シナリオ詳細
<伝承の旅路>サハイェル拠点改造計画
完了
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オープニング
●ステラの決意
「私を、混沌へ乗り込むための『入れ物』にできるってこと」
星の少女ステラの言葉は、名も無き遺跡の中、転がる塵のように響いた。
打ち棄てられたような石造りの遺跡群は静かで、孤独で、けれど誰かを待っていたようにも思えた。
ここは神様に見捨てられた世界、プーレルジール。
勇者はおらず、魔王に支配されつつある滅びに満ちた世界。
そんな世界で、魔王城サハイェルへと至る旅が始まっていた。
この世界を救うための旅路であると同時に、これは混沌世界を救うための旅でもある。
なぜならこの世界の四天王をはじめとする存在は終焉獣に寄生された存在であり、彼ら魔王軍の目的はイレギュラーズを利用して混沌世界へと渡ることなのだ。
終焉獣である彼らが混沌世界へと渡ると言うことは即ち、混沌世界へ大量の滅びのアークが流入することを意味している。そんな事態は、どうあっても避けなければならない。
そんな中で新たに発覚したのが、星の少女ステラもまた、魔王軍もとい終焉獣が混沌世界へ渡るための入れ物にできるという事実であった。
混沌側からの何らかのアプローチがあったのと同様、これもまたそういった者からの差し金だろう。
彼女は星の少女ステラ。
彼女は観測者の『端末』である。いや、あった。
滅ぶが為に生者のエネルギーを身の内に蓄え、終わりへと備える存在。『星界獣』を操る端末機構。
だがプーレルジールには存在しえない可能性のかたち(パンドラ)に触れてしまったがために、端末であるステラのありかたは大きく変わってしまった。
彼女はこの世界の救い方を見いだし、イレギュラーズたちに本来なら難しいはずの奇跡をたぐり寄せるための『死せる星のエイドス』や『願う星のアレーティア』を渡したのだった。
そんな彼女は端末であるがゆえ、世界を渡ることが可能なのだ。
「それを魔王軍が把握しているということは……やはり、ステラさんをも確保しようと狙ってくるということですね」
ハイペリオンはその眉根を寄せ、すこしだけ険しい表情になった。
「もし混沌世界へ渡ることができるのなら、ここから混沌世界へ逃げるのはどうでしょうか」
「ううん、それは……難しいと思う」
ステラは不安げに首を横に振った。
「私はこの世界を見守る端末。その使命があるから、自分の意志で世界を離れられないの。それに、もし混沌世界へ渡ることが出来たとしても、『おおいなるもの』との再接続が行われるから、わたしが今のわたしじゃなくなっちゃうかもしれない」
「それは…………」
試すわけにはいきませんね、とハイペリオンもまた首を振った。
「ヴィーグリーズの丘での戦いを経て、魔王軍はこちらの戦力を把握しています。
かなりの軍勢を仕掛けてくるでしょう。それを耐えきるのは……」
「ううん、できる」
弱気になりかけたハイペリオンの一方で、ステラは星空を見上げながら断言してみせた。
「わたしのことを守るって、言ってくれた人たちがいた。
その人たちは出会ったばかりのわたしに優しくて、強くて、そして……とってもキラキラしてた。
キラキラって、わかる? 世界を救う可能性の力のこと。それがね、眩しいくらいに、いっぱいあったの。
私はそんな人たちと一緒に旅をして、そんな人たちと一緒にいたいって思うようになった。
あのね、わたしはね……」
幼い子供が言葉を選ぶようにして、しかし選びきれずに、ステラはハイペリオンに向けてこう言った。
「あの人たちが……イレギュラーズが好きなの」
これもまた、宣言のようなものだった。
「だから、私は逃げたくない。隠れたくない。あの人たちが戦うなら、私も私の戦いをしたいの」
「あなたの……戦い?」
ハイペリオンが問い返すと、ステラは微笑みすら浮かべて言った。
「この場所を拠点にして、迎え撃つの。魔王軍が私を狙ってくるなら、私が囮になればいい。そうでしょ?」
戦場に立つのは、怖い。
攫われてしまうかもしれない。終焉獣に寄生され自分を壊されてしまうかもしれない。
けれど、それでも。
それでもだ。
「私はみんなの、旅の仲間でいたいの」
●拠点改造計画
コポ――と湯が沸く音がする。
たき火に翳したポットをとって、ステラはコーヒーフィルタに湯を流し込んだ。
暖かなコーヒーの香りが部屋に満ちて、ゆったりとした空気に変わっていく。
これも、旅のなかで覚えたことだ。
「私にとっては、全部が初めての体験だったの。夜の星も、昼の太陽も、砂の上を歩く感覚も。
それを一緒に経験できたことが、うれしかった。この世界を、もっと好きになれた。
そして、あなたのことも――」
ステラはコーヒーカップにあなたの分を注ぐと、そっとあなたに向けて差し出した。
ここは『名も無き遺跡』――そう、名も無き遺跡だ。
影の領域、魔王城にほど近いこの場所に存在する遺跡は、ステラとイレギュラーズたちとの旅の果てに見つけた遺跡でもある。
この遺跡は拠点とするには丁度良い広さと構造をもっていた。
中央に存在する石造りをしたドーム状の建物は救護班の拠点として利用でき、遮蔽物の多い遺跡の構造は防衛に適している。
いまだ周辺に魔物も残っているが、掃討しつつ改造することで魔王軍と戦う際の心強い拠点へと作り替えることができるだろう。
他にも手を入れられる要素はいくらでもありそうだ。
「魔王軍にとって、わたしは格好の獲物になるわ。けど、だからこそ、この拠点に留まることで魔王軍の部隊を引き寄せることができる。
準備をして、有利な条件で戦うことができる」
アウェイであった影の領域の中にホームグラウンドをもてるということは、それだけでも有利な話だ。
準備期間がとれるという意味でも、待ち構えることができるという意味でも。
「只今戻りました」
バサッと翼を羽ばたかせて降りてきたのはハイペリオンだ。
「この遺跡周辺の状況を確かめてきました。魔物は確かに多少ながら残っているようです。
こちらの存在には気付いていますが、まだ積極的に襲ってくる様子はなさそうですね。
私達への牽制……といったところでしょうか。魔王軍の魔物と終焉獣が殆どで、掃討に出るなら場所を案内しますよ」
拠点まわりの敵を掃討して安全を確保するもよし、罠などを張り巡らせて拠点の防衛力を高めるもよし。はたまた中央施設を改良して心地の良い空間を作ってしまうのもよしだ。
この名も無き遺跡を改造し、イレギュラーズの拠点にしてしまおう!
- <伝承の旅路>サハイェル拠点改造計画完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別ラリー
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年10月29日 11時20分
- 章数1章
- 総採用数82人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
遺跡周辺に残存する魔物の討伐は、遺跡の改造にあたって欠かせない要素である。つまりは、安全確保だ。
「少しでも安全に作業ができるように、あとでみなさまとおいしいごはんを食べられるように、ニルは、ここでがんばるのです!」
『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)はミラベル・ワンドを振りかざすと、キラキラとした星空のような輝きがあふれ出た。
群れを成して迫る終焉獣に向けてそのキラキラをぶつけると、『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も続けて攻撃を開始する。
「魔物だろうと終焉獣だろうと、ぶちのめしてやる!」
ヨゾラの力によって形成された『星空の泥』と攻撃範囲をぴったりと重ね合い、終焉獣の群れが激しい泥と混乱の渦に呑み込まれる。
そんな中を突っ切るように飛び出してきた二体の終焉獣。ひときわ強力な個体なのだろう……が、そんな個体の放つ闇色の光線を、素早く前に出た『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)がその身をもって受け止めた。
彼に着弾したと思った瞬間、鏡のような妖力障壁が出現し攻撃を弾く。
鏡禍は妖力を剣状に成形すると、群れの中へと飛び込んでいった。
ニルとヨゾラもまた同時に。
鏡禍の回転斬りによって繰り出された鏡型の妖力体が終焉獣たちを切裂き、しぶとく残った二体へはニルのフルルーンブラスターとヨゾラの星の破撃がそれぞれ命中。粉砕していく。
(拠点構築かあ、なんだか前を思い出すわ。
そう、アーカーシュのお城を拠点として改築したこと。
あの頃はまだ駆け出しで、右も左も分からないなりに、やれることをやろうと思って……)
箒にまたがって飛び、仲間の戦う様子を空から観察していたセレナは急降下をかけて終焉獣の群れへと突撃。
「ま、なんにせよまずは周りのお掃除からね! この箒は伊達じゃない、って見せてあげなきゃ」
祈願結界『vis noctis』を球形に展開。更に魔方陣を無数に展開させると、それらを加速材料にして一気に終焉獣の一個体へと突っ込んだ。
超高速でぶち込まれた一撃はまるで巨大な光の弾をぶつけられたようなもので、結界に押しつぶされた終焉獣がばちゃんと滅びの闇だけを残して飛び散っていく。
と、そこへ。
「お待たせ、手伝いに来たよ!」
『漂流者』アルム・カンフローレル(p3p007874)が杖を担いでたったかと走ってくる。
ハッとして振り返れば、巨大なカエル型モンスターやスケルトンモンスターの集団が反対側から押し寄せているところだった。どうやら戦闘の音に釣られてやってきたらしい。
「さあ、回復は任せて!」
アルムが幻想福音とコーパス・C・キャロル、そしてクェーサーアナライズを駆使して回復を開始すると、それを受けた『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)と『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)がモンスターの集団へとつっこんでった。
「さーてと、今後の為にも魔物倒しておいて、周囲の安全を確保した方がええね。よーし頑張るでー!」
彩陽は地を剔り、宵の星たるその星をも剔れと祈りを込めて作られた弓――もとい『剔地夕星』を構えると、天を穿てと、天に輝く最も明るい星をも穿てと祈りを込めて作られた矢――『穿天明星』ををつがえる。
回復、後衛、前衛、たまたま声をかけあっただけというわりにはきっちり揃った三人組である。
彩陽が矢を放つと、幻影のように大量に増えた矢がモンスターの群れへ向かって飛んでいく。
それらが巨大なカエル型モンスターに突き刺さり激しい声を上げさせる一方で、ヴェルーリアは皆の盾となれるように飛び込みモンスターたちの攻撃を一身に受け止めた。
「――『絶対守護宣言』!」
異世界における魔王に立ち向かう勇者パーティーのひとり、ヴェルーリアのもつ最大の力。つまりは勇気の力を引き上げ、モンスターたちに睨みを利かせる。
目の色をかえて遅いかかるモンスターたちの攻撃を、ヴェルーリアはその杖と魔力障壁でもって受け止めた。
「ステラ様は、皆様との出会いや体験を経て、それを選んだのですね。その選択を私は良いものと思いますし、助けたいと思います。ならば――」
と、舞うようにその場へ飛び込んでいったのは『救済に異を』雨紅(p3p008287)。
彩陽の放つ第二の矢の群れとあわせて舞い踊るように魔物たちを刈り尽くしていく。
(私は、舞と出会って自我と願いを得たもの。勝手ですが少し重ねてしまいますね)
などと思いながらも舞い踊り、全ての魔物をその舞槍『刑天』で払い終えたところで雨紅は息をついた。
「さて、このあたりはもう安全ですよ。ステラ様」
振り返ると、休憩用の水やパンの入ったカゴを抱えてステラが小走りにやってくるのが見えた。
「応援に来たわ、みんな」
「あら、ステラ。外は危ないからあんまりでてきちゃだめよ」
といいながらも嬉しそうにボトルを受け取るセレナ。
「夜を守る魔女の名にかけて。あなたというひとつ星を守ってあげるわ!」
「ありがとうセレナ。さっきも、流れ星みたいに夜を守っていたのね。とっても綺麗だったわ。それに――」
と、雨紅に顔を向けるステラ。
「あなたの舞い、とっても綺麗ね。キラキラを感じて、私、とても好き」
「ありがとうございます」
仮面をつけたまま深々と礼をしてみせる雨紅。
「休憩がてら、いちど拠点にもどりましょうか」
鏡禍がステラからボトルを受け取って微笑む。そして心の中で呟いた。
(少しでも魔物を倒して安全を確保しなくうては。守るって、言ったんです。思ったんですから)
鏡禍の視線に気付いて振り返り、ほっとしたような笑みを浮かべるステラ。
ニルとヨゾラもそれに加わり、一度拠点へと戻ることにした。
「一度戻って、別の場所を掃討するのですね」
「ステラさん! 残りの敵も全部倒していくからねー!」
「うん、がんばってね、二人とも!」
応援なら沢山するから、と両手をグーにしてみせるステラ。
アルムは回復魔法をうちまくって疲れたのか、ふうと息をついて額を拭った。
「掃討がおちついたら、また一緒にコーヒーが飲みたいな」
「戻ったら、一度一緒に飲む?」
「うーん、それも……いい、かも?」
「あっ! それなら私も一緒に!」
ヴェルーリアが両手を挙げてぶんぶんとふる。彩陽がその様子を見てフッと笑った。
「じゃ、一度戻ろうか」
優しくそう言うと、彼らは遺跡へと戻っていったのだった。
成否
成功
第1章 第2節
かーん、かーん――とハンマーで何かを叩く音がする。
「よしっ、パイプが繋がった。水出せそう?」
『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)が声をかけると、井戸のような古代遺物から水が噴水のように吹き上がった。
「よし! これで水回りもばっちり! 特に衛生面が全然違うもんね」
「水道施設を直したいと言い出したときはどういうことかと思ったが……なるほどそういう理屈か。ここが後衛拠点になるなら、怪我人もかなり運ばれてくるだろうしな」
納得したように頷く『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)。
噴き出した水を一度止めると、今度はそれをシャワーや水道施設に繋げに行くというかなり面倒で専門的な作業に取りかかる。
錬がいてくれてよかった案件である。一方のフラーゴラは遺跡として長い間放置された間に溜まったよごれをおとしにかかろうとお掃除セットを持ち出している。こっちもこっちでフラーゴラがいてよかった案件である。
「二人とも、おつかれさまっ。水が出るようになったの?」
そこへ訪れたのはステラだった。
額の汗を拭い、振り返る錬。
「ああ、丁度良いところに。この施設で使われたっぽい遺物があったんでな。なんとか二人で修理してみた。やればできるもんだな……このあとは監視塔作りにとりかかるんだが、一緒に見に来るか?」
「とっても興味あるけど……」
ステラはパンや水のボトルが入った加護をついっと差し出して言った。
「他の皆の応援に行きたいの」
「そっか。それも大事だな。がんばれよ」
ぽんぽんと頭を撫でるように叩いてやる錬。
一方で、フラーゴラはゴラぐるみをぴっかぴかにしてからステラに差し出した。
「わあっ、これが『ゴラぐるみ』? 聞いたことあるわ。かわいい!」
「でしょう? ぽふってしてみる?」
「してみる!」
ぽふっと顔をうめてすーすー呼吸をするステラ。その様子を二人は和んだ気持ちで眺めていた。
成否
成功
第1章 第3節
「土嚢よ! 土嚢を積んで塹壕を掘るのよ! 時間が無いわよ急いで急いで!」
テンションをめきめきにあげた『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が、麻袋に土を詰め込んでは積み上げる作業に勤しんでいた。
「補修が可能なところは石材や土嚢を積んで補強して! できないところには廃材や不要物をぶっこんで入り込めないようにするのよ!
外苑には土嚢を積んで、塹壕を掘るのよ!最低でも腰の深さ!土嚢と合わせて自分の体を隠せる程度に!
それと大きな入口にはあえて土嚢や塹壕を作らず相手が入り込みやすいキルゾーンを作るのよ!
これは私達の資材搬入口にも使うんだからね!」
「おうよ! ぶはははッ、任せな司書殿ぉッ!」
それにこたえて塹壕をひたっすらに掘って掘って掘りまくっているのが『ゴリョウ米神』ゴリョウ・クートン(p3p002081)である。
『ゴリョウ補助腕・十根触手鋼』で土を削っては放り投げるをくり返すさまはちょっとばけもんじみていた。
おかげで塹壕掘りはかなりのスピードで進んでいる。
「石やらなんやらは投石用にもなるからな。とっておこうぜ」
「そうね、わけといてちょうだい。で――」
振り返る……と、『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が大の字に寝転んでいた。
「や、やだーーっ!!
肉体労働したくないーーっ!!
土嚢運ぶの無理だって!ねぇ!
塹壕線は野郎どもにやらせろって!
我物攻マイナス!フィジカルよわよわ♡だって!
じゃあせめて! せめて車を、車両を使わせてくれよ! それくらいはな、な、いいだろ?
ぶぇぇぇ〜〜!!」
ひたっすら手足をばったばたさせたあと、諦めたようにむくりと起き上がった。
「──はぁぁぁぁぁぁ……しゃーない。仕方ない。是非もなし」
どうやらハラをくくったらしい。
「我が手繰るは"万年筆"。『描写編纂』を是とする宿業なれば。
狙撃穴やら休憩所やら、塹壕の重要部には迷彩を施そう。
というかそちらが本業だし。多分。きっと。メイビー」
そういいながら絵筆を手に取り土嚢の壁にぺたぺた迷彩を施し始める幸潮。
「ああ、迷彩か。そういうのもアリだな」
『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)が様子を眺めながら感心したように頷く。
相手はおそらく数に任せて突っ込んで来るはず。そうなれば『見えにくい壁』はかなり厄介な防御手段となるだろう。
「でもって外側の建物を罠に使えるように改造、だな。任せな。悠久を生きたかーさん直伝の知恵と技術、見せてやるよ!」
牡丹がそういってちょこちょこと作業を進めていると、水のボトルをカゴいっぱいに持ってきたステラが歩いてやってきた。
「みんな、お疲れ様。休憩にしない?」
「あら、ありがとう」
ボトルを受け取るイーリン。まだ高速塹壕掘りマシーンと化していたゴリョウにボトルを投げると、休憩よと声をかける。
ふとみれば幸潮がいち早く休憩に入っていた。ちゃっかりしている。
ボトルをうけとり、牡丹は中央のドームを見る。
「そういやあ、あのドームはどうやったって隠しようがねえよな。いっそのこと派手に塗っちまおうぜ。ステラ、どんな模様がいい」
「えっ、決めていいの?」
自分も水をちびちび飲んでいたステラが振り返る。
「おう、なんでも描いてやる。絵は得意だからな」
「ほう」
幸潮が興味深そうに首を突っ込んでくる。ステラはうーんと小さく唸ってから、空を見上げた。
「星……かな」
「よっしゃ、星だな! でかでかと描いてやる!」
こうして、拠点中央ドームの屋根は思い切り星模様に塗られることになったのだった。
水の入ったカゴを抱え、立ち上がるステラ。また別の所へ応援に行くのだろう。
「作業が一段落したら、中央のお部屋に休憩しにきてね。お部屋でコーヒーをいれて待ってるから」
ステラがそう言って小さく微笑む。ゴリョウはおうと言って手を上げ、その手を振ったのだった。
成否
成功
第1章 第4節
「普段なら遺跡に手を加えるってのはあんまり気が進まないんだが
戦いのため…皆を助けるための準備だって思うと全然気にならないな」
などといいながら、『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)は中央の設備に簡易ベッドを作っていた。
その横には包帯や消毒液といった道具が集まっている。
「地味かもしれないがちゃんとした処置をするためにはこういうものは欠かせないからな」
「ン。拠点トスルナラ 医療施設 大事」
そこへずんずんとやってくる『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)。
「薬・食料備蓄 大事。
環境 土質 気候等調査。元カラ生エテル植物等ガアレバ ソチラモ調査。
鳥サン達モ 花ノ種トカ 探シテクレルカナ?」
ちらりと肩に止まった鳥さんに目をやると、ぱたぱた飛んでいく。探しに行ってくれたのだろうか。
どうやらフリークライは医療に使える薬草を採取、あるいは育てようとしているらしい。今から育てるのは流石に時間がかかるだろうが、フリークライに植わってる薬草をちょっと採集するくらいならすぐにできるだろう。他にも、長年遺跡として放置されただけあって草も生え放題になっている箇所がいくつかある。そのあたりを探索してみるつもりのようだ。
「ある意味、キャンプみたい? みゃー」
そういって部屋に寝袋やランタンも持ち込んできてくれる『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)。
「救護施設とは別に、仮眠室もあったほうが良いかな」
「そうだなあ、あるに越したことはないんじゃないか?」
ライの返事を聞いてじゃあ早速、と隣の部屋を仮眠室に改造していく祝音。
部屋を綺麗にお掃除して、キャンプグッズを持ち込んで、石で作られたといってもこうして中にいると案外冷たさは感じないもので、ランプの明かりでぼんやり照らしてみるとなかなかに心地よい空間ができあがった。
(もし大きすぎる石があったらバリケードに使おう。骨があったら、埋葬してお墓を作ってあげなくちゃ)
最後に非常食を部屋の隅に置いて完成。祝音は満足げに部屋を見回した。
その一方で、『覚悟の行方』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)は手に入れてきた布を使って医療設備を整えていた。
「回廊の『キセ洋裁店』とのご縁もあるし、布類を沢山かき集めてきたよ。
怪我人対策にシーツは多めに必要だよね。
敷物とかクッション辺りも充分に準備できたらいいな」
などと器用にちくちく裁縫をしていると……。
「あっ、もうこんなにできてる!」
沢山のベッドが作られていることに気付いたステラが、休憩用の水がはいったカゴをもってやってきた。
「こんなに沢山ベッドが必要になるのね」
「そうだね。それに……」
イーハトーヴは口元をほころばせる。
「拠点ってことは、皆がここで沢山の時間を過ごすってことだから。
俺は俺のやり方で、皆が少しでも身体を休められるようにしたい。
ここが戦いの要になるなら、英気を養える環境を整えるのは重要だと思うもの」
「うん……とっても素敵ね」
ステラは微笑みでそれに応え、そしてイーハトーヴの持っていたオフィーリアに目をやった。
「そのぬいぐるみ、とっても綺麗。沢山、一緒に冒険をしたのね」
「……わかるの?」
「なんとなく。だって、キラキラしてるから」
「そう、なんだ……」
イーハトーヴが見てもそれはただの……といってはへんだが、ぬいぐるみだ。確かに丁寧に扱ってきたし、補修もこまめにやっているが、そういう観点ではどうやらないらしい。ステラ独特の感性があるようだ。
「お水、ありがと」
「サンキューな」
祝音とライがボトルを受け取ってこくこくと飲み始め、フリークライはその様子を眺めながらのんびりと座り込んで休憩に入っている。
おだやかな空気が、ひとときのあいだ流れた。
成否
成功
第1章 第5節
中央ドームの片隅には共有の休憩スペース、通称『ステラの部屋』が出来上がっていた。
キャンプセットを持ち込んでコーヒーを淹れるステラ。
たちのぼる香りは、ステラがこの旅の間に覚えたものだ。
そんなステラの対面に座って居るのは『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)だった。
「この世界は神様に見捨てられた世界だって聞いてるけど私はそうは思わないわ」
「それは、どうして?」
ポットからノアのカップにコーヒーを注いでやる。それを受け取って、ノアは笑った。
「あなたを巡って世界が動いてる中、あなたに出会えたことは多分神様が気まぐれで引き合わせてくれたんだと思うからよ。
気まぐれだから神様は「どうせ何も変わらない」って笑ってるかもしれない。だから神様に見せつけてあげましょう」
「見せ付ける?」
「そう、見せ付けるの」
ビュッと拳を突き出してみせるノア。
「神様の気まぐれから生まれた出会いがとんでもない奇跡を起こすところを、さ!」
コーヒーを飲み終えて、席をたつノア、小さく手を振りながら部屋を出て行く。
「奇跡がどんな形か、まだわからないけど……ステラちゃんと皆が力を合わせたら、きっとできると私は思ってるわ」
「うん、わたしも……あなたと一緒なら、きっと奇跡を起こせるって信じてる。だから、エイドスをあげたのだもの」
「そうだったわね……」
奇跡か。といいながら部屋を出るノア。すれ違いに『せんせー』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)が部屋へと入ってきた。
「初対面だったか?
もしくは久方振りだったか?
兎も角、私はロジャーズ。
ロジャーズ=L=ナイア、芸術家だ。
交流には何が不可欠なのか、問われたならば、嗚呼。
やはりホイップクリームなのではないか。
パンケーキかホットケーキかは人次第だがな。
Nyahahahaha!!!」
開幕からまくし立てて笑ってみせるロジャーズに、大してステラの調子は穏やかだ。
「あなたは……とっても不思議ね」
「そうかね?」
両腕を広げてみせるロジャーズ。
「勇者だとか魔王だとか、云々に関しては、正直なところ、興味は薄いのだがな。私は貴様のような見た目の存在を中々に好んでいる様子だ。
……何処かのわたあめが土嚢をせっせと運んでいたが、さて、私はキリギリスの真似事でもして魅せよう。
歌うべきか奏でるべきか、臓腑を満たすべきか。やはり後者、臓腑が空では、伽藍堂では何も出来ん!
あとは肉か。肉をこんがりと焼くのだよ、貴様!」
と、こんな調子でひたすらロジャーズが喋り、ステラがそれをうんうんと聞いている時間が流れた。
ロジャーズが喋り終え、それではと部屋を出て行ったところで『本と珈琲』綾辻・愛奈(p3p010320)がやってくる。
「愛奈!」
「ステラさん……」
キャンプセットの椅子は二つ。向かいに座り、愛奈はステラの顔をじっと見つめた。
「貴女の選択、今後の戦況を予測すれば正しいのだと思います。
下手に逃げ回るよりも橋頭保で迎え撃つ。
我々は万全の状態で戦闘を行うことができる……ただ」
「ただ?」
「二つ気になります」
ステラのいれてくれるコーヒーをじっくりと楽しみながら、愛奈は気になっていることを口にした。
「ひとつは、押し寄せる敵がどこまで続くか。仮に敵の本丸が出てきたとしてどう仕留めるか。
もうひとつは……貴女自身が、この選択に納得しているのか、です」
ん、とステラは小さくだけうつむく。それは不安や恐怖や、あるいはそれに類する感情だったのかもしれない。けれど浮かべたそれを……愛奈はあえて拭うように言った。
「私は貴女が無理をしていないか、心配です。
貴女自身がキーであるとはいえ、貴女が身を切ることは……いえ。
貴女がそう決めたのなら、旅の仲間としてその意志を遮るのは違いますね」
コーヒーを飲み終えて、愛奈はそっとステラに手を伸ばした。
その手を、きゅっと握るステラ。
「私は、信じてる。愛奈」
「ならば私は、この槍と銃に掛けて貴女を護りましょう。ステラさん」
成否
成功
第1章 第6節
静まる夜の闇を、飛行し駆け抜ける影がある。
「見つけました」
それは夜を這いずるように移動してくるアンデッドの集団を見つけると急降下し、敵集団の中央へと着地した。
名を、『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)。
「本来ならば、夜警はゼロ・クールが担っていた役割かもしれませんが、寄生型終焉獣の驚異がある以上、ゼロ・クールの方たちだけでの夜警も、危険でしょう。
その点、私なら、大丈夫です」
グリーフを取り囲むように展開するスケルトンウォリアーの集団。
それをぐるりと見回しつつ、グリーフは自らの防御を固めた。
一見すれば多勢に無勢。しかし――。
「なにも一人で対処しようというわけではありませんから」
呟くと同時に、『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)の放つシムーンケイジが発動。取り囲んでいたスケルトンウォリアーたちが突然の熱砂の嵐に閉じ込められた。
「早速やってきたよう、です…邪魔は、させません、から…!」
さっきハイペリオンさまを吸ってきたメイメイは無敵なのである。
早速神翼の加護を発動。様々なコスチュームを纏ったミニペリオンの群れが飛び出しスケルトンウォリアーの集団を蹴散らしていく。
その中から飛び出してきた一体の斬撃を飛び退いて回避すると、次なる攻撃も素早く回避する。
「めぇ……ステラさまのご覚悟、お伺いしました……。
ならば、わたしも、ステラさまと共に戦い、貴女を守り抜きます」
そこへゆらりと現れる『死神の足音』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)。
「俺はただ、破壊する。
そこに俺たちを――同胞を脅かす敵が存在するのなら、俺が全てを壊してやる。
守るなんて言葉はもう捨てた。勝ち取れ。
我が同胞たちよ」
超高速で飛び出したブランシュはスケルトンウォリアーの腕を切断。したかと思うとそのまま首や足を次々に切断しバラバラにしていく。
「俺は死神。魔王と相対する為の勇者でもない。
ただ平等に死と暴力、自由、正義、平等を求めんとする者!
生き残りがいるなら魔王とやらに伝えておけ。
同胞を脅かす者全ての首を落とすと!
我が名は――タナトス!」
完璧に見栄を決めたブランシュ。その一方で、戦場へ戻ってきた『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)が戦闘へと加わった。
「ステラ様といっしょにたべるごはんは「おいしい」ので、ニルは元気いっぱいです!
引き続き、安全確保、がんばるのです」
相手も対抗してか終焉獣が複数体纏めて出現してきたが、そういう事態の対処をニルたちがしていないわけがない。
「まとめて、えーい!」
ケイオスタイドの術式を発動させ、突進してくる終焉獣たちを纏めてファンブルだせると、返す刀でアンジュ・デシュを発動。
激しい重圧と呪殺の痛みによって終焉獣たちが苦しみの声を上げ始めた。
それでも残った終焉獣が人型の身体を駆使しニルへと迫る。
が、ニルは退かない。どころか握ったミラベル・ワンドに力を込めて、えーいと終焉獣に殴りかかったのだった。
込められた力が爆発し、終焉獣が吹き飛んでいく。
そこへ終焉獣たちの反撃が始まろうとする――が。
連続で打ち込まれた銃弾に終焉獣が思わず進めていた足を止める。
「貴女が綺麗だと言ってくれたこの槍と銃に誓って……
ええ。やってやりましょう。お姉さん頑張りますよ」
『本と珈琲』綾辻・愛奈(p3p010320)である。握ってくれた手のぬくもりを思い出しながら、愛奈は敵陣へと突っ込み銃を撃ちまくる。
そんな愛奈を仕留めようと首を狙って繰り出された鋭い鉤爪は、スライディングによって豪快に回避。そのまま身体をひねって相手に銃弾を零距離で浴びせた。
素早く立ち上がり、手槍による白兵戦に切り替える愛奈。
「ええ。大丈夫。ステラさんが……旅の仲間が覚悟決めてるんです。私だって」
そうだ。ステラが覚悟を決めたのは、自分達の……愛奈たちの背中を見ていたからだ。共に旅をして、綺麗な世界を知ったからだ。
ならば、もう迷う必要などあるまい。
「奇跡を起こすためにも、それを起こすための下地づくりは入念にしておくに越したことはありません。愛奈が頑張るなら、ノアさんも頑張っちゃうわ」
そこへ加わったのは『春色の砲撃』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)であった。
ノアは腕を振り上げると『禁断ノ奇跡』を発動。ノアの背部に展開されたこれらの装備が激しいチェインライトニングの雷をまき散らす。
「来なさい、メタル・カオス・ワイバーン」
走ってきたメタル・アクセル・ワイバーンが素早く変形し翼竜形態をとる。それはノアへと装着され、ノアは空を舞うように飛び回りながら愛奈の集めた敵めがけて魔力砲撃を発射する。
「私は何にも出来なかったかもしれない、だけど…覚悟を決めて戦ってる友達がいるのに、私だけ本気を出さないまま終わるなんて、嫌だから、ねぇ!!」
砲撃は、終焉獣たちを貫いていく。
成否
成功
第1章 第7節
『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が作ったのは見張り台だった。
元々建設が予定されていただけあって専門家たちも多く、それらの力を借りつついわゆるヤグラを組んだわけであるが、梯をつかって昇ってみると夜の眺めはかなりのものであった。
「とりあえずはヒモとベル、それとランタンがあればいいですね」
「これは、見張り台?」
そこへ様子見をしに来てくれたのはステラだった。
休憩ができるようにと水とパンの入ったカゴを持って、梯を昇ってやってきた。
そして星空を見上げて呟く。
「とても、いい景色ね……」
「そうでしょう? 夜になったら星が綺麗に見えると思ったんです」
「うん、とっても。それに……あなたも綺麗よ」
突然そんなことを言われ、シフォリィはきょとんとなった。
「とてもキラキラしてる。奇跡と救いの可能性で、いっぱいだわ」
「そう、なんでしょうか」
二人は暫くの間、星空を見上げていた。
成否
成功
第1章 第8節
「地下道はないけれど、地下室はあるんですね……」
エコーロケーションで遺跡の地下を調べていた『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は、遺跡中央ドームの地下にもう一部屋存在することを発見した。
「地下道が無ければ進行ルートもなしということですし一安心ですが……ここはそもそもどういう部屋だったんでしょうか」
納骨堂のようにひんやりとして静かなそこは、少し不思議な雰囲気だ。
特に隠し部屋というわけでもなかったので、ワインの貯蔵庫か何かに使われていたものだろうか。
トールはひとまず地下にランタンを置き、ここを利用できないか仲間に尋ねてみることにした。
ほとんどは救護スペースや仮眠室や遊戯室になっているが、それ以外にも使い道があるかもしれない……と。
「部屋の広さはなかなかですね。いざという時に逃げ込むスペースとしても使えそうですし、食料の貯蔵にも使えそうですね」
早速部屋を出て、仲間たちに知らせに行くトールであった。
成否
成功
第1章 第9節
「遺跡の改造!! それは楽しそうだわ、この遺跡を私好みの色にちょっとだけ染めてやろうじゃないの!!」
『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は早速塹壕の強化に入っていた。
壁面が土のままでは強度不足なので適当な材料で補強し、爆弾を作ってトラップを設置。
「地雷、有刺鉄線、塹壕、これぞ地獄の塹壕戦よね♪」
「おー、やってるな」
『蛇喰らい』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が塹壕へとやってきた。皆考えることは同じというものなのか、やっぱり罠を設置したりバリケードを作ったりという基礎的なところは外さないのである。
「遺跡を一周するレベルの塹壕がすぐに掘れるか心配だったが、これだけ人手があればなんとかなりそうだな」
「でしょう?」
「人手が必要か? それなら……」
『狂言回し』回言 世界(p3p007315)が周囲の土の精霊に呼びかけて土をできるだけ柔らかく変えていた。直接的な労働力になるレベルの精霊は呼び出せなかったが、労働をしやすくする程度のことはできる。
「防衛戦か。比較的得意な方ではあるが……この規模は初めてだな。
面倒だし他の面子に任せきっても恐らく問題無いだろうが、エイドスとかを貰った恩があるしみすみす魔王軍に手渡すというのもそれはそれで癪だ。
微力でしかないが力を貸そう」
「おー、そりゃありがたい」
「精霊の力を借りるって手もあったのね。これはちょっと知見が広がったわ」
感心したように頷くイナリ。
「おまちどうさま、鉄帝から運んできたギアバジリカ鋼です。
なにせ要塞一つ分、山ほどありますので外壁や土嚢の外側にでも張り付けて頂ければ」
そこへやってきたのは『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)。塹壕の強化に使える素材を抱えてやってくる。
「馬車にまだ沢山詰んでありますからね、これに加えて土嚢を山ほど用意すれば、かなりの防御拠点にできるでしょう」
「なるほどなあ、悪くない」
『紅風』天之空・ミーナ(p3p005003)が様子見にやってくる。彼女も彼女で塹壕をバキバキに強化しに来てくれたエキスパートである。
「そういやアーカーシュでもこんなことあった、かな」
アーカーシュでやったのは魔王城の改造だったか。あのときは本当にやりたい放題やったものだが。
「そういえば、ここは、過去の混沌世界なんだっけ?」
だとするなら。まさか、の可能性だけど。
魔王城が近くにあり、遺跡がある…浮遊する前のアーカーシュ……なんてことは。
流石にないよね。
遺跡の形も記憶しているアーカーシュのものと大きく違うし、規模もかなり違う。ミーナは肩をすくめて自分の考えを否定した。
そうこうしていると、ステラが水の入ったボトルやパンをカゴに入れてやってきた。
「皆、お疲れ様。休憩にしない?」
「あら、ありがとう」
イナリが手を払っておしぼりを受け取って手を拭うと、ステラの持ってきたパンに手を付ける。
どうやらステラはサンドイッチの作り方を覚えたようで、それを作っては運んでをくり返しているらしい。
「あら、ハムとチーズ。悪くないわね」
「では私も頂きましょうか」
瑠璃もサンドイッチを手に、図面を広げる。
空から観察して書かれたという簡単な図面だが、そこに塹壕が書き足されている。
世界は腕組みをしながらその塹壕の様子を確認した。
「進捗は……悪くないな。魔王軍を相手取る時には充分に防御を発揮するだろう。流石に塹壕戦になるとは思えんが」
「仕掛けまくった罠もあるしな。これらはあくまで足止め用だ。本番でモノをいうのは結局私達の実力だからな」
そう、水を飲みながらミーナが言った。
バクルドが線を描きながら言う。
「ところで提案なんだが、この辺を迷路状にして敵の侵攻を邪魔するのはどうだ。戦ってる連中の話を聞く限りじゃ、空を飛ばないタイプがかなり多くを占めてるみたいだしな」
「いいかもしれないな……」
と、こんな具合に塹壕と罠は着々と遺跡まわりに設置されていくのであった。
成否
成功
第1章 第10節
「遺跡を改造だよ。とはいってもいきなり罠やトラップを作るより、まずは居住環境をなんとかしなきゃだよね。
お部屋を綺麗にして、まずは食料庫!
保存の効く食べ物をどんどん運び込もう!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)は背負っていたリュックサックから次々と水のボトルやカップラーメンを取り出していった。
「これだけだと飽きちゃうからボクの好きな物もいっぱい食料庫に入れておこう。
ビスケット、クッキー、チョコレート、キャンディ……あっ、ドーナツはどうしよう!」
食料庫におやつを積み上げていると、そこへステラがちょこんと顔を出した。
「何をしているの?」
「あっステラちゃん。えっとね、これは……味のチェック?」
クッキーの箱を開いて一枚ぱくついていたセララは小首をかしげた。
「ステラちゃんも食べる? 美味しいよ!」
「う、うん、じゃあ一枚だけ……わっ」
クッキーを一枚口に入れて、ステラは目をパッと見開いた。
「食料はある程度提供されてるが、それを調理する場所がねぇな
戦いにおける『食』は重要だ
こと防衛線においては守る側ということもあって士気が下がり気味になるんで、『温かい料理』こそが対策となる
ところがこいつが冷や飯になると単なる『義務的な栄養補給』になり下がる
車にガス突っ込んでいるのと変わらんなるわけだな」
といった具合に訥々と語りながら調理道具やコンロを並べていくのはそう、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)である。
ある意味これも陣地構築、なのだろうか。
遺跡には元から調理場のようなスペースがあったらしく、そこを修理したり改造したりくっつけたり……色々やっていくうちにゴリョウが満足出来る程度のキッチンが出来上がった。
「ゴリョウ! キッチンを作ってるって本当?」
そこへステラが顔を出しにくる。
「おう、できてるぜ!」
「本当だ!」
わあ……といいながらキッチンを見回すステラ。
「これで『ほすとくらぶ』もできるわね」
「ほすとくらぶ?」
目を点にするゴリョウ。
「うん。いま、作ってる所らしいの」
「今宵は『シャーマナイト』サハイェル支店へご来店いただきまぁことにありがとうございます!」
マイクを手にテンションを爆上げにするホスト、もとい『無限ライダー2号』鵜来巣 冥夜(p3p008218)。
「ミュージック!」
「な、何!? わかった……!」
『君を全肯定』冬越 弾正(p3p007105)が慌てて彼のテーマソングというかホストソングを流し始めると、店内が上品なライトで照らされ始める。店内とか言っているが、場所は例の遺跡の中央施設の一角である。
ここの休憩スペースを改造してホストクラブにしようというのが彼らの狙いであった。
そう。自由に改造させるとホストクラブを作り始めるのがローレットの自由さなのである。
「まさか拠点にホストクラブを設営する事になるとは。冥夜殿も商魂たくましいな」
「料金は取りませんから、商売ではありませんよ弾正」
「まさか遺跡くんだりまで来てやる事がホストクラブの内装プロデュースとはな。
これも芸術の一環だと思えば悪くねぇか」
やれやれといった様子で内装を担当しているのは『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)である。
美術や色彩感覚がある彼にかかれば短い時間でもがらりと印象の変わったホストクラブのできあがりだ。指名するための写真は精密模写でかき上げ、ナンバーワンの座にはしっかり冥夜が座って居る。
「で、ホストはどこから調達するんだ?」
「それはもう、顔の良いゼロ・クール様たちを」
「マジか」
弾正の担当はゼロ・クールたちにホストクラブ用の衣装を仕立てることであった。
「店内音楽は俺が引き継ごう。生演奏の方が盛り上がるだろう」
そう言ってベルナルドは楽器を手に演奏を始めた。マイクを握る冥夜。
「これが『ほすとくらぶ』?」
お客第一号としてやってきたのはステラだった。ホストクラブには早すぎる年齢かもしれないが、それでも接客に手を抜かないのが彼らである。
よしきたとばかりにベルナルドが上品でかつアップテンポな音楽を演奏し始め、弾正がスーツ姿で席へと案内する。
「ようこそいらっしゃいました。ではホストクラブ名物――参りますよシャンパン・コール!!」
冥夜がシャンパン(この場合はノンアルのやつ)を取り出し弾正と共にコールを開始する。
そうこれこそが『シャーマナイト』サハイェル支店なのである。
成否
成功
第1章 第11節
「ステラさん、会いに来ましたよ。気分はいかがですか?」
イレギュラーズたちが好き勝手に改造した結果娯楽室と化しつつある休憩室の片隅で、ステラは『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)を出迎えた。
「いらっしゃい、鏡禍。約束通り来てくれたのね。座って、コーヒーをいれるから」
既に椅子やテーブルまで整っているらしく、用意された椅子に座る鏡禍。
「ステラさん」
コーヒーをいれるステラを見ながら、呟く。
「どんな危険なことでも僕はあなたの意思を尊重しますよ」
「どうしたの? 急に」
苦笑するステラに、続ける。
「僕らはどんな無茶だって乗り越えてここまで来てるんですから。
それに心配してません。
ステラさんが自分の身を囮にしようというのなら、そばで守るのは僕の役目だとも思ってますから」
「……ありがとう、鏡禍。わたしね、本当は怖かったの。
けど、こうして守ってくれるって、信じられるから……。
だから、今はすこし安心だわ」
「そう言ってくれると嬉しいです。
僕はあなたという星を守る鏡の盾になりますから」
鏡禍は微笑み、だされたコーヒーに口をつけた。
成否
成功
第1章 第12節
「ここに鳥小屋を設置して……っと」
『銀すずめ』ティスル ティル(p3p006151)が整えているのは小鳥や小動物たちの住処の調整だった。
いわゆるファミリアーを使いやすくするための環境調整である。
案外忘れられがちな、それでいて丁度良く需要をついた作業といえるだろう。
「この子たちも、魔王軍が来たら遺跡に逃げ込まないといけないわ。
遮蔽物だらけ、罠だらけの場所を無事に駆け抜けるなら、平穏な間の訓練が大事よ。
ファミリアーを見捨てるのは、あんまりしたくないの」
そう言って、動物疎通を使って小動物や小鳥に対して遺跡の内側へ逃げ込むための訓練を開始した。
小さな穴から逃げ込んだり、空を飛んで中央の施設へ逃げ込んだり。
こうして訓練した小動物たちは、きっと本番では索敵や監視に活躍してくれるに違いないだろう。
成否
成功
第1章 第13節
「そろそろ罠を拡張していこうかな、っと……」
ぐいーっと背伸びをした『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は、遺跡外周部にナリコの罠を仕掛けて回り始めた。
といってもこれは奇襲対策。本番となれば両者身構えての大襲撃ということになるはずなので、そういった事態に備えて拒馬めいたものを遺跡外周部へちょこちょこと設置していく。
「塹壕に土嚢に拒馬って……なんだかすごい要塞って感じになってきたなあ……あ、そうだ」
フラーゴラはもうひと頑張りとばかりに投石機を用意した。塹壕掘りや遺跡整理の際にやたら出た石をぶんなげる装置である。
乱戦状態になる前となれば、これも使い勝手が出るだろう。
と、そんなことをやっていると……。
「あー、ここに投石機で、ナリコに拒馬な。拒馬ってなんだ?」
『点睛穿貫』囲 飛呂(p3p010030)が配置をメモりながら通り過ぎていく。
「なあ、射撃に適したスポットないか? こう、高くて射線が通りそうな所だよ」
「それなら……」
「ふむ、案内しよう」
そこに現れたのは『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)だった。
『海の不発弾』深海・永遠(p3p010289)と協力して施設内の案内表示を作って回っているところであるらしい。
「もういろいろできてきたんだよ。地下室も見つかって手が入ってる所だし、物見台? も出来たらしいし、あちこちわかりやすいように看板立てて回ってるんだ」
永遠の言うように、彼は持ち込んだ木材を使って看板を作り、分かりやすいように幸潮がペイントしつつそれら標識を建ててまわっているということらしい。
敵に向けた設備というより、味方に向けた設備である。実際あちこちに色々カオスに作っているので、案内がないとすぐに迷いそうなのだ。なにげにファインプレーである。
と、いうことで飛呂への射撃ポイント案内の続きだ。
「やはり中央ホールの屋根がいいだろうな。あるいは見張り台だが、あそこは倒されやすいから注意だ。
どちらも陣取りやすく射線も通る。遮蔽物がないのが困る所だが、用意できそうか?」
「そこはなんとかする」
飛呂はありがとうなと手を振って、中央の建物へと歩き出した。
「正直、よくはわかってないんだけどな……」
呟いて、ふと気がついた。ステラが休憩用の水とパンをカゴに入れて歩いているのが見えた。
ちらりと、目が合う。
そして一言。
「あなたの銃、綺麗ね」
担いでいた銃をさして、ステラは一言そういった。
かなり急な、そして珍しい言われかたにきょとんとしていると、ステラは続けた。
「あなたと冒険をしたがってる。今も、嬉しそう」
そうとだけ言って、ステラは歩いて行ってしまった。
銃に触れ、ふと考える飛呂。
「冒険……か」
言われて見れば、あちこち行ったな……と思い返し、ついには異世界かと、中央施設の屋根を見上げるのだった。
成否
成功
第1章 第14節
『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)が大量の衣服を運び込み、部屋の隅に積み上げている。
(戦闘拠点だからな。戦闘での破損やら返り血やら血まみれやら怪我人用のゆったりしたのやらでいっぱい替えの服もいるだろうと縫ったりフリーサイズで仕立てたりしてたが……)
ふと、休憩室に戻ってきたステラの顔を見て牡丹は思いついた。
「ステラ、こっちこいこっち」
「牡丹? うん」
ちょこちょこと小走りにやってくるステラ。彼女を素早く採寸すると、牡丹は早速服を作り始めた。
「何をしてるの?」
「服だよ服。ステラって服そんなに持ってなさそうだろ?」
「私も、新しい服を着れるの?」
「そういうこった!」
「わあっ……ありがとう、牡丹!」
ステラがぱっと顔を明るくするのを見て、牡丹もフッと笑みを浮かべた。
「星柄もいいが、イメチェンも楽しいぞ!
せっかくだから混沌の各国風の衣装とかもいいな!
プーレルジールを離れられなかろうが行った気分になれっからよ!」
成否
成功
第1章 第15節
「ああいうのを見てるとほのぼのするわ……そういえば、覇竜だのなんだので、わたしたちの日常を知ってもらう事がその後に繋がった、っていうのは何度か見かけたわね。
同じ釜のメシを食うじゃないけど。相互理解って大事ね」
うんうんと深く頷いた後、そういえば、覇竜だのなんだので、わたしたちの日常を知ってもらう事がその後に繋がった、っていうのは何度か見かけたわね。
同じ釜のメシを食うじゃないけど。相互理解って大事ね。
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は満足そうにステラの服が作られていく様子を眺めていた。
そして、くるりと振り返る。
「その邪魔にならないように私は私の仕事をするわ。チェンジ――覚悟(デタミネーション)メイドモード!」
イーリンは早速石鹸やアイロン台を設置し始める。
「衛生! 衣服! 衣食住全部ここで賄うんだから洗濯拠点も作るわよ! 動線確保!」
といった具合にアイテムを揃えていっているそばで、『白のサクリファイス』ルブラット・メルクライン(p3p009557)もまた設備の整備に余念がなかった。
「さて、必要になるのは医療用の拠点。広い救護室……だな」
持ち前の医療知識をフル活用して、薬を持ち込んだり道具を持ち込んだりと設備を自分なりに拡張していく。
混沌の医療のヤバイ所は『いろんなやり方が全部通る』と言うところである。
なので自分に適した作業環境は自分で作るのがベストなのだ。
「こうやって皆で拠点を作り上げていると、アーカーシュの魔王城での時を思い出すよ。
今回はむしろ魔王城からの敵を迎撃する側だが……そうだ、この拠点に名前はあるのかね?」
そう呼びかけてみると、大量の布を鞄一杯に詰め込んで歩いてきた『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)がきょとんと首をかしげた。
「そういえば、『名も無き遺跡』のままでした」
「なるほど、ふむ……」
なにやら考え事をするルブラット。一方でアレストは着々と大量の布をストッカーへと放り込んでいた。
あとは収納スペースを確保したり、すぐに取り出せるようにチェックしたりという作業だ。
そうしていると……。
「メアリ、オフィーリア、マシュー、ボボ! お手伝いよろしくね!」
『覚悟の行方』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)が物資の修繕を始めていた。
所謂『繕い物屋さん』である。
「服が破れたりしたら持ってきてね、すぐに直してあげるから」
衣服類がとにかくどかどか溜まっていくが、中には破れた衣服なんかもあるので今のうちに直しておくのが良いだろう。
イーハトーヴが早速作業にかかっていると、服を作って貰ったらしいステラが『見て見て!』といって小走りにやってきた。
少しエスニックな衣装を着たステラがイーハトーヴやアレストの前でくるりと回ってみせる。
「作ってもらえたの。私、服を作って貰ったのなんて初めて」
「わあっ、よかったね。とても似合ってる!」
イーハトーヴたちは穏やかな笑顔を浮かべるのだった。
成否
成功
第1章 第16節
『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)がその無数の触手を伸ばしながら休憩室へと入ってくる。
その様子に、ステラはパンや水のボトルを補充する手をとめた。
「はじめまして。あなたはだあれ?」
「……」
観測端末は中央にある巨大な瞳を瞬きさせると、自らの名前を述べた。
「ステラサン、アナタニ、会イタカッタ。同ジ、『端末』トシテ……」
そこまで述べてから、続く言葉に迷う観測端末。迷ったのか、言おうとして忘れてしまったのか。いずれにせよ、声をはさんだのはステラのほうだった。
「そう……あなたも、見守ることが役目だったのね。わたしと一緒ね」
「……」
もう一度瞬きをして、そして言おうとした言葉を思い出す。
「友達ニ、ナッテモラエマスカ?」
触手をそっと伸ばす観測端末。
ステラはそれを掴み、そっと握手を交わした。
「うん。なりましょう。同じ端末として。お友達に」
成否
成功
第1章 第17節
「ステラ君、もうすっかりコーヒーは淹れ慣れたみたいだねぇ」
そんな声がかかって、ステラはハッと顔をあげる。
「アルム。来てくれたのね」
「うん。お呼ばれしていたしね」
アルムはステラの向かいに座ると、入れてくれたコーヒーを前に持ってきたミルクを入れてみせる。
「コーヒーのアレンジも色々あるんだよ!
これはあったかいミルクをたっぷり入れたカフェラテ!
ここにお砂糖を入れるともっと甘くて美味しいんだけど」
そんなのがあるのねと珍しがるステラに、もう一つと小袋を取り出すアルム。
「今日は金平糖を持ってきたんだ!
ステラ君みたいに、キラキラしてて綺麗でしょ?
お砂糖代わりに飲み物に入れるのも、素敵だと思うんだ。はいどうぞ」
「わぁっ、ありがとう……本当にお星様みたいね」
キラキラと目を輝かせる。その、星の散った瞳を。
「ステラ君は、どこか俺と似てる気がするんだ。
……自分の使命から外れることを選んだけど、その……怖く、ない?」
「……」
ぴたりと動きを止めるステラ。
「滅びを見守るのをやめて、滅びを防ぐ立場になってさ。
俺は自分のこと、まだ分かってないけど……使命から外れるのって勇気がいるなと思ってさ。
すごいことだと思うよ」
「……わたしも、本当はね。こわいの。けど、あなたが」
「俺が?」
「そう。あなたが、世界を救えるって思ったから。怖いけど……選んだの」
金平糖をわけあって、手のひらに載せてみせる。
「そうしたら、こんな素敵なことに出会えた。怖い選択も、悪くないよね」
成否
成功
第1章 第18節
偵察をして回ったところ、周辺に残っている魔物もあと僅かということらしい。
「働きがいが出てきたのよ」
残った魔物を見つけ出し、早速襲いかかる『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)。
コボルトの一体がこちらを見つけ応戦態勢に入るが、胡桃が殴りかかる方がはるかに早かった。
『あふた〜ば〜な〜』を付与しボッと片手に炎を灯す。青き炎はコボルトの顔面へと叩きつけられ、そこからの凄まじいラッシュ。
殴り飛ばされ宙に浮き、そのまま地面へと戻れなくなったコボルトをひたすらに殴り続けると、最後は炎を帯びた回し蹴りによって吹き飛ばした。
「コボルトは流石に食べられなさそうなの。もっと食材調達に向いた……」
と振り返った途端、眼に入ったのは巨大な猪型のモンスターだった。
好都合とばかりに殴りかかる胡桃。
攻撃は直撃したが、対する猪型モンスターは胡桃をふき飛ばすべく突進を開始。
初撃はなんとかかわしたが、次は――と言うところで、『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)が颯爽と現れた。
腕のアームドコンテナを展開。折りたたんでいた盾を腕に装備すると、ガード姿勢で猪の突進を真正面から受け止める。
「へぇ、ここを魔王軍と戦う拠点とするのね。
それなら少しでも魔物を削らないといけないわね、それに久しぶりの白竜城塞スタイルの肩慣らしにもね」
白竜城塞スタイルはその名の示す通り白き竜を意識した鎧と盾、そして突撃槍で固めたスタイルだ。
高い防御力はレイリーの基本スタイルとも言える。
「私を倒さない限り、絶対に誰も倒させないわよ!」
と、そこへ仲間の攻撃が炸裂する。
『狂言回し』回言 世界(p3p007315)の『ネイリング・ディザスター』だ。
(罠を設置した後は魔物退治と行くか。安全確保は重要なお仕事だからな。
ついでに周囲の地形の確認と気晴らしの散歩も兼ねれば一石三鳥だ。
まあ魔物と戦うせいで気晴らしになるかは若干疑問ではあるのだが)
幻影の刀が猪に刺さったかと思うと、込められた呪力が炎のように燃え上がり猪を包み込んでいく。
そこから更に、幻影武器を次々に作り出しては放つ世界。
遠距離攻撃主体かと思いきや、そのまま距離をぐっと詰めて、幻影の刀で猪を斬り付けた。込められた魔力が爆発し、猪をざっくりと切断する。
「それにしても……猪? これも魔物なのか?」
「魔物は魔物でも食べられる魔物なの」
胡桃が自信満々に言うと、そこを狙ったかのように数体の魔物が攻め込んできた。
コボルトの集団である。先ほど倒した個体の仲間だろう。
が、こちらとて仲間はいる。
「ニルは眠らないので、いつでもどこでもがんばります!
夜のきれいな星空も、朝焼けの白い空も
今日のニルはひとりぼっちではないのです
だから、がんばるのですよ」
飛び出してきた『おいしいで満たされて』ニル(p3p009185)が『ケイオスタイド』を発動。突進してくるコボルトたちが泥に足をとられた隙に、ぴょんと跳躍して距離を詰めにかかる。そう、至近距離で『フルルーンブラスター』を叩き込むためだ。
「ていやー!」
爆発した魔力がコボルトを吹き飛ばす。
それだけではない。翼を羽ばたかせた『いつか殴る』Lily Aileen Lane(p3p002187)が空から急降下をしかけ、コボルトの一体を破壊。
どうやらステラを連れてきたらしく、『巨星の娘』紅花 牡丹(p3p010983)に守られる形でステラが見守っている。
「頑張って、みんな!」
「おう、任せな――!」
牡丹は魔物の探索に精を出してくれていたようで、このコボルトたちもそれで見つけたものだ。
片翼を広げ、腕に炎を纏って急速に突進する。
その名も『輝くもの天より堕ち』。
コボルトたちを引きつける技だ。
大半のコボルトを引きつけたところで、牡丹が大きく距離をとる。
「花火って知っているです?」
ふとLilyがそんな声をステラにかけた。
きょとんとするステラに、にこりと笑いかけてから……。
「ちょっと違うけど…コホン。た~ま~や~」
火葬・白花曼珠沙華を構え、全弾発射。
大量のミサイルとガトリング砲の嵐がコボルトたちにぶちかまされ、派手な花火となって爆発する。
「わっ」
びっくりして転びそうになった所を、牡丹がそっと支えてやった。
「綺麗な花火、ってやつだな」
「ふぅ、どうか安らかに……」
手を合わせ使者に祈りを捧げるLily。
ふと見ると、胡桃が猪を早速捌き始めていた。
「食料の現地調達なのよ。
ステラ、わたし思うのよ。
死せる星のエイドスがパンドラによる奇跡を以て滅びを退ける力となるならば。
滅びの可能性の具現たる終焉獣には特に影響が大きいとするのならば――。
終焉獣に食材適正を付ける奇跡もあるのではないか、と」
今のは運と実力だと思う……とは牡丹は言わなかった。帰ったら猪鍋だ。
成否
成功
第1章 第19節
「ステラ殿ー! それがし、芍灼と申しまする! どうぞよろしくお願いするでござるよ!」
結構なテンションで駆け寄ってきた『忍者人形』芍灼(p3p011289)。
ステラの姿を休憩室に見つけると、両手をがしっと掴んで上下に振った。
にっこりと笑って芍灼の握手に応じるステラ。
「あ、こちらは手土産のじゃがいものパンケーキにござる。食べ物の摂取する機能はおありで?」
「うん、食べられるわ。ありがとう。えっと……じゃがいもの、ぱんけーき?」
「おいしいでござるよ!」
手を握ったまま、芍灼は続ける。
「それがし、お礼を申し上げに参りました。それがし達に奇跡を起こす手段を与えてくれてかたじけない。
ステラ殿のおかげで、終焉獣に寄生されたゼロ・クールにコアを破壊する以外の方法を取れる様になったでござる。
いわばステラ殿は恩人でござる! 恩は3倍以上で返せとマスターより仰せつかっておりますゆえ、それがし、全力でステラ殿をお守りいたしまする!」
「ううん。吸いの可能性をもたらしたのはあなた。わたしはそれを助けただけ。お礼を言うなら、きっとわたしのほうよ。ありがとう、芍灼」
成否
成功
第1章 第20節
「ステラさま、お料理、一緒にしてみません、か?」
そうおずおずと申し出てきたのは『ちいさな決意』メイメイ・ルー(p3p004460)だった、
「お料理? いいの!? やってみたい!」
わたしまだコーヒーしか淹れられなかったもの、とメイメイと一緒にるんるん気分でキッチンへ。
「戦いから戻った人の為、拠点構築を頑張っている人の為。
夜は温かなものが良いでしょうから、具沢山のスープにしましょう」
「スープ?」
「ミネストローネを作りましょう」
「楽しそう!」
二人はお喋りをしながらミネストローネ作りを始めた。
「ステラさまはわたし達の事をキラキラしている、とおっしゃっていました、が。
ステラさまの方こそ、わたしにとっては、お星さまのよう、で。
……ふふっ。成程、おそろい、なのかもしれません、ね」
「ふふっ、そうかも」
最後に味見をして、うっとりと目を瞑るステラ。
「料理の作り方をおしえてくれて、ありがとう、メイメイ。わたし、あなたのそんな暖かいところ、好き」
瞳を開いて、ステラは微笑むのだった。
成否
成功
第1章 第21節
遺跡の休憩室。『狙われた想い』メリーノ・アリテンシア(p3p010217)と『心よ、友に届いているか』水天宮 妙見子(p3p010644)はステラのもとを訪れていた。
「あらあら! はじめましてステラちゃん! そろそろみんなお疲れの頃かと思って、おやつを持ってきたよぉ。ちょっとフライングなんだけどね!」
そういって持ってきたクッキーをひろげるメリーノ。
「ステラ様……私と同じ観測者で星の端末という立場、さぞ大変でしたでしょう。
私もそのように長い時を過ごしてきたのですから…同じような存在の貴女が目覚めてくれて私はとても嬉しいのです」
そういいながら、妙見子のほうはさっぱりしたデザートを出してくれた。
「二人とも、ありがとう! 妙見子は、わたしと同じだったのね。といっても、わたしは目覚めたばかりだったけど」
こくりと頷く妙見子。
「こうやって人と関わっていく上で学んで、営んで、慈しんで…そうやって心は成長していきますから
ステラ様はきっとまだもっと素敵な女の子になるのでしょうね
どうかたくさんの景色を見て、たくさんの人と仲良くなっていってください
私はそうやって人と歩むことを決めたのです」
「うん、わたしも……みんなと一緒に、旅の仲間になることに決めたの。一緒ね、妙見子」
そんなことをいうステラに、メリーノはひまわりのような笑顔で微笑みかけた。
「だいじょうぶよ、ステラちゃん、今までいっぱい頑張ってきたの、しってるわ。
見えるもの、触れるものが全部新しくて、わくわくして、キラキラしてるのも知ってる
守れるものは全部守りましょう 欲張りでいいのよ おんなのこって欲張りなくらいが一番可愛いんだから!」
「うん! わたし、いまきっとすごく欲張りになってる。けど、それでいいのよね……」
「そう、いいの!」
成否
成功
第1章 第22節
「はじめまして。私はグリーフといいます」
休憩室にやってきた『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)は、ステラと対面しコーヒーを手にしていた。
「もし。
もし答えていただけるなら。
教えていただけないでしょうか?
貴女方は、滅びが増えたからこの地にいらしたのでしょうか?
蔓延る滅びに関係なく、その世界毎に定められた終焉の刻のためにいらしたのでしょうか?
貴女は、この世界が滅びる際に、世界を渡る器となりうると。
仮に、この世界が滅び、今この世界にいる方々が混沌へと渡った場合。
混沌に、どういった影響があるのでしょうか?」
「わたしにわかることなら、全部こたえるわ。
けれど、えっと……ね。その答えは『わからない』の。
この世界が滅びに向かっているからわたしが目覚めたのは、そう。
それに私は、混沌へと渡るための権限を持っているから、世界を渡る器になりうる。魔王軍が狙っているのは、そのせいね。
けれど、そうして混沌……あなたの世界に渡った場合なにが起こるかは、わたしにはわからないわ。きっと、よくないことが起こると思う。それだけは、わかるの」
成否
成功
第1章 第23節
「はじめまして、あたしはアリカといいます。お近付きの印にこれをどうぞ!」
ステラのもとを訪れた『お菓子の魔法使い』アリカ(p3p011038)は、ウサスラパンをそっと差し出した。
「これは……?」
「とある方に教わりながら、初めて作ったパンなのです。
ステラさんは端末機構? だった? らしい? ですけど、お食事はできるんですよね?
あたしはレガシーゼロなので本当はお食事をしなくても平気なんですけど、人間の作る食べ物ってとっても美味しいなって気付いてからすっかり気に入ってしまって……。
特にお菓子がお気に入りなんです! 甘くて美味しいのです!」
「うん、その気持ち、とってもよくわかるわ。お菓子もお料理もコーヒーも、とっても好きになれたもの。このパンのことも……わたし、好きよ」
「はい! そう言ってもらえると嬉しいです!」
二人はニッコリと笑いながら、パンを分け合って食べたのだった。
成否
成功
第1章 第24節
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)、『ひだまり猫』もこねこ みーお(p3p009481)の三人はステラの元を訪ねていた。
「いらっしゃい。コーヒーを淹れるけど、飲む?」
「コーヒー! わーい飲む飲むー!」
上機嫌のヨゾラ。祝音のほうは猫舌らしく、砂糖とミルクを沢山いれてフーフーしながら冷めるのを待っている。
みーおはといえば、
「はじめまして、ステラさん。もこねこ みーおと言いますにゃ!」
といって早速自らの手を差し出してみた。
「みーおは猫ですにゃ。
撫でたりしてもいいのですにゃ。ふわふわですにゃー」
「わあ、ほんとうにふわふわね」
ステラはみーおを撫でて上機嫌のようだ。
一方のみーおはコーヒーでほっと心を落ち着けている。
「おいしいですにゃ。心がほっとするのですにゃー。
ステラさん、楽しんでますかにゃ? 気を張ったりとかはしてませんにゃ?」
「うん、とっても楽しい。皆が尋ねてくれるし、新しいことを沢山教えてくれる。
わたしも、みんなが心を休めるお手伝いが出来ていればいいんだけど」
「ステラさんのコーヒー……おいしいね。みゃ」
祝音が大丈夫だよというように頷くと、ヨゾラもそれに続いて頷いた。
「そうだ、こんなのはどうかな!」
ヨゾラがドリームシアターを発動させ、天井に流れ星を描き始めた。星空を走る猫も添えて。
暫くそうして和やかな時間を過ごしたヨゾラたち。
「ところで……アナザーアナライズでステラを鑑定してみてもいいかな」
「? いいよ。痛かったり苦しかったりしないでしょ?」
「うん、約束する。えーっと……」
ヨゾラは鑑定をしてみたが、いまステラについて分かっていること以上のことはわからなかった。彼女は滅びを見守るための端末で、しかしそれが反転してしまった存在。それ以上のことは。
成否
成功
第1章 第25節
「ここが仮眠部屋っすか。内装も少し手を加えていこーっす」
『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)はふかふかするカーペットを地面に敷くと、ついでに天井付近に輪飾りをつけ始めた。
更に、とばかりに録音再生機器をそっと置くと、ヒーリングボイスが流れるようにした。
「仮眠部屋はこれで完璧っすね。それでそれで……」
休憩室では向きだしだったテーブルにクロスを敷き、窓際にカーテンをかける。
元々石造りだった遺跡にカーテンを掛けるのは若干面倒な工事だったが、レッドはなんとかやりとげたのだった。
「お疲れ様、レッド。すごく綺麗になったわ」
嬉しそうにやってくるステラ。レッドはえへんと胸を張って『任せてくださいっす!』とその胸を叩いてみせたのだった。
その一方で……。
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は見つけた地下室を貯蔵庫兼隠れ家にするよう改造を始めていた。
「匠・トール=アシェンプテルによる劇的なビフォー&アフターです!」
腕まくりををし、donkey-0081を使って運び込んできた食材セットや缶詰、ゼリー飲料といった保存の利く食品を詰め込み、ついでに部屋の一角に大工事を施した。
というのも、寝泊まり可能な生活スペースに改造してしまったのである。
もう完全に秘密の隠れ家そのものだ。
「なんということでしょう、ただひんやりと物寂しかった地下室が。
匠の手により人の温かみを感じる立派な秘密の隠れ家に変貌したではありませんか!」
自分でナレーションして満足げに頷くトール。
「わあ、本当に改造しちゃったのね」
様子見をしにきたステラが驚いたように目を見開き、拍手を送ってくれる。
「いざとなればここに隠れることだってできますからね。入り口を隠してしまえばいいんですから」
「ありがとう、トール。素敵な部屋ができたわ」
成否
成功
第1章 第26節
「よう、ステラ。また応援かい」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が小さく手を上げると、ステラが振り返ってにこりと笑った。
「ゴリョウもお疲れ様。それはなあに?」
手の中にあるものに興味を示したようだ。
ゴリョウはにこっと笑って手を開いてみせる。
「新しく設置したキッチンで試しにクッキー焼いてみたんだ。ステラもどうだ一つ!
セララ厳選の菓子類には及ばねぇかもしれねぇが、この地で作られたまさに『出来立て』な代物だ
美味けりゃここに置いてくんで、休憩しに来た奴と茶や珈琲と一緒に食ってくんな!」
「ありがとう!」
早速一枚貰って囓ってみると……その温かさとサクッとした歯ごたえにステラは目を見開いた。
「おいしい!」
「だろう?」
お礼にとコーヒーを淹れてくれるステラ。
ゴリョウはそれを受け取って椅子に座った。
「どうだい、色んな奴らを見てみて?
各自に色んな思惑はあれど、根本的にはこの地を守りオメェさんを守ろうと各自動いてる。
オメェさんの覚悟に打たれた奴は存外多いのさ。
無論、俺もだがな!」
「ありがとう、ゴリョウ。わたし、皆のことがもっと好きになったわ。ゴリョウ、あなたのこともよ」
「そりゃあ嬉しいな。ぶはははは!」
成否
成功
第1章 第27節
真打ち登場、というべきだろうか。ローレットの決戦においていつも救護班を組織し、いくつもの命を繋いできた英雄たち。その名も【青薔薇隊】。
リーダーである『君を護る黄金百合』フーガ・リリオ(p3p010595)は早速という様子で中央ドームに救護施設をこしらえ始めた。
既に着手されているものを統合し、衛生管理、薬品管理、そして道具の管理を徹底してまとめ上げる。
「『自分達だけで無く、ここに住む人達の戦い』。
そうだ、戦う為だけに使う場所でなく、これからもみんなが安心して過ごせる場所になるように……」
そんなフーガがまずとりかかったのは清掃である。
『バカンスお嬢様』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)もそれを手伝って清掃作業を行いつつ、ファミリアーは地上から、自分は空から遺跡内の通路を探索し安全な場所やその移動ルートを整理していった。
「空を飛べるってこういう時便利なのですのよね。私は主に天井から見て回りましょう。ファミリアーは地上からお願いします」
その際に邪魔な瓦礫などがあればどかし、通路の確保をしていく。
「よーし、フーガ。また世話になるぞ。
こういうときに大事なのは「誰でも戦力になるわかりやすさ」だ。
専門的な物資も施設もいいが、使い方さえ分かればある程度の効力を発揮するものが、一番効果がある」
そう言って作業に加わったのは『最強のダチ』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)である。
彼は医療に関して素人であっても分かりやすいように、医療物資のリストアップと管理を担当してくれた。
マニュアルつきの管理棚には薬品が並び、絵などを利用することで一目で必要なものがわかるようになっている。
「これからの戦いは長くなる。おれ達だけで無く、ここに住む奴らの戦いでもある。
そいつらにも思う存分働いてもらうぞ。……一人でも多く護るためにも」
そこへ加わったのは『雨に舞う』秋霖・水愛(p3p010393)だ。
「こんな形でお仕事するのは初めてかも。みんなと一緒に頑張るぞー、おー!」
持ち前の医療知識や自然知識、化学知識や薬学知識などを活用して周辺でとれた薬草などの分類、保存を行いそれをメモしていく。
また過去の経験も踏まえて出来る範囲で必要になりそうな薬品や道具を持ち込んで整理していた。青薔薇隊の過去の経験が活きるタイミングである。
「戦闘がおきたらバタバタするからね、導線の確認も必要だし……あっそうだ。地図を作って掲示しておこうかな!」
そうして早速地図の作成にかかる水愛。
『その毒は守るために』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)はそんな仲間たちのサポートをすべく、ファーマシーと自然知識を活用して周辺から薬草を集めて回ってきてくれていた。
「フーガ様など医療を得意とする方にも予め戦時によく使う物を聞いておくつもりですが、中でも痛み止めや傷薬、止血剤になる物があるといいでしょうか?」
こうして集めた薬草は一箇所に保管され、ラベリングされ、いざ戦闘となった際にはこれらが活用され救護施設を充実させることだろう。
「みんな、おつかれさま」
休憩用の水のボトルをカゴ一杯に持ってやってくるステラ。
フーガやレイア、ヤツェクや水愛、そしてジョシュアにボトルを配ると、綺麗に整頓された救護室を見て目を丸くした。
「これなら、きっとすぐに対応できるわ。戦いになったら、私もお手伝いをしてもいい?」
「お手伝い?」
問われて、フーガははたと思いついた。ステラは戦う力の無い、ただの女の子だ。
それでも旅の仲間になりたいとこの場に残ることを決めた。ただ囮になると言うだけでなく、何かをしたいのだろう。
「ああ、わかった。一緒に頑張ろう」
仲間たちを、助けるために、
成否
成功
第1章 第28節
「こんにちは、貴方がステラさんね」
休憩室へと顔を出した『母たる矜持』プエリーリス(p3p010932)に、ステラは顔をあげた。
そして、眼を細める。
「あなたは……」
「ふふ、同じ名前の知り合いが元の世界にいたの。だからちょっと気になっちゃって。
その子はステラリウムっていうのだけれど、確か、星の地図って意味だったかしら」
ねえ、とステラの向かいに座ってプエリーリスは続ける。
「貴方、あの子と会ったんでしょう? そう、『アルファルド(孤独なもの)』と名乗った子よ」
「アルファルド……ええ、会ったわ。とても綺麗な『眼』をしてた」
「そう……」
プエリーリスは目を伏せ、そして語り始める。
「あの子もかつての貴方と同じように、”観測”をするのが役目だったわ。
物語を見守り、終わりを見届けるのがあの子の役目だった。
けれどあの子は、いまは自分の物語を綴っている途中なの」
そしてステラと目を合わせた。
「ステラさん、貴方さえよければ、あの子と一緒に素敵な物語を紡いでほしいわ」
「ええ、よろこんで。けれど、どうしてそんなことを?」
問われて、プエリーリスは微笑んだ。
「だって、私はあの子の母親(創造者)ですもの」
成否
成功
第1章 第29節
「ええと、ステラさん、でしたっけ」
「あなたは?」
「エマといいます。えひひ……」
休憩室へとやってきたエマは、ステラのもとへとやってきていた。
「正直プーレルジールとか、魔王とか……あなたのこととか、私全然わかりませんでしたけれども。
あなたを守らなければせっかく私たちがやってきたことがだいぶ不味くなるということはとりあえずわかりました」
それで、あぁー……と何か考えるように上を向くと、パンをひとつ取り出してステラの前で半分に割る。
「一緒に食べます?」
突然の申し出に小首をかしげていると、エマはえひひと笑って続けた。
「さっきほら、なんか言ってたじゃないですか。「旅の仲間でいたい」とか。私も一応、その一人ですよね?
じゃあ、パンを分け合って食べるくらいはしておかないとですね。えひひ。仲間っぽいじゃないですか、そういうの」
「私を……あなたの仲間にしてくれるの?」
「そりゃあ」
パンを受け取って、大事そうに囓るステラ。
「ありがとう……。わたし、ね。あなたの仲間になりたいわ」
「私の?」
直球で来ると思わなかったエマはしどろもどろになって、そして自分の分のパンをかじった。
成否
成功
第1章 第30節
『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)が休憩室でミルクティーを配っている。
フレーバーティー『ホリデイ』である。バニラやホワイトチョコレートの香りが特徴的な、優しい香りが休憩室に広がっていた。
「これは?」
「大したことは出来ないけど、僕に出来る一番の事って……やっぱり、これかな……って……」
グレイルはステラにもミルクティーを差し出した。
「ありがとう。とっても暖かいのね……」
「うん……淹れたてだから」
「そうじゃなくて、あなたが」
小首をかしげるグレイルに、ステラは続ける。
「あなたは、とっても暖かいのね」
グレイルはありがとうと言って、眼を細めた。
「…ステラさんの覚悟…僕も聞いたよ…。
……僕には想像も出来ないくらい…重い覚悟…だね…。
…いずれここも…戦場になるんだね…。
…その時は…どこまでやれるかは分からないけど…僕も戦うから…一緒に頑張ろうね…。
…そのためにも…精神的にも肉体的にも…回復しておかないとね…」
「うん。一緒に、頑張りましょうね」
二人は休憩室で、甘い香りの中で、微笑み会ったのだった。
成否
成功
第1章 第31節
大方の作業が終わったのだろう。皆が食事を始めている。
「腹が減っては戦ができぬという言葉があるわ。だから、気が向いた人が軽く腹ごしらえを出来るようにしておきましょう?」
そう言って食事の準備を始めてくれたのは『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)だった。
軽くつまめるものをテーブルに並べておけば、作業を終えた人々が集まってわいわいとやりはじめている。
ヴァイスはといえば、用意を一通り終えて、同じく食事の準備を手伝っていたステラと休憩室のベンチに座っていた。
「こうしてきちんとお話するのは初めてね、ステラさん。私はヴァイス。よろしくね」
「うん。よろしくね、ヴァイス。あなたは、とても綺麗な『色』をしているのね」
「色?」
真っ白なヴァイス。自分の服を見下ろしてみる。
「世界の声を、沢山聞いてきたのね。とっても、キラキラしてる」
おそらくステラ独特の感性なのだろう。ヴァイスはそう納得して、自分の分のお茶に手を付けた。
「あなたこそ。とてもすごいわ。何かを変えるというのは、とても難しいことなのだから。それが自身のことであっても」
ヴァイスは自らの敬意を伝え、ステラと優しく微笑み会うのだった。
成否
成功
第1章 第32節
「随分、拠点の改造が進んだのね……」
元々はがらんとした遺跡だった場所は、居住性もさることながら拠点としてかなり使える物件へと変化していた。なんせ救護室からホストクラブまである。
忙しくしていたステラも、そろそろ休憩モードらしい。
中央施設から出てきたステラに、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は声をかけた。
「ねえ、ステラ。空の散歩に興味はある?」
そうして、二人は空の散歩へと出たのだった。
箒に二人乗りをして、ゆったりと飛ぶ。
「わあっ……すごい景色」
「わたしはこうして空を飛ぶのが好き。ステラはどう?」
「少しだけ怖いけど……セレナと一緒だから、平気」
「そう、しっかり掴まっててね」
二人はそんな風に空を悠々と散歩しつつ……セレナはこんな風に切り出した。
「……この間話した、マリエッタがね。今、大変な事になってるの」
「マリエッタが? 大丈夫なの?」
「きっと大丈夫だって、信じてるんだけど……ごめんね、ちょっと不安で……誰かに聞いて欲しくなっちゃった」
心配そうな気配が、掴まる腕から伝わってくる。
「ステラ、あなたもどうか無事でね。いつかは混沌のあなたとも向き合う時が来るのでしょうけど」
いいながら、セレナは眼を細める。
「わたし、守りたいものを全部守りたい。この胸にある、祈りと願いの力で……あなたという星の光も、この胸にあるから」
成否
成功
第1章 第33節
「それにしれも、色々できたなあ」
『一般人』三國・誠司(p3p008563)は施設の地図を作りながらぽつりと呟いた。
仮眠室に地下室。救護室にホストクラブ。キッチンは整えられ、休憩室にはお菓子が備蓄されている。
施設の外はバリケードが並び、塹壕が掘られ土嚢が積まれている。見張り塔だってある。
それらを一通り纏め、一緒に仕掛け罠の位置も把握するとそれらを誠司はマップにして纏めた。皆で共有しておけるようにだ。
「お疲れ様。地図を作ってたの?」
出来上がった地図を覗き込んで、ステラは誠司に顔を向ける。
「そういうこと。皆で使う拠点だしね」
言ってから、誠司はステラの顔をまじまじと見つめた。
「……不安かい?」
「ん」
ステラは誠司に顔を向け、そしてもう一度地図に顔をおろした。
「本当は、不安。とても怖い。私が攫われて、私でなくなるかもしれない。そんなの、いや……」
「大丈夫。僕と違って、上位の連中の実力は本物さ。
それに魔王を倒すのはヒトって割と相場は決まっていてね。
なーに、なんとかなるっしょ!」
誠司は明るく笑って、ステラを元気づけるのだった。
成否
成功
第1章 第34節
ううむ、と『白のサクリファイス』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が悩んでいた。
「何か困りごと?」
ステラがそんなルブラットのもとへとやってきて、淹れたコーヒーをそっとだしてくれた。
コーヒーを受け取り、ステラに顔を向けるルブラット。
「おや、ステラ君。ちょうどいい所に。
ステラ君は、その『ステラ』という名を以てして、他の端末とは異なる自己を規定しているわけだ。
……おそらくね」
「名前の話?」
「そう、名前の話だ」
マスクを軽くずらしてコーヒーに口をつけ、ルブラットは続けた。
「この遺跡も、もはやただの遺跡では在れなくなってしまった
皆にとって思い入れのある場所になっただろう?
であれば名前を付けるのが道理だろうが――私では良い案が浮かばないし、そもそも私が付けていいものでも無いだろうと悩んでいてね
ステラ君はどう思うかな?」
と、ルブラットは両手を翳して見せた。
「ちなみに私の中での候補は「サハイェル迎撃拠点」か「ステラとみんなのわくわくHOUSE」だ」
「ステラとみんなのわくわくHOUSE……」
ないだろうと思いつ呟いた候補が復唱されて、ルブラットは慌てて手を振った。
「『サハイェル迎撃拠点』がよさそうだ。シンプルでわかりやすい」
成否
成功
第1章 第35節
こうして、サハイェル迎撃拠点は完成した。
備蓄の充分な休憩室。道具や医薬品の揃った救護室。
更には地下室や仮眠室、ホストクラブまで備えた謎に居住性の高い中央ドーム。
その周りには罠と塹壕が張り巡らされ、積んだ土嚢がどこか要塞めいた雰囲気すら放っている。
この場所を拠点に、ステラを囮とした迎撃作戦が展開されることになるだろう。
GMコメント
魔王軍との戦いを前に、遺跡を利用し拠点を建設してしまいましょう!
決戦時ともなれば魔王軍は大量の魔物や終焉獣たちによってこの拠点を攻めるでしょうが、この場所をホームグラウンドとしてしまえばより有利に迎え撃つことができるはずです!
●名も無き遺跡
打ち棄てられた遺跡です。全体的に石で作られており、中央に大きなドーム状の建物比較的綺麗な状態で残っており、周囲は壊れた建物などが並んでいます。
遮蔽物も多く、ホームグラウンドにするには最適な拠点になるでしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
行動内容
以下の選択肢の中から行動する内容を選択して下さい。
【1】魔物の掃討
周辺に残っている魔物を掃討します。
建設チームの安全を確保することができるでしょう。
出現するのは魔王軍の魔物と終焉獣です。
たまにステラが応援しにきてくれることがあります。
【2】遺跡の改造
遺跡を改造して自分達に有利な拠点へと作り替えます。
罠をはったりバリケードをこしらえたり、救護施設をこしらえたりとできることは沢山有るはずです。
たまにステラが応援しにきてくれることがあります。
【3】ステラと交流する
一度休憩してステラと交流します。一緒にお茶したりしましょう。
鋭気を養うことができ、戦いの際により元気に動くことが出来るようになる筈です。
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