PandoraPartyProject

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六天覇道

 鉄帝各地で動きが見える。
 新皇帝の勅令に伴い、鉄帝全土に衝撃が走っているのだ――

 ――新皇帝のバルナバス・スティージレッドだ。
   諸々はこれからやっていくとして、俺の治世(ルール)は簡単だ。
   この国の警察機構を全て解体する。奪おうと、殺そうと、これからはてめぇ等の自由だぜ。
   強ぇ奴は勝手に生きろ。弱い奴は勝手に死ね。
   だが、忘れるなよ。誰かより弱けりゃ常に死ぬのはお前の番だ。
   どうした? 『元々そういう国だろう?』

 ……先日発布されたその勅令。正に『弱肉強食』と言うべき代物。かの令に対し――
 首都に近しい地では帝政派が兵を集めんとし。
 南部戦線では今こそザーバを皇帝にとの期待が高まり。
 ラド・バウでは新皇帝も旧体制も知らぬと政治不干渉を掲げ。
 歯車大聖堂では貧しき民達を救わんと革命派が動き出し。
 北東部ではノーザンキングスが漁夫の利を狙わんと蠢き、抗する者らがいる。
 更には何処とも異なる者達が集まり、非主流派なれど一旗挙げんとする者達もいるか。
 それらは派閥となりて大小の異なりはあれど勢力へと至ろう。
 どこがこれから勢力を伸ばしていくか。
 或いは新皇帝に迎合する無法者らが彼らを呑み込むか――
 それは未だ知れぬ、けれど。
「戦力が足らんな」
 帝政派の長、バイル・バイオンは吐息を零す。
 帝都よりほど近い街『サングロウブルク』に拠点を移し、新皇帝派に対する抗いを試みているが――どうにも動かせる戦力が満足とはいかないのが現状であった。

「なら。どこからか『引っ張ってくる』しかないだろうな」
 そしてそれは南部の城塞『バーデンドルフ・ライン』に陣取るザーバも似たような状況。背後に幻想国という敵国がある南部戦線方面軍は、おいそれと全軍を動かして帝都に……などとは出来ぬし国境線に緊張自体を走らせたくもない。

「そうねぇ。じゃあやっぱり『彼ら』に依頼するべきかしら?」
「うんうんそうだよ! それがきっといいよ!」
 更には帝都に存在する――新皇帝にも旧体制にも関わらぬとする方針を打ち出しているラド・バウ独立区は、腕自慢が多く集っているとはいえ新皇帝に最も近い位置に在る。いつ状況が変化すると知れねば、もっとより安定して人手も欲しい状況だとビッツやパルスは語らうものであり。

 ギア・バシリカを拠点に無辜なる民を受け入れんとする革命派。
 北東部のノーザンキングスの動きを注視するヴォルフやギルバート。
 天空に確保しているアーカーシュに集い拠点としている、軍部非主流派――

 これらもまた、他勢力と同様に戦力を求めるものであった。
 鉄帝各地は混迷としている。新皇帝に従う者もあらば、新皇帝の勅令に怯える者も。
 限られたパイを奪い合う――のも、まぁ。いいが。
 しかし最も『良い』のは外から『引っ張ってくる』事だろうと結論に至るのは当然であった。
 では外とは何処だ? 隣国の天義? 幻想? ラサ?
 いやいやいずれも明確な敵国である――鉄帝内部の事情に食い込ませたくはないものだ。傭兵と言う側面が強いラサに関しても同様である。
 故、なら、ば。
 これもまた当然の結論として導き出されるものだ。
 残った手段は――いや。頼るべき外部勢力はただ一つ。

 ――ローレットである。

「……勢力参加要請?」
「どうにも『そう言う事』みたいだよ――ギルド・オーナーとしての意見は?」
「ウチのイレギュラーズ達を専属みたいにしたいってか?
 ……いやどうも要請内容はそこまでの強制と束縛は求めてねぇみたいだがよ」
 幻想。ローレット本部に届いた書状は現在の鉄帝を構成しうる六派閥からであった。
 それら、文章の内容にある程度の差異は在れど内容は概ね同じ。

 ――現在の鉄帝の状況に対し『自らの派閥にイレギュラーズを招待したい』という内容であった。

 要は自派閥への『勧誘』だ。参加の強制はなく、脱退もいつでも良いとの事だが……囲い込みとも言える内容に対してどう動くべきか、ショウから報告を受けたローレットのギルド・オーナー。レオン・ドナーツ・バルトロメイは頭を掻くものであった。
 ローレットは超広域を顧客対象とした何でも屋である。
 どこの勢力にも依頼であれば力を貸す――が、特定の勢力にローレット所属のイレギュラーズが(そこまでの束縛はないとはいえ)一時的にせよ傾くのはどうかと思う所もある。依頼によって力を貸すのは良いが、勢力参加はどうにか断るべきかとも。
 が、しかし。
 今回の事態は世界を滅ぼす因子を宿す魔種……その頂点に位置する一角。
 『冠位七罪憤怒』バルナバス・スティージレッドが関わっている。
 この事態を放置するはローレットの大目的である『混沌世界にやがて訪れる破滅的結末の回避』に反すると言えよう。故に、レオンは些かの思考を巡らせるも。
 やがて決断する。
 ローレットのイレギュラーズの『自主性と判断』に委ねる形で。
 鉄帝各地勢力からの『勢力参加要請』に応えるのだと。
「ローレットとしてはどこの勢力を唯一の顧客とはしねぇ。それは今まで通りだ。が、個々人のイレギュラーズごとの主義主張思惑気分でどこになるべく与したいかは自由――ってな事にしようか。ま、派閥に属すれば、その派閥からの依頼に迅速に動く事も出来るだろうしな」
「オーケー。じゃあ、皆にもそういう形で通達するよ」
「……やれやれ。六つも派閥があって、勢力の拡大を狙うなんて。
 一体全体これからどうなる事かね……」
 幻想にあるローレット本部にて、レオンは窓の外を眺めるものだ。
 其処には青空が広がっている。その彼方には――鉄帝国にも繋がっている事だろう。
 今。あの青空の果てで如何なる想いが吹き荒れている事か。
 さて、さて――
 ではでは皆様ご照覧あれ。

 求むは英雄。求むは救国の徒。求むは闘争。求むは覇道の主。
 いずこが喰らうか。いずこが覇を成すか。

 ――鉄帝動乱・群雄割拠。
 ――総軍鏖殺・六天覇道。

 いざや開幕あいなり候ッ!

 ※鉄帝の六派閥から『自派閥への参加要請』が届いています――!
 ※詳しくは特設コーナーをご覧ください!!

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