PandoraPartyProject
極楽往生
死は絶対であり、死人は蘇らない――
それは偉大なる人物であろうとも覆せえないこの世界の道理であると天目 錬(p3p008364)は確信している。故に偲雪なる、何代も前の人物が蘇った……のだとすれば、それは手を変え品を変えた結果であろう。
「過去の帝が眠るこの地で生じているのは、蘇りの真似事かそれとも」
故に神使達は『四神』玄武が同行しながら、事の真相を更に深く調べるべく『常世穢国』と呼ばれる地へと赴くのであった――まずは偲雪の遺骨があるかどうか。異変が生じていないかを確認する事である。
その為に玄武は加護を齎していた。己らの姿を隠す『霧』の加護を。
これにて魔術的、神秘的な警戒を排して突き進む事が出来る……
「何か、狭苦しい……どういう事すかねこれは?」
「ふぅ、ふぅ。スケさんも、これはちょっと妙だと感じますぞ。
……これは皇陵として存在を秘匿されていたというが故の事態でありましょうか」
一方で常世穢国に直接潜入する者達とは別に、八重 慧(p3p008813)やヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)は街周辺たる久遠なる森の再調査を試みていた。この森自体にも怪しい気配があり……その結果として分かったのが、この森は『穢れ』を貯め込む性質を持ってしまっているという事であった。
風水や魔術の観点からあまり宜しくない気の流れ。元々この地はこの地は皇陵――お墓だ。しかし墓荒らしを恐れて余人を近づけぬ様にした結果……森には手入れが行き届かぬ不毛の地と化してしまっていたのである。
或いは偲雪が覚醒して以降は、手入れする人物達も取り込まれてしまったか……?
いずれにせよ霊魂を鎮め、安らかなる眠りについてもらう筈の場が『乱れて』いる。
『穢れ』が、妖しき気が溜まりやすい地と化しているのだ――それは逆に言えば適切に木々を整えれば『穢れ』を多少マトモに出来るという事でもあるのだが。しかしで『常世穢国』という形で顕現してしまっている以上、根本的解決にまでは至らぬか。
まぁ森の事情はさておいて――城に潜入した者達は、城の内部になにがしかの手がかりが残っていないか調べる者。遺骨置き場と思われし『地下』を目指す者がいた。
手がかりを調べる者は、例えばセララ(p3p000273)などがいて……
「わぁ! イタタタ……何この本? いや街の地図、かな……?」
それは高天京と似ているとされる常世穢国の地図。
しかし現在の高天京とは異なり、微妙に家屋の配置が入れ替わっている所がある――様に見える。
なぜこんな事をしているのだろうか。後で調べてみようと、懐に地図を入れて……そして地下を目指す方は慎重に歩みを進め、さすれば……辿り着く。
歴代の帝の偲雪が納められし祠の様な地に。
「……これが、偲雪さんなんだね」
「不思議、ですね……これが偲雪さまだと、すぐに感じます……
丈夫そうでもありますけれど、でも、壊す事自体は出来そうですね……」
それを見つけた内の二人がシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)とメイメイ・ルー(p3p004460)だ。其処には幾つもの――恐らく歴代帝の――遺骨箱が多く並んでいたが、しかし異質なる気配を醸し出す様子から『これが偲雪のもの』であるとすぐに分かった。
……希紗良(p3p008628)とシガー・アッシュグレイ(p3p008560)が得た情報によれば、遺骨箱を破壊すれば偲雪の力を削ぐことができる、という事ではあったのだが。しかし情報源に些か怪しい点もあり――どうすべきかは逡巡する所であった。
壊すか、壊さぬか。
破壊せぬ方に心が傾きつつも念のため皆にも確認してもらおうと思った――その時。
「わぁ。シキちゃん、危ないよ。だーめ。それはこっちに、ね」
当の偲雪が顕現し、遺骨を回収する――
歓待への集中もあり一瞬は気付かなかった偲雪だったが、遺骨の方が本体と言えるためか気付いたのだ。そして……その際の語らいにて彼女の決意が堅き事も判明する。彼女は森に迷い込んだ者を帰す気はない。
なぜならこの笑顔溢れる国こそが至上であり至高なのだから。
そうして皆が幸せになれるのに、なぜ反発するの――?
話せば皆とはきっと理解し合えると思っていたけれど。
「『話しても分からない』なら『分かってもらおう』か!
うん、それが良い! そしたらきっと皆幸せだよね!」
「……なんかめっちゃまずい雰囲気がしてくるわねぇ。
なんですっけ。たしか黄泉の国から逃げ帰るお話があったような無かった様な……」
「皆、こっちだ。街中はマッピングしている――最短距離を進むぞ。遅れるなよ!」
嫌な予感がしたゼファー(p3p007625)を始めとして、神使達は一端撤退する。
途上。玄武からの依頼とは別件で動いていた者達――藤原 導満に弥鹿なる人物達の助けや、常世穢国の地図を描いていたラダ・ジグリ(p3p000271)による案内もあれば、迅速に撤退を果たせるものだ。
最低限の目的は達したのだから。
偲雪の遺骨は発見でき、彼女が確かなる死者である事は確認でき。
そしてなにより……彼女とはどうしても分かり合えない事も……
「――偲雪殿は飲み込んでしまったんですね。
自分に付いてくる者達の想いを……妄執を」
夢見 ルル家(p3p000016)は気付いた。偲雪を突き動かしている者は、本人の望みもあるが。
なにより。平穏なる世界に生きる事が出来なかった――無念と妄執の魂達を背負っているからだと。
偲雪は優しすぎるから見捨てられない。
差別されていた者達の想いを。平穏なる世界を作ってほしいという想いを。
「やれやれ。人様に幸せを与えられねば、幸せを感じる事も出来ぬとは――難儀よの」
同時。街を一瞥しているのは――瑞鬼(p3p008720)であった。
今が続き続ける世の中など、瑞鬼は嫌で嫌で仕方がない……
だからこそかつて。神使達の到来は心の奥底が滾る様に、喜びに満ち溢れたものだ。
この偽りの理想郷、常世穢国も。
かの神使たちがどうにかしてくれるじゃろうて。
「わしは、それを特等席で見させてもらおうかの」
酒でも一つ摘みながら。
――神使の一人として、の。
※<仏魔殿領域・常世穢国>極楽往生 の報告書が届いています――
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