PandoraPartyProject

ギルドスレッド

未来超仰天実験室

four of a kind

●あらすじ
キミ達はそれぞれの理由でローレットを訪れた。
キミ達はそれぞれの事情で時間を持て余している。
キミ達はそれぞれの思惑でもってカード遊びに興じるだろう。

●今回のカードの特徴
それは高価そうに見える。
それは色付き硝子のように薄く透通っているが、裏の模様を見透かせない。
それは『語り手』の敗北を検知すると曇ってしまう。
それは『聞き手』の敗北を検知すると淡く輝く。
それは誰かが勝利すると、全てのカードが勝者の手元で束になる。

●ルールへのリンク
https://rev1.reversion.jp/guild/818/thread/14878

●特別ルール:カード指定
自PCが引くカードを、乱数に頼らずPL自ら指定してよい。
これは各PLごとにゲーム中1回まで使用できる。

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この稼業を長く続けている冒険者なら耳に挟んだ、あるいは実際に目にしたものがいるだろう。
混沌の魔術師の中には『異界』と呼ばれる領域に触れ、そこから力を借り受けるものが存在する。
それは代表的な例を挙げるならば召喚術士として知られ、別領域に存在する知的存在から直接的・間接的に、また召喚獣などと呼ばれる形でその力を行使させている。

『悪魔』や『守護獣』、『聖霊』というのは。
それがボクたちに対してどれほど有益であり、またどれほど危険であるかを判断する呼称に過ぎない。
でだ。
ボクは実験と知的探求心の一環で『異界』からの召喚を試みたことがある。
何重にも敷いた陣の上に魔術的触媒、そして供物を置き、形式ばった手順に則って異界の存在に呼びかけを行う。
簡単なことではなかったが、十何度目かの失敗を経てどうにか成功を収めた。
魔法陣の中に現れたのは…そう、一匹の巨大な蛙のようなやつだった。
そいつは今のボクの胸元ぐらいの大きさで、赤緑色と黄色を交互に、そしてゆっくりと変色を繰り返していく奇妙なやつだった。
そいつは値踏みする様にボクを、そして自らの周囲に張り巡らされた陣を見た。
ボクも同様に見返した。その態度から一定の知性を備えていることを伺い知れたからだ。

古典的ではあるが、こういった陣には召喚した相手を対話のテーブルに引きずり下ろす機能が備わっている。
すなわち、決してこちらに手を出させないための壁としての機能だ。
教本を見よう見まねで作ったが、あのカエルがすぐに陣からでなかった辺り、それなりに出来が良かったんだろう。
そのような逡巡を経て……そう、確かカエルの方から話しかけてきた。
そいつは見た目に反して随分高くて美しい声で喋ってね。

曰く、「私はこの世界の自然を司る神聖な霊の一体です」
曰く、「呼び声に応えてこの場所に来てみたが、人里の穢れによってこのような醜い姿に押し込められている」
曰く、「元の姿に戻り、自然に還るにはあなたの助力が必要だ。ここから出してほしい」
曰く、「聞き入れてくれるならば引き換えに願いを叶えてもいい」
曰く、「このような精巧な召喚を行えるものに逆らえる力は今のこの身にはない」

………随分前のことだったが、概ねこんなことを言っていたと思うよ。
ボクはこの時点で、こいつが人を誑かす悪魔なのではと警戒していた。
であるならば、こいつの長話はボクに取り入るための甘言か、陣が効力を失うまでの時間稼ぎだ。
有害な存在なら送還してやるのが筋だが、あいにくそのページはまだモノにしていなかった。
ボクが悪魔に付け入られるか。
それともボクが悪魔をどうにかして対処するか。
だが当時のボクには悪魔をどうにかする力なんてない。
さて、どうするか?
「ところで聖霊。願いを叶えるとはどういうことだい?」

         ―――「あなたは望むあらゆる願いを叶えるということです。」

「じゃあ、ボクが富を望めば叶えてくれるというのか。」

         ―――「それくらいはお安い御用ですよ。私がご用意しましょう。」

言うや否や、陣の中央は金貨で溢れ始めた。
奴が得意げな顔をするので(少なくともそう見えた)ボクは大げさに喜んでやった。


「これは素晴らしい。しかし富では人の心は買えない。
 永久の伴侶の愛など、お前には用意できないだろう?」

         ―――「それくらいはお安い御用ですよ。私がおそばに居ましょう。」

言うや否や、そいつは美しい幻想種の姿を取った。
その時、足元の金貨がじゃらりと音を立てたことから、これは幻覚ではなく変身だと当てを付けた。


「これは素晴らしい。しかし美しいばかりで脆くてはすぐに失われてしまう。
 私や己の身を守れるほど強くなければ、愛など無意味なのではないか?」

         ―――「それくらいはお安い御用ですよ。私の力をご覧ください。」

見る間にそいつの頭髪は炎のように燃え上がった。
陣を超えて天井を焦がし、ジリジリとした熱波がボクにまで伝わってきた。
やれ困った。こいつは実際に強い力を持った悪魔であるらしい。
いよいよもって陣から出せば、奴にいいように利用されるだけだろう。
さて、どうする?
陣の効力が弱まるのを察してか、その悪魔は不敵な笑みを見せた。
考える時間も余裕もないことをボクは察した。

「……これは素晴らしい。今すぐにでもお前を開放してやりたいくらいだ。」

         ―――「そうでしょう。そうでしょう。」

「だがこのような富と、愛と、力を。
 その全てを備えていると人に知られれば、あらゆるものから嫉妬を買うだろう。
 たとえ自分がそれを手にするに足る資格を備えていたとしても、完璧な人間というのは完璧すぎるがゆえに反感を買うものだ。」

         ―――「では、いったい何を望むというのですか。」

「せめてお前が誰の目に触れぬよう隠せるのなら。
 たとえばほんの小さなカエルのように、懐に隠せる小さな存在であったなら。
 私はお前を私だけのモノにできたというのに……」

         ―――「それくらいはお安い御用ですよ。」


そいつはボクの目の前で掌に収まるくらいの小さなカエルになって見せた。


「完璧だ!お前をそこから出し、自然へと還してやろう!」
そうしてボクは陣を解くと、そいつを引っ掴んで頭を齧り千切ってやった。
めちゃくちゃ不味かった。
金貨は屑鉄にメッキを施したもので一銭の価値がないことがわかった。

こういう古典的な手法も案外馬鹿にならないよな、っていう。
そういう話だよ。
……いやァ、どっちが本当の悪魔なんだカ、分かったモンじゃねぇナ。
……いヤ、お前は結局、その悪魔に食われることなく今ここに居るんだかラ、それを喜ぶべきカ。
(ククク、と愉快そうに『赤羽』は笑った)

俺は悪魔、なんて格式高いモンは呼べねぇガ、死霊を召喚して使う事だって往々にしてあル。
無論、そいつ等も『良いやつ』とも限らねぇからナ……おちおち気も抜けねェ。
ある意味、同業者からの貴重な体験談、としテ、受け取っておくヨ。
……ところで。一つ確認というか、質問なんだけど。
『その悪魔はちゃんと、間違いなく、セレマの手で殺されたんだよな?』
ほら、勝手な俺のイメージだけど。
そういうヤツって、トドメをさせてなかったりとか、中途半端にやっつけたりすると、仕返しとか、そういうの怖いからさ……。

(今度は恐る恐るといった体で、柔らかな『大地』の声音が、美少年に問いかけた)
相変わらず話が上手い。
くふ、カエルは皮剥いで喰わんと生では不味いのである。まぁ貴殿のは別物のようであるが。
災難であったな美少年。

(ちらと、横目で赤羽の方を見やれば感想はそれだけ、という風に黙りこんでテーブルの上のつまみを取りにかかる。
 一先ずは何か言うにしても回答を待つ心積もりのようで、セレマの様子を気にする素振りを見せている)
さぁ?知らないね。
もしかしたらアイツは本当に神聖な聖霊かなにかで、殺されることによって本当に自然に還ったかもしれない。
それとも噛み千切った拍子にボクの肉体に、そして魂の奥底に侵入して、身も心も支配してとうの昔に悪魔に支配されてしまっているのかもしれない。
それとも陣を解いた時点で、悪魔はボクに幻覚を見せてからどこか遠くに逃げ出していて、ボクの預かり知らないところでトンデモない悪事をしているのかもしれない。

どっちにせよ今のボクに実害が生じてないなら、それでいいんじゃないかい。
(全く持って自分勝手な言い分であるが……カードは『真実』を示している)
……分かったような……分からないような。
うーん……まあ……でも……今見たところ、セレマは元気?そうだし、じゃあ……良いのかな……?
(カードと彼を交互に見遣り、これ以上の言葉は飲み込むことにした)

……あァ、『大地』が野暮なこと聞いちまったナ。
こっちからはこれ以上は無いゼ。ありがとウ。
(そう締めくくると、他に何か聞きたいやつは居るか?と言わんばかりに、今度は女性陣に視線を投げる)
貴殿、変に豪胆なとこあるよな。
(この美少女にとっては珍しい事であるが、賞賛と言うよりも呆れの方が近い声音だ)
うーん、これを聞くのは誘導されてる気がしてならんのであるが――聞いておくか。
『なんで召喚した者に対する対策もないのに召喚術を行った』のであるか?
貴殿にしては余りにも無防備であろう。
偶々その時自殺したい気分だったとも思えぬし、借金取りにでも追われたか。
いいぞ、これで質問2だ。

答えは単純明快。ボク自身が騙されたからだ。

ボクがこの道を目指すにあたって協力してくれた恩師………
恩師……


ああ、うん、恩師だよな…あいつは…恩師でいいんだよな…
恩を恩と思わぬ不義理は美少女不覚悟であるぞ。しっかりしろ。
まぁ、ともかく。魔術の恩師が居たんだよ。
その筋に詳しいタイプのね。

そいつがボクに対して宿題として召喚の魔術を課してね。
あの頃のボクはまぁ若かったのもあったから疑いもなく受けたんだけど………。
『下級精霊の召喚』の教本の前半部分を、『悪魔召喚』のページに丸ごと挿げ替えてやがった。
そりゃあ精霊の送還の手順で悪魔が帰るわけないだろ。

あとで確認したが、アイツはね。本当に酷い奴だ。
「自分の顔を見せず悪魔を召喚できるならそれに越したことはない。
 お前がどうにかなってしまったところで、悪魔と交渉のテーブルに着く予定だった。
 対話ができない奴なら隙を見て送還したし、お前がどうにかできる奴ならそれまでだった。
 お前が生き残ったのは誤算だ。」
お前、これを面と向かって言われるボクの身にもなれよ。
むしろ不義理食らったのボクだぞ。
若かった頃、などと口走ればメッキが剥がれるぞおじいちゃん。
まぁ、要は生贄にされかかっておった訳か。
ふふん、それでも恩師と口をついて出てくるのであればそれは真実であろうよ。
吾は普通の師弟関係など知らぬが……。

(一頻り笑った後、そう結論付ければ湯割りで軽く唇を湿らせて)

不利にはなったが中々面白い話が聞けたな。
セレマくん度胸あるなー。
てか召喚魔法なんてあるんだねぇ、あたしにはサッパリ理解できそうにないけど。
(その話が『真実』であることを示しているカードを視界の端に入れて小首を傾げながら)
うーん、聞きたいことは全部先に聞かれちゃったな。
あたし的にはそこで文字通り喰らいついてやったセレマくんのガッツを評価したいね!
明らかにこっちをハメようと舐めてかかってるやつにケジメをつけたのは偉い!!
っとと、次はあたしの番か。
うーん、上手いこと話題にできるようなカード引けるかなぁ?
(テーブルに並んだつまみをパクつきながら、山札へと手を伸ばす
 地球のものとは明らかに違う、不思議な力を放つそれに内心ときめきながら一枚を引いた)
53
【53.技巧】
ふんふんふん、これなら話せそうなこともある……かな?
ちょっとまってね、話を纏めるから~
んじゃあたしの話をさせてもらおっかな!
となるとまずあたしの出身世界のことについて話さないといけないんだけど……
地球って知ってる……よね? あたしみたいな旅人(ウォーカー)によくいるし。
まぁ一口に地球って言っても結構違いがあるみたいで、中にはフィクションみたいな世界の地球もあるらしいけど、大体の場合モンスター退治とか、命懸けの戦いっていうのとは無縁なんだよね。
特にあたしみたいな日本出身だと喧嘩一つしたことないのもザラで、まぁ普通は武器持って戦うなんてできないわけだよ。
でもちらほらいる地球の、日本出身と思しきイレギュラーズの中には戦える人もいるよね。
それにはきっとそれぞれいろんな理由や手段があると思う。ま、それは置いといて。

本題はここから。
あたしが戦える理由……戦うための手段はどうやって手に入れたかって話。
答えから先に言えばデルさんのおかげなんだよね!
(言って背もたれに立て掛けておいた巨大な石斧――ネアンデルタールを片手で担ぎ上げる)
(一度卓上にそれを置こうとして、脚が軋む音を聞いてすぐに持ち上げる)
(しばし逡巡した後、ネアンデルタールの斧頭を床に突いて)
いんてり……いんて……『インテリジェンスウェポンである、トモコ』 そうそれ!
たまーに依頼とかで喋ってるのを見たことある人いるかな? 賢い斧のデルさんだよ。
『銘を"ネアンデルタール"。当機は現在、ユーザー・トモコの所有物である』
(そう簡潔に述べて、ネアンデルタールは沈黙した)
(極めて無機質な、機械然とした発声は男のものとも女のものとも判別がつかない)
デルさんはねー、すごいんだよ!
あたしの身体でどう戦えば効率的なのか、どういう戦い方が有効なのかとか全部考えてくれるんだ!
もちろんデルさんの言う通りにするためにはあたしも強くならないといけないんだけど、要求されるスペックさえあれば、デルさんの……エンザン? が許す限りでどんな戦いでもできるんだよ!
(混沌の法則に置き換えて言えば、混沌肯定『RPG』をネアンデルタールが代行している)
(朋子のスペック=「レベル」が基準を満たしていれば、その存在規格内で朋子が要求する戦法を演算・出力している)
(――という旨を朋子の拙い説明をフォローするようにネアンデルタールが述べた)
(尚、当の朋子本人はその捕捉の意図をほとんど理解できていない)
ラド・バウで大会に参加してる会長とか赤羽くんなら気づいてるかもだけど、あたしの戦い方ってちょくちょく変わるでしょ?
あれって「頼々くんに負けた~~!!」とか、「頼々くんに勝てない~~~!!」とか、いろんな理由で違う戦い方を目指そうと考えたときに、デルさんが示してくれたトレーニング内容に従っていつも鍛え直してるんだ!
不思議と以前の癖とか、違和感とか、そういうのも全然無くて、新しい戦い方でもまるで混乱せずにいられるのは、全部デルさんのおかげだよ!
更に言えば、デルさんの武器としての性能の違い(メタ的に言えばその時々で装備している武器の差異)もそういうこと!
あたしが望む戦い方、強さを叶える方法を教えてくれるのがデルさんなのだ~~!
いじょ、あたしの【技巧】についてのお話でした!
どう? わかった?
(すぅ、と視線を細めて話に耳を傾ける。値踏みする。
 女の方はともかくとして、武器の方はそれなりに見るところがある。
 彼女の言い分を素直に噛み砕くなら、アレは最適な戦方を指示する武器である。
 アレは所持者の成長を予期したうえで、そこに至るための最適な解を提示する。

 なるほど『使える』。自分なら果たしてどう使うだろうか。
 いや、しかし。あれもまた魔性の類であるなら代償は?見返りは?
 あるいはどうやってモノにするだろうか?)


…概ね。
つまりキミの実力、特に技術的部分に関してはその……デルさん、だったかい。
そっちに大きく頼っているという話だね。

再現性東京人を見たから、地球人というものが脅威に臆病な体質であることはわかってはいたが……なるほど。キミの場合は出会いに恵まれていたからこそ戦えたんだ。
類稀な巡りあわせだ。
混沌ひろしと言えどそれほど幸運な出会いもなかなかないだろう。
そう思うよ。
この前までは足を潰せばどうとでもなった所が今はどうにもならぬからなぁ。
なるほど、それが「デルさん」の仕業か。
様子するに望んだ方向に所有者を最適化させる訳だが……。
(朋子と石斧の間を視線が往復する。軽く探るような気配)
技量があっても戦いに臨む心構えがなくては戦場には立てまい。
戦いとは無縁の世界に居た割には朋子はこちら側に近い、と言うのが吾は気になる。
つまりは『精神面もネアンデルタールの影響を受けているのか』というのが吾の質問であるな。
(共感するように、深く頷いて)……なるほど。俺が、生きていくための多くの知恵を、授かったように。
明子。お前ハ、その『デルさん』と手を組む事デ、この混沌を生きているんだナ。

(それ以上の言葉は、一度飲み込んでおく。……問うにしても、先のセレマの談で、百合子が、先に出た問の答えを待ってから疑問を投げかけたように。今度は彼女の言を待ってから、ということらしい)
えへへー、デルさんとの出会いはあたしにとって運命だよ!
デルさんと出会ってから退屈する暇が無いからね!

それで……ええと、精神面への影響だっけ?
特にそれっぽい感覚は無いかなー。戦いとは無縁って言っても、あたしは喧嘩上等だし、熊とかおじいちゃんとよく狩ったし!
ていうかデルさんも戦利品だしね! ま、その話はまたの機会ってことで。

『ユーザー・トモコの名誉のために述べるが、当機による精神干渉は実行していない。
 そも、干渉が必要になる時点で当機を所有するに能わず。ユーザー・トモコの性能実証は全て彼女の資質によるものである』

……だってさ!
というわけでご安心だよ!
それならばよし!
勇猛なのは朋子の資質であるのだな。よいぞ!
なるほどネ。……(問に対する快活な答えに、満足げに頷く)
……あァ、俺からは質問は無いゼ。
無いというカ、聞こうと思ってた事ガ、今の回答でほんの少しばかリ、分かったからナ。

……セレマはどうだ?朋子に聞いてみたいこと、あるか?
ん………いや、これ以上は。今は特にないよ。
(これ以上を詳しくを聞いてもいい。
 聞いてもいいが、そこから先はゲームの範疇を超える。
 無用な脱線は却って警戒を買う……今はいいだろう。今は。)
はい! それじゃーあたしの番は終わりで、次は赤羽くんだね!
さささっ、どんとこい!!!
……ん、いいんだな。(問の続かぬことを確かめると、カードの束に手を伸ばして。今にも割れそうな細い硝子板でも扱うように、そっと、一枚、自らの元に手繰り寄せた)
※【●特別ルール:カード指定】使用

【11.肉体】
……ふぅン、これが来るカ。
……肉体、肉体ぃ〜……?
俺、ド文系だからなあ。
体力とかはちょっとなあ。

あぁでモ、腐ったゾンビ共の話とカ。
話せるネタは色々あるガ……

えっと、んんー……。
(愉快に口元を歪めたと思えば、苦悩に眉をひそめたり。コロコロと、赤羽・大地の表情は動く。
話の内容を、今からこねくり回しているようだが……)
(そういえば、皆の話を聞くのに夢中になっていて、すっかり飲みそびれていた茶に手を伸ばす。……温い。しかし、これから喋ろうとする舌を焼くような温度でなければ、まあよし。)
(ごく僅かに湯気の踊るそれに口をつけ、喉を潤す。これより話す言葉が淀みなく流れるように、舌に触る苦味が、『次は自分の番だ』と知らせるように。)

……待たせてすまない。
『肉体』ってテーマが、結構大きいから、何を話すか迷っちゃってさ。

だガ、俺の目に焼き付いていタ、凡百の死体の美醜を語るよりモ、今ここにあル、たった一つの肉体。
それについて語る方ガ、皆にも実証できるシ、俺の舌もよく回るだろウ。
皆が楽しめる保証は……どうだかなァ。
(と、肩をすくめて)

故に。今かラ。
……この、『赤羽・大地』の話をしよう。
まず最初ニ。百合子。明子。
お前ハ、この『俺』ヲ、この身の事ヲ、『赤羽』と呼んだナ。

セレマ。
お前は……順番決めの時、『俺』を『大地』と言ったな。
……ああ、いや、別に何かケチをつけたいわけじゃない。
むしろ、どっちも正しい。

『俺』ハ、死霊術師の『赤羽』。
『俺』は、本の虫の『大地』。

……結論から、言ってしまおうか。
この『赤羽・大地』は、『赤羽』と『大地』、この二人が、一つの肉体に身を寄せ合って、命を繋いだ存在だ。
……とはいエ、これだけじゃなんのこっちャ、って話だよナ?
もう少シ、話を続けるゾ。

えっと、この身体のベース、本当の持ち主……は、俺……『大地』の方なんだ。

出身は地球……と、言っても、旅人の言う地球は幅があるけど。
朋子は、自分の出身を思い浮かべてくれれば、ほぼ合ってると思う。
百合子とセレマは、練達……特に希望が浜学園あたりを、大まかに思い浮かべてくれれば良いよ。

……で、俺が、何故『赤羽』と出会う事になったか、と言うと。
それにはまず、この『首』の話もしなきゃいけない、かな。
(今も痕が残るそこに、そっと手を添える。喉からせり上がる言葉を促すように、静かに撫であげて)

また、ハッキリ言っちゃうけど。
俺は、一度殺されたんだ。
初詣……願掛けに出かけた、数年前の今頃の事だ。
肌を刺すような、冷たい風が吹き抜ける日だった。

それは、異常だった。
それは、狂気だった。
それ以上に……それは突然だった。

俺の、目の前で。
一人の学生の首が落ちた。
落ちた首が転がって、残った身体の断面から、血が、ずっと流れてた。

情けないことに、俺は、動けなかった。
身体が、ガタガタと震えていて、歯が、ガチガチと鳴って。
寒さのせい?……そんなわけがない。
だって、『俺』が、人の死を見るのは、それが初めてで。
どうしたらいいのかなんて、わからなくなって。

そして気づけば、そこに女が立っていた。

見た目は、そうだな、百合子や、朋子とそう変わらないくらいの、若い女。
そいつが、身の丈以上の大きな鋏を持って、俺を見た。
刃先は黒かったけれど……それでも、何かでてらてらと濡れているのが分かった。
間違いなく、何か、水気のあるものを切ったあとだった。
そして、今ここで、液体を垂れ流していた者と言えば。
ああ。ああ。……そいつと、目が、合った。

次の獲物は、間違いなく、俺だと言っていた。



勿論、逃げたさ。逃げて、生き延びようと思った。
そこで冷たく転がって死んでいた、名前も知らぬ誰かのようになりたくなんて無かった。

でも、その時の俺には……百合子。
君のような、武術の才も、名だたる美少女のような、選ばれた血筋も無かった。

だから、捕まってしまえば、転んでしまえば、追い付かれて、鋏を向けられてしまえば。
そこで、おしまいだ。

鉄の冷たさが食い込むのと引き換えに、俺の咽頭からは、生暖かい液体が流れ落ちていく。
口の中に、塩気のある、嫌な味が広がって、叫ぼうにも、喉が裂かれちゃ声も出なくって。

やがて、鋏が閉じた。
それと同時に、俺の首も切り落とされて。
……それで、終わる、筈だった。

でもさ、俺は、それでも、死にたくなかった。
殺されてる最中なのに。こうなったら、助かる道筋なんて無いだろうに。
それでも、死にたくないと、まだ生きたいと、願ってしまった。

だって、そうだろう。こんな終わり、納得できないよ。
でも、俺の意志と反して、視界は暗くなって、俺を嘲笑の声音も遠のいて……。

でも、その時に、『声』が聞こえた。
俺を殺した女じゃない。……男の、声だった。
そウ、何を隠そウ、死にたてホヤホヤノ、
……放っとけバ、それこそ永久ニ、鬼籍に入っちまう『大地』に声をかけたのガ、この俺、『赤羽』ダ。

幸か不幸カ、大地ハ、『死にたくない』と強く願っていタ。
俺ハ、死霊術師の『赤羽』ダ。
……もっとモ、全盛期の実力なんテ、遠い昔の事だったガ。
死んだばかりノ、綺麗な体なラ、まァ、その時ハ、生き返らせる事も不可能では無かったシ……それニ。

……大地。
こいつの魂の叫びハ、蘇りを完成させるにハ、充分過ぎる程の執念だっタ。

……何故助けたカ?
その時の俺にハ、……理由は省くガ、宿る身体が無かっのサ。

魂だけになっテ、丁度彷徨ってる所だったんだヨ。
そこに死にたくなイ、と心で泣き喚いてるモブ男クン。
こりゃア、使わねぇ手は無いだロ?

とにかク、俺ハ、今際の際の『大地』に取引を持ちかけタ。
お前を蘇らせてやるかラ、お前はこの俺の器になレ……とナ。
勿論、断る筈なんて無いサ。
実際、俺の目論見通リ……大地ハ、俺の出した条件を呑んダ。
……うん、『赤羽』の意図とか、腹の中はともかく、俺は、彼を受け入れた。
赤羽が神だろうが悪魔だろうが。俺は、死にたくなかった。
縋れるものには、すぐに飛びついた。
……結果的に良かったか否かは、ここでは置いとこう。

その時に交わした契約は、まあ、言うなれば。

『赤羽』は『大地』の首を繋ぎ、その生命を繋ぎ止める事。
『大地』は『赤羽』の器となり、その魂を守る事。

……大まかに言えば、こんな感じかなあ。

あア、でモ、ぶっちゃケ、俺はエンバーミング?は苦手でナ。

セレマ。
お前のようニ、綺麗な身体で復活できるんなラ、良かったガ……結果ハ、見りゃ分かんだロ?
(言いながら、首の境界を指で示して)

これは別に大地のせいじゃねェ。
俺の実力不足……さもなくバ、そもそも大地を殺した女のせいだからナ。

まァ、兎にも角にモ。
……こうやっテ、俺達は『赤羽・大地』と成っタ。

このゲームハ、『自分がやり遂げた事』『自分が挑戦している事』『自分の目標』……ヲ、言えと言ったっけカ?

なラ、これが俺達の『成し遂げた』事ダ。

復活。融合。蘇生。邂逅。
好きな言葉でイメージしてくれりゃあ良イ。
……俺達は、『赤羽』『大地』は、こうして生まれて、今、混沌で生きている。
この身体は一つしかないけれど、二つの魂を抱えて、この席に座っている。

朋子と、デルのような関係……と言えるかは怪しいけれど。
まァ、運命共同体だヨ、ウン。

『赤羽』の言葉が『真実』である事は、『大地』が証明するし。
『大地』の言葉に『偽装』が無い事ハ、『赤羽』が証人となろウ。

……なんか、肉体の事以外も色々混じっちゃったけど。
俺達の話は、とりあえずここまでだ。
……誰からも質問が無けれバ、ナ。
……えっ、赤羽くんいっぺん死んだの!?
ていうか状況がめちゃくちゃホラーじゃん! なにその首切り女コワイ! シザーマン!?
赤羽くん、あ、ちがうか、大地くんめっちゃガッツあるなぁ!
ガチで一度ほんとに死んで蘇ったっていうのはさすがに予想外だよ……世界は広いなぁ……
そう、シザーマン。そういうホラー映画ばりに、デカい鋏を持ってたよ。
一応、俺達は、その女のことを『首狩り兎』と呼んでたんだけど。

あァ、でモ、皆が首を切られる心配は無いと思うゾ。
その女にゃア、後々きっちり仕返ししてやったシ……仮にまたそういうヤツが現れようガ、ここの連中はあっさり死ぬようなタマじゃねぇだろウ?
おおー、きちんとやり返したんだね。えらい!!
……あっ(
(ふと気付けば先に引いた【技巧】のカードが強く輝いている)
(今の話に対し、朋子が「心の底から驚いた」ことを示す証左だった)

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