PandoraPartyProject

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誰が為に

 ――遥か悠久の果てよりファルカウは絶対だった。
 僕が僕として生まれた頃より大樹であったファルカウの偉大さは今も尚変わらない。
 僕はこの素晴らしき大樹を――永遠に守り通していくと、ずっとずっと分かっていた。

「ほほう。あんなゴミの様な幻想種達を放置しながら『護れている』のですぞ?」

 その時だ。あの愚図が現れたのは。
 見るに汚物。邪悪に塗れた、僕と対極の存在と――出逢ったのは。
 初見の感情はただ一つ。『とりあえず殺そう』だ。
 見ただけで分かる魂の汚物がファルカウの傍まで侵入しているなど背筋が凍る。
 なにより『これは危険』だとすぐ分かった――だから僕は即座に出向いたのだ。
 見た事はない。精霊や魔物ではない……しかし悪意の存在だと。
 大樹の守護者たる僕がそう思うという事は『そう』であるから。
 殺す。大樹ファルカウの為に。こいつだけは見逃せないと。
 ――直後に巻き起こる数度の魔力応酬。
 周囲に僕が張り巡らせた保護なる結界があれば全力で暴れても早々木々に影響はない、が。
「うわ、深緑の排他的主義を煮詰めた様なヤツですぞ!
 いきなり攻撃してくるとか――親の顔が見たい!」
「僕はファルカウより生まれし存在だ。ファルカウを馬鹿にするのか? 殺すぞ。殺す」
「ンッふっふ。まぁ落ち着いて欲しいですぞ。その力……もっと別の事に振るわれるべきなのでは?」
 眼前の汚らしい愚図畜生もまた、早々に崩れもしなかった。
 ……何者だコイツは? 姿からして幻想種でないのは確定だが。
「我が名はザントマン――幻想種に仇名す存在。然らば貴方とは分かりあえる」
「そうか。死ね」
「待て待てですぞ。よーく考えてみるですぞ。幻想種というのはファルカウに必要ですぞ?」
 刹那。僕はあの時、あの言葉に。一瞬だけだが確かに……

「貴方は別に、幻想種などどうでもいい筈だ。
 私は分かる。貴方と対極の存在だからこそ。私だけが貴方を理解できる」

 己が行動を止めてしまった。
 ……大樹ファルカウを信奉する者達、幻想種。
 古い時代、ファルカウから生れ落ちたとする伝説を信じている者達。
 自らをファルカウの『子』だと思っている者達――
「私を見逃して頂ければいつか必ず私が幻想種を絶滅させましょう。
 ファルカウに集るシロアリ共を駆逐し、貴方はファルカウと永遠に共にあれば良い!
 ええ! そうでしょう? 良いでしょう? それが貴方の望みなはずだ! 貴方こそが、いえ貴方『だけ』が真にファルカウの『子』なのですから!」
「――――よし分かった。死ね」
「ぬぉぉぉお! 貴方は人とは共に在れない! それだけは覚えておけですぞ――!」
 結局。あの汚物畜生の下劣塵屑の馬鹿は殺しきれなかった。
 いや『殺さなかった』のかは――今でも分からない。
 ただ、あの時。アイツの言葉が何故か僕の心に沁み込んだのだけは覚えていて。

「ハーッ、ハーッ! マナセめ……ふざけやがって……!!
 ゴミの様な術式を大樹に仕込むなど、ぎい、が、がああ……!!」
 そして今。僕は、アイツに変わって幻想種共を退けんとしている。
 ……マナセ・セレーナ・ムーンキーがかつて張った、大樹を守護する『おまじない』に身を触れて、体が焼かれる様な痛みに耐えながら、だ。全く塵の様な一手を踏んでしまった。
 ――あの言葉を忘れたが故に降りかかった災厄。
 自業自得? 因果応報? 自らのみがファルカウを護れるとの傲慢が故か――?
 否ッ!
「知った事か! 僕は間違えていない。僕は間違ってなどいない!」
 殺す殺す殺す! 必要だからとファルカウに炎を放つ虫けら共!!
 アカツキ・アマギ(p3p008034)と言ったか? エルシア・クレンオータ(p3p008209)とかいう奴もだったか? 許せん! 許せんぞ虫けら共め!! そして、それを少しでも許容する幻想種のシロアリ共も!! そしてファルカウに――今こうして土足で踏み上がってくる異邦の愚図共全て!!
 ……クェイスの瞳には狂気しかなかった。
 ファルカウの守護者であるという自負は傲慢に至り。
 永遠の静寂こそ至高であるという怠惰の罪に共感した。
 狂おしいまでの渇望は正気の限界点を突き抜けて他者を根絶せんとする。

『ふわああ……やる気があって結構だにゃー。じゃ、これやるから頑張るにゃー』
「なっ……クソ猫、貴様……!!」

 ――故にこそカロン・アンテノーラは介入した。
 怠惰の罪に落ちたイレギュラーズに、己が権能(ちから)を渡したように。
 彼は狂気に突き抜けているクェイスにも一つの権能を明け渡す。
 何故かって?
 事ここに至っても尚――自分が動くのは面倒だからだ。
『ンッふっふ。アレはそういうお方ですぞ。まぁ何でも良いでしょう――
 持てる限りの全てを使って、己が望む地平を作って御覧なさいですぞ』
 クェイスの魂に一つの声が囁いた。
 それはかつて己に呼び声を成した愚図の声。
 ただただその背でせせら笑う呼び声が――彼の全てを埋め尽くしていた。

 ※行方が不明になっていたイレギュラーズが敵陣営で確認されました……
 ※夢の中に囚われた者達は『夢檻の世界』にいるようです……
 【夢檻】から抜け出す特殊ラリーシナリオと、冠位魔種の権能効果を減少させる特殊ラリーシナリオが公開されています。

これまでの覇竜編深緑編

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