シナリオ詳細
<Scheinen Nacht2019>蓮の葉とつまさき
オープニング
●
むかしむかし、とあるところにお姫様がいました。
お姫様はとても美しく、求婚してくる男が後を絶ちませんでした。
――私と結婚してくださいませんか、お姫様
そういわれるたびに、お姫様はこう返すのです。
――城の傍にある湖に、蓮の花が咲いています。蓮の葉を一つ残らず沈めずに湖を渡り切ったなら、私は貴方と結婚しましょう
果たして、誰もがそれに挑戦しましたが、葉っぱなんてすぐに沈んでしまうもの。誰もそんな事、できっこなかったのです。
そんなある日、いずこの者とも知れぬ男がお姫様の前に現れました。
――私と結婚してくださいませんか、お姫様
男はそう言いました。
今度もきっと出来っこない。お姫様はいつものように返します。
――城の傍にある湖で、蓮の葉を渡り切ったなら
けれどけれど、どういうことでしょう!
男は羽のように軽い足取りで、蓮の葉を渡り切ってしまったではありませんか!
驚くお姫様の前に跪き、男は言いました。
――私と結婚して下さいますね?
さて、お姫様が其の後どうなったのか、男と結婚したのかは、どの文献にも残されておりません。
遺っているのは蓮の花咲き乱れる湖だけ。
或いは“奇跡の起こる夜”になら――渡り切れるかもしれません。
●
「というのが昔話。で、モチーフとされた湖が此処なんだけど」
朗々と昔話を語り切り、途端に冷たい声色になったグレモリー・グレモリー(p3n000074)。いつものように淡々と、地図の一片を指差しました。
「実際に渡りきった、という話があるんだ。統計してある資料によると、シャイネンナハトの夜にだけ。聖夜の奇跡の一つとして語り継がれている……らしい。君たちを案内したいのは此処」
一枚の絵画を出してくるグレモリー。其れは蓮の葉の上で踊る少女を描いた絵画だ。
「僕はこの絵画を超える絵を描きたい。なので、皆には是非この蓮の葉渡りに挑戦して貰いたいんだ。別に結婚とか、しなくてもいいから」
でも、何か強い願いがあるから、人は無謀な事にも挑戦するんだろうね。
難しいね。
そう言って、グレモリーは考え込んでしまった。
- <Scheinen Nacht2019>蓮の葉とつまさき完了
- GM名奇古譚
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2020年01月12日 22時10分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●
「湖に、蓮の花……これは見ものだな」
しかも満開と来た。フレイは湖を眺め、ほう、と白い息を吐く。
対岸では意気揚々と蓮の葉を渡ろうとしている者がいるようだ。彼はどんな誓いを立てているのだろう、と想像する。
自分には今のところ誓いたいような事はない。いつか現れるのかもしれないが、そうしたらまた此処に来るのも良いだろう。聖夜以外で渡り切れたら、それはそれで面白そうだ。
「女王陛下がお越し下さったら、隣を歩きながらこの湖の由来をお話して差し上げようと思っていたんだけど……」
悲しむ史之。……ん? いや隣とか不敬じゃない? 一歩下がった方が良いかな?
しかし悲しいかな、大号令でお忙しいのか女王はお越しにならず。というか実際お越しになったら君、死んでしまうのでは?(嬉しさで)
「まさか死ぬなんてハハハ。でも女王陛下がお望みなら蓮の葉渡りもしてみせたのにな。いや、おいでにならずともしてみせよう! 誓いは勿論“海洋の未来に栄光あれ”!」
何かを振り払うように湖に走り出す史之。さて、渡り切れたかどうかは――
「まぁ、流石にこのなりで蓮の上に乗るのはな……」
エイヴァンは蓮の花咲く湖を前に、ほう、と冷たい息を吐いた。彼の体躯は大きくて、伝説だとかそんなの関係なく、蓮の葉に乗ったら沈んでしまいそうで。
「そういや、蓮の花ってのは普通は夏に咲くんだよな」
其れに、葉も少し大きめだ。こういうのは熱帯によくあるイメージだったが……特段変わった種類にも見えないし。
花言葉は――そう、雄弁。ある種皮肉が効いている、とエイヴァンは言い伝えを思い出す。鵜呑みにするならば、愛を語る男たちに「お前とは結婚しない」と雄弁に語っていたという訳だ、この花は。
「……俺は高笑いが聞こえてきそうな派手さで彩るより、質素で落ち着いた雰囲気が良いな」
其れは花もだし、女もだ。言い伝えのようなお姫様はゴメンだね。]
「幻想の冬は、こんなに寒かったかしら」
美しい青薔薇の人の薄い唇から、雪色の吐息が漏れる。其れを女王は、まるで花を見るかのような面差しで見ていた。
「……こんなところだからでしょう。大通りならきっと、もう少しは暖かい。……リズ、とお呼びしても宜しいですか?」
我(わたし)の事はレナとお呼びください。そういう女王を、リーゼロッテの瞳が写し込む。其れは冷ややかで、けれど、人のぬくもりをもった視線。
「……で、“レナ”。貴方はこの蓮を渡ってみせると?」
「ええ。静かな湖を眺めて過ごすのも悪くないですが、折角なら……もし渡り切れたら……リズ、貴方にお願いをしても?」
何を御願いするかは、渡り切れたらお話します。
「先日は寝てしまったから、お詫びにと誘ってみたけれど……」
Erstineはそわそわと、湖のほとりで髪をいじっていた。読んだのはラサを背負って立つ男、赤青コンビの赤い方。普段なら私的な用事に応ずる彼ではないかも知れないけれど、そう、この夜なら、この聖夜なら――
「おう、待たせたな」
「……っ、い、いえ……! 来て下さったのですね」
「折角の聖夜のお誘いなら、乗らない訳にはいかないだろ。……蓮か。こっちには縁遠い花だ。寒い中に咲くのはアンタを思わせるな」
頬を染めるErstine。其のまま2人はゆっくりと周辺を歩き出す。けれど、何処かErstineは上の空。単調な光景で飽きていないかしら、巧く話せない私に呆れてはいないかしら。
「……おいおい、嬢ちゃん。俺を誘っておいて上の空はねぇだろ」
ひょい、と赤い瞳が覗き込んできた。笑っていない赤い目に、頬を桃色に――寒さか、恥じらいか――染めた自分が映り込んでいる。
「っ!? き、気付いていらっしゃったのですか?」
「っはは! 気付かれないとでも思ってたのか? で? 其のだんまりは何だ、緊張か?」
「うっ……お、お誘いした手前、楽しまれているか気になる訳で……」
「俺は楽しんでるぜ。こうやってただの風景を楽しめる時間ってのは貴重なもんだ。ローレットからの呼び出しだ、という大義名分もあるしな。アンタはどうだ」
「……楽しんで、います」
嘘だな、と笑う赤い男に、Erstineは苦い顔をした。いつか其の余裕を剥がしてやるんだから。
「よっしゃー! サイズさん、蓮の葉渡りだってさ! 蓮の葉が綺麗なんだってさ!」
「全く……遊びなら数日前に行っただろう……もうまた遊びたくなったのか……?」
「サイズさんとは幾らでも一緒に遊びに行きたいんだ! ……けど……今日は散歩で済ませようか」
「?」
何とはなし、サイズの体調が良くない事に気付いていたハッピー。だけれど、其れを隠している彼なのに、指摘するのは気が引けて。
「浮いてたり飛んでたりする私たちじゃあ蓮の葉渡りもズルっぽいしね! あと、幽霊としての本能が蓮には無暗に触れるなっていってる!!ミ☆」
「そうなのか? 幽霊のハッピーさん的にどうなのかとは思っていたが、矢張り危険な代物なのか……見てるだけなら何ともないんだろ?」
「うん、見てるだけならね! あっサイズさん見て! あっちで渡ろうとしてる人がいる! 応援しようぜ!」
走って進まなくても良い。早歩きじゃなくてもいい。いつもよりゆっくりと歩いて、こういう思い出を積み重ねていく事も大事。
「湖に、蓮の花。ふふ、綺麗ね♪」
フルールとMeltingは湖のほとりで蓮の花を見ていた。
「すっかり冷えて来たの。フルールは寒くない?」
「私? 今はそんなに寒さは感じないわね。こんなに綺麗な景色を見てるんですもの」
寧ろ火照って暑いくらいよ? それくらい素敵な景色だわ!
Melting――Love自身はスライム形状のため、寒さを感じない。同時に、暑さというものも知らない。人は素敵な景色を見ると、アツくなるのかしら? と首を傾げて。
「……シャイネンナハト、フルールのお陰でとっても楽しいの。、あた来年もフルールと一緒に遊びたいの」
「ふふ、私の方こそありがとう、Love。素敵な聖夜に出来たのはあなたのお陰でもあるわ。また来年も一緒に楽しみましょうね?」
来年。少し気が早いかしら? いいえ、女の子だもの。来年の話をしたって、全然構わないんだわ。
「……フルール」
「なぁに? Love」
「愛してるの」
「ええ。……ええ。愛してるわ。大事な大事な、私のお友達」
その愛は同じなのかしら。其れとも違う愛なのかしら? これから同じ時を過ごして、同じ答えに辿り着けたら、きっと素敵なのでしょうね。
「美咲さんはさ、奇跡ってあると思う?」
「奇跡?」
難しいねぇ、とヒィロの問いに美咲は唸る。定義次第、なんて型通りの答えを返したら、ちょっと可哀想だし。そういう理論の話ではない事くらいは判っているつもりだ。
「ボクはね、信じてなかった」
膝をぎゅう、と抱えてヒィロは唸る。
「だって、奇跡があるなら、スラムで死んでく人たちにはなんで起きないんだろうって――奇跡が一番必要なのは、ああいう場所の人なのに!って」
美咲は黙って聞いている。其れもまた真理だと思う。ヒィロが経済的弱者を救いたいと思うのを、否定したいとは思わない。
「でもね、今は少しだけ信じられるかもしれない。奇跡ってもしかしたら、諦めない心の先にある結果なのかもって。巧く言えないけど……頑張って生き続けてればいつか良い事もあって、そういうのを奇跡っていうんじゃないかなって」
「……」
「え、えーっとね! つまり、美咲さんと出会って、綺麗な蓮を眺めて……こうしてられるのも、ボクにとっては奇跡みたいに嬉しい事なんだよって!」
そう話を〆たヒィロに、美咲は微笑する。
「……重い話かと思ったら、もう。喜んで貰えるのは嬉しいけど……心配させたなこのー!」
「きゃー! 美咲さーん!」
ヒィロを片手で引き寄せ、もう片手で頭をわしゃわしゃする美咲。
でも、と手を止める。
「奇跡ってさ、本来起こりえない事なんだよね。……厳しい生活状況で倒れていく人が救われるのは、奇跡であっちゃいけないと思うんだ」
もっと、普通にあって良い事だと思うんだよ。
成程、今の時期ならだれか挑戦する人が現れそうな処ね。
ヴィエラは湖のほとり、蓮の葉がランダムに並ぶのを見ていた。葉は余り大きくなく、試練と呼ぶのにちょうどよい大きさかも知れない。
「……蓮の花、か」
ふと呟くような声が聞こえて、ヴィエラは周囲を見渡す。女が一人立っているのを見て、声をかけた。
「綺麗な花ですよね。ご存じなんですか?」
「蓮の花の事ですか? ええ。私が元いた世界では、極楽浄土――天国に咲き乱れる花と言われております。私のようなものは見られぬだろうと思っておりましたが、生きているうちに見られるとは」
「……ええ、そうですね。私から見ても貴方はしっかり足があって、幽霊には見えないもの」
ヴィエラは其の言葉から、彼女が自分と同じく剣に生きる人間だと察する。
女――無量もまた、ヴィエラの立ち振る舞いから“出来る”人間だと察してはいた。けれど今日は悪魔も刃を収める日だという。ならば、こうして共に蓮を眺めるのもまた一興だろう。
「……お名前をお聞きしても?」
「ヴィエラ・オルスタンツ。ヴィエラで結構よ? 叶うなら、貴方の名前も教えて頂けると幸いだわ」
「……無量、と申します」
「折角なら私も挑戦してみたい!」
アレクシアはぐっと拳を握った。蓮の葉渡り。求婚の難題。聖夜にだけ起こる奇跡――水に落ちる結末だとしてもそんな甘い文句が並んでいたら、冒険者として乗るしかない!
「という訳で、シラスくんにお願いがあるんだけど」
「? なんだよ」
「私が蓮の葉を渡り切れたら、来年も色んな冒険に付き合って!」
ずずい、と身を乗り出して言うアレクシアに、シラスは戸惑いの表情を見せる。そんな願い事をしなくたって、言われなくたって、自分は……
でも、意気揚々と挑もうとする彼女はとても彼女らしい魅力に溢れていて。つい頷いてしまう。見ててね! と言われるままに対岸に立ったシラスは、彼女が落ちやしないか、風邪を引きやしないかと内心心配でいっぱいだった。
アレクシアは挑戦心に溢れていた。最初の一歩は慎重に、けれどあとは大胆に! さっきの御願いは、アレクシアにとっては大切なお願い。きっとシラスなら、わざわざお投げいしなくても頷いてくれるだろう。でも、こういうのは自分で掴み取ってこそだと思うのだ。
とっても大事なお願いだから、絶対絶対に叶えてみせる!
アレクシアは一歩を踏み出す。やがて対岸に辿り着けば、ハイタッチでシラスが出迎えてくれるから!
「こんにちは。隣いいかな?」
筆を走らせていたグレモリーの隣、サクラが声をかけた。
「君は……」
「サクラ、だよ。グレモリーさん」
「サクラ。花の名前だね。どうぞ」
「あ、ココア持ってきたんだ。飲む?」
「うん」
湖のほとり、飲むと言いながらも筆で色を混ぜる彼にサクラは笑い、飲み物を渡す。
「手が冷たいと、絵を描くのも滞ったりしない?」
「あんまり感じない。絵を描いている時は、暑いも寒いもあまり」
「えー、其れじゃ風邪引いちゃうよ。あ、私の事は気にしないで描いてくれていいからね」
「うん。ありがとう、温まった」
グレモリーは一息にココアを飲み干してカップをサクラに返すと、再びパレットと筆を執る。
「絵の事はわからないけど、上手だね」
「よく言われる。けど、上手なだけとも」
「だけ?」
「そう。心を動かされないって。だから僕は情報屋になった。リアリティが足りないと思って」
「へえ……でも、私は上手だと思うけどなあ」
まだ未完成ではあるが、全体的に青を混ぜた色で構成された絵を見つつ、サクラは唸るのだった。
「こんばんは、グレモリーさん」
「やあ、君は閏」
「はい。お邪魔でなければ、少しお話しても……」
もこもこの冬服に身を包み、いつものように目元を隠した彼に、どうぞ、とグレモリーは隣を示す。
「……とても神秘的な場所、ですね」
「うん」
「たとえ作り話でも、そんな話が生まれるだけの魅力が、ここには、あります」
「作り話かどうかは判らないけど、見ていたら何人かは蓮を渡り切っていたよ。落ちたのもいたけど」
「はは……あ、あの」
「なんだろう」
緊張したような声色に何かを察したのか、グレモリーは一旦筆を止め、閏の方を向く。
「……ボクも、あの蓮の葉を跳んだら……グレモリーさんに描いて貰えますか?」
「僕に?」
「はい。あ、いえ、ボクそのものでなくても、モチーフの一つとして……」
グレモリーさんの絵の中に、入ってみたいんです。
そういいながら、飛んできますね、と立ち上がる閏。答えを聞くのが何となく怖くて、そそくさと立ち上がって湖の方に行ってしまった。
「……」
グレモリーは熟考する素振りの後、一枚の紙を新しく荷物から取り出した。描くのはおっかなびっくり蓮の葉を渡る、白い大きな鳥の姿。
「シャラ、余り見てると穴が開くよ」
「えっ!? グレモリー様の絵に穴が!?」
「嘘だけど」
「う、嘘でしたかぁ……」
ほっ、と息をつくシャラの頭を、グレモリーはぽんぽんと叩くように撫でる。
「なんで見てたの」
「そ、そんなに見てましたか」
「うん。すごく見てた」
「……えと。グレモリー様はいつも素敵な絵を描かれるなぁって!」
わたしもいつか、グレモリー様みたいな絵を描けたらって思うんですっ!
元気いっぱいに応えるシャラ。
「……わたしは……泣き虫を今年でバイバイするのです。泣いててもパパとママに会えるわけではないから……だから、今は自分に出来る事を頑張ろうって思うんです! それが、絵を描く事なんです!」
「……。そう。僕は、こういうとき優しくなんて言えばいいのか判らないけど」
珍しく言葉を探すグレモリー。きらり光る金色の目が左右を見て。
「君が前向きになれたのは、君が強いからだ。僕のお陰じゃない」
「グレモリー様……」
「でも、僕の絵が其の助けになったのなら、画家として其れ以上に嬉しい事はない」
「……! はいっ!」
「だから、僕は今日も君に絵を教える。この絵は全体的に青を混ぜた色で作ってある。聖夜の冷たさを――」
「カーッカッカッ! 蓮の咲く湖たァ、これまた美しい風景じゃねェーの!」
スケルトンだ!! 出会え! ――間違えた。彼はボーン・リッチモンド。れっきとしたイレギュラーズの一人である。
「こういう美しい風景を自由気ままに見放題! 其れこそ旅人の良いところよなぁ……お?」
蓮の花咲き乱れ、葉が立ち並ぶ湖のほとりをあるいていると、座り込んで何やら描き物をしている青年がいる。グレモリーである。
「おや、こんなところで絵の練習かい? 絵描きの兄ちゃん」
「ん、君は」
「おう、俺はボーンってもんだ。兄ちゃん、「美しい」絵を描くじゃねーの!」
「美しい」
そうかな、と、彼は青で統一された風景画を見る。
「初対面の人にそう言われたのは初めてかも知れない」
「カッカッカ! そいつァ見る奴の目が悪ィのさ! よっしゃ、いいもの見せて貰ったお礼に俺も良いものを聞かせてやるよ」
骨の指にぴったりな指輪が輝いたかと思うと、青白いヴァイオリンがボーンの手元に現れる。肩に乗せ、そっと構え、弦を弾くと――流れ出すのは抒情的な音色。まさに色で表すなら青のような、何処か寂しくも美しい旋律。ヴァイオリンの嘶きが静寂より静かな旋律を奏で、暫し――
「……ってなもんよ! どうだい」
「……これはすごい。君、音楽が出来るんだね」
「まァな! 俺は音楽も絵も何もかも、“美しいモノ”が好きなんだ」
「僕も綺麗なものは好きだ。一気にインスピレーションが沸いたので、僕は下書きを作る」
「おう、そうしな! 人生五十年っていうからなァ!」
●
「確かにあの昔話、ロマンチックではあるけど……」
難題に気を取られて、恋愛感情を抱く暇なさそうなんだよね。大丈夫なのかな? アクセルは考える。
でもまあ、自分たちを熱心に描いている情報屋――もとい画家の良い題材になれるよう、蓮を軽くわたってみるとしよう。
一歩、二歩、三歩。くるりと回って四歩。思ったより歩きにくい、蓮の葉がふわふわしてる。ぴょいぴょいと蓮の葉を渡っていくアクセルの姿は、空を舞うように軽やかだった。
「奇跡の逸話……なんとも素敵だね。見事渡り切れば結婚できる」
なら、見事奇跡を起こす事が出来たなら、僕も運命の相手がみつかるんじゃないかな? なーんて。運命の人は、焦らずゆっくり見付けたいタイプなんだ、僕は。
「でもどうせならやってみたい蓮の葉渡り! グレモリー君も描いているというじゃないか! 協力しない手はない! 来年も美しく! 健やかに過ごしていけるように願いを込めて! さぁいくぞォアーーーーーー!!」
一歩目に狙っていた蓮の葉が波で避けたので、クリスティアンは見事に落水した。
波のせいだから。別に嫌だったとかそういう訳じゃないから。
「いっちにー、さんしー!」
元気よく準備運動するのはパティリア。蓮の葉を渡る気満々である。
「機動力と反応(メタ的表現)、何よりディープシーとしての矜持が拙者を燃え上がらせるでござる!」
ていうか水の上を走るとか、めっちゃニンジャ的に浪漫があるでござる。あるでござろう!
「誓いとしては勿論、一日も早く先輩方に追いつき、共に肩を並べてみせる!」――うむ、これでござるな!」
この蓮の葉渡りは其の為の一歩、己がどれだけの力量を持っているかの試練ともいえようでござる!
身体も程よくほぐしたところで、意気揚々とパティリアは蓮の葉を渡り始めるのであった。彼女は見事走り切ったのだが――どこぞの画家曰く「早すぎて見えなかった」だそう。
「まぁ……見事な蓮畑。神秘的ですね」
クラリーチェと雪之丞は2人、蓮の花咲く湖のほとりで眺めている。
「渡り切れたら聖夜の奇跡、でしたか。興味深い御伽噺でしたね。……少し、挑戦してみませんか?」
「私たちも、ですか?」
ゆらゆらり、水面に僅かに出来た波に蓮の葉が揺れている。つまさきが触れただけで沈んでしまいそうだけど、本当にあの上に乗って、湖を渡り切るなんて出来るのだろうか。不安そうなクラリーチェに、雪之丞は笑いかける。拙が先に乗って沈まなければ、大丈夫でしょう。
2人は手を繋いで、誓いを立てる。其れは心の中でひそやかに。雪之丞は、クラリーチェと来る年も友人でいられるようにと。クラリーチェは修道女として人々に寄り添い、そして、前を歩く友に何かあれば、身命を賭して守る事を誓う。
明日も明後日も、2人、笑いあえたらいい。そんな願いを灯して――
「……ほら。大丈夫みたいですよ」
聖夜に起きた奇跡……には、“イカサマ”がある筈だ。そう、サンディは考えていた。例えばいま自分が纏っている飛行の力だとか、そういう何かが。
しかし其れは同行しているエマには秘密の話。
「そして男は見事蓮の葉を渡り切りました……って訳だ」
「なるほどなるほど、そんな昔話が……しかしまぁ、結婚する気がないならもうちょっと断り方というものがあったでしょうにね」
ひひひ、とエマは笑う。全くだ、とサンディも笑う。空気は冷たく、こんな天気で水に落ちれば無事では済まないだろう。
「よっしゃ、じゃあ俺が先にいくから、乗れたらエマもついてこいな!」
「はいな。沈んだら助けてあげないでもないので、心配しないで沈んでください」
ごめんな、生憎沈まないんだ。心の中で舌を出し、ぴょん、とサンディは蓮の葉に飛び乗った。ふわり、と空を泳ぐような感覚。蓮の葉をふわん、とたわませながら、サンディは見事に蓮の葉の上に載って見せる。
「ほら、乗れたぜ! エマも来いよ!」
「おおー……これは負けていられませんね」
エマは頷いて相手に手を振ると、少し下がって走り出す。ほとりから―― 一気に跳躍! 曲芸師めいた素早さと身のこなしで、蓮の葉をどんどんと渡っていく。
「巧く行ったら拍手でお出迎えしてくださいねッ!」
「うわっ、早――!」
伝説の男も、或いは“蓮の葉が沈む前に次の葉を目指せばいいじゃない”走法で湖を渡ったのかもしれない。
しかしエマはそうはいかず、やがて水に落ちそうになったところをサンディに助けられ――彼のイカサマに気付いてしまうのだった。
零は緊張していた。
実際に渡り切ったという伝説があるんだ。そして今日はシャイネンナハト。大丈夫、大丈夫、うん。
アニーは緊張していた。
これ本当に渡れるのかなあ……ボチャン! って落ちたりしないのかな? 大丈夫かな!?
「「はぁ……」」
溜息が重なる。2人顔を見合わせて、少し笑う。なんだ、不安なのは自分だけじゃないんだ。
先に蓮の葉に身を乗り出したのは零だった。一歩、二歩、三歩……ゆっくりと蓮の葉を渡っていく様に、アニーははらはらそわそわ。
「……結構いけるな……想像以上に渡り辛いけど、この調子なら……」
「ま、まって、まって、零くんー!」
呼ばれて零が振り返る。一緒に蓮を渡っていたアニーだったが、ある一点で立ち止まってしまっていた。
「あの、葉の距離がちょっと遠くて……うぅ……思いっきり飛ぶから、手を伸ばすから、その、掴んで、受けとめて……!」
ぱちくり、瞳を瞬かせる零。そして状況を理解すると、判った、と頷いた。
「絶対掴むし、受けとめるし、離さないから! 来い……!」
「うん、飛ぶ……!」
この先も貴方と、ずーっともっと仲良くしていたい。
そんな同じ願いを抱いた2人の影が重なって――
ボチャーン!
そんな水音も、何処か楽し気。
「素敵な昔話、気になるっす!」
「蓮の葉渡り、ですか……きちんと渡れると良いのですが……」
「だいじょーぶだいじょーぶ! 渡り切れるっすよ!」
レッドとアルヴァは蓮の葉を前にして、あれこれとルートを相談する。
「蓮の葉は大きいものだと寝そべる事も出来るそうですね。……この蓮が其の種類だと信じましょう」
「っす! あとはー、誓いを立てると良いって聞いたっす!」
「誓い、ですか? ……あの」
「っす?」
「こんなことを言うのも変かもしれませんが……もし渡り切ったら、友達になってください」
アルヴァが真っ直ぐレッドを見て言った。……レッドはにっこりして、再度だいじょーぶ、と応える。
「ボクと此処に来てくれてるから、もうアルヴァさんはボクの友達っす!」
さあ、一緒に蓮を渡ろう。
もし沈みそうになったら、君の手を引いて助けよう。
だって君は、大事な友達なんだから! メリークリスマス!
「……なあ、レーゲン」
湖の水をすくって温度を確かめながら、ウェールが静かに言う。
「俺の誓いは息子のところへ帰る事と、一人でも多くの他人を助ける事だ。……息子の事を思うなら、安全な依頼だけやった方が無事に帰れるのに、こんな俺でも誰かを守れると知ってから、助けたい気持ちが止まらないんだ」
「きゅ。それは、ウェールさんが優しいからっきゅ」
「優柔不断なだけさ。誰かが嘆く姿を見ると、昔の俺や息子の涙を思い出してつい無茶をする。……二兎を追う者は一兎も得ずっていうだろ」
今は両立できても、いつかこの蓮の葉渡りのように、途中で冷たい水底に沈んでいくんだと思うんだ。
そう語るウェールに、レーゲンは少しだけ黙す。
「レーさんの誓いは、パンドラを集めて未来を変える事と、どこかにいるグリュックの魂に会いに行く事っきゅ。絶対に会って、ありがとうとさようならを言うっきゅ! 二兎を追うのはレーさんも一緒っきゅ、でもレーさんはこの願いが叶うって信じてるっきゅ! そして保護者さんも、レーさんが沈ませないっきゅ! 二兎を追うのは、保護者さん一人じゃ難しいかもしれないけど……レーさんが手伝うっきゅ! グリュックも合わせれば、三人で追えるっきゅ!」
だから、保護者さんは渡れるっきゅ!
真摯で素直な言葉に、ウェールは暫し言葉を失う。……そして、そうだな、と水を払い立ち上がった。
「まさか被保護者にそこまで言われるとは。お前が俺は渡れると信じてるなら、保護者として父として、渡ってみせるさ!」
「其の意気っきゅ!」
リュグナーがそっと蓮を渡る。
そうして安全か確かめたあと、繋いでいる手をそっと引くと、ソフィラは頷いてゆっくりと蓮を渡る。
視力の弱いソフィラは、蓮の花の絶景も、水底の恐ろしさも見る事はない。それらを見るのは此処ではリュグナーだけ。彼女に教えるのも、秘密にするのも、彼次第。
「こうやって蓮の葉を渡っているのに、誓いが立てられてないって、変かしら」
ソフィラが言う。彼女は心がもやもやして、巧く誓いをまとめられないまま、湖の中ほどまで来ていた。
一方のリュグナーは、ソフィラが渡り切れるように願いを思っている。彼女が沈まずにいられるのは、そのお陰なのかもしれない。
「聖夜の奇跡ならば、誓いなき者が蓮を渡れても特に違和はあるまいよ」
「そうかしら。リュグナーさんは、どんな事を思って渡っているの?」
「我は、……」
「……ごめんなさい。言いたくない願いもあるかもね」
言いたくないのだろうか。リュグナーは自問する。言えないのだろうか。判らない。誰かのために願うなど、自分らしくないから言いたくないのかもしれない。
「あ、」
ソフィラの細い足首がぐらつく。思わずリュグナーは手を引き、彼女を抱き寄せた。
「ご、ごめんなさい。つい」
「心配ない。このままいく故、安心して掴まると良い」
ひょい、と彼女を抱き上げて、彼は蓮の葉を渡り始める。ゆっくり揺れる感覚に身を任せながら――この人と一緒にいる時のこの気持ちは何なのかと、ソフィラは自問していた。
「ねえねえ、カイトさんのちかいってなに?」
「俺の誓いは勿論、リリーを幸せにすることだぜ!」
そしていつか、君をお嫁さんにする事だ。とは口に出さず、リリーの問いにカイトは応える。こういうのはきちんと独り立ちしてからだな。
「リリーも一緒に行こう。きっと景色が綺麗だからな」
ひょい、とリリーを抱えて、カイトは湖に踏み出す。リリーはえ、と一拍おいて、びっくりした。
「ええ、いけるの? だいじょうぶ? ほんとに?」
「大丈夫、いけるさ! リリーが一緒なんだからな! リリーを沈めるだけは絶対にしないぜ! 其れに、渡れなかったら男が廃るだろ?」
ふわりふわり、蓮の葉を渡っていくカイト。リリーはしっかりくっついて、聖夜の奇跡に祈りを捧げた。
カイトは最終手段として鳥の姿になる覚悟さえ携えて、さて、結果は――
――なんて残酷なお姫様なのでしょう。幻は思う。
自分は高みから見物して、出来ないでしょう? と言わんばかりに蓮の葉を渡れと命令するなんて。
でも、其の残酷さが判らない訳ではないのです。愛という甘い囁きの真意を、行動で確かめたい。本当に愛されているのか判らないから。
だから僕は、「ジェイク様を僕は愛している」と誓います。渡り切れなかったら、愛されるのにふさわしくない僕を僕は殺します。
――俺の誓いはたった一つ。将来幻と結婚して、家庭を作る事だ。
今はまだ其の時ではないかも知れないが、子どもも作って暖かな家庭にしたい。
ローレットの依頼は様々で、危険なものもある。死にそうになったことだって。でも、俺たちは其れを乗り越えて此処まで来たんだ。其れに比べたらこんな蓮の葉を渡るくらい、どうってことねえ。
これからも、2人で力を合わせ手を取り合って、苦難を乗り越えていきたいのさ。
――あの聖夜に告白をしたのは私だから、今回も、私が走る。
対岸にイーリンの姿を見ながら、ウィズィは走り出す。まずは一跳び、蓮の葉に着地。そうしたら次の蓮の葉へ。そうして一つ二つ三つ! 蓮の葉を走って渡っていく。足の裏が冷たいのは、きっと水がしみてきたから、だけど――
“2人で肩を並べて生きる”って、ウィズィと私は誓い合ったから。何処までも行けるって思ったから、こんな蓮くらい、どうってことないわよね?
すまし顔で待っているけれど、少しずつ縮まる距離に胸が高鳴る。嗚呼、手を伸ばすウィズィが見える。私も手を伸ばし返して――
「イーリンッ! ……結婚してくださいッ!」
「けっ――!?」
固まってしまったイーリンを抱き寄せて、大事な誓いを抱えて渡り切ったウィズィは満面の笑顔を見せた。
返事はまた今度で良いから!
「マルクさん、誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ、一緒に来てくれてありがとう」
マルクとアルテミアは2人、湖のほとりに立っていた。
「此処が御伽噺の元となった土地――蓮の花がとても綺麗ね」
「うん、とても綺麗だ……ちょっと不安定そうなのが怖いけど」
「不安定そう……って……まさかマルクさん、渡るつもりなの?」
アルテミアの驚いたような問いかけに、マルクは頷く。
「僕はね、思ったことがあるんだ。……イレギュラーズになって2年と少し。この世界は――命が軽すぎるように思うんだ。ひとたび魔種が事件を起こせば、其の狂気に巻き込まれて沢山の人が命を落とす。
だから、僕は目の前の命を諦めない。そういう冒険者になるって、此処に誓うよ」
「……」
「……誰かに聞いて貰いたかった。いや、誰かの前で言葉にして、形にしたかったんだと思う。ありがとう、アルテミアさん」
「いいえ。……私も、救えなかった命は沢山あったわ。仲間を危険にさらしてしまう事だって。――マルクさん、其れは立派な誓いよ。大したものじゃない、なんて事はないわ。胸を張っていきましょう? 其の誓いはきっとあなたの力になる」
アルテミアの微笑に、勇気づけられたようにマルクは頷く。
真っ直ぐに誰かを守りたいと言える勇気を携えて、彼は湖を渡り切れるのか。
「結局おひぃさんと男は結婚したんかどうなんか、はっきりせんやっちゃね」
ブーケが不満そうにいう。
「せやなぁ。落ちたら凍えるように寒そうやんなぁ、この湖」
惑が蓮の葉に足を乗せたり下ろしたりして、溜息を吐いて座り込む。其れを横目に見て、ブーケは手を差し伸べた。
「ほな、でぃーくん。行こか」
「んぇ?」
「なんですのその顔」
「いや……でぃーくんって誰?」
「まどい、で、マディ。やからでぃーくん、や。いつまでも惑サンなんて他人行儀やんかぁ」
くすくすと笑うブーケに、理屈は判らんでもないけど、と言葉に詰まる惑。ひょい、と戸惑う相手の手を取って、ブーケははよいこ、と湖に誘う。其れはもう、ルサルカのように。そしてルサルカに誘われた惑は、誘われたならとゆるりと指を絡める。
「これなら嫌でも離されへんな?」
「んふふ、頼まれたって離さへん。こうなったらもう一蓮托生ですわ。華麗に渡り切るも、あえなく落水するも一緒。」
もし渡り切ったら、俺のあだ名も考えて?
ええで。俺の誓いはいま果たされたから、それくらい百でも二百でも考えたるわ。
「いつものように散歩するかと思ったら、ミディーくんもそういうのに興味あったのねぇ」
蓮の葉を渡りたい、と言い出したミディ―セラ。葉をつついて強度を確かめている彼を見て、頬に手を当てアーリアは驚いたように言う。
「一つ加えるとするなら、一緒に渡りたいのです。そう、一緒に」
「一緒に?」
「そうすれば一緒にいられますから」
「ん……じゃあ、ずっと一緒にいるって誓いを立てましょうかぁ」
「誓いも同じなら、落ちても安心ですね」
2人の手が重なる。みでぃーくんと一緒なら、水の底でもきっと幸せかも……なんて!
笑うアーリア。まだ彼と“ずっと”一緒にいる術を見付けられてはいないし、家族になりたいなんて怖くて言えないけれど。其れはすべて、今だけは、胸の奥に隠して。
手を取り合って進みだす2人。其れはまるで、未来を暗示するかのよう。危うい蓮の上を歩いて、歩いて……ぼちゃん。
水に落ちたのか、水の中に進んで落ちたのか。判らなかったけれど。手を取り合って見上げる水面は何よりも眩しくて。星明りに照らされながらの口づけは、とても甘かった。
誓いは破れない。湖が拒もうとも、絶対に。
――ボクと恋人になってくれませんか、珠緒さん
そういった蛍の表情は、真っ直ぐなものだった。思い出しながら、珠緒は対岸で彼女を待っている。本当は、この伝説には良い印象はなかった。いや、ないのだ。だから、否定せなばならない。一方的な奇跡なんて。
蛍だって、判っていた。現実はきっと、御伽噺のように巧くはいかない。けれど、それでも! 其れくらいの気持ちと覚悟で、珠緒さんと一緒に歩いていきたい――!
蛍があと少しで対岸に辿り着こうというとき、珠緒が動いた。ふわり浮いて、蓮を渡ることなく蛍の元へ向かっていって、抱き締めた。
「……貴女こそが、“桜咲”という役割を“珠緒”という個人に変えたのです。自我が生まれたばかりの人形に、愛情を受け入れる心を育てたのです」
「珠緒さん……」
貴方が傷だらけになりながら積み上げた現実は、必然なのです。泡沫が如き奇跡であるはずがないのです。
「……まだ渡り切ってないけど、もう一度いうね、珠緒さん」
――ボクの恋人に、なってください。
――ええ。よろこんで。
「蓮の上を渡るなんて、ジャパニーズでいうニンジャみたいで面白いね」
「そうだね。普通に考えたら出来ない事も、シャイネンナハトの夜になら出来るのかもね! 私たちもやってみようっ!」
ルチアーノとノースポールは互いに誓う。
ルチアーノは彼女――ポーを守っていく事。彼女の幸せをいつも願っていると。
ノースポールはルチアーノ――ルークを幸せにすること。彼が笑顔でいてくれるなら、何だって差し出すと。けれど、ただ一つだけ――自分がいなくてルークがいる、そんな悲しい未来だけは作らない、と。
「大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。僕が支えるからね!」
手を取り合い、2人は蓮の葉を渡っていく。その足取りに恐怖はない。だって、世界で一番大事な人が隣にいるんだ。水に落ちたって、2人なら全然怖くない!
「そういえば!」
まだ言ってなかった! とノースポールがルチアーノの背中に抱き着く。
ああ、とルチアーノはくるりと振り返って、抱き締め返した。
「「輝かんばかりの、この夜に!」」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
何というか余りにエモが多すぎて一年分のエモを摂取したのでは? と思っています。
マジエモい。各所にお祝い申し上げます。本当にエモをありがとう。
公式NPCも頑張りました。表現にすごく苦心し緊張しましたが、いい経験になりました、ありがとうございます!
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
輝かんばかりのこの夜に(メリークリスマス)!
こんにちは、奇古譚です。一年が過ぎるのは早いですね。本当に早い。
今回は幻想でのクリスマスを持ってきました。お気に召すと良いのですが。
●目的
蓮で遊ぼう
●立地
メフ・メフィート郊外の森にある湖です。
嘗て此処を収めていた領主の城もあるという話ですが、既に遺跡すら残っていません。
事実を知るのは蓮の花が咲き乱れる広い湖のみです。
●出来ること
1.湖付近で蓮の花を観光
2.蓮の葉渡り
基本的に湖周辺で行動する形になります。
華を愛でるもよし、誓いを立てて蓮の葉を渡るもよし。
渡れるかどうかは貴方の誓い次第。
●NPC
グレモリーが意気揚々と湖畔で絵を書いています。
でも、邪魔されても特に怒ったりはしません。
また、今回はお願いすれば貴族や主要NPCも来てくれるかも知れません。
●注意事項
迷子・描写漏れ防止のため、冒頭に希望する場面(数字)と同行者様がいればその方のお名前(ID)を添えて下さい。
シーンは昼・夜のどちらかに絞って頂いた方が描写量は多くなります。
●
イベントシナリオではアドリブ控えめとなります。
皆さまが気持ちよく過ごせるよう、マナーを守ってゆっくり過ごしましょう。
では、いってらっしゃい。
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