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シナリオ詳細

ローレット・トレーニングIX<鉄帝>

完了

参加者 : 125 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゼシュテル鉄帝国――大闘技場ラド・バウ
 人々の歓声の合間を縫って、金属のぶつかり合う音が木霊する。
 大闘技場ラド・バウは、鉄帝人ならば誰もが憧れる大舞台だ。
 ぎりぎりと、歯車でできた舞台装置の幕が上がる。小さな歯車がひしめきあい、まるで一つの生き物のように、装置を持ち上げた。
「せーのっ!」
 パルス・パッション(p3n000070)のかけ声とともに、舞台は割れ、色とりどりのスモークが飛び出す。
\ぱっるすちゃーん/
 コール&レスポンス。ラド=バウは割れんばかりの拍手に包まれる。
 鉄帝が誇る『極めて先進的な古代兵器』のによるぜいたくな大仕掛けは、今この瞬間、この観客のだけのためにあるかのようだった。
 1・2・3と拍をとり、パルスはくるりとターンする。アイドル闘士の今日の衣装は、いつもよりもより涼し気な、明るいオレンジの衣装。輝く太陽を思わせる。
 ゆとりのある生地はただ単に”カワイイ”だけではない。広がるパニエは足技の予備動作を隠すためにも使える。
「っとっと」
 パルスの一撃をかわせなかった闘士たちが地面に倒れる中、ウォロク・ウォンバット(p3n000125)はゆらり、と、最小限の動きで一撃をかわした。
 ウォンバットは上へ、ウォロクは下へ。息の合ったコンビだ。ウォロクの頭の飾りを持ち上げたウォンバット――曰く「師匠」は再び元の位置に戻る。
「いいね! そうでなくっちゃ。最後まで残って、ステージでボクと握手!」

「滞りないな」
 ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)は警護の配置を確認して頷いた。
 今日は、ラド=バウでB級闘士たちによる合同訓練が開催されているのだ。
「やっぱりいいね、ラド=バウは」
 ヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズ(p3n000076)――ゼシュテル鉄帝国の現皇帝が訓練を見にやってきた。
 ヴェルスが現れると、兵士たちが慌ててぴしりと背筋を伸ばした。闘士たちも一瞬、戦いをやめて挨拶をする。
……鉄帝人が皇帝に平伏するのは、単なる権力に対してではない。
 シンプルに、強いからだ。
「そう、なんたってここではパワーは力だからね――」
(……同じ意味じゃないか?)
 首をひねるゲルツ。
 本人が強いとはいえ、警備には手を抜けない。ゲルツは声を潜めてリーヌシュカ(p3n000124)に話しかけた。
「それで、チャンプは……」
「彼らが来るまで、勝手にやってくれって言ってるわ」
 リーヌシュカは肩をすくめた。
 ラド=バウの伝説的スター、ガイウス・ガジェルド(p3n000047)は控室に行ってしまったらしい。
「皇帝の御前で……」
 とはいえ、ガイウスの訓練への参加は医者に止められている。なおドクターストップがかかっているのは挑戦者の方だ。まともに戦えば再起不能。彼に挑める闘士はごく限られているのだ。
 ヴェルスは構うな、というように手を振ると、景色の良い席に陣取った。
「まあ、ガイウスだって、そのうち顔を出すだろ。”彼ら”に興味津々なんだよね?」
(そうね。彼らに会えるかしら……)
 リーヌシュカも訓練の合間、彼らと会えることを楽しみにしている。
 ガイウスの言う”彼ら”とは、もちろんイレギュラーズのことである。

●首都・スチールグラード
「ウオオオオオオオオオオオ!」
 鉄帝・スチールグラードの誇る大衆食堂「火鍋亭」は、その味を先代のときから守ること数十年。大衆に愛される庶民の味が誇りだ。
 その店内に『野生開放』コンバルグ・コング(p3n000122)のドラミングが響き渡っていた。
「じゅ、10人前追加ーーーっ!」
「炒飯用意!!」
「だめです! 残弾ありません! サー!」
「うわーーーっ!」
 机と椅子がどっと吹き飛んだ。
 コンバルグの食欲は鉄帝の誇る蒸気機関車のごとく。その野生を止められる者は、いない。
『コンバルグさん! 俺、アンタのファンなんだ。よかったら腹いっぱいまで食べていってくれ――俺からの挑戦だ』
 などと店長が言ったものだから……。
「タベルトキニタベル!! タベラレナイトキタベラレナイ!! オレ、タベル!!!」
「だめだ、もう腕が……」
「ひい……」
 決死の覚悟で鉄鍋を振り続ける。
「頑張れ! 死ぬな! 故郷のおふくろさんに立派になった姿を見せてやるんだろ!?」
「誰かーーーっ!? いないのか!? 援軍は!?」
「オレハ!! タベル!!」

「賑やかねぇ」
 ショーウィンドウに並んだすらりとしたマネキンの背を追い越すほどの長身。
 ビッツ・ビネガー(p3n000095)は颯爽とスチールグラードの街を歩いていた。大闘技場ラド・バウのS級闘士。……一応、オフということで帽子をかぶっているのだが、その背の高さとスタイルの良さはどうしたって目立つのである。結構な有名人であるし。
 声をかけようか迷っている町娘に、しい、と人差し指を当てて内緒よ、と微笑む。
 目立つのは嫌いではないが、今日のビッツの目当てはウィンドウショッピングだ。
 身を飾るものは、武器と同様に大切だと考えるビッツである。美しいルビーのようなブローチを手に取り、悩ましく見比べた。
「まあまあだけど、これはアタシ向きじゃないわね……」
 しいて言えば、と見知ったイレギュラーズの姿を思い浮かべたのだった。
 そういえば、ラド=バウでは合同訓練が行われているのだとか。
(『Sクラスの最も華麗で美しく残酷な番人』としては……この季節の新色リップ、逃すわけにはいかないわよね?)
……美容とは戦いである。

●国境警備
「とまあ、今頃ラド=バウでは……アイツが訓練を見ておるわけだ」
 ゼシュテル鉄帝国の将軍。 『塊鬼将』ザーバ・ザンザ(p3n000073)は幻想と鉄帝国を横断する国境にのぞみ、国境線を見据えていた。
 現実の乾いた大地には、どこかの仮想世界のように、酒を酌み交わす兵士たちの姿はない――油断なく警備する兵士たちがいるだけだ。
 皇帝であるヴェルスを思い、少しばかり懐かしくもなった。
 鉄帝の領土は、枯れた領土。
 他国の緑豊かな大地を思うと喉が鳴った。
 隙あらば奪う。そのときは、”彼ら”とも刃を交えることがあるかもしれない。
 あるいは、またしても助力を得ることになるだろうか。
 軍人としての本音を言えば、手合わせ願いたい、と本能がうずいている。
 けれども、まあ。今のところは、それなりに、上手いこと均衡を保っているものである。
「変わったことはあったか?」
「はっ! 前方に住み着いた魔物がおりました!」
 部下の兵士が後方を指さす。
 宣言と同時、彼方ではザーバの部下が魔物を蹴散らし終えていた。むろん、この程度は”なにもなかった”と同様である。
「軍馬の散歩にしては退屈かもしれないがな」

●ヴィーザル地方
 複雑に入り組んだ入江に、陽光が差し込み、拡散した光がプリズムのようにきらめいている。
 ヴィーザル地方――極地。
 ノルダインの村々は、今日は様子が違うようだ。
 入り江にはいくつもの華美な船が行きかっていて、よそ者に対してもどこか開放的だった。
 広場を訪れてみれば、楽し気な音楽と、やたらと花で飾られた広場が目に付くだろう。
 花弁が一枚、川を流れてくる。それを目線で追ったところ、わおんっ、と、豪快な犬の――いや、狼の声がした。
「ああ、なんだ。若いやつが妙に騒いでると思ったら、アンタたちか!」
 ラグナル・アイデ(p3n000212)――代々狼を世話するヴィーザル地方ノルダインの一族の男だ。彼は、どうも「比較的暖かいので」というので、狼を洗っていたらしい。
 彼の後ろから、10匹の狼が次々と姿を現す。
 狼たちも今日は花で飾られているようだ。不服そうに花輪をかじって破壊するものもいれば、嬉しそうな個体もいる。リーダー格のベルカとストレルカはさすがに堂々としていて、態度の違いを表には出さない。
「今日は祭りもあるんだ。せっかくだから、案内するよ。日の暮れるまでは付き合うぜ」
 といいつつ、ラグナルはいたずらっぽく笑った。今日は――白夜。日の沈まない日なのだ。

GMコメント

布川です。
暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか!
鉄帝は少しは涼しそうでいいなあ。

●目標
鉄帝国で訓練!

●メニュー
・ラド・バウで訓練!
 B級以下の闘士たちの合同訓練です。
  パルス・パッション
  ウォロク・ウォンバット
  リーヌシュカ
 らがおります。
 ゲルツさんは主に警護に気を配っているようですが、たまに射撃訓練をしています。声をかければ応じると思われます。

 チャンプのガイウス・ガジェルドは見学です。イレギュラーズたちが訓練していると見に来ます。
 現皇帝のヴェルス・ヴェルク・ヴェンゲルズがおります。

 訓練後には、アイドルぱるすちゃんのライブもあるようです。
 訓練同様、「飛び入りパフォーマンス歓迎!」とのことです。

・首都スチールグラード散策!
 大衆食堂<火鍋亭>でコンバルグが飢えて暴れています。
 この味数十年。メニューは身体が温まるような炒飯や辛いものが有名ですが、老若男女好きそうなスタンダードなものからお子様ランチまであります。
 あおりをうけてご飯にくいっぱぐれた人たちがいます。一緒になって食べるも良し。なだめるもよし。

 ヴィッツはショッピングをしています。
 目当ては服や靴、鞄や装飾品などのファッションアイテムや香水、雑貨です。
 自分には似合わないけどこれいいなってアイテムあるじゃない?
 なにやら人を飾り付けたい気分のようです。おそろいコーデも受けて立つ構え。

・国境警備!
 幻想に位置する国境線で、ザーバ将軍とお散歩コースです。平和です。
 兵士達はそれなりに精鋭ですが、活躍の話をせがまれることもあるかもしれません。訓練をつけてあげても良いですね。

・ヴィーザル地方でお祭り
 今日は白夜です。一日中明るく、夏至祭が行われています。
 ラグナルが狼と一緒にが観光案内をしてくれるようです(洗ってから)。
 サウナが有名です。
 ほかにも、なんか白いワンピースみたいな服を着てダンスして花冠をのっけて……大丈夫なやつだから! 怖くないやつだから!

●成功度について
 難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
 一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
 それとは別に●●人を超えた場合、大成功します。(余録です)
 まかり間違って●●人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
 万が一もっとすごかったらまた色々考えます。
 尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
 又、称号が付与される場合があります。

●プレイングについて
 下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
 
【ペア・グループ参加】
 どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
 『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
 三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。

●重要な注意
 このシナリオは『布川GM』が執筆担当いたします。
 このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
 通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
 また全員描写も原則行いません(本当に)
 代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。

  • ローレット・トレーニングIX<鉄帝>完了
  • GM名布川
  • 種別イベント
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月19日 23時10分
  • 参加人数125/∞人
  • 相談9日
  • 参加費50RC

参加者 : 125 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(125人)

ギルバート・フォーサイス(p3n000195)
翠迅の騎士
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
レッド(p3p000395)
赤々靴
秋月・キツネ(p3p000570)
でっかいもふもふ
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ルル・ドロップ(p3p000961)
出張修理工房
ゲンリー(p3p001310)
鋼鉄の谷の
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ガーグムド(p3p001606)
爆走爆炎爆砕流
弥狐沢 霧緒(p3p001786)
傾国邪拳士
ノワ・リェーヴル(p3p001798)
怪盗ラビット・フット
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
桜葉 雪穂(p3p002391)
守り刀
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
マリス・テラ(p3p002737)
Schwert-elf
シャナ・アジャール(p3p002805)
配達屋さん
シフカ・ブールカ(p3p002890)
物語のかたち
メル・ラーテ(p3p004228)
火砲少女
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アルム・シュタール(p3p004375)
鋼鉄冥土
エナ・イル(p3p004585)
自称 可愛い小鳥
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
十鳥 菖蒲(p3p005069)
涙の婦警
小鳥遊・鈴音(p3p005114)
ふわふわにゃんこ
ローガン・ジョージ・アリス(p3p005181)
鉄腕アリス
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
道頓堀・繰子(p3p006175)
化猫
クライム(p3p006190)
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
スノウ・ドロップ(p3p006277)
嗤うしかばね
四杜 要(p3p006465)
ユリアン(p3p006639)
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手
蘭 彩華(p3p006927)
力いっぱいウォークライ
Road=Roller(p3p006957)
クレイジー・キャット
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
リオリオ・S・シャルミャーク(p3p007036)
タコ足総動員
京極・神那(p3p007138)
サブマリン小太刀
タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)
空気読め太郎
アウローラ=エレットローネ(p3p007207)
電子の海の精霊
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
フランク・ルドマン(p3p007401)
パーシ―・パーシング(p3p007402)
マーヴィン・ハンクス(p3p007404)
アレクシス・ボルトン(p3p007405)
ティモシー・ヘッドリー(p3p007406)
バリー・ベインズ(p3p007408)
ロードリック・ヒンズリー(p3p007410)
パトリシア・ミルワード(p3p007411)
アンゼル・アウグスト(p3p007412)
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
伊佐波 コウ(p3p007521)
不完不死
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
茅野・華綾(p3p007676)
折れぬ華
小刀祢・剣斗(p3p007699)
新時代の鬼
ルナヴァーニ(p3p007799)
無垢なる玉兎
ウサーシャ(p3p007848)
裁断者
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
刃金・文人(p3p007922)
鋼の如く
イト=ストレム(p3p007933)
目覚めたファン心
岡田 安隆(p3p007944)
切られ
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
エステル(p3p007981)
虚栄 心(p3p007991)
伝 説 の 特 異 運 命 座 標
流星(p3p008041)
水無月の名代
エレン(p3p008059)
豊穣神(馬)
リズリー・クレイグ(p3p008130)
暴風暴威
メアリー=バーン=ブライド(p3p008170)
燃やすのは任せて
孫・白虎(p3p008179)
特異運命座標
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
ミシェリア・レーヴェル(p3p008271)
雨紅(p3p008287)
愛星
リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
月待 真那(p3p008312)
はらぺこフレンズ
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形
ココア・テッジ(p3p008442)
鋼鉄の冒険者
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
ミズキ・フリージア(p3p008540)
いつか貴方に届く弾丸
シャノ・アラ・シタシディ(p3p008554)
魂の護り手
アヤメ・フリージア(p3p008574)
死神小鬼
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
ウロ ウロ(p3p008610)
虚虚実実
玄緯・玄丁(p3p008717)
蔵人
真道 陽往(p3p008778)
双銃の狼
ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)
翠迅の守護
葬屠(p3p008853)
社籠り
ウォールマン(p3p008909)
ユイユ・アペティート(p3p009040)
多言数窮の積雪
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
溝隠 琥珀(p3p009230)
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
蜂八葉 黒丸(p3p009239)
けだもの
級都 燕姫(p3p009260)
鈴音首落
袋小路・窮鼠(p3p009397)
座右の銘は下克上
葛籠 檻(p3p009493)
蛇蠱の傍
セチア・リリー・スノードロップ(p3p009573)
約束の果てへ
ナール・トバクスキー(p3p009590)
ろくでなし
トレモロ・バンカ(p3p009616)
ダリル(p3p009658)
勇猛なる狩人
ココリコ=クリコ(p3p009674)
天には星を
ウィルマ・エルディンガー(p3p009710)
シャルロッテ・ナックル(p3p009744)
ラド・バウB級闘士
オミラ・ブライフ(p3p009870)
日雇い
ノット・イコール(p3p009887)
想いの届人
シュロット(p3p009930)
青眼の灰狼
小狼(p3p009956)
特異運命座標
ユール(p3p009966)
機械仕掛けの羊
ジュジュ(p3p010010)
夜に這う

リプレイ


 砂埃と枯れた土地ですら、故郷の空気は懐かしいとアンゼルは思う。
(今のおれに、ラド・バウで戦えるような力は無い。
それでも、憧れの場所には行ってみたいんだ)
「いくのじゃ~! そこだっ! ……なぜなのじゃ~」
 賭け札を握りしめていたナールは、負けた闘士とともに崩れ落ちる。
 心は、得意運命座標を見つめる。
「はっ……!」
 ウィルマは套路を一つずつ反復する。功夫を積み、邁進するのみである。
「思えば鉄帝にはそれほど縁深くなかったのでね。
闘技場というものもこれが初めてか」
 シフカ・ブールカは蹄で駆け、闘士の攻撃をかわす。
「流石鉄帝、皆の戦闘への熱も違うわね」
「ま、それにしたってどいつもこいつもやる気ムンムン過ぎるわ。
流石に咽そうじゃ」
「……ま、それは私たちも同じ、そうでしょう、霧緒?」
 キツネの尾が揺れる。霧緒がにやりと笑う。
「いつぞやからどれほど高めたか……じぃっくり、楽しませてもらうとしようかえ?」
 挑発する霧緒に果敢に向かっていくキツネ。
 足払い、点穴、急所狙い。
 回り込み、キツネをくすぐる霧緒。
「うひひひひ、まだまだ甘いわぁ!」
「あははっ……う、まだよ!」
 エレンの頭の上にちょこんと座るリリー。
 ガッチリした守りには、動じない強靭さが必要不可欠である。
「……そうだな、まずは15分ずつ休憩を入れながら不動をキープしてみよう」
 ぐううううう~というお腹の音が静寂を破る。
「……うーむ、動いてたらお腹すいてきたな……」
「……あはは、確かにリリーもお腹空いちゃった。
どっか一緒にご飯、食べにいこっか」


 シュロットが『距離』を誤らないとすると、ココアは極めて正確な『射撃間隔』を持っている。
「どうですゲルツさん? 良ければ、測りますよ」
「プレーティを知っているかい?」
 シュロットにゲルツは頷いた。舞うような闘士だったと記憶している。

「ゲブラーさん! 射撃訓練をするならば、私達も入れて貰って良いでしょうか!」
 声を張り上げるミズキと、義姉を見守るアヤメ。
 ミズキは空中で弾丸をかわし、姿勢を崩したが、そのまま突っ切る。アヤメの治癒を経て、術を唱えた。
「これが……誰も死なせない為の、私の戦い方ですっ……! 受け止めて下さい……!」
 全身全霊のソニックエッジ。
 いつかは貴方に届く弾丸になる為に。
 少しでも、今の私の速さが貴方に届くように――。

「……っ! 嘘やろ……立射であの距離当てるん……!?」
「へぇ。真那より狙撃上手い奴なんているんだな」
 陽往は、にやりと笑う。
 真那もまた、ゲルツに勝負を挑んでいた。
「くっ、あかん……! 立ったままやと照準がぶれる……っ!」
 下半身のブレが少ない膝射なら。
「唸れっ! マーナガルムロアーーッ!!」
 狼牙がターゲットを見事に撃ち抜いた。
「へへ……なんだか俺も腕が疼いて来ちまった! なぁゲルツさん、続けてで悪いんだけど俺と勝負してくれねーか?」
 双銃を構える陽往。
(残弾3発,2発,1発……リロードっ!)
「ちっくしょ! 一枚逃しちまったかー……!」
 一射で、ゲルツは端すれすれを当てた。
 二人の射撃は、どれも中心を射貫いている……。

「まあ! 『セイバーマギエル』のエヴァンジェリーナ様ではございませんの!」
「ふふん、やるじゃない!? お名前は?」
 すさまじい勢いの拳圧が、死角外からのサーベルを弾き落とした。
「ワタクシ、最近D級闘士になったシャルロッテ・ナックルと申しますわ。以後お見知りおきを!
ここでお会いしたのも何かの縁、ワタクシにご教授お願いしますわ!
えぇ、本気も本気。大本気(マジ)でしてよ!」
「いいじゃない! この私と、今すぐ特訓よ!?」

「エヴァンジェリーナーーじゃなかった。リーヌシュカ」
「かなぎ! かなぎじゃない!」
 十七号は名乗らない。
 彼女の名前は十七夜。
 恐れる様子はない。誇りに目が輝いている。
「行くぞ、リーヌシュカーー互いの剣技、斬り結び高め合おう!」
 我流剣術がぶつかり合った。


「私だァァァァァ!!!!!
ロードローラーだァッ!!!!!」
 鉄帝の闘技場にRoadの異次元の轟音が響き渡る。
「ロレトレと言えばトレーニング! 鉄帝と言えば筋肉ッ!
つまり今回は筋トレをするに最適最高の環境という訳だァ!!!」
「ウォイッチ二! マッチョ! サンシィ! プー☆リン!」
 プリンを山ほど乗せた巨大容器を掲げてひた走るプリン。
 筋肉を鍛え、プリンを補給し……すれ違い様にプリンを分けてやれる。
「うっかりプリンに釣られてきちまったけど……え、筋トレ? マジで?
いやいや絶対にプリンなんかじゃ足りねえ―だろコレェ!? 肉用意しろよ肉ッ!!」
 悲鳴を上げる要。
「てかキツ過ぎるんだけど!? 俺死ぬの? ここで筋肉死んでイケメンマッチョに生まれ変わっちゃう?
いやそれはマジでねーから少しは加減して死ぬわぁああああああ!?!?」
「相変わらずの鉄帝っぷりは流石という他ねぇなぁホント。だからと言って死ぬほど訓練してちゃあ本末転倒だから程々に休めよホント!?」
 ヨシトは倒れた者を回収し、精霊操作で怪我人をめざとく見つけては、てきぱきと治療していく。
「訓練に戻りたかったら早く集まれー」
 ランドウェラがぽいぽいとこんぺいとうを渡す。
「肉……」
「ぷりんっ!」
「ははははっこんぺいとうを食え」
 回復しかできないのかなどと不届きなことを抜かす輩はショウ・ザ・インパクトである。
「死ぬ気で筋肉を酷使しろッ! 死ぬ気で鍛えぬくのだッ! 来るべき日の為に筋肉は準備しておかなくっちゃあいけない……。
腹筋30回! 腕立て伏せ30回! スクワット30回! このセットを1ダースだァァァーッ!!!!!
……ヨシ! 準備運動は終わったなッ!!
では往くぞッ!!水分補給は忘れずになァ!」
 ガソリンを飲み干すRoadが爆速で去って行く。
「私ももっと刀を強く速く振るえるようになりたいのです!」
 彩華は木刀に重りをつけて素振りをする。息もつかせぬ連続の二刀がひらめく。
「己の限界を超えて見せます!」
「腕立て1000回やるであります!」
「ディップス1000回やるであります!」
 パトリシアが叫び、フランクがそれに答える。
「ジャックナイフ1000回!」
「デッドリフト1000回!」
「懸垂1000回!」
 マーヴィンとアレクシスとパーシーが次々と言った。
「腹筋2000回やるであります!」
「背筋2000回!」
 ロードリックとバリーが負けじと叫ぶ。
 どんどんと数字をつり上げていくさまは、さながらオークション会場である。
「スクワット一万回やるであります!」
 ティモシーが高らかに宣言する。


『ここどこ?』
「ラド・バウだよ姉さん」
 ノットは自身に良く似た影を呼び出す。
「ボクらは実力がまだ高い方でも無いからね。安全な状況で訓練できる……と言うのは得難い経験だよね、姉さん」
『いや、ノットちゃん! ぼくはこういう手荒な場って苦手なんだが!?』
「苦手だからこそ訓練するんだよ。習うより慣れろって言うし頑張ろうね」
『ウォォォォ! スパルタが過ぎる! 助けて!』
「ハッ!? ここで強さを見せつければ
私とお付き合いして下さる殿方も見つかるのでは!」
 メアリーからばちばちと炎が揺らめいた。
「私天才ですわ。そうと決まれば張り切って参りましょう」
「私はレイリー=シュタイン! 騎兵隊の一番槍よ! 自信のある者よ、誰でもかかってきなさい。
私が負けたら、1つだけ何でもやるわよ!」
「面白いやつがいるな」
 と、ヴェルス。
 レイリーの大盾が攻撃を防いだ。
「負けたら何でもするわ、覚悟ずみよ!
勝ったら私の名を覚えてってもらうわよ!」
「熱さに際限はないが、冷たさには限界がある通り、如何なる防御も攻撃に勝つ事はない
守る事より、壊す事のほうが圧倒的に簡単さ」
 群がる闘士たちのはざま、グレンがルキウスをかかげる。
「じゃんけんと同じさ、パーでグーを受け止めようと、チョキ相手じゃ斬られちまう。
だがその上でだ。極めに極めた防御の技術ってもんを、俺は拝みたいんでね。我が道に未だ果ては見えずってな! 絶対できない事以外は絶対やってみせるのが信条でな!」
「ハハハハハ!!! 誰が呼んだか我自身が呼んだ!!」
 羽を広げ、堂々と立ち塞がる影。
「我はダリル!! 見事な勇士達の姿を見届け、魂の輝きを愛でる者なり!」
 錘を抱えて、空中シャトルランである。
(死ぬぅ、死ぬぅ、体が死ぬぅ……それでも、それでもあの輝きには触れてみたいのじゃ! まだまだぁ!!)
 ウサーシャは一撃を繰り出し、攻撃の具合を確かめる。R.O.Oとはまた違う感触だ。
「荒事の類はずっと避けてきたけれど……この国に生まれついたからには、現実世界でも一度くらいは挑んでおきたいんだ」
「いつもは試合で1対1で会うので、こうして見ると壮観ですね!
今日は良い日になりそうです」
 迅ははつらつと、重鎧を着た相手を鉄拳鳳墜で殴り倒した。強い。早い。
 攻撃する暇がない。
 バルガルは大多数の闘士と向かい合う。
 亜空の影へと転じ、隙を作った。槍で視線を誘導して、柄での攻撃が本命である。
「うむ、訓練! 来るべき時の為にも何かを護る為にも
常日頃から研鑽は積むべきものだからな!」
 コウは平気で起き上がる。
「にゃはは! やっぱし強いなぁ。めっちゃ楽しいわ」
 繰子は返り血を浴びて笑う。
 別の一角。
「ふむ、闘士の魅せる闘いと言うのは参考になるね……」
 リェーヴルは飛び道具を受け止め獲物を投げ返す。
「おっと僕をご指名かい? いや、観客に見えたかな? 僕も少しは戦えるのでね、では胸を借りさせてもらうよッ」

(……まさか皇帝陛下がいるとは)
 オリーブは視線を感じてじわりと汗を流す。
 ヴェルスは側近から耳打ちを受ける。オリーブも鉄帝で名高い騎士だ。
 手を振られ、なんとか礼を返すことが出来た。
 むしろ、訓練の時よりも緊張が走る。
「お久しぶりだね陛下!」
「久しぶりであるな、ヴェルス殿!」
 百合子とイグナートに警備が慌てるが、皇帝は構うなと手を振った。
「やあ。また力をあげたのかい」
 百合子のオーラが満開に咲き誇っているのが見える。
「うむ、まだヴェルス殿の域は遠いのであるがそこそこ戦えるようになったのである!
良ければご指導賜りたい!」
「そうそうセッカクだからちょっと汗を流して行かない?」
「ほう……汗を?」
「そりゃあ全力で流させてみせるよ! イレギュラーズはまだまだ伸び盛りだよ! 艦隊戦のときには戦えるキカイに巡り合えなかったからね!」
「ふふ。残念だけど、また今度だね」
「ではそこの!」
 背筋を伸ばす、精鋭の近衛兵。
 イグナートの飛妖突が貫き、白百合百裂拳が咲き誇る。
 百合子の手数の暴力はマシンガンさながらである。


「えっ、合同訓練の後にライブ!?」
 イトはそわそわとパンフレットを見る。
(訓練終わったら去年のタオルと光る棒取りに一旦家に……いや、今年も新作が出てるはずだし、Tシャツとかも買いたい)
 へろへろになって炎天下の中列に並ぶのが楽しくなってくるこの感じ、嫌いじゃないのだ。
「あ、あれは……」
「ダンディ★プリンス様よっ!」
 ダンディホワイト、ゲオルグ。ふわふわ羊のジークがもっふり、ファンサービスを忘れない。
(かわいいとはまた違う路線のアイドルを見せてくれよう)
 エナは出番に目ざとくステージに上がる。
「ボクが(自称)可愛い(バラエティ)アイドル! エナ・イルですよぅ!
ちょっとそこぉ! 今失礼なルビ振りませんでしたか!?」
「ぱっるすちゃーん!」
 ぱるすを応援するエル。
「やっぱり……から揚げは美味しいよね、コーラとポテトフライと一緒にいきたくなる!」
「あっ、レッドさんこっちこっち!」
 レッドは倒れたファンを回復させながらアルヴァのもとにやってきた。ポップコーンとコーラの準備はヨシ。
(俺はデートのつもりだけど、偶にはこういうのも悪くないかな)
 パルスちゃんを応援するレッドを微笑ましく見るアルヴァ。
「にしても、あれでラドバウの闘士なんだよな」
「ライブ、ライブっす! アルヴァさん、ほら他のファンのみんなと一緒に声を合わせていくっすよ! せーの…」
「え? いや、そういうの恥ずかしいし。いや、だからその……!」
「\ぱっるすちゃーん!/っす!」
「ぱっるすちゃあああああああああああああああああああああん!!!!!」
 タオルを振り回し、最前列でコールをする焔は感涙にむせび泣いている。今、ウィンクされた。絶対。
「新しい衣装も元気いっぱいなパルスちゃんにすっごくよく似合ってるし、今日のライブも最高だよ」
「うぉぉぉぉ!!! パッルスちゃーーーーん!!!」
 声を張り上げる瑠璃に、若干引きつった表情を見せる琥珀。
「姉さん……合同訓練はいいの?
いや、今現在進行形で暴走はしてるけど」
「ん? まあ、それは考えたけど……折角だから二人で楽しめるイベントだゾ!」
「……まあ、別に俺は姉さんと久々に一緒に行動で来て嬉しいし」
「んん? 何か言った?」
「……」
「ボクはパルスちゃんだけじゃなく、ウォロクさんもリーヌシュカちゃん、ゲルツさんも推し、もとい尊敬してるし、ガイウス様なんて崇拝だゾ!
まあ、いつか皆さんと挑戦して勝つつもりではあるけど!
とにかく今はパルスちゃんを推すんだゾ! 琥珀!」
「ぱ、ぱるすちゃーん」


「さっすが鉄帝、今日もあちこち賑やかだなぁ」
 ルルはお祭り気分を満喫しようと思っていたのだが……。どうにも怪我人が多い。
「出張修理工房開店します! 時計以外も、機械なら修理は任せてよ」
 ケガをする前よりも具合が良くなると評判だ。ルルの手にかかれば、たまに光ったり動いたりし始めるのだった。

 今日の散歩は、鉄帝の首都、スチールグラード。煙溢れるこの都市で、どんな出会いがあるだろうか。
「なんて昔見たテレビ番組見てぇだなぁ」
「てっつさんぽ~♪」
 窮鼠はつぶやいた。
 アウローラはくるくる周り、歌っている。
(特異運命座標? ってのはこういう時色んな国を自由に行き来できるのがいいよなぁ)
「ってうおっ、あのねー、いや、男か? にーさんせぇたかっ。スタイルいいな」
「ありがと♥ あら、良い男ね。そうね、……野性味を引き立たせる感じで」
 ビッツはイレギュラーズを飾り立てるのに燃えている。
「あら、あたしったら力で解決する国とばかり。こういったところもあるのですね」
 流星――いや、リュゼ・フロワはドレスを着こなし、街を歩く。
(身を整えて着飾ることは戦いであり、武器になる
相手を見極め、奇襲などの手を使う面も忍であれば当然)
 忍集団『暦』。戦い方には覚えがある。
「もし、そこの方。いえ、お邪魔をするつもりはないのです。是非、近くでお勉強させていただきたくて」
「あら。ええ、語り合いましょう?」
「私、看守だからお洒落なんてご法度でしょうけど……まぁ今日ぐらいは特別にね?
好きに飾り付けちゃって構わないわよ!」
 セチアを前に、くすりと笑うビッツ。
「べっ別に、お洒落に興味あるけどどういうのが似合うのか分からないとか思ってないのよ!?」
「そうねぇ……重心を上にもってきて……ワンピースなんてどうかしら」
(はわわ、なんとお美しいお方で御座いましょうか……わたくしとはまるで月とじゃが芋)
 縮こまる華綾だが、ふるふると首を振る。
「そこなお美しいお方!」
 その呼びかけで振り向くのがまたビッツである。
「ここで出会ったも何かの縁!
どうか、わたくしにご指導ご鞭撻をくださいませぬか!
このままではわたくしは田舎の芋娘と想い人から突き放されてしまうかもしれませぬ~~~!」
「ふうん。いいじゃない。ねぇ、化粧ってしたことある?」
 鏡をのぞけば、目がぱっちりになった自分がいた。
「はわ……」
「まあ、元が良いんだけどね」
 ビッツが赤い口紅に目を留めると、雨紅が会釈して場所を空ける。
 その視線で、同士であると分かってしまった。
「こう、なんらかの形で戦いを好む方というのは、それ以外を疎かにしがちという勝手な印象がありましたが、そんなことはないのですね」
「ふふふ」
「いえ、ビッツ様にとってはこれも戦いのひとつなのでしょうけれども、それ自体も私にとっては目新しい」
「その色、”舞台”で見られるための紅ね。好きよ」
「ファッション……お洒落には興味があるのですが
流行はさっぱりですし、自分が選ぶとなるとどうしても偏ってしまって
結局同じようなものばかり買ってしまうのですよね。
そこで……今回はビッツさんに選んでいただこうと思いまして!」
「期待されちゃったらしかたないわね」
 ビッツはアニーに衣装をあてて悩んでいる。
「おそろい、なんて素敵よね。たまには大人っぽく迫ってみる? ふふ。妬いてくれるかしら?」

「まさか鉄帝にこんなオシャレなお店が並んでたなんてボクちょっとビックリかも!」
「失礼かもだけど、正直意外よね」
 ヒィロと美咲は、お互いのためのプレゼント選びだ。
(ヒィロには、いつも明るく可愛くいて欲しいから……ピンク系よね
もとがいいんだから、引き立てるくらいで十分でー
っていうか、『私がどの色を付けたヒィロを見たいか』ね)
 邪念を振り切り、ひとつひとつ試していく美咲。
(基本はきらめき強くだけど、塗りでぼかせばしっとりめもいけそうね
これをあの衣装に……髪も……んんん 素晴らしい!)
(美咲さんはオトナで落ち着いてて上品で美人さん! だからー
これから使ってもらうなら、秋冬に合わせたものがいいかもしれないしー
そ、それにもしかしたらボクが贈ったリップの唇で、キキキキスとかしてもらえちゃったりして……!?)
 ほっぺがリップに負けないくらいに真っ赤になるヒィロ。
 もっと時間がかかりそうだ。
 ややあって。
「うん、この色に決めた!」
(深みがあって落ち着いた華やかさがあってオトナのカラーのバーガンディ!
こんな赤ワインみたいな唇の美咲さん見たら、それだけでボクもう酔っちゃって夢中で溺れちゃうかも……え、えへっ)


(大衆食堂……いいですねぇ。こういうのは大抵美味しいかまずいかの二極なんですね。そしておそらくここは……美味しいのでしょう。人がたくさんいますし)
 ものすごい喧噪の中で、神那は平然とチャーハンを頼んでいる。
「うん……美味しい」

「たのもー!!」
 朋子がばばんと食堂のドアを開ける。
「ここであったが百年目! コンバルグ・コングさんに勝負を申しこーむ!!!」
 ゴリラのドラムロール、ならぬドラミングロールが炸裂する。
「というわけでいざじんじょーにしょーぶ!!!!!!!!
っしゃあ! それじゃーお店の人、なんでもいいからじゃんじゃん持ってきて!!
え、お代? 負けたら全額払ったらぁ!!!」
「ひ、ひええ……」
 葬屠は行き来する皿とドラミングに首をすくめる。
「で、でも一だって頑張れば……あ、あの……このちゃーはんを……。う、やっぱり多い……くらくら……あ、おいしい……けど辛い……! み、水……!」

(かんぺきなさくせんりょねえ?)
 ウォッカ瓶を机にドォンする菖蒲。
(一人でいれば「君ひとり?ご一緒していかい?」からお酒を飲んで気が合うねってなってオレの家ここから近いんだ、落ち着いて飲み直さない?みたいに誘われて後はきゃー!!
……ってなれば最高だけどぉ!?)
「ねえらんれられもはなひかけてくれないのぉ!
ひょっほお! ここにたべごろなおんなのこがいまぁーす!
となり、空いてまぁーす!
……ひっく、あ、飲みすぎて胃が、うっぷ」
「あらあら、大丈夫?」
 菖蒲を介抱しつつ、リオリオは辺りを見回す。
「これまたすごいことになってるわねぇ。
あたしでよければ手伝うわよ? お姉さんこれでも料理上手なんだから!」
「うぉぉぉぉ、これも鍛錬と考えるアル。なんとしても、コンバルグをギブアップって言わせるヨ」
 白虎のまわりに、ぽぽぽんと肉まんが現れる。
「今のうちに、早くアル!」
「はイ、皆様お静かニ。今から手早く追加を作りますガ
言う事を聞けない方には食べさせる料理はございませんヨ?」
 鉄腕メイドアルムはかんかんと鍋をならした。
「余っている食材はございますカ?」
 クズ野菜や肉のスジでもしっかり煮込めばスープになる。魚の骨は油で揚げればスナックに。そして、野菜の芯をスティック状に切ってソースを添えれば即席料理の完成である。
「さあ召し上がレ」
 第一陣は即座に暴徒に吸い込まれていった。
「定番料理にとにかく腹持ちの良い物ぶち込むのよ!」
 鶏むね肉、卵、チーズを手際よく調理していく。
「足りなければデザートにバナナとナッツを混ぜたものでも出しておきなさい調理時間短縮にもなるから!」
「バナナアアアアアアア!!!」

「何だか凄いのが暴れてるな?
最近じゃ大体の事には驚かなくはなったが……」
 食堂を眺めるルナール。
「恐るべし胃袋の暴力、それはそれとして手伝っておけばご飯が貰えると聞いて」
『日に日に人間臭くなってねぇかこの機械ちゃんはよ』
 と、テラとマリスであった。
「大食いの人間、訂正……ゴリラが店に入り込む=悲劇待ったなし。
ブラックホール胃袋を舐めるな、これ鉄則なり」
「ごりら……鈴音知ってますわ! 大きなおさるさんですよね♪」
 はっとする鈴音。
「え……???? 飲食店のお店は大型ペットの入店お断りですのに、おかしいですぅ?! 誰ですか! こんな大きいペットを野放しにしてるのはーー!」
 二本の尻尾がぶわっとする。
「よぉしマリスと鈴音ちゃんは片付け要員。私とルナールは厨房でデスマーチだ☆」
「俺の世界じゃこういうのは炊き出しって言うんだよな、うん」
「流石にこのサイズの鉄鍋は女の力じゃしんどいからねぇ」
「まぁ、うちの可愛い奥さんがやるって言うんだ。俺は手伝うだけだ」
「さあさあ頑張りましょう?
こういうのもトレーニングの一環さ」
「おわーー!? 凄い騒ぎだね!?……あー……片付けか皿洗いくらいしか出来ないけど、お手伝いするね!?」
 ひょいと椅子を持ち上げるユイユ。
「なので! ボクのご飯は大盛りでヨロシク〜!オリャー!バリバリ!」
「よろしくー」と続くマリスもよく食べるものだ。
「て、テラちゃんが居なかったらお家に帰るところですぅ!」
「……もうこれは学校給食作成現場だなこりゃ」
 なんやかんやで言われた通りに只管食材を炒めるルーキス。
「配膳と片付けはお任せあれ。ここをこう、こっちをあっちに」
 吹っ飛んだ椅子やら机やらを片付けつつ、食器を回収していくマリス。
「にゃんルート改善、導線チェック」
「にゃんるーと……??? はっ! 鈴音は転んだりしませんですぅ!」
『頭からいきそうだしなぁ』
 つまづくところをそっとテラが椅子を引いてかわさせた。
「えへ……」
「虎だーっ!!」
 ばばーんと、ソアが飛び込んできた。
 もう既にいろいろなお店を回り、お腹を膨らませてきたようである。
「カカ!ㅤいい食べっぷりぢゃのぅ。若い頃を思い出すわい」
 バンカはぐびぐびと酒をあおる。
「お子様ランチ入りましたァーーーッ!」
「コャー。チャレンジャー、くるみなの。よろしくお願いしますの」
 胡桃はぺこりとお辞儀をする。
「食べなきゃ大きくなれませんからね! もっと大きく、強い男になるんです!」
 小柄なユリアンもチャレンジである。
「勝ち負けは大事ですからね。辛い物も量が多い物もどんとこいですよ!」
 といいつつも、汗をかいているが、せっせとかきこんでいくのである。
「わぁい♪ 創造神様の加護がありますように!」
 ンクルスはもぐもぐと激辛料理を食べ始める。辛いのは平気だ。単調な味も、満腹による拒絶反応もない。
「つまり体に入る限り食べ物を詰め込む事が可能なんだよ! どうだ~♪」
 しかし、それはあくまで容量いっぱいまで……。
 ばたんと倒れ込むンクルス。
「いや、皆凄いね? どう見ても体の体積以上に食べ物が入ってるよ? それどういう原理なの?
くぅ……私にもっと筋肉があれば!」
 どこからともなくプリンが飛び込んできた。


 喧騒を離れた国境線。
「おう、オメーらちゃんとやってるか?」
 慣れた様子で銃を手に取るラーテに、兵士達が仕事ぶりを尋ねる。
「あん? オレの武勇伝だぁ?
そんな大したモンはねーぞ。まっ歩きがてら話してやんよ」
(どこぞの国に肩入れも愛着も無いが……)
 ゲンリーにとっては、長く放浪していても所詮この世界は異邦の地だ。
「鉄帝の戦士は、儂らドワーフと気質が良く似ておるの」
 兵士に稽古をつけながら、ゲンリ―は思う。鍛錬を怠らず、鍛冶師が鉄を鍛えるように、戦士たる己を鍛え続ける生き様は、在りし日のドワーフの一族を思い出す。
「まだまだじゃ! もう一本行くぞ!」
「国境線ということで何かがあるかと思ったがあの程度魔獣などでは何かにすらならんな……」
 ロックは兵士たちを相手どっていた。
(我の【目的】の情報が此処にあればいいが、
将軍……いや、奴は知らんだろう『その程度』の事は)
 ロックの目的は、常に一つだ。
『怒り……喰らう…喰らう… 我は怒りの体現……っとまた癖が出たな、さぁ、お前らの力を我に感じさせてくれ…………!! 強く、強く……!!』
 狼の身のこなしはするどいものだった。

 物陰から気まずそうにザーバを見つめるヴァレーリヤ。
(こちらの世界のザーバとは別人と分かっていても、R.O.Oで戦った後だと話しかけづらいですわね。サボったと思われるのも嫌ですし……)
「どうしたんだい? そんなしかめっ面して。可愛いお顔が台無しだよ?」
「マリィ……!」
 リスのように肩が跳ねるヴァレーリヤ。
 とはいえ、マリアは理由を察しているのだが。
「ヴァリューシャ……かくれんぼは苦しくないかい!?
ザーバ君! ごめんよ! 今日ヴァリューシャはちょっとテンションがおかしいみたい! しっかり警備はするから安心しておくれ!」
「おお?」
「あっ、こらマリィ、声が大きいですわよ! いやあ、あはは……これはなんと言いますか、隠れんぼ? とっ、とにかく私達は警備に行ってきますわね! 終わったら報告に来ますので、報酬のお酒はお忘れなく!
行きましょうマリィ、あっちの方、もしかしたら何かいるかも知れませんわよ!」
「あー!? ヴァリューシャ! 待っておくれよ!
ということで私も行くね! ザーバ君! 良いお酒をよろしく! ヴァリューシャぁ……その言い方だとUMA探索任務みたいだよ?」

「砲兵大隊、制圧射止め。
歩兵大隊第二、第三、半包囲を維持したまま前進」
「ご苦労、大佐」
 いつものように、エッダは完璧な敬礼をした。
「ああ、そういえばザーバ閣下は陛下とは古いお知り合いでしたか。
お話を聞かせていただきたいものです」
「大した話はできんぞ?」
「小官は、イレギュラーズとして各国を巡って参りました。
色々な国があり、ふと気になったのです。
我が国の皇位に託された想いとは強さ。
故に、それ以外は問わない――言い換えれば我らはそれ以外のものを知らない」
「……」
「それでは、彼自身の想いは……ああ、話の続きはいずれのようですね。
では、往って参ります。閣下。
第一大隊、前進
本日も、南部戦線異常ナシ」

「どうどうどうっ」
 アイリスが土煙を巻き上げてやってきた。
 愛車ファブニール改でのドライブ中だ。
「仮想世界での話だけど向こうのボクは場所的には此処に所属していたみたいでね~多少の違いこそあれ……ほら、気になるじゃない?」 
 搦手主体で弱体化させつつの、接近戦で兵士を翻弄する。
 実力を見せなくては、と張り切る兵士達。
 ふふんと鼻歌を歌うマリカ。彼女が立つのは魔物の前。
「『お友達』のみんながへーしさんのお手伝いがしたいんだって♪」
(でもでも、生きたヒトとアンデッドの異文化交流ってなんかたのしそうかも❤)
 起き上がった魔物は再び襲い掛かってくる。
(どーしようもないクズ霊魂でもスキルの弾くらいにはなるよ☆)


 ヴィーザルは複雑な土地だ。
 ベルフラウは故郷へと足を運んだ。
(父上は、ご多忙なのだろうな)
 深緑産の茶葉と幻想の菓子を携え。この地域では買えないようなとびきりのお土産に、嬉しそうな顔を思い浮かべながら……母の元へと。

「止まれ! ここがどこか……アンタは!」
 剣斗は颯爽と、自分の故郷――略奪国家鬼楽へやってきた。
「フハハハ! 俺だ」
 隣国鳳圏と戦争中の国、しかも政情は不安定ではあるのだが、たまにはこんな間隙もある。
 自宅の縁側で茶を啜り、友人に呼ばれ、街に繰り出して酒を飲み明かす。まあ、まったりとした時間が過ぎていく。
(夕餉は母上殿が俺の好きな梅おにぎりを握ってくれるらしいからな。楽しみだ)

「酒、飲過、注意」
 ヴィーザル地方の小部族。シャノは、夏至祭の警備担当である。
 彼の所属する部族であるシタシディは夜の森の火の用心役の部族ではあるが、白夜は夜が訪れないので夏至祭の警備役をかって出ているのだ。
「巡回中、安全確認、良」
 木の上に目を留めるが、問題なしとして去って行く。クライムが寝ているだけだ。
(フッ……修行修行と明け暮れるのも悪くないかもしれないが)
 休息をとるのもまた修行である。
(此処に旨い酒と肴があれば最高なんだろうが)
「どうぞであります!」
 サウナにこもっていたローガンがリズリーに席を譲る。
(サウナの作法……それは居合わせた他の客との無言の勝負にあると孤児院の院長が言っていたのであるな! それならば、我輩のド根性を見せつけるべく、粘って粘って粘りまくるのである!)
「よーし、さっぱりした!」
「な、なんのこれしき……」
 リズリーは平気でサウナからあがり、飲み比べをしかける。
「へぇ、ここはお祭りか。いいねぇ、ボクは楽しいことは大好きだよ」
 お風呂か、ということでミシェリアはちょっとだけサウナにひかれたけれど、ぷるぷると頭を振る。今日は我慢だ。
「しかし今日は一日明るい日なんだな。うん、明るくて楽しい、これはとても良いことだ」
「夜が来ないって、変な感じだ……」
 白夜に、ジュジュは不思議そうに空を見上げる。お祭りも、知っているのは音だけだ。

(白夜……日の沈まない一日。どんな空が見られるのか、楽しみです)
 ジュリエットは空を見上げた。
「お久しぶりです、ラグナル様!
ベルカチャン、ストレルカチャンもこんにちは! お元気そうで何よりです!」
 リュカシスへ突撃していく狼たち。
「狼のみなさんはお祭のために綺麗にしてもらってるの?
ボクも洗うのお手伝いしてもいいですか!」
「おいおい、こんな日に労働するのか?」
「お二人ともお久しぶりです。狼さんたちも元気にしてましたか?」
 エステルは、かじられた花輪をもどしてやって、狼の喉毛を撫で回してやった。
「個々の部族の思惑はどうであれ、続けていきたいものですね。お祭り」
 人混みを駆ける子どもたちを見ながら、エステルは呟く。
「あるいは私も、いつかの時にああして走っていたのでしょうか」
「なんだ、……走るか?」
「夏至祭、日が沈まないお祭なのですね。
みなさんはこの日にどんなお願い事をするのですか?
ボクの地元には喧嘩祭りのような荒々しいものが多くて
こんなにキラキラしているのは、少し馴染みが薄いから……」
「内々の祭りだから流石にここまで賑わうもんじゃないが、アタシのとこでもやってたよ」
 リュカシスに尋ねられ、リズリーが話し出すと、狼はピンと止まった。強者であることが分かったのだろうか。
「ラグナルさん、お久しぶりです。
一日中、お日様が出て、とっても楽しそうだって、エルは思いました」
 エルとエステルに狼が押し寄せる。
(白いワンピース、ふわふわひらひら、雪のようだって、エルは思いました。
花の冠、とっても可愛くて、太陽にぴったりだって、エルは思いました)
 くるくると踊るエルに、二匹の小鳥が寄ってくる。
「極夜の時も、遊びに来てみたいって、エルは思いました」
「おう、是非来てくれよ! また案内するからさ」

「何だか初めて会った気がしないな」
 ギルバートとラグナルとユール、そしてジュリエットは気軽な食卓を囲む。
「妙なメンツだなあ」
「この季節はヴィーザル地方に住む者にとって一番開放的になるものだ」
「皆で囲む美味しい料理は何よりの幸福だ」
「ユールはヴィーザル地方出身だと聞いたが
イレギュラーズなのだろう?
やはり世界を飛び回っているのか?」
「俺はヴィーザル地方出身だが、生まれはシルヴァンズ育ちはハイエスタゆえノルダインの習慣を知らん。ローレットというのは国を問わず仕事を受けるのだろう?ならば、ノルダインの習慣を知るのは良い経験になるだろう」
 ユールの言葉に、ラグナルが緊張した面持ちで頷いた。
「とりわけ敵対心が強いわけではないが、出身がらあまり良い話を聞かなくてな。とはいえ、短所だけ、あるいは長所だけの国など聞いたこともない」
「良い主人なのだな」
「いや、だいぶ手伝ってもらったよ」
「最近召喚されたばかりでな。つい最近スライムの仕事を受けたが、これはあまり口外するのは憚られるものだった。とはいえローレットの仕事は面白いものばかりだ」
「ラグナルさんは狼さん達とお友達の様に仲が良いのですね」
 ジュリエットが微笑む。
「気楽に誰かと会話しながら食卓を囲む事は少なかったので
今の気楽さと暖かさは嬉しい事だなと感じます」
 ふと、ギルバートの視線を感じてジュリエットの胸の鼓動がはねる。
「あの、私のマナーなど何かおかしかったでしょうか?」
「すまないつい。食べている姿を見るのが嬉しくてな」
 ギルバートが貴公子の微笑みを見せる。
 小さく小鳥のように啄む姿が愛らしいのだった。

 ラグナルの狼に餌をやり撫でるリーディア。氷の狼の匂いを嗅ぐ狼たちであった。
「あ! おっきい狼のおにーさんと美味しそうな蛇のおにーさん! お久しぶり〜また会ったね!」
「や〜や〜や〜リーディアクンにリコリスチャン
よ〜〜く見る顔ぶれだね、今日はどこ行くの??」
 リコリスとウロ、そしてリーディア。花冠を頭に乗っけている。
「あ〜〜〜〜聞いてもなんかよくわかんないけどミンナお花付けててカワイ〜〜ね、ボクもそれ欲しい……や、食べないようん」
「これなぁに? い〜匂いする! 食べていい?……ダメ? そう……」
「リコリスさん花冠は食べ物じゃないよ、ぺっしなさい。ぺっ。
代わりに持ってきた干し肉をあげるから」
「ウロくんは相変わらずどうなってるんだい、それ……」
 ゴックンと丸呑みである。
(蛇には牙がないと言うが、手品を見ているような気持ちになるね)
「や〜〜ん蛇のおにーさんがボクの頭の毛にいっぱいお花刺してくる〜〜〜〜!」
「わ、狼サンたちもお花つけてもらっててい〜〜ねそれ、イヤそ〜〜なコもいるけど
リコリスチャンとリーディアクンもデコっちゃおうね〜〜〜〜あは、カワイイカワイイ」
 花で飾り付けながら適当に褒めると、胸を張るリコリス。
「え?似合ってる? えへへありがと〜! もっと刺していいよ?」
 チョロい。
「ボクあの腸詰めが食べたい! えっと、”そーせーじ”って言うんだっけ?
皆しゅわしゅわした飲み物と一緒に食べてる、た〜のしそ〜!いいな〜!
えっ…? 未成年はあれ飲んじゃダメなの?」

(……今は夜の筈なのに。私の時間、私の夜闇の筈なのに。
今日はずっと、明るいです。
これが白夜……悔しいけど、綺麗、なのです)
 ココリコは空を見上げる。
(人がいきいきして、楽し気に動き回って……混ざりたいとは思わない、ですけど。
でも、この景色は、きっと確かに。良いものなのだと、思うのです)
 夏至祭。
 美しくも厳しい雪の世界に住む人々の賑わいには確かに根付いた営みを感じる。
 振るわまれる酒精の強い酒から住民たちの大らかさと逞しさを受け取る。
「一曲、どうだい、お嬢さん」
 演奏しがてら、ヤツェクは白いドレスの若い娘さんに声をかけて都会の風を感じさせ、ウィンク一つでマダムの心を鷲づかむ。白いドレスの老婦人と踊り、来た年月をしみじみとする。
「やあ、吟遊詩人殿、一曲、愛の歌を」
 檻は微笑む。
「夏至の日の祭りというのは世界が変われど似たようなものがあるのだな。
小生の知ってる夏至の祭りというのは『出会い』の祭り。無花果の木の下で眼を閉じると将来の相方を夢見ると言われる日である」
 歩けば熱気に髪は染まるし、涼やかな風があれば碧くなる。空を仰げば極光が揺らめく――ような錯覚をおぼえるほど。
(ああ、楽しいであるなあ。人がいて、人が騒ぎ、人が営みを行っている。
実に祭りに相応しい、幸いであるよ)
「雪国の良いところだ、素性を知らずとも互いに寄り添い暖を取る。助け合いの心が生きる術というわけだ」
 ダンスが始まれば、マッダラーは楽器をかき鳴らす。ヤツェクのギターが加わった。
 紅潮させた演奏隊と明けない夜の元で終わりの無い演奏をする間は、旅人も住人も泥も白夜の下では皆同じ。
「おおヴィーザル~我らが故郷よ~」
 闇の訪れない空の下での祭り、そこに生きる人々。
 願わくばこの地に幸大きことを。

成否

大成功

MVP

Road=Roller(p3p006957)
クレイジー・キャット

状態異常

なし

あとがき

トレーニング、お疲れ様でした!
汗をふき、あるいはのんびりできたでしょうか。
皆様の活躍にも幸多きことを!

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