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シナリオ詳細

<冥刻のエクリプス>Deus lo Vult!
<冥刻のエクリプス>Deus lo Vult!

完了

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 微かな風がゼラニウムの香を運んでくる。六月の終わり。
 歴史ある荘厳な建造物が建ち並ぶ一角は、白亜の聖都でも別格の偉容を誇っていた。
 正面に王宮を見据える大通りに、余人を寄せ付けぬ高い塀を持つ大聖堂がある。
 ルナパールの板に記された名はサン・サヴァラン。
 かの悪名高きアストリア枢機卿が、己が居城のように扱っているとされる聖域だ。

 最上部。広大なバルコニーにうごめく月影が現れた。
 風切り音にやや遅れ、ソファのようなものを綱でぶら下げた怪物が舞い降りる。
 数名の司祭が一斉に頭をたれた。

「して、ブラザー。なんじゃこの有り様は」
 飛び降りたアストリアは、足早に歩きながら問う。
「なんじゃと聞いておる!」
「はい!」
 司祭は何者かに潜入され、いくつかのものを奪われたと伝える。
 アストリアは報告した司祭を無言で階下へと蹴落とし、己は吹き抜けから二階へと飛び降りた。

 けたたましい音を聞きつけ、数名の助祭と共にモーリー・ブラパット司教――大聖堂本来の主――が姿を現す。
「モーリー。銃士共はどうした」
 アストリアはそう吐き捨てると、呻きながら自身に治癒の術を施す司祭の背へ無遠慮に腰掛ける。くぐもった呻きが聞こえた。
「こちらに……」
 遠慮がちに述べたモーリーの視線の先では、数名の銃士がうずくまっている。
「……モーリー」
 立ち上がったアストリアは杖先を司教の豊かな胸に押し当てた。
「虚飾は罪じゃ」
 歪んだ胸元を杖で弄ぶと、そのまま一気に振り上げる。
 司教装束が縦一文字に裂け、詰め込まれた多量の綿が辺りに飛び散った。
「汝は潜入とやらに際し、何をしていた!」
 モーリーはまるで猫に綿を引きずり出されたぬいぐるみのように、転げてうずくまる。
「ククッ、ちょーウケるのう!
 まあ良い。ここからは決戦じゃ。勝てばよかろう」
 司祭達が息を呑む中、アストリアは羞恥に震えるモーリーの頭を抱き寄せた。
「のうモーリー。汝をここまで引き立ててやったのは、なにも一介の修道女上がりのよしみと言うだけではない」
 小さな小さな声で囁く。
「小娘だった汝に洗礼をくれてやった際、ついでに家名を見繕ってやったのは笑いぐさとしても良い」
「……はい」
「じゃがな。妾が法王となれば、大司教というものが必要じゃ。枢機卿でも良かろう。そこには秀才が適しておる」
 モーリーが深く頭を下げる。
「元より我が身は猊下へ捧げております故……」
「よろしい。ならば手に入れよ。汝が欲する物を」

 頭を押さえてへたり込む司教を余所に、アストリアは銃士の元へ近寄った。
「なんじゃこの為体は」
 忙しない様子で歩き、大理石の床へ杖を打ち付けながら問う。
「それが……」
 銃士はコレット・ロンバルド(p3p001192)を中心としたイレギュラーズによって、部隊が壊滅させられたと告げた。
 大きなため息に、銃士が身を縮める。
「すぐに探し出せ!!」
「ハッ!」
 アストリアの令を受け、数名の銃士が飛び出して行った。

「後は何人生きておる」
「ハッ……かろうじて戦える者は居りますが。しかし全員負傷しており……」
「残りは」
「治療中にございます」
「妾は『生存者』の数を聞いたのじゃ」
「し、しかし猊下……」
 とてもではないが、これ以上戦える状態ではないと言いたいのだろう。

「のう汝。銃という物を知っておるか?」
 彼女は杖を立て掛け、胸元からフリントロックピストルを取り出すと、銃士にそっと握らせる。
「良いか。こいつは子供でも老人でも、怪我人でも簡単に人を殺すことが出来る」
 やけに優しい声音だった。
「狙い、ここを引くだけじゃ」
 アストリアは銃士の両手をそっと包み、腕を支える。
 それから手近な天使像へと狙いを付けさせ――

「それを『銃士』が扱えんと申すのか!」

 突如耳元で怒鳴りつけた。

「撃て――ッ!」

 間髪入れぬ叫びと共に乾いた音が響いた。銃弾を浴びた天使像の羽が砕ける。
「あれを傷物にした罪は、汝の戦功を以て妾が免罪してやる」
「寛大な御処分に感謝致します!!!」
「よろしい」

 アストリアはそのまま大礼拝堂に足を踏み入れる。
 ぽつり、ぽつりと焼け落ちるレーテー石に刻まれた名が、突如真っ赤に染まり、とてつもない速度で流れてゆく。
「ククッ、ハ、ハハハハハッ!!!」
 天を仰ぎ、嗤う。
「見よ! 我等が神の軍勢。その御名が駆ける様を! おい、ブラザー・ロガリ!」

 ぞろぞろと集まってきた部下達の前で、アストリアはロガリの肩に腰掛けると声を張り上げた。
「妾はこれより、聖守護の大儀『とばり』を執り行う。
 儀式完成後、モーリーは聖獣と共に『繭』と『とばり』を死守せよ。
 銃士共はファルコネット砲とガトリングを出し、侵入者を聖獣と共に十字砲火で迎え撃て」
 辺りが重苦しい沈黙に包まれた。本当にやるのかといった空気だ。
「じゃがな。安心せよ。妾も前線に立つ」
 だが次のどよめきは、意外にも僅かな安堵を含んでいた。
「我等はアブレウの軍勢と合流し、その後この国を真の正義たらしめる神の使徒を迎え、王宮のフェネストを討つ!」
 叫ぶように、アストリアは法王を呼び捨てた。
「厳しい戦いとなる。殉教者は聖人に列せられよう」
 見回す。誰の目にも昏い炎が灯っている。
「神の御許で妾の吉報を待つ覚悟は!」

 応!

「よろしい。者共、殉教せよ!」

 ――神が正義を望まれるッ!!!


 月下にひしめく無数の足音は、未だ雑然と。しかし颯爽とした気配を帯びていた。

 聖騎士団、天義名門エストレージャの騎士、そしてローレットのイレギュラーズ。
 この国を守るべくして集まった部隊が、大聖堂を伺う大通りに展開していた。
 作戦の総指揮は便宜上、聖騎士団長レオパル配下の聖騎士ギデオン・エルセリオという男が取り纏める運びとなっている。

 作戦は悪名アストリア枢機卿のクーデターを鎮圧し、伝説のアーティファクトを有するサン・サヴァラン大聖堂を制圧すること。アストリアとアブレウの計画は明るみとなったのである。最後は『勝てば官軍』という単純な理屈しか残らない。
 そしてなによりも。大軍勢と共にとうとう姿を現したベアトリーチェ、その旗下にある強力な魔種アストリアを討伐することである。
 戦いの主力は勿論イレギュラーズだ。

 アストリアの兵力は本来非常に大きく、大聖堂に突入する前には大規模な市街戦になると想定されていたが――
 これはここしばらくの間に逐次投入された兵力をイレギュラーズが各個撃破することで、ほとんど壊滅に近い状態に追い込むことが出来ている。敵は籠城の構えを見せた状態だ。
 戦力の逐次投入とは愚かな限りだが、おそらくアストリアは時間が稼げれば良かったのだろう。
 結果としてだが、この作戦への投入人数が比較的少数で済んだのは僥倖かもしれない。その分だけ責任は重いとも言えるが、それは他の戦域も同様であろう。
 いずれにせよ、誰も背に腹を変える余地はないのだ。

 アストリアの戦略目標が完全に潰えた訳ではないが、このままアブレウやベアトリーチェの兵力と合流されれば、イレギュラーズにとって元の木阿弥である。
 だがこうなれば彼女の短気な性格からして、籠城をよしとせず前線に出てくる可能性が極めて高いだろうが。
 とはいえ、それならそれで好都合とも言える。早期撃破を目指せば良いのだ。
 よく言えば思い切りの良い果敢な性格も、こうなってしまえば仇なすばかりであろう。

「よろしいですか?」
「何でしょう?」
 ギデオンへ向かい、初めに口を開いたのは『幻想大司教』イレーヌ・アルエ(p3n000081)だった。
「私の役割について、確認なのですが」
 イレーヌはこの作戦で『エンピレオの薔薇』という伝説級のアーティファクトを制御する役目を担うことになった。
 この『エンピレオの薔薇』というのは、この国で『レーテー石』と呼ばれる死者の記録媒体と思われていたが、それ以上の機能を有していた。
 どうやら遙か昔にベアトリーチェと交戦した際に作られた物らしい。
 問題はこれが、敵が巣くう大聖堂の礼拝堂にあるということだ。まずはこれを制圧せねばならない。

 使用法となる『赤き血潮の書』及び、起動の鍵となる『白き薔薇の書』は、先だって大聖堂へ潜入したイレギュラーズが奪取したものだ。
 イレギュラーズとイレーヌはこのうち『赤き血潮の書』をどうにか解読して、起動と維持の手筈を知ることが出来ている。
 後はイレーヌが『白き薔薇の書』を使う事になるのだが。
「おそらくですが、私が維持の他に何かを行うのは得策ではないと考えます」
 この『エンピレオの薔薇』は、大聖堂を中心に首都全域はおろかその周辺にわたって、アンデッドや月光人形等の神敵を察知し、味方と共有出来る機能を有している。
 さながらレーダーのようなものだ。これだけでも十分に戦術的な意味がある。
 しかし僅かばかり――と言うにはずいぶん大仰でもあるが、『浄潔』というアンデッドや月光人形に対する弱体、及び低位のアンデッドを聖なる塩に還す攻撃能力も持つらしい。
「こちらは、イレギュラーズの皆さんにお願いしたいのです」
「なるほど」
 ギデオンが頷く。
 作戦次第ではあるが、名乗りがあれば挑戦しても良いだろう。

「それでは私からもよろしいでしょうか?」
 次に名乗りを上げたのは、カマル・フェンガリーである。
 天義名門エストレージャ家お抱えの騎士団長であり、以前アストリアと交戦した際に十名もの忠実な部下を失っている。
 腹に一物を抱えた人物であることは、ローレットのイレギュラーズのみが感じ取れていることだが。無論のこと彼に向かうイレギュラーズの視線は刺すように鋭く、また冷たい。

「皆様が私に不信を抱いていることは、承知しております」
 そんなカマルの言葉は、しかしずいぶん思い切った物だった。
「私が何らかの密命を帯びている可能性、そしてそれが皆様のご友人を傷つける可能性を考慮されての事でしょう」
 カマルは素直に頭を下げる。
「この国難に際し、我が身の不徳が招いた事を深くお詫び申し上げます」
 部下達がざわめく。
 イレギュラーズの読みでは、カマルは何らかの思惑でシュテルン(p3p006791)の身柄確保を狙っている。未だ尻尾こそ掴めていないが、その読みは間違いなく当たっているだろう。
 だがベアトリーチェが出現した聖都にて、魔種と戦う最中にそれを行うとは考えられない。ならば今回は信用を得る段階とでも思っているのであろうか。
 カマルはゆっくりと顔を上げた。
「皆様の信用を勝ち得る為、この度はそれを結果で示しましょう」
 カマル今回は、アストリアを攻略する攻撃隊の切り込み役を買って出た。
 騎士達は忙しそうに、防御に重点を置いた装備を調達させている。
 一番槍の名誉こそあるが危険な役割だ。何らかの工作をする余裕などなかろう。
 それにカマルはともかくとしても、魔種を忌み嫌うエストレージャ家の騎士は勇猛果敢で非常に頼れる存在なのである。

 最後に聖騎士ギデオン以下、神官戦士と従軍司祭達である。
 彼等は高い防御能力と耐性や回復能力を持ち、敵陣のただ中で持久戦を可能とする部隊だ。
 アストリアは大聖堂で『フィルス・クレイドル』及び『ナイトフォール』という邪悪な大呪術を発動させており、これを守る部隊を撃破し、大呪術を破壊する役割を担う。

 イレギュラーズは各々『カマルの騎士団と共に突入し、彼等に背中を預けてアストリアを撃破する』『ギデオンと共に大呪術を破壊する』『イレーヌと共に大礼拝堂に突入制圧し、エンピレオの薔薇を起動、制御、実行する』ことになる。

 思うところはあろうが、こうなれば致し方もない。
 ギデオンが前に出て、剣を天高く掲げた。
「我等は己が正義を全うし、必ずここへ戻る! 各々方! 覚悟と誓いはよろしいか!」

 応!

 ――神が正義を望まれるッ!!!

GMコメント

 pipiです。全体シナリオですね。

 なんということでしょう。
 本シナリオは元々『難易度VeryHardの100人』を想定していました。
 その。準備したベリハ用のシナリオアイコンが、あってな!
 この状況は、皆さんの頑張りの成果です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●同時参加につきまして
 決戦及びRAIDシナリオは他決戦・RAIDシナリオと同時に参加出来ません。(通常全体とは同時参加出来ます)
 どれか一つの参加となりますのでご注意下さい。

●プレイング書式
【グループor同行者ID】
【A~C】
パンドラ使用有・無
本文

 上記の形式でお書きください。

例:
アルテナ・フォルテ(p3n000007)
【A】

杖でぶちます。

●目標
 作戦は以下の三つを同時に進行します。
 早く攻略出来た場合には、プレイングになくても、ある程度勝手に(安全な範囲で)仲間を援護するものとします。
 プレイングでは持ち場に集中するのをオススメします。

 いずれの攻略ポイントも、決戦全体へ強い影響があります。
 敵の多くは(主にAPが)かなり弱っています。

『A:突撃隊』
 作戦の花形です。
 大聖堂に突入し、部下の天義聖銃士隊や魔物と交戦。
 確実にアストリアを討ち取って下さい。
 アストリアは非常に強力な魔種であり、最も危険が大きい戦域となります。

『B:工作隊』
 作戦の要です。
 魔種となったモーリーと部下を撃破し、大聖堂に張り巡らされた聖守護の大儀を解除して下さい。
 儀式に使われたコア『フィルス・クレイドル』『ナイトフォール』を破壊すればOKです。
 その後、他の部隊の援護や大聖堂の制圧を行います。

『C:奪取隊』
 全体の作戦に強い影響を与えます。
 大礼拝堂へ突入し、『エンピレオの薔薇』を奪取して下さい。
 ここでは『イレーヌを守りながらの交戦と大礼拝堂の制圧』『エンピレオの薔薇を起動して利用する』という二つの役目があります。

 起動には多少の時間がかかります。
 制圧と起動さえ出来れば『エンピレオの薔薇』は超広域のレーダーとして機能しますが、攻撃能力も有しています。
 後述します。

●敵 A:突撃隊
『魔種アストリア』
 非常に強力な魔種。属性は『強欲』です。
 現状の何割かはコイツのせいです。引導を渡してやりましょう。

 極悪な性格で、味方の巻き込みとか気にしません。
 APがかなり弱っていますが、ボス魔種ではありますので相応に強いです。

・ラヴィッシュ(A):物近単、出血、必殺
・ガンマ・レイ(A):神超遠貫、万能、致命、弱点、暗闇
・スターフレア(A):神遠範、火炎、炎獄
・ウルサ・メイヤーα(A):自付、消費AP特大、ステータス大幅UP、EXF判定に七回まで成功(必殺は効く)
・ロバーソウル(P):物理通常攻撃が連、HP吸収を持つ
・グリードヘイロー(P):ウルサ・メイヤーα中、常時狼状の怪物を一体まで顕現させ、戦闘に参加させる

『デスナイト』×10体
 アストリアの新しい玩具その1。騎士のアンデッドです。
 意思はありません。
 そこそこ強いです。
 なぜかサーコートにエストレージャの紋章があります。
 一体誰の死体なのだ!

『月光人形【天枢騎士】』×10体
 うアストリアの新しい玩具その2。『黄泉還った』騎士達です。
 剣と盾を持ち、深紅の鎧を纏っています。
 彼等は意思を持ちながらも、不本意に操られています。
 そこそこ強いです。
 己が意思で顔を焼いており、また一言もしゃべろうとしません。一体誰だったのだ!

『ゲニウス』×10体
 遠距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・ワーム』×10体
 近距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・インプ』×超多数?
 雑魚モンスター。
 やけに数が少ないような!
 ほとんど居ません。

『天義聖銃士隊』×多数?
 左右に息も絶え絶えに倒れています。一発二発撃ってくるかもしれません。
 原罪の呼び声の影響下にあります。
 やけに数が少ないような!

『天義聖銃士隊:砲兵』×0
 全く機能していません。というか居ません。
 銃士隊のマスケットと一緒に十字砲火したかったのでは!?

●敵 B:工作隊
 二階です。突入しましょう。

『強欲の魔種』モーリー・ブラパット
 この大聖堂の司教でした。欲してしまいました。
 胸元の裂けた司教服から覗く、豊かな谷を誇示しています。
 神秘系の攻撃、HP回復やBS回復を行います。

『司祭』×2名
 原罪の呼び声の影響下にあります。
 神秘系の攻撃、HP回復やBS回復を行います。

『助祭』×6名
 原罪の呼び声の影響下にあります。
 神秘系の攻撃、HP回復やBS回復を行います。

『ゲニウス』×4体
 遠距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・ワーム』×4体
 近距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・インプ』×10体
 雑魚モンスター。

『フィルス・クレイドル』
 デッカイ繭のような形。
 魔方陣の中心で脈動する巨大な肉々しい気持ち悪いものです。
 これがある限り、魔物が沸きます。
 攻撃して破壊しましょう。

『ナイトフォール』
 大聖堂に悪霊を呼び寄せる呪術。
 魔方陣の中心にうごめく闇の塊です。
 攻撃して破壊しましょう。

●敵 C:奪取隊
 大礼拝堂です。突入しましょう。

『カーディナル・スローン』ロガリ
 原罪の呼び声の影響下にあります。
 寡黙で筋骨隆々とした司祭です。
 神秘系の攻撃、HP回復やBS回復を行います。
 弱くはないです。

『ゲニウス』×10体
 遠距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・ワーム』×10体
 近距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。傾向はタフ目。

『グリード・インプ』×多数
 雑魚モンスター。

●友軍
 いずれも独自の判断で行動しますが、イレギュラーズの意思や指示は尊重します。
 またイレギュラーズとの関わりで、今回は原罪の呼び声に対して強い耐性を持っています。

・『カマル・フェンガリー』
 A:突撃隊で、部下と共に道を切り開いてくれます。
 今回は味方として真面目に戦います。

『エストレージャ騎士団』×30名
 カマルの部下です。エストレージャ騎士団の一部隊。

 大多数は前衛で、剣と堅牢な盾と甲冑で武装しており、高い防御能力と、それなりの突破力を有します。
 後衛は盾とボウガンで武装しています。
 今回はちゃんと味方です!

・『トファラの聖騎士』ギデオン・エルセリオ
 実力ある聖騎士のおじさんです。
 イレギュラーズを心から信頼しています。
 30名程の部下と共に、イレギュラーズと一緒に戦ってくれます。

 以下のシナリオに居ますが、ご存じなくても大丈夫です。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1586
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/1733
 格闘、ブロッキングバッシュ、ノーギルティ、ブレイクフィアー、保護結界(非戦)

『聖騎士隊』×30名
 聖騎士団の一部隊。
 聖騎士6名、神官戦士18名、従軍司祭6名といった編成です。
 HPやBS回復の他、AP回復も保有する堅牢な部隊です。

・『幻想大司教』イレーヌ・アルエ(p3n000081)
 エンピレオの薔薇を起動、制御します。
 強力な癒やし手ですが、戦闘での起用はデメリットもあります。

●同行NPC
・『冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)
 両面型。格闘、魔力撃、マジックミサイル、ライトヒールを活性化しています。
 皆さんの仲間なので、皆さんに混ざって無難に行動します。
 具体的な指示を与えても構いません。
 絡んで頂いた程度にしか描写はされません。

●フィールドトラップ
『ナイトフォール』
 たまに悪霊に攻撃されます。『B:工作隊』で対処しましょう。

●エンピレオの薔薇
 めっちゃ赤く光ってます。
 レーテー石と呼ばれる巨大なモノリスです。『C:奪取隊』で対応しましょう。
・ベルナードの茨冠を戴け。
・赤き血潮を流せ。
・聖ベルナードの目は、レテ川の彼方へ導くべき存在を明らかにする。
・浄潔の花は魂のランタンへの道しるべ。

 起動と維持はイレーヌがやってくれます。
 文献によると多大な苦難を伴うようなので、望む方はイレーヌと分かち合っても構いません。

 攻撃の使用はイレギュラーズ達に委ねられます。
 やり方は雰囲気で構いません。
 起動後に出現する神聖な魔方陣の中に立つと、戦場の様子が頭に流れ込んできます。
 ポイントをキメて浄潔の光をぶちこんで、聖都を覆うアンデッドの大群を塩に変えてやりましょう。
 APを大量消費します。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 以上。がんばってみてください。

  • <冥刻のエクリプス>Deus lo Vult!Lv:8以上完了
  • GM名pipi
  • 種別決戦
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月08日 22時51分
  • 参加人数 50/50人
  • 相談6日
  • 参加費50RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(50人)

ノイン ウォーカー(p3p000011)
時計塔の住人
ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
夜刀一閃
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
シグ・ローデッド(p3p000483)
『知識』の魔剣
シエラ・バレスティ(p3p000604)
青き流星
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
猫さんと宝探し
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
お道化て咲いた薔薇人形
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
赤ん坊の守護者
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
こう見えて71歳っきゅ!
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
かくて我、此処に在り
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
セレネ(p3p002267)
blue Moon
トカム=レプンカムイ(p3p002363)
存在を謳う者
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
聖女の小鳥
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
レスト・リゾート(p3p003959)
おばロリババア
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
風巻・威降(p3p004719)
悲劇を断つ冴え
銀(p3p005055)
ツェペシュ
ステラ(p3p005106)
トリコロール
ヤナギ(p3p006253)
撃鉄の
シュテルン(p3p006791)
こころの花唄
ネージュ・クラウベル(p3p006837)
雪原狼
リュンクス(p3p006839)
白山猫
ベッツィー・ニコラス(p3p006864)
ライゴーズ
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
エンジェルいわし
ビーナス・プロテウス(p3p007066)
渇愛の邪王竜
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活
カイト(p3p007128)
雨夜の惨劇
アリア・テリア(p3p007129)
幸福を知った者
彼岸会 無量(p3p007169)
黒彼岸
箴言・鳳来守・景明(p3p007186)
シャドウ・カース
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
海のヒーロー
ラナーダ・ラ・ニーニア(p3p007205)
必殺の上目遣い系観光客
天狼 カナタ(p3p007224)
彼方の銀狼
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
RafflesianaJack
君影・姫百合(p3p007232)
鈴蘭の花

リプレイ

●Judgement Day : part1
 そこはさながら悪意の檻であったろう。

「……いろいろとやってみてくれたみたいだねー」
 立て込んでいた間に、随分なことになったものだ。
「大変だったんだから」
 呟き。クロジンデとアルテナが頷き合う。
 二人は細剣を抜き放ち、幻燈を灯した。

 澱む大気は腐臭を放ち――
 樹木が、柱が。それら全てにこびり付いた禍々しい淀みが瘴気を湛えている。
 天義首都フォン・ルーベルグ。
 その中心に聳えるサン・サヴァラン大聖堂は、この聖域へと吸い寄せられるように集った悪霊の巣に変貌していた。
 悪夢のような光景の中。飛び回り、這い回る無数の化生は、この地の穢れが尋常ならざる状態にあることを明確に示している。

 だが――
「曲がった義を振り翳し! 民を迷わす屑共よ!
 我が名は悪の秘密結社『XXX』が総統! ダークネスックイーンッ! であるッ!!」

 壮麗な門の向こう側、その広大な敷地に高らかな宣言が響く。
「神の名の下に行った貴様等の非道、断じて赦し難しッ!
 我が悪を以って偽善を討つッ! 道を外れた屑共に祈る言葉は無いと知れいッッ!!!」」
 文字通り悪の女総帥。艶めかしい肢体を彩る暗黒闘気を収束し――
「全てを穿つ光と闇の波動よ……! 見るが良い、我が必殺の……世・界・征・服・砲!!!」
 ――膨大な魔力の奔流が放たれる。

「総帥殿に続きなさい!」
 カマルの令が轟き、ダークネスがこじ開けた敵陣の風穴へ。
 勇ましい鬨と共に、無数の騎士達が鉄靴を鳴らして殺到する。
 銃弾が騎士達の、その身の丈ほどの盾に火花を散らした。

 カマル旗下の騎士達は銃撃を受けながらも大聖堂内部へ向けて、石畳の左右に巨大な防弾盾の壁を打ち立てる。
「突撃! 神が正義を望まれるッ!」
 イレギュラーズと聖騎士隊の混成部隊は仮初の回廊を駆け抜けた。

「痴れ者の不信者共が」
 最奥から響く、あざ笑うような声音。翻る深紅の法衣。
 魔種アストリア枢機卿が姿を現した。
「一人残らずくびり殺してくれよう。即刻そこへ直れ!」
 彼女に従う二十騎。それはかつてアストリアと交戦した際、戦場に散ったエストレージャの騎士達。
 十騎は屍、もう十騎はその月光人形であり――

「主よ、どうか彼らの献身に、最期まで私達を信じて戦った彼らの魂に慈悲を」
 変わり果てた姿にカマルが息を呑み。彼等の同僚であった騎士達が、そして命を救われたイレギュラーズが吠える。
 生と死を。魂を穢すデモニアの仕打ちに、ヴァレーリヤもまた胸の内を烈火が如く燃え上がらせて。
「聖女を見捨てた罪を悔い、最期まで聖女と共に在ることを選んだ彼らの魂に救済を」

 ――そして願わくば……私に贖罪の機会を与え給え!

 祈りと共に【月夜】と【星裁】。アストリア挟撃部隊が一気に駆け出す。
 あの邪悪をここで確実に仕留める。そのために――

「神が正義を望まれるッ!」
 彼我が真正面からぶつかり合う――火線。声もなく殺到する屍騎士の一体が今、正に衣の眼前に向け剣を振りかぶる。
 甲高い鋼の悲鳴。
 衣は長大な剣で一撃をいなし、態勢を崩した屍騎士を蹴りつけ、そのまま流れるようにもう一振りで脳天を叩き潰した。
 十分な手応えに、しかし首から上を失った敵が跳ねるように起き上がる。
(……大丈夫……大丈夫)
 呼吸を整えた衣が愛らしい唇を結ぶ。常夜決戦と異なり、彼女は単独で作戦に参加していたが。
(でもこれは『仕事』……)
 己一人で何が、どこまで出来るのか。しかし胸に抱く誓いは曇らない。

「やいやい! おめーらがなんか変な獣をけしかけてたあくとーだな!」
「あのアシカから叩き潰せ!」
「オイラはアシカじゃねぇ!」
 啖呵一発、ワモンが背負う巨大なガトリングを構える。
「この正義のヒーローとっかりマスクが成敗してやるぜー!
 うなれ! オイラのガトリング!」
 轟音と共に無数の爆弾――よくみりゃイワシ――が炸裂した。

「役立たずどもめ! 騎士共よ、正義に殉教せよ!」
 アストリアの罵声に背を押されるように、天義聖銃士が立ち上がり、騎士達が剣を振り上げる。
 影のように。影刃一閃。エストレージャの騎士がはじき返した怪物、その喉をリュンクスの黒い刃が滑るように駆け抜け――絶命。
 敵が正義を語るなら、それで構わない。悪党だとしても大いに結構だ。
 だが受けた仕事は完遂する、それがリュンクスの流儀であった。

 剣戟と銃弾が荒れ狂う中。
 二つの部隊が敵騎士とぶつかり、枢機卿の喉元を目指している。
 その後背で、ラナーダは伝説を奏でる魔器を弾き、魔弾を放った。
 彼女は自信を無力であると定義するが――放たれた魔力は怪物の一体を弾き飛ばし、石壁に叩き付けた。
 それでもこの国一つを滅ぼそうとする瀬戸際を傍観するなど、出来はしなかった。

「神が正義を望まれる!」

「神が正義を望まれるッ!」

 幾度となく繰り返される怒号。神と正義が叫ばれる戦場で、無量は屍騎士の胸元から刃を引き抜いた。
 彼女が居た世界では、神は八百万居るとされている。
 敵にとって唯一の神だとしても、彼女にとっては八百万分の一の神の正義でしかない。
 胸の中心を貫かれた屍騎士が突如跳ね起き、無量は唸る刃を受け鍔迫る。
 なるほど――破壊し尽くす必要があると見える。だがそう来なくては。

「……アストリア」
 禁術を放ち、天枢騎士の一人を屠ったレイチェルが、美しい美貌に牙を覗かせる。
「沢山の命を弄んだ罪は重いぞ。次はお前が地獄に堕ちる番だ」
 レイチェルとアストリア。互いの射貫くような視線が絡み合う。
「よかろう……」
 枢機卿の全身から立ち上る膨大な邪気が、仮初の獣を形作り――

●Holy Land : part1
 醜悪な単眼の芋虫を踏み潰し、宙に浮かぶ髑髏を獲物で打ち払い。
 あたかも巌にぶつかる濁流が割れるように、各部隊は悪霊や怪物を打ち払いながら各々の戦場を目指している。
 イレギュラーズ達はアストリアを討ち取る『突撃隊』、神器エンピレオの薔薇を目指す『奪取隊』、そして大聖堂二階へと足を踏み入れた『工作隊』とに分かれていた。

「もう少し肩の力を抜いたらどうだ。俺が居るのだからな」
 鋭い銀の視線は、しかし作戦司令官である聖騎士ギデオンにとってどこか温かさを秘めている。
「銀殿、ムスティスラーフ殿!」
「堅苦しいのはいいって。約束を果たしに来たよ、ギデオンさん」
「かたじけない!」
「一緒にこの国を救おう」
 勝利の祝杯を目指して。
 ムスティスラーフは逞しい手のひらを、ギデオンの背に当てた。
 厚く冷たい鎧の向こう、心に秘めた決意を鼓舞するように。
「無論です!」

 広間の門を聖騎士達が打ち破る。
「おや……」
 足下から流れ込む瘴気に華鈴が愛らしい眉をひそめた。

「この聖域に踏み込むとは、愚かな」
 そう述べたのは醜悪な怪物を無数に侍らせた大聖堂の主たるモーリー司教である。
 背に護るのは二つの巨大な魔方陣。一つはこの瘴気の源。もう一つ、その中心にうごめく肉塊が怪物の一体を吐き出した。新たな怪物だ。
 あれら片付けねば、一つでもし損じればこの聖都は陥落するやもれぬ。

「聖獣の贄となりなさい!」
「問答無用! 我に続け! 神が正義を望まれるッ!」

 鬨というのは重要なものだ。心の奥底に潜む本能的な部分で『覚悟』が決まることをカナタは知っている。
 この日、カナタが握りしめるのは〈いのりのかけら〉と〈ひとひらのねがい〉。
「頼まれたんだ――」
 神も正義も分からない。だが《人》が平穏を望むのであれば。月であろうと歯向かってやろう。
 天を仰ぎ――シリウスの遠吠えに聖騎士達が一斉に呼応する。

「神が正義を望まれるッ!」
「――神が正義を望まれるンだろォ? じゃあ、『正義』を示すのは間違いなくあんたらの仕事だァ」
 カイトが言い放つ。
「……あんたらが護ってる、この街で願う人々も、そう『望んで』るだろうよォ」
 聖騎士達が怒号を上げ、敵に殺到して往く。
「なァに。くだらねぇ三文芝居を畳みに来てやっただけさァ。
 神様に仕えるフリして別の奴に仕えてた、糞野郎を『正義』って白日の下に晒すのさ」

 聖騎士達が怒声で応じる中。
「彼方は聖獣と呼んでおるようじゃが……どう見ても悪のモンスターじゃな……」
 いや本当、どう見ても。
 見た目で判断するのは良くないのだが、明らかに悪だ。
「え、えっと……」
 切れ味鋭い華鈴に結乃が言いよどむ。
「あのひとたちにとっては、これが善なること。だからモンスターも聖獣なんだろうね」
 配下の聖職者達がロザリオやメダイを握り、祈り始める。
「善悪って、人によって違うんだよね。この人たちにとっては紛れもない『聖戦』なんだ……」
「そんな善、さっくり倒してないないしてしまわねば……じゃな」
 あの司祭達が本当にこれを『善』だと考えているとも思えない。
「舞踏流枢木、存分に味わうと良いのじゃ!」
 舞い踊るように、妖気を纏う刃が化生の胸を貫き――激突が始まった。

「わぁ! いっぱい美味しそうな人達が居るね!」
 敵には腐っても聖職者が多い。元の世界での食事をついぞ思い出してしまうようだ。
 邪竜王ビーナスの蠱惑的な肢体、その影から無数の眷属が鎌首をもたげる。
 彼女自身には彼等に含むところはないのだが、『こちら側』に居る方が愛してもらえると、そんな気がするのだ。
「ひっ」
 シスターの一人が尻餅を付き、聖印を切る。
「眷属さん達、ヤっちゃってください!」
 引き裂かれた服から覗く白い肌を無数の影が蹂躙してゆく。

「散々好き勝手やってきた報いの時です」
 冷たく言い放つフロウの言は正鵠を射る。敵がこの国を、人々を、命を弄んだ罪は余りに重い。
「こちらも好き勝手にやらせてもらいます!」
 尤もローレットの本気は、敵もあの一件で経験済みではあろうが――
「来たれ、連なる雷撃! 我らの敵だけを貫き焦がせ!」
 詠唱に続く雷鎖は戦場を駆けるように、次々と怪物を撃ち貫いて往く。

「アンジュはおっぱいを許せぬ。でかいのずるい。おこだよ」
 げきおこエンジェルいわしアンジュ。
「いわしたちもそう言ってる。多分。アンジュがそうって言ったらそうなの!!!」
 破天荒な物言いとは裏腹に、立ち回りは堅実に攻防を兼ねている。
「いけーっ、いわしミサイル! あのにせものおっぱいを突っつくのだ!!」
「寄せて作った谷間なんて即バレだぞ?」
 ベルナルドとアンジュの挑発に、モーリーが口元をゆがめて己が胸へ手を当てる。
 魔種となった彼女が望んだ身体だが、未だなじみは薄かろう。画家の指摘は彼女のこれまでを思い起こさせるに十分だった。
「減らず口を!」
 そう言って裂けた装束、その胸元を引き下げ誇示するモーリーへ。敵の周囲を固める配下、そして後背に鎮座する術陣諸共を巻き込みベルナルドは術花を放つ。
「あの男を断罪なさい!」
 強烈な一撃を受けた司祭が叫び、怪物達がベルナルドへ殺到する。
「ベルナルド!」
 逞しい身体を割り込ませるように、レプンカムイは迫る怪物をなぎ払い、牙爪を盾ではじき返す。
 かつて冤罪で裁かれた『聖女の小鳥』ベルナルドは――それでもこの国を愛していると言う。
 芸術を、明日を描く術を教えてくれたこの国を。性根の腐った奴と共に朽ちさせる訳には往かないと。
 ならばレプンカムイは、そんな男を護らない訳にはいかない。
 後でこの国への愛を存分に聞かせてもらおうか。

●Carry on : part1
 サン・サヴァラン大聖堂が誇る大礼拝堂。
 攻め入ったイレギュラーズ達の眼前に現れたレーテー石と呼ばれる巨大モノリスは――
 先にこの地へ潜入したアリシス等の調査により『エンピレオの薔薇』と呼ばれる伝説級アーティファクトだと判明している。
(踊る死者の群れ、まるでケイオス・コンダクターのよう)
 聖都を中心に、ベアトリーチェが居るレテ川や、対極に位置する嘆きの谷すら見渡す対アンデッドレーダーであり、攻撃能力まで有していると分析されていた。
 アストリアはこれがあればベアトリーチェを都合良く利用出来るとでも思ったのだろうか。だとすれば――愚かに過ぎる。

「しかしよりにもよって聖堂に立て籠もるたぁ厄介な事を……」
 マカライトのぼやきにイレーヌが頷く。
「こうまでひどい有り様とは」
 だがここを取り替えさねば、他戦場のみならず、この場の最前線にも響くだろう。
「悪いがお引き取り願う」
 迫り来る無数の怪物を、六条の鎖。その先端に生じた刃が撃ち貫いた。

 礼拝堂は、まるで魔物の巣窟といった有り様だ。
 どうにかあれの元へイレーヌを送り届けねばならないが。
「イレーヌが入れーぬとな」
 おどけたベッツィーに妖魔の爪が迫り――
「くっ……ころす!」
 両断。
「なんじゃアンデッドがおらぬの」
 少々残念でもあるが、ブッコロしてお浄土に連行してやろう。菩薩はボサッとしててもやるときはやるのだ。
「なぁ~むぅ~」

(至高の薔薇?)
 比喩としても、己以外がそう呼ばれるのはなんとなく気に入らない。
「やべー薔薇を貰いに行くわよ」
 先頭を駆けるローザは霊樹の大剣――ならぬ暴樹の棘剣を構え、戦場に血花を咲かせる。
 彼女等の部隊はこれを確実に奪取せねばならない。

 茨と薔薇と。
 美しい人形のように――というより『そのもの』に見える――ヴァイスが歩く様は、さながらおとぎ話のようにも見えるが。

 ――薔薇に茨の棘遂げる。

 彼女の眼前に出現した暴風、そのエネルギーの奔流が怪物を打ちのめし吹き飛ばす。
「神が正義を望まれる!」
 切り開かれた道。モノリスの前に立ちはだかる男ロガリは、この場の守護を命じられていた。
「勝手ね」
 神が望まれた正義などとは。
「そんなものではなくって、貴方達自身の正義はどこにあるのかしら?」

 聖都の地を踏むヤナギがかつて居た場所は、魔都と呼ばれていた。
 鬼、妖怪、魔神――そこで彼に力を与えてくれたものもまた神だ。
 天義も旅人も関係ない。人を守るという正義を為す。
 この国に日常を取り戻す。
 迫る魔物を両断し、ヤナギは駆ける。
(神が正義を望む、か……)
 人の命を平気で踏みにじる者達に、正義を口にする権利などない筈だ。

 激突が始まった。
 聖域の中心で、爪と剣。牙と盾がぶつかり合う。

 そんな中で突如――けたたましい音を立てて一面のステンドガラスが砕け散る。
 振り返り、呆然と見上げるロガリを二筋の刃が切りつけた。
「な、馬鹿、な」
「自己紹介か?」
「馬鹿で結構だぜ!」
 サンディとサイズは続けざまに第二撃をたたき込む。
 こうなればロガリは自身を癒やす他なく、正面側の敵が得る筈だった支援が滞る。
 狙い通り短期決戦に持ち込めるかもしれない。
 この機転。この活躍。イレーヌは見ているだろうか……!

 こうして。
 この場の指揮官たるロガリの元へ、四名が送り届けられた。
 僅かな人数ではあるのだが――
「ドーモ、ロガリ御一行=サン。シャドウ・カースです」
 景明が名乗るニンジャネーム。
「ドーモ、シャドウ・カース=サン。ヒョ・ロガリです」
 対する名乗りは洗礼ネーム。その割にムキムキだけど。
 唐突なやり取りに続く邪刀『群醒』の一閃。

 久しぶりに来た故郷。個人的にはこのまま滅んでくれた方が嬉しいとも思えど――
 そうも行かぬようで残念な限りだ。
 皮肉にもそれを為すのは己でもあり。
「いやはや」
 ノインは苦笑一つ。
 あの時も、今も。どちらにせよ『正義側』である訳か。
 ともあれ。一人一人を丁寧に殺すまで。
 肉厚の背に突き立てる刃と共に祝福を。敵ながら、よくぞここまでこの国を滅茶滅茶にしたものだ。
「お見事ですよね」
 吹き出す赤が、命の終わりを奏でた。

 ロガリを失った大礼拝堂で敵の統制は乱れている。
「さあみんな! 文字通りの正念場だよっ!」
 アリアの歌声が神器への道を切り開く。
 細い身体に突き立つ牙と爪。その傷を――

 誰も死なせない。

 ――だって、誰かの大切な人達だから。
 ティミが賢明に癒やす。

 だからアリアは限界を越えても立ち続ける。攻め続ける。
「前へ!」
 ティミの雷撃が、クロヴィの牙が道を切り開き。
「それなら」
 徹頭徹尾、バックアップに徹するつもりの姫百合が戦場を支え続けている。
 攻撃に回るのは姫百合の最終手段。堅実に行きたいのは――あるいは守れなかった大切な人の為なのか。

「守るよ」
 ステラのつま先が強欲の眷属へ突き立ち、大きく身体をへこませた怪物が吹き飛んだ。
 彼女がこの戦場に立つ、彼女なりの意義。それは正義感ではないと彼女自身は考えている。
 黄泉還り。もしも祖父――彼女を育てた老爺が月光人形になったとして。そのとき己はどうなるだろうか。
 もう、そういうのはやめさせたいのだ。
 それでもやはり『許せない』というような感情とは違う。
 そう『やっちゃいけない』ことなのだ。これは。

「このまま制圧するよ!」
「頑張るっきゅ!!」
 あんな怪物に聖獣なんて似合わない。グリュックに抱えさせ、レーゲンは魔力を集中させた。
 絶望の青を歌うアリアと共に、ティミとレーゲンの雷撃が敵陣を撃ち貫き。
 アクセルがかき鳴らす音色は魔力の奔流となって、傷ついた怪物を狙い撃つ。

 こうして。
 仲間達に導かれるように。二人の美女は、かの巨大なモノリスへとたどり着き――

●Holy Land : part2
 交戦開始から幾ばくかの時が流れ――
 未だ広間での激闘は続いていた。
 しなやかな身を躍らせるように、怪物へと捨て身の一撃を繰り出すネージュは想う。
 正義感の強い姉も、きっとこの戦乱に居るのだろうと。
(負ける訳にはいかない……!)

「シュテ……いっぱいっ、頑張るっ!」
 柔らかな光がネージュの傷を暖かく包み込む。
 イレギュラーズ達が真っ先に狙う大呪術への攻撃がなかなか届かない中で、彼女は懸命な癒やしを続けていた。
「覚悟するんだのぅ」
 シュテルンに迫る爪牙カレンの紅鞭が襲い、吹き飛んだ怪物は強かに叩き付けられた。
 恋人を傷つけようとするものに容赦する気は更々ない。なぎ払ってやろう。
 それにようやくの肩を並べることが出来た戦場だ。激闘の最中ではあるが、心なしかシュテルンにも安堵と喜びが垣間見える。

 戦場では未だ大呪が脈動している。
「うえー! きもちわるー! ねえエルキュール、ちょっと行って壊してきて」
 ナウいペットエルキュールちゃんに無茶ぶりするアンジュ。
 とは言え、彼女も味方を癒やしながら敵を打ち倒し続けている。そう言いたくもなろう。
「恐れ戦くが良い。俺こそが真のアンデッドだ」
 膝を付く助祭に銀は言ってのける。
「か、神よ……!」
 最前線に立つ銀は、モーリーの苛烈な攻撃に加え、配下の爪牙を幾度も身に浴びているが――幾多の刃も闇の王を討ち滅ぼすには未だ無力である。
「ムスティスラーフ殿! アンジュ殿!」
「今だ、やれ!!」
「うー! もーー!」
 ネージュとギデオンの叫びに、ムスティスラーフは渾身の砲術を、アンジュは構えた指先から聖光を撃ち放つ。
 その閃光をモーリーはついぞ避け――背後の大呪フィルスクレイドルを貫いた。
 光の中でぐずぐずと溶け消えるそれに、司祭達は目を見開いて戦慄く。
「邪悪な! 罰当たりめ!!」

 神と正義の名の下に殺し合う戦場。
(この国の事は、よく分からないけれど)
 神様が。もしも神様が居るのなら。
 早くこんな戦い、終わらせてほしいと願うから。
 セレネが刃を握りしめる。戦場のただ中。最前線。大切な友人シエラ背を預け合い狙うはもう一つの大呪。
 放たれた瘴気に片目を塞ぎ、黒い淀みをそれでも見据えて神速の牙を突き立てる。
 引き抜きとびすさる刹那――シリウス・グリーンの輝く刃が大呪を横一文字に両断した。
「これが私とセレネの、疾風怒濤のコンビネーション!」
 雲散霧消する二つの邪悪な魔方陣。その中心で二人はくすくすと笑い合った。

「オジョウサンも、熱クナッテきたデスヨ!」
 摩訶不思議な捕虫袋から、かわいらしい子供(ぎたい)が顔を覗かせているオジョ・ウ・サンの言。

 だって――アノヒト……

 トテモ……オイシソウ…………っ!!!

 絶望の青が戦場を染め上げ。
「おのれ、おのれおのれぇ!!!」

「ネェ……ホントは、何が、欲しインデス……?」
 こんな所で、『一人』で。
 オジョウサン、イーーッパイ気持チよくしてアゲルデスよ?

 髪を、法衣の胸元をかきむしるモーリーが絶叫する。

「ご丁寧にどうも」
 生じた僅かな隙。さらけ出した胸元、心臓の在処へ、銀は終焉の短刀を突き立てた。

 時間が凍ったように、モーリーが動きを止め。口元から赤が溢れる。
「猊下……どうかお許し……を…………」

●Judgement Day : part2
 火薬と鉄、腐臭と汗、大気を焼く臭いが入り交じる戦場――その最前線。

 相対する二人の背格好は、奇しくもよく似ていた。
(天義の正義には興味がないのですが、貴女の持つ神秘はとても興味深いのです……)
 枢機卿は金の錫杖を、ドラマは美しい蒼刃を掲げ――熱線と悪夢の魔弾が交差する。

「何をぐずついておるか!」
「やらせてやると思うかね?」
 異想狂論――『偽・烈陽剣』
 友の太刀筋が割り込もうとする敵騎を切り裂き。
「こじ開ける!」
 姿勢を崩した敵の懐へ踏み込む威降の刃が、その後頭を捕らえた。重い塊が地を転げる。
「主よ、天の王よ。この炎をもて彼らの罪を許し、その魂に安息を。どうか我らを憐れみ給え」
 燃えさかるヴァレーリヤの戦混が唸りを上げ、炎撃が敵陣を撃ち貫く。

 脱兎の如く地を蹴るアストリアだが、その足を切り裂くのは不可視の悪意。
「残念だけど、ここから逃がす気は無いんだよー」
「この国に溜まりに溜まった濃厚な悪意は、決して貴女を逃がしはしません!」
 クロジンデに続き、ドラマの一撃がアストリアを捕らえ、血と共にきらきらとした砂粒のような光が舞い上がる。
 それは枢機卿が人ではないという証左。

 鋭い杖の二撃を辛うじて弾き、斬葬・焔魔――生者必滅の刃の奇跡がアストリアに迫る。
 紙一重。銀の数糸が宙を舞い、デモニアの瞳に憎悪が揺れた。

 ――ロガリを撃破!

 ――――モーリーを撃破!

 次々ともたらされる吉報に、最前線は沸いた。
 続々と到着する援軍が、怪物達と切り結び始める。

 エストレージャの騎士達が安堵の吐息を漏らし。
「……姫様」
「なんで……カマル」
 カマルの呼びかけに、シュテルンの身が強張る。
「何用かえ?」
 けど、大丈夫。今はカレンが居る。
 カレンの視線に首を振り、カマルは敵を斬り捨てながら、一言だけ伝えたいことがあると述べた。

「もしもこの先。貴女の前に強大な敵が。絶対の敵が現れた時。どうか私にご用命下さい」
 カマルは、或いは既に見据えておられるやもしれませんが。
「それを必ず……斬り伏せてごらんにいれましょう」
 この戦いの後――レテ河決戦に勝つことが出来ればの話だが――この国は当面、忙しくなるだろう。
 名家とは家、一貴族の事情になどかまけてはいられない。
 ならば。その後はどうなる。
 カマルの言葉は、どこか予言めいていて。
「大言壮語を吐くものよのぅ」
「ええ」
 それだけを言い、カマルは再び敵陣へと突撃する。

 何を。一体誰を。

 ――

 ――――

「年貢の納め時と言う奴だよ――アストリア」
「ほざけ小僧! クロバと言ったか。やはり汝は殺しておくべきであった!」
 軋むほど噛みしめて、喉の奥から絞り出すように枢機卿が呻く。
 刹那――詠唱。吹き荒れる爆炎に、イレギュラーズ達は可能性の箱をこじ開け、奇跡を紡ぐ。

 一撃一撃があの日より、重く鋭い。本気だということだ。
 連撃を受けるクロバの踵が大理石の床を砕き、蜘蛛の巣のように無数の亀裂を走らせるとしても。
 幻魔の顎は威降を切り裂き、おびただしい血が赤に染めるとしても。
 大聖堂に巣くう悪霊の群れが、枢機卿の放つ呪炎が、イレギュラーズ達を捕らえ傷つけ続けるとしても。
 それでも。
 エストレーリャは死者を弄ぶアストリアを赦さない。
 正義を望む神は、それ以上に魂の安息を望む筈だから。
「絶対に、解放させてみせます!」
 調和の癒やしが前衛に立つイレギュラーズ達を、戦いに踏みとどまらせている。
「銃士共! 奴を殺せ!」
 枢機卿はエストレーリャを睨み付け、だが答えられる部下は、もうこの戦場には居ない。

 突如――咆哮。銀狼が放つ衝撃はにアストリアの身体が跳ね飛んだ。
 帽子が落ち、転げる身体が血に濡れる。
「さてさて、ずいぶんと機嫌が良いようだね、アストリア殿も」
 Model27から立ち上る硝煙を一吹き。
「だぜ。なんどもやらせるかよ!」
 ゼフィラとレイチェルが、アストリアの纏う邪気を雲散霧消させた。
 飛び起きるアストリアは即座に聖句を紡ごうとするが――
「あらまあ、どうなさいました枢機卿様~? 随分お辛そうですけど~」
 レストの問い。あの幻魔はもう呼び出せないらしい。
 二度は許した。だが三度はない。

「……お前さんは個としては確かに強い――だが、それだけである」
 シグの呟き。
 続く封呪が、シグの呪いが。アストリアの魔力を縛り付けた。
 一行は一手。また一手とデモニアを追い詰めてゆく。

 あの時――あの戦いでは一人相対したのだが。今度はそうではないと。
「人の心を踏みにじり死を弄んだお前を許さない」

 そう、神は望まれた。生憎、死神だが――!

「ほざけ小僧――!」
 振り上げた錫杖をいなし、クロバの軋む腕が悲鳴を上げても。
「いい加減に諦めろ」
 威降の一太刀が、アストリアの杖を弾き飛ばして。

「人間風情が!」
 単身。徒手。されど繰り出される爪が威降の身体に無数の傷を走らせ、クロバの二刀を弾き飛ばした。
 生暖かい液体がクロバの胸元をじっとりと濡らす。鉄の臭いがする。

 嗚呼、良かった。
 まだ生きていてくれて。

 ――アストリアの爪が威降の胸に刺さり、心臓へと達する刹那。

 しかし無量の刃は、その第三眼が導く『線』を辿り、それを斬り飛ばす。
 あの日、妖魔の一匹にたたき伏せられた彼女の刃は、ついにデモニアまで届き――

「お前が玩具にした人達に、冥府で詫びろアストリア!」
 地を蹴る威降が再び小太刀を振り上げた。
 この間合い。その首を外すことは、もうない。

 死神の鋭い爪が、少女の華奢な胸元に吸い込まれ。
「貴様も……奪うのか」
 アストリアの口から溢れる鮮血に、声は掠れ。
「妾は……どこで間違えたのであろ」
 伝えんとする言葉は、要領を得ず、取り留めもなく。
「アブ……レウ……すまなん……だ」

 魔種とは――反転を経た生き物だ。
 その性は不倶戴天。狂気にして邪悪。
 けれどその前。人だった彼女は。一体何者だったのだろうか。

「ならば……汝が……この……」

 イレギュラーズは、いつの日か。
 その根本を。
 斬らねばならぬと言うのか。

 ――次に生まれる時は――きっと、幸せな生でありますように。

 ――――さよなら、アストリア。

●Carry on : part2

 この国はね、私の故郷なの。
 だから、魔種になんてあげない。

                ――『サン・クラレット』アーリア・スピリッツ。



「……そうしてあなたはベルナードの茨冠を戴き、月光に導かれる者達の手を引かねばならない」
 アリシスが読み上げる聖典『赤き血潮の書』。

「きっと痛いですよ?」
「二日酔いより、きっとマシよぉ」
 イレーヌのいたずらな笑みに、アーリアがおどけた。

 だってそれに――

 イレーヌが押し当てた『白き薔薇の書』に、アーリアが手を添える。
 光り輝く幻影の紋が礼拝堂を包み、怪物達が奇声を上げて蹲る。
 鋭い痛み。身体に走る幻影の茨。輝く棘が二人の身を締め付ける。

 浄潔の薔薇。
 気高き血潮に咲く花よ。 

 一滴。また一滴。
 染み込むように流れる血に、純白の魔方陣は輝きを増して往く。
 一線、また一線。
 輝きはじりじりと、あまりにもどかしく薔薇を描き続けている。
 全身を貫く程の痛みに、頭の奥が警笛を鳴らし続ける。
 意識がぼんやりとしてくる。寒い。寒い。寒い。身体が冷えて言うことを聞かない。

 眩しい。
 目がくらむほどのまばゆい光に包まれて。

 ――まだどこかに。
 この国のどこかに、あの子が。メディカが居るんでしょう。
 あの日、その死さえ望んだ彼女が。未だどこかで生きているんでしょう。

 この大聖堂での戦いだって未だ続いている筈だ。
 戦禍に満ちた聖都では今も市民達が祈り続けている筈だ。
 そこではローレットの仲間や聖騎士達が、死に物狂いで戦っている筈だ。
 仲間達は嘆きの谷では、レテ河では。たった一つの己が命を賭けている筈なのだ。

 誰も彼も。
 今更。ほっとけるわけないじゃないのよぉ!

 魔方陣を描く全ての紋に輝きが満ちた。
 だが起動の成功を無邪気に喜んでもいられない。
「――哀れなるもの、魂無き繰人形」
 陣の中でアリシスが紡ぐ。
 書の頁がめくり上がり、光と共にこの戦場、全てが脳裏に流れ込んでくる。

 肉体は土に、偽りの魂は空に、罪は炎に、想いは風に。
 全ては在るべき場所に――還らん。

 第一射。
 アリシスの詠唱と共に。
 飛び交う暖かな光が白薔薇のつぼみを描き、花開く。
 僅か一撃で、大聖堂に満ちあふれる悪霊が一握りの塩へと還された。

 目を閉じ、見えたのは。
 可能性の箱をこじ開け、今にも倒れそうな仲間の姿。

 第二射。
 三射。四射。
 王宮へ。周辺の戦場へ。嘆きの谷へ。
 浄潔の光が、剣を振り上げる骸を塩に変える。
 震えながらただ祈りを捧げる民の前で。牙を剥く骸を塩に変える。

 憎悪を、憔悴を、絶望を。
 戦場の全てを希望の光が塗りつぶす。
 赤く光り続けるレーテー石の文字。魂を穢された死者の名が蒸発するように消えて逝く。

「まだ、やれますか……?」
 蒼白なイレーヌが力なく問いかける。
「……もちろんよぉ」
 その服をじっとりと深紅に染めたアーリアは、いつもと変わらぬ声音で返してやった。

「こんな『奇跡』ならガンガン使っちまおうぜ!」
 命を賭したことのあるサンディの言葉は重く響き。
「無理はしないで下さいね」
 イレーヌが微笑む。
「残ってる分、全部持ってっちゃって!」
 目を閉じたステラが、アクセルが、レーゲンが。
 各々が目を閉じ、定められた聖句を紡ぐ。
「暗黒の海に、ぶち込むっきゅ!」

 遂に。レテ河のほとり。
 かの決戦の地へ。


「お願い、届いて!」

成否

大成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145) [重傷]
夜刀一閃
ドラマ・ゲツク(p3p000172) [重傷]
蒼剣の弟子
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736) [重傷]
受付嬢
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837) [重傷]
祈る暴走特急
レスト・リゾート(p3p003959) [重傷]
おばロリババア
アーリア・スピリッツ(p3p004400) [重傷]
キールで乾杯
風巻・威降(p3p004719) [重傷]
悲劇を断つ冴え

あとがき

 依頼、大変お疲れ様でした。

 熱量、作戦、一人一人の行動。
 どれもこの結果を導くに相応しいものだったと思います。

 またのご参加を心待ちにしております。pipiでした。

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