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ギルドスレッド

Deserted House

古寂れた居室

人通りもない寂れた通り。
元は住宅街だっただろう家々は古く、中でも一等朽ちた家が建つ。
ところどころ補修の跡があるその家は大きく、元は立派な屋敷だったことが窺える。
けれど、草木が伸び放題の庭に一部欠け落ちた壁、取手の外れた扉からは最早威容の一片も感じられないだろう。

人の気配は感じられず、物音も聞こえない。
扉は最早鍵もないのかプラプラと揺れている。

その奥に見えるのは居室だろうか。
古寂れた絨毯は虫食いで、置いて行かれたドレッサーに付いているのは割れた鏡。

人が寄りつくことは殆どないだろう。

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………

(ふらりふらりと、覚束ない足取りで通りかかる。正気の感じられない動きは、行き場所すらも定まっていないよう)


………(やがて、道端の小石に蹴つまずくと、そのままバランスを崩して倒れ込む。起き上がる気力もないのか、そのまま横たわって動かない)
(混沌に来たばかりの頃に居着いていた家。今はもう住まいも移してしまっているが、それでも時折様子を見に行っていた)
(この日も同じく、数ヶ月ぶりに足を運ぶ。手入れをするわけでもなく、何をするでもなく。本当にただ『見るだけ』ではあるが)

……ん?
(最早慣れた道。ぼんやりと歩いていると、廃屋のすぐそばに、何かが落ちているのが見える)

…………んん?
(近付くにつれ、人のようである、と分かる。行き倒れだろうか、死んでいては厄介だ、等と思いながらも歩みを止めず)

おーい、生きてる?
(声の届く位置。倒れているそれはうつ伏せで、立ったままでは顔は見えない。しゃがみ込んで覗き込みつつ、服装の既視感におや、と思う)

もしかして……ヴァイオレット?
(肩部分に手を当て、ゆさゆさとゆすろうとするだろう)
……………

(返事は無い、浅い呼吸をしている為に眠っている様子だ。

目の下のクマはより深みを増し、肌は荒れ、髪も乱れている。途轍もない疲労の痕跡は、揺すっても起きる兆しを見せない事を示していた)
あー……寝てるのか。死んでなくて良かったというべきかな……。
(一人そっと、安堵かため息か、ひとつ息を吐いて。さてどうしたものかと頭を悩ませたのも束の間、その決断は早く)

擦り傷できても許してね。
(聞こえていないことを分かりつつ、罪悪感の軽減を図る。頭を持ち上げるようにして、両脇の下に手を通し。よ、と掛け声のもと、廃屋へと引きずり込んだ)
(雨風にさらされるよりマシでしょう……あ、風は防げないか)
…………、………

(相当深い眠りに落ちているのか、目覚める様子はなく引きずり込まれる。規則正しい寝息であるものの、時折やや熱っぽく息を荒げる。疲労感が体を苛んでいるようだ)




………、っ、う……うぅ……

(時折呼吸を荒らげ、具合の悪そうに身をよじる。苦悩するように眉間に皺を寄せ、苦しむように喘ぐ。魘されているようだ)
うーん……ここに置いといても良くなるとは思えないけど……。
(具合の悪そうな様子に眉を下げつつ、最後に見た姿を想起する。戦いの時の常軌を逸した姿。病や風邪よりももっと……違うものだろうか)

はあ……仕方ない。
(仰向けに寝かせ、他の部屋から毛布を集めてくる。どれも薄っぺらく穴あきで、とても暖をとれそうには見えないけれど)

ないよりマシ……かな。アタシもこれで寝てたし……。
(あまりに寝苦しそうにするので、険しい峡谷を刻む眉間に触れようと手を伸ばすだろう)
うぅ……。…ぅ………

(毛布を被せられ、額に手を添えられる。暫く苦悩するかのように少し、悶えるように呻いていたものの、やがて次第に安堵の声が勝り、魘されていたようなうめき声が収まった気がした)

……………

(そのまま静かな寝息を立てて眠る。相当の疲労が見える顔からは、暫くは起きそうにない気配を伺わせた)
全く……仕方ないな。
(夢見の悪さが落ち着いた気配に安堵の声音。かつての棲家の様子を軽く確認するだけのつもりだったが、見捨ててはおけない)

食材はないから……近場で調達してくるかな。
(起きた時に、何か口にできた方が良いだろう。温かいスープなら飲みやすいだろうか。そんなことを考えながら買い物へ)
…………う、ん………

(ジェックのちょうど買い出しが終わり、家に着く頃だろうか
身を捩るようにしながら、意識を覚醒させる。ぼんやりと目を開くと、見知らぬ天井が視界に広がるのを、身じろぎひとつもせずに眺めていた)
(隙間風の吹く屋内で、風よりも空気が動く。軋む扉を開け、手提げと共に帰ってきた)

……さて、どうしようかな……。
(まだ寝ているだろうという考えか、そのまま台所へ向かう。当然のごとくに古びているが、火を付けられれば使えないことはない。
 あの様子だとろくなものも食べていないに違いない。消化に良いものがいいだろうか)

(姿こそ見えないものの、隙間だらけの壁が料理の音を伝える。小気味いいリズムを奏でているのは何かを刻む音のように感じるかもしれない。
 やがて漂ってきた香りが鼻腔をくすぐるだろう)
……………

(徐々に覚醒する意識、ほのかな香りに穏やかな気持ちが表層化する)

………? …! ……あ、う……っ!! 

(少しずつ状況を掴み、誰かに介抱されているのだと気づく)

…っ、あ…!

(すぐさま飛び起き、その場から逃げようとするも、疲労に足をもつれさせてもう一度倒れ込む。大きな音がするだろう)
おや、目を覚ました?
(湯気の立つお粥を入れた椀を持ち、寝かせていた部屋を覗く。食器は新しく……食材を調達する時に一緒に買ってきたのだろう)

………おや。
(寝ていたはずの人の姿を見て、困ったように笑う)
ダメだよ、まだ寝てなきゃ。ほら、戻って戻って。
(お粥を乗せた盆を傍に置く。倒れ込んだ少女の体を寝床に戻すべく、体に触れようとする)
…っ!!

(差し出された手に酷く怯えたように、勢いよく飛び退く。まともに動かぬ足で無理に動いた事が祟り、そのまま尻餅をついて壁に背を打ち付ける)

だめ……だめです、私は…私、は…そんな、してもらって、いいわけ……っ!

(頭を抱え、怯えたように縮こまる)
じゃあコレ、ゴミにする?
(動揺に過剰に寄り添うことはせず、あくまで近くにいるだけで。呆れてるのとも見放しているのとも違うような声)

アタシは帰ったらもっと美味しいご飯あるし、これは食べないんだけど。
(それ以上手を伸ばすことはない。ただまっすぐ見て、首を傾げている)
……っ……それ、は……、っ……うぅ…

(問答をするまでもなく逃げている筈だったのに、身体が思うように動かない
自分の為に用意されたものと解っているからこそ、それを拒否したいと同時にその優しさを否定したくもなくて)

……………

(結果、押し黙り縮こまるしか出来なかった)
食べるも捨てるも好きにしていいけどね。
好きにする体力も、今のキミにはないようだ。
(あくまで淡々と。けれど、スプーンを持った手はスープをすくい、口元まで持っていく)

(放っておいてもこのまま冷めるだけと思ったのか。そのままスプーンをぐいと口の中に押し込もうとするだろう)
むぐっ……!! ………っ、……

(スプーンを押し込まれる。一瞬抵抗を試みたものの、抵抗する体力もなければ、抵抗の結果ジェックを傷つける事になると判断したためか、押し込まれるがままに口に入れられたものを咀嚼する)
(暫くその繰り返しで、ほどなくして皿が空になったあたり。
ぐったりとしているのは相変わらずなものの、意識は少し明瞭になったようで)

…………どうして……?

(何に対しての問いだろうか。助けた事、ご飯を与えた事、どれにも当てはまるような問。ヴァイオレット自身にもきっと何を問うてよいのかわからない、そう見受けられるような問いだった)
んー……「どうして」がいい?
(揶揄っている様子でもないが、混ぜ返すような言葉)

なんて言うのも困っちゃうか。

大して理由なんてないよ。
ただたまたまそこにいて、たまたま目に入ったから。
そこから何を受け止めるかは……キミが何を受け止めたいか次第じゃない?
(おかわり要る?なんて聞きながら、笑って答えるだろう)
………

(何を受け止めるか、何を受け止めたいか次第。図星を突かれてしまったという顔を伏せる。
誰から何を受けても、結局は自分の受け取り方次第で、それは善にも悪にもなるだろう、と…)

…………

(今まで因果応報を受ける為に生きてきた。故にここで無為に死ぬ訳にはいかない、というのは建前かもしれなくて、それでも)

………
(促されたお代わりに、こくり、とうなずく。少なくとも、ジェックから齎されたものを拒絶する理由も、思いつかなかったようだった)
(頷きを満足げな表情を見せる。ぎしぎしと鳴る床板を軽く歩きながら、台所からおかわりをよそってすぐに戻ってくる)

ふふ、なんか懐かしいな。
キミがこの世界に来たばかりの頃、要らない魔石を押し付けてた時のことを思い出すよ。
あの頃も、何か言いたいけど言葉にならない、みたいな表情をしてたね。
(もう3年以上前のことに記憶を馳せながら、もう一人で食べれるね?と匙ごと手渡して)
…………

(力なく受け取り、食事を食べ始める)

(ジェックの言葉を聞く。3年以上。そんな長い月日が既に経っていた)

……(匙ですくい、口に入れていく)

(混沌に召喚され、元々の信念が薄れるほどにたくさんの出会いを経験して。喪ったもの、取りこぼしたもの、望めなかったものをもう一度手が届いて)

………そうですね………
……でも、あの頃よりも………

(よりも、どうなったのだろうか。自分は、善くなったのか。悪くなったのか。はたまた、あの頃とは違うのか。言葉が次に紡げなくて)

……っ、ぐす…もぐ……ぐすっ……うぅ……

(口に入れていった食事からエネルギーを得る度に、少しずつ
枯れていた涙が、瞳からこぼれおちていった)
色んなことがあった3年だったね。一言では言い表せないほど。
(ガラスの失われた窓からの陽が、部屋の中に二人の影を伸ばしている。影に触れないくらいに近く腰掛けて)

思い出の分だけ、今はたくさん泣けばいい。
前に進むばかりじゃ消化しきれないようなことも、たくさん経験してきたんだから。
(キミもアタシもね、と。拭うことよりも止めることよりも、今は泣いてしまった方が良い、と)
……っ、う、うぅっ……ぐすっ、あ。あぁぁ…あぁぁ……!!

(口にするたびに、溢れてゆく。ぼろぼろと、嗚咽と涙が漏れ出してくる。
過去の葛藤と、絶望するがゆえに縋る未来と、今の自分への失望と。傷つけた人、傷つけたくなかった人、失いたくなかった人。それらが重なる度に、どうにもならなかった、どうにもできなかった"自分”が悔しくて)

あぁ……!あぁぁぁぁぁっ!!うあぁぁぁぁぁぁーーー!!

(堰を切ったように、泣き出した。抑圧してきた、悲しみも怒りも絶望も全て、肚の内からひっくり返すように、泣き出した)
(思いきり涙する姿。感情のコントロールがうまくいかない様子は、身に覚えがある)

ゆっくりして行きな。ここはアタシ以外、誰もいないからさ。
(慰めの言葉はかえって毒だろうと。水差しとコップを近くに置いて、横へ腰かけた)
(どれほどの間、泣き続けただろうか。暫く泣いて、ご飯を食べ終わった後。ややばつが悪そうに、占い師はジェックに食器を渡した)


…その、申し訳、ございません

……お恥ずかしい所を、お見せして

(相変わらず声に覇気はなかったものの、少しばかり”申し訳ない”と、気持ちを表しながら占い師は答えたのだった)
はは、気にしなくていいよ。困った時はお互い様、ってね。
っていうかアタシが勝手に引きずり込んだだけだし。
(あっけらかんと笑いながらも、差し出された食器を受け取る。そのまま脇に置いて、喉が渇いたでしょ、と水を差し出す)

別になんも状況は変わってないけどさ。
泣くとなんか、気持ちがスッキリするよね。
(分かるよ、とは声には出さず)
………(受け取った水を、今度はゆっくりと飲み干す。潤った喉で、一息をつく)

……ありがとうございます。ジェック様

…お世話になりました。私は、もう行かねばなりません

(そうして、落ち着いた声色で頭を下げ、丁寧に礼をすると、ゆっくりと立ち上がり、外へ続く扉へと向かった)
おや、もう行くの。
(ひと心地つき落ち着いた表情に、仄かに安堵を滲ませつつ。扉へ向かう彼女に驚きのような……けれどそうなると分かっていたような。そんな声をかける)

何をするにしても、ご飯は食べなよ。またこんな目に遭いたくなければね。
(またね、と笑って。見送るように出口までついていく)
…………

(扉に手をかけようとして、少し、止まる)


………………………………

(そう、ここで止まってしまえば。ジェック様に借りを作ったと、助けて頂いた命と。いくらでも…生きる大義名分にできる)

…………

(泣いた気持ちの中には、確かにあった。
「生きたい」って気持ちが。
「死にたくない」って渇望が。
「誰かと共に歩みたい」って願いが。
それを許さないのは、自分自身だから、ここで止まってしまえと、強く頭の中で鳴り響く)


………っ

(腕が震える。足が、重くなる。扉を開けてしまえば、きっともう、戻れない。もう二度と、陽のあたる場所を…望むことは、できないのだ)
…………

(それでも)


……………………


(それでも、血に染まる白い白無垢が。紅に染みる黒い占い師が
数多くの「不幸」と重なった時、心の内は驚くほどに冷えていく。瞳を伏せて、一つ呼吸をする。望みたい資格など、とうになくなったのだと)
(そうして、そっと)

……ジェック様。

(扉に手をかけて、振り返るのだ)

――どうも、ありがとうございました


…どうか、お元気で

(寂しげに笑って、扉を開けて…
逆光の中に影が溶けるように、ヴァイオレットはその場から消えていた)
………………。
(迷い。戸惑い。逡巡。素直な単語で表すのも迷われるような彼女を、扉から少し離れた位置で見守る)
(立ち止まるなら、それもまた選択の一つだと。この家を貸す……だけの名義は持たないけれど。それでもまあ、何か出来るだろうと)

(けれど、やはりと言うべきか。留め具の外れかけた扉は開けられた)
じゃあね、ヴァイオレット。
……またね。
(誰もいないそこへ、言葉だけ置いて。暫くその場に佇んでいた)

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