シナリオ詳細
<タレイアの心臓>Die Tür in den Sommer
オープニング
●不機嫌な彼女
彼女は少しだけ怒っている。
けれど酷く、大変、途方もなく、怯えていた。
金嶺竜――アウラスカルトが生きた二百五十年という歳月は、人間(カオスシード)には余りに長すぎる。けれど古齢の竜やハーモニアにとっては日常に過ぎない。だが彼女は竜として若かった。若すぎた。
だから自身に降りかかった災厄――命すら脅かされる事態に、とてつもなく困惑している。
なにせ竜は完全な生物である。
端的に述べるならば『無敵』である。
彼女自身も、そのように自負していたし、客観的にもそうであったはずだ。
イレギュラーズが魔種(デモニア)、即ち強大な存在の一角を討伐し続けていることを、アウラスカルトは知っている。滅海竜リヴァイアサンを封じた出来事も、伝え聞いている。そうした事象を彼女はひどく軽んじていた。彼女が信じる限り、竜は魔種よりも強く、滅海竜の一件は『何かの間違い』に違いなかった。何よりもそれは、年若い彼女にとっては、あくまで『他人事』であった。
――あの日までは。
練達を蹂躙し、滅ぼさんとしたとき、奴等――イレギュラーズが現れた。
そしてアウラスカルトは、こてんぱんにされたのだ。認めたくはないが、あれは敗北そのものだ。
自身の限界が見えている。
手の内の底を暴かれたことは、恐怖以外のなにものでも無い。
だからこそ、試されている。そう実感している。
生まれて初めて恐怖という感情を抱き、身体というものは屈辱に震えることを知った。そして一月ほど経過した頃に、人という生き物に興味を抱いたのだ。
「だから真似をしてみた」
彼女は小さな手をじっと見つめる。人用、厳密にはここファルカウに住まうハーモニア用にあつらえた鏡を覗き込んで、まるで亜竜種(ドラゴニア)の少女のような姿をした自身を眺める。
スカートの裾をつまみ、腰を折ってみる。両手を広げ、くるくると舞ってみる。
どうだろう、人間らしいだろうかと、首を傾げた。
アウラスカルトが人の姿を真似ることは滅多にない。そもそも竜は完全なのだから、そんなことをする必要なんてありはしない。仲間の中にはそうした姿をこそ好むものも居るが、彼女にそんな心境は理解出来ないでいた。だからこういうことをするのは、彼女を育てたベルゼ―が亜竜種の里フリアノンに彼女を伴う時と、それから書を嗜む時程度のものだ。だって本というものは、竜の手にはあまりに小さすぎるから、これはあくまで、利便性の問題に過ぎない。
亜竜種達は、幼い少女が多量の書籍を抱えていく姿を、どう見ていたことだろう。いや彼女が何者か理解はしていたに違いない。いつまでたっても歳がかわらぬ少女が、魔術の最奥に指を触れるほど卓越した存在が、遠い昔にフリアノンで卵から孵った雛竜だったことを。
正直に云えば、人になんて、二度と関わりたくないとも思っていた。
ベルゼ―が何かを成そうとしているのなら、ただ一人の『父祖と呼んでも良い存在』が困りごとを抱えているのなら、仕方なく手を貸してやってもいい。その程度の動機しかなかった。特にあの『恐怖』、自身の生命さえ脅かされるほどの苛烈な闘争を経験してからは、なおのこと腰が重かった。今回についても断ったなら、きっとベルゼ―は残念そうに微笑み、頭を撫でてくれたに違いない。
竜としての生は、ただ翼亜竜共をなぎ払って手に入れた居場所で事足りた。霊嶺に佇む古い神殿――きっと亜竜種達が建てて、やがて放棄した――に陣取り、借りた本を読んで魔術を嗜む。ただそれだけで良い。
けれどアウラスカルトには、どうしても知りたいことがあったのだ。
「あの者共は、なぜ戦う」
命さえ賭けて、何を思い、何をなさんとしている。
今なら信じる事が出来る。滅海竜はイレギュラーズに、本当に封じられてしまったのだろう。
心の底から怖い、恐ろしい、理解が出来ない。しかし、確かめなくてはならない。好奇心は猫を殺すというが――フリアノンの民が愛するドラネコの姿が心を過ぎり、少女は首を横に振った。
●まさかの共闘
「月英(ユグズ=オルム)の禁書は、偉かったね、ドラマ。ここからは僕も手を貸そう。故国の難ならば、ほらほら、僕だって立ち上がろうじゃないか」
反転出来なかった男『叡智の記録者』ニュース・ゲツクは――冠位とのやり取りについてなどおくびにも出さず――しれっと述べた。そしてドラマ・ゲツク(p3p000172)の頭にそっと手のひらを置く。
「……無事で。無事でよかった」
ドラマの唇が震え、ひとしずくがはらりと頬を濡らした。
周囲は木々の燃える音と、ハーモニアの悲嘆に溢れている。ハーモニア達は水の魔術を使い、それ以上の延焼を食い止めていた。けれど残念だが手伝ってやる時間はない。
タレイアの心臓が咎の呪いを払い、フェニックスが冬の檻を穿ったということは、ようやくファルカウに眠っていたハーモニア達を救出する目が見えたということ。ニュースのように自力で脱出出来る者ばかりではないのだから、イレギュラーズはファルカウへの進撃せねばならないのだが――
突如悲鳴が聞こえた。
腰を抜かしたハーモニアの魔術師が指さす先、冬のヴェールの向こうに見えたのは亜竜の群れであった。
「また性懲りもなく、ね」
「デザストルへ帰っていただきましょうねェ」
溜息一つ、黎明院・ゼフィラ(p3p002101)に、煌・彩嘉(p3p010396)が頷く。
遠くで亜竜達を率いているのは、小さな少女に見えるが――
「私には分かるよ――嫌な気配だね」
「まさか、『金嶺竜』アウラスカルト」
会長ではなく、楊枝 茄子子(p3p008356)は確かに『私』と言った。
続けたジェック・アーロン(p3p004755)にも確信があった。
間違いなく、あの時――練達の滅亡を回避した戦いで出会ったものと同じ存在だ。
「はい! それじゃしにゃはこのへんで」
しにゃこ(p3p008456)が元気よく手を挙げた。
「帰っていいですか!?」
「落ち着くんだ」
しにゃこの背をぽんと叩いたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)もまた、戦慄を禁じ得ない。なぜならば確信はもう一つあったのだ。
「一度破れている以上、二度と慢心はないだろう」
「出会い頭の開幕メテオぐらい、覚悟しておいたほうがいいかもしれないね」
茄子子もそう言って頷いた。あのときアウラスカルトは人類を完全に舐めており、得手とされる魔術を中々使ってこなかった。竜としての身体能力に拘っていたのだ。けれど今はきっと違う。イレギュラーズは撃退にまで追い込んだのだ。生命さえ危ぶまれるほどの激戦は、竜にとっても同じであったのだ。
それに今度は、亜竜の群れまで居ると来たものだ。あの時はそちらは練達が国家を挙げて対処してくれたから竜に集中できたが、こうなれば、せめて味方に五十名は見ておきたい。
大樹の嘆きへの対処は、まだ出来ていなかった。周囲を見境なく襲うそれらが、今回も敵となるだろう。だから五十程度では全く足りないはずだ。けれどそれ以上のイレギュラーズを割く訳にはいかない。
新たな自体に際して、ようやく情報が飛び交い始める。周辺もまた、大変な状況になっていた。
何より『冠位魔種』暴食のベルゼ―の存在が確認されたというではないか。
竜を率いていた魔種の影は、やはり冠位であったか。
その時、遠く宙空に浮かぶ少女の周囲に、無数の魔方陣が出現したではないか。
「――!?」
直後に無数の魔術が暴風雨のように炸裂し――けれど二重のバリアフィールドがそれを相殺する。
「ヴィヴィ、まさか。来てくれて……」
「ふふん。ボクを敬い賜えよ、クロバっ子。これでも神霊の端くれだからね。フェニックスとは思い切ったものだけど、森の延焼だって見過ごせないし、全てここで止めきってあげよう。拝んでくれて結構だとも。いっそあがめ奉りたまえ、信仰というものが足りないからね」
どこか呆然としたクロバ・フユツキ(p3p000145)の呟きに、水の大精霊ヴィヴィ=アクアマナが笑った。
「で、聞いておかなきゃならないと思うから言うけど。なんで居るのよ。三度目よ、これ」
「友が喜ぶ顔が見たくてな」
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)の問いに、ヴィヴィと同じく笑ったのは、冬の王オリオンであった。
「???? い、いえ。来ていただけて光栄なのですが!?」
夢見 ルル家(p3p000016)もまた驚きを隠せないでいる。
「不服か?」
「い、いえ滅相もないのですが!!」
「そこな愚弟も久しいな」
「おいおい、ウソだろ兄さん。いやどうしてまた」
「よくわからないけど、味方は多いほうがいいに決まっているの」
ストレリチア(p3n000129)はともかく、ライエル・クライサー(p3n000156)も戸惑っている。
「余は盟友殿に力を貸し与えている、これは外さん。冬の檻もまた盟友が助ける存在に頼まれてのもの、故にこれも解かん。フェニックスの一件で余を破るとは、まこと天晴である! 我が家臣達も向こうの陣営で戦うだろう。だが貴様等もまた余の友であり、竜なる存在に困っていると聞くではないか! 友のために竜と諍うのは、禁じられておらん。もっとも、王たる余に禁ずるなどという真似は、誰にもさせんがな!」
「ちょっと滅茶苦茶なんじゃない?」
イーリンの言葉に、オリオンは高笑いをあげた。なんというか、オリオンはあまりにガバすぎる。
「貴様等とは、いずれ近く剣を交えることになろう。だが今ばかりは友等よ、その背を余に預けよ!」
「大精霊が二柱とは、これは――」
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が呟く。
理由はともあれ、大精霊の二柱という存在が味方というのは、余りに大きな『嬉しい誤算』だ。
「ようやく戻りました。今こそ、皆様へ恩を返す時」
禁書捜索の際に、ラサ側へ逃がしていたジョゼッフォという守人が、ラサの傭兵達と共に深緑へ戻ってきたのである。ラサは深緑の同盟国であり、精強な傭兵達も味方となってくれるらしい。それにハーモニアの中で戦える者達も、参戦を決めている。
(あの人は答えていない。知るのが怖い。でも、放っておくことなんて出来ない)
胸中で呟いたココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)の背はひどく小さく見えていた。
「ボク達にも、ハーモニアの皆にも、ヴィヴィにも、オリオンにも、戦う理由があるんだね」
セララ(p3p000273)がぽつりと零した。
「なら、竜はどうして戦おうとしているのかな?」
だって、それを知ったなら、何か別の可能性だって見えてくるかもしれないから。
誰もが『あの生物をどうするか』いかにして『殺すか』と考えていた。けれどセララは話し出す。
勇者にとって、竜種(動物)は魔種(天敵)と違うのだと。
すなわち世界を滅ぼす存在とは相容れず、あくまで調和(ハーモニクス)の内に、あるのではないか。
可能性の化身(イレギュラーズ)――主人公は、何かを成し遂げるかもしれない事を予感して。
ならばこそ、まずは灰のビロードを踏み越え、冬のヴェールの向こう側へと進撃しよう。
やがて来る『絶対の滅び』と向き合うなら、打破するならば――『私達』は、どうしたらいい。
絶望の全てを打ち砕くために、見据えるのは夏への扉――
- <タレイアの心臓>Die Tür in den SommerLv:30以上完了
- GM名pipi
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年06月07日 21時40分
- 参加人数60/50人
- 相談8日
- 参加費50RC
参加者 : 60 人
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参加者一覧(60人)
リプレイ
●BLAZE & STORM
大樹ファルカウがそびえている。
巨壁が如き偉容は、最早樹木の域を遙かに超越し、山のようでもあった。
それは多くの幻想種(ハーモニア)達の故郷であり、迷宮森林に点在する霊樹達の長であり、多くのハーモニア達が暮らす都市――深緑(アルティオ=エルム)における事実上の首都でもある。そのファルカウが、冠位怠惰の権能が一つ『夢檻』と、冬の王オリオンによる吹雪のヴェールに閉ざされていた。
「大一番というやつじゃな……」
得意げに顔を綻ばせた五十琴姫は傍らの支佐手へ顔を上げる。
イレギュラーズとハーモニア達は大精霊フェニックスの召喚により、吹雪に門を穿ち進撃を開始した。
そんな一行の眼前に現れたのは、亜竜の群れだ。以前、練達で撃退した奴等に違いない。天を覆い隠すほどの巨大な翼、その軍勢が一斉に咆哮した。鼓膜が引きちぎれんばかりの轟音に、幾人ものイレギュラーズが顔をしかめる。だがその程度に屈する者など、誰一人として居ない。
地響きと突風――亜竜の群れが迫ってくる。飢えた獣の様に口元から零れるものは炎だった。吹きすさぶ灼熱が大地を舐め、辺りの草木が燃え始める。
「わしの巫術の見せどころよな! 支佐! 武運を……!」
亜竜の腕先――刀剣ほどもある爪が唸りを上げて迫り、間一髪、かわすと共に仲間へ檄を飛ばす。
「おう琴、おんしも抜からんようにの。味方も大勢おるけえ、それ程心配はしちょらんが」
拳を重ね別々の戦場へと別つ二人。幼馴染みだからこそ共に在らずとも心配無いと信頼している。
鞘から抜き去った剱を手に、支佐手は雷撃纏う蛇神をその刀身に降ろした。
「いざ……!」
亜竜の群れの頭上に雷雲が立籠め、稲光が空に轟く。
「ォ……最早一刻の猶予も残されてはいない。飛び交う亜竜、悲鳴、嘆き……なんと痛ましいことか」
黒く禍々しい肢体を隆起させ、ビジュは体表に浮かぶ無数の目から涙を零した。
「人々を護る。私は、私には、これしか残されてはいないのだ。これ以上先には進ませぬ。喩え焼き尽くされようとも、吹雪の中に沈んでも!」
幾つもの目玉を帯びた、泥のような『手』。悪夢の怪物の如き外観と裏腹に、ビジュの魂は気高く――
「オオオオオオォォッ!!!!」
――水愛を狙う亜竜の爪を、その身を挺して庇い抜く。
「フハハ! 誰が呼んだか我を!」
戦場に響き渡る、声の主は――
「そう! この混沌に降り立ったさいきょーの堕天使ことダリル様なのじゃあああ!?」
雄叫びと共にダリルの身体が真横へと跳ね飛ばされた。
「へぶっ」
空中で回転しながら羽を広げ、制止したダリルは顔を歪めて振り返る。
「ゆ、許さぬぅ!我の前口上を邪魔しおって!」
上空へと舞い上がったダリルは、自身を追ってくる亜竜共へ魔法陣を展開する。
「突き落としてそっ首へし折ってくれようぞ!」
光輝く円から無数の力の奔流が流れ出し空を駆け抜け、亜竜の巨体を穿つ。絶叫が迸った。
「貴様らには何度も恨みがある! そのままひれ伏すように撃ち落とされるが良い!」
濁流のように亜竜共が迫る――牙を剥いた一体をかわし、二体目、立て続けの爪をいなし、反撃を穿つ。白翼を赤く染めたダリルの皮肉な笑みの横を、水愛が放った氷の鎖が高速で走った。
首に絡った鎖とそこから広がる氷結の戒めに耐えきれず、亜竜は地面へと墜落する。
されど、亜竜はしぶとく爪を地面に食い込ませ、獰猛な牙が生えそろった顎を大きく開ける。
「大丈夫? いま回復するね」
ダリルの傷に水愛の清らかなる歌が捧げられれば、忽ちの間に消え失せた。
「――アト、冬の王にあの子の面影を見たと言ったら。ヤキが回ったと思う?」
「カタラァナに、か?」
ひどく穏やかに戦場を眺めながら、ふいに呟いたイーリンに、アトが答える。
「文化が世界を救うことを示したのはあいつだったな――」
アトは迫る亜竜の翼の付け根を拳銃で撃ち貫いた。
「なら我ら只人の英雄譚、奏でてみせよう、王の心を打つ為に」
錐揉み状につっこんでくる亜竜を、イーリンは紫苑の巨剣でなぎ払う。
この戦域は、サンダーストームと呼ばれる亜竜が指揮しているらしい。それを探し、討つ。
ローグ二人によるハック&スラッシュの見せ所だ。
「やはり数が多いですね。まずは一体ずつ確実に行きましょう」
リディアの指揮の下、この左方戦場に集まったイレギュラーズは敵個数を減らす事に注力する。
自らも術式を紡ぎ――今正に迫らんとする亜竜の鼻先に魔性の慟哭が穿たれた。絶叫と共に宙空で姿勢を崩し、横顔を掠めるほどの距離を亜竜が吹き飛び、強い風が髪をさらう。
「なんのまだまだ! 物部の大盾、そう簡単に抜けると思われては困りますの」
視界の外から現れた凶刃をその身ではじき返したのは支佐手だ。
「……わしが地上から巫術で援護します。その隙に攻撃を!」
「はい!」
リディアは幻想種。ここは故郷であるのだ。祖国を守りたい気持ちは彼女の内側で力となって溢れる。
「この木漏れ日の魔法少女が貴方達を死なせはしません、祖国の為にここは堪えてください!」
「そうです。まだ諦めるには早い。英雄(イレギュラーズ)たちよ!」
亜竜に囲まれたビジュの声は、上空を飛ぶマカライトの耳にも届いた。
「この世界を救う為。人々の平和を護るため! 醜き汚泥風情ごとき、幾らでも踏み越えてゆくがいい!」
奇跡さえ願い、されど自力で成し遂げる。その気高い戦いが産み出すのは、反撃の隙だ。
「竜にとっちゃ散歩程度の距離だろうが、こんな森までご苦労なこった」
自分の役目は仲間が大将首を取りやすいよう雑魚を蹴散らすこと。
「雑魚っつっても覇竜基準なのが酷だがな……!!」
愛機のジーヴァが急速回転し、その上を亜竜の爪がすり抜ける。その反動を利用してマカライトは妖刀から黒龍の術式を解き放った。
「おっそろしい戦場だ、亜竜が唯の一兵卒程度の価値しかない」
言葉通り。一行の猛攻が次々に撃破している亜竜という存在は、覇竜領域デザストルという、『伝説の冒険者』さえ命からがら逃げ出すような地域に生息する怪物達である。立った今斬って捨てたそれでさえ、幻想あたりの兵達が討伐するとなれば、いかほどの被害となるだろうか。
そんな戦場右翼の対でも、またイレギュラーズは交戦を開始していた。
「……練達を襲撃したあの日……まだ忘れてないよ」
グレイルは胸の痛みを覚えている。許していないし、これからも許すつもりもない。
「だから……これは全部……そっちがやったことへの結果と思うべきだよ」
アウラスカルトに『痛い目』を見せるためにはサンダーストームや亜竜が障壁となるだろう。
「それなら……その竜までの取り巻きは……僕が相手をするよ」
できる限り多くの敵を射程に捕え、グレイルは神狼の術式を創り出す。
氷雪の嵐は戦場を銀世界へと変えた。
「凄い数の敵ですね! これは負けてはいられません! 1体でも多く倒してやりたいです!」
力一杯に拳を振り上げた彩華は「それが『金嶺竜』アウラスカルトに立ち向かう皆さんの力になれるわけですよね?」とクリムへ振り返った。
「そうですね! 張り切って行きましょうか!」
楽しい戦闘の時間だとクリムは顔を綻ばせる。
「そういえば木の根元に死骸を埋めると綺麗な花が咲くとか」
余裕があれば亜竜の血も吸ってみたい、などと――クリムはちらりと舌を覗かせる。
「亜竜の死骸だとどんな花が咲くのか試してみるいい機会ですね」
血花のように赤々とした魔法陣から膨大な魔力が弾け、亜竜の群れへと降り注いだ。
「とても好戦的で、興奮してるのでこの攻撃で!」
クリムの魔法に重ねて彩華の狐火が空を舞った。
「――やっと1匹です!」
拳を振り上げた彩華は諦めないと高らかに叫ぶ、続いて喝采が轟く。
「ここは我等の故郷だ! イレギュラーズに後れを取るな!」
「無論、ハーモニアの意地を見せてやれ!」
幻想種達が弓をつがえ、また杖を掲げる。
その横を陸鮫に乗って疾走するのはフォルトゥナリアだ。
彼女は今回敢えて、上空を飛ばない選択をした。
「最悪の事態を考えたくは無いけど、それでも戦場は何が起るかわからないから」
落ちてきた仲間を直ぐに回復出来る様に、命を繋ぐ為にフォルトゥナリアは戦場を駆ける。
傷付いた深緑の術師を後へ下がらせ、己の身を盾にして攻撃を凌ぐのだ。
「大丈夫だからね!」
「あ、ありがとうございます」
フォルトゥナリアの笑顔は勇気を与える力がある。
それは、戦場において何者にも替え難い希望となるのだから。
●THUNDER STORM I
「ジョゼッフォさんには、治療に集中しているわたしを守って欲しいです」
ココロはジョゼッフォから少し距離を取って話しかける。
言葉にすれば溢れてしまいそうな想い――感情。
それらを押し込めるように淡々と『割り切って』相手に伝えた。
守られる事で確信したいのだとココロは自分に言い聞かせる。不安の灰の中に留まるには辛すぎるから。
「この戦いをやり切ったら……全てを教えてくれますか」
もう目を背けることなんて出来ない。これからを生きて行く為に。
「……分かった。全てを話そう」
その言葉を受け取ったココロは大きく息を吸い込んで、しっかりを前を見つめた。
「竜が強い事は我々だって存じ上げてます。だからと言ってあの美しい森を独り占めされて良い訳ありませんからね。全力で戦い抜くまでです」
ココロとメルランヌの前に立った彼者誰は二人を必ず護ると恭しく腰を折った。
「皆様が全力で竜達と当たれる様、あの手この手で支援しましょう」
倉庫マンは戦いに赴く仲間達へバズーカ砲を構える。
「ロックオン――行きますよ! 空へ舞い上がるのです!」
砲身から射出された丸い弾丸は、仲間をターゲットした瞬間に変形した。昆虫のように手足を伸ばした飛行ユニットは、メルランヌ達の背中に張り付いて外れぬよう身体を固定する。
「これだけ敵がいれば、攻撃の放ちがいがあるというもの!」
嫋やかな出で立ちからは想像も付かないような荒々しい笑みでメルランヌは竜の群れを見上げる。
「空を飛ぶのがあなただけと思わぬことよ、トカゲさん達」
一斉にイレギュラーズが空へと駆け上がった。
「まったく、怪獣大戦争もいいとこだなぁ!」
旭日は白い軍帽を抑えながら、眼前に広がる亜竜の群れと大樹の嘆きを睨み付ける。
「こんなんじゃ命がいくつあっても足りん!」
機動力の負荷を低減させるため、脚の腱をぐりぐりと回しながら柔軟性を確かめた旭日。
杖にも見える改造ライフルを構え、繰り出すは無数の弾丸。
「――命があるうちにさっさと終わらせねぇと!!」
亜竜の皮膜に弾丸が炸裂し、浮力を失った体躯を地に打ち付けた。
「よっしゃ! かっ飛ばす! シリアスは勢いでやった方が上手くいくんでな!」
旭日が撃ち落とした亜竜の前へバイクをフルスロットルで走らせる幸潮。
亜竜の牙が幸潮の肩に突き刺さる。本来であれば流れるはずの血が見当たらず、ボリゴンのように砕けた身体に笑みを浮かべる幸潮。
「我が肉体は仮初のもの。幾ら壊そうが意味はない」
砕け散った粒子が己を穿つ敵の口蓋に入り込み爆散する。
「まさか、竜相手にまた攻撃することになるとは……深緑を助けるための、大切な戦いですにゃ。みーおも頑張りますにゃー!」
雉白でハチワレの子猫である所のみーおは後衛に控え、幸潮達が攻撃を仕掛けている敵を狙う。
「ねこの砲撃! ぶち抜きますにゃー!」
狙い澄ませたみーおの弾丸は戦場を一直線に奔り、亜竜の頭蓋を見事に打ち抜いた。
「やったですにゃー! みーおがとったですにゃー!」
興奮しながら飛び上がったみーおはくるりと回転ししなやかに着地する。
ガヴィはその姿にほっと胸を撫でおろした。
「着実に……」
一体ずつでも構わない。自分達の役目は仲間の為に道を切り開くこと。
ガヴィの魔術書から解き放たれた熱砂の精霊は彼の亜竜の全身を焼き尽くし断末魔が戦場を切り裂いた。
戦場は乱戦。一時の油断も許されないだろう。
ぐっと気を引き締めて、ガヴィは胸に手を当てた。
「そっち行くわよ! 絶対に落す!」
メルランヌのかけ声と共に魔法陣から大量の光輝が解き放たれた。
反射的に翻った亜竜のブレスがメルランヌへと迫る。
されど。
「お二人様は今回の要ですからね! 盾として全力を尽くしますよ!!」
彼者誰はブレスが己の身を焼く音を聞きながら歯を食いしばった。
「回復は任せて!」
「いいえ、ココロさん回復は別の方へ。まだ行けます!」
ココロは彼者誰の覚悟に頷いて、前線で戦うルル家へと回復を向ける。
「オリオン殿行きますよ!」
「任せよルル家。否、ルル家ちゃん! 親愛なる我が友よ!」
空洞となった目の奥から溢れ出す虚無。蝕む混沌。烏天狗の瞳で蓋をしても尚、禍々しい虚がルル家の眼から迸った。重ねて星の名を頂く王が道を開かんと凍てつく吹雪の嵐を呼び起こす。
――その時、一行の眼前に雷光が爆ぜた。
「いよいよ、お出ましだな」
劈く咆哮を前に、バクルドが唇の端を舐める。
「侮ルナヨ、イト小サキ者共ヨ……コノ雷嵐ガヒネリ潰シ、臓腑ヲ喰ロウテクレル!」
翼を広げ現れたのは、竜かと見まごうほどの一際巨大な亜竜――サンダーストームだった。
●AUREUS-CULT the MAGIUS WYRM I
――敵陣両翼への突撃により、切り拓かれた戦場中央、その最奥。
儚げな少女の姿から竜身へと戻ったアウラスカルト――金嶺竜は苛立っていた。
「冠位怠惰トヤラハ何ヲシテイル。ナゼ我等『竜』トモアロウモノガ、魔種(デモニア)ゴトキニ使イ走リノヨウナ屈辱ヲ受ケネバナラヌトイウノカ。ソシテ我ガ眷属共ノ何タル為体、恥サラシガ!」
突風のような咆哮に、数体の亜竜が巨体を縮めた。
「汝等ハ所詮亜竜風情トハ言エ、竜タル我ガ尾ヘ連ナルヲ赦サレタ存在デハナイノカ!」
しかし彼女のその言葉は、半ば以上が己自身を奮い立たせるためのものだった。
戦場の最奥で待ち構えているのは、何を隠そう『怖いから』である。
練達の決戦で、彼女は生まれて初めて『恐怖』というものを、身に刻まれた。
だが彼女は、果敢にこの戦場へと挑もうとしている訳だ。
亜竜の群れともあろうものが、徐々に押され始めている。ここが父祖と慕うベルゼ―に任された戦場である以上は、失態は許されない。否、優しいベルゼ―はきっと無事を喜び、危険な目に合わせたことを謝り、そして褒めてくれるであろう。だが彼女自身のプライドが、それを拒絶しているのだった。
だが戦いを決意したのには、それ以上の理由がある。
「――人ハ、何故戦ウ……」
竜としては幼い彼女の好奇心が、彼女をこの場に立たせ続けていた。
人という存在を、イレギュラーズを、もっと知りたい。
けれど、ともかく成すべきを成さねばならぬ。
戦場に大魔術――流星が放たれた。
「この場にいる全員崇め奉れ!! 頼むぞヴィヴィ――包め、命水の羽衣!」
「フフ……任されたよ。代償は高くつくけどね、クロバっ子」
超高速の流星が、突如出現した障壁に衝突し、辺り一帯が爆発する。
その爆風の中から、勝ち気な笑みを湛えた無傷のセララが歩み出た。
「また会えたね」
「勇者共ヨ、ヨクゾ来タモノダ」
「ボクはセララだよ」
「セララカ、確カニソウ呼バレテイタナ」
「『金嶺竜』アウラスカルト、今一度姿を現したか……」
ベネディクトに続けて、ルーキスが二刀を重ねて腰低く構える。
目指す先はあの竜の先にある、ならば──為すべき事は一つ。
「竜を撃退し、あの吹雪の向こう側へ。行くぞ、皆!」
「……はー。竜に挑むとか正気の沙汰じゃねー!」
手も足も震えている。だが叫んだ誠吾は意外にも落ち着いた心境だった。
「皆には追いつけないが体は鍛えた。装備も整えた。いつまでも新人ヅラしてるわけには行かねーんだ。主人と、仲間と。この場を制してみせる」
「久しぶりだね、アウラスカルト。矮小な人間の顔なんてもう覚えてやしないかな?」
「ジェックト、呼バレテ居タナ。忘レモセヌ、我ガ生涯、タダ一度ダケノ――敗北!」
「……認めるんだね。けれど、今度こそ──ここでキミを止めるよ」
ジェックが引き金に指をかけた。
「ただの木偶にしてあげる」
「帰ろうと思いましたがアラヤダー! さっきの姿、可愛いじゃないですか!」
「……」
「という事はしにゃに興味が湧いたって事ですよね!?」
だって無関心なら態々、あんな格好はしないとししゃこは思う。
「認メヨウ、我ハ汝等ニ興味ガアル」
「!」
「ダガ、汝等ト勝敗ヲ決サネバナラヌ」
「何度来ても結果は同じだという事を、その身を持って知るがいい!」
黒狼隊の面々と共に、大将首を狙わんとする一行が駆けだした。
「アウラスカルト……」
ゼフィラは金の竜が人の形を取っていた理由と、練達に攻めて来た思惑に考えを巡らせ。
知る由も無いと首を振った。
「私はこの場でキミを仕留める為に戦おう。キミがまた、あの子の暮らす練達を襲うとも限らない以上、見逃す理由はない――子を守るために戦う母親は強いものだと、そう覚えておくと良い」
ゼフィラは茄子子とベークを連れて戦場へと駆け出した。
「二度目ましてですね、金色の竜」
ベークはアウラスカルトを真っ直ぐに見据える。
「今回も帰ってもらいますし、できれば今後縁がないことを祈っておきますよ」
竜とはそこに存在するだけで、莫大な影響を与えてしまう。
良きにつけ悪しきにつけ、出会うべきでは無いのだ。
ベークは自身へ防御壁を張り巡らせ、大きく息を吐いた。
「メテオ、とっても痛かったよ。だからさ、いつかキミに返してあげようと思ってたんだ」
茄子子が術式を展開する。それは――
「人ガ古竜語魔術ヲ騙ルカ!」
アウラスカルトが驚き吠える。
「キミにできて、私にできない道理は無いでしょう」
――驕るなよ、竜風情が。
「ヒトを覚えて逃げ帰ったよね」
「――!?」
「今回は私を覚えて死ね」
漆黒のゲートが開き――星界を彷徨う小さな欠片が大気を焼きながら金竜へと撃ち込まれた。
直後、爆風が吹き荒れる。
ただし全く熱量のない炎、その全てが――流星(嘘)。
「何ノ真似ダ」
アウラスカルトは明らかに狼狽えた。その一撃は竜鱗を穿つどころか、傷一つつけなかったからだ。
「消えよ!」
核熱の嵐が茄子子を襲い――けれど空想の前に半ば減衰する。
──私がキミを釘付けにしてあげるよ。
願えども叶わなかった奇跡(嘘)は、けれど現となる。
「今回は騎兵隊は解散……でもワタシにはイーリンさんの背中が焼き付いている」
フラーゴラは戦旗を翻す彼女の姿を脳裏に思い描く。
「だからワタシはがんばれる! でも冬の王にどんな顔して会おう!?」
尻尾をプルプルと振わせたフラーゴラ。
彼の王が自身を模した人形を気に入っているのだと聞き及んでいた。
メルランヌから預かった小鳥のファミリアーが頭の上に乗る。
「でも今は……皆のために立ち続けないと」
フラーゴラは「行くよ」と地を蹴り上げた。
レイヴンは黒翼の鳥人の姿でフラーゴラに追従する。
「さて、練達でやり合った竜とは別ではあるが……竜は竜。魔道を進むものとして、竜の魔術……見せてもらう。覇竜の導きの元に」
レイヴンにとって魔道の極地たる竜という存在は特別なものだ。何処か心が躍るというもの。
「それに、今回、隊長は別の戦場だが抜けた姿は見せられんしな」
向こうは無詠唱で魔術を戦場にときはなって来る竜だ。
何かしら得られるものがあればとレイヴンは黄金に輝く竜を睨み付けた。
「無茶苦茶な相手なのにどうしてもにやけちゃう……さぁ、楽しむわ」
レイヴンの隣、レイリーもまた高揚する気持ちを抑えきれずにいる。
愛馬と共に戦場を颯爽と駆けるその姿は、白騎士の名に相応しい。
「私の名はヴァイスドラッヘ! ここは絶対に通さない!」
白竜と名乗るのはアウラスカルトのような竜と倒したいがため。
「私が倒れない限り私は手の届く範囲を護れるから。絶対に勝って、みんなで生きて帰るわよ!」
レイリーの激励が戦場に響き、猛り立つ雄叫びが渦のように押し寄せた。
五十琴姫はその槍を掲げ己へと護りの盾を施す。
この戦場で倒れずに立ち続けるということは、戦線を維持するという上で要となるもの。
神倉一族が負う魔を打ち祓うという宿命を五十琴姫自身が体現せねばならないのだ。
彼女自身が内心疎ましく思えども、否が応でもその力は身に宿っている。
「こうして竜種と相まみえて尚且つその力を感じ取れる機会が巡って来るとはまたとない好機」
尻尾を地面に叩きつけた練倒は興奮気味に姿勢を低く取った。
「吾輩が竜種へ至る為に何が必要であるか確かめる為にその胸を借りるつもりで相対させて頂くである」
アウラスカルトを睨み付けた練倒は、その威圧感に身体の芯が震える。
「分かってはいたが流石は竜種、その強さビリビリと感じるであるな」
しかし、ここで怖じ気づくようでは、大いなる夢を果たすことなど出来はしない。
「さぁ、アウラスカルト殿、吾輩の炎をゆっくりと味わうが良い!」
「……ドラゴンねぇ、あんなちんまい子がとんでもねぇもんだとはね」
タツミは一瞬垣間見えた少女姿のアウラスカルトを思いだし「正直俺がどこまでやれるかわからねえや」と頭をガシガシと掻いた。
「……だけどよ、だからと言ってここで逃げるわけにはいかねえよなぁ!
国が一つ滅ぶかどうか、竜のその力をもってしてもさせるもんかよ!」
タツミの隣には幻介が刀を抜き、今は巨大な竜の姿となったアウラスカルトを見上げる。
「以前の奴であれば、強敵ではあれど御しやすい相手ではあったのだがな。今の奴を打倒するのは一筋縄ではいくまい、気を抜くなよタツミ。人間の底力、思い知るがいい……お主らが塵芥と蔑んでいたもの、その可能性を教えてやる!」
幻介はアウラスカルトに接敵する為、助走を付けて飛び上がった。
燦火は頬を膨らませて巨大な竜の姿となったアウラスカルトを見上げる。
「出来れば、あの可愛らしい姿のままで戦って欲しかったと思わない?」
「おー、アウラー! これが本物の竜かぁー!」
仔竜の姿の熾煇はワイバーンに跨がりアウラスカルト目がけて光の奔流を解き放つ。
「それはそれとして。あんな強大な魔術を無詠唱で使うとか、インチキにも程があるわ!?」
燦火は空中を旋回する熾煇とその向こうに見える金竜じっと見つめた。
「アウラ、すっごい強そうだし、綺麗だな。俺も、あんなドラゴンになりたかったな! 俺達はアウラより弱いけど、弱いなりに頭を使うんだ」
ぐるんとワイバーンを回転させ、続けざまに攻撃を繰り出す熾煇。
「俺は馬鹿だから、死なないように立ち回るしかない。アウラは一人でたくさん考えなきゃだけど、俺達は皆で色々考えるんだ。あとは気持ち、だな。俺達は敗けを知ってるから、負けたくねーって気持ちになって、それが強さになるんだ」
熾煇は巨大なアウラスカルトに手を伸ばす。
「なぁ、アウラ。俺はお前と仲良くなりたい。だってお前のこと、好きだからな」
「見せてやろうじゃないの。これが、魔術師としての意地ってヤツよ!」
燦火はアウラスカルトが振う力の一端を魔術的に解き明かそうと全身全霊を持って見極める。
「ったく、呼び出しが掛かったと思ったら……ま、いっか。これはこれで自由に動けるしな。そんじゃま、やるかね。さぁ、全力で叩きに行くか!」
黒い翼を広げたエレンシアは深呼吸をしてからアウラスカルトの攻撃をじっくりと観察する。
十分に機を計り、最大の集中を持って白き鞘に納められた美しい大太刀を居合い抜いた。
「竜を穿つは我が刃、ってな!」
少しずつでも体力を削れればいい。いくら相手が御伽噺の竜なのだとしても。
「全力で叩きゃどうにかなんだろ!」
●BLAZE HOWL
「偉大ナル我等ガ君ハ御怒リダ、者共――戦エ!」
ブレイズハウルの檄に、亜竜の群れが一斉に吠える。
「リュミエ様が待ってんだ、竜と言えどその道を開けてもらう!」
「人風情ガ!」
「黙れ――生と死の境界は、俺たちが引く!」
誰も死なせはしない。
黒炎を纏うクロバが駆け抜け、爆炎と共に四度の軌跡が刻まれた。
「怖くないと言えば嘘だけど」
レーゲンの心には怒りが渦巻いている。
誰だって生きたい。平穏な日常を過ごしたい。それなのに練達の時も今も竜が来たのだ。
「知り合い、依頼で見た顔、見知らぬ人、レーさんの保護者さん。みんな苦しめられた……だから誰かと笑い合える明日の為に。……レーさんは負けないっきゅ!!」
ブレイズハウルへ展開する禍々しい光。空を分かち、熱を伴った攻撃が竜の首を焼いた。
「どうしてここに来た! 来なければ貴方の同胞と傷付け合う必要は無かったのに! 竜相手に手加減なんてできないのに!!」
レーゲンの叫びはブレイズハウルの鼓膜に響く。
「……此れで亜竜どもと相対するのも二度目か」
ブレスの気配を感じた蓮華は地面を蹴って飛び上がった。
「此度は更に熾烈になっておるようだが……逆に腕が鳴るわ! 敵わぬのは承知の上よ! 逆境を跳ね除けてこそ一流の戦士、そうであろう?」
蓮華はブレイズハウルを睨み、口角を上げる。
「金嶺竜には及ばぬであろうが、名うてである事に変わりなし!
……大将首、と贅沢は言わぬ――が! 敵将の首級の一つ位は落としてみせねばな!
貴殿に恨みはないが、付き合って貰おう!」
青白い妖気を漂わせた妖刀を翻し。ブレイズハウルへと死の一閃を走らせた。
「翼竜の群れと人語を解する竜――参ったな、まるで故郷に戻ったかのようじゃないか。いや、ここが何処であれ、護るべきモノの為に剣を振るうことに変わりはない!」
フェルディンは剣を掲げ一歩前に出た。
「ブレイズハウル! 優れた知性を宿した稀なる強者とお見受けする! いざ、お手合わせを願おう!」
透き通った両刃の大剣を構え、走り出すフェルディン。
その冴え渡る一閃はブレイズハウルの表皮を抉り、地面に血を曝け出す。
ステラはフェルディンのつけた傷に追い打ちを掛けるように、巨大な剣をその生々しい痕へ走らせた。
うめき声を上げたブレイズハウルは一歩後ずさり、喉の奥から炎を伴ったブレスを吐き出す。
それをステラの代わりに受けたフェルディンは全身に走る痛みに歯を食いしばった。
「狙えるのなら頭部でしたが、何にせよ命中を最優先、切り札を外す訳にはいきませんしね?」
再度剣を振り上げたステラは身を翻し地を蹴った。剣の切っ先が閃き、ブレイズハウルの翼を引き裂く。
「本当は金嶺竜と戦いたかったが準備が整っていなかった……」
致し方ないと気を持ち直したオウェードは、戦場を見渡し戦術的に優位に立てる位置へとワイバーンを飛ばした。その傍にはミルヴィも見える。彼女はこの部隊において重要な司令塔である。オウェードがミルヴィを守る事は戦略的に正しい行動であった。
そして、次なる一手は敵の注意を引く事である。
「ワシを倒した方がアウラスカルト殿も喜ぶんじゃないかね?」
ブレイズハウルはオウェードを鋭い眼光で睨み付けた。
竜の凶刃をオウェードが受け止め、その全身甲冑が軋みを上げる。
「頑張ってください! 今、回復をしますから!」
傷を負うオウェード目がけて、ねねこはグレネードより大きい爆弾を彼へ投射した。
「む!?」
「大丈夫です。見た目は爆弾ですが、練達特性のヒールボムです! ほら、たちまちに回復しますよ」
「あの流星すら守り通せたんじゃ……そう簡単に倒れぬ」
オウェードが力を込めて竜の爪を押し返し、その隙間からリュコスがワイバーンを走らせる。
「力をあわせたらきっとムテキだよ!」
黒の顎がリュコスの影から現れ、ブレイズハウルの喉元に食らい付いた。
自由にならない怒りを示すように竜は咆哮を上げる。
「ほら、こっち。そんなに大きいと、小さいぼくはみえないでしょ!」
リュコスはワイバーンを巧みに操り、ブレイズハウルの視界の端を飛び回る。
亜麻色の鱗と美しい蒼の眼を持つワイバーンがブレイズハウルの目の前を通り過ぎた。
「ここ! 合わせて全力突撃!」
ミルヴィの号令と共に、ステラとオウェードが得物を手に竜の翼を断ち切る。
どう、と巨体を地面へ叩きつけたブレイズハウルへミルヴィは曲刀を振り上げた。
「確実に、仕留める!」
自分の攻撃に続けとミルヴィはリュコス達へと合図を送る。
裂かれる皮膚と久しく覚えの無かった痛みにブレイズハウルは渾身のブレスを吐き出した。
「連日続けて火に火に火、私は結構怒っていますよ!」
「まぁーったく、こんなことされたんじゃ、たまったもんじゃないよねぇ」
ドラマに頷いたニュースは鷹揚に両腕を広げると、そこに光が満ち溢れ蝶を描く。
「ゼニス、アイス、それからウルトラマリンてところかな」
顕現した青の色彩が水と冷気の精霊力を氷雪嵐へ替え、ブレイズハウルを引き裂いた。
「久しぶりに見ました」
「そうだね」
珍しくやる気らしいなら、ドラマも黙ってはいられない。
「クロバ君」
「ああ」
「ここが命の張りどころと言うヤツですかな? スケさん、粉骨砕身頑張ります!」
「Nyahahahahahahahaha!!!」
突進を試みたブレイズハウルの眼前に、ヴェルミリオとオラボナが立ち塞がる。
炎が迸り、けれど二人によって攻撃手には届かない。
クロバの二刀が駆け、ドラマの剣が魔力の流れを断つ。
幾度かの攻防の末、ドラマ達と挟み撃ちするようにフェルディンとステラが猛攻を加える。
ブレイズハウルは身じろぎし逃げようとするが、ねねことミルヴィが退路を断った。
そして一同は目配せし、『ありったけ』が撃ち込まれる。
●THUNDER STORM II
「この戦域は任された。霞の陣術、お見せしようか……!」
美透が艶やかに微笑み、輝く魔方陣が描かれる。
「我らが意気を世に示せ、蓋世陣!」
「小癪ナ、鉄槌ヲクレテヤル!」
サンダーストームが舞い上がり、大気がばちばちと帯電をはじめた。。
「受け取った。あとな、トカゲがべらべら喋ってんじゃねぇ!」
タイニーワイバーンを駆るバクルドが一気に上昇、さらに鐙を蹴りつけ宙に舞った。
「大人しく地べたでも這い回ってろ!」
眼下に亜竜を見据え、敵が電撃のブレスを吹く前に、義腕を力強く引き絞る。
風神の息吹に身を預け、サンダーストームの真上から叩き付ける――ガウス・インパクト。
返す刃のように、今度は黒顎が如き直死の一撃を放つ。サンダーストームが地に叩き付けられた。
バクルドはそのまま自由落下に任せ、羽ばたき急下降したワイバーンの背へ落ち、手綱を握る。
「いいかお前さん方、俺は戦略の小難しいことはわからんが、この偉そうなトカゲの首を獲りゃ良いってことだけは確かだ。このまま畳み掛けるぞ!」
「無茶するね、けど分かったよ。これ以上、空は飛ばせない!」
反撃の雷光を遮った瑞希は、一歩踏み込み連撃を叩き込む。
「だから何度でも蘇る亡霊卿の真髄、見せてあげるよ。大丈夫。二人は絶対、ボクが守ってみせるから」
「ほう、アナタ話せるんですか。──何故そちらに与するんです?」
興味、好奇心。彩嘉は何より知識が欲しい。
「聞イテ何ニナル」
「ええ、ほんの少し貪欲なものでして」
「霊脈ニテ我ヲ覇シタル姫君ノ頼ミデアル、理由ハ預カリ知ラン」
「なるほど、では後で尋ねてみましょう」
「――命アレバナ!」
「残念ですが、アタシは風を愛してますから、ええ、雷は効かないもので」
イレギュラーズの猛攻が続いている中、戦旗を掲げ、馬上のイーリンが吠えた。
「見よ冬の王! 汝の友が、いずれ汝と剣を交える者が亜竜に挑む姿を!」
「今回ばかりは引けないんだよねえ、あいつの頼みだからな!」
三メートルの棒で地を突いたアトは大きく飛び上がり、木の枝を掴む。
「その稲妻、切り開かせてもらう!」
ブレスを吐こうと顎を開いたサンダーストームの口へ投擲した剣がつかえた。
サンダーストームの怒りの唸りが鼓膜を揺さぶる。
「――ローグは竜を打ち倒し、勝利者となる! 砕けろ魔風石! さあ、雷の竜よ、地に落ちるときだ!」
飛び降り際、その開いたままの口に、至近距離からのマグナム弾をありったけ叩き込んでやる。
――冬の王よ、我が名を求めよ(Orion want my truth)。
司書は冬の王をオリオンと呼ばない。その真名を告げる時は互いに剣を交える時と決めている。
それ故に――今は私を友と呼びし王よ。私の名の一つ、騎戦の勇者の一振りを見よ。
「私の名が欲しければ――」
ここで落とせず、なぜ冬の王と剣を交えられるか。
星の燐光が溢れ、黎明を帯びた掲げた御旗は紫苑の巨大な光剣となり――瞳が紅玉の軌跡を残す。
その刹那、横薙ぎの光柱がサンダーストームを包み込み、絶叫が迸った。
●AUREUS-CULT the MAGIUS WYRM II
一行はジェックとベネディクトの連携により、アウラスカルトの行動を半ば以上封じている。
問題は偶然に近い回避や、またベルゼ―の権能が、攻撃を阻止することがある場合だった。しかしその障壁すらも、ジェックの弾丸により即座に破壊され続けている。そして花丸やセララを中心としたイレギュラーズによる決死の防衛、またリュティスによる支援も実を結び、死者どころか重傷者すら居ない状況だ。
その状態のアウラスカルトへ、多数のイレギュラーズが猛攻を叩き込んでいる。今やイレギュラーズはアウラスカルトを押し込み、完封に近い形に持ち込んでいた。一方、アウラスカルトはイレギュラーズの猛攻により、傷を増やし続けている状態だった。
「ジェック、我ハ汝ヲ殺シテシマウダロウ」
再びアウラスカルトに訪れた千載一遇のチャンスに賭け、放たれたのは、流星。――けれど。
「ボクに任せて!」
剣を掲げたセララの前に花開いた守護障壁が、セララの小さな背が全てを守り抜く。
「しまうだろう……なんて。なんでそんな言い方したのかな」
ジェックが呟く。猛攻を浴び続けるアウラスカルトの目が、ひどく悲しげに見えるのは、果たして何も出来ない状態を嘆いているだけなのか。それとも――
――偉大なる者よ。竜なる者よ。
それはクレマァダの夢帯びる呼び声。空気を振わせる音を聞き漏らさぬよう、旋律を身体で感じる。
「竜よ。我らは闘争のみによって語るものではない」
この背に負う仲間の命。皆で生き残る為に祈るように。
「我らは弱い故に群れる。群れるから、言葉を重んじる」
歌うように紡ぎ。
「……それを、識って貰えぬか」
「良カロウ。ソシテ、ナラバコソ問オウ。勇者共ヨ――汝ハ、汝等ハ何故戦ウ?」
それは不意の問いだった。
「命賭シテマデ、何故竜ヘ立チ向カウ。何ノ益ガアリ、何ヲ思イ、何ヲ成サントスル?」
「益――か。深緑には俺の友人や彼らの家族達が居る」
油断なく槍を構えたベネディクトが応じた。
「そして、戦う術を持たぬ人達もだ。だからこそ、失わせない為に俺は戦う!」
「黒狼の皆が、ここに居る皆が明日もうまいメシを食って笑ってる。そんな日常が大切だから。ここでお前さんに負けてやるわけにはいかねーんだよ!」
誠吾もまた、妖刀を振り抜いた。竜鱗が爆ぜ、きらきらと舞う。
「私は信じています。どんな絶望が降りかかろうとも、皆様が必ず打ち勝って下さると」
聖体頌歌の術式を紡ぐリュティスも続けた。
「……成程――尚更ニ興味深イ」
それは、ビジュが見せた気高さに近しいと感じる。
アウラスカルトの前方に巨大な魔方陣が花開き――だが。
駆け抜ける一発の弾丸が、魔方陣ごとアウラスカルトを貫いた。
「させないよ」
霧散した魔方陣に、アウラスカルトは再びたじろぐ。
「認メヨウ、人ト竜トハ同ジ生キ物デアルノダト。ナラバ何故、父祖ハ汝等トノ諍イヲ望ムノカ……」
それは苦しげな呻きであった。
「先程の姿。思っていた以上に若いのですね、アウラスカルト」
シルフィオンを刻み続け、リースリットが述べる。その若さでこれほどの力とは、流石に竜種だ。それに以前のような慢心もない。
「ホザケ……ダガ、汝――リースリットノ言ウ通リナノダロウ、我ハ未熟ヲ恥ジヨウ」
「――命を脅かされると言う事の意味、理解しましたか?」
「無論」
「それが貴女がもたらしたもの――私達の日常です。私達の後ろには、それらから護るべき人々が居る。貴女の後ろの先にも、護るべき人々が倒れているのです。立ち止まる道理はありません。そこを退いていただきます、アウラスカルト!」
「こっちだって聞きたい。一度ならず二度までも。お前は何故、そこまで侵攻にこだわるんだ?」
ルーキスが問う。知恵ある竜が、ただの蹂躙目的でここまでするとは思えない。何か裏があるはずだ。
「父祖ガ――卵ダッタ我ヲ孵シ、雛竜ダッタ我を育テタ者ガ、我ニ助力ヲ請ウタカラダ」
「父祖?」
「ベルゼー、ト言ウ。カロンナル者ヲ、助ケルノダト請ウタノダ」
「それが、理由――」
あまりに「人間らしい」訳に、ゼフィラは言葉を詰まらせる。
一行に走った戦慄を他所に、アウラスカルトは痛みに悶えていた。
竜ともあろうものが、最早翼さえ上手く動かすことが出来ない。
ここで仕舞いということか。思えば、退屈な生涯だったのだろう。
高山植物の花々に囲まれた朽ちた神殿に陣取り、亜竜を力尽くで従える。そして稀に現れるベルゼ―の後ろをついてまわり、本を読み、魔術を嗜んだ。ただそれだけのものが、ここで消えるのだ。
「……コノ我ガ、竜ガ、狩ラレルノカ」
その退屈な生涯は、きっと今日、今――潰えるのだ。アウラスカルトはそう感じた。
●AUREUS-CULT the MAGIUS WYRM III
後悔は――今ならある。
もしも叶うなら、切に願わくば。
人というものが、もっと知りたかった。
あの寝ているだけのいけ好かない役立たず(カロン)のために、こんなことをしたばかりに。
最早すべては、叶わぬ願いなのだろう。自身はここで、小さくも勇敢なる者達に殺されるのだから。
「見事ダ、人ヨ、誇ルガヨイ。ソシテ認メヨウ――汝等ハ竜殺シノ英雄デアル」
「やっと対等な存在として見てくれたね。でもボク達は殺し合う以外の道もあると思うんだ」
「――何?」
目の前の勇者――セララは何を言っているのだ。
「だからみんな、攻撃を待って」
セララが仲間へ向けて両手を広げた。
「コノ期ニ及ンデ、ナゼ情ケヲカケル。竜ヲ哀レムカ!」
あと一歩なのだ。このまま攻撃を続ければ、自身は死ぬ。なのになぜ攻勢を緩めるのか。
哀れみか、それとも情けか。アウラスカルトは頭が沸騰するほどの怒りに身が焼かれる気分だった。
「違うよ。ボクはキミの事を知りたいし、ボク達の事も知って欲しいってだけなんだ」
セララは言葉を続ける。
「だからボク達とお話しようよ。そしてお友達になれたら嬉しいな」
「友――ダト? 竜ガ、人ト?」
分からない。
分からない。
まるで分からない。
けれど心が、かき乱される。
アウラスカルトは、生まれて初めて自身に芽生え始めた感情――人が抱く好奇心への『共感』というものを理解することが出来ないでいる。怒りも絶望すらも打ち祓う、新しい何かに、戸惑っている。
「いつか物語で読んだんだ。竜と人が心を交すのを。だから花丸ちゃんも信じてみたいんだよ」
「コノ偉大ナル金竜ニシテ、汝等ニトッテノ怨敵ヲ、討チ果タスコトガデキルノダゾ」
花丸は首を横に振って答えた。
「殺して、殺されて。そんな関係は悲しすぎるよ!」
その言葉を聞いたアウラスカルトは天を仰ぎ、咆哮した。
「者共、戦ヲヤメヨ。我ハココニ完膚ナキマデノ敗北ヲ認メル」
その瞬間、亜竜達が一斉に頭を垂れた。
アウラスカルトは人――亜竜種を真似た姿をとる。
一見して傷は見えないが、間違いなく虚勢(魔術的隠蔽)であろう。
「……好きにせよ、にんげんども。竜は約束をたがえぬ。それにもはや、何がなんだか、我にはわからぬ」
そしてぷいと頬を膨らませたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れ様でした。
前回交戦による完全に近い形での情報獲得、左右戦場の敢闘、作戦等々、様々な積み上げが効いた、『作戦目標以上』を獲得した見事な勝利かと思います。
そのため通常の名声付与のほかに、覇竜名声が1点加算されています。
MVPは、「これは無理!」という状況を構築した方へ。
びっくりした!
それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。
――つづく。
GMコメント
pipiです。
なんだかやべーことになっていますね。
頑張ってなんとかしてみましょう。
アルティオ=エルムの興亡は、皆さんの肩にかかっています。
魔種『冠位怠惰』を追い詰めるためにも、まず一歩を踏み出さねばならないのです。
●目的
アウラスカルトの撃退
ドラゴンを殴って追い払いましょう。
●フィールド
灰の絨毯をわたり、吹雪の檻に穿たれたゲートを越えた向こう。
視界を覆うほどの巨壁――ファルカウの根元です。
あたりは開けており、視界も足場も問題ありません。
活路を開くのです。
●戦域A:右方向
戦域Aが優勢の場合、戦域Cには『冬の王』による強力な支援が得られます。
・敵
『亜竜の群れ』×五十ほど
爪や牙、尾などによる連続攻撃と、エネルギーのブレスを吐きます。
飛べます。
『大樹の嘆き』×二十ほど
主に神秘攻撃を仕掛けてきます。呪いなどのBSを保有しています。
攻撃対象は無差別です。
『サンダーストーム』
アウラスカルトに従う亜竜です。飛べます。
爪や牙、尾などによる連続攻撃と、雷のブレスを吐きます。
知恵があり、人語を解するかなり強力な個体です。
・味方
冬の王オリオン
物理近接攻撃、遠距離神秘攻撃を、様々なレンジや範囲で保有しています。
全てに氷系統のBSがついています。
イレギュラーズのお願いは、割と軽率に聞いてくれます。
1ターンバリア張ってくれとかは、可能ですが乱発は出来ません。
ジョゼッフォと精強なラサの傭兵達二十名。
ジョゼッフォはココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)さんのお父さんです。かなりの剣の腕前です。
けれどそれをココロさんは(間違いないと予感していますが)知りません。ジョゼッフォからは、どこかひどく思い詰めたような雰囲気も感じます。
傭兵達は同盟国を守る使命に燃えています。
●戦域B:左方向
戦域Bが優勢の場合、戦域Cには『ヴィヴィ』による強力な支援が得られます。
・敵
『亜竜の群れ』×五十ほど
爪や牙、尾などによる連続攻撃と、エネルギーのブレスを吐きます。
飛べます。
『大樹の嘆き』×二十ほど
主に神秘攻撃を仕掛けてきます。呪いなどのBSを保有しています。
攻撃対象は無差別です。
『ブレイズハウル』
アウラスカルトに従う亜竜です。飛べます。
爪や牙、尾などによる連続攻撃と、炎のブレスを吐きます。
知恵があり、人語を解するかなり強力な個体です。
・味方
ニュース・ゲツク
攻撃、防御、回復系統の魔術を高いレベルで行使します。
善良な幻想種なので味方です。ですよね、ドラマさん?
善良なのでお願いは(無茶でない限り)素直に聞いてくれます。
善良ですが竜とイレギュラーズの戦いは、とても興味深いのです。
ヴィヴィ・アクアマナ
クロバ・フユツキ(p3p000145)さんの関係者です。
大精霊であり、僅かに神霊の特性も持つ強力なユニットです。
回復や、広域バリア(HP鎧)の能力を持ちます。
勝手に動きますが、お願いは「条件付き」で聞いてくれます。
ちなみに以前どんな条件を出されたのかは、クロバさん達が知っています。
1ターンバリア張ってくれとか、すげー回復してくれとかは、可能ですが乱発は出来ません。
深緑の術士や弓使い達二十名
いずれも精強な使い手です。祖国を守る覚悟を決めた人は強いのです。
●戦域C:『中央』
この戦域Cは、敵の強さが難易度VeryHardに相当します。
極めて危険であることをご理解の上、ご参加下さい。
戦域AとBが優勢の場合、戦域Cには『ヴィヴィ』や『冬の王』による強力な支援が得られます。
・敵
『金嶺竜』アウラスカルト
交戦開始と同時に、竜型へ変化します。
大きさは頭から尻尾まで20メートルほど。二百五十歳程度。竜としては若く小型です。
人語を解し、極めて高位の魔術を無詠唱で行使します。
おごり高ぶったタイプです。いえ、でした。過去は。
誇り高いといえば誇り高いのですが、残虐かつ狡猾な性格……のはずです。
自身は絶対的な強者であると考えており、人類のことは完全に舐めていました。
タフネスや防御能力が極めて高く、再生能力を持ちます。あと、飛びます。
強いて言えば(あくまで強いて言うならですが)、命中は(極めて高い水準で)平凡であり、反応と回避はさほど高くありません。
・攻勢魔術斉射(A):神超域、識別、ダメージ中、多重影大、毒、火炎、凍結、痺れ、乱れ、出血、窒息、足止、不吉、麻痺、暗闇、スプラッシュ極大、追撃小、低CT
・核爆(A):神超範、万能:ダメージ大、弱点、火炎、業炎、炎獄、紅焔、連、CT大、溜2
・分解(A):神超単、万能:ダメージ無、ブレイク、溜2、スマッシュヒットで死亡。(死亡は『神無』により回避可能)
・流星(A):神超域、万能:ダメージ極大、溜2、中心点単体には更に物理大ダメージ。スマッシュヒットで死亡。(死亡は『神無』により回避可能)
・巨大(P):物理通常攻撃:物近域、飛、体勢不利、失血、封殺中、ハードヒットで必殺。マークブロックに4人必要
・エルダードラゴン(P):神秘通常攻撃:神超貫、万能、距離が至の場合はスマッシュヒットで死亡。(死亡は『物無』により回避可能)
・魔真竜(ウィルム&メイガス)(P):充填大、高EXA、高速詠唱2、AP鎧小
・金嶺竜(P):再生大、BS緩和1、高EXF、HP鎧中、包含エコーロケーション(非戦)
・竜声(P):大きな声を出した時、周囲30m内の対象は3ターンの間、ターン毎に60%の確率で能動行動が行えなくなる。(受動防御は可能)。精神無効で回避可能。竜声を発するには1Tを要する。
・変化(非戦):人間ぽい姿になれます。皆さんの非戦スキルと同じ
・飛行(非戦):飛行出来ます。皆さんの非戦スキルと同じ
・???(非戦):???
※前に練達で戦った皆さんが、能力をここまで暴きました。底は見えたのです。おおよその。
●その他味方NPC
『虹の精霊』ライエル・クライサー(p3n000156)
歌により、いくらかの支援能力を持ちます。
どこかの戦場で適当に戦ってくれます。指示したければ、してもよいです。
『花の妖精』ストレリチア(p3n000129)
神秘後衛タイプのアタッカーです。
皆さんの役に立ちたいと思っているようです。
どこかの戦場で適当に戦ってくれます。指示したければ、してもよいです。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●『夢檻』
当シナリオでは<タレイアの心臓>専用の特殊判定『夢檻』状態に陥る可能性が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●決戦シナリオの注意
当シナリオは『決戦シナリオ』です。
<タレイアの心臓>の決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(EXシナリオとは同時参加出来ます)
どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。
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