PandoraPartyProject

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魑魅魍魎の蟲毒

「……さて、全く困ったものだ」

 豊穣国に存在する久遠なる森――の一角で。
 玄武と似たような言を紡ぐのは、微笑みを携えた人物であった。年の瀬は三十代半ば、と言った所だろうか。誰しもを優しく抱擁しそうな如き雰囲気を携えた彼は……しかし。
 同時に、血に飢えし獣が如き気配を内包している。
「どうして納骨堂まで侵入を果たしながら、遺骨の破壊を仕損じた?」
「こっちの台詞だ。街で時を稼ぐと言っておきながら、何をしていたんだ?」
「仕方ないだろう。昔馴染みに会うと、どうも――愛でたい様な気持ちが沸く。
 迦楼羅殿は違うのか?」
「……生憎。『昔馴染み』などと言う存在に縁が無くてな」
 彼の名は、月原清之介
 ある神使との知古であり――しかし魔種である男だ。彼は久遠なる森で、天狗面を付けた……これまた想像を絶する、憤怒の色を携えた男。瀬威・迦楼羅と言を交わしている。翼を背に頂く彼は飛行種が元なる存在だろうか。
 両者は見うる街、常世穢国に属する勢力とはまた異なる者達だ。
 いやむしろ敵対していると言っていい。
 かの街の頂点として座す、偲雪へのそれぞれの思惑によって。
「まぁ今更過去はいいだろ――それよりも、どうするんだ?」
「知れた事。拙者も、迦楼羅殿も。あの女を討つ心に変わりなくば」
 未だ闇に蠢くのみだと、清之介は紡ぐものである。
 月原清之介は自らの内と、その腰に携えられし『紅葉切』より湧き出る衝動が故に。
 瀬威・迦楼羅は、他者を笑顔と言う幸福で包まんと押し付けてくる偲雪を憎悪するが故に。
 如何な手段をもってしてでも美しき頂点者――偲雪を惨殺せしめるのだと。
 堅く。その心の行き先は決まっている。
 それになにより……神使達が大々的に動いているのであれば。
 付け入る隙は必ずあるのだと――

「本当にぃ? 本当に、あると思うかい?」

 刹那。場に轟いた声は――両者のモノではない。
 全く別の、だ。極大の殺意と共に飛来するは――
「そんな隙なんて一切ない事を教えてあげるよ。
 いい加減、招待もされてない輩がウロチョロウロチョロと――煩いからなぁ」
「――チッ。また『守人』かよ」
 多数の『竹刀』らしき代物を携えた存在、だ。
 彼は飛来する。木々を捻じ伏せ、高速に。狂飆が如き化身と成りながら。
 ――激突。
 舌打つ迦楼羅が躱し。神速の居合をもってして抗する清之介。
 彼らに襲来したのは、常世穢国を守らんとする武者……『守人』なる者が一人。
 柳・征堂という名を持つ人物だ。
「あ――ははははは。聞いた。聞いた。見た。見たよ?
 君達がアレだろう? 小賢しい侵入者、だよね?
 帝を煩わすなんてひーどい連中だ! 皆殺しにしてやろっと!」
「なんだこいつ。気が狂ってんのか?」
「はは。迦楼羅殿は今更な事を言う――この森に正気なる者がいるとでも?」
 彼は常世穢国に属する帝が一人……干戈帝の信奉者。
 故に滅ぼす。彼に敵対する全てを。お手を煩わせてなるものか、と。
 ――否。気付けば彼だけではない。
 更に此方を囲まんとする複数の気配も感じるものだ……
 これが守人共か。街を見据えれば住民はアレ程笑顔に溢れているというのに。
 一旦敵と見定めた者には――鬼の様な形相と共に排さんとしてくる。
 そしてソレは別段、迦楼羅達にだけ向けられるモノではないのだろう。

 きっと。神使達の事も敵と見定めれば――斯様に襲い掛かってくるであろう。

 周囲を包囲する様に。そして楽園を穢す者は許さぬとばかりに。
 鬼の形相。話し通ずるかも怪しきばかりに。
 ……このような者も内包しているのが常世穢国だ。
 偲雪はかの地を理想郷だなんだと言っていたが。はたして其れはどこまで真実か――
「面倒だな。迦楼羅殿、街の方へ往くか。どうせなら……」
「神使達も巻き込むが吉、か。あぁそうだな。
 どうせ俺も、納骨堂で『妙に気になる』奴がいたんだ。丁度いい」
 然らば清之介達は動き出す。
 街の方へ。神使達が玄武からの依頼で動かんとしている――その場へと。
 ……彼らの参入が如何な流れを生み出すか。
 少なくとも、常世穢国の面々にとってみればどちらも敵だ。
 彼らの動きが神使達の行動から眼を逸らすかもしれぬし、それ以外の何かが生じる可能性もある。
 いずれにせよ『逃がさないよ』とばかりに征堂は狂気なる笑みと共に追撃を仕掛けて……

「……なんなんですかねぇアレは。やれ、この森は魑魅魍魎でも集まる習性があるんで?」

 そして――その様を、隠遁の術にて逃れながら見据えていたのは。
 栴檀(せんだん)なる人物だ。彼は幻惑の類を操るに優れている術士が一人。
 この森の調査を行わんとしていた一人でもあるが……さて。
「ま、何にせよ。嫌な気が更に淀んでまさぁ。
 こいつはもう、いよいよ放置してたらやべーご様子。
 ……慧から頼まれていた調べ物の事もあるこったし――」
 あっしも向かうとしますかねぇ、と。
 彼が見据えるはやはり――件の街、だ。
 仏魔殿領域・常世穢国。
 誰もが集まる。敵も味方も。偲雪に賛同する者も、しない者も。

 かの地で紡がれるは――如何なる未来であろうか。

 ※豊穣国、久遠なる森の果てで、玄武より依頼が出ています――!

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