シナリオ詳細
再現性東京202X:マジ卍祭2023
オープニング
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そこはまるで――《東京》であった。
再現性東京――それは練達に存在する『適応できなかった者』の過ごす場所だ。
考えても見て欲しい。何の因果か、神の悪戯か。特異運命座標として突然、ファンタジー世界に召喚された者達が居たのだ。スマートフォンに表示された時刻を確認し、タップで目覚ましを止める。テレビから流れるコメンテーターの声を聞きながらぼんやりと食パンを齧って毎日のルーティンを熟すのだ。自動車の走る音を聞きながら、定期券を改札に翳してスマートフォンを操作しながらエスカレーターを昇る。電子音で到着のベルを鳴らした電車に乗り込んで流れる車窓を眺めるだけの毎日。味気ない毎日。それでも、尊かった日常。
突如として、英雄の如くその名を呼ばれ戦うために武器を取らされた者達。彼らは元の世界に戻りたいと懇願した。
それ故に、地球と呼ばれる、それも日本と呼ばれる場所より訪れた者達は練達の中に一つの区画を作った。
再現性東京<アデプト・トーキョー>はその中に様々な街を内包する。世紀末の予言が聞こえる1999街を始めとした時代考証もおざなりな、日本人――それに興味を持った者―――が作った自分たちの故郷。
ならば『故郷を再現するため』『日常を謳歌するため』に『学生として』欠かせないイベントが存在した。
それこそが、学園祭である。
希望ヶ浜学園では例年9月に文化祭を10月に体育祭を行っていた。
そう、2020年度に『折角なら盛り上げるために名前を付けよう』と特異運命座標に公募した結果!
紅爆祭、軌跡祭 『Road to glory』、光明祭、みんな大好きフェス!、爆肉舞闘祭、タイガーVDM祭り、銀杏祭、暁光祭、希掲祭などなどの候補を退け、希望ヶ浜学園の文化祭・体育祭は『マジ卍祭り』と名付けられたのだった―――!!!
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今年はどうしますか? 一緒に行けますか?
そんなメッセージを受け取って「彼女かよ」と叫びたくなった澄原 龍成は頭を抱えていた。
送ってきたのは姉である澄原 晴陽だ。龍成を見かければ心なしかウキウキとした様子で「パフェでも奢りましょうか」などと声を掛けてくるのだろう。
「龍成モテモテ」
「……るせェ」
思わず冷たく言い放ったが何も気にする素振りもなく元・真性怪異の『カケラ』である蕃茄はそういった。
マジ卍祭りになると人手が足りないと龍成は音呂木 ひよのに引き摺られるようにして此処までやってきたのである。
「……今年『も』お姉さんですか?」
こてんと首を傾げるハルジオンに退紅 万葉が「仲良しなのねえ。ね、面白山高原先輩」と愛犬・面白山高原先輩に微笑みかけている。
何ともむず痒い状況なのだ。微笑ましそうに見詰めているクロエ=クローズは「さ、手は止めずに」とホッチキス止めを続けて居る。
どれだけ科学が発展しようとも文化祭作業は学生に一任されるために手作業が多い。クロエは「不合理だ」とぼやいたが、夏休み前の燈堂 暁月が「学生の主体性だからね」と告げた事で納得せざるを得なかった。
「まあ、これも希望ヶ浜の日常って感じっすかね」
佐熊 凜桜はこの希望ヶ浜から出れば見ることの出来る混沌の日常を思い返してから小さく笑った。
ああ、そうなのだ。希望ヶ浜というのは『非日常』の集合体でもある。希望ヶ浜の日常は有り得ない程平和なのだ。
(だから平和ぼけしそうにもなる……んですけどね)
ひよのは楽しげに話している彼女達を眺めて居た。aPhoneという文明の利器を駆使して遠隔でメッセージを送り合える事も、夜妖にさえ目を向けなければ『発展しすぎない科学』と穏やかな日常を贈る事が出来る様子も。
外を見れば破滅の気配がさし迫り、冠位魔種の凶行が迫り来るというのに、そんな様子は欠片も存在して居ないかのようなのだ。
「や、準備は出来た?」
「暁月先生。ええ、準備は進んでいます。体育祭と文化祭を合同でしますし、盛り上がると良いですね」
「うん。あ」
暁月が手にしていたのはポラロイドカメラだった。かしゃり、と一枚撮影してから頷いた。
「卒業アルバムでしたっけ?」
「そう。けれど、今年は思い出アルバムにするらしいよ」
校長の黄泉崎・ミコトが「思い出アルバムにして全校生徒にでもくばってやれ」と言ったのだそうだ。
思い出アルバム実行委員を何故か押し付けられた希望ヶ浜大学民俗学部澄原 水夜子は「ひよのさんも頼みますよ!?」と叫んでいた。
「ええ、じゃあ。とびきり可愛く撮ってくださいね。龍成さんはお姉さんと撮ればどうでしょうか?」
「は!?」
嫌だと言えなかったのが彼の可愛いところなのである。
●
「ようこそ、マジ卍祭へ!」
「お化け屋敷はどうだい?」
可愛らしいオバケの格好をしている綾敷なじみの傍では「きぐるみ喫茶」と書かれた看板を手にしたビーバー姿の水夜子が立っている。
「実は体育祭の競技にデスゲームを提案したんですけど断られまして。
よければ誰か一緒にやりませんか? 人数が居れば売り込むことが出来そうです。ほら、デスゲームの時間ですよ!」
のしのしと歩いてやってくるビーバー着ぐるみの水夜子に迫られてからリリファ・ローレンツは「ぎえ」と叫んだ。
「マジで殺されそうじゃないですか!? 助けてください、月原さん!
みゃーこさん! 月原さんを犠牲にしていいですから! ね!? ね!?」
「は? リリファてめー!」
月原・亮が勢い良く振り向けばなじみは「んふふ、二人は仲良しだねえ」と微笑んだ。
オバケコスプレのなじみを見詰めていた亮とリリファは顔を見合わせてから「「そんなことない」」と言った。
いや、本当はそんなことあるのだ。互いにとって大事なのは相手だし、勿論、一番の仲良しとして相手の名を上げることもある。
其れで良かったのも少し前までの話だ。混沌世界の情勢変化で命の危機に晒されることも増えてきた。
鉄帝国では危険を顧みないリリファが子供を救わんとして危険な目に遭ったり、天義でだってリリファが依頼を受けて遊びに行くからと心配で着いていくと大怪我を負ったりもしていた。
(……目が離せないんだよな、こいつ。年上だけど)
亮はリリファをじいっと見てから嘆息した。「何ですか」とじろりと見詰めたリリファに亮はからからと笑う。
「いいや、何も」
恋というものの経験ぐらいある。ただ、今彼女に抱いているのが恋心なのか、それとも友情の延長戦なのか区別が付かないほどの長い期間を一緒に過ごしてしまったというのは本音なのだ。
(……ま、いいか)
此の儘でも、共に居られれば――そんなことを考えて居た亮に「月原さん? 月原さん!」とリリファが必死に揺さ振ってから言った。
「此の儘ではデスゲームに巻込まれるので行きましょう!」
「あ、おう。ロシアンたこ焼き食べて、負けた方がクレープ奢りの約束なんだ。んじゃな!」
「うん、いってらっしゃい」
ひらひらと手を振ってからなじみは「いやあ、青春ですかなあ」と水夜子に問うた。
「かもしれませんねえ。
あ、イレギュラーズさんじゃないですか。良ければデスゲームどうですか?」
――とりあえず、デスゲームはさて置いてマジ卍祭を楽しもう。
あなたは水夜子が配っていた食券つづりとパンフレットを手にしてから希望ヶ浜学園に踏み入れたのだった。
- 再現性東京202X:マジ卍祭2023完了
- GM名夏あかね
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2023年10月13日 22時40分
- 参加人数52/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 52 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(52人)
サポートNPC一覧(12人)
リプレイ
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やってきたはマジ卍祭り。堂々たるバニーの服装でミザリーを待ち受けていたのは水夜子だ。
「ええと、みゃーこはそういう服装に羞恥心を覚えたりはしないのですか?
正直見ているほうが恥ずかしいのですが……。ええ、目のやり場に困るといいますか……」
「あら、ミザリーさんは苦手ですか?」
「私は見ての通り、着込んでいることが常ですし……。いえ、その、楽しんでいるならいいんです。
頼まれごとを断れなくて無理に明るく振る舞っている、とか、そういうのでないのであれば、ええ」
水夜子はふと考えてから「大丈夫です。余すところなく見て下さい。恥じる肉体ではないので」なんて堂々と言い放った。
「……みゃーこは、いつも明るくて優しいから。だから、逆に心配になるんです」
後ろ暗いことを考えて居ない人間は屹度いない。特に彼女は『明るすぎる』。静かに壊れてしまわないかと心配になるのだとじいと見た。
「大丈夫ですよ」
ほら、また、そんなことを言う。
「それはそうと、誰にでも愛想を振りまくのはみゃーこの美点でもありますが……
その姿を目的に此処を訪れる不埒な輩がいるのだとしたら、あまり感心しませんね。……なんだかちょっと、胸がもやもやします。
……悪い狼には気を付けてくださいね、可愛らしい兎さん」
水夜子はぴんと来たかのようにミザリーにぐいぐいと近付いた。
「ミザリーさんは?」
「……私は良い狼ですよ。たぶん、きっと、めいびー」
そう、ここはバニー喫茶。「一名です」と告げてからすとんと席に着いた定の脳は混乱していた。
(バニー喫茶ってなに? 学園祭でこんな格好してていいの?
バニーと聞いて駆け付けてしまったけれどなんか、普通に、複雑だ!!!! あれ? なんだこれ。ヤキモチ? 胸がモヤモヤする! バニー姿のなじみさんは可愛いのに!)
定くん。定くん。
何度も呼び掛けるなじみがドアップで映る。あ、可愛い。うん、何時も可愛かった。
定はまじまじとなじみを見てからすうと息を吸ってから「なじみさん、僕、今から凄いダサい事言うぜ」と意気込んだ。
「オーケー」
「君のその姿、他の人に見られたくないかも! だって可愛すぎるぜ、しかもめちゃくちゃエッ……キワドい!」
「エッ」
「そこを拾わないで。こんなの、こんなの希望ヶ浜中の男子高校生が押し寄せてしまう~~!!」
「エッ!?」
「なじみさん!」
ああ、もう。定は頭を抱えた。誰かを好きになるのってこんな胸の奥がウギウギすることなのか。
それでも楽しそうに笑う彼女に強制することは出来なくて。何とも言えぬ気持ちを抱えて定は「うぐぐ」と俯いたのであった。
「ナヴァン様、エーリク様。こちらです。エーリク様はマジ卍祭ははじめてでしょう?」
うきうきとした様子で手を引いているニルにエーリクは「ナヴァン先生」と呼んだ。
「これ(ニル)に着いていけば良い」
「……ええと……」
緊張した様子のエーリクにニルは「大丈夫です」と頷く。
「研究所に慣れてきたエーリク様に、研究所以外の楽しい場所のこと。
すこしずつ、エーリク様が安心して過ごせる場所が、増えたらいいなって思うのですよ。
屋台をはしごして、『おいしい』をたくさん食べましょう
メイドカフェとかコスプレ喫茶も『おいしい』場所なのですよ!
パンフレットを見ながら、まずは行きたいところを探すところから、ですね!」
うきうきとしているニルに「ニルくんは、どこにいきたい?」とエーリクはそろそろと問い掛けた。
「たくさんを見て回って『たのしい』を増やしましょう。ひよの先輩にもご紹介します」
「ニルくんのお友達?」
「はい」
にこりと笑って見せたニルにエーリクは「いい人だね」と頷いた。ニルが好きな人は皆きっといい人で、沢山の楽しいが待っているのだとエーリクは頬を緩めた。
「模擬店、美味しいもの色々あるから楽しみだね。みゃー」
祝音と共に模擬店舗を見て回る火鈴は「こっちにいきましょう!」とぐいぐいと手を引いていた。
模擬店、美味しい物。色々楽しみだねと笑いかける祝音に「ええ、ええ」と火鈴は頷く。
「たい焼きとかたこ焼きとか一緒に食べたい。何かほしい物があるなら奢るよ。火鈴さんは食べたい物ある?」
「色々といっぱいあるから分からないわ。見て回って、おいしいものを探しましょうね!」
うきうきとしている火鈴に祝音はくすりと笑った。何時だって楽しそうな彼女が傍に居ると心地良いのだ。
「マジ卍祭……僕も、生徒として楽しむのは初めてで……火鈴さんと一緒の初めてのマジ卍祭、とても嬉しい。
これからも一緒に過ごしてくれたら嬉しいな。よろしくお願いします、みゃー」
「ええ。一緒にお写真も撮りましょうよ!」
思い出を残して、楽しい一枚を用意しておきたいと祝音が提案すれば火鈴は嬉しそうに微笑んだ。
こうやって日々を重ねることが出来たならばきっと、幸せなのだ。
「おおっ!?! うどん、うどんだ! うどんがある 水夜子ちゃん、マジ卍じゃねえ、マジサンキュー」
「いいえ、食券で食べれますからね」
にこりと微笑んだ水夜子に一悟は大きく頷いた。模擬店でカレーうどんを注文し、コロッケを載せたいと頼めば模擬店の面々がいそいそと食材を揃えてくれたのだ。
「これこれ。和風だしのカレーうどんにコロッケを乗っけたやつ……オレ結構好きで、よく学食で食ってたんだよなクラスのダチと。
汁をすってちょっとクタッとしたコロッケをまずひと口。そんで残りは崩してカレーとうどんに絡ませて食うんだ。
よし、うまい! …………懐かしいぜ、この味。ん?なんで涙が出るんだ」
郷愁の思いに青年は独り言ちた。
「僕は生徒さん達が模擬店舗で料理を作ってる様子を何枚か撮らせてもらおうかなあ。
ホー君もたこ焼きやタピオカドリンクに興味津々みたいだしちょうどいいや」
穣は前を進むホーの背中を追掛けた。彼はぴたりとタピオカ屋台の前で足を止めて何か悩ましげである。
「いい機会ですから宇賀野殿と一緒に模擬店舗を全制覇するのもいいかもしれません。
それにしても、この〝タピオカドリンク〟とは一体どのような飲み物なのでしょうか。これは───蛙の卵、ですか? 蛙の卵ですね」
確信めいたホーに「違うけれど、まあいいや」と穣はさて置いた。
「やーこんにちは〜美味しそうなたこ焼きだねえ。良かったら何枚か写真撮らせてね〜」
たこ焼きを購入し生徒の写真を撮って、それから、と顔を上げた穣は愕然と立ち竦むホーを見る。
「それにしてもホー君は本当によく食べるねえ……さっきから食べてばっかりじゃない」
「あっという間に食券がなくなってしまいました。本部に行けば食券の追加購入も可能だそうですが、生憎本日はあまり持ち合わせがないのですよ」
「え!? もう食券全部使っちゃったの!? いいねえ、若いねえ、羨ましいねえ───
折角だし僕の食券全部あげちゃおっかな。僕は食が細いからねえ、いいんだよ。遠慮せずに食べな食べな〜」
「……おや? 宇賀野殿、食券を譲ってくださるのですか? ありがとうございます」
若いという言葉に首を傾げてからホーは「貴殿の方が若いですよ」とたこ焼きと引き換えながら何気なしにそう言ったのであった。
●
「学校最大のイベント、それは学園祭!!
そそぎもこっちの学校に留学したからには、その全てを余すところなく楽しむのが義務というもの!
さあ、この学園祭マスター新道風牙が120%楽しむコースで案内するぜ!」
えいえいおーと拳を振り上げる風牙に倣うようにそそぎも腕を振り上げた。
「写真撮って」
「勿論。動画も撮ろうぜ。つづりに見せる?」
「良く分かってる」
顔を見合わせて二人で笑った。随分と彼女は明るくなった。つづりに楽しい様子を見せてやるのだ。
「ほら、そそぎこっち向いて! はいポーズ! バナナ構えてもう一枚! よし!」
「ちーず」
模擬店は普通のお祭りとは変わらないのだろうが、生徒が主体でやっているのがポイントなのだと風牙は教えて行く。
「なあそそぎ。今年はお前は客側の立場かもしれないけど、来年はお前が『やる側』になるんだぜ。
自分が店側だったらどうするか。自分だったらどんなイベントをやってみたいか。それを考えてみると、また楽しいと思うぜ」
「次は一緒に出し物をしましょう。後クッキーもつくる」
つづりに渡すのだとそそぎは頬を緩めたのだった。相変わらず『かたわれ』には優しいのだ。
「こうやって学生のイベントを体験することも、社会復帰の一環です。
本当は同じ年頃の友達と一緒に、が良いのですが、今日はおじさんで我慢してください」
「……いや、その……」
おじさんでも構わないけれど、ともごもごと呟いたルシアに寛治は小さく笑った。
彼女が興味を示してゃおうこうに強引にでも誘導し、彼女が社会復帰する為の道を整える事が寛治のミッションだ。
「美味いかどうかはさておき、お祭りの賑わいや熱気は、何物にも代え難いスパイスですね」
ルシアは緊張しているか。寛治は同学年でアロウ学生に「ご家庭の事情で色々あって、最近入学したんですよ」と紹介しながら彼女の学生生活を豊かにするべく声を掛けた。
「……緊張していますか?」
「あの、……その。服装もそう、だし、色々と。学生らしいって何だろう」
呟くルシアにそうした事に興味を持ってくれたのであれば其れ等も考えましょうと寛治は少しばかり先を見据え始めたルシアを微笑ましく眺めて居た。
「なんか幻想の貴族の人みたいに扱ってくれるお店らしくて、実は僕もお店の『執事』としてショウをおもてなしする手筈になってるのにゃ!
ショウ、驚くかにゃ?」
うきうきとしていたちぐさは「にゃ? なんか忙しそうにゃ? 思ったより盛況で大変で猫の手も借りたい、にゃ?」とぱちくりと瞬いた。
ショウをお招きしてとっておきの紅茶を淹れて楽しい時間を過ごすはずだったのに――
「ショ、ショウ」
「良ければオレも手伝おうか」
ぱあとちぐさの顔色が明るくなった。執事の服が似合うのにゃ、と瞳を煌めかせたちぐさにショウは「有り難う」と頷く。
「ゆっくりしてほしかったのはあるけど、一緒にお仕事わくわくにゃ! いつか情報屋としても一緒にお仕事したいにゃ」
「勿論。今日は一緒に執事だね」
「……! ショウ、やっぱり似合うにゃ、カッコイイにゃ! 僕も頑張るから、お客さんをおもてなしにゃ!
なんかお客さんもっと増えたにゃ? え?猫耳のかわいい執事とカッコイイ執事目当てのお客さん……? ……犯人は僕、にゃ??」
慌てるちぐさを見かけてからひよのはくすりと小さく笑った。
「あら、お噂の執事はちぐささんとショウさんでしたか」
「やあ」
「あ、ひよのにゃ。お帰りなさいませ、お嬢様、にゃ!」
手を振ったちぐさにひよのはカメラを構えてから小さく笑う。
カッコイイ執事が『可愛い猫耳執事』のお世話をしていて盛り上がっていますよと囁かれてその擽ったさにちぐさは尾をゆらゆらとさせた。
「はい! どこからどうみても女子高生姿のタイムちゃんです! 細かいツッコミはナシよ」
年齢とかは突っ込んではいけないのだとタイムは胸を張った。
「どこからどう見ても希望ヶ浜生徒の後輩ウルズっす、10年くらいサバ読んでる?
別に演技しなくたって10代に見られるんすから今更っすよアッハッハ」
からりと笑ったウルズ。ウルズさん、フラーゴラさんと呼び掛けてからTPOに合せましょうとタイムは手を叩く。
「ウルちゃんゴラちゃん! 行こ行こ!」
「……うん!」
手にはハリケーンポテトを握り締め、学生服に身を包んだフラーゴラはうきうきと歩き出す。
「ってゴラちゃんなぁにそのポテトいつの間に買ったの!? いいないいな」
「えへへ」
にんまりと笑ったフラーゴラは「これも美味しそうだよ」とマップを指差した。
「……アニメでしか見たことないイベントが盛りだくさんっす!」
「あ、わたしレインボーわたあめ絶対食べたーい!」
「いちご飴もレインボーわたあめも電球ドリンクも食べたり飲んだりしたい!
絶対映え映え〜だよ! って食券足りないから買い足さなきゃ……!」
うきうきとしている三人は手許の食券を見詰めてから――タイムは内ポケットから「多めに買っておいたのよ!」と自信満々に取り出した。
「足りなさそうすね。なんすかそれ、コーンドッグ? あ、この虹色のふわふわは!?」
「え、全然足りない? そんなぁ~」
がっくりとしたタイムにフラーゴラは笑う。ウルズは「さあ、行くっすよ!」と一歩踏み出して――
「おお……なんか圧倒されるっす、アニメでも見た事ねえっす。
やや、ここで動揺してたらJKらしくねえっすね。気を取り直していくっすっ。チェキいこー!」
沢山チェキってSNSにアップするのだ。ストーリーで楽しいイベントを流し見て、次に何処に行こうと三人で話し合う。
分け合って、わいわいと楽しむ事こそが一番の目的なのだ!
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「実の所、我(わたし)はこういった催し物は避けていた所ではあるのですが、今年は何となく参加してみたいと思いまして。
友人や知人と一緒ではダメなのか、なぁんていぢわるな事はきかないで下さいね?」
まあ、とリーゼロッテが小さく笑えばレジーナは唇を尖らせた。いつも『いぢわる』な彼女と此処までやってきたかったのだ。
「噂ではデスゲームとか参加者を募っているみたいですけれども、お嬢様はご興味あります?
……なんて。ふふ。そんな極限状態、果ての迷宮だけで充分ですからね。ここは素直にお化け屋敷を楽しむのが良いでしょう。
まぁ仮にこのレジーナ・カームバンクル。並のデスゲームに参加したとしても、必ず生還して見せますけれども!」
並で済むのかしらと囁くリーゼロッテにレジーナはやはり『いじわる』と唇を尖らせて。
「さぁ、回るところは沢山ありますよ! 手始めは着ぐるみ喫茶で!」
手を引くレジーナにリーゼロッテは「エスコートをお願いしますわね」と意地悪く微笑んだ。
任されましたとも。そう口には為ずともレジーナは楽しげな笑みを見せてくれた彼女を見るだけで嬉しくなったのだ。
(『例の一件』の騒乱が、想像よりも大きく最早内乱と言っても差し支えない規模になっている今……お嬢様の心労は如何程か)
彼女は嘗てならば引っかき回す側だっただろう。今はそれが秩序の側にあるのは『我の為』と自惚れて仕舞いたいほど。
(なればこそ、何か少しでも、お嬢様にしてあげられることがあると思って。
でも、結局それは我がお嬢様と一緒に居たいという我儘……なのかしらね)
彼女が微笑んでくれるだけで幸せだけれど。それも屹度、我が侭なのだろうか。
「人外デザイン啓蒙っていう着ぐるみ部の活動と合致してるし、クラスの垣根を越えて水夜子も参加してるきぐるみ喫茶のお手伝いをするよ!
ウェール、モーント、颯弥、がんばろうね!」
うきうきとしているアクセルにビーバーが「ありがとうございます~~!」とぴょこぴょこと跳ねた。
ウエイター姿で接客をするアクセルは「見てこのリアルなきぐるみ! まるで本物みたいだけど現代の技術だとここまでのを作れるんだよ!」と嘘を吐いた。
学園の外で奇抜なファッションを一般よりに出来ればとも考えたアクセルの配慮だ。
颯弥は調理や整備を行ないながら「食べてみてくれる?」と声を掛ける。アクセルは「んー、おいしい!」と頷いた。
「あ、あと着ぐるみのふりしてね。
かわいいポーズとかあざといポーズもしてもらったり、オイラが自分でしたりもするね。浸透浸透」
「えっ」
驚いた様子の颯弥の視線を受け止めてからモーントは「わんわんさんだぞー!」と居ながら小学生に声を掛ける。
「部長はもふられ役で」
「それだけ?」
それだけだと頷いたウェールにモーントが何処か悲しげな顔をして居た。
きぐるみ喫茶で料理を手伝っているウェールはモーントが厨房に入る事は辞めた方が良いと首を振る。
呈茶も行ないお茶の準備をしながら、ふと思いついたように「水夜子」と声を掛けた。
「はーい」
「バニー喫茶は……俺の需要あるか? 服はあるし……バニーの魅力は時に老若男女を問わない場合もあるが。
四捨五入して四十路のバニーだぞ……まあ需要関係なく応援する際は全力でバニるぞ。露骨な目線の壁と科にはなれるだろうし」
「じゃあ後で行きましょうねぇ! アクセルさんも!」
にんまりと笑ったビーバーにアクセルは「だって」と颯弥にも微笑んだのであった。
「ふむ」
ビーバーを眺めながら愛無は首を傾いだ。
「働き者だな。水夜子君。水夜子君のデスゲームにかける情熱は何処からくるのだろうか。
日常から非日常へと転げ落ちていく感じは確かにあるが。まぁ、びーばー姿の水夜子君も愛らしいから全ておーけーという事にしておこう。
僕もびーばー200匹くらい持ってる。願掛け代わりに、何となく集め始めたけど1000匹はちょっと遠そうかな。
水夜子君ともっと仲良くなれるようにって思ってたんだけど。叶ったのか。叶ってないのか」
「そんな持っているんですか?」
驚いた様子の水夜子に愛無は「勿論」と頷いた。それ以外の学生らしい小粋なとーくは苦手なのだと愛無は呟いた。
「ああ、そうだ、ばにー喫茶にも行ってみたいな。どんなめにゅーがあるんだろうか。人参はあまり好きではないんだけど。
水夜子君のおすすめは何だろう。えすこーとしてもらっても?」
「勿論」
水夜子の姿を眺めながら愛無はぽつねんと立っていた。
(水夜子君にとって「日常」とは何なのだろう。こうして楽しそうにしてる彼女は、はたして「本物」なのか。まぁ、僕には一生解らないのかもしれないな。だから彼女に惹かれるのだろうが)
愛無はぽつりと呟く。
「ねぇ、水夜子君。君は気付いていないかもしれないけど、僕は君に会えて、本当に良かったと思っているんだよ」
きっと聞こえていないだろうけれど――『日常』でも『非日常』でも楽しく過ごせる筈だから。
彼女が求める場所に、行きたいとそう願った。
「親友4人で……って思ったんだけど2人遅れてるー!?」
びっくりしているヨゾラにフィールホープはくすりと笑った。今日は人の姿でなくとも歩き回れるマジ卍祭だ。
ヨゾラと二人というのは珍しいとフィールホープはぱちくりと瞬いた。
「あの2人が遅れるのは珍しいですわね……?」
「後で合流できると信じて見て回ろうか?」
「ええ、そうしましょう」
クレープやたい焼き、たこ焼きに興味があると言うフィールホープにヨゾラは「合流語の楽しみもあるから少しだけにしようか」と微笑んだ。
「ええ。ヨゾラ様、ほら、あーん」
たい焼きを差し出すフィールホープにヨゾラは「え、あ、あーん……」と途惑いながら口にして――
あれ、これは初めてのあーんで、それから。
「この後私が食べた場合、間接キス……になるのかしら?」
(そしてこの後フィールさんが食べた場合…間接キス…えぇぇっ!?)
赤面したヨゾラを見詰めてからフィールホープはくすくすと小さく笑みを零した。
「今年で、高校最後なんだよなあ」
来年からは大学生となる。飛呂はふと、暮らす展示を見ながら息を吐いた。
一貫校とは言えどもクラスメイトは進路によってばらばらになる。今までの楽しみも、少しずつ削れていくような気がするのだ。
「よっし。……しんみりするのはらしくねーな!
体動かすやつ、サッカー部のチャレンジで思いっきりシュートする!
銃じゃねーけどタマだし、命中高い俺なら行けそう。蹴飛ばした勢いでコケるかもしんねーけど、それも思い出になるだろ」
頬をぱちんと叩いてからサッカー部のチャレンジに向けて歩き出す。賑やかな声も、楽しげな空気も何もかもが思い出になる。
再現性と名付けられた『紛い物』の世界でも飛呂にとってはここが最初からホンモノで、大切な故郷なのだ。
この地が賑やかなことはなによりも楽しく、嬉しいことなのだ。
(……流石に……こういう場所では現れないとは思うけど……念には念を……だよね……。
それに……僕の姿だと……学内の人ならいいけど…他の人には………いや…文化祭なんだから……何かの催し物だと思われるだけかな……。
……見回りが一段落付いたら……知ってる人の展示でも……見ていこうかな……)
グレイルは校舎内をぐるりと見て回りながらパトロールを行って居た。
夜妖は何処かに潜んでいる可能性はある。そうした場所を眺めては、確認しておくのだ。
こうして、平和を守る誰かがいるからこそ、この『箱庭』は幸せなままでいられるのだから。
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「いやぁ、もうこんな季節カ。月日が巡るのは早いもんだネェ」
昨年は体育祭で酷い目に遭ったのだと、マジ卍祭り出賑わう後者を歩き回るのは壱和である。
「オラボナの旦那……。いや、今はロジャーズの姐御だったカ。
確かココで顧問やってるんだったっケ。姐御には最近何度か世話になったしナ。見学ついでに顔出しとくカ」
ふとそう考えてから壱和は舞台の上に立つロジャーズを見付けた。芸術のことはトンと分からないが『ねこ』としてのセンスがやばいオーラを感じているのは確かである。
「素晴らしい! 美術部は万年部員が少なくてな、少数精鋭とも思惟出来るが、時には『らしい』ものをアピールせねば。
万が一潰されては困る。故、顧問として全力を以て取り掛かるとする。
必要なのは大声ではない。我々が最も重視すべきは『作品』そのものだ。
視よ、聴け、私の傑作のひとつとして『赤城』を舞台に上げておこう」
ロジャーズによって呼ばれてやってきたのは赤城ゆいだった。
「今回の作品のモチーフは赤黒さ、赤ければ赤いほど良いと思ってたけどこーゆーのも悪くないよね?
私だって成長するんだよ、褒めてよせんせー! あ、美術部は常に部員を受け付けています」
目がぐるぐるとしているゆいは「せんせーのお気に入りは私だけで良いけど」と呟いて舞台を見詰める生徒をじらりと睨め付けた。
「何? 先生の作品が見たい? 私の作品よりも生徒を優先すべきだ。これは『先生』として譲れない。
Nyahahahahahaha!!! さて、アピールポイントとしては此処だ、この、リアリティを極めた人と人の絡まったカタチよ。
やはり私の生徒は素敵だ、想像していた以上の『もの』を仕上げてくる。大好きだ」
ゆいの笑みが濃くなった。さて――何とも恐ろしいものではある。ちなみに壱和も部員にどうかとロジャーズは誘ったが背後に立つゆいの視線が痛々しかったのは、また別の話なのである。
「前略──理屈は捨て置いた。今、『我』が大切なのは。愛するレイリーと、恋焦がれしミーナと、共に、舞台に立つことなのだから」
堂々と言い放った幸潮。紳士が用意したバンキッシュな衣装に身を包み彼女は唇を吊り上げる。
「『幻想讃歌』。何よりも素晴らしい夢へ汝らを引き込んでやろう」
夢のエフェクトが周囲を包み込み、シンセサイザはサウンドエフェクトでステージを彩った。
「如何なる時も意思を失うな。後から見れば何もが嘲りよ」
そう、今日の幸潮はレイリーとミーナと共にステージを彩りにやってきた。
「さあ皆、酔わせてあげる。そのまま昇天できる位に、ね」
ギターを手に、このステージでの視線を釘付けにするミーナの唇が吊り上がる。愛らしいゴシックロリータのドレスはミーナの魅力を引き立てた。
マイクスタンドを引き寄せて歌声を響かせる。ここだけではない世界全部にその声を響かせるように。
幸潮の演奏に合せて歌声を響かせたミーナはくるりと振り向いた愛する人と共に此処までやってきた。
――だから、「ありがとう2人とも。だから皆で輝くわよ!」と。彼女が微笑むだけで幸福な心地になるのだ。
「さぁ、みんなついてきなさい! 楽しい夢を魅せてあげるわ!」
熱さを歌に乗せ、幸せを声に乗せ、想いを歌い叫んで。
何よりも共に歌うことで『皆を酔わせる』ことを目的とする。此処に満ちた愛情は誰もが幸福になるのだと知っているから。
さあ、共に歌って。共に酔い痴れて。
ミーナの歌声に合せたレイリーがくるりと振り返る。幸潮のソロパートを聞きながら踊る彼女のドレスがふんわりと揺らいだ。
「前に、リアと一緒にピアノの連弾をさせてもらったことがあっただろ?
あの時から、今度は3人で音楽でもやる機会があればいいなって思ってたんだ。
サンディくんも一緒にやろうよ! 忘れない思い出になるよ、きっと」
いいよね、と微笑んだシキにサンディは「勉強したことはないんだけどさ」と頬を掻いた。旋律の組み方は余り分からない――が、シキもそうならばきっと大丈夫だとサンディはリアを見遣る。
「大丈夫よ。シキが音楽を好きになってくれて嬉しいな。貴女が好きになってくれたなら、きっとどんどん上達していくわ」
「私はベースがいいなー、練習してきたんだよ! 上手くできるかは、わからないけど」
「……シキがベースなら、あたしはギターでもしようかしら。ほらサンディ、貴方も付き合うのよ」
皆でいれば大丈夫だと笑うシキに絆されたようにサンディはやれやれと肩を竦めた。
「ま、リアに言われずともやってやろうじゃねえか!
せっかくだから、がっちり練習していい演奏にしてやるぜ! 楽器は……ドラム! 格好良さそう!!」
配役は決まったねと頬を緩めるシキにリアははっとしたように「ねえ」と二人へと声を掛けた。
「あ、折角3人で音楽をやるならこの集まりに名前つけない?
えーっと……ハルモニア、なんてどうかしら。ハルモニアはね、調和の女神様の名前なんだって。
例え姿が変わっても大切な人達と共に楽園へ辿り着く、そんな女神様の。
あたし達3人の絆も永久に紡がれるように。そんな願いを込めて……どうかしら?」
「ハルモニア、いい名前だね!」
「3人の絆、ハルモニア。か。俺達、生まれとか育ち結構バラバラだし、正直こんな長い付き合いになるとは俺は当初全然思ってなくてさ。
それでも今は、こうして3人でずっと居たいと思える。多分、そういうことだよな」
恥ずかしいこと言うじゃないとリアがサンディの背を叩いた。シキがくすくすと笑う。
「……あぁ、でもあたし達3人だけでってのはちょっと贅沢?
じゃあ此処に居る皆を巻き込んだ壮大なハーモニーを、この蒼穹に響かせてやろうじゃない!」
「うん、そうだね。私達らしい音を奏でて、永遠の絆を紡ごう。
ついでに見てくれる人達を巻き込んで、ひとつのおっきな音楽をこの蒼穹に響かせられたら!」
そうやって世界が広がっていく。サンディは楽しそうに笑う二人を見詰めてから頷いた。
何度でも立ち上がって空を目指す力になるような。そんな応援をする演奏になる。
邪魔する奴からは守る、怖いならついていく。それはサンディの祈りであって、願いなのだ。
一緒に――奏でていけるように。
激戦続きの息抜きでトールは一人でやってきた。練達の文化は他国と比べれば大きく乖離している。
練達そのものには慣れた気がするが、マジ卍祭への参加は初めてだ。学び舎に園内生活を送ってきたトールは新鮮だと校舎内を散策し、ふとメインステージへと辿り着いた。
「わぁ、みんな可愛いな……学園の女の子ってああいう衣装でステージに立つんだ」
ミスコンが行なわれている様子をまじまじと見詰めているトールはぽつりと零す。
自信も舞台に立ったことはあるが、あれは国家規模だった。本気も本気のドレス姿でそれはそれは『ギスギス』とした空気が漂っていたものだ。
こうして学園で改造した制服やコスプレを自らが楽しみながら疲労するのは新鮮だ。皆の笑顔を見れば競争ではなくあくまでもお祭りの一環である事が良く分かった。
「あっ、あの服可愛いかも、帰りに探してみようかな。忘れないようにメモメモ……はっ!? いけない、女装生活の弊害が!」
●
「いつもならメインステージに行きたかったんだけど、今回は借り物競争に挑戦だー! どんなお題でも、諦めずに頑張っていくよ!」
えいえいおーと拳を振り上げた彼方の第一走。走り込んで手にしたお題は『馬に乗っている姿がとても似合う人』だ。
「師匠! お願いします! シューヴェルト師匠!」
走り寄っていく彼方の目的は同じく競技に参加していたシューヴェルトであった。彼も丁度良かったと言わんばかりに「彼方行くぞ!」と声を掛ける。
因みに、彼のお題は『最強で無敵なアイドル』だ。師匠と弟子は互いの事を直ぐに思い浮かべていたのだろう。
自信満々に走って行く二人はお題の内容が合っていることを示す為にポーズととってみせる。彼方は歌い踊ってコンサート会場の有様だ。
「おお、素晴らしい」
ぱちぱちと手を叩いていたのは美の化身にして高貴なるヴィルメイズであった。ジャージは美しくはないが機能性は高い。 此れは此れで良いものかと認識し美しい師弟愛を眺めてからいざ出発。
「『ファビュラス』? ファビュラスとといえば私そのものなのでは?
えっ自分自身はノーカウントなんですか? 私に匹敵するファビュラスなパーソンなど早々見つからないと思うのですが……。
あっ! 里長様ちょうど良いところに!」
「あら、ヴィルメイズ! どうかしたの?」
買い食い最中の琉珂は手を振ってから勢い良く走り寄ってくるヴィルメイズに気付いてぱちくりと瞬いた。
「借り物競走のお題で少々困っておりましたが、里長様はファビュラスなので何も問題ございませんね! それでは少し失礼しますよ〜」
「ぎゃっ」
小脇に抱えられた琉珂は「何何~~!?」と叫びながらファビュラスさの欠片もなくゴールするのであった。
「……ハッ! 夢か! フェスってんだからステージライブとかやってるっしょ!
いくぞ紫電ちゃん! うおー! ひゃっはー! な、何ィ! 水鉄砲バトル! こっちについ参加しちゃうちゃん秋奈! チェケラーッ!」
バズーカ二挺を手にしてやってきた秋奈を前に紫電は「秋だ! 学園だ! マジ卍祭だ!」と堂々たる姿でやってきた。
「2人で体育祭で結果を残して最高の祭りにしよう。目指せトップ入り! 終わったらひよのに撮影をお願いしような」
「モチモチ! パイセン! 想い出作製まっしーんよ! うぇーい!
そしてあわよくば好感度神アゲで、ちょっとおいたしても許してもらえるようになればマジ神」
小声で囁いた秋奈を見詰めてからひよのはにっこりと笑った。紫電が「あっ」と声を漏す。
「え? なんでパイセン違う色のゼッケンしてんの? マ? おかおこわ! ノリがやばたにえん! 1ターン目のバイクかな?」
「秋奈、死んだな」
南無と手を合せる紫電に「ぎえ~!?」と秋奈は大袈裟なほどに声を上げた。
「そいじゃ、バイブスアゲていっちゃう? アゲてアゲてアゲてけぇーっ! か弱い乙女ーっ!」
「ああ、行くぞ!」
秋奈とは一対一になるまでは共闘だ。ひよのをさっさと撃破しなくては作戦が成り立たないか。
ハンドガンを手にした紫電は水鉄砲での接近戦、遠距離には水風船も準備した。兎に角使える手段は余すことなく。
目指せ、優勝――!
「蕃茄ー!! がんばれ!! あまずいそっち来てるよ! 蕃茄逃げて!!」
声を掛ける茄子子が応援するのは懸命に水鉄砲を手に戦う蕃茄であった。開始2秒で撃沈した茄子子は運動神経なんてものは求めないでおくれと言いたげな顔をして居た。
「ぴー」
声を上げる蕃茄は小さな体を生かして懸命に避けている。野次半分で茄子子は「子供なんだからもうちょい手加減してあげてよー!!」と声を張った。
支援を送るのは蕃茄を勝たせるためだった。プライドなんてないと茄子子が豪語すれば「だめだよ」と蕃茄は唇を尖らせる。
「真面目だね、蕃茄」
「母の指針だよ」
思わず茄子子は笑った。ぐっしょりと濡れた蕃茄が負けちゃったよと小石を蹴りながら拗ねている。
「ほらほら、こっち。勝ち負けとかあんまり関係ないから。頑張った人が1番偉いんだよ。
よーしよしよし。よく頑張ったね。偉い偉い。可愛い。世界一」
頭を撫でて、めいっぱいに褒めてやる。母と慕ってくれる彼女は可愛い。嬉しいと笑う蕃茄を覗き込んでから茄子子はにんまりと微笑んだ。
――一杯褒めて、一杯抱き締めてやろう。
これが最後かも知れないから。
(蕃茄。私、自分勝手なんだ。知ってると思うけど、さ。私、本当に自分の事しか考えてないし、他人の気持ちなんてわからない。
最終的には私のやりたい事の為に、他の全てを犠牲にしちゃうくらい、どうしようもない奴なんだよ。
……だから、今日くらい蕃茄と一緒に過ごしたかった。
これも私が過ごしたかったってだけで後のことなんて考えてないんだけど。
もう、一緒には居られないかもしれないんだ――ごめんね)
屹度、彼女は気付いて居る。神様の欠片は、分かって居ない振りを為ているのだ。
ごめんね、蕃茄。
茄子子は何度でも繰返した。
●
「わりぃな! 龍成! 姉ちゃんを借りてくぜ! なんなら一緒に行くか?」
晴陽との待ち合わせをしていた天川は彼女が連れ回していたのであろう龍成の姿を見かけてから揶揄うように言った。
行かないと告げる彼に晴陽は「一緒で良いのに」と何処かむくれたような気さえする。
「晴陽はしっかり弟との時間を堪能できたか? なんか邪魔しちまったみてぇで悪いな」
「いえ」
首を振る晴陽を連れてから天川は「ホットワインらしい。大人にも気遣ってくれるのは嬉しいことだな」と晴陽に一つ差し出した。
「去年を思い出すな。あの時とは随分関係性は変わっちまったが、二人でゆっくりする時間も悪くないだろう?」
「ええ。のんびりする時間も必要ですね」
頷く彼女に天川は穏やかに微笑んだ。晴陽に対しては兎に角愛情を注ぐことに決めたのだ。
彼女が龍成に対して過剰に愛情を注いだり、恋愛事に特に疎いのは彼女自身が家族間の愛情を欠乏させているからではないかと考えて居た。
天川から見た晴陽は聡いくせに疎いところがあるのだ。遣り過ぎると彼女も困るだろうからと敢て然り気無い愛情表現を心掛ける。
「晴陽の髪は綺麗だよな。またセクハラって怒られちまうか」
そっとその髪を撫でれば晴陽は「いつでも訴えは起こせますが、それも個人間の感情次第でしょう」とやけに真面目くさった顔をした。
ほら、甘えるのも下手くそだ。晴陽を揶揄うように笑えば彼女はむくれてみせるのだ。
「恋愛に疎い君に、俺が出来るのは愛情を注ぐくらいだ」
「わーい、花火! なかなかお目に掛からない花火っす!」
瞳を煌めかせたレッドに亮は「じゃあこれやるよ」と線香花火を差し出した。
「センコウ花火? 紐の先に火を点ければ良いっすか?」
「そうですよ!」
にんまりと笑うリリファと共にいざ実践――
「……最初は地味に感じたっすけどパチパチ小さく爆ぜてきたっす! 梅? 松? よくわからないっすけど風情あっていいっすね!」
「どっちが長く火を保つことが出来るかチャレンジです!」
「まあ、リリファは何時も揺れてアウトだけどな」
むきゃと声を漏したリリファに亮が笑う。そんな二人を眺めて居たレッドは亮が手にしていた花火を見てぱちくりと瞬いた。
「ん? 今度は何っすかるヘビタマ? ヘビ花火?
……おお、黒いのからモクモク煙を上げてウニョウニョ出てきたっす!まるでヘビ🐍……?いや、これは、黒いうん(ピー)っす!」
まるで小学生男子のように花火を楽しむのだった。
「知っているぞ、祭りの締めにはファイヤーして証拠隠滅することを」
物騒なことを言うアーマデルに弾正はにやりと唇を吊り上げた。持ち込んだ線香花火だって使い切れば証拠は隠滅だ。
「こいつを持ち込んだら、やるべき事はひとつ……そう、線香花火バトルだ。
先に線香の火が落ちた方が、残った方の言う事をきく。絵面は地味だが、これはとても高度な戦いだ。
いかに花火を揺らさず風から守れるか、運を味方につけられるか……!」
「線香花火バトル……だと……さすが弾正、WABI=SABIを知り尽くしている」
ごくりと生唾を飲んだアーマデルは弾正の意表を突いて蛇花火を遣う気であった。そう、これこそが――
「これが俺の……俺たちのマジ卍祭魂(スピリッツ)だ……ッ。
……すまないどうかしてた、MATSURIはヒトの様子をちょっとおかしくする……」
WABI=SABIに心躍らせてMATSURIで気が狂うほどのテンションに身を任せてしまうとアーマデルは頭を振った。
そんな彼を抱き締めることも吝かではない弾正は真面目な顔で言った。
「俺が勝ったら、シャイネンナハトに豊穣の温泉街に泊まりに行って、『でざーと・ぴけ』のふわもこパジャマを着た状態で抱き枕になってもらう!つまるところお泊りデートというヤツだ」
「弾正が願うなら別に勝負とは関係なくやぶさかではないが???
ふわもこのゲーミングカジキマグロきぐるみパジャマか……夜なべが捗る。今夜は眠らせないぞ(視覚効果的な意味で)。
俺の願い? それは勿論、弾正がチョイ役で出演したゲームの特典CDの音源だ……手に入らなくてな……」
弾正は真顔になった。このゲーム、負けられない。ゲーミングカジキマグロきぐるみパジャマになるために――!
「ん、んふ、だめまださっきのリュカの障害物競走思い出して笑っちゃ、んっふふ」
「もうー、鈴花の意地悪」
頬を膨らませる琉珂に「だって」と鈴花は笑い続ける。傍らに座ってキャンプファイヤーを眺めて居た月瑠は身を仰け反らせて「でもさー」と笑った。
「さとちょーも面白かったけどお化け屋敷のりんりんも面白かったよ。おっきな声で」
「ちょあー! お化け屋敷はあれよ、音に驚いただけなんだからね!?」
「でも、面白かったのは私だけじゃ無かったってことよ? ねー」
「ねー」
からからと笑う琉珂と月瑠に鈴花はこほんと咳払いをする。aPhoneのギャラリーを開けば鈴花を挟むように月瑠と琉珂は座って身を寄せ合った。
「さとちょー、真剣だ。クレープ零してる」
「月瑠こそ借り物競走でコロッケ探して走り回ってたじゃない」
ああだこうだと話ながら二人は笑っている。
月瑠が両手でクレープを食べていたらとれなくなった頬のクリームを掬い上げた鈴花の様子に、食券を使い切ってしまったと購入できなくてしょんぼりとして居る琉珂。それから、それから。
「しかも見返してみれば大体なんか食べているものだから、アタシ達ってば暴食ね」
揶揄うように笑った鈴花に琉珂は「だって美味しかったんだもの」と唇を尖らせた。楽しげな彼女が希望ヶ浜学園の制服を着て『学生』のように振る舞う様子を見てふと、鈴花は思う。
「ねぇ、例えばアタシ達がこの街に生まれて、この学園に通っていて。そうしたらどうなっていたかしら。
リュカはこういうのの実行委員長とかしてそうだし――ゆえは進級できなさそう!」
「わたしはりんりんにおやつ作ってもらいながらさとちょーにおべんきょー教えてもらってる気がする!」
「放課後は食べ歩きとかするのよ! あ、でも月瑠は補講かも」
所変わったって、関係性は屹度変わらない。ずっと仲良しだと笑う月瑠に琉珂は勿論と大きく頷いた。
「ま、なんにせよこうやって一緒にキャンプファイヤーを眺めているでしょうし、優しくて腹ペコな先生にひっついて回ってるでしょうね。
どんな場所に生まれて、例えばそれが別の世界だってきっとアタシ達は、ずーっと一緒なんだと思うわ」
「うんうん。出会い方とか過ごし方は変わっちゃうかもしれないけど、わたしたちの関係はきっと変わらない。きっとそういう運命!
もしも2人に出会えなかったらわたしはこんなに笑えてなかったんじゃないかな。
おかーさんだけしかいなかったわたしの世界を2人が拡げてくれた。楽しいときは隣で笑って大変な時は一緒に頑張ってくれた」
恥ずかしげも無いのだと鈴花が唇を尖らせれば「照れてる」と琉珂はその頬を突く。
「……何よ、いいでしょこういう日があっても! あーもうやだ何も言わない! 知らない!」
外方を向いた鈴花に飛び付いて月瑠は「二人はわたしのだーいすきな幼馴染み!」と声を弾ませる。
琉珂の構えたaPhoneの画面にはとびきりの笑顔が収められていた。
キャンプファイヤーを眺めながら妙見子は「晴明様」と呼び掛けた。
「卍祭……ちょうど一年前に晴明様と一緒に回りましたよね。
覚えてますか? 私は緊張してて……食べたハンバーガーの味、覚えてないんですよね……」
晴明は「妙見子殿は何時も俺を見て緊張するな」と揶揄うように言った。朗らかに笑う彼女の表情が硬くなることが多い気がしてならないのだ。
「……気を悪くしたならごめんなさい。
でも貴方と過ごしている時間はとても穏やかで暖かくて……こんな時間が続けばいいとそう思ってしまうくらい大事な物なんです、本当ですよ?」
ちらりと伺うように眺めた晴明は、妙見子と目をあわせてから可笑しそうに笑う。
ああ、穏やかに彼が笑うようになったのは少し肩の荷が下りたからなのだろうか。中央の火に照らされて微笑む彼を眺めて妙見子は唇を一度引き結んだ。
一体どんな気持ちで共に居てくれるのだろう。隣を歩いていても良いのだろうか――心の中で大きくなってしまう不安もあの火に焼べて燃やしてしまえたならば何れだけ良いだろうか。
恋とはこんなに苦しくて、こんなにも大きかっただろうか。この感情に名前を付けるならば、本当は?
「……晴明様。……本当は私キャンプファイヤーで晴明様とダンスして見たかったんです」
彼が楽しめるようにと、必死になって我が侭なんて言えなかった。けれど、今日ばかりは言わなくては後悔してしまうから。
「どうか私と踊ってくださいまし晴明様」
「勿論。ああ、いや……喜んで」
そっと手を差し伸べる彼に、妙見子はぽつりと問うた。――私と出会えてよかったですか?
答えは聞かなくったって分かって居る。屹度、彼は不思議そうな顔をしてから『勿論』と笑うのだ。
●
実は憧れだったのだとジルーシャの頬は緩んだ。好きな子とのフォークダンスの為に練習だって確りしてきたのだ。
プルーにカッコイイと思って欲しいのだと意気込んでジルーシャはゆっくりとその手を差し伸べた。
「という訳で――素敵なベルディグリのお嬢さん、アタシと踊っていただけますか?」
「ええ、勿論よ。ウィスタリアの殿方」
恭しく差し伸べられた掌に重ね、流れる音楽に合わせてステップを踏んで行く。その空間だけ、二人きりのようで。
(――このまま曲が終わらなければいいのに)
ふと、視線が交わって、ジルーシャは問うた。
「……ね、プルーちゃんは火、平気?」
「ええ、一応はね。情報屋ですもの」
「もし不安だったら……アタシのことだけ見ていてね。火からも、他のどんなものからも、アタシが守ってみせるわ」
囁いて、少しだけ離れて。鮮やかな炎が彼女を照らす。
その白い頬が赤らんで見えたのは、炎のせいか、それとも。自惚れたっていいかしらとジルーシャは唇を揺れ動かして。
「ありがとうございます晴陽先生、今日は来てくださって」
「いいえ、此方こそお呼び頂け感謝しています」
ボディを前にして晴陽は受け取ったたこ焼きを見下ろしてから「ご一緒に食べますか?」と問うた。
少し冷ましてから食べようと芝生に腰掛けた彼女の傍に縮こまるように座ってからボディはすうと息を吐いた。
人は火を見れば落ち着くという――けれど、
「先生。今日は貴女にお伝えしたいことがあって、お呼びしました」
どうしたって緊張してしまうのだ。ずっと言葉にしなかった、できなかった、『あの人』への気持ちを吐露するように。
「以前、先生には聞かれましたね。『龍成との本当の関係は』と。……私と龍成は、友達で、ただの同居人です」
「お友達、ですか」
晴陽が瞬いた。ボディは息を吐いてから首を振る。
「でも、そんなので満足したくないんです」
生活を共にして、一緒の時を生きて――私という怪物は、致命的なまでに『狂ってしまった』。
斯うしてみれば彼女は良く似ている。姉弟。その存在を再認識するようにボディは息を吐いた。
「私は龍成が好きです。……大好きです。ですので、恋人という関係性になれるよう努力したい……です」
「……はい。龍成をお願いします」
晴陽が抱いた一抹の寂しさは、弟も一人の人間として遠くに行ってしまうと、そう思ってしまったからなのかもしれない。
クラシカルメイド服を身に纏っていたメイメイは「お待たせ、しました」と足早に晴明へと走り寄った。
「不思議な装いなのだな」
「この衣装……ああ、先程まで、クラスの出し物をお手伝いしていたもの、で。
『おかえりなさいませ、ご主人さま』……などと給仕を……めぇ、何分不慣れで……おかしかったでしょうか?」
カーテシーをしたメイメイを眺めてから晴明はおとがいを撫で、「ただいま?」と首を傾げた。
途端に頬を赤くしてからメイメイはきょろきょろと周辺を見回した。
「あっ、もう始まりますね……晴さまは、足の運びを覚えてますか?」
「ああ、一応。だが」
難しいのだと呟いた晴明にメイメイはくすりと笑う。いち、に、いち、にとリズミカルに踏み出して。
彼とまた踊れたら――そう願っていたからこそ、嬉しいのだと笑みを零すメイメイに「背が伸びて、違う人間のようだ」と晴明は気まずそうに云った。
「慣れませんか?」
「次第に慣れるだろう」
ぐっと距離が近付いたのだと頬を赤らめたメイメイは温かなお茶を買いに行きましょうとぱっとその身を離した。
「その、今日は、ありがとうございます。……あの、遅くなりました、し、豊穣までお供をしても?」
――いついもなら『瑞さまに学園祭のお土産を』なん言い添えてしまうけれど。今日は少しだけの勇気を持った。
「晴さまと……その、もう少し一緒に居たい、ので」
勿論だと告げるメイメイはにんまりと微笑んで。
「くっ……結局現役の間に超絶美少女天使しにゃこちゃん祭りに変える事はできませんでしたね。
これ永遠にこの名前なんでしょうか……?
いやでも数年後とかにはしにゃの偉大さが広まって改名運動が活発化する可能性もありますからね!」
ないないと手をふりふりとして居たのはリリファと亮だった。
しにゃこは「あるかもしれないじゃないですか! もしかしたら!」と力強く言い張る、。
「今年現役参加最後なんですよね……来年からはOB参加です……しんみり。
う~ん……でも先生とかも普通に参加してますし……先生として参加すれば……。
ハッ、しにゃも先生になれば良いのでは!? 天才! その為にはまずお受験ですが……」
大学生生活も屹度楽しい。キャンパスライフに憧れ始めて勉強にヘルプを求めたがひよのもなじみもお手上げと言い出すかも知れない。
何せ――
「受験勉強は明日からまた頑張ります! 今日は何も考えず楽しみます!
うおお、燃え上がれファイアー! 花火もダンスも楽しんで行きましょう! へいへいそこの彼女ー! しにゃと踊りませんか!?」
壊滅的にやる気が無さそうだと花丸とひよのはずいずい進んでいく超絶美少女天使しにゃこを眺めて居た。
「あ、向こうに行っちゃったね」
「ええ。お勉強はどうするのでしょう」
顔を見合わせてからプチ宴会モードの二人は飲食物を持ち込んでいた。
「あ、これ美味しいですよ。あーん」
「んーっ! おいしい! 今年のマジ卍祭りも疲れちゃったけどとっても楽しかったね、ひよのさんっ!」
にんまりと笑った花丸にひよのは満足げに頷いた。彼女の隣には撮影で使用していたカメラが置かれている。
「ねぇねぇ、ひよのさんっ! 今日はカメラを持ってたけどどんな写真が撮れたの?
ひよのさんが撮ってた写真、花丸ちゃんにも見せてくれると嬉しいなっ!」
「これは花丸さんの変顔です」
「ええっ!?」
くすくすと笑うひよのの手許を覗き込んで「これ、面白いね」と楽しげに笑う。彼女の切り取った希望ヶ浜の思い出は輝いて見える。
こんなこともあったね、あんなこともあったね。そうやって重ねる度に心躍るのだ。
「やっぱりこうして思い出が残るのって素敵な事だよねっ!
……あ、そうだ! ひよのさん、花丸ちゃん達も写真を撮ってもらおうよ! 楽しい思いでは幾らでも残しておきたい……でしょ!」
「ええ。勿論」
カメラを任せてシャッターを切る。
ほら、何時までも色褪せない思い出を残そう。
2023年のマジ卍祭の夜はまだまだ続いていくのだから――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。希望ヶ浜学園の学園祭でした。
マジ卍祭りに名称が決定されてから、マジ卍な気分で幾度目か。
楽しい思い出を一杯残しましょうね! はい、ちーず!
GMコメント
マジ卍過ぎる希望ヶ浜のお祭りがやって来た!!
今年は『思い出』も沢山残しましょうね。イベント記念にイラスト商品&テーマノベルも是非どうぞ!
※ご同行者がいらっしゃる場合はお名前とIDではぐれないようにご指定ください。グループの場合は【タグ】でOKです。
※行動は一つに絞って頂いた方が描写がばっちりめになります。
●マジ卍祭り
ネーミングは特異運命座標による大喜利――いえ、公募で決定されました。文化祭&体育祭です。
幼稚舎から大学まである希望ヶ浜学園の一大イベントです。とても広く様々な催しが行われるために地域や近隣の方々も遊びに来るテーマパーク状態となっています。
高等学校グラウンドにはメインステージが設置され、ミスコンやコスプレコンテストが開催されているようです。
また、バンドや演劇などやメイド喫茶やお化け屋敷など校舎内での催し物等なども自由に行うor自由に見て回ることも出来ます。
学食による屋台では『チケット(一人2枚!)』を使用し、食べ歩きが出来る簡単な料理やタピオカドリンクが頂けますし、普通の屋台を見て回ることも出来ます。勿論、チケットを使い切っても現金利用も可能です。
総じて『こんなの有りそう!』が大体叶うので是非、こんなのしてみたい!を提案してみて下さいね。
●NPC
お気軽にご提案など頂ければ幸いです。
音呂木ひよのは『<希譚>』シナリオ状態よりも前です。何時も通りの明るく元気な先輩です。
本日はポラロイドカメラを持っています。祭の様子を撮影して『卒業アルバム』に掲載するのだそうです。
よければ一枚撮らせて下さいね。プレイングで『ひよのに撮影をお願いする』なんて書いてみてください。
大学生キャラクターなども出し物に参加しています。
(水夜子はきぐるみ喫茶でビーバーの着ぐるみを来ていますが、バニー喫茶のお手伝いもするそうです。
なじみはお化け屋敷におりますがバニー喫茶のお手伝いもします。)
それでは、楽しんで!
宜しくお願いします!
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】メインステージ
高等部のグラウンドに設置された簡易ステージです。メインステージとして様々なイベントが進行します。
此処ではバンドによるパフォーマンスと部活動アピールなどが行なわれています。
・バンド演奏参加
バンドのパフォーマンスを楽しめます。お友達同士で参加してみても良いかもしれませんね!
・部活動アピール
・『主張』コーナー
部活動をアピールするほか、マイクを通さずステージ上から叫ぶイベントが行なわれています。
告白や暴露をする生徒もいて大盛り上がりのようですね。
【2】模擬店舗&クラス展示を見て回る
クラスの展示を自由に見て回ることが出来ます。食券が三枚つづり、1枚500円を入校時にお渡しします。
その他足りない分は『マジ卍祭り本部』で食券を購入頂くか、誰かに奢って頂くなんてのもどうでしょう?
チョコバナナやクレープ、たこ焼きなどオーソドックスな店舗もございます。タピオカドリンクや手打ちうどんなんかもあるようです。
メイド喫茶や執事喫茶、お化け屋敷なんかもあります。水夜子は着ぐるみ喫茶でビーバーの着ぐるみを来ていますし、なじみはおばけ屋敷を行って居るようです。
グラウンドでは運動部のレクリエーションやチャレンジイベントが行なわれています。
特に人気なのはぐるぐるバットからのシュートを行なうサッカー部のチャレンジと、テニスラリーチャレンジのようです。
休憩時間などもありますので一緒に回ってみるなど、いろいろと楽しんでみて下さいね。
【3】体育祭プログラムに参加する
・水鉄砲バトル
ゼッケンは【赤】と【青】をご指定下さい。水鉄砲(バズーカやハンドガン)や水風船を投げ合って、ゼッケンが濡れると退場。
最後までグラウンドに立っていた人が勝利の競技です。障害物を使用して最後まで生き残れ! 今年はバトルロワイヤル形式です
・借り物競走
その名の通りの競技です。恋人や家族なんかの札もありますので、色々と借りてきましょう!
龍成~~~!!!!!!! 今年こそ『お姉ちゃん』を借りておいで。晴陽姉さんが団扇を持っているよ。
・障害物競走
パン食いやら障害物やらがあります。イレギュラーズには何故か夜妖討伐チャレンジもこの競技に含まれているようですね……。
【4】キャンプファイヤー
夜にグラウンドで囲う事ができます。踊るもの良し、遠巻きに眺めるもよし。
フォークダンスが行われるグラウンドを眺めながら屋台で購入した飲食物をのんびりと、どうでしょう。
キャンプファイヤーの火が眩しいのです。毎年先生方が大量に購入してくる季節外れの手持ち花火も楽しめるらしいですよ。
教室も開放されているのでのんびりとしたい方は教室もどうぞ。
【5】その他
祭の日だから夜妖パトロールでもするか……。
などなど、その他だぜと言う方は此方をどうぞ。
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