シナリオ詳細
ウ=ナギと言えばやっぱり蒲焼?
オープニング
「また練達か」
イレギュラーズの誰かが、その光景にそうつぶやいたのも無理はない。
海洋の空と海を埋め尽くす。灰色の生命体。生命体。生命体の数を見たのならば!
そのおぞましさに、彼らが立つ砂浜や、近くに生い茂るヤシの木にすら彼らが潜んでいるのではという錯覚すら感じられる。
ぬめぬめとした肌、美味しそうなその生命体は……『ウ=ナギ』。その魚肉は旨味が凝縮されており、混沌世界では「タレを付けて焼き上げたものを食べると二度と忘れることができない」とされているほどの至高の魚であった。
だが、その採取には膨大な手間がかかり、当然その値も張るものとなる。それを何とかしようと名乗りを上げたのは、我らが『練達』の科学者達。ウ=ナギを安価で流通させるべく、品種改良に乗り出したのだ。
そしてその苦難を乗り切りついに! その味を保ったまま、繁殖力と大きさの向上を行うことができたのだが……
「キャアアアアアアアア!!!」
練達の科学者より『一部のウ=ナギが脱走してしまった。好きにしていいから海洋の海岸で食い止めて欲しい』と依頼を受け、駆け付けたイレギュラーズ達の前には、まるでパニック映画の様な光景が繰り広げられていた。
一般人の海種や飛行種の翼や羽根を食いちぎり、悲鳴をあげさせるそれは、タダの『品種改良されたウ=ナギ』などではない――練達クオリティの『人喰いウ=ナギ』。
なぜそんな品種改良をしたと思わず言いたくなるが、まあ変態科学者でもプロジェクトの中に紛れ込んでいたのでしょう。練達だし。
「大変……だね、これ」
『いねむりどらごん』 カルア・キルシュテン (p3n000040)が海の風に髪を揺らし、太い尻尾をゆっくりと振りながら空を見上げ、その光景に呆れたように眺める。
「でも、倒したら、食べていいっていってた」
そうだ。こんな練達製の人喰いウ=ナギであっても、味はあくまで地球のウナギそのものなのだ。そのウ=ナギを美味しく食べる『蒲焼』なる方法も混沌世界には広く知られている。
ならばとっとと、この何百匹いるかわからないお騒がせな魚達を倒し、褒美の魚肉をいただこうではないか。
お腹を空かせた一部のイレギュラーズ達は、思わず舌なめずりをするのであった。
- ウ=ナギと言えばやっぱり蒲焼?完了
- GM名塩魔法使い
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年08月14日 21時50分
- 参加人数60/∞人
- 相談4日
- 参加費50RC
参加者 : 60 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(60人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●プロローグ
「皆さん、お疲れになったでしょう。どうか近くの施設で一晩ゆっくりとお休みになってください」
練達にて品種改良され、事故で脱走してしまった『人喰いウ=ナギ』達。その死闘を終え、その怪魚達の亡骸を籠に放り込みながら海岸で一息つく大勢のイレギュラーズ達に声をかけたのは、海洋の島々を統治するとある貴族であった。
「助けてもらったのです。遠慮はいりません、何ならこのウ=ナギを使って一つ新鮮な料理をというのはどうでしょう? 人喰いとは言え仕留めれば美味しい食材、廃棄処分にしてしまうには余りにも惜しいですから」
遠慮するイレギュラーズ達に対し、どうか泊まって欲しいと頼み込む貴族。これなら断る方が失礼というものであろう。それに『美味しい』と聞いてしまった以上、黙って帰るわけにはいかない。ならば一つこの怪魚を調理し、美味しく頂いてしまおうではないか。
そんな流れを経て、イレギュラーズ達は大きな大きな海の家を一晩無料で貸し切り、ウ=ナギ料理を楽しむ宴会を開くことにしたのであった。
●ウナギではなくウ=ナギなのです
イレギュラーズ達が海の家に到着した頃には、島民の手により、そいつらは運び込まれていた。
つい先程まで死闘を繰り広げていた、ウ=ナギが山盛りバケツや籠に詰め込まれ、数え切れないほどずらっと並んでテーブルの上に安置されている。文字通り使おうと思っても使い切れないであろう量。
それを前にした運命特異座標達の反応は様々であった。唖然と眺める者、喜々として捌く者。最初から食べる気満々で宴会室へ向かうもの等……
「おさかないっぱい!たいりょうだー!ヾ(≧▽≦)ノ」
Q.U.U.A.は山積みになったウ=ナギに大はしゃぎ、持ってきたクリームパイに片っ端から小ぶりなウ=ナギをズボズボと刺していく。
「スターゲイジーパイっていうんだって! おいしそうだし、かっこいいよね!(´▽`)」と速攻で出来上がったそれを包丁で切り、試食をする。
一切れ食したと同時に、w(゚ロ゚)wと硬直したのは、美味故かそれとも別の感情が駆け抜けたのか。それはQ.U.U.A.本人のみが知る。
「わたしが知ってるのと丸みとか、厚さが違うような……?」
ココロ=Bliss=Solitudeがウ=ナギを眺めながら、キョトンとする。
練達の人喰いウ=ナギは彼女の知っている野生のそれとは似て非なるものである。少々ためらいながらも、開いたウ=ナギの身をぶすり!と頭から尾まで突き刺し、焼き上げる。燃え上がる串に若干の疑問を感じつつも、これが陸の食べ方なのだと納得し。
「くくっ、ウナギとはまた貴重な……鳳凰よ、ここは一つで最高の一品に仕上げてくれ」
華懿戸 竜祢が隣に居た『鳳凰』アニー・ルアンに含み笑いをしながら話しかける。アニーはうんざりしたように「応竜め……今度はどんな無茶振りかと思ったら、ウナギを焼けですって?」と応え。
「ウナギを焼くのがどれだけ大変か分かってて言っているのかしら? ウナギの小骨を全て手作業で除去するのはあまりに非効率……」とその大変さをつらつらと語り始めるも、竜祢は一切聞いておらず、「鳳凰の号を背負ってなお尽きぬメイドとしての奉仕の精神……あぁ、実に輝かしく素晴らしいなぁ……!」と悦に浸りながらアニーがウナギ料理を作るのを眺めている。
「……まっ、久しぶりにウナギが食べられるって事には感謝するけれど」
ただ品種改良すればいいのに、何故人喰いの習性まで付けてしまったのか。練達が引き起こすいつもの騒動に呆れながらも、九重 竜胆がこれから始まる催しに向けての準備に取り掛かる。とは言え一人では捌ききれない量なので、役割分担を頼もうと隣にいた少女に声を掛ける。
「料理はそれなりに経験があるけど、こんな食材を使うのは初めて……。ぬめぬめして、これ、本当に美味しいのかなぁ……?」
隣に居た、巡理 リインが若干抵抗を感じる表情でそれを捌く手を躊躇うも、死神として命を粗末にするわけには行かないと気を取り直し、「うん、何事も経験経験っ」と思い切って包丁の刃をその怪魚に向けて入れていく。
その扱いに悩んだのはリインだけではない、いくら「美味しい」と言われようと調理法の知識も経験も無ければ、そのぬめぬめとした怪魚に味を見出すのは難しいだろう。
サクラもその一人であった。不安そうにスティア・エイル・ヴァークライトと怪魚を眺め、「この生き物食べられるの……? すっごいぬめぬめしてるんだけど……」と不安そうにこぼす。一方のスティアは何かを楽しみにするように微笑みながら、巨大なウ=ナギを一掴みすると、しっかりと下処理と調理の準備を施していく。その自信満々な様子にサクラも自然と表情が和らぎ、スティアに手伝いを申し出て、一緒に巨大蒲焼を作っていく。
「グフフ……ワシは鰻にはうるさいぞ」
笑い声と共に、若い漁師風の男を引き連れ現れたのは諏訪田 大二。その手に握られた情報誌とコネ、そして常人ならば高級料理を飽きるほど味わってきたその舌を武器に、究極の蒲焼のレシピを作成したのだ。
「よし、ここはひとつヤングマン達に一流というものを見せてやろうかの」
頼んだぞザック君と大二が声を掛けると、同伴していた男がすばやく丁寧に鰻を捌いていく。その様子におーと声をあげたのはミルキィ・クレム・シフォン、大二のレシピと、実際の調理する姿を見て「へぇ、ウ=ナギってこういう魚なんだ!」と納得したように。
「さーて、どうやって料理しようかな♪」と自らもウ=ナギを調理しだす。彼が作るのは蒲焼を使ったうなぎのパイ。串に捌いたウ=ナギを刺し、焼き上げる間にパイ生地を用意して。
秋宮・史之は、好き放題山積みになっているウ=ナギに感動し、これから食べる人達へ心を込めて、背開きにしたウ=ナギを蒸し器に入れていく。
「蒲焼もいいけど白焼もおいしいよね」と笹の葉で鮮やかに盛り付けた皿に蒸したウ=ナギを載せ、薬味とお茶を添えて運んでいく。
●レッツウ=ナギ料理!
宴会場では、お腹を空かせたイレギュラーズ達が今か今かとウ=ナギ料理を待ち望んでいた。そして、戦い足りない勇者達もそこに――
「ここにフードファイトの開催を宣言する!」
ハロルドの勇ましい掛け声が、戦闘の物足りなさで不完全燃焼だった一部の戦士達を沸き立たせる。いたってシンプル、妨害以外のありとあらゆる手段を用い誰よりも多く蒲焼を喰らい続けるだけというルールであったが、ただの大食い大会では済まされない事は彼らの前に山積みになっている均等な大きさの蒲焼が証明していた。
「うぉぉぉおおお!!」
視界に入った皿という皿に乗った蒲焼を口の中に放り込んで行くのはアラン・アークライト。強敵や弟分の姿に負けるものかと鬼神の如き勢いで次々と放り込んでいくが、ただでさえ大きなウ=ナギの蒲焼、2,30枚も食べ続けるにつれ、次第に顔色が悪くなっていく。
「美味しいモノが食べられるだけでも十分なんだけどどうせなら楽しい方が良いよね♪」
そう言いながら初依頼からごちそうが食べられることに喜ぶのはマオ・リオ。燃える面々とは裏腹に楽しそうに、味わいながら豪勢に頬張る。
「ゼシュテルぱわーあふれる鉄の胃袋をなめたらいけませんよー!」
その隣、メイド服姿でヨハン=レームもその隣で、ゆっくりながら着実に蒲焼をバクバク放り込んでいく。犠牲者が出なかったことが悪人だろうと命を奪うことを拒む彼の気前を良くしているのだろうか。「おかわりください! まだですかー!!」と空っぽになった皿を持ち、次を要求していく。
食べる方も食べる方だが、応援する方も負けてはいない。マナ・ニールは忙しく走り回りながら、出来上がったウ=ナギの蒲焼の乗った皿を次々と運んでいく。
倒れる戦士達や時折苦しそうにする戦士達に向かって、「皆様、最後まで頑張ってください……!」と励ましながら。
「あそこまで喰えないなあ。」とキッチンでケラケラ笑うのはカイト・シャルラハ。フードファイトの蒲焼を作りながら、傍らで自らアレンジした『梅チーズ和え』をさくっと作り。時折味見はするが、元より大きい方なのでのーぷろぐれむ。
「……あれ、高級品だよなコレ???」と作ってからふと疑問に思いつつ、出来たものを次々と回していく。
「……練達製。……大丈夫だよね?」
フードファイトで盛り上がる一画を眺めながら、神埼 衣が眺めながら、ポツリと呟く。心配そうな言葉とは裏腹に応援している親友のヨハンよりも速いペースで色々なウ=ナギ料理を頬張っていく。無表情でパイを頬張りながらも、淡々とその様子を眺め続けるのは、心躍るものがあったのかもしれない。
「……大食比べの催し物というものを見た事は有りますが、成程、あれもその一種という所ですか」
アリシス・シーアルジアもまた、フードファイトで盛り上がる人々を眺めながら物思いに耽る。様々な国や世界から招かれた混沌世界であっても、する事は大きく変わりがないのだと。
「ファイトですよー! あと少しですよー」
クァレ・シアナミドが脂の乗ったウ=ナギを味わいながら、時折思い出したかのように応援のゲキを飛ばす。美味しいから仕方ないね。最初こそは知り合いの勝利を予想し応援していたが、会場の熱気の上昇に次第に興奮し、全員を応援していく。
アニー・メルヴィルはホクホクのウ=ナギ料理を食べながら、歓声を送り。
「すごい……! 凄まじいほどの食べっぷりですね! 一秒たりとも目が離せませんっ」とその様子に驚きながら、同じく強い熱気を感じて――
というか物理的に熱くなっている。
「くははは!!」と高笑いをしながらギフトを発動し、身体の脂肪を燃やしきりスマートになっ(ついでにはだけた)たゴリョウ・クートンが他参加者に精神的プレッシャーを与えていたのだ。
「さぁこっからが本番だ。追いつかれたくなけりゃ逃げ切るこったな!」とかきこむその姿は、まさしく大食漢。
争いが激化するに連れ、徐々にリタイアする者も現れる。「うっぷ……アカン……暴飲暴食はやっぱしあかんなぁ」とぐったり横たわるのは道頓堀・繰子である。ウ=ナギは味は良いがとにかく大きい為すぐに腹が膨れてしまう。暴飲暴食はあかんなぁ、と言いつつも、その顔はどこか幸せそうだった。
「いざ尋常に! 勝負!」
一方、しっかりと1匹目を味わっていたリゲル=アークライトがゴリョウの様子を見て騎士らしく(?)負けじと蒲焼に向かって名乗りを上げる。【怒り】が付与されたかもしれないウ=ナギを厄災の如く平らげていく。
「”死神”、クロバ=ザ=ホロウメア!! いざ尋常に!! 喰らいつくす!!!!」
クロバ=ザ=ホロウメアもリゲルやゴリョウに負けじと名乗りを上げ、勝利と言う名の王者を目指し一気にかきこむ。味覚が無いため、味こそはわからないが飽きもなく食べられる事、そして命をも惜しまず喰い続ける事ができる覚悟が彼の強みであった。
「あぁ……ここは戦場だったんだ」
大食いのコツを見て盗もうと顔をあげていたルチアーノ・グレコが震え声をあげる。それもそのはず、そこにあったのは胃袋(HP)どころか命(パンドラ)まで削りひたすらウ=ナギの蒲焼を喰らい続けるのこの世の地獄であったのだから。焦りながら水を飲み流し込もうとするも余計胃が膨れる事に気付き抑え、神秘を使い再加熱をすることで味を維持することでなんとかくらいつづけ。
「オレこのウ=ナギっての初めて食うけどうめーなぁ! 足りねーぞ、お代わりもっとくれー!」
食い気を見せ、威勢よく配膳係に次をねだるのはメル・ラーテ。蒲焼の味に魅了され、気がついたら無くなる、そして次を……と繰り返し。
そのような地獄絵図の中、優雅に食べるものもまたいた。
「ふむ、このウ=ナギと言うのは見た目は兎も角、味は絶品だね」
ノワ・リェーヴルがフードファイト中であるにもかかわらず、ナイフとフォークで優雅に切り分け、頬張っていく。とは言え優雅でありながらも頬張る欠片は大きく、普通に大食いしているペースとほぼ変わらない。
そんな大盛り上がりのフードファイドと観戦者達を微笑ましくも眺めつつも、どこか心配そうな影が一つ。
「……無茶しないで、ね」
部屋の隅っこの方で喧騒を眺めていたカルア・キルシュテンが蒲焼を食べる箸を止めてその盛り上がりに気を取られていて。そんな彼女に不動・醒鳴が声を掛ける。
「あー、そこのお嬢さん? ちぃと聞きたいんだが、いいか? この国ってこれが普通なのか?」
首を傾げ、「多分……」と返事を貰えば、醒鳴は礼と自己紹介をして、そのまま世界の様々な事柄について色々質問をして。
「おや、随分と眠そうな御仁がおりますの、妾は初春と申すしがない狐じゃが、以後良しなに。出会いの記念に一杯どうですかの?」
醒鳴が去った後、天城 初春が酒とつまみを手に現れ、同席を願い出る。カルアの感謝の言葉を受け取ると、隣に座り共に喧騒を眺めながら1杯飲む。
ウ=ナ丼の丼を持ってうろついていたハヅキ・アラクニア・ガルは、新顔であるカルアに気づくと、「そこ、よろしいですか?」と相席を申し出て、座れば簡単な自己紹介ついでに、自らの世界の鰻について語る。カルア興味深く耳を傾けるも、彼女の眠そうな瞳に誤解してしまったのだろう。「あ、すいません、どうでもいいですね、こんな話」と話をハヅキが止めれば、「ううん、大丈夫……もっと聞きたい」と返してあげて。
ビーチでの依頼と聞いてかわい子ちゃん目当てで来たものの、ウ=ナギの襲撃にあってしまった二次 元は呼吸をするのもやっとで、宴会どころではなかったが、ふと目に入った心配そうなカルアの瞳に気付けばケロッと復活し、這いずっていく。
「……うう、ワシはもうダメぢゃあ……。おお、そこのお嬢ちゃん、ワシを助けておくれ……」
が、不幸にも尻尾をぎゅうと鷲掴みしてしまい、驚いたカルアに(悪気はないが)ばちん!とはじきとばされてしまう。「ダイナマイッ!」と鼻血を出しながら吹き飛ばされKOされる元を、ノエルが呆然とした目で眺める。隣を申し出られれば、カルアは微笑んで促す。誰かと一緒に食べる行為には慣れていなくとも、悪くないという意志を込めて。
「今後彼らの依頼を受けるのが少しばかり心配になって来ました」と練達に対する不安感をつぶやくノエルに、同意の意志を込めた苦笑を返し、共に食べながら耳を傾ける。
まったくだ、とノエルに同意するようにつぶやきながらカルアから少し離れた隣に座るは十夜 縁。
「大事にならねぇで良かったが……参ったねぇ」と同じ水の中で育った者としてウ=ナギ達に同情しながら、徳利を手に一杯一緒にしないかと頼み込む。酒を手に、最近来たばかりの身として色々な身の上を話すカルアに縁は付け合せ「ほー、お前さん、旅人か。どうだい、海洋の味は。機会がありゃあ、うちの店にも寄ってくれや」と話しかければ、笑顔でうなずいて。
フードファイトに沸く会場の反対側では、ゆっくりと羽休めをしウ=ナギ料理を味わうイレギュラーズ達に向けて酒類や付け合せ等が多くテーブルに盛られていた。
「ウ=ナギってなんだ? うまいのか?」
原始人であるリナリナにとっては異様なものであったろう。一口食べると、その美味しさに目を見開いて。
「ふむふむ、これがウ=ナギの蒲焼ですか……戦った時はあまりおいしそうな魚には見えませんでしたが」
そうまじまじと見つめるのはフローラ=エヴラール。その香りや見た目は先程の怪魚とは同じとは思えないほどで、食欲をそそられ、一口食べて、「おいしい!」と笑顔で。
「こいつは白米が欲しいところだ……流石にあるよな?」
Morguxは運ばれてきた白米と一緒に蒲焼を食し、茶を1杯飲み干す。ウ=ナギも鰻と同じく、蒲焼に白米が非常に合うことは変わりないようだ。
「ウ=ナギって……ようは鰻だよね? なら食べなれた食材だ」
マルベート・トゥールーズはウ=ナギに適した葡萄酒を片手に、料理人達に一つ注文をする。やがてワインで煮込んだ特製のウ=ナギと夏野菜のマトロートが出来上がれば、彼女や周りのイレギュラーズ達に振る舞われる。運ばれた料理に興味を示したのだろう。飲み仲間を探していた秋空 輪廻が偶々空いていたマルベートの隣に座る。挨拶をし、事情を尋ねられれば、「一人で食べて飲むより相手が欲しかっただけよ……一杯、付き合えるかしらん?」と1杯を共にしようとワインの入ったグラスを持って、からかうように。
「ウ=ナギ……我が世界のウナギに劣らず強敵であった……」
空を飛び、ごんぶとレーザーを放つ千数百の巨大ウ=ナギ達との死闘を回想しながら、咲花・百合子が感慨に浸る。彼女の世界の鰻はあれをも上回る強さなのであろうか……回想を終えると、勢いよく鰻を頬張り、はむっ、はむっ!ととても美味しそうに勢いよく頬張って。
「はぁ……解決したら食べていいとは言え、数が多くて疲れましたね」
そう百合子の感想に同意するのはアグライア=O=フォーティスで。
ウ=ナギ料理に合うというお茶を一口飲んで口直しをすると、大きな白焼と蒲焼を食べ比べ、もっと色々食べたいと運ばれてきた料理の方を見てどの料理を食べようか悩み。
「あら、新田さんも来てたのねぇ」
高級食材とお酒を楽しもうと洒落込んでいたアーリア・スピリッツは、隣に座った新田 寛治へと声をかける。
「やあ、アーリア様も鰻……失礼、ウ=ナギがお目当てですか」
二人はウ=ナギ談義に花を咲かせ、大人の嗜みに酒の贅沢なつまみとしてウ=ナギ料理を味わう。時に赤ワインと蒲焼の甘美な組み合わせに舌もとろけそうな感覚を味わいながら。
「素敵なマリアージュに乾杯!」「では、乾杯」
最後は白焼きを前に日本酒で楽しく乾杯をして。
ヴィマラは「運動した後だからお腹空いてるよワタシ!」とぺこぺこなお腹を満たしながら、その風味を懐かしみ、食レポをするかのようにその珍味への感想を垂れ流す。
「いやまー お仕事の後だしただ飯だしね、お金もらえてうまいもん食えるなんて文字通り美味しすぎるお仕事だよねー!」
ウナギのディープシーである彼女が気楽にウ=ナギ料理を楽しむ姿にいくつか驚きのような視線が集まるも「ウナギだってウ=ナギは食べるよー」と笑って返す。
「結局のところ。大事なのは、『食って美味いかどうか』だってな」
ヴィマラを見ていたイーディス=フィニーが目線を落とし、ホカホカの白米の上に乗ったまじまじと蒲焼を眺める。深緑出身であるイーディスにとっては非常に珍しい食材、その珍妙な見た目に関心を覚えながらも、一口食す――「――めっっっちゃくちゃうめぇ!?」なるほど、これは箸が止まらなくわけだ。
「とても……美味しい……」新鮮な蒲焼に料理漫画の如き幸福感に包まれたクリスティアン=リクセト=エードルンドにロクがじゃれつきながら日本酒を味わっていて。
「あ、ニホンシュもうまいね! 鰻に合うね!」とバクバクと犬食いしていくロクの姿に思わずクリスティアンも1杯日本酒を味わい。
「クゥッ! この味わい、蒲焼に最高に合う! ヒック……」
思わず悪酔いしてしまい、箸が進まなくなったクリスティアンの口元にロクが「もっと食べよう鰻!!」とグリグリ押し付ける。顔中がタレまみれになろうとも、「混沌の夏は最高だね……!」と幸せ気分なクリスティアンであった。
そんなタレまみれな二人の隣に、厳かなオーラを出しながら静かにウ=ナ丼を礼儀正しく食べるナハトラーベ)がいた。
とにかくマイペースに、かつ丁寧にウ=ナ丼を食べきれば、積み重なった丼の列に一つ乗せ。またウ=ナ重を取りに行く。何列、何重にも積み重なったそれはフードファイトに出ればいい勝負ができるかもしれないが、彼女にそんな気はないようで。
ただひたすら蒲焼と白米を味わえば、感謝の念を込め手を合わせ、礼儀正しく食器を返却しにいく。……食事代代わりに、自らの羽を1枚残して。
「あなたも小骨に気を付けて食べるのよ……え? 喉に引っかかった?」
肩に乗せた妖精が苦しそうにするのに気づいたエリーナはその食事をする手を止め、新しい割り箸を使い、「大変、口を開けてみせなさい」と妖精の面倒を見ている。
一方、ローブが粘液でぬめぬめになって怒りの様子の棗 士郎は相当なおかんむりな様子で、「こうなればヤケ食いだ。お主ら全匹食い尽くしてやるからな!」と蒲焼片手に怒りな様子で。勢いよく喰らいながら「ええい、味が良いのが余計に腹立つわ!」と更に箸のペースをあげていく。その様子はさぞかし美味しそうだったのだろう。フロウ・リバーも一口頬張り、「ふむ、これは……中々、美味しいですね」と思わず舌鼓を打つ。やけに凶暴にされたとは言えど、一応食用として改良された食材。その味には思わず普段しないおかわりをしてしまうほどであった。
「みんな~料理できたんだお~」
ニル=エルサリスが【穂波郷】の皆に作りたてのウ=ナギ料理の数々をお盆に乗せ、運んできた。蒲焼、白焼き、ウ=ナギのフライ。数えきれない程のウ=ナギ料理が並ぶ中、ノンアルコールの飲料もお盆に混ざっていたのは蓮乃 蛍の事を気遣っての事だろう。
「ホント、お酒の進みそうな取り合わせだね」と歓喜の声を上げるニア・ルヴァリエに、秋田 瑞穂が「一つどうじゃ? 宣伝ついでに分けてやらんでもないぞ?」と懐から純米酒を取り出し、声を掛ける。ニアが1杯分けてもらい、二人で乾杯する様子を、蛍は微笑ましい様子で眺めていて。
「ここのところあまり呑めんかったからのう、こんな時くらい羽目を外してもいいじゃろう。」と瑞穂は鰻料理の味付けを変え、口直しに日本酒を1杯のみ、また食べて飽きが来たら味を変え……と延々と酒と鰻を美味しそうに頬張っていく。
一方のニアは、蛍が差し出した料理を「あーん」して食べたり、瑞穂が次々と注いで行く日本酒を美味しそうにいただくも、中々度数がきつかったのか、瑞穂とは逆にすぐに酒が回ってしまい。
「ちょっともう、あたしはダメかも……。蛍、あとはまかせた……」と蛍の膝枕に横たわり、すやすやと眠り始める。そんなニアを蛍は介抱しながら、「ごちそうさまでした」と微笑んでいた。
こうして、皆思い思い練達のウ=ナギ料理を楽しみ、宴も終わりに差し掛かった時、一斉に宴会場にどよめきが走り、しーんと静まり返り、フードファイト会場に目線が行く。
「ぐぅ……もうダメだ……!」
その言葉と共に最後に残った男性がほんの一欠片残った蒲焼を完食しきれず崩れ落ち……どうやらフードファイトの決着がついたようだ。
残ったのは仙狸厄狩 汰磨羈。その冷静な表情の中に少し焦りが見える辺り、よほどの接戦だったのだろう。
野次馬がマイクのような拡声装置を手に感想と勝利の秘訣を尋ねると、ただ二言。
「これが! 野生の食欲だ!」
そう叫ぶと、宴会室が一気に盛り上がる。「優勝者を胴上げするぞ!」「待て、吐くだろう!」と茶々やツッコミが入り、会場の熱狂は最高潮に達していった。
かくして美味しい料理と、一部死闘に満たされた宴の会場は大盛り上がり。
今夜は眠らないと夜の海に乗り出す者、満身創痍で眠りに付くもの。徐々に片付けを始めるものでてんわわんやしたものの。皆笑顔であった。
かくして、練達の起こした一騒動は、思わぬ形?でイレギュラーズ達の楽しい夏のひとときになったのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ただ品種改良するだけではつまらないとか面白そうだからという理由でお魚に空を飛ばせたりビーム吐かせたり人喰いの習性を与えてはいけません。
それだから「また練達か」なんて言われるんです。
それはさておき、沢山のご来場誠にありがとうございました。
多分ほとんど全員描写してあげれたかと思います。フードファイトは色々加味してダイス勝負で判定させてもらいましたー。
優勝者の方にはささやかなプレゼントもおまけしています。
皆さん魅力的で大変でしたけれど非常に楽しく執筆できてよかったです、また機会がありましたらよろしくおねがいします!
GMコメント
どうも、塩魔法使いです。
●状況
海洋のとある島の海岸の近くにある海の家の昼下がり。
イレギュラーズ達はOPの経緯を経て無事に人喰いウ=ナギの駆除に成功しました。
そこで海洋の貴族達は感謝の意志をローレットに示し、近くにあった宴会ができそうな大きな海の家を特別に貸し出してくれました。
さてどうしましょうか。好きにしていいというので折角なので食べてみましょうか。
リプレイは、海の家に到着したイレギュラーズ達が打ち上げの準備を始める所からスタートします。
●食材
・人喰いウ=ナギ ×たくさん
鋭い牙を持つ、1~3倍のサイズの地球でいう「鰻」に似た高級魚です。
練達で品種改良という名の改造を行われ、この姿になりました。
名前や見た目こそ物騒ですが食用の為に作られているので非常に美味しく食べられます。
イレギュラーズ達が調理したウ=ナギの一部は島民に配られ、海洋の名声が上昇します。
●コース
一人1つの選択をお願いします。『絡む』の場合は『食事』と兼任の形です。
【料理】
みんなでしとめたウ=ナギを折角なので料理しましょう。
キッチンは自由に使っていいとのことです。ウ=ナギはもちろん。調味料や調理器具にも不足はありません。付け合せの料理も作れるでしょう。
無難に蒲焼にする以外にも他の調理法もOKです。
練達製なのでデカイだけではないウ=ナギもいるかもしれません。多少変なウ=ナギでもちゃんと料理すれば美味しいのは共通です。
【食事】
皆で仕留め、捌いたウ=ナギ料理を食する食事会に参加します。
特に何も指定がなければ蒲焼が出てきます。
ウ=ナギ料理以外にも様々なアルコールやジュース、飲料や付け合わせの料理もあります。ウ=ナギに合うものなら何でも出ます。ガンガン行っちゃいましょう。
ただし、お酒は二十歳になってから。
【絡む】
「なんか部屋の角で見た事ない女の子が食べてるから絡もう」
居ないとは思いますが物好きの人の為にカルアに絡むタグも用意しておきました。
いた場合は食事のひと時の合間に挿入されます。
●同行者
『いねむりどらごん』 カルア・キルシュテン (p3n000040)が同行します。(絡まれなければOPのみの出演)
いつも黙々と何かをしている桃色のもこもこヘアーの竜人の女の子。
口数は少ないですが他者と接するのは嫌いではないので絡めばちゃんと応対してくれます。
いつも眠そうな彼女ですが指定が無い限りは一応起きてます。お酒も飲めます。
●アドリブ控えめ 他者絡み(同行者不在の場合は)あり
アドリブ大好き塩魔法使いですが今回は文字数の都合上控えめです。
誰かに絡むとあれば適当に絡みに行きますが同行者以外はランダムとなります。
●書式
・1行目:参加するコースのタグ
・2行目:同行者や同行グループのタグ(いなければ空白)
・3行目:プレイング本文
・最後の行:(あれば)アドリブや絡みの指定を
2行目に関して、同行者の名前とIDの指定でお互い指名をお願いします。文字数が……な人は同行者のID末尾4桁と愛称の指定だけで大丈夫です。
迷子or描写漏れの恐れの無いように最大限順守をお願いします。
●情報精度 A?
想定外の事態は絶対に起こらない……はずですが、皆様のプレイング次第ではそうとは限りません。
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