シナリオ詳細
そうだ、オフ会に行こう
オープニング
●おふかいってなに?
『可愛い狂信者』青雀(p3n000014)とプランクマン(p3n000041)の二人は、顔を突き合わせて唸っていた。
今回、彼女らに課せられた任務は『オフ会なるものを開催してほしい』というものだ。
なんでも、どこぞの貴族が異世界にあるオフ会なるパーティの存在を知り、これをこちらでも開催したいと言い出したのだ。
だがここで、ひとつの問題が浮上する。
「オフ会って何ッスか?」
「オフ会って何ニャ?」
二人はオフ会がどういうものかさっぱりだったのだ。
「なんか、顔を見たこともない人もいっぱい来るらしいッス」
「ニャんと、オフ会ってのは知らない人の開催でも来たいものなのかニャ」
「じゃあよっぽど魅力的な集まりなんッスね。どんなんッスかねえ?」
「まあ食いもんは欠かせねえよニャ。貴族が開くパーティで食い物がないとか聞いたことニャーし」
「でも、知らない人も来るならどれくらい用意すべきかわからないッスよ?」
「みんなで持ち寄るんじゃニャーか?」
「そうかもしれないッスね。じゃあ、来る人には何か持ってきてもらって――」
「そうなると、室内では難しいから――」
後日。
ギルドにある依頼表の目立つところに、でかでかと次のような張り紙が出されていた。
『オフ会を開催します。皆でお肉や野菜を焼いて食べるので、参加する人は持ってきてください。詳細は――』
- そうだ、オフ会に行こう完了
- GM名yakigote
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年10月09日 21時15分
- 参加人数85/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 85 人
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参加者一覧(85人)
リプレイ
●けっせんぜんや
見渡す限り真っ青な海と、波打ち際の音。海水浴をするには気温が下がりすぎているが、秋の海も綺麗なものだ。
最近は少しだけ気温も上がっているので、水場というのはそれだけでも有難かった。
「おほー、いい場所ッスねえ!」
「場所だ質だの選別ってニャあ貴族サマに任せるもんだニャ」
「でも、なんでもう網も炭もあるッスか? プラちゃんやったッス?」
「やるわけねえニャ。貴族サマの手配じゃニャーの?」
「親切な貴族もいるッスねえ」
「ホントニャー」
何はともあれ楽でいい、と結論付ける二人の視界には映らぬ隅っこで、ひとりの男が両手で手帳を閉じた。
「ふう、準備や手配が完了しました。オフ会は段取り八分。当日までの仕事が重要なのですよ」
では第一回混沌オフ会、開始です。
●いざかまくら
「オフ会ってことは、何もしねぇで堂々とサボってても許されるってわけだ」
縁は頃合いな木の幹に体を預けて、どかっと座り込んだ。
「なんせ“オフ”ってついてるくらいだしな。つまり、おっさんも今日一日オフ、と……いやー異世界のやつらはいいパーティを考えつくねぇ」
手にした盃をくいと煽り、目を瞑る。漣は心地よく。
「とっても楽しいと噂の『おふ会』が開催されると聞いて、参加させてもらったけど……」
右を見て、左を見て、その人数に津々流は圧倒される。
「凄いね、知らない人ばかり……でも本当にみんな楽しそうだ」
ざるに乗せたきのこの山を差し入れる。秋の味覚には、ちょうどいいだろう。
「僕も、いっぱい食べて、いっぱい楽しまないと」
「おふ会……おふ会とはいったいなんなのでせう? 『おふ』の会であるということは別に『おん』の会もあるのでせうか?」
ヘイゼルが小首を傾げている。なんだか哲学じみてきた。
しかし現実には食事会だ。正しい真理は得られない。
「ですがこれは千載一遇のチャンスなのです。つまりは……余り物を持っていくだけでただ飯が食べられる!」
「何が何だかわかりませんが、どうやら浜辺で何か食べる様子、ひひひひ、そりゃあ参加するってものです」
せっかくチラシを貰ったからと参加したエマはきょろきょろと辺りを見回している。
「見知った顔や全然知らない顔で溢れてますね。顔を売っておけと言うことでしょうか。に、苦手分野」
「エマ先輩、来てくれたんッスねえ!」
いつもは破天荒なその声に、今はちょっとだけ胸を撫で下ろした。
「ボクは本当のオフ会を知ってるんだけど、言わぬが花ってヤツだよね」
ここのオフ会はこれでいいのだと、セララ。そも、オンラインが存在しているのかも怪しい世界である。
「お肉とキャベツともやしを入れてー、ソースをかけてー、ふんふふーん。一度に大量に作れて美味しい、セララヤキソバ完成なのだ。出来たてだよ。皆食べて食べてー!」
「しかしなんだぁ、よく趣旨が分からねえんだが、皆で飲み食いしてりゃあいいのか?」
それならばと酒を大樽で持ち込んだ義弘。現実のオフ会ではお茶やジュースにしましょうね。
「蠍やら魔種やら、随分と騒がしい世界に来てしまったものだ。だがまあ、旨い酒と喧嘩がありゃあ、悪いもんじゃねえ。俺は俺の信念の為に、戦うぜ」
「……このままだといつものローレット集会のBBQみたいなノリにならねーか?」
勇司が首を傾げているが、さもありなん。そもそもイレギュラーズばかり集めているのだから、実質慰労会のようなものである。
「まっ、楽しめるんならソレはソレでアリなのかね、今回は。一応参加してる連中が羽目を外し過ぎない様に注意だけはしとくかね」
「――――」
ナハトラーベの周囲だけが、沈黙に包まれていた。肉だ野菜だロバだとはしゃぐ面々も、彼女の様子には口を閉ざしている。
白手袋に包まれた両手を合わせ、目を伏せた。長い。長い。
あれは何の意味があるのだろう。黙祷のような、瞑想のような、はたまた儀式のような――ポケットから唐揚げが転がり落ちた――ただのいただきますのような。
『持ち寄ったモノはそれが食べれるモノか、まず持ってきた人が焼いて食べて証明する』
クロジンデは適当な看板に注意書きを書き込んでいた。
「イレギュラーズの面々の普段の行いからだと闇鍋状態にならないかは心配だけどー」
ある程度は、ルールが必要だろう。なんせ、開催を掲げた二人が二人だけに、きちんと管理をするのかも不明なのだから。
「それにしても、もう少しこう……ふわもこアニマルと関われる依頼がないものか」
ゲオルグが顔に似合わぬ悩みを抱えている。
「私はもっとふわもこアニマルとラブラブちゅっちゅしたいのだ!! それだというの村を焼くものだの孤児院を焼くものだの殺伐としたものばかり。何故だ、混沌ならふわもこアニマルが沢山いるはずなのに!」
ロバならくっそ来てますけど。
「……ぶっちゃけオフ会をダシにBBQしに来てるようなモノよね、コレ」
竜胆がぶっちゃけてしまった。マスコメでもオフ会だって豪語しといたのに。
肉を焼く匂いが鼻をくすぐってくる。こうして集めるのは、大抵が安肉を決まっていそうなものだが。
「外でこうして焼いてるだけなのにいつもより美味しく感じるわ。やっぱり皆でこうして集まっているからかしら?」
「オフ会。我が元の世界でもあまり聞き覚えのない言葉だが人心に余裕があった時代は同好の士の集まりとして親睦会的なものとしていたのを記憶している」
思い出しながら、というように自分のこめかみを指で叩くラルフ。そっち系に詳しくないのにこの単語の意味を知ってたらすげえよな。
「かくいう私も遠い昔にそういう楽しみを謳歌してた気がするのだよ」
「マフィン職人のルチアーノです! よろしくね!」
お菓子の差し入れはオフ会でよく見られる光景である。でも飲み物の確保は必須だ。司会進行役にクッキーとか持ってくと結構地獄だぞ。
ルチアーノはあちこちで差し入れと挨拶を続けながら、顔と名前を覚えていく。戦闘で、戦場で、長い付き合いになるかもしれない。せめても、誤射は避けねば。
「オフ会と聞くと、話題に乗れなかったり中々人混みに入り込めなかったりする奴も居るよな……まぁ、主に俺の事だが」
モルグスはひとり離れたところに座っている。
「本当は多人数と話すのが苦手だけど、その場のノリとか謎の使命感でオフ会に行こうとする奴も居るよな……まぁ、主に俺の事だが」
「誰かと約束とかしとけばよかったとか、思っちゃうんだよニャー」
なんか湧いた。
「何のオフ会が開かれるのかは、知らないけれど、元の世界でのオタク知識から、オフ会というからには、交流会だろう、何のオフ会かは、着いてから聞けばいいじゃない」
真はそう考えていたが、残念ながら主催陣はオフ会が何かもよくわかっていなかった。想定の一歩手前の状態である。
ともあれ、顔を広げるのはいいことだ。愛犬を連れ、輪へと入っていく。
シャルは交流よりも料理を作る方に専念していた。
肉の類が多そうだと、持ち込んだ野菜をアルミホイルで包んで網に乗せていく。アスパラにトウモロコシ、芋類に玉ねぎエトセトラ。美味しそうな匂いにつられたのか、気がつけば何人も集まり、調理の完成を待ち望んでいた。
ホイルを広げると、香りが強くなる。
「美味しく焼けたかな?」
「オーッホッホッホッ!! オフ会……というものは寡聞にしてさっぱりわかりませんが! 要するに遊びましょうということですわね! きっと!」
タントはテンション高くよくわからない自信を持ってそういった。大体あってる。
「あーお肉美味しいですわ!! オーッホッホッホッ!!」
これほど前後で釣り合わないセリフもなかなかないよな。
「ええと……何が何だかサッパリ、だけど……皆に、挨拶していこう、かなって……」
ニミッツが輪に入る手前で止まっている。
「ほら、私って新参者だから……名刺を事前に刷って、配っておこうって……でも、覚えられないと思うなぁ、私って地味だから……」
「ニミッツ先輩ッスね! 宜しくッスよう!」
テンション高いやつが招き入れた。目をつけられたとも言う。
エンヴィとクラリーチェは、互いに弁当を作り、持ち込んでいた。
「お弁当、私も作ってきたけれど……どうかしら?」
「可愛らしい包み、開くのが勿体無い気もします……では、こちらが私の作ったお弁当です。是非」
蓋をあけると、かたやタコさんウインナーやサンドイッチといった微笑ましいもの。かたや唐揚げや卵焼きと定番ながら腕の試される中身が顔を出す。
「此方もとても美味しそう……玉子焼きも綺麗に焼けてて……妬ましいわ」
「サンドイッチ、美味しいです。『妬ましいわ』かしら?」
その言葉の真意を知っている、クラリーチェはエンヴィに向けて微笑んだ。
「そうやって言われると、少し恥ずかしいわ……」
頬を赤らめて、少しだけ俯いた。
「ねぇおじさま『おふかい』てなぁに? お料理食べる催しの事?」
ルアナが横に立つグレイシアを見上げて尋ねた。
知らない異世界の言葉、というやつは大抵バベルが解決してくれる。だが、何故だか今回ばかりはそれが上手く働いてはくれないようだ。
「吾輩も初めて聞いたが……恐らく、そういう催しなのだろう」
真偽を追うことはできない。
「ルアナ、お肉食べたい! おにくー!」
それよりも、ここの趣旨は食事会である。ならば食べることを優先して問題はない。
「肉であれば下拵えした物を用意してある、すぐに準備するとしよう」
「いざおふかい!……ただの焼肉だよねこれ。おじさま、あーんしよか?」
「必要な時があれば、その時に改めて頼むとしよう」
「同じギルドに所属するとは言え、こうして二人で出かけるのは初めてですね」
「確かにあまり交流なかったりするんだよねえ。こういう機会は大事にしていかないと」
ヘルモルドは悠の皿にに焼けた肉と野菜をバランスよく置いていく。海辺でバーベキューといえばメイドの出番なのだ。わかってるよ書いてるけど意味わかんねえ。
「まあ、ヘルモルトさんが好きで世話したいって言うなら止めはしないけど」
酒の類は遠慮する。どの世界と国で法律がどうと言うのはわからないが、それでも自分の基準として未成年である。規律とは自身の内に持つものだ。
「……そう言えば水着は着ないのでしょうかね?」
「流石に今だと寒くない?」
「おふかい……って、何?」
「あーオフ会ね分かる分かる、オフ会っしょ? わかるわかるちょーやったことあるし
だからほらアレだよアレ、オフ会ったらあれに限るっしょ」
オリヴァーの質問に、マリネが答えている。答えている?
「だからほらアレだよアレ、オフ会ったらあれに限るっしょ」
「リネは、知ってる。行った事も、ある……? じゃあ、僕も行った事……ある、のかな」
知らなかったけど昨日行ったのがオフ会だよ、なんてことはそうそうないと思う。
「ほらあーしめっちゃオフ会やったことあるから大丈夫だって危なくねーって。だってすげー遊んでそうだしうまそーな名前じゃん!」
…………あ、貝か。
「リネと一緒、なら……大丈夫。……たぶん」
「兎に角、焼肉! バーベキュー! さっきまで命……じゃない、持ち込みの食材なら良いものがある。我が友だ! 肉だ! 心臓! ハツ! ココロ! 一緒に食べよう我が友。君がただならぬ妹力を発揮しているので今日の私はお兄ちゃん。はい、あーん!」
「親愛なる友よ。焼肉がお望みか。驢馬よりも心臓や肺がお望みか。ならば隅の隅で我等『物語』と蠢動を貪り尽くそう。我等『人間』の兄よ。何。自己再生だったな。素晴らしい提案に感謝と哄笑を――Nyahahahahaha!!! ああ。網焼きも好いが生食も至高。嗜好。貴様が欲するならば『あーん』でも如何だ。されど問題は己の口内。歯も舌も無い故、肉を呑み込み難いのだ。されど親愛なる友。貴様が齎すと説く場合は全力で――んン」
何この正気度チェック要るイチャイチャ。
「オフ会って何でしょうね、皆集まってパーティみたいな事をする……とは聞いていましたけど」
聞いたことのない名前に、イージアが首を傾げている。
「まぁ細かい事を省くとパーティで間違いないわ。今回の趣旨からして飲み食いしながら交流しましょう、って事だろうし」
その疑問にアリシアが答えた。ようは、それを表す効力を失った時点で、名前に意味などないのである。
「そういえばこんなのも有ったし『焼きそば』みたいなのも出来そうね」
言いながら、ぱっと拵えて差し出されたそれをイージアがきょとんとしつつも口に入れた。自然と頬が緩む。
「うろ覚えで作ってみたけど、どうかしら?」
「似た様な料理は食べた事有りますが、これは初めてですね」
「偶には外で食べるのも良い物じゃ」
「ボクもお手伝いするよ! 何したらいい?」
外で料理を、という華鈴に応える結乃。オフ会ってなんだっけと考えるのは今更である。
「そうじゃな……それなら、結乃も一緒に焼いてみるかの?」
「はーい。こうだよね」
網の上に置いたそれを見て、真似をするように肉を並べていく。
芳しい匂い。焼けて変色していく肉。それをじーっと眺めている。
「こんな感じになったら、こうやってひっくり返すのじゃ」
「やけたかなー♪」
華鈴の動きを見ながら、同じように肉を返していく。
「うむ、良い感じじゃな。焼き過ぎに注意するのじゃ」
「美味しく焼けたかな? もうちょっとかな……?」
今か今かと待ちながら。
「鈴鹿が誘ってくれたオフ会って皆でご飯を食べながらお喋りする会なの?」
「オフ会……前の世界でコミュニティ内で集まって食事や○○したりするアレね」
ゼンツィオの疑問に、鈴鹿がわかったように頷いている。伏せ字を入れると一気にいかがわしさが増すな。
「と言う訳でゼンツィオ君を連れだしたけど……何で着ぐるみ?」
日光に弱いからだそうで。そういえば、最近は人間も真夏の日中に太陽光浴びすぎると死ぬよね。吸血鬼も身近になったもんだ。
「……ふーん、そりゃ!」
着ぐるみを剥ぐ鈴鹿。番傘で日光を遮ってやるが、ちょっとずらせば、
「……って鈴鹿? 陽が当たっちゃう! 当たっちゃうよ!!」
影を求めて密着するしかないわけで。
「肉じゃ! 海じゃ! デートじゃ!!」
「オフ会じゃ! 焼肉デートじゃぁー!」
この落差よ。
「おっしゃ腹いっぱい喰うぞルアチャン!!」
「炭よし、網よし、肉に野菜よし。んむ、バランス良く食べるのじゃよアマルナ。それ、儂が食わせてやろう。はい、あーん♪」
「お、あーんしてくれるのじゃ? わーい! あー……くぁwせdrftgyふじこlp!!」
焼き立てのナスをねじ込まれて悶絶するファラオ。体当たり芸ではない、ファラオ芸である。
「さっきから肉ばかりじゃろアマルナァー!」
ねじ込まれた温度が口の中で暴れ狂う。二人羽織のおでんなんて目じゃない真剣さがそこにある。だってHPが減っていく。パンドラが消費される。命を賭せ、PPPで世界と運命に否を突きつけ……嘘です。運営さんステイ。ステータスいじらないで、ね?
「…………オフ会らしいですよ?」
『ただのバーベキューパーティだと思うぞ?』
言わぬが花という態度のアケディアに、核心をつくオルクス。
「…………そういえば、こんなもの持ってきていましたか?」
パラソルを指さして、疑問を口にする。
『いまさらそれを言うのか……ルクセリアが食べ物との交換で借りてきたのだ』
「パーティーは楽しんだもの勝ちですよねぇ」
『……』
「それを言うのわぁ、無粋でしょぉ」
レーグラの言葉をルクセリアが嗜める。皆、楽しんでいるのだ。それ以上を言うべきではないだろう。
さながらビーチでバカンス。それならば、必要なものを集めねばなるまい。椅子に、パラソルに、釣り竿は必要だろうか。
「なかなかぁ、集まりましたねぇ」
『……』
「了解ですよぉ。戻ってゆっくりさせてもらいましょぉ」
「まぁ、明らかに何か間違ってるんだろうねぇ」
『気にするほどの事ではない、我が契約者殿』
運んできた食材を、アワリティアが調理している。
「丁寧な料理よりざっくり楽しめるやつがいいよねぇ」
『バーベキューパーティーに上品な料理は不要だろうな』
焼けや良し。
「………そう……だ……オフ、会……って……なに……?」
『説明は難しいな、錬達あたりなら本来の意味で開催されてるかもしれないが』
メランコリアの疑問にコルが答えている。確かに、あの辺りならオンラインという概念があるかもしれない。
「……ん? イン……ヴィ……ディア、は?」
『カウダに連れられて海に向かったぞ?』
「………じゃ……いっ……て…く……る……」
『釣果は見てのお楽しみってことで頼むは』
人の多い場所から逃れ、釣り場に行くというインヴィディア。
渡された釣り竿を受け取っている。
「……あ……り……が……とっ……」
『おっ、複製じゃない方か豪華で悪くないな』
「知ってるふりをして合わせた方がいいと思います?」
『今回はやめておいた方が無難だろうな』
考え込むイリュティムの後ろから声がかけられた。
「何の話ッスか?」
「あら? 飛び降りの時の青雀さんでしたか?
『壮健そうで何よりだ』
「あー、あの時の! 生きてたッスねえ。よかったッス!!」
えらく殺伐とした感想が飛び出した。
「……ん? 飛び降りの娘ね? ちょうど良かったわ。どう? 食べていかない?」
青雀の姿に気づいたスペルヴィアが声をかけた。
「お! 串焼きッスか? いただきますッスよう!」
『毒味役に巻き込むのはどうかと思うがな……まぁ、失敗するようなものでもないが』
サングィスが不穏なことを言うが、実際、串焼きで失敗することなどあり得るのだろうか。
「あぁ、ちょうどいいわね。食べていきなさいよ」
コルヌもまた、焼けたばかりの串焼きを青雀に差し出している。
『……こういう時には妙に気が合うのは何故なのだろうな』
「依頼主がいないっていうのは……どういうことかしらね?」
『オフ会を開きたかっただけということだろうな』
「なんか、こういう場を開けるだけでもステータスとか言ってたッスねー」
力がある、ということを見せるのも必要なのだろう。
「あっ、青雀さん……でしたよね? お久しぶりです」
『時計塔の時の婦人か』
「お久しぶりッスよう! オフ会、楽しんでるッスか?」
集団に入り込んでいる青雀に、グラとストマクスが気づいた。どうにもあの一件は、記憶に根深いようだ。
「よければ食べ物交換しませんか!」
『大量にあるのだ差し上げても構わないだろう』
「喜んでッス! ちょうど生肉を切らしてたんッスよねえ、儀式で!」
名刺。
社会人の挨拶として常識的に用いられるツールだが、オフ会内でもこれのやりとりはよく見受けられる。それも、社会的な社名と名前、肩書と連絡先だけの書かれたものではなく、キャラクターのイラストが使用された手作り感の在るものだ。
余談はさておき、
「あ、私はポテトだ。宜しく頼む」
「リゲル=アークライトです。宜しくお願いいたしますね」
「私はアニーと申します。花屋をしております。どうぞよろしくお願いしますね」
「エリーナと申します。どうぞよろしくお願いします」
四人組が、会場内で名刺を配りながら挨拶して回っている。
世界的に見れば一線級の活躍が多いイレギュラーズであっても、その数は多く、嗜好や種族まで多岐にわたるためか、互いそれぞれが知り合いかと言われればそうでもない。
所属するギルドや参加した依頼での顔合わせがなければ、それぞれの繋がりは希薄なものだ。せっかく集まる機会が在るというのなら、これを有効活用しない手はなかった。
顔が広い。それはひとつの武器である。コネクションの大きさは、力ともなるのだから。
さて。一際騒がしい集団が見えてきた。
人数もさることながら、皆が同じ種族のペットを持ち寄っているので、それだけで妙な威圧感が在るのである。
「あそこは……子ロリババアの集会場か」
とんでもねえ単語である。
●どのぶぶんをさして、どきっ、なのか
さて、さて。
これを描写する前に書いておこう。
この集団。今回の参加者の、実に40%である。
右を見てもロバ、左を見てもロバ。闇の儀式でもやんのか。
「さて、わたしが持ってくるお肉……それは! 子ロリババア肉!! バラ、ロース、ランプ! こんなに持ってきちゃった! みんな食べてね! おいしいんだってば! 子ロリババアを知らない? そうだね、ならこのお肉食べてみて!」
ロクのセリフを、目をつぶって聞いてみようか。な、超怖くねえ?
「さぁさ、皆様。旅一座の看板娘、アルカの初芸お披露目だ……!」
ヨタカの指示に従い、子ロリババァの一匹の上に犬と猫が乗った。アニマルなトーテムポール。最後にキメ顔を作って完成だ。ものすごいブレーメン感。
今、ロバ肉食いながらロバの芸を見ています。
「え、子ロリババアのお肉……!? 食べちゃうの? てか食べられるの?」
チャロロの疑問も最もだ。ところで、気になったので調べてみたところ、普通に販売されていた。別に条約とか問題ないらしい。
「でも、こうなった以上は命に感謝していただきます……って、こんなにたくさんの子ロリババアがいる中で食べにくいよ!」
せやろな。
「招待が来たから様子を見に来たが……こりゃあ一体なんなんだ? なんでも、子ロリババアの肉を焼いて食うらしいが……いいのか? それでいいのか?」
キドーが自分のロバと一緒に、その集団を遠巻きに眺めている。普通に怖いので。
「お前らは一体何なんだ。そもそも在来種なの? 外来種なの?」
なお、キドーは外来種らしい。生存競争って大変だな。
「海辺でのお食事会もいいものですね……皆さん楽しそうですし、心なしか集まったロバさんも楽しそうです……」
マナが自身の連れてきた子ロリババァを見て微笑んでいる。狂気しか感じないが大丈夫なのかこの場所。
「むしろこの異様な光景からマナさんを守らねばならないのでは……?」
ヨハンがそれを見て頭を抱える。頑張れ男の子。
「もちろん、私も楽しいですよ……? レーム様と一緒にいられますから……♪ レーム様は……どうですか……?」
ごめん、こっから自然とイチャイチャに持っていくのは難しい。
「僕の子ロリババァ……なんでしたっけ、シャラはマナさんの子ロリババァと遊ばせておきましょうか……いえ、何なんですかねこいつら、爆発的に繁殖するみたいで……」
「紹介するよ。私の子ロリババアのレイ君だ」
人生で一度あるかないかのようなセリフを口にするジーク。
「それでね…この子最近反抗期なんだよ。私が実験素材としてうちの子ロリババアに薬物を投与とか色々研究の為に実験してるんだけど、よく逃げようとするんだ。困ったものだよね」
さて、食うのとどっちが酷いでしょうか。
「なに、この子ロリババア……セルリアと言ったか、こやつが事ある毎に異類婚姻譚を持ってくるのでな」
リュグナーの子ロリババァは、何やら変わった趣味を持っているらしい。本当にロバなんだろうなこいつら。
「いっそ好意の矛先を誰かに押し付け――もとい、セルリアが興味を持つ者が居ないかどうかの見学も兼ねてだな」
先生、ここにキメラ作ろうとしてるひとがいます。
「ところでこれ、おいしいけどなんの肉なんだ?」
モモカが知らずに食べていた肉を指さした。現実って怖いよな。
「こ、子ロリ……」
真実に、思わずふらっとするモモカ。
「かなりショックだ。食用にしてしまうなんて……なんだか旅人さんに聞いた、売られていく子牛の歌を思い出すぞ」
「子ロリババアを飼う身で、子ロリババアを食すのは若干忍びない気もするが……とはいえ、肉と酒があるなら不満はない」
エクスマリアの見た目で酒という単語が飛び出すと、周囲は少しぎょっとする。
畜産農家だって普通に肉は食うものだ。しかし、子ロリババァは軒並み老ロバである。ということは、食用とは品種が違う、のか?
「僕のメカ子ロリババアことメアちゃんのチャームポイントは、なんといってもメカの上に被った皮の半生加減! しっとりとした皮と皺々な皮の絶妙なバランス!」
幻が自慢のわが子というようにメカ子ロリババァを披露する。こいつら、さっきから程よく書き手の正気度を削ってくる。
「そして、この子の賢さ! さぁ、メア、僕と奇術をしますよ。この木箱に入って滅多刺し!」
メカに刺さるの?
「やっほー! タダで焼き肉ができるって聞いて来ましたー!」
なんとも現金なセリフの洸汰。
「ところでこの肉美味いなー! 何の肉なんだろう、多分今まで食ったことがねーやつだけどー」
誰も教えないように。子供の夢を壊さないように。
「ところで、ここ、なんだかエマにそっくりなロバがいっぱいいるなー! もしかしてお前の姉妹だったりするー?」
「シグの子は最近ロクから貰った子ロリババアなの! エリカはまだお友達がいないから、仲良くしてくれる子を募集するの!」
もはや種族名のようになっている子ロリババァ。そろそろグーグル入力が変換候補に入れてきたぞ子ロリババァ。
「ロクが言うってことは孫ロリババア? っていうのもいるんだよね!」
「リリーのこはきゅうじゅっとうめのパメラだよっ。たまにふうしゃのまえでたちどまったりするから、もしかしたらすきなのかも!」
小さな体を活用し、自身の子ロリババァの背でまったりとするリリー。
「……でもけっきょく、おふかいってなに?」
もうBBQで良いんじゃないかな。
「おいす! 俺は『『幻狼』灰色狼』のジェイク・太刀川だ。ここに来れば肉が食い放題って話を聞いてな、ご馳走になりに来たぜ」
自身の子ロリババァを他の子ロリババァと合わせつつ、子ロリババァの肉を嗜むというのは、ジェイク自身もどうかと思うと言うか書いている方もカオス過ぎてそろそろ発狂しそうだが、細かいことを気にしてはいけない。気にすると多分狂う。
世の中は弱肉強食。食うやつと食われるやつに分かれるのが常なのだ。
子ロリババアのカルシャンと無駄にセクシィな二股大根とプロレスチキンを持ってきた武器商人。よし、何語だ。
「逃げ出したらみんなに捕まえてもらおうね、ヒヒヒヒヒ。変なのと交雑しないといいねぇ」
そろそろ混沌の生体事情が気になります。
「カルシャンには蔓性の植物をあげようねえ。焼肉も食べる?」
「見よ! チェルシー! あそこに焼けているのはたぶんチェルシーのおねえさん達であるぞ」
美少女力たっぷりの発言をする百合子。残酷過ぎるわ。
「む? チェルシーも子ロリババア肉の味が気になるか? よいよい、吾の分を取るついでに取ってきてやろう。良く噛み締めて同じ味になるのだぞ」
いいか、普通食用には名前つけないんだぞ。
「すっごーい! 子ロリババアがこんなに! レアないきものだと思ったら、こんなに繁殖しているなんて……」
目を輝かせるボルカノ。いやまあ、ロバだし。
「エカテリーナは元気にしてるのであるよ! この通り白いぱんつが止まらない様子で!」
食事用の白いぱんつを与えながら自分の子ロリババァを見せるボルカノ。筆者の精神力はもう結構な低空飛行をしているぞ。
「ああ最初はそこまで可愛いとは思わなかったんだが。飼っているうちに愛着が湧いたのもあるのだろう」
自分の子ロリババァを撫でてみせるノワ。ブサかわいい、というやつらしい。
「ところでこの焼肉とても美味しいんだが? 本当に子ロリババアの肉なのかい!? ……凄い動物だよ子ロリババア」
「ちょっと招待状の文章サイコ過ぎない?」
食いづらそうに肉を見ているマカライト。うん、あれ青雀にも届いたよ。なんで開催する側にも送ったのかは全くの不明だったが。ていうかあれ、子ロリババァ宛に届いてたよな。
それでもまあ、食用になってしまった肉にケチをつけても仕方がない。肉は既に飯なのだ。残さず食うのがせめてもの供養だろう。
「こらこらカサドラ。かわいい女の子や男の子の匂いをかぐのはやめなさい。相手さんに迷惑でしょう」
史之の連れてきた子ロリババァ、カサドラは無垢な少女と快活な少年が大好物だ。よし、字面にするとすっげえ怖いぞ。味か、味なのか。
「あ、焼肉食べます。まずは体力づくりから!」
「……え? 食べるれるの?」
招待状を受け取った衣の第一感想はそれだった。無理もない。老いた動物は普通食用にはしないからだ。え、違う? いかんいかん、毒されてきた。
「空飛ぶスパゲッティってなに!!!」
未だに自分の子ロリババァの好物がよくわからない衣。混沌には実在するのか、アレ。
カタラァナが自分の子ロリババァと一緒に鎮魂歌を歌っている。生まれてきた子ロリババァにも、生まれなかった子ロリババァにも、これから生まれる子ロリババァにも。全ての子ロリババァがやることなき子ロリババァ生を送れるようにと。ここまでインパクトのある言葉だとなかなかゲシュタルト崩壊しねえな。
「そしてさておきわーい肉だー!」
一番の鎮魂対象が口の中へ。
「今日は兄弟ぎょうさんおって嬉しいなあ栄えてるなあ滅ぼしてええ?」
フレンドリーなミドゥス。
「いやーまだ早いか。もちっと増えたら滅ぼそうな!」
まだ増えるのか子ロリババァ。
「そこでちっこいカニ捕まえたんやけどこいつも焼かん? 現地民焼くのはマナーやろ。思い出づくりっちゅーやつ?」
いかんいかん、場が狂気過ぎてなんでもない発言に見えてきた。
「さて、バーベキューと言う事だったが……」
クリスティアンが改めて招待状を見て、顔をしかめた。そらな。
「本当に子ロリババアを捌いてBBQをするのかい? 今となってはもう暮らす家族のように感じているんだ。そんな彼女らの仲間の……肉を……たb……そんなはずがないじゃないか……これはきっと普通の肉さ、ソウ、フツウノニク……」
おい、なんか洗脳されたぞ。
「ボクのうちに来たばかりのニーナが、ぎこちなくしていまして……」
ナキが他の子ロリババァユーザーに相談している。ここだけ見ると犬好きの集いとかそういうのに見えなくもない。
「居心地が悪いのかな? それとも、ポピーと相性が悪いのかな……? ポピーのあるまじさも、慣れたら可愛らしいものなのに……」
あるまじさって何だよ。
「みんなでご飯食べる会は楽しいなー? 熊はいつもよりはしゃいでるし、ユエもリコリスも姉妹と会えて嬉しそうな気がするぞー」
カナメは子ロリババァの集まりを微笑ましそうに見ている。
「しかし美味しそうな匂いがするなー? なんの肉……え、ロリババア肉? ……カナメは今日は魚介系な気分だから肉は食べない事にするよ。熊も食べるなよ? いいな?」
「モニカは確か傷んだ砂肝が好物だったはずだ。砂肝はさすがに……ないか? 探そう。分けてくれ」
砂肝を探すトルハ。流石に傷んだのを持ってくる人はいないのではなかろうか。
「モニカ……? や、やめるんだ。その肉はおそらく、たぶん、いや絶対に君の姉か妹の肉だ! 食べるな! 食べてはならな……」
くっそ、思い出したように狂気に引きずり込んでくる。
「今日はロリババァを飼う皆さまと思う存分語明かすとしましょう。ロリババァを食べながら」
駄目だ、アニーヤはもう狂気感染している。
「さぁ、おいで……アスラ。この仔ったら、好物が『友の裏切りと師の闇堕ち』だから、探すのが大変なんですよ」
ほら見ろ、もう何いってんだかわかんないだろうが。
「ロリババアの肉……いったいどんな味なんだろうネ。おや、テレサ、そんなに震えて。大丈夫、きみのコトは忘れないから。嘘嘘、ロリババアの肉は食べないヨ……おれはネ?」
イーフォが震える子ロリババァを撫でている。
「ねェテレサ、自分のキョウダイがこうもたくさんいるって驚いたよネ。最近はメカ子ロリババアなんてのもいるんだってサ。子ロリババアとはかくも強い品種なんだネ」
「ソフィア……雌伏の時によくぞ耐えてきたであります。今こそお前が天下を征する時であります!」
エッダは意気込んでいる。
「何せうちのソフィアは凡百の子ロリとは子ロリが違うのであります。なんてジョークは置いといて焼肉であります。さあソフィア、トレーニングの後はタンパク質であります」
ヤメロォ!
アブステムが自分の子ロリババァであるブランカと野菜を運んでいる。肉は既に要しいてあると聞いた。
ブランカは人懐こくはないが、おとなしい。こうした荷運びも拒否せず手伝ってくれる。嫌われてはいないのだろうが。
「普段から感情の読めない子ではあるが、同族の集まる場所へ行けば喜んでくれるだろうか」
彼は今、その同族を食っている現地にブランカを連れて行っている。
「わぁ子ロリ沢山。皆お歳なのに若々しい顔! ……安心感があるなぁ」
子ロリババァの数に感動するイオ。不安しかないと思うが。
「……食べれると判ってるけど、シエラは家族なんだよー」
自身の子ロリババァの首に抱きつくイルーネ。しかし出された肉を口にすると、見る見るうちに顔が綻んでいく。
「イオ~、このお肉美味しい」
「子ロリのお肉? 頂きますっ」
腹も膨れれば、運動が必要になる。
イオはイルーネに向けて手を差し出した。
「ルネ! 明日のご飯獲って帰ろう」
「うんっ!」
その手を握り返し、海へと駆けていった。
「…………僕もカメリアちゃん連れてきた方が良かったッスかねー」
それらの光景を見て、なんとなく呟いた青雀だったが。
アレ、赤子の柔肌が好物とか怖いこと書いてたので外に出さないほうが良いと思う。
●これからにじかい
「オフ会お疲れ様でしたッスー!」
宴も酣。
夕日が見える頃、青雀が拡声器を使って皆に呼びかけた。
「各自、自分のゴミは自分で持って帰ってくださいッス! 来た時よりも、綺麗にッス!」
会場のマナーを大切に。
片付けて、片付けて。そして帰路につく。
「オフ会、成功ッスね!」
「成功かニャ?」
たぶんね。
了。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
全GMイチ子ロリババァ書いたって間違いなく言える。
GMコメント
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
オフ会行けないのでオフ会しましょう。
そのためにはオフ会に負けないようなオフ会にしなければなりません。
皆でお肉や野菜を持ち寄り、金網で焼いて食べましょう。
持ち寄った食べ物を皆で分けて、それはそれはバラエティに富んだ食事会にするのです。
ほら、段々こっちのオフ会のほうがすごそうな気がしてきたでしょう。
え、これオフ会違う? そんなことない。これがオフ会ですとも。
【シチュエーションデータ】
・煙が迷惑にならないように、見晴らしのいい海辺でやります。
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