PandoraPartyProject

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永訣を奏で

 ――ずっと、頭の中に響く聲があった。

 精霊さまだけなら、撥ね除けられる自信があった。
 暗澹たる隘路。それでも、『私』は精霊さまの聲ならば無視できると思っていた。
 一人にしない、と言った。一緒に居よう、とそう言ってくれた。
 森の中を駆け抜けた日々。夢中になって靴は放り捨てて、跣で花畑に飛び込んだ。
 隣にはターフェアイトが居て、それから、後ろからが着いて来た。
「クラリーチェ!」
「りーちぇ」
 森の声を聞き、ごろりと花畑に転がって腹を抱えて笑い合う。優しい声、甘い囁き。
 思い出の欠片。
 ――私が欲しいものは『もう戻らない、村での日々』だった。今じゃない。
 今じゃない。
 今じゃなかったから、耐えられるはずだった。

 ――変わらぬ日々に望まぬ変化。森(くに)を開いたこの場所は、望まずとも大きく変わったはずにゃ。
   ふむふむ。信仰の柱。
   立派な事にゃ。そうにゃあ。けど、信心の強さだって何れは変わる。
   変化せず、もう二度とは誰も失わないで居られればよっぽどいいにゃあ。

「そうですね。変化せず、ずっとこのままで何も失うことなく……死ぬまで眠っていられるならば。
 それが私の一番の望みです。もう辛いことも悲しいことも……さみしいのも、いや。
 おとうさまおかあさまおにいさまに会えるまで……ずっと目を閉じていたい」

 幼い子供の様に呟いた。膝を抱えて俯いて、夢を見る。二度と目覚めてしまわぬように。
 それでも、彼女は――クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は。

 イレギュラーズになって、大切な人と出会った。
 諦観ばかりであった彼女の人生に華やかな色が差した。猫を抱き寄せ、日常を過ごす。
 普通の少女のように過ごす自分は、屹度、優しい笑顔で笑っていたはずだった。

(ブルーベルさん、貴女のように私もなれるでしょうか。欲に任せて暴走せず、諦観に寄り添って……。
 理性を持ち、友になれるかもしれないと、感情を結べる存在の儘でいられますでしょうか)

 もしも、彼女が隣にいたならば聞いてみたかった。
 彼女は冠位怠惰を敬愛しているけれど、クラリーチェがそう問いかければ困ったように答えてくれるはず。

 ――バカだな。ンなのやってみなくちゃ分かるわけねーだろ。そんな、都合のいい、さ。

 ええ、都合がいいのですよ。でもね、秘密にしておいてほしいの。
 私は道を踏み外した修道女。悲しまれることも、顧みられることも望みません。
 蔑んだ挙句、馬鹿な女がいたと忘れてくれればいい。それでいいから。

 戦場で死にたい。イレギュラーズの敵になって、殺してもらおう。
 ああ、けれど。少しだけ、少しだけのチャンスをください。
 無為に死ぬのではなく、冠位の力を僅かでも削ぎたいのです。

「私は、貴方に応えます。冠位怠惰カロン・アンテノーラ。
 私は『元イレギュラーズ』……貴方の権能(ちから)を私に分けておきませんか?
 彼らは慈悲深く、知りえた相手を殺す事を躊躇います。私ならば『殺されることはない』」
 茨の拘束具がその体を包み込む。
 両手を伸ばしたクラリーチェは気配も消え失せそうな程に小さくなったフロースを抱きしめた。

 ああ、可哀想な精霊さま。
 ……『反転をした私に巻き込まれてしまったのですね』
 そのまま消え失せていく精霊の命を抱きしめてからクラリーチェは笑う。

「私は、怠惰の魔種。……道を踏み外した修道女。ただの、一人の馬鹿なおんななのですから」

 ※行方が不明になっていたイレギュラーズが敵陣営で確認されました……
 ※夢の中に囚われた者達は『夢檻の世界』にいるようです……
 【夢檻】から抜け出す特殊ラリーシナリオと、冠位魔種の権能効果を減少させる特殊ラリーシナリオが公開されています。

これまでの覇竜編深緑編

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