を帯びさせ―――」
飄々と呟いたアトの前に立ち、イーリンが戦旗を掲げる。
「盟約により来た、司書である。道を開けよ!」
「クロバちゃんに司書ちゃんか! 友よ、その勇姿まさに一軍の将である。王と斬り結ぶに相応しい!」
「任されています。お師匠様」
そしてココロは言葉を続ける。
「オリオン、アルス=マグナを求めるならわたしも協力しますよ」
「否、それはかつての盟友殿が欲していたもの、そこなクロバちゃんの父クオンの望みだ。しかしその力、恐らく最早不要であろうな」
父、そうか――ココロはクロバの横顔へ視線を送る――認めたのか。
「さあ、わたしと一緒にもう一歩前へ……お父さん」
「ああ分かった。私がこの隊の盾役を務めさせてもらう、君の師と私の背、そのどちらも守ってくれ」
「――はい!」
ココロはジョゼッフォを父と呼んだ。割り切れぬ気持ちはある、けれど先に進むのだ。
一人では無理でも、皆と一緒なら、それが出来る。
「私は冬の王、貴方の死を望む」
そのとき、司書――イーリンは毅然と言い放った。
「冬を殺すとぬかすか、司書! 我が友よ! だがその大言壮語、あえて咎めまい!」
「そうでしょう、だって貴方の望みは――」
「――征くぞ!」
イーリンの言葉を――なぜか――遮るようにオリオンは言った。
大剣を大上段に構えたオリオンの懐に、イーリンは迷わず踏み込んだ。先の先を奪われたオリオンは、この間合いでは剣を振り下ろすことが出来ない――それはモスカの型。そして間髪入れぬイーリンの斬り上げ――それは銅狼弟子よりの学び。ただそれだけの一撃が、精霊力で編み上げられたオリオンの甲冑を打ち砕き、その仮初の肉体を貫いた。
(ゴラぐるみを好いてくれてる冬の王オリオンさん。ワタシも死んだらちょっとやだ。でもオリオンさんの分からず屋。ワタシが勝ったらワタシの言うこと聞いてもらう。お師匠先生がこんなにわがままを言ってストレートにぶるけてるの珍しい。だからワタシもそれに応える……!!)
そして術式を展開し続けるフラーゴラとマニエラに続き、一行はイーリンを中心に猛攻を続ける。
王の盟約も楔も、ここで断ち切るように。友とは一方的なものではないのだと、教え込むように。
「お前が王を名乗るのであれば、僕は只人として剣を取り、その玉座を砕いてみせよう!」
「ならば見せてみよ!」
冬の暴威、極大の精霊力が一行へ襲い来る。
「アトさん!」
幾人かが膝をつき、運命の箱をこじ開ける。
「炎獄と絶凍の相反する属性であれば……後々身に染みてこよう――加減はせん」
イーリンとマニエラ、アトの連撃。一刀、一弾、一刀、また術式。
その度に、冬王の身体から冷たい精霊力が飛散する。
「冬の概念を失い、大気に満ちる魔力と還るか」
アトの呟き。
「そうだ、司書共よ。そのまま余を殺して見せるがいい、無論、ただでは死なぬがな!」
「ええ――分かっているわ」
激しい斬撃と魔力の応酬は、個としてはオリオンに分があろう。
イレギュラーズは、一進一退の攻防を繰り広げているが、イーリンの斬撃は傷を負うほどに鋭くなる。
またイーリンとジェイクは度々オリオンの行動を阻害するが、そこがマニエラやフラーゴラ達による『立て直し』のチャンスになっている。
けれど激しいダメージに一人、また一人と倒れつつもある状況でもあった。行方は、果たして――
「どうして?」
フラーゴラは今になって思う。殺すとは、どういうことなのか。
「でも、任されたよアトさん。守ってみせる……!」
アミュレットを握りしめ、そして――
今、オリオンの身体は『向こう』が見える。
亡霊のように、微かに透けている。
「――来い」
オリオンが剣を構え、マニエラが動いた。
それを皮切りに、再び猛攻が始まる。
イレギュラーズの連撃の末――イーリンがオリオンの胸に剣を突き立てる。
人ならばその命を恒常たらしめる赤い鼓動の中心を狙うように。
「王の軛から解かれ、一人の人として貴方はあれ」
だが凄絶な笑みを浮かべたオリオンは倒れない。冬の暴威が一行を襲った。
「私が」オリオンの――
その身を焚べよと、無垢なる刃が黒剣を包む。あわやかな燐光を帯び――放たれる黎明の刃。
――カリブルヌス・月女神。
その極大の魔力流に、オリオンが飲み込まれた。
「私がその友となろう。私の真なる友は身命を賭す、唯一無二の存在。だから今、ここで殺す」
そして――
――もう逃げない。あんたと、生きる!
目に焼き付くほどの光の本流が消え去った時、そこには砕けた冬の残滓だけが残って居た。
それは人格の芽生えた大精霊が、力のほとんどを失い尽くした、なれの果て。
だからこれは可能性の奇跡をもってしても通常は起こりえない現象のはずだ。
偶然――『冬』と最も遠い季節にあった。
偶然――『冬』と手を取り合おうとする者が居た。
偶然――『冬』とは決して消失しがたい概念であった。
きっとまぐれであり、けれどその偶然を、離さずに掴みきったからこそ、勝ち得た必然。
だから『それ』は、貸した力を捨てるように与えた。
だから『それ』は、立て続けの連戦を欲した。
だから『それ』は、殺せと念じた。
弟のような存在が、太古の勇者達によって力を削がれ、イレギュラーズが銀の森でそうした『人に近くなった』存在を、人の内にしたというのだ。ならば、自身も。
そんな適うかも分からない一縷の希望を、イレギュラーズへ託すように振る舞ったのだ。
たかが自然が、その理不尽な暴力装置が芽生えたばかりの知性と人格をもって、ひどく不器用に。
イーリンは、そんな冬の王『だった』存在の手をとった。
その種族の名をグリムアザースと呼ぶ。
「お誕生日、おめでとうさん」
熱く焼けた銃身を蝋燭のように吹き、ジェイクが背を向ける。
広がっていた異常な空間は、ファルカウ下層のものに戻っていた。
「尋ねなさい、私が名を」
「友よ。余の玉座を打ち砕きし者よ。今なればこそ、その名を教えよ」
「我が真名はイーリン、イーリン・ジョーンズ。オリオン、貴方の友人よ」
「ところで、し……イーリンちゃんよ。ルル家ちゃんはどうした?」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れ様でした。
もしかしたら、これは一人のイレギュラーズの決断と、多くの皆さんの応援によってなされた、不思議な出来事なのかもしれません。
最終版、今回のような特殊ケースでは、応援した沢山の皆さんにとっても必要な描写と判断しました。
称号けっこう出ています。また別の排他シナリオへの優先となっていたため、こちらのシナリオには居なかったのですが、状況上、必然となった方にも出しています。
アイテムはいくつかドロップしています。
MVPは戦況のターニングポイントとなっていた方へ。
判定として見た場合、ここが全体戦況が優勢に転じた切っ掛けでした。
それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。
GMコメント
pipiです。
深緑編、ついに決戦です。
大一番。もうこういうときは小難しいことを考えるより、格好良く戦うことだけ考えていきましょう。
●目的
・冬の王に勝利する。
・フェニックスを止める。
・魔種を追い払う。
三つもありますが、やることはわりと単純です。
ぶんなぐれ!
●戦場A
ファルカウ下層の広場に相当する場所です。
冬の王オリオンの軍勢が待ち構えています。
正面から正々堂々の決戦となります。
『敵』
冬の王オリオンを最奥とした陣で布陣しています。
オリオンはあちこちに斬り込んでくると思われますので、きっとすぐに乱戦となるでしょう。
・冬の王オリオン
伝説の大精霊です。非常に強力です。
物理、神秘、単体や範囲など、オールレンジ戦闘を行います。
氷系、麻痺系の他、いくらかのBSを保有します。
皆さんのことを『ちゃん付け』で呼び始めたのは、ルル家さんのせいです。
(優先は抜けではないです)
・王の軍勢×かなり(百はいないとおもう)
王の軍勢そのものが冬の王の力によって行動しており、これらの撃破によっても王の力は削がれます。
騎士タイプ、魔術師タイプの人語を解する高等な精霊がそれなりの数おり、簡素な指揮官役です。
旗下に氷鷲獅子(飛行遊撃型、少数)や氷兵(近接型)、雪の乙女(遠距離型)、氷精(極端に数が多い雑魚)などが居ます。
あまり連携の整った利口な戦い方はしません。
『味方』
・ジョゼッフォ
ココロさんのお父さんです。
剣の腕は確かです。ココロさんが起きて参戦する場合、守り抜こうと奮闘します。
ココロさんに、どうしても言いたいことがあるからです。
しかしココロさんが中々起きてこないことに、強い不安を抱いています。
↑起きたのでほっとしたようです。その時の様子は以下。(2022/06/12追記)
https://rev1.reversion.jp/page/top20220612174244
●戦場B
フェニックスが、ファルカウ内部や外部を、常に移動し続けています。
フェニックスを鎮めるため、移動しながら打撃を加える必要があります。
徐々に上層へ向かおうとしており、被害の拡大が予測されます。
とにかく雑魚を蹴散らしながらフェニックスを追いかけて殴るのが良さそうです。
一時的に外に出られてしまった場合は飛行とか、あるいはどこかで待ち伏せしてみたり、足止めしたりとか、工夫するのも良いでしょう。
『敵』
・焔王フェニックス
炎の大聖霊です。
魔種に奪取され、操られた状態です。
後述の魔種ハンナラーラが魅了した、幻想種の精霊使いにコントロールされています。
魔術的に特殊なパスがつながっており、ハンナラーラが撤退するまでコントロールは続きます。
制御下を外れた後も、(おそらく暴走するため)すぐに鎮まるとは限りません。
倒して鎮めるつもりで挑むのがよさそうです。
具体的な戦闘能力は、元々は分かっていたのですが、魔種の制御下にあるため未知数です。
強いことと、飛んでいること、高い神秘攻撃力、火炎系BSの保有は確かでしょう。
・ファイアエレメンタル×都度ぽこぽこ沸いてきます
フェニックスに従う無数の精霊達です。倒せば鎮めることが出来ます。
・夢魔×たくさん(長く移動すればするほど遭遇率が上がります)
怪王獏(バクアロン)、ボギー、スロースサキュバスなど。
沢山いて襲ってくるので、蹴散らしておきましょう。
バクアロンは、近距離物理攻撃を得意とし、スマッシュヒット時に稀にパンドラを直接減損させます。
『味方』
・ニュース・ゲツク
ドラマさんのお父さんみたいな存在です。
色彩を操る、攻防一体の強力な魔術師です。
勝手に戦ってくれますが、指示は聞いてくれるかもしれません。
・ヴィヴィ=アクアマナ
クロバさんと縁のある水の大聖霊です。
フェニックス自体との相性は有利なのですが、あちらに魔種の影響があるので厳しいです。
勝手に戦ってくれます。あと水のヴェールで皆さんを炎から少し守ってくれます。
あまのじゃくですが、状況が状況なので、指示は聞いてくれるかもしれません。
あとでクロバさんが何をされるかは、ちょっとわかりません……
●戦場C
ファルカウの市街地に相当する場所です。
魔種の陣営が待ち構えています。
雑魚を蹴散らしつつ、二体のネームドを追い返しましょう。
・エルナト
色欲の狂気に侵された旅人です。
実力は不明ですが、剣の寵姫と呼ばれています。
誰かの指示の元に行動しているようです。
エルスさんを見た際に、何らかの特別な行動を起こす可能性があります。
・ハンナラーラ
色欲の魔種です。
キスした相手を魅了支配する能力を持つ以外は、不明です。
禁書『魔の書』からの情報により、おそらくですが、(色欲配下なのに……)カロンの権能『らくちんにゃー』を借り受けて……というか押しつけられています。
これは周囲の精霊が勝手にカロンを世話するというもので、フェニックスを操るキーになっています。
推測では多数の幻想種から吸収した『大量の魔力』をフェニックスに撃ち込んだ模様です。
守備範囲は異常に広いのですが、最も好みのタイプはセララさんです。可愛いからです。
たぶんハイデマリーさんもセララさんと同じぐらい好みと思われます……。
・夢魔×たくさん
怪王獏(バクアロン)、ボギー、スロースサキュバスなど。
沢山いて襲ってくるので、蹴散らしておきましょう。
バクアロンは、近距離物理攻撃を得意とし、スマッシュヒット時に稀にパンドラを直接減損させます。
・ハンナラーラ支配下の幻想種×10名ほど、放置すると増えます
色欲の呼び声に抗っていますが、忘我の状態です。
敵対したり、ちょっと恥ずかしくてこんなところに書きにくいようなことをしていたりします。ち……ちゅーとか!
禁書により、フェニックスコントロールの媒体に使用されていることが判明しています。
どうにかすることでフェニックス側の戦場に好影響があるでしょう。
また最悪の場合、反転の恐れがあります。
『味方』
・深緑の精霊使い、弓使い×そこそこ
・ラサの傭兵達×そこそこ
●その他味方NPC
『虹の精霊』ライエル・クライサー(p3n000156)
歌により、いくらかの支援能力を持ちます。
どこかの戦場で適当に戦ってくれます。指示したければ、してもよいです。
『花の妖精』ストレリチア(p3n000129)
神秘後衛タイプのアタッカーです。
皆さんの役に立ちたいと思っているようです。
どこかの戦場で適当に戦ってくれます。指示したければ、してもよいです。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<太陽と月の祝福>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(EXシナリオとは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
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