PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

竜獄の大樹

 灰燼と化す森の姿に目を覆う幻想種は数あった。
 それでも、進まねばならぬのだ。進む他に道はあるまい。
 アンテローゼ大聖堂で『タレイアの心臓』を保持し、その権能を以て『茨』を打ち払わんとするのは『灰の霊樹』とその守人であるフランツェル・ロア・ヘクセンハウス (p3n000115)
 アンテローゼ大聖堂近くでは幻想種達が防衛の陣を張り、敵の侵入を防ぐのだそうだ。
「此処は良いですから、行って下さい」
 森の姿に苦悩しながらも幻想種はあなたの背を押した。
 先に見える大樹ファルカウには彼方からすれば助っ人、此方からすれば最悪の存在――『竜種』が観測できたのだ。
「クエルさんに関してはイルスが案内してくれるわ」
 ――霊樹レテート。
 それはファルカウと深く繋がった霊樹である。だが、その強かさは今代の巫女が『親和性が高くその身に全てを反映させている』事に由来しているのだそうだ。
 巫女とレテートを犠牲にすれば、ファルカウ内部には未だ残る『眠りの呪い』を解ける可能性はある。
 霊樹は動くことが出来ない。故に、『其方の援護』は別働隊が向かう事になった。
「……それから、」
 そうフランツェルが視線を送った先には灰の霊樹。ざわめくそれは何らかの存在を予感していた。
「此処とは隔絶された空間。聖域と呼ぶべき、人智及ばぬその場所――其処に、貴女のお母様が居るのでしょう?」
 問われたのはリア・クォーツ(p3p004937)である。
「……ええ、まあ。けれども、どうでも良いことです。あたしも自分の為に好き勝手やるだけですから」
「『玲瓏公』が聖域に残されていた願望器の力を使えば、消滅する可能性さえある……そうでしたよね、司教フランツェル?」
 ふい、と視線を逸らすリア――彼女は、憤っているようにも思えた。『娘が居たとしても手放すような女』の盟約も事情も、直ぐに飲み込めるほどに彼女の気性は穏やかではない――の傍でマルク・シリング(p3p001309)は問いかける。
「ええ。そう聞いているわ。奇跡というのは生半可なことでは起こりっこない」
「それは、ジャバーウォックと僕らの関係性で良く分かっているよ」
 ファルカウの傍にその姿が見られた事を越智内 定(p3p009033)は思い出すように言った。
 覇竜領域で活動を続ける仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)クーア・ミューゼル(p3p003529)アーリア・スピリッツ(p3p004400)は『ファルカウの傍の竜種』がどれ程の脅威であるかを痛いほどに知っている。
「『玲瓏公』に頼らずの勝率は? ……なんて聞くのも莫迦らしいな」
「そうかも。誰かを犠牲に知る事を知りながら私達は『其れに最初から頼るなんて』できっこないよ」
 シラス(p3p004421)に頷いたアレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)の瞳には強い気配が宿されていた。
「森を焼いてしまった――なら、その責任は取らなくちゃね」
 ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は静かに言った。
 幾つも、手札は用意した。霊樹レテート、玲瓏公、『タレイアの心臓』、ファルカウの巫女が目覚めてからの『反撃の時間』
 其れまでだ。
「先ずはお帰り頂かないと、いけないよね」
 アレクシアは不安げに呟いた。森へと火を放った痛ましさが少女の胸を締め付ける。

 ――私は『娘を手放すしかなかった母親』で、そんな者に今更名乗りを受けた失望や怒りは理解しています。
 ……私が消滅を厭わず、七罪との戦いに臨みたいと思うのは旧き盟約が故です。
 それを貴女の為と言えるなら、いよいよ私は母親とは呼べないでしょう?
 貴女の為なんて言いません。これは全て自分の為です。ですから、リア。危険に挑むなとは言いません。ただ、きっと無事で……
 ……『母親失格』かしら。少しの時でも、貴女と話せて良かった。もう少し話していたかったけど――

「馬鹿じゃないの。……お互いに会う事なんてせずに、お互いに知らないまま好き勝手やればよかったのよ」
 呟いたリアは「あの人なんて関係ないわ。『帰らせれば良いんだから』」とアレクシアへと言った。
「そうねぇ、行きましょう」とアーリアが笑いかければ、クーアは唇を尖らせて「あの竜が火竜であれば嬉しかったのですけれど」と呟いた。
「他にも無数、飛んでいったようだな。アレは練達でも見られた『複数の竜種』か。忙しくなりそうだな……」
 汰磨羈の呟きに『死を遠ざける』事の難しさを実感してマルクは静かに唇を噛んだ。

「行きましょう」
 珱・琉珂 (p3n000246)はあなたに声を掛ける。
「でも、そこに何が待ち受けているかは分からないよ、さとちょー」
 ユウェル・ベルク(p3p010361)の言葉に琉珂は目を伏せる。Я・E・D(p3p009532)は「焦らないで」と年若い里長を宥めた。
「相手は? 『ジャバーウォック』から揃い踏みか? ああ、いや、『一匹』欠けたか」
 ブライアン・ブレイズ(p3p009563)の問いかけにクラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)の続きは「そう、ですね」と心ここに在らずといった様子で答えた。

 ――りーちぇ。りーちぇ。『一人にしないで』

 夜毎、聞こえたその声は、頭の中で大きくなる。クラリーチェ・カヴァッツァの背中にはぴったりと『厭な気配』が寄り添っていた。

 ※深緑奪還を目指す<タレイアの心臓>が始まりました!!

これまでの覇竜編深緑編

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM