シナリオ詳細
<DyadiC>伏して歩め、飛びて切り裂け
オープニング
●騎士団集結
オランジュベネ領、都市バランシェーネ。
常なれば、ここは人々の笑顔絶えぬ大都市である。しかし今は、深く雪が積もったかのように、辺りは沈黙していた。
人々は家々に閉じこもり、窓から街路を覗く。
そこにはオランジュベネの紋章を掲げる騎士たちが、我が物顔で歩んでいた。
その街の中央、急ごしらえの陣幕の中で。
「バランシェーネは――」
男が言う。
眼窩の落ちくぼんだ男であった。
着こむ鎧は華美に過ぎた代物ではあったが、しかし鎧に刻まれた傷の数々が、この鎧がただの下品な調度品の座に甘んじていないことを示している。
「『血の古城』にほど近い。要衝である」
男――メリーズアンは、オランジュベネの騎士であった。子供の頃よりオランジュベネ家へと良く仕え、責務を果たし続けてきた。
オランジュベネは没落しても、彼はオランジュベネの騎士であり続けたのだ。
主が生きているのであれば、彼もまた騎士であり続ける。
主が魔に堕したのであれば、彼もまた魔に堕ちよう。
ごくり、と、彼に相対する兵士が、つばを飲み込んだ。
得体のしれぬプレッシャーが、彼から――あの魔種から発せられている。
「防衛を確りとせよ。此処が、各地より馳せ参じる騎士たち、その最初の旗である」
彼の眼に、正気の色は見られなかった。
兵士が、喘ぐように、息を求めた。
息苦しかった。
この異常者と相対することが。
おそらくこの騎士は――自分たちが勝利することを、疑ってはいまい。
馬鹿が、と、兵士は胸中で吐き捨てた。
身体を焼き尽くさんばかりの怒りが、胸の奥で燃え盛っていた。
そもそも、オランジュベネに正義はあるのか? この戦いの果てに展望があるのか? 兵たちの間にも、不安と不満が渦を巻いている。これは何のための戦いなのか。
くそが、と、今度は口をついて出る。
騎士がそれを咎めることは無い。
ただただ、怒りだけが、兵士の――兵士たちの胸に、渦巻いている。
この想いを、ただ発散するためだけに――。
兵士たちは、刃を振るうのだろう。
もはや隊は狂気に飲まれ。
戻れぬ所まで、来ているのだから。
●要衝襲撃・バランシェーネ
「集まっていただいて感謝します。それでは、状況を説明しますね!」
バランシェーネ近郊の小さな村。その広場にて、『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)はひらひらと飛びつつ、集まったイレギュラーズ達へと向けて、大声を張り上げた。
幻想南部にて発生したいくつかの事件。その首魁が、イオニアス・フォン・オランジュベネなる魔種であることが判明した。
この企みを排すため、イレギュラーズ達が活躍したことは記憶に新しい――その結果、イオニアスは追い詰められていった。
「でーすがー、イオニアスはまだ反撃を諦めていなかったようでして」
何とか態勢を立て直したイオニアスは、各地へと兵を派遣。麾下の兵の規模を増大させ、ついに、行動を開始したのである。
追い込まれたとはいえ、イオニアスは魔種である。その戦力は決して侮れたものではなく、また仮に、イオニアスの計が成り、幻想内部に魔種の勢力圏が誕生したとなれば、『滅びのアーク』が増大することは想像するに難くはない。
「イオニアスが潜伏しているのは、『血の古城』と呼ばれる場所です。各地で蜂起した兵士たちも、この血の古城を目指して進軍しています――問題は。この血の古城にほど近い『バランシェーネ』の街です」
ファーリナが言う。
「血の古城に関しては、おそらく全軍をあげての攻撃が行われるでしょう……ですが、バランシェーネに潜む大部隊が厄介です」
バランシェーネを占拠した部隊は、魔種メリーズアンを主とする大部隊である。もし血の古城攻略中に、この部隊がイオニアスへと合流すれば、極めて苦しい戦いを――最悪の場合敗走を――覚悟しなければならなくなる。
そこでバランシェーネの攻略が必須となったわけであるが、しかし大規模な部隊を編成しての行動を行えば、バランシェーネの防衛態勢が変化しかねない。
「大きく準備をしていれば、襲撃を察した連中が何をするかはわかりません。最悪血の古城へと合流されてしまえば、イオニアスを討ち取ることは難しいでしょう。それは避けたい! そこで、皆さんの出番です!」
ファーリナは、その両手を、集まったイレギュラーズ達へと向けて見せた。
「皆さんは――一騎当千の兵でありながら、幻想国内において未だ名を知られていない伏竜鳳雛。敵に名を知られていないという事は、敵の間隙をつけるという事。そして最低限の数で最大限の戦果を獲得できるという事です!」
つまり、である。
もしも、名だたる英雄がいたならば。
もしも、千の雑兵がいたならば。
警戒は厳にされ、相手の動きを招いただろう。
だが、もしも、名誉はなくとも、その力確かなる100の兵がいたならば?
敵が動き出す前に、食らいつくすことができるだろう。
とある世界の遠き時代にて、万の兵を300の兵で食い止めた戦いがあったという。
最終的に、300の兵は全滅を喫した。
だが、ここにいる我等ならば。
万の兵にも勝てよう!
勝てるのだ!
「ここに居る私たちだけで、バランシェーネを落します!」
ファーリナは、そう宣言した。
●決戦バランシェーネ
「敵襲! 敵襲!」
バランシェーネの街に、兵士たちの叫び声が響き渡る。
千に迫ろうという兵士たちが、街の入り口に陣取っていた。
「敵の数は」
「アレだけか?」
町へと迫るのは、僅かな戦力。それは兵士たちにとって、あまりにも脆弱なものに見えた。
「どうする?」
「バカにしやがって! あの程度……返り討ちにしてやれ!」
湧き出る怒りの雄たけびと共に、兵士たちは抜刀。敵を迎え撃つ。
そのわずかな後に、彼らはその判断が間違いであったことを思い知らされるのだ。
- <DyadiC>伏して歩め、飛びて切り裂け名声:幻想150以下完了
- GM名洗井落雲
- 種別決戦
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年10月02日 23時05分
- 参加人数141/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 141 人
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参加者一覧(141人)
リプレイ
●起きよ龍、飛べよ鳳凰
バランシェーネ、その街の外に布陣した多くの兵たちが、今まさにその憤怒を手に突撃を敢行した。
迎え撃つは、141名のローレットの勇者たち。
勇者たちと敵との兵力差はおよそ、7倍。千に迫ろうかという軍勢に、141の勇者たちは勝てるのか?
勝てる!
何故ならばここに居るのは、今まさに立ち上がった龍と鳳凰。
伏せるを止め、今まさに翼を広げた英雄たち!
その先鞭を着けし勇者が今、憤怒の兵力と――衝突した!
「嗚呼、勇猛なる一騎当千の強者達よ。肩を並べ戦える事に感謝を!」
ジョセフ・ハイマンはその仮面の奥に獰猛な笑みを浮かべ、真正面からぶつかり合った兵士の身体を、強かに殴りつける。それは、異端なる者を打ち砕く拳。憤怒にまみれ、道理を忘れた者を砕く必殺の拳!
「千人なんて怖くなーい!」
スピネルの拳闘もまた、可憐にして豪烈。ただまっすくぐに撃ち抜かれた拳が、鎧を通して兵士の内部を破壊する。たまらずもんどりうって倒れるのへ、スピネルはびし、と見得を切ってみせた。
「百人組手だっておじいちゃんにやらされたことあるもんね! その10倍なんて、大したことないし!」
「共に先鞭の一撃を高らかに打ち鳴らそう。蹴散らし追い立てよう。罪に、憤怒に囚われた哀れな羊達を! 『血の古城』で戦う愛する者の為に! うふ、うふふ……うひゃひゃひゃ!」
ジョセフは笑い、次なる獲物を探し出す。いや、探すまでもあるまい。敵はどこにでもいるのだ。ならば目に付くものを、片端から打ち落とすのみ!
「兵士の皆さんに恨みはありませんが! お仕事なので! 死んで貰います!」
ミザリー・B・ツェールングが声をあげると同時に、ミザリーの背後に……いや、影の中に侍る『ローちゃん』がその身を震わせた。
途端! 放たれたのは、無数の『雹』! ただでさえ不可避、それが敵兵が密集している場所に落着したのであれば、回避などできようはずもない。次々と雹により、兵士たちが撃ち貫かれていくのを、ミザリーは嬉し気に笑った。
「ローちゃん、さすがなのです!」
ミザリーの言葉に、『ローちゃん』は嬉し気にその身体を震わせ、さらなる雹を呼び込む。敵の数は未だ膨大であり、特に狙いを定めずに撃っても当たるありさまである。例えばそれは、
「ふふ、入れ食い状態、とはこのような事を言うのでしょうね。なにせ、ロープを放れば――」
ロロ・ブランジュが放り投げるマジックロープも同様であり、尽く敵に命中する。拘束された敵が倒れ伏すのを、ロロは穏やかな笑みを浮かべ、
「この通り。嗚呼、つわものが歩む道を護れるというなれば、どれ程嬉しい事でしょう!」
フィールドワーカー、ロロ・ブランジュ。その目は英雄の姿を見るために。その耳は英雄の声を聴くために。その口は英雄の生きざまを語るために。
だが、語り部たらんロロにも、敵の手は迫りくる。だが、ロロは涼しい顔で呟いた。
「ご存知? 怒ってばかりでは視野が狭くなってしまうの。ほうら、そこから攻撃が来るでしょう?」
指させば、飛来する悪意の霧が、兵士たちを飲み込んだ。呪殺の霧を放つのは、ロゼット=テイである。
ふぅ、と息を付き、ロセットは戦場を見据えた。 その様に身震いを覚える。
魔物と戦い、盗賊と戦い、生きてきた。だが、本格的な戦場に身を投じたことは、今までなかった。
渦巻く憤怒が、ロゼットの身を震わせる。戦場を支配するのは、紛れもない狂気。これが魔種の……原罪の呼び声の力か。まったく、恐ろしいことこの上ない。
「だが、この者もまた、立ち止まってはいられない」
此処で挫ければ、待つのは己の死だ――。
「……戦争は無用な血を生みますメェ……」
ムー・シュルフは静かにそう呟きながら、戦場には似つかわしくない情熱的なダンスを踊り続けた。だがそれは、魔力を帯びた攻性のダンス。ダンスの生み出す熱狂と呪いに蝕まれ、敵兵士はその身くずおれてゆく。
「飽きねぇもんだな、人間ってのは」
ウィリアム・ウォーラムはどこか皮肉気に、胸元に手をやりながらつぶやく。
「だが……給料分ぐらいはな。けが人の世話位はさせてもらうさ!」
すぐさま、仲間の下へ駆けつけられるように、彼の眼は味方の姿を見失うことは無い。いや、その目は、敵の兵士すら、救助の対象に入れていた。
もし原罪の呼び声から逃れることができたのならば、可能な限り、救ってやりたいと。
「……全て終わった時に、救えるのであれば……敵も味方もありませんメェ……」
ウィリアムを守る様に、ムーはさらに激しくステップを踏みこんだ。
●
イレギュラーズ達の第一陣と、兵士たちは衝突。激しい戦いを繰り広げていた。
「先陣切るのは戦の花! なれば美少女が決めるのがふさわしかろうとも!」
その背に美しき花を背負い、咲花・百合子は今この瞬間、美少女として戦場を駆ける。
あふれ出る美少女力は仲間達にその花の蜜の一端を味合わせ、共に戦場をかける美少女として開花させる。
「さぁ、いざ! いざ! 吾と共に行く友よ! 吾の先に行く友よ! 各々敵を、気持ちよくいてこまして吾の元に帰られるが良い!」
だが、百合子は待つだけの女ではない。立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花、戦う姿はすなわち美少女なのだから。
「混沌の敵たる魔種。いずれは鉄帝の脅威にもなるでしょう。ここで討たなければなりません」
兜をかぶった騎士、オリーブ・ローレルはその長剣を力強く振り回す。途端、発生した旋風が雑兵たちをまとめて薙ぎ払った。
「とはいえ、自分の相手は雑兵。ならば出し惜しみはなしです! 後続のためにも、一人でも多く切り伏せる!」
オリーブの刃が煌くたびに、敵兵たちは次々と頽れていく。すべては、ここを突破し、魔種たる騎士を討つために。
もちろん、敵の反撃も苛烈なものだ。
「オォ……人々を救わねば。例え、この身滅ぼうと……」
ビジュは己の身を呈して、仲間たちの前へと立ちはだかる。その姿はさながら怪物のようではあったが、その心の内は、仲間を守るという意思に満ち溢れていた。
ビジュがその身体のあちこっちに傷を作り、なお仲間たちを守るべく奮起するのを、リア・クォーツはHMKLB-PM、ガブリエラの背の上から制した。
「ダメよ! いったん下がって!」
言いつつ奏でる癒しの音色が、ビジュの傷を癒してゆく。
「回復手か! 奴から狙え!」
兵士たちが声をあげ、その矛先をリアへと向ける。
「やっぱり、目立つわよね……! でも!」
リアの心を息を感じたように、ガブリエラは激しく嘶いた。
「さぁ、駆けるわよ! あたし達はあんなつまらない悪意には負けない! そうでしょう!」
ガブリエラと共に、癒し手は戦場を駆ける。
「回復手は狙わせない! 全員、まとめて縛り上げる!」
ノアルカイム=ノアルシエラが放つマジックロープが、兵士を尽く縛り上げていく。
「止まれ」
ダーク=アイもまた、マジックロープを投擲。次々兵士を縛り上げ、
「力を合わせようぞ、勇者たちよ」
「了解だよ!」
ノアルカイムとともに放つ一撃を以って、縛り上げた兵士たちをまとめて吹き飛ばしていく。
「ふむ。争いは得意ではないが──これも人助け。此処で我々が倒れれば全てが終わる。生きよ、勇者達よ。化物風情など踏み潰し、勝利と彼らの安寧を――」
ダーク=アイが静かにそう呟く。その傍らを、先陣深く切り込む仲間たちの姿があった。
「みんなが ゆくみちを きりひらくわ!」
ポムグラニットが撃ち放つ魔砲が、次々と着弾。土煙をあげて敵兵たちを吹き飛ばし、あるいは足を止めて行く。ポムグラニットの砲撃は休むことは無い。少しでも敵を減らし、突入する仲間たちの援護とするためだ。
「狂気に囚われ、怒りに身を任せるのであれば、それは民を守るべき者ではありません!」
焔宮 鳴が両手を掲げれば、出現した巨大な魔力の槍が兵士の身体を穿つ。
「力なき民の安寧のために……そして共に戦う者たちのために、私は炎を振るいましょう! 皆さんを前へと送り届けます!」
戦場を、鳴の焔が奔り、憤怒にとらわれしものどもを焼き尽くす!
「暴力で土地を奪うなんて、そこに正当性は存在しない」
ナインは撃ち放つ。己の魔力を。
「君達にどんな想いがあろうとも、二度と真似する者が現れないように徹底的に無惨に潰す……!」
たとえ如何な理由があろうとも、暴力による国盗りが成功したのならば、それは悪しき前例を生むことになる。なればナインには、それを許すことは出来ない。
「にゃー達もぶっとばすにゃー!」
「やれやれ、俺は戦闘依頼なんぞやってないんだがなぁ!」
ニャー、そしてアンファング=ティガークロスも砲撃に続く。魔法と銃撃を次々と繰り出し、仲間たちへの援護とした。
ニャ―、そしてアンファングは、実際にイレギュラーズとしての仕事の経歴は浅いという。
だが、こうして世の一大事となれば、駆け付けずにはいられなかった……いや、それは違うかもしれない。本音は、大切な友がこうして死地にいるのに、自分たちが何もしないのが、嫌だったからなのかもしれない。
「ふ……敗北者の名を冠した呪符。マイナスとマイナスをかければプラスになり、勝者となることを教えてやろう!」
内心では平常心を保ちつつ、パーフェクト・サーヴァントも攻撃に参加した。その目の端には、大切な友の姿を常に映しながら。仲間を傷つけたくはない。それは、物理的な面でも、精神的な面でも。故にパーフェクト・サーヴァントは、二人を見守り続ける。
「二人とも、これより指示するところへ全力攻撃だ!」
「了解だ! 俺も、敵を撃ち抜いて見せる!」
「皆のために、頑張るにゃよ!」
三人の息の合った攻撃は、先を行く仲間たちへ、強力な援護となったのである。
さて、仲間たちを援護する、遠距離攻撃部隊。
その中に、とりわけ特異な集団が存在した! そう、全員がバニースーツを着ているのである!
「そんな紹介のされ方したくなかったわ! なによこの衣装ッ!」
ぺしっ、とうさ耳を地へと叩きつけながら叫ぶのは、バニースーツのリナ・ヘルキャットである。
「折角名を上げようって時にこの格好はどうなのよシエラ!?」
リナは同じくバニースーツのシエラ・クリスフォードへと食って掛かるが、シエラはなんか死んだ目で首を横に振り、
「細かい事を気にしていては勝てる物も勝てません、勝つまで代償を支払うんです! つまり私達はその人の生き様という者を自らの姿で体現しているのです! イヴ、リナ、そして新人のエリクシアちゃんも分かりましたか?」
と、堂々と言い放つのである。ちなみに、闇市に通い過ぎた結果、すぺしゃるばにーしか装備を用意することができくなってしまったそうだ。闇市は悪い文化なのでは?
「大量の兵士にこの姿を見られながら戦うってどうなんだ……大丈夫なのか私達は」
眉間に手をやりながら、バニースーツのシェリル・クリスフォードが呟く。
「これがローレットの衣装なんだよね? 私、がんばるね……」
うさみみをぴょこぴょこと、両手をぎゅっとして決意を表明するのは、バニースーツのエリクシア・ヘブンズフィールだ。ローレットがバニースーツが制服の組織だという誤った知識を植え付けられてしまったようである。
「バニースーツは可愛いのです、正義なのです分かるのです。エリクシアも気に入っているのですよ」
エリクシアの頭を撫でつつ、バニースーツのイヴ・ヴァレンタインが力強く頷いた。バニースーツは正義なのだ。よくわかった。
「分かってくれた様ですね、私嬉しいです!」
シエラが満足げに頷く……良かった、ごまかせた、と。多分ごまかせてはいないのだろうが、まぁここまでこの格好で来てしまえば、もうあとはなるようになるしかあるまい。
「さて、派手にやらかしますかね、おらさっさと働くのですよ働き雌兎ども」
イヴがそう言うのへ、言葉はさておき皆が頷いた。
「敵に砲撃を仕掛ければいいんだね? ん、分かった……」
エリクシアが呟き、魔術所を構えた。途端、爆発的な魔力が礫となって、さながらガトリング砲のように敵陣地へとまき散らされる!
「まぁ、ここまで来たらやるしかない。行くぞ」
シェリルの言葉に、
「ええ、任せて! でかい花火を打ち上るわよ!」
リナが頷いた。かくして、敵兵たちに「やべぇバニースーツの集団がいる」と伝令されることになる、バニーたちの攻撃は始まったのである。
●
仲間たちの支援を受け、全隊はまた一歩、バランシェーネの街入り口へと近づいていく。
「くそ、なんだこいつら! 何でこんなに――!」
兵士たちが悲鳴を上げる。それはそうだろう。数の点ではオランジュベネ軍が圧倒的有利。だが、その数的優位が通用しないのか、オランジュベネ軍は押されつつあるのだ。
「あんまりアタイたちを舐めてもらっちゃ困るぞ!」
モモカ・モカがその拳を振るえば、巻き起こる旋風が敵兵士を吹き飛ばした。
「相手がどんなに多く立って、アタイたちは負けないんだからな!」
「そうです! 皆とお友達になるのですからねー!」
美音部 絵里は楽しげに笑いながら、兵士たちを『友達にして』行く。
「ひっ、やめ――」
悲鳴を上げる兵士の頭が、銃撃によってぶち抜かれた。
「大丈夫大丈夫怖がらないでほしいのです! どんな人だって『私達』のお友達になれますから。安心してなのです! くふー♪」
絵里はその頬を地に染めながらも、嬉しそうに笑い続ける。
一方、戦場を彩る血を背に、しかし美しく舞うのは津久見・弥恵である。
「ひとたび見惚れれば、あとは霞の中――」
その舞を見れば、たちまちとらわれる。頭の中は霞がかかり、まともに武器を振るうことすら叶うまい。
「中ほどまで来ましたね。あともう一息――」
弥恵の言葉に応じるように、東 政宗の振るう鞭が、敵兵を打ちのめした。
「やるねぇ! おじさんも、もう少し頑張るか!」
内心、初めての大規模作戦に冷や汗をかきつつ、しかし政宗は足を止めない。先を行く仲間たちのために、ここで気を張らなければ男が廃ると言う物だ!
「若者たちにばっかり無理はさせられないンでね!」
「面倒だー。ああ面倒だー……だけど、ここで頑張らないと、あとでもっと面倒だよね」
ミディ・アルマナーク・エルデルネが、その拳で兵士を殴りつける。面倒なことは嫌いだ。でも、面倒だと逃げて、面倒だと言えなくなるような世界が来るのはもっとごめんだ!
「仕方ないから、少しばかり勤勉に――ああ、でも面倒っ!」
ミディは少しだけ微笑む。
レミア・イーリアスは、その戦斧を振り回し、兵士たちをなぎ倒した。
「ずいぶんと大所帯ね……今日のご飯は……決まったわ……」
その長く、妖艶な舌をで唇を舐めて。大量のご馳走を前に、少しだけ微笑む。
レミアを応援するように、どこかから音楽が聞こえた気がした。それはきっと、どこかの霊が奏でた音なのだろう。
「……食べ貯めさせてもらうわよ……?」
レミアは敵陣へと切り込む。戦斧が振るわれるたびに、ご馳走が出来上がる。
「こんな所ですかねぇ? 味方の人は当たらないようにお願いしますねぇ」
ダダダダダ! ダダダダダダ! 激しく火を噴くガトリング砲を、イサベル・セペダは涼しい顔で御して見せた。
正義も理想も二の次だ。不安も不満も狂気も、戦う理由としては邪道。
戦いたいからこそ、イサベルは戦う。
それでいい。そして鉛玉は、その想いに応えてくれる。
「うふふ――さぁ、楽しみましょうねぇ?」
イサベルは笑う――とても、とても楽し気に。
「有象無象は疾く灰燼と帰すがいい」
放たれたアリーヤのブレス――竜のブレスは、兵士たちを飲み込み、刹那の時に灰燼と帰した。
「――ふふ、さぁさぁ、どうしたの? 竜を殺す英雄はここにはいないか。なれば今ここでは、わたしこそが英雄となろうかしら。『一人殺せば殺人者。百万人を殺せば英雄』――ええ、少し足りないわ。でも、あなた達でも、充分よね?」
龍は――アリーヤは笑う。
テレンス・ルーカは静かに、呪いの霧をまき散らす。掲げるその手には真紅のグローブ。その身に刻まれしプライド。
「――赤染の腕の名に懸けて」
言葉は不要。今はただ、己に課せられた任務を遂行する。それが、テレンス・ルーカに課せられた役割(ロール)なのだから。
「我が『信仰』を括目して見よ! ご照覧あれ! イーゼラー様!」
雄たけびとともに落下してきたものは、筋肉である。
筋肉――ネメアー・レグルスは兵士たちのど真ん中に着地すると同時に、サイドチェストのポーズを決めた。するとどうだろうか、筋肉が雄たけびを上げ、威圧が闘気の刃と化してあたりにまき散らされる!
「兵士の皆様……ええ、ええ、今すぐ『お救い(ころ)』して差し上げましょう!」
散り行く命を見ながらも、ヴェルフェゴア・リュネット・フルールは満足げな笑みを浮かべていた。
神、イーゼラーの名の下に集いし者たちが、戦場を駆ける。その胸に浮かぶはすべてが一つ。主なるイーゼラーがため! イーゼラーにすべてを奉げるがため!
ヴェルフェゴアは、祈りを捧げた。その祈りは、これより捧げる魂が、主の御許へと無事到達することへの祈り。端から見れば呪詛の如きそれは、ヴェルフェゴアにとっては正しく、清き祈りであり、その祈りを受けしものは違わず、主の御許へと捧げられる。
祈りという呪詛により次々と兵士が絶命していく中、ネメアーの暴力が兵士たちをなぎ倒していく。
「これくらいで立ち止まるなど筋肉を鍛えてない証拠なのだ!」
まさに暴風。呪詛と筋肉が巻き起こす暴風が、戦列に風穴を開ける。一方、
「イーゼラー様の恩恵を受けし我々に勝てるとお思いなのですかー?」
ピリム・リオト・エーディはどこかぼんやりとした様子で告げる。しかし、その動きは俊敏そのもの、敵の合間を縫って放たれる大戦斧は、見事に足だけを狙っている。
もちろんそれは、慈悲などではない。ただの趣味だ。
「しかし、大人しく脚を差し出せば脚だけは助けてあげますよー」
「訳の分からんことを……ぎゃっ」
悲鳴を上げる兵士の足が飛んだ。何方にせよ、脚は切り落とすのだ。返事は後から聞いてもいい。
「イーゼラー教の仲間達よ! 神の御許に、愚か者たちの霊魂を捧げなさい!」
セレスチアルが言った。その手から放たれた式神は白い鴉となって、愚者の胸を突き破り、その霊魂をイーゼラーへと捧げることとなる。
「ああ、これで我が神もお喜びに……シギネア様はお喜びになってくれるだろうか……」
呟いた言葉は、戦場の怒号にかき消され。
しかしイーゼラー教徒たちの進撃は留まることは無い。
捧げるのだ。すべてを! すべてを、イーゼラーへと! それまで教徒たちは、止まることを許されないのだから。
――そしてまた一歩、戦線は押し進められた。
●
オランジュベネ軍はまた少し、後退を余儀なくされていた。
僅か141名の部隊が、1000に至ろうかという兵士たちを圧倒していた。
「くそ! ふざけるな!」
兵士が悪態をつく。それは、無慈悲なりしこの現実へ。
自分たちが瓦解していくという、有り得ぬ現実への、ささやかな反抗であった。
「さぁ、来い。露払いは俺が担おう」
ジョージ・キングマンは己が拳を兵士へと叩きつける。敵が倒れたのを確認するまでもなく、次から次へと敵がやって来るのへ、ジョージは苦笑して見せた。
「やれやれ、とはいえ、楽じゃあないな」
ジョージは己が包囲されつつあることを察すると、正面にいた敵兵を強かにけり付け、その反動で低空を飛んだ。その勢いを利用して、敵を引きはがしにかかる。
「さて、仕切り直しと行くか」
変幻自在のその戦法に、兵士たちは追いつくことは出来ない。
「そっちが手薄だぞ! 一気に攻め立てろ!」
ニコラス・T・ホワイトファングの指示が戦場にこだまするのへ、
「了解っ!」
ソアがその手を振るい、雷が宙を走る。撃ち抜かれた兵士は意識を失い地に倒れ伏す。だが、ソアの技術により、その命を奪うには至っていない。
もちろん、それは簡単に行える事ではないし、こういった戦場で一撃で命を奪わぬことは、すなわち自分の命をが脅かされるリスクにもなりうる。
「でも……できるだけ多くの命を救うんだ!」
その気高き決意と共に、ソアは命を救うための雷を撃ち放つ。
「さあ張り切って首を獲りましょう!」
日車・迅の言葉に答えたのは、ハンナ・シャロンである。
「迅様、可能な限り命を殺めるのはお止めください」
「え? ダメ?」
「はい。この方たちも声に狂わされているだけなのですから」
ふむん、と迅は唸ってから、答える。
「……戦場に立つ以上は命を落とす覚悟はしていると思うのですが、ハンナ殿がそうせよと仰るのであれば。その通りに致します」
にいっ、と微笑んで見せた。ハンナが頷いたのを確認して、二人は敵陣へと躍り出る。
一方、戦場にて即席パーティを組み、戦いに臨む者たちもいる。
「うわははは! 俺が来たからにはもう大丈夫だ。ウオオレンジボーイだかベネベネだか知らんが……愛を脅かす者、許さん!! オッケェーイラヴィエルでーーーすフゥッ!!」
ものすごい勢いで残像を残しながら、『愛の妖精』ラヴィエルが愛を叫ぶッ! 敵の攻撃をその身に一心に受け止め、仲間たちのために身体を張るのだ!
「集中……集中……!」
同時に仲間たちへの援護を買って出たのは、道子 幽魅だ。戦場は怖い。それでも必死に、仲間たちを癒すべく、前を向く。
「大丈夫、リゼちゃんも居るから!」
にっこりと笑いかけつつ、リーゼロッテ=バーゼルトは幽魅へと告げる。幽魅は淡淡とした様子を見せたが、やがてこくり、と頷いて見せた。
二人はともに、回復の術式を練り上げる。傷ついた仲間たちへと、次々と術式を展開していった。
「後ろは任せたよ」
ルチア=ウェンデルは二人へと告げつつ、走り出した。敵兵士に接敵するや、頭の角で強かに叩きつけて見せる。その攻撃に合わせて、パニーラ・アクセーンの斬撃が、敵を切り裂いた。
「ふぅ……こんな感じかな?」
深呼吸などをして見せるパニーラへ、
「上出来だと思うよ」
ルチアはゆっくりと頷いた。
「おっと、足を止めてはいけないよ。戦場だからね」
くすりと笑いながら、ミーシャ・キュイはそう告げる。片手で放つ不可視の刃が、此方の様子をうかがう兵士たちを斬りつけた。
「戦局は、此方に傾いているようだけれど……油断せずに行こうか?」
ミーシャの言葉に、即席パーティの仲間達は頷いた。
「それにしても……良くここまで集まったものだね。イオニアスがここまで体制を立て直すなんて」
ミシャ・コレシピ・ミライが呟き、
「まったく、この世界の魔種とやらはことごとく諦めが悪いようだわね……」
リルカ・レイペカ・トワがそれにこたえる。
二人が会話する間も、決してその身体は動きを止めない。リルカの放つ火炎は兵士を飲み込み、この世より消滅させる。反撃によりリルカが負った傷は、瞬く間にミシャにより癒されていく。
「正面を頼むわ!」
「しっかり回復頼むだわさ!」
言葉は少なく。しかし、息の合ったコンビによる戦果は、次々とあげられていくのであった。
ウェール=ナイトボートは切り結ぶ。敵兵と刃を。
その胸に宿るは、宝物の思い出。たとえ今この身が傷つこうとも、元の世界に戻り、我が子に詫びる、その時まで。
「弱さも、敵も……全て切り裂く!」
「無茶は禁物っきゅよ!」
レーゲン・グリュック・フルフトバーがウェールの傷を癒していく。
「オイラの仲間たちは、やらせないよ!」
アクセル・ソート・エクシルが放つ魔術の弾丸が、弓手の敵兵を貫いた。
「レーさんも、勇気を振り絞ってできる事を全力でするっきゅ! 皆もどうか、頑張るっきゅ!」
レーゲンの応援の声が響く。その言葉も、癒しの魔術も、皆の力を奮い立たせるのに十分な力を持っている。
「市街地と決戦に向かうみんなのために、道を切り開くよ!」
アクセルの言葉に、二人は頷いた。
【黒奏隊】のメンバーたちは、敵陣深く切り込んでいく。
「一騎当千、伏龍鳳雛。いい響きだ。行くぜ姉ヶ崎、俺達の鉄壁、見せつけてやれ!!」
「……トカム。お前さんなりの気遣い、感謝するぜ。大切な人を守るため、まずは今ここにいる仲間を守りきる!!」
トカム=レプンカムイと姉ヶ崎 春樹は、各々の武器と盾を構え、仲間たちを守護すべく立ちはだかる。兵士たちの群れが、二人にぶつかった。
「おいこら前衛の脳筋ども、前に出すぎんじゃねぇ!?」
ベルナルド=ヴァレンティーノが慌てた様子で声をあげながら、漆黒の閃光を撃ち放つ。叩きつけられた閃光が兵士を打ち倒し、トカムはベルナルドの方を見ながら、
「アンタが居るから無茶できるんだぜ?」
「前は任せてくれ! 後ろは任せた!」
トカムと春樹が笑い、再び敵兵士と打ち合う。ベルナルドは苦笑しながら、頷いた。
「砂蠍事件で全てカタがつけば良かったんだけどね」
御幣島 十三が呟いた。撃ち放たれる雷が、敵兵士たちを打ち据えていく。
「取りこぼした憂いをここで断てるのなら……悪くはない、かな」
「そうだな。……しかしお前ら、どいつもこいつもいい面構えになってきたな」
朝長 晴明は、仲間たちを見回してから、にっ、と笑った。
「頼りにしてるぜ、お前ら。黒奏隊からド三品どもに食らわせてやれ、終わりのレクイエムを」
晴明の言葉に、仲間達は頷いた。黒奏隊のメンバーたちを先頭に、イレギュラーズ達は一気に敵兵を押し返す!
●
イレギュラーズ達はまた一歩、歩みを進める。
オランジュベネ軍がまた一歩、後退する。
「血路を開く! 我に続け! 我が名は悪の秘密結社『XXX』が総統! ダークネスクイーンである!」
ダークネスクイーンは叫び、世界征服砲をぶっ放した。吹き上がる暗黒のオーラが、並み居る敵を文字通りに吹き飛ばしてゆく。
「我が配下どもよ! 死ぬことは許さんぞ! 傷を負ったら退け!」
叫ぶダークネスクイーンの下には、多くの治療士たちが集まっている。
「可能な限り、回復術を飛ばします……けど、無理はしないでください!」
リディア・ヴァイス・フォーマルハウトは回復を担当する術師の一人だ。前線に向けて、ひたむきに回復術を飛ばし続ける。如何に英雄とて、複数の敵に囲まれては被弾は止むをえまい。ならば少しでも、その傷を癒す……それがリディアの役目だ。
古木・文もまた、仲間たちの治療へと奔走していた。深く、深く敵陣へと斬り込んでいく仲間たちを追い、自身もギリギリの所で踏みとどまって傷の治療を行う。
「できるだけ、皆が戦いやすい場を維持し続けて見せる……!」
文は決意を新たに、周囲を見据えた。
「こちらも回復に専念したい所だけど……!」
リウィルディア=エスカ=ノルンは治療術式を飛ばしつつ、辺りを見回していった。相手も、流石に治療士を放っておくほど間抜けな連中ではないと見える。少しづつ此方へと前進してくる敵兵を見て、しかしリウィルディアは笑ってみせた。
「アハ、アハハハッ! 邪魔するなら――!」
あえて敵陣深くへと踏み込む。接敵したところで、疑似神性を己の身に下ろし、その力を以て斬撃を繰り出してやる。敵が切り裂かれ、吹き飛ばされるのを見、
「消しとばすしかないねぇ! ただではやられないよ、楽しもうじゃないか!」
凄絶に、リウィルディアは笑う。
「今のうちに立て直してください。時間は私が稼ぎます!」
威嚇術を放ちながら、イースリー・ノースが仲間たちへと声をかけた。自ら回復手でありながら、仲間たちを庇う。
「もう少し……もう少しで、到達が可能なのですから……!」
街までは目と鼻の先。ここで瓦解するわけにはいかない。
最前線では、最後の防衛線とイレギュラーズ達の、壮絶なぶつかり合いが始まっていた。
「あと一息だ! 一気に押し込め!」
七五三掛・纒が仲間たちに檄を飛ばす。その指揮に導かれ、仲間たちの動きが加速する。
「市民を無駄に殺さない、騎士としての最低限の誇りが残ってるのは褒めてやるのです」
黒・白は静かに呟く。放たれる殺傷の霧が、怒りに浮かされた兵士たちの命を狩っていく。
「……それも時間の問題だろうが」
「だからその前に、ああその前に、頭ぶん殴って冷やしてやる……!」
その身に確かな怒りを燃やし、黒・白は戦場を駆ける。
「いやー最前線とか全然怖くないが? ビビってないが? と思ってたら思いっきり最前線中の最前線じゃないかうわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
Dr マツリカの悲鳴がこだました。
「ずいぶんと奥まで進軍したものね」
橄欖・オリヴィン・ペリドットが放つマギシュートが兵士の態勢を崩し、
「そち達がおると、後続が突入出来ないのじゃ。クックック……諦めて倒れておくんなし」
ニル=ヴァレンタインが格闘戦でとどめを刺す。
「あと一押し……かしら?」
周囲を見回しながら、橄欖は言う。
「じゃのう……何か強烈な一撃があれば……!」
「ならば! 悪の饗宴を撃ち砕く愛の号砲! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
と、ビシッとポーズを決めつつ言うのは、無限乃 愛である。愛はその両手を掲げ、敵陣へと向け――。
「魔砲 type.D! ファイア!」
放たれる蛍光ピンク色のビームが、敵兵をまとめて吹き飛ばす! そしてその先に、街へ続く穴がこじ開けられた。
それは、イレギュラーズ達が前哨戦を制したことを告げる祝砲でもある。
こじ開けられた穴に、突入部隊が次々と突入していく。
――イレギュラーズ達は、戦線を突破することに成功したのだ。
●街を抜けて
バランシェーネの町内部に侵入したイレギュラーズ達を待ち受けていたものは、静寂と、むせかえるような敵意の気配であった。
未だ姿こそ見せぬものの、あらゆる所に敵はひそみ、此方を狙っているのだ。
だが、臆してはいられない。
イレギュラーズ達は意を決し、駆けだすのであった。
「イオニアス卿……慎ましいながら良い領主であったのにお労しい」
アインザーム=ヴェサリウスは、仲間たちと共に市街地を駆ける。
敵の気配は濃密であり、そしてあちこちから感じ取れた。このまま無策に進んでいては、敵の奇襲を受けるのは必至。
だが。
「アインザーム、次の路地だ。右手に潜んでやがる」
此方には神の目が――バルザックがいる。上空を飛び、上から街を俯瞰するバルザックには、姑息な待ち伏せなどは通用しない。
「了解です。では諸君、始めましょう。くれぐれも、街に禍根を残さぬように」
アインザームの指示に、仲間達は頷いた。
「ケヒヒヒ、幻影に、屍鬼……どう動いてくれるかのう?」
黄・太極が、生み出したものは、人の幻影、そして土くれより生み出した屍鬼たちだ。一同より一歩先、敵の潜む場所へやれば、待っていましたとばかりに奇襲攻撃を仕掛ける敵たちの姿が見える。だが、それは偽りの姿に踊らされ、自ら姿をさらしたに過ぎない。
「本当に人間は戦争が好きだな……私は悲しくなってしまうよ」
その姿は兵士たちの後方より聞こえた。姿を隠し、敵の裏に回り込んでいたヴェーゼの声であった。
ヴェーゼが放つ魔砲が、敵をなぎ倒す。こうなれば敵などは、もはや袋のネズミであった。後方からの突然の逆奇襲に、敵は前方……イレギュラーズ達の方へと逃げるしかない。
「民を蹂躙する行いは、狼の怒りを買うと知るが良い!」
だが、殺到する敵の群れを、グランディス=ベルヴィントはその身を持って制した。兵士たちは苦し紛れに攻撃を仕掛けてくるが、もはや浮足立った彼らの攻撃など、グランディスの身体を捉えることは出来ない。
「生憎倒すしか能がねぇんでな、トコトン倒しまくらせて貰うぜ!」
続いてガルハ・フォルクス・レーツェンが切り込んだ。残る兵士たちを次々とその刃を持って始末していく。
チーム、イルミナティ。彼らのその働きが、また一歩、イレギュラーズ達を目的地へと押し上げていく。
「指切った――♪」
梔子は先陣を切って突入していく。魔法の火花が世界を彩り、格闘(ダンス)の果てに相手は手折るる。
さぁさぁ皆様、今が、此処が、一世一代の晴れ舞台。わたしちゃんがかわる、わたしちゃんが強くなる、此処が世界が変わる場所。
「ここは勝ってしまいましょう?」
にこりと笑う。にこりと笑う。
ネリは手にした獲物を、ちらり、と見やった。
それは、ネリの宝物。大好きな人たちがくれたもの。大切な人たちとのつながり。
ごめんなさい、ごめんなさい。大好きな皆を守るために、この宝物を今日、血で汚します。
でも身勝手だろうか? それを知られたくない。汚してしまったことを知られたくない。
だから、今日の事は、ずっとずっと、秘密にする。一生明かさない秘密にする。
ネリは大切な宝物を掲げて、敵陣へと突撃する。
「我が混沌なる闇に沈むがいいわ! ……z……zz…………」
Azathdo=Hgla=Thusxy、その放つ呪殺の霧が、遭遇した兵士たちを片端から巻き込んでいく。
結々崎 カオルもまた、遭遇した兵士たちを次々と蹴り飛ばした。
「援軍を呼ばせないためにもやっとかないとな……」
「同意するのです、徹底的にやっちゃいましょう! ……Z……Z……」
橘花 芽衣はそんな仲間たちの前に立ち、大声を張り上げる。
「魔種に魅入られた者達よ! この拳を恐れぬならば掛かって来なさい!」
堂々たる名乗り口上。それにひきつけられた兵士たちが、次々と襲い掛かってくる。だが、仲間たちはひるまない。
「俺たちで道を開ける!」
カオルが叫び、敵に突撃していく。
「あんな奴ら、野放しにしておけないよね!」
芽衣も負けじと、駆けだした。
町の中心へ向けて。
仲間達ともに、進んで行く。
●
作戦決行から日が少し傾く。イレギュラーズ達は、戦場と化した街の中を走る。
「――――」
「畜生、なんだあいつは!?」
ナハトラーベが上空を飛び回るのを、地上から右往左往と見守る兵士たち。
「よそ見はあかんなぁっ!」
その間隙をついて、美面・水城が盾もろとも突撃する。ブースターの勢いも乗せた全力の体当りが、兵士を吹き飛ばし、壁面へと叩きつける。
「どんどん行くッス! 足を止めてはいらんないッスよ!」
鹿ノ子は仲間たちに檄を飛ばしながらも、太刀による斬撃で兵士を切り伏せた。
鹿ノ子のいう通り。足を止めてはいられない。足を止めれば囲まれる。足を止めれば、それだけ突入が遅れる。必要なのは、電撃の如き速度だ。
「一人十殺のノルマでも、一対一を十回と考えればッ!」
アウロラ・マギノが両手斧をぶん回す。些か強気な発言だったが、しかし決して間違ってはいない。
やがて大きな水路を左手に臨む通路へと到着する。イレギュラーズ達は進行を止めないが、街路の影から次々と敵兵士たちが現れた。
「……陽キャ……しかも1000人も仲間がいるパリピ……これは許せないよね……」
街を流れる水路から顔を出すのは、矢都花 リリーである。水路からバールをぶん投げながら、先行く仲間たちを支援するリリー。そして、
「へいへい! アンジュちゃんの動きに付いてこれるかな〜!」
水路と言えばいわしの群れである。大量のいわしミサイルを浴びせるのはエンジェルいわし、アンジュ・サルディーネだ。
水路から襲い来る、魚介とバールの援護射撃に、敵兵士たちも次々と脱落して行く。
一方、外壁を蹴り高く高く、跳躍からの斬撃=蹴りをお見舞いするのはフィリア・クインランだ。斬りつけられた=蹴りつけられた敵が次々と水路へと落下していくのを見ながら、
「捉えられるかしら、この私を」
くすりと笑ってみせる。
「潰れて落ちちゃえー!」
アウローラ=エレットローネの召喚した巨大な石の拳が、兵士たちを次々と殴りつけ、水路へと叩き落していく。まだ体力のある兵士たちが水路を登ろうとしてくるが、
「まだまだ! 奏でるは魔法の重ね唄!」
追い打ちで叩きつけられた魔術の連撃が、再度兵士たちを水路へ転落させた。
さらにイレギュラーズ達は街の中心へ向かう。
上空では、ルクト・ナードが飛行し、斥候を行う。
「空中敵がいないのが残念だが――」
ルクトが呟く。
「だが、地上目標に困ることは無いな」
眼下には、未だ無数の敵たちがひしめいているのだ。同様に空を飛び、上空より眼下の敵を見回し、蟻巣虻 舞妃蓮は肩をすくめた。 金色の髪が、風にたなびく。
「もう少し加減してくれてもいいけれどね」
目指す目標は、未だはるか先。これからまだ、敵との戦闘が待ち受けている。
「こないに大事になりはるなんてややわぁ」
久世・清音は、屋根の上から地上を見下ろしながら、そう言った。
「仕方ないわぁ、ほな、ぼちぼち」
屋根の上にて、弓を構える。放たれた矢が、兵士の胸を貫き、幾度目かの戦いの合図をあげる。
●
枢木 華鈴と桜坂 結乃は、二人路地をかける――。
「おねーちゃんまって!」
結乃が声をあげるのへ、華鈴は足を止めた。
「おっと、近くに敵かの?」
結乃のファミリアーと超聴力による索敵の網に、敵が引っ掛かったのだ。
「ん。この建物の影で待ち伏せよっか」
結乃の提案に、華鈴は頷いた。足音が近づいてくる――二人はタイミングを見て、飛び出した。
「さあ、私と遊んでくれる子はどこかしら?」
龍宮・巫女の斬撃が、兵士たちを一刀両断とする。繰り広げられる、幾度目かの遭遇戦。
「無理はなさらないでください。突破、そして足止めまでが、私たちの任務なのですわ」
София・Ф・Юрьеваの回復術式が、仲間たちを包み込む。
「草よ、花よ。荒れ狂う戦場に一時の癒やしを」
陽・サンもまた、陽光の如き光を照らし、仲間たちの傷を癒す。回復は、手厚すぎてやり過ぎるという事はない。特に、今回のような連戦続きの戦場では。
「お兄ちゃんを傷つけさせない! お兄ちゃんたちに近づくな!」
イ = モウトは敵兵士を得意の喧嘩殺法でバラバラにしてやった。お兄ちゃん=仲間達であるのだが、それを脅かす存在を、兄とのつながりを断とうとする存在を、妹としては決して許すわけにはいかないのである。
「嫌な音、です、ね」
閠は頭をかき乱す憤怒の感情を受け止め、思わず身震いをした。メリーズアンの居るであろう本陣に近づくにつれて、その狂気の度合いは深まっていく。
それは、敵兵士たちの態度にも如実に表れていたものであり、その目に見える狂気に、身震いを覚えるイレギュラーズ達もいただろう。
「ですが……ここで、くじける、わけには」
そう、此処で足を止めるわけにはいかない。ここで足を止めれば、その狂気は自分たちを、そして罪なき人々を踏みつぶすのだから。
「フフフ……呼び声ヲ聞いチャッタ? 解らないデスケド……」
オジョ・ウ・サンとアンジェラ、二人は敵兵士の群れと相対する。
敵は狂気に侵された憤怒の兵――だが。
「そういう子がオイシイの、オジョウサン、知ってるンデス」
オジョ・ウ・サンにとってみれば、それはご馳走に過ぎないのだ。
迫る兵士たちの前に、アンジェラが立ちはだかる。
「オジョウ……サマ? 前衛はお任せください」
アンジェラの言葉。白銀の爪を振りかざし、その暴威を以ってオジョ・ウ・サンに迫る敵兵をけん制する。
「ありがとうデス! それじゃあ、オイシク頂くデス!」
にっこりと、疑似餌が微笑む。
●
イレギュラーズ達は駆ける。目的地まで、あと少し。
「この先、正面……大量にいる!」
氷瀬・S・颯太の言葉に、
「分かりました。切り込みます」
静かに答えるは、紗恵・ヴォルグラートだ。
果たして颯太、紗恵の二人は敵兵とぶつかり合う。
「集中攻撃を仕掛けます、続いてください!」
イージア・フローウェンの右手に、水晶龍の呪いが爆発せんばかりに膨れ上がった。途端、放たれた呪詛が、兵士の胸を貫く。
「ここを突破できれば、もうすぐ……!」
祇龍院・栞の放つ呪殺の霧が、兵士たちを包み込む。その霧の間隙を突きながら、颯太、そして紗恵が次々と兵士を撃破して回る。
「俺がいる限り……他の連中はやらせない!」
颯太が気合と共に、兵士たちを押し返す。その気迫で、自身より後ろへと向かう事を、許さない。
「ふっ――」
短く息を吐くとともに、紗恵は斬撃を繰り出し、兵士を切り捨てる。
突破戦、最後の戦場は、【朱煌剣の従】たちの働きにより始まる。
「随分と奥深くまで来たが……もう一息だ、ミュリエル!」
クリストファー・J・バートランドは叫びながら、手甲による格闘攻撃をお見舞いする。
「はい、クリストファーさん!」
ミュリエルが回復術式を全開に展開し、仲間たちの援護を続ける。
イレギュラーズ達の果敢な戦いにより、敵兵は少しずつ、その数を減らしていった。
「この戦地は任せてください! さあ、今こそ先へ!」
敵兵士へ負の気を送り、攻撃としながら、河鳲 響子は後続の突入部隊へと叫ぶ。
「悪い奴をやっつけてこい!」
ファレルが敵兵をなぎ倒しながら叫ぶ。ついに開いた兵列の穴へと、突入部隊は突撃していく。
「大将首は任せたぞ! ……ちくしょー! すぐにオレも「そっち側」に行けるようになるからなー! 」
その背に、新道 風牙の声援を受けながら、ついにイレギュラーズ達は、魔種と遭遇する。
●決戦、メリーズアン
ついに街の中央に到達したイレギュラーズ達。
彼らを待ち受けていたのは、精鋭である12名の精鋭部隊。
「義に歯向かうか、愚者どもが」
そして魔種――メリーズアンだ!
「問答をしている暇はないの。私たちを送り届けてくれた皆の為、他の場所で戦っている皆の為――!」
Erstine・Winsteinが血刀を以って、直掩騎士へと切りかかる! それが戦いの合図となった。
「ゲハハハッ! この最強の山賊、グドルフさまが来たからには、てめえらに勝ち目はねえぜ。おれもボチボチ我慢の限界だ。派手に暴れさせてもらうぜえ!」
グドルフが続く。振り下ろした己の一撃が、直掩騎士の兜を砕いた。兜はひしゃげ、そのまま直掩騎士の一人が絶命する。
「成程、ステータス、スキル……全てわかった。さすが町を守る中ボスに、その取り巻きってとこか。でも」
御剣 涼太はしかし、その手にした武器を構え、不敵に笑ってみせた。
「俺たちには、及ばないさ」
剣戟が、周囲を彩る。魔法と射撃武器が飛び交い、あっという間に周囲は乱戦の渦の中にあった。
「ううっ、なんてひどい狂気……!」
降り注ぐ弓矢を回避しながら、城火 綾花が声をあげた。魔種の近くにいた直掩部隊は、もはや正気を保ってなどいない。恐ろしいのは、その呼び声の影響か――反転するほどではないが、ふつふつと自身の内にも、怒りのようなものが浮かび上がっていることだ。
「呪いの光よ、降り注げ!」
降り注ぐアリア・テリアの赤い宝玉の光が、直掩部隊を撃ち貫く。ふらつく騎士の一人へ、
「貰ったわよぉ?」
ニエル・ラピュリゼルの放つナノマシンが入り込み、エネルギーを吸収。そのまま絶命させた。
「ボクは、守るために……あなたを、傷つけます」
アイラが放つ氷の鎖が、直掩騎士をからみ取る。しかし、狂気に侵された騎士は、自身の身体が凍り付くのすらものともせず、アイラへと襲い掛かった。
「アイラ!」
ラピスが叫び、跳びだした。その身を挺して、アイラを庇う。
「ラピス……!」
たまらず声をあげるアイラへ、ラピスは微笑む。
「大丈夫、僕が護る……君を、全部から!」
「気を付けて、相手の力は尋常じゃないのですから」
羽瀬川 瑠璃の放つ緑の抱擁が、ラピスを優しく包み込んだ。
「少しでも傷を負ったら下がってください……一撃で、すべてを持っていかれかねない……!」
事実、直掩騎士たちの攻撃は苛烈だ。狂気に侵された彼らの攻撃には、躊躇も遠慮も存在しない。
「分かってる。でも、二人は絶対に、護る!」
ラピスは決意を新たに、敵群へと向き直った。
●
イレギュラーズ達の猛攻に、直掩騎士たちは徐々にその数を減じていく。
また一人、騎士が地に倒れ伏した。
「にゃーぅ、にゃぁぁ!」
騎士を殴り飛ばしたのは巨大な猫――陰陽丸だ。
「流石ね、私も負けていられないわ!」
騎士と切り結ぶ、六車・焔珠。陰陽丸は、
「にゃう、にゃーにゃ、ふーっ!」
「分かってるわ! 油断も遠慮も、なしよ!」
言葉と共に振りぬかれた刃が、直掩騎士を切り捨てる。
「数が減ってきた……吶喊するなら、今よ!」
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランドの言葉とともに放たれた暴風が、直掩騎士たちを激しく吹き飛ばした。
「ふふ、ごめんなさいね。でも、オイタはダメよ――さあ、皆!」
ヴァイスの言葉に応じ、イレギュラーズ達は吶喊する――魔種、メリーズアンの下へ!
「戦神が一騎、茶屋ヶ坂アキナ! 手間を掛けさせてくれたわね! あんた一人に、大勢待っているんだからさ!」
「旅人の戦士か、我が義を打ち砕けるものか!」
鼻歌を歌いながら、茶屋ヶ坂 戦神 秋奈はメリーズアンへと『戦神制式装備第九四号緋月』を振り下ろす。メリーズアンは、手にした巨大な槍でそれを受け止める! みしり、とメリーズアンの腕が鳴った。尋常ならざる衝撃がもたらされていたであろうその斬撃に、メリーズアンは耐えて見せたのだ。
「義だのなんだのに興味はない! 私はただ、好きなように生きて、理不尽に死ぬだけ!」
「我が前に立つなッ!!」
メリーズアンの振るう長槍が、秋奈を弾き飛ばす――間髪を入れず、 ライディス・クリムゼン、そして黒星 一晃が飛び掛かる!
「雑魚と思って油断したかよ、なら一噛み喰らわせてやるぜ!」
「名も知らぬ雑兵と侮っているのならばそれでいい。今宵、地獄でそれを後悔するがいい」
ライディスの拳がメリーズアンの態勢を崩した――同時に放たれた斬撃が、メリーズアンの兜、その面を斬り飛ばした。
現れた顔は、壮年男性のそれである。だが、ぎらつく眼は憤怒に彩られ、さながら激憤する鬼のようにも見えた。
「オランジュベネを――ッ!」
切り返しが、二人を弾き飛ばした。振るわれる斬撃が、付近にいたイレギュラーズ達を弾き飛ばす。
「陥落は、させんッ!」
「Pi! PiPiPi!」
ミドリの放つ魔砲が、次なる動きに移ろうしたメリーズアンの足を止めた。
「お互い、もう年じゃ! 此処はヤングマンたちに任せて、引退と行かんか」
諏訪田 大二が諭すように叫ぶのへ、しかしメリーズアンは頭を振った。
「我が槍がある限り、オランジュベネは滅ばん!」
「まぁ、そう言うじゃろうよ! ワシも引退する気なんか全然ないッ! じゃが、ローレットのヤングマンたちは、強いぞ?」
大二が舞うようにその手を振るうと、神の息吹があたりを吹き抜けた。それは、ローレットの仲間たちを鼓舞する息吹。
「皆の事は絶対に守る! だからッ!」
フラン・ヴィラネルは歌声を張り上げた。神聖なる救いの音色が、イレギュラーズ達を包みこむ。それは、イレギュラーズ達の背を押す手だ!
「決めてください! この戦いを……っ!」
シリル=エンフィールドの力が、戦いが、仲間たちを鼓舞し、英雄へと変える。
名も知られぬ勇者たちは、
伏せる龍と鳳凰の雛は、
今まさに、大空へと飛び立つ勇者となる!
「お母さん、力を貸して……皆、いくわよ!」
アルメリア・イーグルトンが魔導書を構える。途端、弾ける魔力の奔流が、心地よくアルメリアの身体を駆け巡った。
「やられる前にやるのですよ。これが私の戦い方です」
襞々 もつのがその手を掲げ、
「残念だが、テメェはこれで終いだ!」
クリスティアン・メルヴィルが掲げる聖石、
三者三葉、それぞれの獲物から放たれる、爆発的な魔力の光線が、重なり、混ざり、溶けあい、強力な一筋の光となって、メリーズアンへと襲い掛かる!
「ぬ――ぅ!?」
一条の光が、メリーズアンを飲み込んだ! 華美なる鎧のあちこちにひびが入り、破片が消し飛ぶ。そして長槍は半ばからへし折れ――しかしなおも、魔種は健在。
だが、この隙を逃すイレギュラーズ達ではない!
「畳みかける」
天狼 カナタの牙が、その鎧を砕いた。あらわになった肉体に、無数の傷が見えた。
「一騎当千、などとは言わない。私は一騎当一、主への想いに身を灼き堕とした、貴方の信念にだけ勝てれば良い」
彼岸会 無量の刃が、メリーズアンの身体へと深く食い込んだ。
「堕ちぬ……墜ちぬ……落ちぬ……終わらぬ! オランジュベネは! 我は!」
最後の力を振り絞って、メリーズアンは無量を振り払った。だが、すぐに片膝をつく……しかしてなおも、なおも、その眼に憤怒は宿り。
なおも、なおも、立ち上がろうとする。
「ううん、もう終わりですよぉ!」
だが、上空より落下する、声があった。
「どっせーーい! 砕けろぉぉぉぉ!」
エナ・イルの大戦斧が、メリーズアンを貫いた。
それは、夜を砕き。
憤怒を砕く。
がは、とメリーズアンは地を吐いた。
そのままぐらりと――。
倒れ伏す。
静かな――。
それは、勝利の瞬間であった。
メリーズアン、倒れる! その知らせは、瞬く間に町中へと広がった。ほんのわずかに残存した、狂気薄い兵士たちは残らず投降し。
バランシェーネの街は、僅か141名の英雄たちにより、奪還されたのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
総勢141名による作戦は、無事完遂されました。お見事です。
そして、今は伏竜鳳雛と例えられ皆様も、此処から大きく羽ばたいていくものと確信しています。
改めて、ご参加ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
GMコメント
洗井落雲です。
決戦の行く末を決めるRAIDバトルです。皆さんには、バランシェーネの街を落し、指揮官である魔種メリーズアンを撃破してもらいます。
●成功条件
魔種メリーズアンを討伐し、バランシェーネの街を陥落させる
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●このシナリオについて
このシナリオはRAIDシナリオです。
決戦及びRAIDシナリオは、他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません(通常全体とは同時参加出来ます)ので、ご注意ください。
●状況
バランシェーネの街に陣取るオランジュベネ軍。皆さんには、この軍を強襲し、その指揮官たる魔種メリーズアンを撃退してもらいます。
主な戦闘個所は、以下の3地点になります。
【1】最前線
バランシェーネの街入り口にて、大量の兵士たちと戦います。
兵士たちは魔種の呼び声に当てられているため、かなり狂暴になっています。
最も多くの敵と戦う戦場となります。
兵士たちは、主に物理属性の近距離攻撃、遠距離攻撃を行います。
此処で敗退すれば、以下の戦場での戦闘は発生しません。
【2】突入戦
街内部の敵を迎撃しつつ、メリーズアンの潜む陣幕を目指します。
走っていて敵とばったり遭遇、という事も有り得ます。
市街地での戦いの準備をしておくといいかもしれません。
兵士たちは、主に物理属性の近距離攻撃を行います。
此処で敗退すれば、以下の戦場での戦闘は発生しません。
【3】決戦部隊
魔種メリーズアンとその直掩部隊と戦闘になります。
メリーズアンの直掩部隊は、さらに深い狂気に陥っています。
敵は強力ですが、総数は少ないです。
直掩部隊は物理属性の近接ファイターと遠距離ファイターが半々くらいいます。
メリーズアンは物理属性の強力な近接ファイターです。
また、メリーズアンは以下の能力を持ちます。
原罪の呼び声・憤怒(弱)
メリーズアンが存在する限り、
【3】に参加したすべての敵味方ユニットの攻撃に、
強制的に『必殺』が付与される。
なお、街中にいる一般人は家から出てこず、戦闘には一切関与しません。敵も一般人を盾に使うようなことはしません。
●プレイングの書式について
以下の書式の通りにプレイングをご記入ください。
書式が守られていない場合、迷子や描写漏れが発生する恐れがあります。
一行目【参加する戦場の番号】
二行目【一緒に参加するキャラの名前とID、あるいはグループ名】
三行目【パンドラ使用の有無】
四行目以降【プレイング】
記入例
【3】
【ファーリナさんとゆかいな仲間達】
有
友と力を合わせてチョップで敵を倒す。
以上となります。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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