PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Calm wind

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 アクエリア島――それは先日、魔種や狂王種達と激戦を繰り広げた地。
 かの地は『絶望の青』の領域において今まで確認されなかった規模の大きな島。
 複数の船を停泊させる事も出来るアクエリアは海洋王国にとって是が非でも手に入れたい地であり……その攻防は熾烈であった。されどイレギュラーズと海洋王国の軍勢はついに敵対勢力に打ち勝つ。
 アクエリアの奪取に成功したのだ。絶望の青の一角に、巨大な拠点を手に入れた――
「……と言っても、まぁ。本格的な拠点建造はこれからであるが」
 言うはファクル・シャルラハ。海洋王国の軍人にしてアクエリア攻防戦にも参加した一人だ。
 アクエリアを手に入れた――ものの、いきなりそこに軍事拠点が生まれる訳ではない。それを成すには本国からの資材搬入、実際の建造とそれに伴う時間が必要である。更には一度敵を排したとはいえ、ここは当然ながら絶望の青の領域。
 襲い来る狂王種や魔物は依然として存在し警備や排除活動も怠れないのが現状だ。
 次々と運ばれて来る資材の山々、軍艦の数々。忙しなく動く人々――

「よし。それでは俺達は休息に入るとするぞ!」

 を、眺めて。直後に飛び出したは『休息』の一声。
 ええ、このタイミングで!? とファクルを慌てて見据える者もいる、が。
「何を驚く。如何に拠点建築と警備が重要な任務であろうと――休みなく動けるもんかよ。
 休息もまた重要な一要素……それにこれは『上』の方からの指示でもあるんだぜ?」
 女王か、ソルベか。あるいはその両方か。
 成程確かにファクルの言う通りではある。誰もが休まず動き続ける事が……必ずしも最速に繋がるとは限らない。疲労した身で魔物達の襲撃を乗り越えられるだろうか? あるいは魔種達の奪還攻勢があったら?
 適度な休息は必要である。作業の合間、ほんの微かでも慰安の価値はあるのだ。
 本来ならばリッツパークにまで戻るのが色々と安全なのだろうが……首都まで人員を戻すには遠く。即応の構えも崩さないとなればこのアクエリアにて些かの休息をとるのが最善だ。
「それに、見れば随分眺めの良い島だ――魔物達が襲ってくる可能性がある、とは言うが。警備の為の船は常に出ている。この近辺や、島のまだ制圧が確認されていないような奥深くにまで行かなければ安全だろう」
 本当に絶望の青の領域かと思う程に、今日の海は穏やか。
 空も晴れ晴れとしている。落ち着いてこの島を見てみれば、成程バカンスには最適かもしれない。いずれまた何かしら嵐が来るであろうが――それでも今日と言うこの日。平穏な風をその肌に感じるのも悪くない。
「それにな」
 と、次いでファクルは言う。その口端は、僅かに上がっていて。

「大号令が順調に進んでいる証としてここでどんちゃん騒いでやれば――アルバニアとかいう冠位魔種の奴への、最高な意趣返しになると思わないか?」

 アルバニア。廃滅病を齎す元凶にしてこの海を通さぬ意思を持つとされる冠位。
 そんな奴を引きずり出す為の挑発の一端にもなるのだ。
 存分に――楽しんでやろう。

GMコメント

●シナリオ構成
 こちらは一章限りのラリーシナリオです。難易度は『EASY』になっております。
 プレイングの受付は7日の朝8時までを予定しています。

 本シナリオは『バカンス』的なシナリオです。
 作業の合間、もしくは一時の休息……存分楽しみましょう。

●ロケーション
 本シナリオでのいくつかのロケーションを記しています。
 いずれかをご選択ください。
 もし『グループ』のタグや共に行動する同行者の方がいらっしゃる場合、そのグループタグか同行者の名前を一行目に入力して頂けると幸いです。

『拠点付近』
 人の多い拠点の付近にて休息を取ります。
 身体を動かしていないと……と言う方はここで簡易な戦闘訓練も行われている様です。
 また本国より搬入した様々な資材が届く場所でもあります。
 食料品やら嗜好品やら……欲しい物があれば早く手に入れねば売り切れてしまう……!

『砂浜』
 安全が確保されている砂浜にて休息を取ります。
 一角では本国から取り寄せた食材でバーベキューをしている様です。
 食事なども存分に楽しめる事でしょう。
 海洋王国の軍人達も順繰りに休息をとっています。

『自由』
 その他自由枠です。
 危険な行動をしない限りは基本的に何をしても構いません。
 内地側へ足を踏み入れても大丈夫です。奥まで行きすぎなければ。

●重要
 当ラリーシナリオでは極稀に『歪な黄金の果実』を手に入れられる可能性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • Calm wind完了
  • GM名茶零四
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年04月12日 22時10分
  • 章数1章
  • 総採用数46人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
コゼット(p3p002755)
ひだまりうさぎ
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者

 さて。どんな環境であろうと皆が充分にくつろげる環境を整えるのが――メイドの役目。
「――腕が鳴るよ。流石にこれだけの人数のおもてなしとなると大仕事だけど、ね。
 だからこそという場面でもある」
 メートヒェンが取り掛かるのはバーベキューコーナーの設置だ。機材の設置から食材の下ごしらえまで、やれる事は山の様にある……尤もバーベキューとなれば自ら取り掛かりたい者もいるであろう故に全ては行わないが。
「あらゆる事態は想定しておかないとね。要らぬ世話焼き、と思われてはメイドとしての沽券に関わる」
 自らの誇りの為にも、ただ漠然と作業すればよいモノでもない。
 頼まれればお茶の用意、調理物の運び……ああ他にもやるべき事は多いのだから。
 そして準備に勤しむのはメートヒェンだけではない。例えばリュティスもそうで。
「やれ、こういう時に働いている方が落ち着くとは――メイドの性なのでしょうか」
 この催しは一時の休息なのであろう。グレイス・ヌレから多くの作戦……働いてばかりでは気が滅入る。だからこそのイベントなのだと理解は出来るが、それはそれとして動いている方が楽、という者もいる。
 拠点より購入してきた茶葉を一つ。ポットに淹れて湯を注ぎ。
「みんな、おつかれさま、とってもつかれたね……
 あ。おなかも減ったし、あたしもバーベキューのお肉もらっても、いいかな」
「おや。それではこちらをどうぞ? 串でも焼きでもお任せください」
 さすれば肉を求めてコゼットの姿が見える。
 リュティスやメートヒェンが用意していた肉は既にあり、丁度良いタイミングだ。空腹は食事にとっての最高のスパイスであれば、彼女にとっては全てが一段美味となろう。
「そういえばね、さっきおっきい貝みつけたの。これも焼いてみるね
 ……どれぐらい焼くのがいいんだろう。もういいかな? もういいよね?」
 貝に『当たる』と廃滅病程……とは言わないが、別の意味で危険がある。じっくりと、じっくりと火を通す事にするとしよう――自分で採った食べ物であれば、より一層美味しくなるだろうから。
 喉奥を通る新鮮な幸を堪能して。目端に映る小魚もまた『良さそう』に映っていた。
「ヨハンくん、見てみて! すっごく豪華だわ! 海洋から運ばれてきたお肉にお肉にお肉に……こんなに食べちゃってもいいの!?」
 さすれば数々の食料品――特に肉の山を見据えて目を輝かせるのは数子だ。
 共に在りしヨハンへと言葉を紡いで語り掛ければ。
「休める時に休んで、遊んで、食べる……とても大事な事ですよミーちゃん!
 勿論これは海洋王国からの支給品。存分に食べていいでしょうとも!!」
 ミーちゃん――と数子を愛称で呼んで返答する。
 それは彼女が『ミーティア』と名乗っているが故にこそ。可能であれば彼女には絶望の青の領域内であるアクエリアにではなく、ローレットの拠点がある幻想に残っていてほしくもあったが……
「……ミーちゃんも選ばれたイレギュラーズなら、選択は尊重すべきですね」
「ん――ヨハンくん、なにか言った?」
「いいえ何も!」
 ともあれそうだと決めたのなら今は前を向くのみ。これより先、遠からぬ内にまた作戦が進もう。
 その折に備える為、今は食事である!
 沢山食べて力を付け、体調整え廃滅病に罹患した仲間を必ず助ける為。
「ほらミーちゃん食べて食べて、肉。肉ですよ肉。はい追加で肉です。焼けてますよ!」
 そして彼女をも――護る為に。ヨハンは数子と共に食事を楽しむ。
「あー……ん! おいひい! やわらかあ! うん、おいひ……ってちょっとストップ! も、もうお皿に乗りきらな……ヨハンくん! こんなに食べれないよお!」
 彼にあーん、とされ、若干照れながらも数子は肉をその口の中へ。
 幸せの味が広がり。談笑の声が砂浜へと満ちる。

成否

成功


第1章 第2節

八雲 千尋(p3p008100)
メノウ&
松元 聖霊(p3p008208)
それでも前へ

「全く。休息は大事だよな――医者としても諸手を挙げて賛成するぜ」
 医者として聖霊は、過酷な船旅の続くこの絶望の青の半ば――アクエリアでの休息を『良いモノ』として捉えていた。海洋王国の者はともかく、イレギュラーズの中には必ずしも船に慣れている者ばかりではない……例えば。
「ああ……いや本当に、穏やかな気候の下で休むのは賛成だぜ……うう。先生の薬がなかったらマジ死ぬかと思った……いやもう今は回復してるけどな!」
「千尋。だが無理はするなよ――ここで食中毒という可能性が無きにしも非ずだ」
 知り合いの千尋などは船酔いが酷かった故に。いや予想済みだったので事前に薬は用意していたが。まぁそれは除いても薬で誤魔化すのにも限度がある。地に足を付けて休むことの出来る時間は貴重で。
「まぁとりあえず回復したからにはバーベキューだよな! 肉喰おうぜ肉! おうメノウ、お前もこっちの肉焼けてるから食べ……待てお前それ俺のまで喰ってねぇか!? 待て、そんな上目遣いと可愛い声だしても駄目だ! 駄目、待て――!! 喰うな――!!」
「はは、不憫だな! 千尋! ようメノウ。なんならこっちの肉喰うか? たんと喰えよ」
 先生駄目だ! これ以上メノウが重くなったら俺の肩が壊れる――!!
 千尋の嘆きが砂浜に。相棒のメノウが片っ端から焼肉を横取りしていくのだ。そんなメノウへ餌付けを試みる聖霊。されば自分の肉までどんどん取られていって……ああ、仕舞いには逃げた!
 待て――! メノウ――!! 帰ってこ――い!!

成否

成功


第1章 第3節

カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結

「ファクルさん久しぶり。よかった本当に、無事でさ。
 ……やっぱり関わった人の元気な姿を見ると、ほっとしちゃうよね」
「ん、おお――『体現者』殿か。その折は世話になったな」
 史之が声をかけたのはファクルだ。彼とは先日、アクエリアの攻防戦で共に戦った仲。
 モンス・メグなる狂王種との戦い……どうやら廃滅病にも罹患しなかったようでなにより。
「さて。息子さんの武勇伝の話――も語るけれど」
「んっ?」
「まぁまずは腹ごしらえもしないとね……!」
 そう言って彼が取り出すは食~材~セ~ッ~ト~
 ストレリチア――とある妖精にも気に入ってもらった炒飯の出番である。いや正確には彼の『お手製元世界風焼きピラフ』であるが、まぁ細かい名称はともあれ。量を作って皆にも配ろう。
 アクエリアはイレギュラーズと海洋王国皆で勝ち取った地。
 皆が皆を支えて辿り着いた血であれば。
「ささやかでもお礼をさせて欲しい」
 体現者だからね――これでも、と。言葉を紡いで。
 そんな様子の一角。砂浜で羽を休めている件の『息子殿』の姿もあれば。
「ふぅ――! 今日はいい風の日だよなぁリリー! 見ろ、肉も焼けたぞいるか?」
「おにくくれるの? うん、えへへありがと♪」
 その『彼女』の姿もあった。
 カイトとリリーである。互いに愛しい者同士、これでもかとくっ付き合って砂浜に。
 バーベキューの煙ですら隠しきれぬ接し合い。春だというのにもはや夏が如くあそこは熱く。肉は熱いから気を付けろよ――だって? やかましわ! 熱いのはこっちじゃ!(血涙)
「あ、でもでも、やさいもたべないとだめだよ? つぎにそなえないといけないしね!
 というわけで――はいカイトさん、あーん♪」
「おっ。おかえしかぁ~? へへ、ありがとよ! あーん……
 なんだよ親父そんな所でこっちに視線を向けて。ええい肉はやらんからな! 野菜でも食ってろ!」
 と、ファクルの視線に気づいたカイトは焼き野菜を放る。
 共なる猛禽類の嘴がその端を上手い事キャッチすれば。
「――く、くそ! ジェンナにいいつけてやるからな!!」
 とファクルはお邪魔虫が如く。ピーマンを喉奥に運びつつ涙堪えるようなポーズでダッシュ。くそ! アンタだって本国に還れば奥さんいるだろと部下の誰かが叫べば。
 ええいリア充爆発しろ……! 末永く爆発しろ……!!

成否

成功


第1章 第4節

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

 ――拠点に近ければ近いほど活気と喧騒に溢れている。
 されば、かような所でこの臭いを気にされても叶うまい。
 唯一人。十夜 縁という男は風の赴くままにその歩を進めていた。
「大分“馴染んで”は来た訳だがなぁ……」
 言うなり視線を落とせば、微かに袖より見える――何かの『痣』
 廃滅病。死の香りにして己を蝕む冠位の呪い。
 自らを『もう若くない』とする彼にとってはさほどの恐れはないが。
「さて。年頃の嬢ちゃんには憂鬱なセンスだろうぜ。肌に痣は避けたいもんだよなぁ」
 進める足に行き先は定めていない。
 木の間を進み、時折海の方を見据えれば頬を風が撫でて。
 ――腰を下ろす。丁度よき、木陰にして景色の見栄えが良き所に出れば。
「……」
 風が草木を揺らす。その音が周囲に零れれば、耳が拾いて景色を瞼の裏に。
 開かずとも世界は見える。死が近くともまだ己はこの世界の内にいれば。
「あぁ」
 ゆったりと、その身の力を抜く。
 心地よき気温に身を委ね。一時の休息を。一時の腰掛けを。
 されば――眠り。脳が蕩けるその最中にて。

 “彼女”の、すすり泣く声が……聞こえた気がした。

成否

成功


第1章 第5節

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
錫蘭 ルフナ(p3p004350)
澱の森の仔

「うむうむご苦労なのじゃ。屈強な軍人と言えど休息は必要故、ゆっくり休むと良い」
 その声はデイジーの一声だ。カリスマを身に纏う彼女の言動には不思議な力がある。
「これより絶望の青の真なる戦場。次にいつ休みがくるとも分からぬものじゃ……
 それそれ。肉を焼いて喰わぬか? ほれあそこに山ほど在庫があるのじゃぞ?」
「おおデイジー殿……これは確かに!」
 砂浜。アクエリアの攻防からずっと働き詰めとなれば心身共に疲れがあろう……彼女の一声はそんな海洋王国軍人達の骨身に沁み込む様に、労わりの言葉が伝わってきている。終わったら妾の為に存分に働くのじゃーという声も聞こえてくるが。
 まぁファンを増やす目的が全くない訳ではないというか、むしろみたいな所はあるがともあれ。どうであろうと労わる気持ちまで嘘ではない。ビーチパラソルとチェア、優雅に彼女は浜辺で過ごし――そしてちゃっかりと肉焼きに誘導しつつ、焼き立てを待つ。
「ふんふん。此処までバーベキューの匂いが漂ってくるね――実に美味しそうだ」
 そんな場へとマルベートも匂いを辿りて。手にはワインと三又槍。
 ワインは肴のつまみであろうが――その三又槍は一体なんなのか。
「ん? ああこれかい? いや折角の浜辺なのだから……少し趣向を凝らした食事をしようとね」
 言うなり穿り返す砂場。探すのはその辺りに潜んでいるであろう貝だ。
 新鮮、天然極まる貝の現地獲得、現地調理。かような機会はそうそうに無い故に。
 たかが浜辺の小貝と侮るなかれ。
「磯の香をぎゅっと詰め込んだ海の宝石だよ。そら、噂をすれば一つ見つけた」
 マルベートは中身をこじ開け海水で適当に。洗い流してぺろりと一口だ。
 楽しむ気さえあればどこででも楽しめる。ワインの豊潤さが喉の奥より至れば尚に。
 例えば絶望の青と言われる地であろうと――全ては己が抱く気持ち次第なのだ。
「……うえ。ホント、僕、船酔い、するからさ。ここへも転移をなんとか……うぷ」
 しかしそれはそれとして気分が悪いのはルフナである。
 船酔いだ――砂浜で潮干狩りをしながら気分を紛らわせている。各国へ転移する特殊な機能もあるというのだから、アクエリアにもなんとかして設置できないのだろうか。でないと非効率……うぷ。
「うう、だめだ。考えないようにしないと。貝、タコ、ヒトデ、なんでもいいから……」
 探す。海の幸を、海の生き物を。
 潮の引いた岩場の海水だまり、隙間、落ちている巻貝や何かの瓶の中。
 そういう所を彼らは好む――だがマルベートと異なりルフナは食料として探している訳では無い。ただ森の育ちであるが故にこそ。
「海の生き物は物珍しいね」
 全く違う生命に興味を抱くのだ。
 ヒトデもウミウシも捕まえて観察を。ある程度の観察をすれば海へと返してやろう。
 森も海も。その生命に幸あれ。

成否

成功


第1章 第6節

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

 敵は冠位。天義でのベアトリーチェ以来の――
「ああ、くそう。やはりじっとしてはいられないな」
 穏やかな時が貴重であるとリゲルは知っている。それでも体を動かしておきたかった。
 廃滅病に狂王種にアルバニア……問題は山積みであればどうしても気になって。
「ははは。それなら戦闘訓練があるみたいだ。そっちが気になるなら参加するか?」
「ああ――うんそうだな。少し訓練に行ってくる!」
 さすればポテトに見透かされたのか、案内されたのは拠点で行われている訓練である。
 直接の手合わせ。訓練なれど気を研ぎ澄ませる必要のあるその一瞬こそ求めしモノ。
 相対せしは海洋王国の軍人だが――リゲルの思考に過っているのは、かつての冠位。

 『強欲』との戦闘。そしてイメージするのはアルバニア。

「手合わせ――願います!」
 この剣はあの魔種へと届くだろうか。再び天へとその刃を届かせられるだろうか。
 いや――届かせるのだ!
 想いと共に激しき金属音。それをポテトは見守りながら。
「うん――? ああそっちには怪我人がいるのか。全く、訓練なのにはしゃぎすぎだな」
 癒しの術を紡ぎ上げる。一人でも複数人でも、彼女であれば問題なく。
 リゲルが訓練に熱を出せば彼にもする事になるだろうか? そんな事を考えながら。
「――明日に疲れが残らない程度にするんだぞ?」
 言葉を誰かへ。身体を動かすのは結構だが、やり過ぎては駄目だと。
 ああ、彼が戻ってきたらご飯にするとしよう。
 届いたパンで作ったサンドイッチが――腹を満たすだろう。

成否

成功


第1章 第7節

鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜

 さざ波の音が響いていた。
 海風が優しく頬を撫でる。人の喧騒から離れた地にて――会うは二人。
「こないして海に二人……は、初めてやろか」
「そうですね。海遊びは、まだだったでしょうか」
 蜻蛉と雪之丞だ。波打ち際にて酒を一つ。杯は二つ。
 腰掛語るその声色は穏やかだ。
 ――されど。
「お願いが、あるんやけどな」
 蜻蛉の口端から零れる一つ一つは。

「もし、うちが……あかんかったときは、家の稟ちゃんのお世話頼める?」

 『終わり』を見据えた話の事。
 廃滅病――その呪いが蜻蛉の身を蝕んでいるのだ。
 まだ幾何か余裕はあるが……もしかしたら。もしかしたら、と彼女は思い。
「だから、な――」
「蜻蛉さん」
 続けようとした言葉の端を雪之丞は遮る。その目には確かなる意思を宿して。
「あまり、寂しいことを言わないでください」
 廃滅病は。呪い病は、元凶たる大罪を討てば、消え去るという。
 だからきっと――いや――
「必ず呪いを討ち果たします故」
 余裕を持って構えて頂きたいと、嘘偽りなき雪之丞の心が吐露される。
 病は気から。気を持たずしてどうして明日が見えようか。
 手を伸ばし――彼女の頭を包む様に。
「今暫くご辛抱を」
 必ず彼女を救ってみせるから。
「夜叉たるこの身に誓って」
 確固とした声色。耳に届く力強さに。
「……そやね、うちらしくないね。ありがとう」
 蜻蛉は吐息を一つ。ふいに、頭に乗った小さな手に気付けば。
 守っていたつもりなのにいつの間にか逆になった事に気付いて。

 約束を、破ったら承知しませんからと。

 紡がれた言葉。小指を差し出し約束げんまん。
 離れように想いを込めて。言霊に乗せてこの日に紡いで。

 絡めた糸はきっと解けない。

成否

成功


第1章 第8節

アイリス・アニェラ・クラリッサ(p3p002159)
傍らへ共に
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者

 廃滅病の恐ろしさは幾人かのイレギュラーズが知っている。
 なにせ現在進行形で襲っている呪いだ――シルキィもその一人で。
「……まだ、普通に体が動く」
 手の指を緩やかに。拳を作って開いて体への影響が少ない事を確認する。
 死はまだ遠い気がする。それでも『いつか』でも死にたくないし、きっと他の皆も。
「そうなら――頑張らなくちゃ、ねぇ」
 目を閉じて考える。もしなどと考えすぎても仕方がない。
 アルバニアという冠位魔種を引きずり出さないとまずどうにもならない、のなら。
「――よっし! バーベキューやってるって聞いたよぉ。まずはそこで休息&体力補給だねぇ!」
 食欲を満たし、英気を養うとしよう。
 幸いにして食欲は衰えていないのだ――いつか来る決戦の為にも今は休む。
 肉を喰らい野菜を食して。程よくお腹を満たせば次は焼く側に回ろうと。
「時間に余裕がないとはいえ……本当に余裕をなくしたら、やるべきことも見失うからな、うん」
 そしてミーナもまた廃滅病の事を考えながらも――しかし、考えぬ重要性もまた知っている。
 余裕なくばいざの時に体が動かない。焦って廃滅病が治る訳でも無し。
「進み具合は気になる所だが、今日この時くらいはな。うむ。
 ……ところでアイリス? 今日は皆と一緒に食べるんだから食べすぎんなよ?」
「ん〜、善処はするよ〜? もっと食べて良いならいっぱい食べたいけどね〜」
 ミーナが語り掛けるのはアイリスだ。彼女が食しているのは口――だ。ただし両の手に付いている口から、だが。底無き食欲を宿す旅人の少女は、放っておけば全てを喰らいつくすだろう。
 ……とは言っても、実はミーナもミーナで相当に食べる方であるのだが。
「わ、私はほら、いざとなればセーブできるし――セーフだセーフ」
 ホント~? 疑問的な視線をアイリスは向けて。
「まぁこんな状況だけどせっかく休憩してるんだからもう少し楽しも〜? 根を詰め過ぎてもしんみりしてても仕方ないしね~ゆっくりしておこ~? あ、それはそうと~『歪な黄金の果実』ってどんなのかな〜?」
 歪な黄金の果実。それは、かつて大海賊ドレイクが手に入れたという幻の果実。
「食べれるのなら気になるな〜どうなのかな美味しいかな~?」
「仮に手に入っても一口で食おうとするなよ……? しかし黄金の果実、ねぇ」
 バーベキューの中に――混ざっていたりは流石にしないか?
 視線を巡らせるが、混ざっている様には見えない。
「誠吾さん、こっちのお肉焼けたのですよ! どうぞ、どうぞです!」
「ああ――いい焼き具合だな。だが、俺じゃなくて軍人さんとかに配ってくるといい」
 と、さればソフィリアと誠吾もかの場所へと。
 元々は船の護衛依頼として来たのだが……道中は安泰で異常無く。
 ならばとソフィリアは肉を焼いて疲れている様子の誠吾へと――持ってきたのだが――

 ……あれ? 受け取ってくれないです?

 軍人の方を優先しようとしてくる。護衛依頼はもう終わっているのだから、そう依頼人を気にしなくてはいいし――というかなにより。
「こういうのは疲れてる人優先なのです! お肉は体力が付くのですよ!
 それに――うちは誠吾さんにお国を持ってきたのです!」
 だから誠吾さんが食べてください! とばかりに。更一杯に乗った肉を突き出して。
「俺は別に、まだ疲れてねーよ。あんまり動いてないしな……でもま、そうだな」
 折角の好意を無下にするのも憚られる。
 見てみれば焼き加減の良いモノを選んでくれているみたいだし。
「頂きますか」
「はい、うちも一緒に食べるのですよ!」
 満面の笑顔のソフィリア。並んで海を眺めつつ肉を頬張れば。
 想うものだ。彼女のこの笑顔だけは、決して。
「……曇らせねーようにしないとな」
 聞こえぬ程に小さく呟いた一声。奥歯で肉を噛み締めて、決意を新たに。

成否

成功


第1章 第9節

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

「くそ――休んでる暇はねぇんだよ……」
 さて。焦って廃滅病が治る訳では無い、と言うのは幾度か述べたが。
 それでもとプラックは模索する。死兆、廃滅病の対策を。少しでも少しでもと。
「歪な黄金の果実……それはどこだ? どこにありやがる……!?」
 根本的解決であるアルバニア討滅は現状不可能。
 故に情報を少しだけ聞いた『黄金の果実』を探し求めて彼は島を往くのだ。
 場合によっては安全圏を抜けてでも。暗闇の中にでも彼は往く。

 ――只管に、希望を求めて。

「……歪な黄金の果実、か」
 そしてその単語はウィズィも興味がある所であった。
 先日船の上で切り結んだ――ドレイクを名乗る人物。
 もし本物だったとして。果物を取得した人物であるのならば――
「アイツに繋がる手がかりが、もしかしたらあるかもしれない」
 この島のどこかにも。どの道、バカンスとはいえ休む気はあまり無い所だったのだ。
 折角である故、内地まで少し行ってみよう……おっと、とはいえ一人でまだ安全の確認されていない奥深くまで往くつもりはない。一人で何でも成せるとは思っていないし、島全体の調査を少しばかり進める程度だ。
 もしその過程で何かしら手がかりを掴めれば良し、という程度で。
「……そうしたら、さ」
 アイツも、冒険者である私の恋人も。
 きっと――喜ぶ顔を見せるだろうから、と。
 それぞれの想いはあるが、折角の自由時間と言う事で内地へと足を運ぶ者もそれなりにいる形だ。例えばプラックやウィズィの他にも。
「――ったく、木の深い所にまで来ちまった。まぁ拠点の方向は分かるけどよ……」
 レイチェルもその一人。元よりどんちゃん騒ぎに参加するのは柄ではないのだ。
 それよりも調査を。内地側に至り、ギフトの――病を目視する目であちらこちらを視て。
 探査系の技能をもフル活用する。もしかすれば敵がまだいるかもしれないのだ。
「引っかかれれば上々。特に反応が無くても、まぁそれでもいい」
 少なくとも大勢が潜んでいる、と言う事はないだろう。それが分かるだけでもいい。
 暗視を用いれば日の光が薄い所でも問題なく。動物がいれば語り掛けて。
「なぁ――お前ら、歪な黄金の果実ってヤツをしらないか?」
 見た事があれば教えて欲しい。大勢の仲間の命が助かるかもしれないンだ。
 探す。探す――己の力が続く限り。己の目が、病を見据え続ける限り。

成否

成功


第1章 第10節

セララ(p3p000273)
魔法騎士
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

 しかし――狂王種の跋扈する領域の島で、植物たちはどうやって過ごしているのだろうか。
「……魔種陣営が陣取っていたから、そこまで生態系には影響を与えないようにしていたのでしょうか?」
 エルシアは思考する。見れば植物達にそう『変な』様子はない。
 魔物などに怯えている様子もなさそうだが、はて……魔種達が集まっていた領域であるが故、狂王種などに汚染されないようにしていたのだろうか? 彼らにとってもわざわざ住みにくい領域にする必要性はない。まぁ真実は今一つ分からないが――
「聞いてくれる植物達に、この島の事を聞いておきたいですね……」
 根気よく聞き出そう。植物達の焦がれる桃源郷の場所や、魔物の情報。
 この島で活動を行う以上どんな情報でも有益と――なるのだから。
「ふむふむ。この島を見て回る事が出来るようになったのはありがたいね。
 折角勝ち取った場所だ。ゆっくりと、自分の目で探検してみたいものさ」
 そしてゼフィラもまた内地側を探検する一人だ。可能なら島の中央まで行ってみたい所で。
「ま。制圧してから日が浅く何が出るかまだ分からないことも多いだろう。
 色々と準備は整えた上で、足を進めないとな」
 用意するロープに松明、探索者用のあれやそれ。
 場合に応じて活用しよう。危険が薄いならそれでも構わないが用心は必要だ。
 見るべきは特に植生。エルシアとはまた違う視点で、彼女は植物に興味を。
「この島にしかない植物もあるかもしれないからね……ふふ、こんな事をしていては休憩にはならないかもしれないが」
 こうして探索や研究を行う事が一番の楽しみなのだと。
 ゼフィラは逸る好奇心と共に前へと進む。精神の回復を、確かに感じながら。
「やっほーい! 島の探索だ――!! 黄金の果実はボクが見つけてみせるよ!」
 別方面ではこれでもかと言う程元気よくセララが駆けていた。アクエリアの探索。戦いの最中は当然そんな事を行う余裕は無く、そして『黄金の果実』なる情報を得た彼女は。
「おっと。その前にまずは手近な果実から調べてみないとね。
 えーと、とりあえずこの木でいいかな!!」
 かの果実を探すべく駆けているのだ――ただその前にちょっと適当なのをもいで観察。
 洋ナシっぽい果実がある。うーん? だいじょぶ? いける? 美味しそう?
「……がぶ。もぐもぐ……もぐもぐ……美味しい!!」
 甘い芳醇な香りが口内に広がる。美味しいからもう一個――
「ハッ! だめだめ、ボクは本命の果実を探さないと!」
 あ。でもこっちの果実も怪しいぞ! もいで食べて……うん、美味しい!
 え? これも探索だよ、だって黄金の果実ってどんなのか分からないし。
 これも調査! 調査だから! いやホントに、信じてよ――!!

成否

成功


第1章 第11節

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール

 さて。バカンス、である。繰り返すがこれはバカンスである。
「――なので僕はどっか適当なとこで休みたいと思います」
 ベークだ。廃滅も進みし彼はあまり無茶はしづらい。
 ……しかし彼が万一浜辺で休もうとする姿を想像すると、完全に打ち上げられた魚で。
「浜辺は皆さん……ほら、なにか騒いでますし……間違えて狩られ……
 いえ食べられたらと思うと……はい……」
 なのでどっか静かな湖でも探しますと彼は移動する。あまり奥はまだ安全が確保されたとは言い難い地の様だが……それでも行きすぎなければ大丈夫だろうと。
 力を蓄えておかねばならないのだ。いずれくる、決戦の為にも。
「…………ぐぅ……」
 しかしベークとは逆に一切動きたくないのが矢都花 リリーだ。
 寝過ぎは逆に体に悪いのではないだろうか。少しぐらいは起きて身体をだね、と。
「……え? いやもうやっと着いたんだからさぁ……少しは休みたいんだよねぇ……
 じっとしてて急に動くとエコノミー症候群? とかになるっていうし……」
 危ないから動きたくないと、起こしに来た海洋王国の者を拒絶して殻に引きこもり。
「ってことで、あたい殻にこもって寝るから……起こさないでね……おやすみ……」
 フラグじゃないからね、とも呟いて。聞こえて来るは寝息一つ。
 ――やむを得ない。邪魔をして怒られるのは勘弁だ。
 今少し、彼女には安らかな一時を……
「ま、折角の休息だしゆっくりしたいよねぇ。気持ちは分かるよ」
 頑張る時は頑張って、遊ぶ時は遊ぶ。
 精神のメリハリが大事なのだと――スティアは語るが――
「だから私は釣りでもしていようかな。あの辺りとか、なんか良さそうだよね」
 片手には釣り道具。暫く歩き回った後に見つけた絶好の釣りスポットがあって。

 …………いやな予感がする。

 そう呟いたのは誰だったか。
「こんな浅瀬にサメなんていないと思うし、今日は安心して釣りを楽しめそうだよね。きっと大物が大量に釣れるに違いないよ! 少なくともサメではないね! というかサメはノーセンキューだよ、間違っても来ないでね!」
 あ、あ。これはフラグだよね――ちゃん。
 満面の笑顔のスティアさん。餌を思いっきり投じるなりいきなり糸が滅茶苦茶引いていて――
 直後。絶好の釣りスポットでなぜか水中と空中を自在に舞うサメと戦闘になったのだとか。

「な、なんだぁ? あっちの方でなんか凄い音がしてるけれど……」
 なんだか海の方で戦闘音みたいなのが聞こえるというのは零だ。いや安全が確認されているというし、多分気のせいだとは思うのだが……
「どうしたの零くん? なにかあった?」
 いや多分なんでもない、と零は数歩先往くアニーへ返答を。
 海の方でゆっくりするよりは内地の探検を選んだのが二人だ。
 アクエリアを攻略し、決戦が近付いてきているのを二人は感じ取っており。
「……私は零くんが心配……」
「……大丈夫、きっと治るよ」
 言うは廃滅病の一件である。零は――その呪いに身を蝕まれている。
 今少し猶予はある方であるが、解決するためにはアルバニアとの戦闘が不可欠。
 倒せれば良し。しかし倒せねば? あるいは時間切れが来たら――?
「あ、そういえば……その……あの、ね?」
 と。その時だ。アニーがしどろもどろになりながら呟くのは。

「す、すごく仲良くしてるとアルバニアに効果があるみたいって聞いたけど……本当かな……? 零くんの死兆は絶対なくしたいし……で、でも、どうしたらいいかな……?」
「……え、え? す、凄く仲良くしてると……そ、そうなのか……ほ、本当ならやる価値はあるが……」

 アルバニアの挑発の件。奴は――嫉妬の存在であるが故に。
 見つめ合う二人。『何』を、とは言ってないのだが『何』をすればよいのかは――
「――れ、れれれ零くん! 近い、ね……! ここここれならアルバニアも嫉妬しちゃうかな!?」
「――あ、あぁそそそうだな! す、凄い、近いな……! き、ッと嫉妬、するんじゃねぇ、かな!?」
 ご覧の通りである。見つめ合う二人、真っ赤に染まる頬が二人の間柄を示していて。
 いずれ来たる決戦に、不安はあれど。
 この日繋いだ手の温もりを記憶の内に。

 彼らはきっと明日へ、前へと進んでいくのだろう。

成否

成功


第1章 第12節

エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)

 アクエリア島での戦いに想いを馳せる。
 特に――Erstineが思考するのは、レアータとの戦いで。
「……ファンレターは確かに受け取ったわ」
 彼女は。レアータという少女は確かに存在していたのだ。
 溶けて、消えた彼女。それでもきっとここに確かにいた彼女。
「彼女を……いえ、彼女の他にも不幸にも巻き込まれた方々を弔う場所があればいいのに」
 それはふと思ったエルスティーネの一声が漏れたモノ。
 何も残らなかったモノに、何か残る形を。あとはせめて、今出来る事……
 そうだ。

 歌を歌おう。

 少し枯れてしまった歌だけど、彼女を忘れない為に。
「――」
 空に音色を乗せる。弔いの歌が響いて海に溶けていく。
 希望に満ちた優しい歌をここに。
 どうか届いて。どこかへ消えた――貴女よ。

成否

成功


第1章 第13節

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ネイアラ・セレナータ(p3p007915)
ベリーダンサー

 音色が聞こえた気がした。
 それは何の音色だったのか、ハッキリとは聞こえず気のせいだったのかもしれないが。
「どうぞ皆様ワタシの踊りをご覧あれ」
 余興の一つにと、ネイアラが別に流れす音楽と共に、流れる舞を一つ。
 踊りは戦士達を癒す一端となる。言語を介さずとも良い肉体の舞は誰もが理解しうる。
 その心に男女の境目も関係なければ。
「求められれば、どこまでも」
 どこへでも。
 自らの舞を披露しよう。自らの踊りを捧げよう。
 音楽に合わせたベリーダンス。ゆったりとした、妖艶なる動きを伴って。
 魅了する舞に香水の甘い香りが重なって、彼女の卓越した舞が披露される――

「いひひ、ご苦労様よぉ♪」

 同時。ネイアラとは別の『魅力』を持って休息の一つに当たるのは利香だ。
 かわいい男の子でもいれば丁度良かったのだが……流石にアクエリアとなればそう都合よくはいかず。代わりに砂浜にいる軍人達を相手に、夢魔の――惑わすが如き姿でストレス発散。
 相手の反応を見て楽しむサキュバス流の、という言葉が付くが。
「ちょっと悪戯するぐらいならシテあげるわよ? ふふ……♪」
 内地の方を指差して、魅了せんとする。
 含みのあるような言い方。何をとは言わず、察しろと言わんばかりの吐息一つ。
 ――実際揶揄の類だ。『愛』するにはこの島の特性はあまりにも悪い。
 長々と遊んでいらぬ呪いなど御免であり。
「さ……どうするのかしら……♪」
 だからこそからかう。それらしき言葉だけを紡ぎながら。
 意味深なる言葉だけで、自らにとっての『バカンス』を。

成否

成功


第1章 第14節

コレット・ロンバルド(p3p001192)
破竜巨神
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
長月・イナリ(p3p008096)
狐です

「ほぅ、本国からの搬入とな。と言う事は、もしや……」
 新鮮なりし様々な海戦食材が届いているかもしれぬと――汰磨羈は推察。
 超速の移動を伴って拠点付近へと駆ける。辿り着く補給艦を見つければ目を輝かせ。
「ふふふ、何を確保しようか。海洋王国の幸となればどれでも期待しうるが……!」
 やはり元が化け猫であるが故だろうか。魚、と言うよりも海の幸に目が無く。
 人込み駆け別け奥へと奥へと。美味そうな魚を刺身に、あるいは魚卵系を確保し、米の上に盛り付けた丼物にで……おっとエビやカニもあるぞ? こいつらを焼いても茹でても……おっといかん涎が。
「――本日のおススメを教えてくれ。とびっきり旨味のあるヤツで頼む」
 士気を保つ上で上手い飯は不可欠。つまりこれは何ら私欲によるものではない。ない。
 さて。
「ふふふふ……こいつはどうやって食べてやろうかな?」
 私欲によるモノではないので――後ろめたさなく、全力で食べつくしてやるとしよう……!

「よーしっ、食材探索隊出動だよ!」

 さてしかし! 折角のアクエリアとなれば『ここ』にしかない新鮮さを求めて旅立つ者も出ようというものである。森の方へ少しばかり探索に、と。焔が先導して。
「うーん何か見つかると良いよね! この島で食べられそうなもの……果物とかお野菜とか? お肉はあるかなぁ……ちょっと分かんないけど、香草とか手に入るといいよねぇ」
 『ちゃんとした』野菜が手に入るか分からぬ故、最終的には詳しい人物に確認する必要があるだろう。あるいは形が似ていても違う、という可能性もある。ただそれでも。
「折角の機会、頑張りたいよね!」
 一抹の希望を抱いて、彼女は奥へと進んでいく。
「安全が確保されてるって聞いてるけど……それでもここは絶望の青の領域だし、ね」
 このアクエリアには未だ不明な部分が多すぎる――落ち着くには少し早いと。
 そう紡ぐのはコレットだ。拠点の近くでゆっくりするには、なんとなく背筋がざわつき。
「ま、警戒を兼ねてその辺を散歩でもしときましょうか。何か出たなら皆に伝えればいいしね」
 故に周囲を歩く。砂浜、海岸付近を中心に……
 敵がいないか捜索し、味方を襲う者がいないか警備の心得と共に。
 あるいは貴重物、危険物の類が無いかと鑑定の目も走らせながら。
「今日穏やかでも、明日も穏やかとは限らない」
 そして海の果てへと目を寄こす。今は特に嵐の気配もないが。
 それでも違うのだ。ここは『絶望の青』……どこかに冠位が属する地。
 双眼鏡を用いて遠くを見据え、彼女は警戒する。敵の周囲を……

「うーん、良し! これで完成プチ稲荷神社!」

 と。そんなコレットの後ろで聞こえた声は――イナリのモノだ。
 イナリの眼前に広がっているのは一つの畑……麦畑だ。
 雑草を抜き、鍬で地面を耕し麦畑に最適な地面を作った後に彼女は己がギフトを用いて五穀を発展させたのだ。されば短い時間でも立派な麦が実る。ここまでしたのは彼女の趣味と実益を兼ねたが故。
 携行品の小規模な殿舎も設置すれば、見ようと思えば確かに神社っぽくも――
「これで御稲荷様の信者が増えればいいのだけれど……あ。でもまずここを知る人がいないといけないわね、うーん拠点の方へそれとなく宣伝しに行った方がいいのかしら……」
 思考を巡らせるイナリ。割と時間をかけたので何とかしたい所ではあるのだが。
 ……べ、別に友人がいなくてこんな一人遊びしているんじゃないだからね!

成否

成功


第1章 第15節

フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
フィナ=フォルトゥナ(p3p008257)
鉛筆転がしの

「休息――か。確かに働き過ぎは体に毒、だな」
 そんな言葉を呟くのはラダだ。アクエリア……ここまで激しい戦いを潜り抜けて来た。
 ならば全体として休息の日も必要であろう。それは理解できるが、しかし室内でのんびりするよりも散歩なりした方が、気が休まる性質であり。
 拠点付近にて買い食いをしながら景色を眺めている。
「……目につく人も物資も、この海の最中では初めて見るものばかりだ。
 海洋王国中から人材も資材を集めているが故、か?」
 それこそ祭りの一つでも出来てしまいそうだと。
 ……そうだ、もし絶望の青を突破できたら。
 あるいはアルバニアを倒すことが出来たなら。
 ――来年の海洋の祭は、官民共に史上最も盛り上がる事だろう。
「それこそ、この島でやってもいいくらいには……」
 ふっ、と零れた吐息は薄い笑みと共に。
 大げさな話かもしれない。アルバニアを倒したとてここを踏破出来るかは別問題。
 それでも全てが上手く行ったなら――

 夢のある話一つぐらい、語ってもいいだろう?

「んぐ……もぐ……美味しい……です」
 そして砂浜でフェリシアは肉と魚と貝を齧って……こら! お野菜も食べなさい!
「……もぐ、お野菜はまた今度、です。
 だって、お肉とかの方が……美味しそうな匂いします、し……冷めたら、たいへんです……」
 折角のバーベキューを楽しみにしていたのだ。沢山楽しんで元気を付けたい所。
 多少の肉の偏りなどいいではないかと……しかしやけに量と物のバランスが……
「…………あの……後で運動します」
 あとで整備のお手伝いも、します……
 あとで戦いのお手伝いだってします……から……
「今はたくさん食べさせてほしい、です……!」
 鬼気迫る彼女の意思。願わくばこの一連が、この食事が。
 『誰か』にとって『羨ましい』と思うぐらい――食事を満喫するのだと。
「わぁ……青空に、青い海に、白い砂! これが風光明媚っていうんですね!」
 同時。海岸に至るのはフィナだ。
 こんなバカンス日和にバカンスができるなんて、わたし達とても幸運じゃないですか? と、聞いていた『絶望の青』の風景とは全く異なっていると、その景色に感動して。
「ということで、幸運ついでにわたし泳いで決まーす!!」
 こうなるとは思っていなかったのだが、運よく水着も持ってきている。
 泳ぐに充分。理由も天候も、何もかも――思い立ったが吉日!
 警備の内側であれば狂王種も入っては来れまい。なぁにあんなの海水浴場のサメみたいなモンである。え、いくつか前の節でサメが出現しなかったかって? あれはサメの責任者の問題なのでノーカンです。
 ともあれ噛まれたって死亡率は5割弱ぐらいだとフィナは意気揚々に。死亡率高くない?
「どなたか一緒に遊びませんか! ビーチバレーでもいいですよ――
 私わたし、ジャンプ力には自信がありますから!」
 おいおいボールはどこにあるんだよ、と誰かが思えども。
 今日は幸運なりし日だ。
 ボールは持ってきてませんけど、幸運にもどこかに落ちている――
「と、あれ?」
 その時。泳いでいた彼女が砂浜に向かっている最中に。
 海の中に煌めく何かが見えた。
 手を伸ばせばすぐそこにある。どこから流れ着いたのか、どこで千切れたのかそれは『果物』で――

 歪んではいたが、黄金色の輝きを放つ果実がその手にあった。

成否

成功


第1章 第16節

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ

 ある一定の範囲であれば海洋王国の警備があるので安全――故に。
「ウェールさんこっちきゅ! この辺りとっても綺麗な海だっきゅ!」
「ああ分かってる分かってる――だがあんまり遠くまで泳ぐなよ?」
 レーゲンとウェールは二人で海を泳いでいた。
 レーゲンにとって海は新鮮だ。自意識が芽生えたときには森にいて、その後もずっと森で過ごして、生まれ変わったグリュックにまた会うために三千世界を渡り歩いてる時も――海に縁がなかったから。
「ああ――楽しいっきゅ」
 海中を散歩し、魚と戯れるだけでも未知であるのだ。
 波に沿って漂うレーゲン。グリュックと、ウェールの三人で過ごす今日が、この世界が。
「とっても眩しいっきゅ……こんなに、世界は綺麗だったんきゅ……」
「……そうだな」
 保護者の様にレーゲンを見守るのがウェールだ。
 エネミーサーチを用いて周囲の警戒を。まぁ敵なぞいないだろうが、万一に備えて。
 レーゲンの言葉を聞いている。彼が見ているのは――空、か。
「……まあ、たしかに俺も元の世界では海の中から空を見上げるとかはしたことないから楽しいぞ。
 ……ただ、俺はお前みたいにそういう事をはっきりと言えないが」
 一人で頑張り過ぎるなよ、と波の音と共に呟いて。
 彼もレーゲンと過ごすのは嫌いではない。だが、時折する彼の無茶は肯定しかねて。
「無理をしすぎていなくなられると……泣くからな」
 いずれ。
 いずれ別れが来る。
 それぞれにそれぞれの世界がある。この出会いはきっと瞬きの如くの刹那なのだ。
 それでもこの出会いは無意味ではない。
 共にいて楽しいのだと双方が思っているから。
「思い出を、いっぱい作ろうな!」
「うん――がんばるっきゅ!」
 では一度陸の方に戻るかと。些か日が暮れて来た空を眺めて。
 ――その二人の眼前に、何かが流れて来た。
「んっ?」
 それは枝。先日のアクエリア攻防の嵐の際に千切れ跳んだ、何かの枝……か?
 やけに目が離せない。その理由は、その枝の端に一つだけ付いていた――

 黄金色の、果実があった故にこそ。

成否

成功

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